腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

豚由来の腎臓で健康に暮らす米国人女性

 遺伝子編集された豚からの腎臓移植を受けて、新たな人生を歩み始めた米国人の女性が、新しい臓器とともに1カ月以上健康に暮らしていることが報告された。  この女性はアラバマ州在住のTowana Looneyさん、53歳。Looneyさん自身の腎臓が後に腎不全まで進行する過程は、彼女の母親への“贈り物”から始まった。1999年、彼女は病気の母親のために、自分の腎臓の一つを提供したのだ。彼女の移植治療を行った米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン校の医師によると、Looneyさんはその後の妊娠時に血圧が急に高くなり、残っていた腎臓も機能不全に陥ったという。

CKDを有する高血圧患者にも厳格降圧は有益?

 SPRINT試験で認められた厳格降圧(収縮期血圧目標:120mmHg未満)および標準降圧(同:140mmHg未満)のリスク・ベネフィットが、慢性腎臓病(CKD)を有するSPRINT試験適格の高血圧患者にも適用できるかどうかを調査した結果、SPRINT試験と同様に厳格降圧による予後改善効果は認められたものの、重篤な有害事象も多かったことを、米国・スタンフォード大学のManjula Kurella Tamura氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年1月7日号掲載の報告。  SPRINT試験において、糖尿病または脳卒中の既往がなく、心血管イベントリスクが高い高血圧患者では、厳格降圧のほうが標準降圧よりも死亡や心血管イベントのリスクが低減した。その一方で、急性腎障害などの特定の有害事象が増加したことや、進行したCKD患者では厳格降圧による心血管系へのメリットが減弱する可能性があることも示唆されている。そこで研究グループは、SPRINT試験の結果が、実臨床におけるCKDを有する高血圧患者にも適用可能かどうかを評価するために比較有効性試験を実施した。

慢性疾患の増加は腎機能を低下させる

 高齢者における多疾患併存は腎機能低下と強く関連しており、慢性疾患の数が増えるほど腎機能の低下度も大きくなることが、新たな研究で明らかになった。研究論文の筆頭著者であるカロリンスカ研究所(スウェーデン)のGiorgi Beridze氏は、「われわれの研究結果は、高齢者の腎機能低下のリスクを評価する際に、慢性疾患の全体的な負担だけでなく、疾患間の複雑な相互作用も考慮した包括的な評価の重要性を強調するものだ」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of the American Geriatrics Society(JAGS)」に12月17日掲載された。

糖尿病と腎臓病の併発は心臓病発症を大幅に早める

 2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)は、ともに心臓病のリスク因子だが、両者が併存していると、心臓病発症が大幅に早まるとする研究結果が報告された。米ノースウェスタン大学および同ボストン大学のVaishnavi Krishnan氏らが、米国心臓協会(AHA)の科学セッション(AHA Scientific Sessions 2024、11月16~18日、シカゴ)で発表した。  Krishnan氏らの研究には、AHAが構築した心血管疾患(CVD)イベント予測ツール「Predicting Risk of cardiovascular disease EVENTs(PREVENT)」が用いられた。PREVENTは、2011~2020年の米国国民健康栄養調査のデータに基づき開発されたもので、糖尿病やCKD、または喫煙習慣の有無、降圧薬や脂質低下薬の服用などの情報を基に、向こう10年間のCVDイベントの発症リスクを予測できる。通常、リスクが7.5%以上の場合に「CVDハイリスク」状態と判定する。

高K血症治療薬patiromerが心不全治療を最適化-DIAMOND試験サブ解析

 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を含むレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬は高カリウム血症(以下、高K血症)を引き起こす可能性があるため、処方がためらわれる場合がある。今回、オーストラリア・Heart Research InstituteのAndrew J. S. Coats氏らは、高K血症治療薬patiromerがHFrEF(左室駆出率が低下した心不全)患者におけるRAAS阻害薬の目標用量の達成を容易にすることを明らかにした。さらに、RAAS阻害薬による治療以前に高K血症を認めた患者の場合でも、patiromerが血清K値を維持し、MRAの目標用量を達成するうえでより有益である可能性も示唆した。JACC:Heart Failure誌2024年12月号掲載の報告。

疾患の検出や発症予測、血液検査が一助に?

 定期健診で一般的に行われている血液検査の検体には、検査を受けた人の健康状態について現在医師が得ている情報よりも多くの情報が隠されているようだ。全血球計算(complete blood count;CBC)と呼ばれるルーチンで行われている血液検査が、心疾患や2型糖尿病、骨粗鬆症、腎疾患など数多くの疾患の検出や発症の予測に役立つ可能性のあることが新たな研究で示された。米マサチューセッツ総合病院の病理医であるJohn Higgins氏らによるこの研究は、「Nature」に12月11日掲載された。  CBCでは、全身を循環している血液中の赤血球、白血球、血小板数を測定する。Higgins氏は、「CBCは一般的な検査だ。われわれの研究では、CBCは完全に健康な人であっても個人差が大きく、より個別化されたプレシジョンメディシン(精密医療)のアプローチによって、その人の健康状態や疾患の実態をより詳細に把握できる可能性のあることが示された」と説明する。

糖尿病性腎症、コーヒーによるリスク減は摂取時間が重要

 糖尿病患者の食事内容、摂取タイミングに関する研究は多数あるが、コーヒー摂取量と摂取タイミングが糖尿病患者の慢性腎疾患(CKD)リスクと関連するかを検討した研究結果が報告された。中国・ハルビン医科大学のYiwei Tang氏らによる本研究は、Food Functon誌オンライン版2024年10月14日号に掲載された。  研究者らは、2003~18年のNHANES(全米国民健康栄養調査)から糖尿病患者8,564例を解析対象とした。24時間の食事調査を用いてコーヒーの摂取状況を評価し、摂取時間、または摂取の多い時間を4つの時間帯(1. 早朝から午前中[5:00~8:00]、2. 午前中から正午[8:00~12:00]、3. 正午から夕方[12:00~18:00]、4. 夕方から早朝[18:00~5:00])の4群に分類した。さらにコーヒー摂取量の多寡で3つに層別化した。CKDの定義は、eGFRが60mL/min/1.73m2未満、または尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が30mg/g以上とした。年齢、性別、BMI、生活習慣などの交絡因子を調整したロジスティック回帰モデルを用いて、コーヒー摂取量、摂取時間とCKDリスクの関連を評価した。

鉄剤処方や検査・問診のポイント~「鉄欠乏性貧血の診療指針」発刊

 貧血の7割を占めるといわれる鉄欠乏性貧血。これに関し『鉄欠乏性貧血の診療指針』が2024年7月に発刊された。これまでに「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」が2004年から2015年にわたり3回発刊されてきたが、近年では高用量の静注鉄剤をはじめとした新たな鉄剤が普及しつつあることから、鉄欠乏性貧血の診療の改訂が必要と判断され、このたび、タイトルを刷新して発刊に至った。そこで今回、診療指針作成のためのワーキンググループのメンバーである生田 克哉氏(北海道赤十字血液センター)に鉄欠乏性貧血を診断、治療するうえで知っておくべきポイントなどを聞いた。なお、本書は発刊1年後を目処に学会ウェブサイトへPDFとして掲載される予定だ。

SGLT2阻害薬やMR拮抗薬などで添文改訂指示/厚労省

 2024年12月17日、厚生労働省はSGLT2阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)などに対して、添付文書の改訂指示を発出した。  SGLT2阻害薬はこれまでにもケトアシドーシスに関連した注意喚起がなされていたが、投与中止後の尿中グルコース排泄およびケトアシドーシスの遷延に関連する症例が集積し、現行の注意喚起からは予測できない事象と結論付けられたことから、重要な基本的注意の項に「本剤を含むSGLT2阻害薬の投与中止後、血漿中半減期から予想されるより長く尿中グルコース排泄及びケトアシドーシスが持続した症例が報告されているため、必要に応じて尿糖を測定するなど観察を十分に行うこと」が新たに追記される。

国内高齢者の4人に1人、75歳以上では3人に1人がCKD

 日本人高齢者の4人に1人は慢性腎臓病(CKD)であり、75歳以上では3人に1人に上ることが明らかになった。広島大学医系科学研究科疫学・疾病制御学分野の福間真悟氏、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科学の小林亜理沙氏らが、全国約60万人の健診データを用いて推計した結果であり、詳細は「Clinical and Experimental Nephrology」に10月5日掲載された。  国内のCKD患者数は、2009年に行われた調査を基に「成人の約13%、約1330万人が該当する」とされている。しかしこの調査から15年たち、平均寿命の延伸、CKDリスクに関連のある糖尿病などの生活習慣病の有病率の変化により、CKD患者数も変化していると考えられる。特に腎機能は加齢とともに低下することから、高齢者の最新のCKD有病率を把握することが重要と考えられる。これらを背景として福間氏らは、全国規模の医療費請求データおよび健診データの商用データベース(DeSCヘルスケア株式会社)を用いた新たな解析を行った。