腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:1

全年齢で130/80mmHg未満を目標に、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』発刊/日本高血圧学会

 日本高血圧学会は『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(以下、JSH2025)を8月29日に発刊した。6年ぶりとなる今回の改訂にあたり、大屋 祐輔氏(琉球大学名誉教授/高血圧管理・治療ガイドライン2025作成委員長)と苅尾 七臣氏(自治医科大学循環器内科学部門 教授/日本高血圧学会 理事長)が降圧目標や治療薬の位置付けと選択方法などについて、7月25日に開催されたプレスセミナーで解説した。

65歳以上の高齢者、NSAIDsの腎機能への影響は?

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、疼痛管理に広く使用されているが、とくに高齢者において腎毒性のリスクが懸念される。NSAIDsと急性腎障害の関連が知られているが、長期使用が腎機能に与える影響については、これまで一貫した見解が得られていない。そこで、韓国・Samsung Medical CenterのJung-Sun Lim氏らの研究グループは、韓国の高齢者コホートを10年間追跡した大規模な研究により、NSAIDsの長期使用が腎機能に与える影響を検討した。その結果、NSAIDsの定期的な使用が高齢者の慢性腎臓病(CKD)発症リスクを高め、腎機能の低下を加速させたことが示された。本研究結果は、Drugs & Aging誌オンライン版2025年8月6日号に掲載された。

中等度~重度のCKD関連そう痒症、anrikefon vs.プラセボ/BMJ

 血液透析を受けている中等度~重度のそう痒症を有する患者において、新規末梢性κオピオイド受容体作動薬anrikefon(旧称HSK21542)は安全であることが確認され、かゆみの強度を顕著に軽減し、かゆみに関連する生活の質(QOL)を改善させたことが、中国・Southeast University School of MedicineのBi-Cheng Liu氏らAnrikefon-302 study collaborator groupによる、第III相の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果で示された。κオピオイド受容体作動薬は、中等度~重度の慢性腎臓病(CKD)関連そう痒症の有望な治療戦略とみなされている。anrikefonは、κオピオイド受容体への結合親和性を高める親水性の小ペプチドおよびスピロ環構造を有し、血液脳関門の通過は最小限となる。持続的な治療効果と中枢性のオピオイド副作用発現頻度の低さから、CKD関連そう痒症を有する患者の新たな治療選択肢として期待されていた。BMJ誌2025年8月19日号掲載の報告。

口の中の健康状態が生活習慣病リスクを高める可能性

 口の中の健康状態が良くないことと、高血糖や脂質異常症、腎機能低下など、さまざまな生活習慣病のリスクの高さとの関連性が報告された。藤田医科大学医学部歯科・口腔外科学講座の吉田光由氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Oral Rehabilitation」に4月17日掲載され、7月10日に同大学のサイト内にプレスリリースが掲載された。  この研究では、機能歯数(咀嚼に役立っている歯の数)や舌苔の付着レベルなどが、空腹時血糖値やHbA1c、血清脂質値などと関連していることが明らかになった。吉田氏はプレスリリースの中で、「われわれの研究結果は全体として、口腔機能の低下が生活習慣病のリスクとなり得ることを示唆している。よって良好な口腔の健康を維持することは、全身の健康を維持するための第一歩と考えられる」と述べている。

透析を要する腎不全患者、MRAは心血管死を予防するか/Lancet

 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、心不全および非重症慢性腎臓病の患者の心血管イベントを予防する可能性があるが、透析を要する腎不全患者への効果は明らかではない。カナダ・McMaster UniversityのLonnie Pyne氏らの研究チームは、この患者集団におけるMRAの有効性と安全性の評価を目的に、系統的レビューとメタ解析を実施。ステロイド型MRAは、透析を要する腎不全患者における心血管疾患による死亡にほとんど、あるいはまったく影響を及ぼさなかったことを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年8月23日号で報告された。

血液透析患者へのスピロノラクトン、心血管イベントを抑制するか/Lancet

 慢性血液透析を受けている腎不全患者は、一般集団と比較して心血管疾患による死亡リスクが10~20倍高いが、血液透析患者は通常、心血管アウトカムを評価する臨床試験から除外されるという。フランス・Association ALTIRのPatrick Rossignol氏らALCHEMIST study groupは、心血管イベントのリスクの高い血液透析患者において、ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬スピロノラクトンの有効性を評価する目的で、研究者主導の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照イベント主導型試験「ALCHEMIST試験」を実施。スピロノラクトンは主要心血管イベント(MACE)の発生を抑制しなかったことを示した。研究の詳細は、Lancet誌2025年8月16日号に掲載された。

スピロノラクトン、維持透析患者の心不全・心血管死を減少させるか/Lancet

 維持透析を受けている腎不全患者において、スピロノラクトン25mgの1日1回経口投与はプラセボと比較し、心血管死および心不全による入院の複合アウトカムを減少させなかった。カナダ・McMaster UniversityのMichael Walsh氏らが、12ヵ国143の透析プログラムで実施した医師主導の無作為化並行群間比較試験「ACHIEVE試験」の結果を報告した。維持透析を受けている腎不全患者は心血管疾患および死亡のリスクが大きいが、スピロノラクトンがこれらの患者において心不全および心血管死を減少させるかどうかは明らかになっていなかった。著者は、「本試験では、維持透析患者におけるスピロノラクトン導入の有益性は認められなかった。維持透析患者の心血管疾患と死亡を減少させるための、ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬に代わる選択肢について、さらなる研究が必要である」とまとめている。Lancet誌2025年8月16日号掲載の報告。

透析前の運動は透析中の運動と同様に心筋スタニングを抑制

 透析中の運動療法が血液透析誘発性心筋スタニングを軽減することが報告されているが、日常診療での実施には設備やスタッフ配置など多くの課題がある。今回、透析前の運動療法でも透析中の運動療法と同等の心保護効果があることが、フランス・Avignon UniversityのMatthieu Josse氏らによって明らかになった。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年8月12日号掲載の報告。  本研究は非盲検ランダム化クロスオーバー試験として実施され、末期腎不全患者25例を対象に、(1)運動療法を伴わない標準的な血液透析を実施(標準透析)、(2)血液透析中に運動療法を実施(透析中運動)、(3)運動療法を実施してから血液透析を開始(透析前運動)の3種類の介入をランダムな順序でそれぞれ実施した。2次元心エコー検査と全血粘度の測定は、透析開始直前と透析中負荷ピーク時に実施した。心血管血行動態は30分ごとにモニタリングした。

SGLT2阻害薬がCKD患者の入院リスクを総合的に低減

 SGLT2阻害薬が慢性腎臓病(CKD)の進行や心血管イベントを抑える効果はこれまでに報告されているが、あらゆる原因による予定外の入院リスクの低減効果については体系的に評価されていない。今回、大島 恵氏(オーストラリア・シドニー大学/金沢大学)らの研究により、SGLT2阻害薬は糖尿病の有無、腎機能やアルブミン尿の程度にかかわらず、CKD患者の予定外の入院リスクを低減したことが明らかになった。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年7月14日号掲載の報告。

Lp(a)による日本人のリスク層別化、現時点で明らかなこと/日本動脈硬化学会

 第57回日本動脈硬化学会総会・学術集会が7月5~6日につくば国際会議場にて開催された。本稿ではシンポジウム「新たな心血管リスク因子としてのLp(a)」における吉田 雅幸氏(東京科学大学先進倫理医科学分野 教授)の「今こそ問い直すLp(a):日本におけるRWDから見えるもの」と阿古 潤哉氏(北里大学医学部循環器内科学 教授)の「二次予防リスクとしてのLp(a)」にフォーカスし、Lp(a)の国内基準として有用な値、二次予防に対するLp(a)の重要性について紹介する。