腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

進行慢性疾患の高齢入院患者、緩和ケア相談は有益か?/JAMA

 進行した慢性疾患を有する高齢患者の入院時に、緩和ケア相談がデフォルトでオーダーされていても在院日数を短縮しなかったが、緩和ケア提供の増加や迅速化ならびに終末期ケアの一部のプロセスは改善した。米国・ペンシルベニア大学のKatherine R. Courtright氏らによる、プラグマティックなステップウェッジクラスター無作為化試験の結果が報告された。入院患者への緩和ケア提供の増加が優先課題となっているが、その有効性に関する大規模で実験的なエビデンスは不足していた。JAMA誌2024年1月16日号掲載の報告。

妊娠高血圧腎症予防のCa補充、低用量vs.高用量/NEJM

 妊娠中のカルシウム補充について、低用量(500mg/日)は高用量(1,500mg/日)に対し、妊娠高血圧腎症のリスクに関して非劣性を示したことが、インドとタンザニアでそれぞれ行われた無作為化試験の結果で示された。また、早産のリスクに関して、インドの試験では非劣性であったが、タンザニアの試験では同様の所見は示されなかったという。インド・St. John's Research InstituteのPratibha Dwarkanath氏らが報告した。世界保健機関(WHO)は、妊娠高血圧腎症のリスク軽減のため、食事からのカルシウム摂取量が少ない住民集団の妊婦に対して、1日1,500~2,000mgのカルシウムを3回に分けて補充するよう推奨している。しかし、服薬アドヒアランスへの懸念と複雑な投与計画に伴う高コストのプログラムのために、現状では高用量カルシウム補充を実施している国は数ヵ国にとどまるという。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。

米国透析施設の新たな支払いモデル、人種・経済格差の影響は?/JAMA

 米国のメディケア・メディケイドの運営主体Centers for Medicare & Medicaid Services (CMS)は2021年1月1日、米国内の透析施設の30%をランダムに選択し、在宅透析の利用、腎移植待機リストへの登録や移植の受領に基づき経済的インセンティブ(賞与もしくは罰金)を与える支払い方法「末期腎不全治療選択(ETC)モデル」を導入した。背景には、人種や社会経済的状況により、在宅透析導入や移植受領などに格差がみられたことがある。先行研究で、同モデル導入による在宅透析利用の増加の報告(全成人透析導入患者において)や変化なしという報告(66歳以上の従来メディケア受給者において)があるが、腎不全治療の公平性に対する影響については検討されていなかった。今回、米国・ブラウン大学のKalli G. Koukounas氏らは、透析施設を透析導入患者の社会的リスクで層別化し、ETCモデル導入初年度のパフォーマンススコアと罰金を評価した。JAMA誌2024年1月9日号掲載の報告。

アルドステロン合成酵素阻害薬vs.鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(解説:浦信行氏)

 アルドステロンは腎尿細管の鉱質コルチコイド受容体(MR)に作用して水・Na代謝を調節するが、その過剰は水・Na貯留を引き起こし、体液量増大を介して昇圧する。したがって、スピロノラクトンをはじめ、MR拮抗薬は降圧薬として用いられてきた。その一方で、降圧作用とは独立して、酸化ストレスの増加やMAPキナーゼの活性化を介して心臓や腎臓障害性に作用することが知られている。したがってMR拮抗薬は降圧薬であると同時に、臓器保護作用を期待して使用される。  アルドステロン合成酵素阻害薬も降圧薬(ジャーナル四天王「コントロール不良高血圧、アルドステロン合成阻害薬lorundrostatが有望/JAMA」2023年9月27日配信)として注目されているが、このたびはCKDに対して尿アルブミンを強力に減少させ、SGLT2阻害薬との併用でも相加的に効果を現すことから、CKD治療薬としての期待を伺わせる報告がなされた。この2種類の薬剤の差別化は可能であろうか。これまでのMR拮抗薬の研究ではMRのリガンドは鉱質コルチコイドのみならず、糖質コルチコイドもリガンドであるが、体内でコルチゾールを速やかに非活性のコルチゾンに代謝する11β-水酸化ステロイド脱水酵素が十分に作用している状態では糖質コルチコイドによる作用はごく限られる。しかし、漢方薬に含まれるグリチルリチンはこの酵素の阻害作用があるため、糖質コルチコイドのMRを介した作用が起こりうる。また、低分子量G蛋白のRac1は、肥満、高血糖、食塩過剰でMR受容体を活性化する。

新規アルドステロン合成酵素阻害薬、CKDでアルブミン尿を減少/Lancet

 過剰なアルドステロンは慢性腎臓病(CKD)の進行を加速するとされる。米国・ワシントン大学のKatherine R. Tuttle氏らASi in CKD groupは、基礎治療としてレニン・アンジオテンシン系阻害薬の投与を受けているCKD患者において、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンとの併用でアルドステロン合成酵素阻害薬BI 690517を使用すると、用量依存性にアルブミン尿を減少させ、予期せぬ安全性シグナルを発現せずにCKD治療に相加的な効果をもたらす可能性があることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年12月15日号で報告された。

高K血症の治療は心腎疾患患者のRAASi治療継続に寄与するか?/AZ

 アストラゼネカは2023年11月24日付のプレスリリースにて、リアルワールドエビデンス(RWE)の研究となるZORA多国間観察研究の結果を発表した。本結果は、2023年米国腎臓学会(ASN)で報告された。  世界中に、慢性腎臓病(CKD)患者は約8億4,000万人、心不全(HF)患者は6,400万人いるとされ、これらの患者における高カリウム血症発症リスクは2~3倍高いと推定されている。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬(RAASi)治療は、CKDの進行を遅らせ、心血管イベントを低減させるためにガイドラインで推奨されているが、高カリウム血症と診断されると、投与量が減らされる、あるいは中止されることがある。このことが患者の転帰に影響を与えることは示されており、RAASiの最大投与量で治療を受けている患者と比較して、漸減または中止されたCKDおよびHF患者の死亡率は約2倍であった。7月の同社の発表では、米国および日本の臨床現場において、高カリウム血症発症後にRAASi治療の中止が依然として行われていることが示されている。

IgA腎症の新たな治療薬sparsentanの長期臨床効果(解説:浦信行氏)

エンドセリン受容体・アンジオテンシン受容体デュアル拮抗薬のsparsentanは慢性腎臓病(CKD)治療薬として、すでにIgA腎症で二重盲検無作為化実薬対照第III相試験(PROTECT試験)において、1次エンドポイントとして36週時のsparsentan投与群の尿蛋白変化量が-49.8%と、イルベサルタン群の-15.1%に比較して有意な低下を示したことが報告され、その解説が2023年4月14日公開のジャーナル四天王に掲載されている(「IgA腎症での尿蛋白減少、sparsentan vs.イルベサルタン/Lancet」)。今回は2次エンドポイントとして、110週までの尿蛋白低減効果とeGFRのスロープを両群で比較した。

ワルファリン・DOAC、重大な副作用に「急性腎障害」追加/厚労省

経口抗凝固薬の添付文書について、2023年11月21日に厚生労働省が改訂を指示。国内で販売されている直接経口抗凝固薬(DOAC)4剤(アピキサバン、エドキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバン)とワルファリンカリウムの添付文書の「副作用」に重大な副作用として急性腎障害が追記された。  経口抗凝固薬の投与後に急性腎障害が現れることがある。本剤投与後の急性腎障害の中には、血尿や治療域を超えるINRを認めるもの、腎生検により尿細管内に赤血球円柱を多数認めるものが報告されている。

sparsentan、IgA腎症の蛋白尿を長期に低減/Lancet

 免疫グロブリンA(IgA)腎症の治療において、非免疫抑制性・単分子・エンドセリン受容体とアンジオテンシン受容体二重拮抗薬であるsparsentanはイルベサルタンと比較して、36週時に達成された蛋白尿の有意な減少を110週後も持続し、腎機能の維持に有効であることが、米国・オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのBrad H. Rovin氏らが実施した「PROTECT試験」の2年間の追跡調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年11月3日号で報告された。  PROTECT試験は、18ヵ国134施設が参加した二重盲検無作為化実薬対照第III相試験であり、2018年12月~2021年5月に患者の登録を行った(Travere Therapeuticsの助成を受けた)。

難治性ネフローゼ症候群を呈する巣状分節性糸球体硬化症の新たな治療薬sparsentanへの期待(解説:浦信行氏)

エンドセリン受容体・アンジオテンシン受容体デユアル拮抗薬のsparsentanは慢性腎臓病(CKD)治療薬として、すでにIgA腎症などで臨床試験が先行しており、一部には良好な効果が認められている。また、糖尿病性腎症ではエンドセリン受容体拮抗薬が良好な治療効果を示している。巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は治療抵抗性であり、治療の主体はステロイドであるが臨床的にはステロイド抵抗性で進行性であり、10年で約半数が腎死に至る。そのようなFSGSに対する治療効果をイルベサルタンと対比した成績が公表された。2年間にわたる二重盲検第III相試験で尿蛋白に関しては顕著な減少効果を認め、完全寛解率も倍以上の18.5%であったが、eGFRのスロープに有意差はないとの残念な結果であった。6週から108週までのeGFRのスロープは有意ではないものの、イルベサルタン群で-5.7であったのに対してsparsentan群で-4.8にとどまっていた。対象の詳細は不明だが、原発性FSGSに限っての検討ではどうなのか。また、両群のeGFRが、sparsentan群で63.3±28.6、イルベサルタン群で64.1±31.7であり、両群ともにeGFR60未満の症例が半数以上である。eGFRが保たれている群同士の比較ではどうであったかが今後の課題といえよう。