日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1110

無作為化試験に関するプロトコルと発表論文の不一致

無作為化試験の結果および結論は、統計解析方法の選択と、サンプルサイズの決め方に影響を受ける。したがってそれらがあらかじめ決められているか、データ検証後に変えられたのかは、示された試験結果が偏った都合のよいものなのかを知り得ることが可能という点で重要である。メイヨー・クリニック(アメリカ)のAn-Wen Chan氏らは、1994~1995年にコペンハーゲン市とフレデリクスバーグ市の科学倫理委員会の承認を受け発表された70の無作為化試験(発表時期中央値1999年)について、試験プロトコル論文と発表論文との比較でどれぐらい相違が生じているか調査を行った。BMJ誌2008年12月13日号(オンライン版2008年12月4日号)より。

拒絶反応のない人工気管の移植に成功

生物工学的に免疫応答を起こさないようにデザインされた人工気管の移植に、バルセロナ市(スペイン)のHospital Clinic一般胸部外科のPaolo Macchiarini氏らが成功した。移植片は、組織細胞と主要組織適合複合体(MHC)抗原を除去したドナーの気管基質にレシピエントの幹細胞由来細胞を導入して作製された。Lancet誌2008年12月13日号(オンライン版2008年11月19日号)に掲載された本論文は、同誌の“Paper of the Year 2008”の候補にも選定されている(http://www.lexisnexis.com/dpartner/process.asp?qs_id=3885)。

3種混合ワクチン接種の公式報告は実態反映せず

小児に対する3種混合ワクチンの実施状況は、実態調査に基づくデータと各国の公式報告の間に乖離が見られ、目的志向型かつ業績志向型のグローバル イニシアチブが過大な公式報告を助長している可能性があることが、ワシントン大学(アメリカ)健康基準/評価研究所のStephen S Lim氏らが行った系統的な解析で明らかとなった。Lancet誌2008年12月13日号掲載の報告。

適切な抗マラリア薬併用療法はどれか?

抗マラリア薬併用療法はこれまで「クロロキン」をベースとしたものだったが、耐性が進み、「アーテミシニン」をベースとした新たな治療戦略がWHOによって推進されている。しかし、有効な対策には地域性を考慮した治療戦略が欠かせない。複数種のマラリア原虫が存在し年間を通して深刻な感染が見られるインドネシア・パプアニューギニアでは、どのような抗マラリア薬併用療法が適切か? 西オーストラリア大学医学・薬理学校のHarin A. Karunajeewa氏らは、従来療法とアーテミシニン系合剤ベースの3つの療法、計4つの療法に関するオープンラベル無作為化並行群間比較試験を行い、適切な治療戦略を検討した。NEJM誌2008年12月11日号(オンライン版2008年12月8日号)より。

4人に1人が「オンライン詐欺」の被害に心当たり

シマンテックが日本国内の個人ユーザー1,000名を対象に実施した「オンライン詐欺に関する実態調査」結果によると、ネットショッピングやサービスの利用率は84.4%と、日常的に利用されていることがわかった。その一方で、全回答者の4人に1人が実際にオンライン詐欺に遭った、もしくはだまされて個人情報を聞きだされてしまったなどの経験が「ある」もしくは「ひょっとしたら何かの被害に遭っているかもしれない」と回答していた。

薬物過剰摂取による死者の90%以上がオピオイド使用

米国ウエストバージニア州で薬物乱用が原因で死亡した人のうち、90%以上がオピオイドを使用、その4割超が処方箋なしで不正入手していたことが明らかになった。これは、米国疾病予防管理センター(CDC)のAron J. Hall氏らの調べによるもので、JAMA誌2008年12月10日号で発表した。同州は1999~2004年にかけて、薬物過剰摂取による死亡率が全米で最も増加した地域だった。

末期心不全への補助人工心臓治療、1年生存率は3~5割程度

米国の末期心不全に対する補助人工心臓治療は、1年生存率が3~5割程度に留まることがわかった。米Duke大学のAdrian F. Hernandez氏らが、メディケア(米国の公的高齢者向け医療保険)の被保険者データを調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2008年11月26日号で発表した。米国では2003年から、末期心不全に対し、補助人工心臓治療をメディケアの支払い対象にしている。

欧州医薬品庁がプラスグレルに承認推薦の見解

第一三共株式会社と米イーライリリー・アンド・カンパニーは19日、欧州医薬品庁(EMEA:European medicines Evaluation Agency)の医薬品委員会(CHMP:Committee for Medicinal Products for Human Use)が、経皮的冠動脈形成術(PCI:percutaneous coronary intervention)を受けている急性冠症候群(ACS:acute coro-nary syndrome)患者におけるアテローム血栓性イベント軽減の治療薬として、プラスグレルの承認を推薦する肯定的な見解を示したと発表した。

妊娠予定の女性はカフェイン摂取を100mg/日未満に

カフェイン摂取は、妊娠中に消費される最も多い生体異物である。300mg/日以上のカフェイン摂取が低体重児出産のリスクを増大することが明らかにされているが、わずか141mg/日以上でもリスクを増大とするとの知見もあり、英国「食品中の化学物質に関する委員会(Committee on Toxicity of Chemicals in Food)」が2001年に発表した論文レビューに基づく見解でも、300mg/日以上が自然流産と関連している可能性があるとしながらエビデンスは不明としていた。加えて近年、摂取量よりもカフェイン代謝の変動が胎児発育遅延と密接に関わるとの研究報告も寄せられている。それら知見を踏まえ本論は、リード大学とレスター大学の2つのティーチングホスピタルを基点に参加者を募り行われた大規模な前向き観察研究「CARE Study」の結果で、BMJ誌2008年12月6日号(オンライン版2008年11月3日号)にて報告された。

公衆衛生施策における大腸がんスクリーニングの精度:フィンランド

便潜血検査を取り入れた大腸がんスクリーニングは死亡率を低下させることは、4つの無作為化スクリーニング試験で明らかになっている。しかし、公衆衛生施策において死亡率低下の効果があることが常に示されているわけではない。フィンランドがん登録機関のNea Malila氏らの研究グループは、2004年にフィンランドで開始された、大腸がんの無作為化スクリーニング・プログラムについて検証した。BMJ誌2008年12月6日号(オンライン版2008年11月3日号)より。

非心臓手術周術期のβ遮断薬投与は不要?

米国心臓学会/米国心臓協会(ACC/AHA)のガイドラインの推奨にもかかわらず、非心臓手術時の周術期における心血管死や脳卒中の予防を目的としたβ遮断薬の使用を支持する確固たるエビデンスはないことが、米Brigham and Women's病院循環器科のSripal Bangalore氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。Lancet誌2008年12月6日号(オンライン版2008年11月11日号)掲載の報告。