神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:10

レカネマブの有効性・安全性、アジア人の特徴は?~Clarity AD試験

 アルツハイマー病(AD)は高齢者における主要な健康問題の1つであり、アジア地域においては、急速な高齢化によりADの有病率が上昇すると予想されている。早期AD治療薬であるレカネマブ(商品名:レケンビ)は、複数の臨床試験において忍容性が良好であると示されているものの、アミロイド関連画像異常(ARIA)およびインフュージョンリアクション(IRR)の発現率が高いことが懸念されている1,2)。シンガポール国立大学のChristopher Chen氏らは、Clarity AD試験で無作為に割り付けられた1,795例のうち、アジア地域に居住する294例についてサブグループ解析を行った。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2025年5月号掲載の報告。

次々と承認される抗アミロイド抗体、有効性に違いはあるか?

 近年、アルツハイマー病に対する抗アミロイド抗体の承認が加速している。しかし、抗アミロイド抗体の臨床的意義やリスク/ベネフィットプロファイルは、依然として明らかになっていない。他の治療法ではなく、抗アミロイド抗体を選択する根拠を確立するためにも、アルツハイマー病の異質性および抗アミロイド抗体の長期臨床データの不足は、課題である。スペイン・University of Castilla-La ManchaのDanko Jeremic氏らは、抗アミロイド抗体の有効性および安全性を評価し、比較するため、従来のペアワイズメタ解析ならびに第II相および第III相臨床試験の結果を用いたベイジアンネットワークメタ解析を実施した。また、本研究の目的を達成するため、研究者や臨床医が疾患進行や有害事象のベースラインリスクに関するさまざまな事前選択や仮定を組み込み、これらの治療法の相対的および絶対的なリスク/ベネフィットをリアルタイムに評価できる無料のWebアプリケーションAlzMeta.app 2.0を開発した。Journal of Medical Internet Research誌2025年4月7日号の報告。

アルツハイマー病の父親を持つ人はタウの蓄積リスクが高い?

 アルツハイマー病(AD)の父親を持つ人は、自身にもADに関連する脳の変化が生じる可能性があるようだ。新たな研究で、ADの父親を持つ人ではADの母親を持つ人に比べて、脳内でのタウと呼ばれるタンパク質の拡散がより広範囲であることが確認された。脳内のタウのもつれは進行したADの特徴の一つである。マギル大学(カナダ)のSylvia Villeneuve氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に4月9日掲載された。  研究グループによると、過去の研究では、女性の性別や母親のAD歴がADリスクの上昇と関連することが示唆されているが、性別やADを発症した親の性別とADのバイオマーカーとの関連は明らかになっていない。

脳卒中、認知症、老年期うつ病は17個のリスク因子を共有

 脳卒中、認知症、老年期うつ病は17個のリスク因子を共有しており、これらの因子のうちの一つでも改善すれば、3種類の疾患全てのリスクが低下する可能性のあることが、新たな研究で示唆された。米マサチューセッツ総合病院(MGH)脳ケアラボのSanjula Singh氏らによるこの研究結果は、「Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry」に4月3日掲載された。  研究グループによると、脳卒中の少なくとも60%、認知症の40%、老年期うつ病の35%は修正可能なリスク因子に起因しており、これらの疾患が共通の病態生理学的背景を持つため、リスク因子にも多くの重複が見られるという。

適量のアルコール摂取でもアミロイドβは蓄積する?

 WHOの声明によると、人間の健康に対する安全なアルコール摂取量は存在しないとされている。しかし、アルコール摂取とアルツハイマー病の病態との関連は、依然としてよくわかっていない。ギリシャ・Harokopio UniversityのArchontoula Drouka氏らは、アルコール摂取の頻度やパターンが神経変性バイオマーカーの予測と関連するかを明らかにするため、非認知症の中年成人コホートによる検討を行った。European Journal of Nutrition誌2025年4月1日号の報告。  対象は、ALBION試験より組み入れられた非認知症者195人。アルコール摂取頻度のサブグループ(非飲酒者、時々飲酒者、軽度〜中等度の飲酒者)、地中海食型アルコール食生活パターン順守のサブグループにおける脳脊髄液(CFS)中のアルツハイマー病バイオマーカー(タウ[Tau]、リン酸化タウ[P Tau]、アミロイドβ[Aβ])を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を実施した。分析では、非飲酒者を基準カテゴリーとして使用した。

NSAIDsの長期使用で認知症リスク12%低下

 新たな研究によると、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期使用は認知症リスクを12%低下させる関連性が認められたが、短期および中期使用では保護効果は認められなかったという。オランダ・エラスムスMC大学医療センターのIlse Vom Hofe氏らによる本研究の結果はJournal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年3月4日号に掲載された。  研究者は、前向きの地域ベース研究であるロッテルダム研究から、ベースライン時に認知症のない1万1,745例を分析対象とした。NSAIDs使用データは薬局調剤記録から抽出され、参加者は非使用、短期使用(1ヵ月未満)、中期使用(1~24ヵ月)、長期使用(24ヵ月超)の4グループに分類され、定期的に認知症のスクリーニングを受けた。年齢、性別、生活習慣要因、合併症、併用薬などを調整因子として解析した。

黄斑部の厚さが術後せん妄リスクの評価に有効か

 「目は心の窓」と言われるが、目は術後せん妄リスクのある高齢患者を見つけるのにも役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。網膜の中心部にある黄斑部が厚い高齢者は、術後せん妄の発症リスクが約60%高いことが示されたという。同済大学(中国)医学部教授のYuan Shen氏らによるこの研究の詳細は、「General Psychiatry」に4月1日掲載された。Shen氏は、「本研究結果は、黄斑部の厚みを非侵襲的なマーカーとして、麻酔および手術後にせん妄を発症しやすい高齢者を特定できる可能性があることを示唆している」と話している。

帯状疱疹生ワクチン、認知症を予防か/JAMA

 米国・スタンフォード大学のMichael Pomirchy氏らは、オーストラリアにおける準実験的研究の結果、帯状疱疹(HZ)ワクチンの接種が認知症のリスクを低下させる可能性があることを示した。オーストラリアでは、全国的なワクチン接種プログラムにおいて2016年11月1日から70~79歳を対象に弱毒HZ生ワクチンの無料接種を開始。同時点で1936年11月2日以降に生まれた人(2016年11月1日時点で80歳未満)が対象で、それ以前に生まれた人(80歳になっていた人)は対象外であったことから、著者らは、年齢がわずかに異なるだけで健康状態や行動は類似していると想定される集団を比較する準実験的研究の利点を活用し、HZワクチン接種の適格基準日である1936年11月2日の前後に生まれた人について解析した。結果を踏まえて著者は、「先行研究であるウェールズでの知見を裏付ける結果であり、認知症に対するHZワクチン接種の潜在的利益には因果関係がある可能性が高いエビデンスを提供するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年4月23日号掲載の報告。

教育レベルの高い人は脳卒中後に認知機能が急激に低下する?

 英語には、「The higher you fly, the harder you fall(高く飛べば飛ぶほど、落下も激しくなる)」という諺があるが、脳卒中後の後遺症についてもこれが当てはまる可能性があるようだ。大学以上の教育を受けた人は高校卒業(以下、高卒)未満の人に比べて、脳卒中後に実行機能の急激な低下に直面する可能性のあることが、新たな研究で示唆された。実行機能とは、目標を設定し、その達成に向けて計画を練り、問題に柔軟に対応しながら遂行する能力のことだ。米ミシガン大学医学部神経学教授のMellanie Springer氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に3月26日掲載された。

自宅でできる嗅覚テストが認知機能低下の検出に有効か

 認知症やアルツハイマー病の初期症状の有無を、自宅で実施可能な嗅覚テストにより判定できる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。認知症やアルツハイマー病の前兆である軽度認知障害(MCI)を発症した高齢者は、認知機能が正常な人に比べてこの嗅覚テストのスコアが低いことが示されたという。米マサチューセッツ総合病院(MGH)の神経科医であるMark Albers氏らによる研究で、詳細は「Scientific Reports」に3月24日掲載された。  Albers氏は、「われわれの目標は、自宅で実施できる費用対効果の高い非侵襲的な検査を開発して検証し、アルツハイマー病の研究と治療を前進させる基盤を築くことだった」とMGHのニュースリリースで述べた。同氏は、「認知障害の早期発見は、アルツハイマー病のリスクを有する人を特定し、記憶障害の症状が始まる何年も前に介入するのに役立つ可能性がある」と付け加えている。