日本語でわかる最新の海外医学論文|page:208

ブレクスピプラゾール治療、統合失調症患者からどう評価されているか

 藤田医科大学の横井 里奈氏らは、ブレクスピプラゾールによる抗精神病薬治療に対する統合失調症患者の主観的評価を調査した。Fujita Medical Journal誌2023年8月号の報告。  本研究は、14週間のプロスペクティブ観察研究として実施した。対象は、2019年2月~2020年1月に本研究に参加した統合失調症患者19例。  主な結果は以下のとおり。 ・ブレクスピプラゾール治療開始時の患者の平均年齢は40.6±14.2歳、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアの平均値は4.6±1.2であった。

オンコマイン Dx、非小細胞肺がんHER2遺伝子変異に対するコンパニオン診断として保険適用/サーモフィッシャー

 サーモフィッシャーは2023年8月29日、次世代シーケンシング(NGS)技術を用いたコンパニオン診断システム「オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステム」に関し、非小細胞肺がんを対象としたHER2遺伝子変異に対するトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)の治療適応判定の補助に対して、保険適用されたことを発表した。

血尿診断で内科医も知っておきたい4つのこと―血尿診断ガイドライン改訂

 『血尿診断ガイドライン』が10年ぶりに改訂された。改訂第3版となる本ガイドラインは、各専門医はもちろんのこと、一般内科医や研修医にもわかりやすいように原因疾患診断のための手順を詳細な「血尿診断アルゴリズム」として提示した。また、コロナ禍での作成ということもあり、最終章では「新型コロナワクチンと血尿」について触れている。今回、本ガイドライン改訂委員会の事務局を務めた小路 直氏(東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学)に、内科医が血尿時の問診や専門医への紹介を行ううえで注意すべきポイントなどを聞いた。

新型コロナEG.5.1、伝播力と免疫回避能が増強/東大医科研

 現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株は、アジアや欧州、北米を中心に、オミクロン株EG.5系統(エリス)の感染が急増し、主流となっている。XBB系統(XBB.1.9.2)の子孫株であるEG.5系統は、世界保健機関(WHO)により、XBB.1.5、XBB.1.16と共に注目すべき変異株(VOI)に分類されている。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、EG.5系統のEG.5.1のウイルス学的特徴を解析したところ、XBB.1.5に比べて1.2倍高い伝播力を示し、BBの中和抗体に対して1.4倍高い抵抗性を示したことを、調査により明らかにした。本結果はThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月11日号に掲載された。

食事の質は片頭痛にも影響

 イラン・Isfahan University of Medical SciencesのArghavan Balali氏らは、食事の質と片頭痛との関連性について、評価を行った。その結果、食事の質の改善は、片頭痛の頻度、重症度、関連する問題などの片頭痛アウトカムの改善と関連している可能性が示唆された。Nutritional Neuroscience誌オンライン版2023年8月5日号の報告。  20~50歳の片頭痛患者262例を対象に、横断的研究を実施した。食事の質の評価には、Healthy Eating Index 2015(HEI-2015)およびAlternative Healthy Eating Index 2010(AHEI-2010)を用いた。食事の摂取量の評価には、168項目の食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いた。

発作性AFのアブレーション、パルスフィールドvs.クライオ/高周波バルーン/NEJM

 発作性心房細動のカテーテル治療において、パルスフィールドアブレーション(PFA)は従来のサーマルアブレーション(高周波またはクライオバルーンアブレーション)に対して、1年時点の治療成功および重篤な有害事象に関して非劣性であることが示された。米国・マウントサイナイ医科大学のVivek Y. Reddy氏らが、無作為化単盲検非劣性試験「ADVENT試験」の結果を報告した。カテーテルによる肺静脈隔離術は、発作性心房細動の有効な治療法である。

分岐部病変のPCI、OCTガイドvs.血管造影ガイド/NEJM

 複雑な冠動脈分岐部病変を有する患者では、光干渉断層撮影(OCT)ガイド下経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は血管造影ガイド下PCIと比較して、2年時点の主要有害心血管イベント(MACE)の発生率が低いことを、デンマーク・オーフス大学病院のNiels R. Holm氏らが、欧州の38施設で実施された多施設共同無作為化非盲検試験「European Trial on Optical Coherence Tomography Optimized Bifurcation Event Reduction(OCTOBER)試験」の結果、報告した。OCTガイド下PCIは、血管造影ガイド下PCIと比較してより良好な臨床アウトカムに関連することが知られているが、冠動脈分岐部を含む病変に対するPCIにおいても同様の結果が得られるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号掲載の報告。

EGFR変異陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法 vs.オシメルチニブ(FLAURA2)/WCLC2023

 変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、オシメルチニブと化学療法の併用は、オシメルチニブ単独と比較して、統計学的に有意な無増悪生存期間(PFS)の延長を示した。  世界肺癌学会(WCLC2023)で、米国・ダナ・ファーバーがん研究所の Pasi A. Janne氏らが発表した、進行期NSCLCにおけるオシメルチニブと化学療法の併用を評価する第III相FLAURA2試験の結果である。

自閉スペクトラム症と統合失調症の精神症状の比較

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、明らかな精神症状を発現する傾向があり、これらの症状は、統合失調症患者でみられる症状と類似している。獨協医科大学のMomoka Yamada氏らは、ASD、統合失調症、非精神疾患の初診患者における精神症状の違いについて、調査を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年8月21日号の報告。  初診患者のデータは、2019年6月~2021年5月の獨協医科大学病院精神科の診療記録よりレトロスペクティブに収集した。分析には、精神症状の簡易評価ツールであるPRIME Screen-Revised(PS-R)の評価データを有する254例を含めた。すべての精神科診断には、DSM-V診断基準が用いられていた。

AF伴う末期心不全、カテーテルアブレーションは?/NEJM

 心房細動を伴う末期心不全患者において、カテーテルアブレーション+薬物療法は薬物療法単独に比べ、あらゆる原因による死亡、左心補助人工心臓(LVAD)の植え込み、緊急心臓移植の複合イベント発生の可能性を低下することが、ドイツ・ルール大学ボーフムのChristian Sohns氏らによる無作為化比較試験の結果で示された。これまで同患者においてカテーテルアブレーションが果たす役割は不明であった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号掲載の報告。

家庭料理をターゲットに地域介入、減塩・降圧に効果/BMJ

 家庭内の調理人と家族をターゲットとしたコミュニティベースの減塩教育やモニタリングが、食塩摂取量および血圧の低下に有効であったことを、中国・疾病予防管理センターのXiaochang Zhang氏らが報告した。中国6省6都市、60コミュニティの788家族を対象に行ったクラスター無作為化比較試験の結果で、著者は、「こうした介入は、食塩の主な摂取源が依然として家庭料理である中国および他国で、広く用いることができるだろう」と述べている。中国の食塩摂取量は推奨制限量の2倍を超えており、摂取が主に加工食品からの西欧諸国とは異なり、中国では76%が家庭料理に由来していることが報告されていたが、これまで家庭料理をターゲットとした介入の無作為化試験によるエビデンスはなかった。BMJ誌2023年8月24日号掲載の報告。

経口GLP-1受容体作動薬の画期的な開発への期待(解説:安孫子亜津子氏)

現在使用されているGLP-1受容体作動薬はペプチド製剤で、注射薬が主体であり、2型糖尿病の治療として使用されている。とくに、週に1回の注射製剤はその簡便性と有効性から使用患者が増加している。2021年には世界初の経口GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドが登場し、さらにその使用者層が広がった。ただし、経口セマグルチドは空腹状態の胃から吸収される必要があるため、その内服方法に制約があり、適切な内服ができない場合には効果が減弱する。このたび、新規経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬であるorforglipronが開発され、第II相臨床試験の結果がLancet誌に発表された。本試験の対象は、18歳以上、BMIが23以上の2型糖尿病患者で、4ヵ国45施設で実施された。プラセボ群、デュラグルチド1.5mg群と、orforglipronは3mg、12mg、24mg、36mg、45mg(1日1回投与)各群に無作為に割り付けられ、36mgと45mgは、それぞれ2つの異なる用量漸増レジメンが試された。

モデルナのXBB.1.5対応コロナワクチン、追加免疫として承認/厚労省

 厚生労働省は9月12日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株対応ワクチンの一部変更について承認したことを発表した。今回の承認で、モデルナの「スパイクバックス筋注」にオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む1価ワクチンが追加された。2023年7月7日に製造販売承認事項一部変更申請されていたもので、9月20日以降の秋開始接種に使用される。本ワクチンは、世界で急速に拡大し新たな懸念となっているEG.5(エリス)やFL 1.5.1、BA.2.86(ピロラ)といった変異に対しても強固なヒト免疫応答を示している。

睡眠の質を高めるため、多くの医師がしていることは?/1,000人アンケート

 2024年4月から医師の働き方改革の新制度がスタートするが、長時間労働に端を発する医師の過労問題は改善されていないのが現状である。そのような中、睡眠は健康管理の重要カテゴリーとして医学界を筆頭にさまざまな業界で注目されているが、長時間労働者の象徴とも言える医師は果たして睡眠時間を確保できているのだろうか―。そこで、ケアネットでは多忙を極める医師の睡眠時間の実態を調査するために「睡眠状況、睡眠への意識について」のアンケートを実施。回答結果を診療科別、年代別、病床数別に抽出した。

若者の摂食障害や境界性パーソナリティ障害の特徴やリスク因子

 境界性パーソナリティ障害(BPD)と摂食障害は、併発リスクが高いが、両疾患に共通する症状の経過と関連するリスクについては、よくわかっていない。英国・ウォーリック大学のKirsty S. Lee氏らは、若者の地域サンプルにおける症状のジョイントトラジェクトリー、時間的優先順位、リスク因子、人口寄与割合(PAF)について、発達精神病理学的および心理社会学的観点より調査を行った。その結果、若者の摂食障害とBPDの一時性、リスク、スクリーニング、治療に関連するいくつかの新規かつ臨床的に関連性のある所見が特定された。Development and Psychopathology誌オンライン版2023年8月17日号の報告。

セマグルチドが肥満HFpEF患者の症状軽減、減量効果も/NEJM

 左室駆出率(LVEF)が保たれた心不全(HFpEF)を呈する肥満の患者において、GLP-1受容体作動薬セマグルチドはプラセボと比較して、症状と身体的制限を軽減するとともに、運動機能を改善し、減量効果をもたらすことが、米国・ミズーリ大学カンザスシティ校のMikhail N. Kosiborod氏らが実施した「STEP-HFpEF試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年8月25日号で発表された。  STEP-HFpEF試験は、日本を含む13ヵ国96施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年3月~2022年3月の期間に患者の登録を行った(Novo Nordiskの助成を受けた)。

高齢COVID-19患者の退院後の死亡および再入院のリスク(解説:小金丸博氏)

今回、65歳以上の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の退院後の長期にわたる転帰を調査した米国の後ろ向きコホート研究の結果が、BMJ誌2023年8月9日号に報告された。高齢者におけるCOVID-19の急性期症状や短期的な転帰についてはよく研究されているが、長期的な転帰については十分判明していなかった。本研究ではインフルエンザの退院患者を対照群として選択し比較した。その結果、COVID-19患者の退院後の全死因死亡リスクは30日時点で10.9%、90日時点で15.5%、180日時点で19.1%であり、インフルエンザ患者と比較して高率だった。再入院のリスクは30日時点で16.0%、90日時点で24.1%でありインフルエンザ患者より高率だったが、180日時点では30.6%で同等だった。再入院は心肺機能の問題で入院することが多く、再入院時の初期診断としては敗血症(セプシス)、心不全、肺炎の順に多く認めた。

健康維持に必要な1日の最小歩数は?~メタ解析

 1日の歩数と全死因死亡および心血管疾患(CVD)の発症との関連を調べた結果、3,000歩弱という少ない歩数であっても有意にそれらのリスクが低減していたことを、オランダ・ラドバウド大学医療センターのNiels A. Stens氏らが明らかにした。Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2023年9月6日号の報告。  健康の維持・改善のためにウオーキングなどの有酸素運動が勧められることが多いが、最小および至適な1日の歩数は依然として不明である。そこで、研究グループは一般集団における歩数と健康アウトカムとの関連を評価するためにメタ解析を行った。MEDLINEとEMBASEをデータベース開設から2022年10月まで検索し、歩数計や加速度計などで客観的に測定された1日の歩数と、全死因死亡またはCVDの発症を評価した成人が対象の縦断研究を特定した。解析には一般化最小二乗法とランダム効果モデルが用いられた。

コロナ後遺症2年追跡、入院例は依然死亡リスク高い

 コロナ罹患後症状(コロナ後遺症、long COVID)に関するエビデンスは、これまでそのほとんどが感染後1年内のものだった。感染流行から時間が経過し、2年間の追跡データが発表された。米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのBenjamin Bowe氏らによる本研究は、Nature Medicine誌オンライン版2023年8月21日号に掲載された。  研究者らは米国退役軍人データベースから13万8,818例の感染群と598万5,227例の非感染の対照群からなるコホートを2年間追跡し、死亡と事前に規定した80の急性期後遺症のリスクを推定した。感染群は、急性期における入院の有無でさらに分析した。

中等症~重症アトピー性皮膚炎、トラロキヌマブは高齢者にも有用

 65歳以上の中等症~重症アトピー性皮膚炎患者において、トラロキヌマブの忍容性および有効性は良好であることが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoseph F. Merola氏らが、第III相無作為化プラセボ対照試験「ECZTRA試験(1、2、3)」の事後解析により明らかにした。アトピー性皮膚炎を有する高齢者には、併存疾患やポリファーマシー、感染症(帯状疱疹など)のリスクが高いなど、特有の治療課題が存在するが、臨床試験のデータは限られていた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年8月23日号掲載の報告。