若年者の大腸がん検診受診率を上げる方法は?(解説:上村 直実 氏)
わが国における2023年の部位別がん死亡数は、男性では肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がんの順に多く、女性では大腸がん、肺がん、膵臓がんの順となっている。同年の大腸がん罹患者数は推定14万8,000例で死亡者数が5万3,000例とされており、罹患者のうち3例に1例が死亡すると推測される。大腸がんの場合、早期がんの完治率は90%以上であり、早期発見とくに検診ないしはスクリーニングの整備が喫緊の課題となっている。西欧諸国では免疫学的便潜血検査(FIT)、便中の多標的RNA検査、直接の大腸内視鏡検査などさまざまな検診方法の有効性を比較する臨床研究が盛んに報告されている。しかし、いずれの検診方法を行っても、大腸がんの死亡率低下には検診の受診率がキーポイントとなっている。今回、大腸がんの著明な増加が報告されているものの検診受診率がきわめて低い若年者(45~49歳)を対象として、最も効果的なリクルート法を模索した臨床研究が施行された結果、電子媒体を用いてFITのみまたは大腸内視鏡検査のみの推奨に対して受諾または拒否を選択する方法に比べて、FITと大腸内視鏡検査2種類を送付したものから患者が能動的に選択する方法の検診受診率が有意に高く、さらにFITのキットを直接郵送して患者に受諾または拒否を選択してもらう方法が最も有効であることが2025年8月のJAMA誌に報告された。