腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

心房細動発症、尿酸上昇と体重増加が相互に作用~日本人での研究

 尿酸と肥満が関与する心房細動の新規発症機序から、心房細動発症に尿酸増加と体重増加が相互に作用している可能性がある。今回、京都府立医科大学の宗像 潤氏らが、「20歳以降に体重10kg以上増加」という体重変化の尺度を用いて調査したところ、ベースラインで尿酸値が正常範囲内であっても、その後の尿酸値の増加と体重増加が心房細動の新規発症に相互作用を及ぼすことがわかった。BMJ Open誌2024年11月27日号に掲載。  本研究は後ろ向きコホート研究で、2013年4月2日~2022年4月30日に毎年健康診断を受けた従業員コホートのうち、心房細動を発症していない30歳以上の日本人1,644人を後ろ向きに解析した。血清尿酸と体重の経時的変化が心房細動新規発症に及ぼす影響について、ランドマーク生存解析を用いて評価した。体重増加は標準化自記式質問票における「20歳以降に体重10kg以上増加」と定義し、心房細動は心電図で心房細動が認められた場合または問診で心房細動が認められた場合とした。

水分摂取を増やすと肥満や腎結石以外にも有効な可能性

 1日の水分摂取量に関しては、公的な推奨がいくつかされているもののそれを裏付けるエビデンスは明確ではなく、水分摂取量を変更することによる利点は十分に確立されていない。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNizar Hakam氏らが実施したシステマティックレビューの結果、エビデンスの質と量は限定的であるものの、少数の研究で1日の水分摂取量の増加が体重減少や腎結石予防に有益であることが示され、また、単一の研究では片頭痛予防、尿路感染症、糖尿病管理、低血圧に対する有益性が示唆された。JAMA Network Open誌2024年11月25日号掲載の報告。

CKDの早期からうつ病リスクが上昇する

 腎機能低下とうつ病リスクとの関連を解析した結果が報告された。推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2を下回る比較的軽度な慢性腎臓病(CKD)患者でも、うつ病リスクの有意な上昇が認められるという。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏、候聡志氏らの研究によるもので、詳細は「European Journal of Clinical Investigation」に9月27日掲載された。  末期のCKD患者はうつ病を併発しやすいことが知られており、近年ではサイコネフロロジー(精神腎臓学)と呼ばれる専門領域が確立されつつある。しかし、腎機能がどの程度まで低下するとうつ病リスクが高くなるのかは分かっていない。金子氏らは、医療費請求データおよび健診データの商用データベース(DeSCヘルスケア株式会社)を用いた後ろ向き観察研究により、この点の検討を行った。

CKDステージ3への尿酸降下薬、尿酸値6未満達成でCKD進展抑制か

 高尿酸血症は慢性腎臓病(CKD)患者で高頻度にみられる。高尿酸血症を有するCKD患者に対する尿酸低下療法については、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』では、腎機能を抑制する目的に尿酸降下薬を用いることが条件付きで推奨されている。また、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では、保存期CKD患者に対する尿酸低下療法について、「腎機能悪化を抑制する可能性があり、行うことを考慮してもよい」とされている。しかし、CKD患者における血清尿酸値の管理目標に関する無作為化比較試験は存在しない。

自覚症状に乏しい糖尿病性腎症に早く気付いて/バイエル

 バイエルは、11月14日に「糖尿病の日」に合わせ、糖尿病と合併症に関する啓発イベントを開催した。イベントでは、糖尿病専門医による糖尿病に関するプレスセミナーとお笑いコンビ「ガンバレルーヤ」をゲストに迎えての市民向けの疾患啓発が行われた。  「糖尿病と合併症ってどんな病気? 患者さん中心の医療について考える」をテーマに坊内 良太郎氏(国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター/糖尿病内分泌代謝科)が、糖尿病の病態、診療、合併症を抑えるポイントを解説した。

全身性免疫炎症指数はCKDの死亡率に関連

 慢性腎臓病(CKD)患者における全身性免疫炎症指数(SII)のレベルと全死亡率の間にはJ字型の関連があることが、「Immunity, Inflammation and Disease」に9月10日掲載された。  上海中医薬大学(中国)のMeng Jia氏らは、CKD患者におけるSIIと全死亡率の関連性を検討した。分析には、1999~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)の対象者であったCKD患者9,303人が含まれた。  解析の結果、中央値86カ月の追跡期間において、SIIレベルと全死亡率との間に明確なJ字型の関連が示された。最低値は、第2四分位数内のSIIレベル478.93で確認された。SIIが478.93を超えると、SIIレベルの標準偏差が1増加するごとに全死亡率のリスクが上昇した(ハザード比1.13)。CKD患者では、SIIの上昇と全死亡率のリスク上昇との間に関連性が見られた(第4四分位数対第2四分位数のハザード比1.23)。SIIとCKDによる死亡率の相関は、60歳以上の対象者および糖尿病患者において特に顕著であった。SIIの極端な5%の外れ値を除外すると、SIIと全死亡率との間には線形の正の関連が見られた。

高リスクIgA腎症へのエンドセリンA受容体拮抗薬の重度蛋白尿改善効果は確定(解説:浦信行氏)

エンドセリンA受容体拮抗薬の蛋白尿改善効果はIgA腎症をはじめとして、慢性腎臓病(CKD)や巣状糸球体硬化症等で次々に報告されるようになった。本研究(ALIGN研究)は高リスクIgA腎症を対象とし、エンドセリンA受容体拮抗薬atrasentanの36週での尿蛋白減少効果を偽薬投与群と比較した成績であるが、36.1%有意に減少させたと報告された。同様の成績は昨年エンドセリンA受容体・アンジオテンシンII受容体デユアル拮抗薬のsparsentan https://www.carenet.com/news/clear/journal/57590「IgA腎症の新たな治療薬sparsentanの長期臨床効果」で解説)。

エンパグリフロジン投与終了後もCKDの心・腎保護効果が持続、レガシー効果か?(解説:栗山哲氏)

EMPA-KIDNEY試験では、SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(エンパ)の心・腎保護作用が、糖尿病性腎症(DKD)のみならず非糖尿病CKD(CKD)においても示された(The EMPA-KIDNEY Collaborative Group. N Engl J Med. 2023;388:117-127.)。今回の報告は、同試験の終了後の追跡評価(post-trial follow-up)である。その結果、エンパの投与終了後、少なくとも1年間は心・腎保護作用が持続した。この成績が先行治療終了後も臓器保護作用が持続する、いわゆるレガシー(遺産)効果の初期像を観察しているとすれば、SGLT2阻害薬の新知見の可能性がある。

フィネレノンによるカリウムの影響~HFmrEF/HFpEFの場合/AHA2024

 左室駆出率(LVEF)が軽度低下した心不全(HFmrEF)または保たれた心不全(HFpEF)患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のフィネレノン(商品名:ケレンディア)は高カリウム血症の発症頻度を高めたが、その一方で低カリウム血症の発症頻度を低下させたことが明らかになった。ただし、プロトコールに沿ったサーベイランスと用量調整を行った場合、プラセボと比較し、カリウム値が5.5mmol/Lを超えた患者でもフィネレノンの臨床的な効果は維持されていた。本研究結果は、米国・ミネソタ大学のOrly Vardeny氏らが11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のFeatured Scienceで発表し、JAMA Cardiology誌オンライン版2024年11月17日号に同時掲載された。

末期腎不全の患者、男女ともに過体重・肥満者が増加/新潟大

 肥満は、腎臓に悪影響を及ぼし、慢性腎臓病(CKD)の発症や悪化に繋がるリスクとなる。最近の透析導入患者でも肥満者の割合が高まっていることが、米国などから報告されているが、わが国の割合の経年変化は検討されていなかった。そこで、新潟大学大学院医歯学総合研究科臓器連関学講座の若杉 三奈子氏らの研究グループは、2006~2019年の間にわが国の透析導入患者について、肥満者とやせた人の割合について経年変化を評価した。その結果、男女とも肥満者の割合が有意に増加し、その増加率は一般住民を上回っていたことが判明した。Nephrology誌オンライン版2024年10月27日号に掲載。