日本語でわかる最新の海外医学論文|page:323

新型コロナ感染のがん患者の15%に後遺症、生存率にも影響

 がん患者がCOVID-19に感染した場合の後遺症の有病率、生存率への影響、回復後の治療再開と変更のパターンを調べた研究結果が、2021年11月3日のThe Lancet Oncology誌に掲載された。  本研究は、固形がんまたは血液がんの既往歴があり、PCR検査でSARS-CoV-2感染が確認された18歳以上の患者を登録する欧州のレトロスペクティブ試験で、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の35施設で患者が登録された。2020年2月27日~2021年2月14日にSARS-CoV-2感染と診断され、2021年3月1日時点でレジストリに登録された患者を解析対象とした。

有害事象を追記、COVID-19ワクチンに関する提言(第4版)公開/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、12月16日に同学会のホームページで「COVID-19ワクチンに関する提言」の第4版を公開した。  今回の提言では、昨今のオミクロン株拡大の懸念を踏まえ「COVID-19ワクチンついて、その有効性と安全性に関する科学的な情報を解説し、接種を判断する際の参考にしていただくために作成いたしました。第3版のあとに明らかになったことや今後の課題について追記し、第4版として公開いたします。COVID-19の終息に向かって、COVID-19ワクチンが正しく理解され、安全性についても慎重に検証しながら、接種がさらに進んでゆくことを願っています」と今後のさらなるCOVID-19の予防に期待を寄せている。

成人成長ホルモン分泌不全症の週1回の治療薬発売/ノボノルディスクファーマ

 ノボノルディスクファーマ株式会社は、12月10日に「成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)」を効能または効果とする長時間作用型ヒト成長ホルモンアナログ製剤ソマプシタン(商品名:ソグルーヤ)を発売した。  成人成長ホルモン分泌不全症のとくに重症例では、自覚症状として易疲労感、スタミナ低下、集中力低下、気力低下、うつ状態などの症状があり、体組成異常として体脂肪の増加、除脂肪体重の減少などの異常、その他脂質代謝異常などを生じる。  今回発売されたソマプシタンは、長時間作用型遺伝子組換えヒト成長ホルモン(hGH)アナログであり、hGHを単一置換したアミノ酸骨格とアルブミン結合部位からなり、アルブミン結合部位(側鎖)は、親水性のスペーサーおよび16鎖の脂肪酸部位から構成され、化学結合によりアミノ酸骨格の101位に結合する。内因性アルブミンとの可逆的な非共有結合によりソマプシタンの消失が遅延し、その結果、in vivoでの半減期および作用持続時間が延長する。

COVID-19感染クロザピン使用患者における好中球数の変化

 クロザピンは、無顆粒球症・顆粒球減少症などの重篤な副作用リスクを有しているものの、治療抵抗性統合失調症の重要な治療選択肢である。そして、クロザピンのモニタリングシステムは、無顆粒球症の発生率や死亡率の低下に貢献している。しかし、COVID-19のパンデミックは、このモニタリングシステムに影響を及ぼしている。マレーシア・ケバングサン大学のFitri Fareez Ramli氏らは、COVID-19に感染したクロザピン治療患者における好中球の変化に関する現在のエビデンスより、各症例における、絶対好中球数(ANC)レベル、正常、低下、上昇に関する情報を収集し、評価を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2021年10月27日号の報告。Ramli FF, et al. Int J Environ Res Public Health. 2021;18:11289.

未診断のCOPDを放置しないで!早期診断・治療に質問票の活用も

 先日、アストラゼネカが「世界COPDデー(11月17日)」にセミナーを開催した。室 繁郎氏(奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座 教授)が、要介護の前段階“フレイル”の予防という視点から、COPDの早期診断・治療の重要性についての講演を行った。つづいて、山村 吉由氏(奈良県広陵町町長)が自治体として2014年度から取り組んでいるCOPD対策事業について講演した。また、セミナーの後半では、3年前にTV番組でCOPDの診断を受けた経験のある松嶋 尚美氏をゲストとして、トークセッションが設けられた。

早期乳がん術後化療中の遠隔ケア、予防的電話介入の効果は?/BMJ

 早期乳がんの外来化学療法中の毒性管理について、プロアクティブに電話で介入する方法は、救急部門の受診や入院の減少に結び付かなかったことが、カナダ・University Health NetworkのMonika K. Krzyzanowska氏らが行った検討で示された。がん化学療法中は、救急部門の受診や入院は一般的であり、外来で適切にサポートすれば予防できる可能性が示唆されているが、これまで遠隔管理の大規模な検討は限定的であった。結果を踏まえて著者は、「COVID-19パンデミックにより遠隔ケアが急速に増加しており、がん治療中の患者の遠隔管理について、実践可能な戦略を確立することはとくに重要な課題である」と述べている。BMJ誌2021年12月8日号掲載の報告。

ファイザーブースター接種、年齢層別の効果は/NEJM

 イスラエルで新型コロナワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の3回目接種(ブースター接種)を受けた16歳以上について調べた結果、全年齢でCOVID-19感染および重症の発生率についてブースター接種者のほうが非接種者よりも大幅に低かったことが、イスラエル・Weizmann Institute of ScienceのYinon M. Bar-On氏らにより報告された。イスラエルでは先行して実施された60歳以上へのBNT162b2ブースター接種の結果が有望であったことを受け、2回目接種から5ヵ月以上経つ若い年齢層にもブースターを接種するキャンペーンが拡大されていた。NEJM誌オンライン版2021年12月8日号掲載の報告。

日本における抗精神病薬の持続性注射剤と経口剤との併用に関する調査

 統合失調症の維持療法において、長時間作用型持続性注射剤(LAI)抗精神病薬の単剤療法は、選択肢の1つとして考えられているが、最近の報告では、LAI抗精神病薬と経口抗精神病薬との併用療法が一般的であるといわれている。この状況について、山梨県立北病院の三澤 史斉氏らが調査を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2021年10月18日号の報告。  LAI第2世代抗精神病薬と経口抗精神病薬の併用療法の状況を調査するため、レトロスペクティブチャートレビューを実施した。また、処方医の併用療法に対する考えを調査するためのアンケート調査も実施した。LAI第2世代抗精神病薬を1ヵ月以上処方された患者を対象に、単剤療法群と併用療法群に分類した。年齢、性別、精神医学的診断、それに付随する向精神薬の併用に関する情報を収集した。

liso-cel、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療の転帰改善(TRANSFORM)/BMS

 ブリストルマイヤーズスクイブは、2021年12月11日、成人の再発・難治大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の2次治療において、CD19を標的としたCAR-T細胞療法リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)と標準療法(サルベージ化学療法とその後の大量化学療法と自家造血幹細胞移植からなる)を比較した、国際無作為化多施設第III相試験TRANSFORM試験の中間分析の結果を初めて開示した。

ペムブロリズマブ+レンバチニブによるNSCLC1次治療の成績(LEAP-007)/ESMO-IO 2021

 転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブとレンバチニブの併用は、Study111 / KEYNOTE-146試験で、抗腫瘍活性を示している。欧州免疫腫瘍学会(ESMO-IO 2021)では、未治療のNSCLC患者に対するペムブロリズマブ+レンバチニブの有用性を評価する第III相LEAP-007試験の結果が報告された。 ・対象:未治療のNSCLC(PD-L1≥1%、ECOG PS 0/1) ・試験群:ペムブロリズマブ200mg/日 3週ごと+レンバチニブ20mg/日 連日(ペムブロリズマブ+レンバチニブ群) ・対照群:ペムブロリズマブ200mg/日 3週ごと+プラセボ(ペムブロリズマブ群)  毒性発現または最大35サイクルまで投与 ・評価項目:[主要エンドポイント]BICRによる無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)

tapinarofクリームが尋常性乾癬に有効~第III相試験/NEJM

 軽度~重度の尋常性乾癬患者において、tapinarof 1%クリーム1日1回12週間塗布は、対照(基剤)と比較して重症度を有意に改善したが、局所および頭痛などの有害事象も伴った。米国・マウント・サイナイ・アイカーン医科大学のMark G. Lebwohl氏らが、tapinarofの2件の無作為化第III相試験「PSOARING 1」および「PSOARING 2」の結果を報告した。tapinarofは、インターロイキン(IL)-17と皮膚バリア機能に関与するフィラグリンおよびロリクリンの発現を調節するアリル炭化水素受容体調節薬で、クリーム剤が乾癬の治療薬として検討されており、第II相試験で有効性が示されていた。今回の結果を受けて著者は、「乾癬に対するtapinarofクリームの有効性と安全性を既存の治療薬と比較検討するためには、より大規模で長期的な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2021年12月9日号掲載の報告。

ファイザー製ワクチン、ブースター接種で死亡リスク9割減/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチンのBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)の、2回接種から少なくとも5ヵ月後にブースター接種を受けた人は、ブースター接種を受けていない人と比較して、COVID-19による死亡リスクが90%低下した。イスラエル・Clalit Health ServicesのRonen Arbel氏らが、同国半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析を行い報告した。SARS-CoV-2のデルタ(B.1.617.2)変異株の出現と、BNT162b2ワクチンの経時的な有効性の低下により、早期にワクチンを接種した集団においてCOVID-19の再流行が発生したことから、イスラエルの保健省は2021年7月30日にBNT162b2ワクチンの3回目接種(ブースター接種)を承認したが、ブースター接種でCOVID-19による死亡率が低下するかどうかのエビデンスが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2021年12月8日号掲載の報告。

COVID-19ワクチンと季節性インフルエンザワクチン同時接種における安全性と免疫原性(解説:小金丸博氏)

 COVID-19ワクチンと季節性インフルエンザワクチンの同時接種における安全性や免疫原性を検討した研究がLancet誌オンライン版(2021年11月11日号)に報告された。英国で行われた多施設共同ランダム化比較第IV相試験であり、2種類のCOVID-19ワクチン(アストラゼネカ社製とファイザー社製)と3種類の季節性インフルエンザワクチンによる6通りの組み合わせで検討された。その結果、同時接種によって接種後7日間以内の全身反応(発熱、悪寒、関節痛、筋肉痛、疲労、頭痛、倦怠感、嘔気など)の有意な増加はなく、両ワクチンに対する抗体反応も維持されることが示された。2通りのワクチンの組み合わせで95%信頼区間の上限があらかじめ規定された非劣性マージンをわずかに超える全身反応を認めたものの、許容できる範囲と考察されている。

モデルナ製ワクチンの追加接種を承認、「スパイクバックス」に名称変更も/厚労省

 厚生労働省は12月16日、モデルナ社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて用法・用量の追加を特例承認した(国内の申請者は武田薬品工業)。先行して承認されたファイザー製ワクチン同様、国内の18歳以上に対し、3回目のブースター接種(追加免疫)への使用が可能になる。ただし、追加接種では0.25mLと従来の半量になる(2回目までの初回免疫では0.5mL)。併せて、販売名が「モデルナ筋注」から「スパイクバックス筋注」に名称変更されることも周知された。

新型コロナを5類相当にすべき?すべきでない?医師が考えるその理由

日本国内での新型コロナの感染状況は小康状態が続く中、ワクチン接種は進み、経口薬の承認も期待される。一方で、オミクロン株についてはいまだ不明な点が多く、国内での感染者数も少しずつ増加している。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を5類相当に格下げすべき」。これまで何度か話題に上ったこの意見について、医師たちはどのように考えているのか? CareNet.comの会員医師1,000人を対象にアンケートを行った(2021年12月3日実施)。  新型コロナウイルス感染症は現在、感染症法上「新型インフルエンザ等感染症」という特例的な枠組みに位置付けられ1)、入院勧告や外出自粛要請などが可能で、医療費が公費負担となる1~2類感染症に近い対応がとられている2)。その法的位置付けについて、今年初めまでは「指定感染症」に位置付けられていたこと、一部報道などでは“2類相当”との言葉が先行するケースもみられたことなどから、混乱が生じている側面がある。

アトピー性皮膚炎に経口治療薬が登場/ファイザー

 ファイザー株式会社は、12月13日にアトピー性皮膚炎の治療薬として、経口JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤アブロシチニブ(商品名:サイバインコ)を発売した。アブロシチニブは、2020年12月に本剤の製造販売承認申請が行われ、2021年9月に承認を取得していた。  アトピー性皮膚炎は、皮膚の炎症や、皮膚バリア機能が損なわれる慢性皮膚疾患。紅斑、丘疹、痒み、浸潤、鱗屑、痂疲が主症状となる。幼少期から繰り返す慢性皮膚疾患のもっとも代表的な疾患で、世界中で成人の10%、小児の20%が罹患していると推定されている。

早期乳がん、タキサンへのアントラサイクリン追加のベネフィットとリスク~メタ解析/SABCS2021

 早期乳がんに対するタキサンとアントラサイクリンをベースとした化学療法は、アントラサイクリンによる心毒性と白血病リスク増加の懸念から、アントラサイクリンを含まないレジメン、とくにドセタキセル+シクロホスファミド(DC)が広く使用されている。アントラサイクリン併用のベネフィットとリスクは複数の無作為化試験で検討されているが、結果が一致していない。今回、Early Breast Cancer Trialists Collaborative Group(EBCTCG)が、2012年以前に開始された16件の無作為化比較試験から約1万8,200例のデータのメタ解析を実施した。その結果、アントラサイクリン併用で、乳がん再発リスクが相対的に15%減少し、また同時投与レジメンで最大の減少がみられたことを、英国・オックスフォード大学のJeremy Braybrooke氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2021)で発表した。

統合失調症に対する抗精神病薬治療効果とテロメア長との関連

 統合失調症の重症度や認知機能障害に対する持続性注射剤(LAI)および経口剤の非定型抗精神病薬の有効性とテロメア長との関連について、インド・University College of Medical Sciences and Guru Teg Bahadur HospitalのNisha Pippal氏らが調査を行った。International Journal of Psychiatry in Clinical Practice誌オンライン版2021年10月29日号の報告。  18~50歳の性別を問わない統合失調症患者60例を対象に、12週間の研究を実施した。LAI抗精神病薬と経口抗精神病薬を、それぞれ30例に投与した。ベースライン時および12週間時点で、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)およびインド国立精神衛生神経科学研究所(NIMHANS)の神経心理学的テスト・バッテリーを用いた評価を行った。テロメア長は、ベースライン時に推定した。

肺塞栓除外、YEARS基準+D-ダイマー年齢補正カットオフ値が有効/JAMA

 肺塞栓症の疑いで救急部門に搬送され、肺塞栓症除外基準(PERCルール)で除外できなかった患者について、YEARS基準とD-ダイマー年齢補正カットオフ値を組み合わせた診断戦略は、従来のD-ダイマー年齢補正カットオフ値のみによる診断戦略と比べて非劣性であることが、フランス・ソルボンヌ大学のYonathan Freund氏らが1,414例を対象に行った無作為化試験で示された。YEARS基準+D-ダイマー診断群では、胸部画像撮影実施率も約9%低減し、救急部門入院期間は短縮したという。これまで非コントロール試験では、YEARS基準とさまざまなD-ダイマーのカットオフ値を組み合わせた診断戦略が、安全に肺塞栓症を除外できることが示されていた。JAMA誌2021年12月7日号掲載の報告。

コロナワクチン3回目、7種のワクチンを比較/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン、ChAdOx1(AstraZeneca製、ChAd)またはBNT162b2(Pfizer-BioNtech製、BNT)の2回接種後の追加接種として、7種のCOVID-19ワクチン接種による免疫原性を調べたところ、ChAd 2回接種群では7種すべてで、BNT 2回接種群では6種で、抗体および中和反応の増加が認められた。英国・サウサンプトン大学病院のAlasdair P. S. Munro氏らが、2,878例を対象に行った第II相多施設共同無作為化試験「COV-BOOST試験」の結果を報告した。Lancet誌オンライン版12月2日号掲載の報告。