腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:1

IgA腎症は0.5~1.0g/日の低レベル蛋白尿でも腎予後不良~メタ解析/慈恵医大

 IgA腎症における蛋白尿の臨床的意義を検討した系統的レビューおよびメタ解析の結果、0.5~1.0g/日の低レベル蛋白尿であっても腎予後不良と関連していたことを、東京慈恵会医科大学の山口 裕也氏らが明らかにした。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年12月12日号掲載の報告。  IgA腎症では、1.0g/日を超える顕性蛋白尿が腎予後不良と関連することが広く知られている。しかし近年のエビデンスでは、0.5~1.0g/日の低レベルの蛋白尿でも腎予後不良と関連することが示唆されている。そこで研究グループは、IgA腎症における低レベル蛋白尿と腎予後不良との関連を評価することを目的として、系統的レビューおよびメタ解析を実施した。

IgA腎症へのsibeprenlimabの治療は完全寛解が期待できるか?(解説:浦信行氏)

IgA腎症ではガラクトース欠損IgA1が産生され、これに対する自己抗体との複合体ができる。これが糸球体のメサンギウムに沈着し、炎症や補体の活性化、増殖反応の逸脱を引き起こし、腎障害を増悪させる。増殖誘導リガンド(a proliferation-inducing ligand:APRIL)はTNF-αのスーパーファミリーであり、これがIgA産生を含むB細胞由来の免疫反応を引き起こす。sibeprenlimabはAPRILの中和抗体であり、その活性を抑制する。sibeprenlimabを使用したIgA腎症の治療効果はすでに第II相のENVISION試験として報告されており、sibeprenlimab 8mg/kg 4週ごと静脈内投与12ヵ月で24時間尿蛋白/クレアチニン比は有効率62%と、プラセボ群の20%に比して有意に減少した。また、尿蛋白の臨床的寛解である300mg未満の割合も26.3%と良好な結果であった。しかし、ベースラインから12ヵ月後のeGFRの変化は良好な結果であったが、プラセボ群との有意差はなかった。

IgA腎症、sibeprenlimabは蛋白尿を有意に減少/NEJM

 IgA腎症患者において、sibeprenlimabはプラセボと比較して蛋白尿を有意に減少させたことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のVlado Perkovic氏らVISIONARY Trial Investigators Groupが行った、第III相多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「VISIONARY試験」の中間解析の結果で示された。IgA腎症の病態形成には、a proliferation-inducing ligand(APRIL)というサイトカインが深く関わると考えられている。sibeprenlimabはヒト化IgG2モノクローナル抗体で、APRILに選択的に結合して阻害する。第II相のENVISION試験では、sibeprenlimabの4週ごと12ヵ月間の静脈内投与により、蛋白尿の減少と推算糸球体濾過量(eGFR)の安定がみられ血清APRIL値の抑制に伴いガラクトース欠損IgA1値が低下した。安全性プロファイルは許容範囲内であった。NEJM誌オンライン版2025年11月8日号掲載の報告。

SGLT2阻害薬の腎保護作用:eGFR低下例・低アルブミン尿例でも新たな可能性/JAMA(解説:栗山哲氏)

SGLT2阻害薬は、2型糖尿病、糖尿病関連腎臓病(DKD)、慢性腎臓病(CKD)、心不全患者などにおいて心・腎アウトカムを改善する明確なエビデンスがある。しかし、腎保護作用に関し、従来、ステージ4 CKD(G4)や尿アルブミン排泄量の少ない患者での有効性は不明瞭であり、推奨度は低かった。この点に注目し、SGLT2阻害薬が腎アウトカムに与える「クラス効果(class effect)」を高精度に評価することを目的とし、オーストラリアのBrendon L. Neuen氏らは、SGLT2阻害薬の大規模臨床研究(ランダム化二重盲検プラセボ対照試験:RCT)を、SGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C:国際共同研究)として統合的にメタ解析した。

CKDへのSGLT2阻害薬、糖尿病・UACRを問わずアウトカム改善/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)患者におけるSGLT2阻害薬の効果については不確実性が存在し、欧米のガイドラインでは糖尿病の状態や尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に基づき推奨の強さが異なる。英国・オックスフォード大学のNatalie Staplin氏らSGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists’ Consortium(SMART-C)は、SGLT2阻害薬は糖尿病の有無やUACRの値にかかわらず、腎機能や入院、死亡のアウトカムに関して明確な絶対的便益(absolute benefit)を有するとメタ解析の結果を報告した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年11月7日号で発表された。

成人期発症の再発型ネフローゼ症候群に対する抗CD20抗体の治療効果(解説:浦信行氏)

成人におけるネフローゼ症候群の頻度は膜性腎症(MN)が多いが、微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)や巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)も少なくない。これらはステロイド療法に効果を示す一方で、頻回再発型ネフローゼ症候群(FRNS)やステロイド減量で再燃するステロイド依存性ネフローゼ症候群(SDNS)を呈することが多い。その結果、ステロイド使用期間が長期化し、骨脆弱性や感染症などの合併症を来しやすい。CD20はB細胞の表面に存在するタンパク質で、B細胞の活性化や増殖に関与する細胞表面マーカーである。この病態に対する治療的アプローチとして、タイプI抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブ(RTX)の治療効果が検討されるようになった。現在まで活動性ループス腎炎(LN)やMNで有効性が検討されている。活動性LNは全身性エリテマトーデス(SLE)の中でも重症病態の1つであり、LN患者の約20%が15年以内に末期腎不全に至る。しかし、LNの臨床試験においてその評価は無効・有効とする報告が相半ばする。MNに関してはシクロスポリンとの比較試験(MENTOR試験)が報告されており、RTXは有意に寛解率が高値であったが、それでも部分寛解も含めて60%にとどまる。

代謝異常を伴う脂肪肝「MASLD」、慢性腎臓病の独立リスクに

 新しい脂肪肝の概念「MASLD;代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」が、慢性腎臓病(CKD)の独立したリスク因子であることが国内研究で示された。単一施設の約1.6万人の健康診断データを解析したもので、MASLDの早期発見や管理の重要性が改めて示された。研究は京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の大野友倫子氏、濱口真英氏、福井道明氏、朝日大学病院の大洞昭博氏、小島孝雄氏らによるもので、詳細は10月17日付で「PLOS One」に掲載された。  日本では食生活の欧米化に伴い肥満が増加し、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の有病率も上昇している。NAFLDは主に内臓脂肪やインスリン抵抗性と関連し、糖尿病や心血管疾患などの代謝異常を伴うことが多い。2020年には、こうした代謝背景を重視する形でNAFLDはMAFLDとして再定義され、日本の大規模コホート研究ではCKDの独立したリスク因子であることが報告された。さらに2023年、国際的専門家パネル(Delphiコンセンサス)により、より包括的でスティグマの少ない概念としてMASLDへと名称が変更され、少なくとも1つの心血管代謝リスク(BMI、血糖値、HDL-C値など)を伴う脂肪肝と定義された。本研究は、この新しい定義によるMASLDがCKD発症の独立したリスク因子となるかを明らかにすることを目的に、人間ドック受診者を対象とした縦断的コホート解析として実施された。

eGFRcysとeGFRcrの乖離は死亡・心血管イベントと関連/JAMA

 外来患者において、eGFRcys(シスタチンC値を用いて算出した推定糸球体濾過量)の値がeGFRcr(クレアチニン値を用いて算出した場合)の値より30%以上低い患者は、全死因死亡、心血管イベントおよび腎代替療法を要する腎不全の発現頻度が有意に高いことが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のMichelle M. Estrella氏らChronic Kidney Disease Prognosis Consortium Investigators and Collaboratorsが、Chronic Kidney Disease Prognosis Consortium(CKD-PC)の患者データのメタ解析結果を報告した。eGFRの算出にクレアチニン値を用いた場合とシスタチンC値を用いた場合でeGFR値が異なる可能性があるが、これまでその差異の頻度および重要性は明らかになっていなかった。今回の解析では、外来患者の約11%および入院患者の約35%で、eGFRcys値がeGFRcr値より30%以上低い患者が認められることも示されている。JAMA誌オンライン版2025年11月7日号掲載の報告。

鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(MRA)とSGLT2阻害薬の併用が慢性腎臓病(CKD)治療の基本となるか(解説:浦信行氏)

CKDに対する腎保護効果に関して、従来はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の使用が基本であった。また、一層の腎保護効果を期待してこの両者の併用も分析されたことがあったが、作用機序が近いこともあって相加効果は期待し難かった。最近はMRAやSGLT2阻害薬の腎保護効果が次々と報告されるようになり、それぞれ複数の薬剤で有意な効果が報告されている。この両者の併用効果に関しては、2型糖尿病に伴うCKDを対象としたフィネレノンとエンパグリフロジン併用のCONFIDENCE試験が先行して行われ、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)で相加効果が確認されている。フィネレノンは従来のMRAとはMRへの結合の際の立体構造の変化が異なると報告され、その結果、高K血症の発症が少ないとされたが11.4%に認めた。エンパグリフロジンとの併用で9.3%に減少すると報告されたが、期待されたほど少なくはなかった。

夕食時間が蛋白尿に影響、時間帯や患者特性は?

 蛋白尿や微量アルブミン尿は、心血管疾患および全死亡リスク上昇との関連が報告されている。また、いくつかの研究で、夕食時間の遅さと蛋白尿との関連が報告されているが、患者特性などは明らかにされていない。そこで今回、りんくう総合医療センター腎臓内科の村津 淳氏らは、夕食時間の遅さが蛋白尿を来すことを明らかにし、とくに低BMIの男性で強く関連することを示唆した。本研究結果はFront Endocrinol誌2025年11月10日号に掲載された。  研究者らは、夕食時間の遅さと蛋白尿の出現との関連を評価するため、りんくう総合医療センターの健康診断データを用い、推定糸球体濾過量(eGFR)60mL/分/1.73m2以上で腎疾患の既往のない2,127人(男性1,028人、女性1,099人)を対象に横断研究を実施。週3日以上、就寝前2時間以内に夕食を取った参加者を夕食時間が遅い群と定義した。夕食時間による蛋白尿の影響は、臨床的関連因子(年齢、性別、喫煙歴、飲酒歴、既往歴など)を調整したロジスティック回帰モデルを用いて評価した。また、これまでに報告された横断研究では、蛋白尿の有病率はBMI(kg/m2)とJ字型関係を示していることから、今回、男女別でBMIと腹囲を各3群に区分。BMIは、男性では22.3未満、22.3~24.9、24.9以上に分け、女性では20.3未満、20.3~23.0、23.0以上と分けた。ウエスト周囲径(cm)は、男性は83.0未満、83.0~90.1、90.1以上、女性は75.0未満、75.0~83.5、83.5以上として評価した。