日本語でわかる最新の海外医学論文|page:210

第一三共のコロナワクチン、XBB.1.5対応を一変承認申請、2価は第III相で主要評価項目達成

 第一三共は9月6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する同社が開発中の2価(起源株/オミクロン株BA.4-5)mRNAワクチン「DS-5670」について、追加免疫を対象とした国内での第III相臨床試験で、主要評価項目を達成したことを発表した。また、翌7日付のプレスリリースにて、DS-5670の12歳以上の追加免疫に対するオミクロン株XBB.1.5系統対応の1価mRNAワクチンについて、日本における製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったことも発表した。DS-5670については、「SARS-CoV-2による感染症の予防」の適応で、追加免疫を対象に起源株1価ワクチンとして2023年8月に製造販売承認を取得している。

各固形がんにおけるHER2低発現の割合は/Ann Oncol

 新たに定義されたカテゴリーであるHER2低発現(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+)は、多くの固形がんで認められることが明らかになった。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのBurak Uzunparmak氏らによるAnnals of Oncology誌オンライン版2023年8月22日号掲載の報告より。  本研究では、進行または転移を有する固形がん患者4,701例を対象に、IHC法によるHER2発現状態を評価した。また乳房と胃/食道の原発および転移腫瘍のペアサンプルにおいて、IHC法およびISH法によるHER2発現状態を評価した。

医師によるコロナのデマ情報、どう拡散された?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中、ソーシャルメディア(SNS)上で、ワクチン、治療法、マスクなどに関する誤った医療情報が広く拡散されたことが社会問題となった。このような誤情報の拡散には、一部の医師も関わっていたことが知られている。COVID-19の誤情報について、情報の種類や、利用されたオンラインプラットフォーム、誤情報を発信した医師の特徴を明らかにするために、米国・マサチューセッツ大学のSahana Sule氏らの研究チームが調査を行った。JAMA Network Open誌2023年8月15日号に掲載の報告。

摂食障害に対する精神薬理学的介入~メタ解析

 神経性やせ症(AN)、神経性過食症(BN)、過食性障害(BED)といった、主な摂食障害の精神薬理学に関連する体重変化および感情の精神病理学的アウトカムを評価するため、イタリア・University of Naples Federico IIのMichele Fornaro氏らは、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、摂食障害ごとに薬剤の有効性が異なることが確認された。著者は、今後、体重以外のさまざまな精神病理学的および心臓代謝系のアウトカムを記録する研究、とくに確立された心理療法の介入を検証する研究が求められる、としている。Journal of Affective Disorders誌2023年10月1日号の報告。

OCTガイド下PCI、標的血管不全を低減せず/NEJM

 複雑な冠動脈病変などに対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)について、光干渉断層撮影(OCT)ガイド下の施行は血管造影ガイド下の施行と比較し、最小ステント面積は大きかったが、2年時点での標的血管不全が発生した患者の割合については両群間で差はみられなかった。米国・Cardiovascular Research FoundationのZiad A Ali氏らが、国際多施設共同にて2,487例を対象に行った前向き無作為化単盲検試験の結果を報告した。OCTガイド下でPCIを施行した後の臨床アウトカムに関するデータは、血管造影ガイド下のPCIと比べて限定的だった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号の報告。

心筋梗塞による心原性ショック、VA-ECMO vs.薬剤単独/Lancet

 梗塞関連心原性ショックの患者において、静脈動脈-体外式膜型人工肺(Venoarterial extracorporeal membrane oxygenation:VA-ECMO)は薬物療法単独と比較して30日死亡率が低下せず、重大出血および血管合併症を増加することが、ドイツ・Institut fur HerzinfarktforschungのUwe Zeymer氏らによるメタ解析の結果で示された。VA-ECMOをめぐっては、無作為化試験による確たるエビデンスが不足しているにもかかわらず、心原性ショックの患者への使用が増加傾向にある。先行研究の3試験では、生存ベネフィットの検出力が不十分であった。今回示されたメタ解析の結果を踏まえて著者は、「梗塞関連心原性ショックの患者にVA-ECMOを適応するのか、慎重に検討すべきであることが確認された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年8月25日号掲載の報告。

ER+/HER2-乳がん、Ki-67と21遺伝子再発スコアの関連

 エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)乳がんにおいて、21遺伝子再発スコア(RS)高値とKi-67高値はどちらも予後不良因子であるが、これらのバイオマーカーによる違いが指摘されている。今回、韓国・Hallym UniversityのJanghee Lee氏らは、ER+/HER2-乳がん患者におけるKi-67とRSとの関連、Ki-67と無再発生存期間(RFS)との関連を調べた。その結果、Ki-67とRSに中等度の相関が観察され、RSの低い患者においてKi-67高発現がsecondary endocrine resistanceリスク上昇と関連していた。JAMA Network Open誌2023年8月30日号に掲載。

医師のSNS利用、診療に関する情報収集に使っているのは?/1,000人アンケート

 パソコンやスマートフォンの電源を入れて初めに起動するアプリについて、最近では、メールではなくFacebookやX(旧:Twitter)などのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)からという人も多い。私たちの生活に浸透したSNSについて、医師はどのツールを、どのように使っているのか、会員医師1,000人にアンケート調査を行った。アンケートは、8月11日にCareNet.comのWEBアンケートシステムで全年代、全診療科に対して実施した。また、2019年にも同様のアンケートを実施していることから、今回の結果と比較した。

リアルワールドにおける統合失調症ケアの実際と改善ポイント

 統合失調症患者の臨床転帰を改善するためには、日常診療における治療パターンを理解することが重要なステップとなる。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、リアルワールドにおける抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の長期マネジメントを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者に対するケアにおいて、今後優先すべき事項が浮き彫りとなった。とくに、50歳以上の患者に対する代謝系疾患の予防や18~34歳の患者に対する自殺予防など、特定の集団にさらに焦点を当てる必要がある。また、抗精神病薬の治療継続率は依然として低く、精神科入院率も高いままであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。

CVD2次予防でのアスピリン、低所得国では不十分/JAMA

 アスピリンは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(CVD)のイベントを減少させ、CVD既往例の死亡率を改善する効果的で安価な選択肢とされる。米国・セントルイス・ワシントン大学のSang Gune K. Yoo氏らは、CVDの2次予防においてアスピリンは世界的に十分に使用されておらず、とくに低所得国での使用が少ないことを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号で報告された。  研究グループは、51の低・中・高所得国で2013~20年に実施された全国的な健康調査から収集した個々の参加者のデータを用いて横断研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。

喫煙者/喫煙既往歴者でスパイロメトリー測定値がCOPD基準を満たさないTEPS群の中で呼吸器症状有群(FEV1/FVC<0.7かつCAT≧10)は臨床の視点からCOPD重症化予備群として対応すべき?―(解説:島田俊夫氏)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)と喫煙に関する研究は、これまで数多くの研究が行われている。しかしながら、スパイロメトリー測定値がCOPDの定義を満たさない対象者に関する研究はほとんどなく、治療法も確立されていない。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のWilliam McKleroy氏らによる多施設共同長期観察試験(SPIROMICS II試験)の結果が、JAMA誌2023年8月1日号に掲載された。対象者はSPIROMICS I試験登録後5~7年に、対面受診を1回実施。呼吸器症状はCOPD Assessment Test(CAT、スコア範囲:0~40重症ほど高値)で評価した。

記憶力に不安がある高齢者の運転はいかに危険か/長寿研ほか

 日本の高齢ドライバーを対象とした横断研究の結果、客観的認知障害の有無にかかわらず、主観的な記憶力の心配(subjective memory concerns、以下「SMC」)や、SMCに加えて歩行速度低下を有する運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome、以下「MCR」)を有する人では自動車衝突事故やヒヤリハットを経験する確率が有意に高かったことを、国立長寿医療研究センターの栗田 智史氏らの研究グループが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。  先行研究によって、MCRは処理速度や実行機能の低下などとの関連が報告されているが、MCRと自動車衝突事故との関連性に関する検討は十分ではない。簡便なMCR評価を行うことで衝突事故リスクに早期に気付くことができる可能性があるため、研究グループはMCR評価と衝突事故やヒヤリハットとの関連を検討した。

双極性障害患者の原因別死亡率~メタ解析

 双極性障害は、早期死亡と関連しているといわれている。双極性障害患者におけるすべての原因による死亡および特定の死亡リスクに関しては、十分明らかになっておらず、これらを理解し、双極性障害患者の死亡を予防する戦略を考えるうえでも、さらに多くの研究が必要とされる。ブラジル・サンパウロ大学医学部のTais Boeira Biazus氏らは、一般集団と比較した双極性障害患者の死亡リスクを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、双極性障害患者の早期死亡リスクは、自殺や不自然死によるものだけでなく、身体合併症とも関連していることが示唆された。著者らは、双極性障害患者の早期死亡率を改善するためには、自殺予防だけでなく、身体的な健康増進や身体合併症の予防も重要であるとしている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月25日号の報告。

検診で寿命が延びるがんは?

 一般的に行われているがん検診により、寿命が延びるのかどうかは不明である。今回、ノルウェー・オスロ大学のMichael Bretthauer氏らが、乳がん検診のマンモグラフィ、大腸がん検診の大腸内視鏡検査・S状結腸鏡検査・便潜血検査、肺がん検診の肺CT検査、前立腺がん検診のPSA検査の6種類の検診について、検診を受けた群と受けなかった群で全生存率と推定寿命を比較した無作為化試験をメタ解析した結果、寿命が有意に増加したのはS状結腸鏡検査による大腸がん検診のみであったことがわかった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2023年8月28日号に掲載。

ASCVDリスク評価、タンパク質リスクスコアが有望/JAMA

 アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスク評価において、プロテオミクスに基づくタンパク質リスクスコア(protein risk score)は、1次および2次予防集団の双方で優れた予測能を示し、1次予防集団で臨床的リスク因子にタンパク質リスクスコアと多遺伝子リスクスコアを加えると、統計学的に有意ではあるもののわずかな改善が得られたことが、アイスランド・deCODE genetics/AmgenのHannes Helgason氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号に掲載された。

医師の役割が重要な高齢者の肺炎予防、ワクチンとマスクの徹底を/MSD

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数の増加や、インフルエンザの流行の継続が報告されているが、高齢者にとっては肺炎球菌による肺炎の予防も重要となる。そこで、これら3つの予防に関する啓発を目的として、MSDは2023年8月28日にメディアセミナーを実施した。国立病院機構東京病院 感染症科部長の永井 英明氏が「人生100年時代、いま改めて65歳以上が注意しておきたい肺炎対策-Life course immunizationの中での高齢者ワクチン戦略-」をテーマとして、高齢者の肺炎の特徴や原因、予防方法などについて解説した。

統合失調症患者の抗精神病薬治療反応を予測する最適な期間は

 治療開始後、早い段階で治療反応が不十分な統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期的な治療反応を予測することは難しい。中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのYujun Long氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期的な治療反応を適切に予測するための、治療初期段階におけるノンレスポンダーのカットオフ予測値を明らかにするため、多施設共同オープンラベルランダム化比較試験を実施した。その結果、治療開始2週間後の症状改善効果は、統合失調症患者に対する抗精神病薬のノンレスポンダーを予測可能であり、さらに正確に予測するには、ベースライン時の重症度や治療薬剤の違いを考慮する必要性があるとし、最初の2週間の後、さらに2週間の治療反応を評価することで抗精神病薬の変更が必要であるかを判断可能であるとしている。BMC Medicine誌2023年7月19日号の報告。

病院機能評価「医療安全」への対策強化で「カルテレビュー」導入へ

 最近では紙カルテ(診療録)から電子カルテへの普及が進み、病院のみならずクリニックでの導入も多くみられるようになった。また、国が推進するマイナンバーカードによる健康保険証には、個人のカルテ情報の搭載も予定され、いつでも、どこでも自分のカルテが読める時代が期待されている。そんなカルテは、医療事故などが発生した場合、真っ先に調査が行われる患者や患者遺族、医療機関などにとって事故と結果の因果関係を証明する大切な資料となるが、カルテの中身の記載については個々の医師の判断に任されている。

化療後の閉経前乳がんへのタモキシフェン+卵巣機能抑制、長期結果は(ASTRRA)

 手術および術前または術後化学療法後の閉経前エストロゲン受容体(ER)陽性乳がん患者に対する、タモキシフェン(TAM)+卵巣機能抑制(OFS)併用の有効性を検討するASTRRA試験について、追跡期間中央値8年の長期解析結果を、韓国・Asan Medical CenterのSoo Yeon Baek氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年8月22日号に報告した。  ASTRRA試験では、閉経前または化学療法後に卵巣機能が回復した45歳未満の女性1,483例が、5年間のTAM単独投与(TAM群)と、5年間のTAM投与と2年間のOFS併用(TAM+OFS群)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。

薬物+EC-ICバイパス術、ICA・MCA閉塞患者の脳卒中を抑制するか/JAMA

 内頸動脈(ICA)または中大脳動脈(MCA)にアテローム性動脈硬化症による閉塞を有し、患部に血行動態不全を認める症候性の患者においては、薬物療法(内科的治療)に頭蓋外-頭蓋内(EC-IC)バイパス術を併用しても、内科的治療単独と比較して脳卒中または死亡の発生を抑制しないことが、中国・National Center for Neurological DisordersのYan Ma氏らが実施した「CMOSS試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号に掲載された。  CMOSS試験は、中国の13施設が参加した非盲検(アウトカム評価者盲検)無作為化試験であり、2013年6月~2018年3月に患者を登録した(中国国家衛生健康委員会の助成を受けた)。