日本語でわかる最新の海外医学論文|page:26

帯状疱疹ワクチンは心臓病、認知症、死亡リスクの低減にも有効

 帯状疱疹ワクチンは中年や高齢者を厄介な発疹から守るだけではないようだ。新たな研究で、このワクチンは心臓病、認知症、死亡のリスクも低下させる可能性が示された。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部の内科医であるAli Dehghani氏らによるこの研究結果は、米国感染症学会年次総会(IDWeek 2025、10月19〜22日、米アトランタ)で発表された。  米疾病対策センター(CDC)によると、米国では3人に1人が帯状疱疹に罹患することから、現在、50歳以上の成人には帯状疱疹ワクチンの2回接種が推奨されている。帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)の既往歴がある人に発症するが、CDCは、ワクチン接種に当たり水痘罹患歴を確認する必要はないとしている。1980年以前に生まれた米国人の99%以上は水痘・帯状疱疹ウイルスに感染しているからだ。

新しい肥満の定義で米国人の7割近くが肥満に該当

 肥満の新しい定義により、肥満と見なされる米国人の数が劇的に増加する可能性があるようだ。長期健康調査に参加した30万人以上を対象にした研究で、BMIだけでなく、余分な体脂肪に関する追加の指標も考慮した新たな肥満の定義を適用すると、肥満の有病率が約40%から70%近くに上昇することが示された。米マサチューセッツ総合病院(MGH)の内分泌学者であるLindsay Fourman氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月15日掲載された。  Fourman氏は、「肥満が蔓延しているだろうと考えてはいたが、これほどとは予想していなかった。現在、成人人口の70%が過剰な脂肪を持っている可能性があると考えられるため、どの治療アプローチを優先すべきかについての理解を深める必要がある」とニュースリリースで述べている。

生化学的再発前立腺がん、エンザルタミド併用でOS改善(EMBARK)/NEJM

 去勢感受性前立腺がんで生化学的再発リスクが高く、従来型の画像検査で転移の証拠を認めない患者において、エンザルタミド+リュープロレリン併用療法はリュープロレリン単独療法と比較して、8年後の全生存期間(OS)を有意に延長し、新たな安全性シグナルの発現は認められなかった。また、エンザルタミド単独療法はリュープロレリン単独療法と比較して、OSに関する優越性は認められなかった。米国・START CarolinasのNeal D. Shore氏らが、第III相試験「EMBARK試験」の最終解析の結果を発表した。すでに、エンザルタミド+リュープロレリン併用療法およびエンザルタミド単独療法は、リュープロレリン単独療法と比較して、無転移生存期間(主要評価項目)を有意に延長し、前立腺特異抗原(PSA)進行、新たながん治療薬の使用開始、遠隔転移、症候性の病勢進行までの期間も有意に優れることが報告されている。今回は、主な副次評価項目であるOSと共に長期の安全性の最終解析の結果が公表された。NEJM誌オンライン版2025年10月19日号掲載の報告。

STEMIにおける非責任病変のPCI、即時vs.遅延/NEJM

 冠動脈の責任病変に対する初回経皮的冠動脈形成術(primary PCI)に成功した多枝病変を有するST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の非責任病変への対処として、瞬時拡張期冠内圧比(iFR)ガイド下の即時PCIは、心臓負荷MRIガイド下の遅延PCIと比較して3年後の全死因死亡、心筋梗塞の再発、心不全による入院の複合エンドポイントに関して優越性がないことが、オランダ・Radboud University Medical CenterのRobin Nijveldt氏らiMODERN Investigatorsによる国際的な臨床試験「iMODERN試験」の結果で示された。NEJM誌オンライン版2025年10月28日号掲載の報告。

抗うつ薬は体重を増やすか?(解説:岡村毅氏)

精神科の外来では、対話から患者さんの症状を探る。うつ病の診察で最も有効なのは「眠れてますか」「食べられてますか」であろう。頑張ったらよく眠れるとか、頑張ったら食欲が湧いてくるものではないので、かなり客観的に患者さんの状態を把握できる。意外かもしれないが、「どういったストレスがありますか」は、最重要ではない。意味がないとは言わないが、患者さんの理解や世界観に沿った長い物語が展開することが多く、まず知りたいことではない。さて、治療が進むと、患者さんたちは、よく眠り、よく食べるようになる。それは良いのだが、女性の患者さんからは「体重が増えて困ってます」と言われることがしばしばある。女性は体重をモニターしている人が多いからと思われる。そうなると、「抗うつ薬で体重は増えるのだろうか?」「どの抗うつ薬で増えるのだろうか?」と考えるのは自然だ。

アブレーション後は抗凝固薬をやめてよい?(解説:後藤信哉氏)

筆者は自ら長年非弁膜症性心房細動を患っているので、この論文は他人事ではない。心房細動だからといって、みんなが抗凝固薬を使う必要はない。現在の抗凝固薬では年間に3%程度の症例に重篤な出血イベントが起こることが、DOAC開発のランダム化比較試験にて示されている。長期間に抗凝固薬を使用すれば重篤な出血イベントリスクは身近な問題となる。筆者は20年程度、抗不整脈薬にて自らの心房細動をコントロールしてきた。しかし、いよいよ薬剤の調節が難しくなったのでアブレーションを受けた。アブレーション後に内膜が焼灼されるので、内膜の回復までは抗凝固薬が必要と考えた。

日本における認知症診断、アイトラッキング式認知機能評価の有用性はどの程度か

 認知機能低下および認知症に対する効率的なスクリーニングツールは、多くの臨床医や患者に求められている。大阪大学の鷹見 洋一氏らはこれまで、アイトラッキング技術を用いた新規認知機能評価ツールの認知症スクリーニングにおける有用性について報告している。今回、アイトラッキング式認知機能評価(ETCA)アプリのタブレット版を開発し、プログラミング医療機器(SaMD)としての臨床的有用性を検証するための臨床試験を実施し、その結果を報告した。GeroScience誌オンライン版2025年10月20日号の報告。

脳梗塞既往患者のLDL-C目標値、より厳格にすべき?/Circulation

 虚血性脳卒中の既往歴を持つ患者は、脳卒中再発およびその他の主要心血管イベント(MACE)リスクが高い。米国・ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のVictorien Monguillon氏らが、FOURIER試験のデータを用いて行った2次分析の結果、LDL-C値が40mg/dL未満まで低下すると、出血性脳卒中リスクを明らかに増加させることなく、脳卒中再発を含むMACEのリスクが低下することが示された。Circulation誌オンライン版2025年11月3日号掲載の報告より。

骨粗鬆症、予防には若年からの対策が重要/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーは、10月20日の世界骨粗鬆症デーに関連し、疾患啓発イベント「親子で話す骨のこと」を開催した。慶應義塾大学 整形外科 教授の中村 雅也氏、歌手の早見 優氏が登壇し、若年期からの骨粗鬆症予防の重要性を伝えた。  骨粗鬆症の患者数は毎年増加傾向にあり、2023年のデータで受診者数は138万人、うち9割以上を女性が占める1)。中村氏は「女性は閉経後から骨密度が急速に低下し、70代以降では骨折リスクが大幅に上昇する。患者数増加は高齢化に加え、疾患への意識向上による受診増加も要因だと考えられる」と解説した。さらに中村氏は、「骨粗鬆症は進行するまで自覚症状が乏しいため、注意を払われにくい。高齢になって転倒や骨折を経験してから骨の健康を考えるのでは遅い。閉経期を迎える40~50代から骨密度変化に関心を持ち、早期に介入することが重要」と強調した。

FLT3遺伝子変異陽性AMLに対する治療戦略/日本血液学会

 2025年10月10~12日に第87回日本血液学会学術集会が兵庫県にて開催された。10月10日、清井 仁氏(名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)を座長に行われた会長シンポジウムでは、「FLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病(AML)に対する治療戦略」と題して、FLT3変異陽性AMLの管理についてMark James Levis氏(米国・Johns Hopkins University)、AMLにおけるFLT3阻害薬耐性に関する理解の進展についてはCatherine Smith氏(米国・University of California, San Francisco)から講演が行われた。

短時間の運動“エクササイズ・スナック”で健康増進

 1回5分以内というごく短時間の運動を日常的に随時行うことで、健康状態が改善することが報告された。そのような短時間運動の繰り返しは、生活習慣として取り入れる際のハードルが低く、かつ継続率も高いことが示されたという。オビエド大学(スペイン)のHugo Olmedillas氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、詳細は「British Journal of Sports Medicine」に10月7日掲載された。  運動に関するガイドラインでは一般的に、1週間に300分の中強度の運動、または75~150分の高強度運動を行うことが推奨されている。しかし、著者らが研究背景として記している情報によると、成人では約3分の1、10代の若年者では5人中4人が、その推奨を満たしていないという。

肝疾患患者の「フレイル」、独立した予後因子としての意義

 慢性肝疾患(CLD)は、肝炎ウイルス感染や脂肪肝、アルコール性肝障害などが原因で肝機能が徐々に低下する疾患で、進行すると肝硬変や肝不全に至るリスクがある。今回、こうした患者におけるフレイルの臨床的意義を検討した日本の多機関共同後ろ向き観察研究で、フレイルが独立した予後不良因子であることが示された。研究は、岐阜大学医学部附属病院消化器内科の宇野女慎二氏、三輪貴生氏らによるもので、詳細は9月20日付けで「Hepatology Reseach」に掲載された。

糖尿病前症の生活改善、AI介入が人間に非劣性/JAMA

 糖尿病前症の過体重または肥満の成人に対する糖尿病予防プログラム(DPP)について、人工知能(AI)主導による介入は人間主導による介入に対して、体重減少、身体活動およびHbA1cに基づく複合アウトカムの達成に関して非劣性であることが示された。米国・Johns Hopkins University School of MedicineのNestoras Mathioudakis氏らAI-DPP Study Groupが、Johns Hopkins Hospital(メリーランド州ボルティモア)およびReading Hospital Tower Health(ペンシルベニア州レディング)の2施設で実施したプラグマティックな第III相無作為化非盲検非劣性試験の結果を報告した。糖尿病前症を有する人は多数に上るが、現状エビデンスに基づくライフスタイル介入は十分に活用されていない。JAMA誌オンライン版2025年10月27日号掲載の報告。

手術低リスク重症大動脈弁狭窄症、TAVR vs.手術の7年追跡結果/NEJM

 手術リスクの低い症候性重症大動脈弁狭窄症患者を対象に、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)と外科的大動脈弁置換術を比較した「PARTNER 3試験」の7年追跡解析の結果、死亡、脳卒中および再入院の複合エンドポイントを含む2つの主要エンドポイントについて、いずれも両群に有意差は認められなかったことが示された。米国・New York-Presbyterian HospitalのMartin B. Leon氏らが報告した。本試験の5年追跡解析でも同様の結果が得られていたが、臨床アウトカムと弁の耐久性に関して、より長期の評価が求められていた。NEJM誌オンライン版2025年10月27日号掲載の報告。

ベルイシグアトはHFrEF治療のファンタスティック・フォーに入れるか?―VICTOR試験(解説:原田和昌氏)

可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であるベルイシグアトは、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者で、かつ、直近の心不全増悪があった患者に対するVICTORIA試験で、心血管死ならびに心不全入院からなる複合エンドポイントを10%有意に減少させた。しかし、心血管死単独、心不全入院単独では有意差を認めなかった。そのため、心不全のガイドラインでは、十分なガイドライン推奨治療にもかかわらず心不全増悪を来したNYHA心機能分類II~IVのHFrEF患者の心血管死または心不全入院の抑制を目的として、ベルイシグアトの使用が認められている(クラスIIa)。

CLL治療のアンメットニーズを埋めるピルトブルチニブ

 慢性リンパ性白血病(CLL)の治療において、初回治療の共有結合型BTK阻害薬に無効になった場合、これまでBCL2阻害薬ベネトクラクスとリツキシマブの併用療法が唯一の選択肢であり、この併用療法が無効の場合の対応が課題であった。そのような中、2025年9月に非共有結合型BTK阻害薬ピルトブルチニブ(商品名:ジャイパーカ)が再発/難治性のCLLに承認され、3次治療はもちろん、2次治療で本剤とベネトクラクス+リツキシマブのどちらかを選択することが可能になった。今回の承認に際し、10月30日に日本新薬によるメディアセミナーが開催され、新潟薬科大学医療技術学部長の青木 定夫氏がCLL治療における最新知見とアンメットニーズ、新たな選択肢であるピルトブルチニブについて講演した。

抗うつ薬治療で効果不十分なうつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法の有用性

 うつ病患者の多くは、抗うつ薬治療による症状が50%未満しか軽減せず、症状改善には非定型抗精神病薬の補助療法が有益となる可能性がある。米国・大塚ファーマシューティカルD&CのShivani Kapadia氏らは、抗うつ薬治療に対する最小限(0%超~25%未満)および部分的な(25%~50%未満)治療反応を示したうつ病患者におけるブレクスピプラゾールの補助療法の有効性と安全性を検討するため、3つのランダム化比較試験のデータを統合し、事後解析を実施した。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌2025年10月1日号の報告。

中年期に食事を抜くと将来フレイルになる可能性/長寿研

 高齢者にとってフレイルによる運動機能の低下は、日常生活に重大な悪影響を及ぼす。こうしたフレイルに明確な原因はあるのであろうか。この課題に対し、国立長寿医療センターの西島 千陽氏らの研究グループは、認知症のない65歳以上の高齢者5,063例を対象に若年期(25~44歳)および中年期(45~64歳)の食事抜きの習慣と老年期のフレイルとの関連性を検討した。その結果、若年期、中年期の食事抜きは、高齢期のフレイルに関連することがわかった。この結果は、Journal of the American Medical Directors Association誌2025年10月9日号に掲載された。

慢性便秘の改善にキウイが有効

 キウイは健康的なおやつ以上のものかもしれない。英国栄養士会(BDA)が新たに作成した慢性便秘に関する包括的な食事ガイドラインによれば、キウイ、ライ麦パン、特定のサプリメントは、薬に頼らずに慢性便秘を管理するのに役立つ可能性があるという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)准教授で登録栄養士でもあるEirini Dimidi氏らが作成したこのガイドラインは、「Journal of Human Nutrition and Dietetics」に10月13日掲載された。  Dimidi氏は、「本ガイドラインは医薬品ではなく、食事療法による便秘治療に焦点を当てている」と説明する。同氏は、「便秘に悩む人が、科学的エビデンスに基づいた情報を得ることで、自分で症状をコントロールして、生活の質(QOL)に多大な影響を及ぼしている症状を改善することができると感じてくれることを願っている」と話している。

ホスピスでよく使われる薬は認知症患者の死亡リスクを増加させる

 ホスピスでケアを受けているアルツハイマー病および関連認知症(ADRD)患者に対するベンゾジアゼピン系薬剤(以下、ベンゾジアゼピン)および抗精神病薬の使用は、患者の死を早めている可能性のあることが新たな研究で示された。ホスピス入所後にベンゾジアゼピンまたは抗精神病薬の使用を開始したADRD患者では、使用していなかった患者と比べて180日以内に死亡するリスクがそれぞれ41%と16%高いことが示されたという。米ミシガン大学の老年精神科医であるLauren Gerlach氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に10月14日掲載された。