日本語でわかる最新の海外医学論文|page:207

転移のある膵がん1次治療、NALIRIFOXがOS・PFS改善(NAPOLI-3)/Lancet

 米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のZev A. Wainberg氏らは、欧州、北米、南米、アジア、オーストラリアの18ヵ国187施設で実施した無作為化非盲検第III相試験「NAPOLI 3試験」の結果、転移のある膵管腺がん(mPDAC)の1次治療としてNALIRIFOX(ナノリポソーム型イリノテカン+フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン)はnab-パクリタキセル+ゲムシタビンと比較し、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを報告した。膵管腺がんは依然として、生命予後が最も不良の悪性腫瘍の1つであり、治療選択肢はほとんどないとされている。Lancet誌オンライン版2023年9月11日号掲載の報告。

急性期脳梗塞で血管内治療後の急性期血圧管理、厳格vs.標準(OPTIMAL-BP)/JAMA

 主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中患者で血管内血栓除去術(EVT)により再灌流に成功した後、血圧上昇がみられる患者において、24時間の集中的な血圧管理(収縮期血圧の目標140mmHg未満)は従来の血圧管理(同140~180mmHg)と比較し、3ヵ月時点の機能的自立の達成割合が低いことを、韓国・延世大学のHyo Suk Nam氏らが多施設共同無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Outcome in Patients Treated With Intra-Arterial Thrombectomy-Optimal Blood Pressure Control:OPTIMAL-BP試験」の結果、報告した。急性虚血性脳卒中患者におけるEVTによる再灌流成功後の最適な血圧管理は、不明であった。著者は、「EVTを受けた急性期虚血性脳卒中患者において、再灌流成功後24時間の強化降圧療法は避けるべきである」と述べている。JAMA誌2023年9月5日号掲載の報告。

コロナ医療費、公費支援を10月から縮小/厚労省

 厚生労働省は9月15日付の事務連絡にて、新型コロナウイルス感染症の10月以降の医療提供体制の移行および公費支援の具体的内容を公表した。2023年5月8日に新型コロナは5類感染症に変更となり、9月末までを目途として特例措置の見直しが行われてきた。これまでの見直しを踏まえ、冬の感染拡大に対応しつつ、通常の医療提供体制への段階的な移行を進めるため、2023年10月~2024年3月を引き続き移行期間として定め、10月以降の取り扱いがまとめられた。

がん遺伝子パネル検査、もっと多く、もっと早く/イルミナ

 イルミナは2023年8月31日に、都内でプレスセミナー「がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査の現状と課題」を開催した。演者からは、がん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング[CGP]検査)のさらなる活用と、早期適用についての要望が発せられた。  同社メディカルアフェアーズ本部長である猪又 兵衛氏は、2023年5月に同社が一般成人1,000人を対象に行った「がんゲノム医療に対する意識調査」の結果を紹介した。

POTENT試験の探索的解析結果、monarchEの適格基準でも検討

 第III相POTENT試験では、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性乳がんにおける術後ホルモン療法へのS-1の上乗せ効果が示された。今回、同試験のリスク分類別の探索的解析結果を京都大学の高田 正泰氏らがBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月7日号に報告した。  POTENT試験の対象は、StageI~IIIBのER陽性HER2陰性乳がん患者。S-1併用群(S-1[1日2回経口、3週ごと]+標準的ホルモン療法)と標準的ホルモン療法群に無作為に割り付けられた。

スマホゲームで慢性期統合失調症患者の認知機能が改善

 中国・安徽医科大学のShengya Shi氏らは、慢性期統合失調症患者の認知機能改善に対するビデオゲームの有効性を調査し、認知機能に対するビデオゲームのバイオマーカーを評価するため、予備的研究を行った。その結果、ビデオゲーム介入は、慢性期統合失調症患者の認知機能を改善することが示唆され、血清BDNFレベルがこの効果を予測するバイオマーカーである可能性を報告した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2023年8月18日号の報告。

コロナブースター接種、インフルワクチン同時接種の影響は?

 新型コロナウイルス感染症ワクチンのブースター接種と季節性インフルエンザワクチンの同時接種の有効性を調査した前向きコホート研究の結果、コロナワクチン単独接種群と比較して、コロナ+インフルワクチン同時接種群では抗スパイクIgG抗体価は低い傾向にあったものの統計学的な有意差はなく、副反応リスクも同程度であったことを、イスラエル・Sheba Medical CenterのTal Gonen氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年9月5日号掲載の報告。

生殖年齢女性はNSAIDでVTEリスク増、ホルモン避妊薬併用でさらに増/BMJ

 生殖年齢15~49歳の女性において、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用は静脈血栓塞栓症(VTE)と正の関連性があることが示された。また、NSAID非使用時と比較した使用時のイベント数は、低リスク/リスクなしのホルモン避妊薬併用時と比べて、高/中リスクのホルモン避妊薬の併用時に有意に増加したことも示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のAmani Meaidi氏らが、同国在住の女性約203万人を対象に行った全国コホート試験の結果で、著者は「NSAIDとホルモン避妊薬の両者の使用が必要な女性には、適切なアドバイスが必要である」と述べている。BMJ誌2023年9月6日号掲載の報告。

急性脳梗塞、血管内治療後の積極降圧は有益か?(BEST-II)/JAMA

 急性虚血性脳卒中の患者において、血管内治療成功後の収縮期血圧(SBP)目標値について、140mmHg未満や160mmHg未満の設定は、180mmHg以下の設定と比較して、事前規定の無益性は示されなかった。一方で、将来的に大規模試験で比較した場合に、低SBP目標値が高SBP目標値より優越性を示す確率は低い可能性も示唆されたという。米国・シンシナティ大学のEva A. Mistry氏らが、無作為化試験「BEST-II試験」の結果を報告した。急性虚血性脳卒中への血管内治療成功後の中程度のSBP降圧の影響は、明らかになっていなかった。JAMA誌2023年9月5日号掲載の報告。

日本におけるSNS上のがん情報、4割超が誤情報

 SNSの普及により、患者はがん情報に容易にアクセスできるようになった。しかし、患者の意思決定に悪影響を与えかねない誤情報や有害情報も大量に発信されている。日本のSNSにおけるがん情報はどの程度信頼できるものなのか。これについて調べた名古屋市立大学病院 乳腺外科の呉山 菜梨氏らによる研究結果がJMIR formative research誌オンライン版2023年9月6日号に掲載された。  研究者らは、Twitter(現:X)上で2022年8~9月に投稿された、日本語の「がん」という言葉を含むツイートを抽出した。

緑内障ほか眼科疾患と認知症リスク~メタ解析

 一般的な眼科疾患と認知症との関係を調査するため、中国・Shenzhen Qianhai Shekou Free Trade Zone HospitalのJiayi Feng氏らは、コホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、眼科疾患は、すべての原因による認知症やアルツハイマー病のリスク増加と関連している可能性が示唆された。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2023年7月29日号の報告。  対象は、眼科疾患を有する患者。2022年8月25日までに公表された文献をPubMed、EMBASE、Web of Scienceなどのオンラインデータベースより、システマティックに検索した。緑内障、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、白内障とすべての原因による認知症、アルツハイマー病、血管性認知症との関連を評価したコホート研究をメタ解析に含めた。ランダム効果モデルを用いてプールし、相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。不均一性の評価には、I2統計を用いた。サブグループ分析および感度分析を実施した。

慢性便秘症ガイドライン改訂、非専門医向けに診療フローチャート

 慢性便秘症は、2010年代にルビプロストン(商品名:アミティーザ)、リナクロチド(同:リンゼス)、エロビキシバット(同:グーフィス)、ポリエチレングリコール(PEG)製剤(同:モビコール)、ラクツロース(同:ラグノス)といった新たな治療薬が開発されている。このように、治療の進歩とエビデンスの蓄積が進む慢性便秘症について、約6年ぶりにガイドラインが改訂され、『便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症』が2023年7月に発刊された。そこで、本ガイドラインの作成委員長を務める伊原 栄吉氏(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学)に改訂のポイントを聞いた。

バルーン拡張型弁によるTAVR再施行は有効か/Lancet

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)が不成功に終わった患者に対するバルーン拡張型弁を用いたTAVRの再施行は、初回TAVRにおける機能不全の治療に有効で、手技に伴う合併症が少なく、死亡や脳卒中の割合は、臨床プロファイルと予測リスクが類似し、nativeな大動脈弁狭窄に対してTAVRを施行した場合と同程度であることが、米国・シーダーズ・サイナイ医療センターのRaj R. Makkar氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年8月31日号で報告された。

非心房細動での心房高頻度エピソード、抗凝固薬は勧められず/NEJM

 植込み型心臓デバイスによって検出された心房高頻度エピソード(atrial high-rate episodes:AHRE)は心房性不整脈を示唆しており、心房細動と類似の病態だが、発現はまれで持続時間が短い。ドイツ・Atrial Fibrillation Network(AFNET)のPaulus Kirchhof氏らは「NOAH-AFNET 6試験」において、心房細動(通常の心電図検査で検出されるもの)のない患者におけるAHREの発現が、抗凝固薬の投与開始を正当化するかを検討した。その結果、直接経口抗凝固薬エドキサバンによる抗凝固療法はプラセボと比較して、心血管死、脳卒中、全身性塞栓症の複合の発生率を減少させず、全死因死亡または大出血の複合の発生率が有意に高いことを明らかにした。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2023年8月25日号に掲載された。

高齢者の多枝冠動脈疾患を伴う急性心筋梗塞の冠動脈完全血行再建の有用性は?(解説:青木二郎氏)

多枝冠動脈疾患を伴う急性心筋梗塞の冠動脈血行再建の責任病変以外の病変に対して、血行再建を行い、完全血行再建を目指すかについては、多くの無作為化比較試験が以前より行われてきた。PRAMI、DANAMI-3-PRIMULTI、COMPARE-ACUTE、COMPLETEといった試験では、非責任病変の有意狭窄病変にも血行再建を行うことにより、完全血行再建を行うほうが責任病変のみを治療するよりも、臨床イベントの発生が少なく望ましいと報告されてきた。しかし、今までの臨床試験では4,041例を登録したCOMPLETE試験でも平均年齢は62歳であり、高齢者でも同様の結果が得られるのかに重きを置いた臨床研究はなかった。今回のFIRE試験では、75歳以上の高齢者でも同様に完全血行再建を行うほうが、予後がいいことが初めて報告された。  FIRE試験では注目すべき点が他にもある。まず初めに、今までの臨床試験はSTEMIを主に対象としておりNSTEMIのエビデンスは乏しかったが、FIRE試験ではNSTEMI患者が約65%と半分以上登録された。サブ解析ではNSTEMI群のほうがSTEMI群より、完全血行再建を行ったほうがより臨床結果が良く、NSTEMI・STEMIに関係なく完全血行再建が望ましいと考えられる。  次に、非責任病変の評価法についても今までいろいろな議論がなされてきた。FLOWER-MI試験では、非責任病変の血管造影の狭窄度の評価(50%以上)と冠血流予備量比(FFR)0.8以下とで比較したが、臨床的な有意差が出なかった。FIRE試験は、非責任病変の評価に血管造影だけではなく、FFRに加えて安時指標(resting index)や血管造影結果から血流予備能を計測するQFRも用いられた初めての無作為化試験であることも注目される。急性期のFFRやresting indexは慢性期と異なるという報告も散見される。今後、非責任病変の評価に何が最適なのかを評価するために、5,100例を登録目標とした大規模無作為化試験であるCOMPLETE-2試験の登録が行われており、結果が待たれている。  最後に、完全血行再建をするほうが望ましいが、いつ非責任病変の血行再建を行ったらいいか、という問題もいまだ解決されていない。同時に治療したほうがいいのか、退院前なのか、退院後なのか? FIRE試験では同時治療が約60%であった。BIOVASC試験では同時が望ましいという結果であったが、今後のさらなる臨床試験の解析が待たれている。

オンコタイプDXの結果を乳がん治療でどう活用するか

 「オンコタイプDX 乳がん再発スコアプログラム」が、9月1日付で保険収載された。これを受けて9月6日、エグザクトサイエンスは「患者さん一人ひとりが納得のいく治療法を~シェアードディシジョンメイキングの時代へ~」と題したプレスセミナーを開催。坂東 裕子氏(筑波大学医学医療系 乳腺内分泌外科)らが登壇し、乳がん治療におけるオンコタイプDXの位置付けやシェアードディシジョンメイキングの重要性について解説・議論が行われた。

うつ病や不安症における人生の目的が果たす役割

 人生の目的は、自身の活動に関しての意味と目的の感覚、そして人生には意味があるという全体的な感覚により構成されている。オーストラリア・ニューイングランド大学のIan D. Boreham氏らは、人生の目的とうつ病や不安症との関連を、包括的に評価した。その結果、人生の目的レベルが高いほど、うつ病や不安症レベルが低いことが報告された。Journal of Clinical Psychology誌オンライン版2023年8月12日号の報告。  人生の目的とうつ病や不安症との関連を調査するため、メタ解析を実施した。メタ解析には、99の研究、6万6,468例を含めた。

HER2変異NSCLC承認のT-DXd、第II相試験結果(DESTINY-Lung02)/WCLC2023

 第一三共は2023年8月23日、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が、本邦において「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表している。本承認は国際共同第II相臨床試験(DESTINY-Lung02)の結果に基づくものであるが、その詳細が世界肺癌学会(WCLC2023)において、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のPasi A. Janne氏らにより発表された。なお、本発表の結果は、2023年9月11日にJournal of Clinical Oncology誌オンライン版へ同時掲載された。

脳梗塞、血管内治療可能な施設で血栓溶解療法は必要か/Lancet

 大血管前方循環脳卒中に対する血管内治療での静脈内血栓溶解療法の意義を検討したオランダ・アムステルダム大学のCharles B. Majoie氏らは、血管内治療センターに直接入院した患者において、血管内治療単独が血管内治療+静脈内血栓溶解療法に対し非劣性であることを立証できなかったと報告した。血管内治療前の静脈内血栓溶解療法が推奨されているが、その意義は血管内治療が可能な施設に直接入院した患者では疑問視されていた。既存の6つの無作為化試験では、2試験で血管内治療単独の非劣性が示されているが、4試験では統計学的確証は得られておらず、研究グループは今回、この6試験の参加者データを用いてメタ解析を行った。Lancet誌オンライン版2023年8月25日号掲載の報告。

コルヒチン、心臓以外の胸部手術で心房細動を予防せず/Lancet

 主要な非心臓胸部手術を受けた患者において、コルヒチンは臨床的に重大な周術期心房細動(AF)および非心臓術後の心筋障害(MINS)の発生を有意に低下しないばかりか、ほとんどは良性だが非感染症性下痢のリスクを増大することが示された。カナダ・Population Health Research InstituteのDavid Conen氏らが、コルヒチンの周術期AF予防について検証した国際無作為化試験「COP-AF試験」の結果を報告した。炎症性バイオマーカー高値は、周術期AFおよびMINSリスク増大と関連することが知られている。これらの合併症の発生を抗炎症薬のコルヒチンが抑制する可能性が示唆されていた。Lancet誌オンライン版2023年8月25日号掲載の報告。