消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

日本の中学生のピロリ検査、陽性率1.2%で半数は家族感染

 日本は胃がんの罹患率が高く、胃がんの大きな原因であるヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の感染率は40%である。成人のH. pylori検査と除菌は一般的になり、近年では若年層を対象とした集団に対する検査が拡大している。日本の義務教育制度での定期健康診断を活用し、中高校生を対象とした包括的な検査が複数の自治体で実施されている。神奈川県横須賀市で実施された、中学生を対象としたH. pylori検査と除菌についての報告が、Journal of Gastroenterology and Hepatology誌2025年10月号に掲載された。

肥満症への胃バイパス手術の長期的効果は良好

 肥満症の治療に胃や腸の外科的手術が登場し半世紀以上が経った。術後の患者の健康状態や効果などに違いはあるのだろうか。このテーマについて、米国・ブリガムヤング大学運動科学部のTaggert J. Barton氏らの研究グループは、胃バイパス手術の健康への長期的な効果について評価を行った。その結果、術後10年を経てもBMIの低下が維持されていたことが判明した。この研究結果はObesity誌オンライン版2025年10月8日号に掲載された。  研究グループは、代謝・肥満手術(MBS)関連の減量が健康に及す長期的な影響を探るために前向き試験「the Utah Obesity Study」の一部から、MBS患者群(82例)と対照となる非手術群(88例)のデータを収集した。フィットネスは修正ブルースプロトコルを用いた最大・亜最大トレッドミル試験で評価した。亜最大運動試験は手術前(ベースライン)および11.5年後に実施した。170例の参加者から抽出したサブグループ(97例)は、ベースラインから2年後および6年後に最大トレッドミルテストも実施した。体重とBMIは各訪問時に記録した。群間比較におけるトレッドミル走行時間は、性別と体重で調整した。

2025年度医療安全管理者養成研修のご案内/医療安全学会

 日本医療安全学会(理事長:大磯 義一郎氏)は、2025年度の医療安全管理者養成研修アドバンスドコースを開催する。  この研修は、現場で「使える」医療安全の知識を体系的に修得することを目的とし、実践的な事例や演習を通じ、知識を「行動」へとつなげる応用力とリーダーシップを培い、現場の医療安全をリードできる人材としての成長を目指す。講師は、医療や法学、医療安全のエキスパートが担当する。  主催学会の大磯氏は、「医療安全管理者としての基本的な理解に加え、より高いレベルでの医療安全管理への理解と実践の機会を提供することを目的に、本アドバンスドコースを企画した。本コースが、日本医療安全学会の医療安全管理者養成研修修了者に限らず、医療安全や質改善に関心を持つ多くの方にとって、有意義な学びと交流の場となることを願っている。現場の課題解決に直結する「次の一歩」を共に考える場として、ぜひご参加していただきたい」とコメントしている。

ロボット支援直腸がん手術、術後1日目のCRPで合併症予測が可能に

 術後合併症や感染症への対応には、早期発見と迅速な対処が求められる。今回、直腸がんに対するロボット支援下直腸手術(RARS)後の合併症リスクが、術後1日目のC反応性蛋白(CRP)値で予測できるとする研究結果が報告された。術後早期のCRP測定が、高リスク患者の見極めや迅速な介入に役立つ可能性があるという。研究は国立病院機構福山医療センター消化器・一般外科の寺石文則氏らによるもので、詳細は8月28日付けで「Updates in Surgery」に掲載された。  RARSは、骨盤内の限られた視野で高い操作性を発揮し、従来の腹腔鏡手術や開腹手術と同等かそれ以上の成績を示すことが報告されている。しかし、依然として術後合併症は患者予後を左右する大きな課題であり、早期に高リスク患者を見極めることが重要だ。炎症マーカーであるCRPは大腸手術後の合併症予測に有用とされるが、ロボット支援手術における術後早期のCRP値の予測的価値は十分に検討されていない。このような背景を踏まえ著者らは、RARS後の合併症リスク因子を解析し、特に術後1日目のCRP測定の有用性を評価することを目的とした後ろ向きコホート研究を実施した。

プライマリケアで利用可能な、新たな肝臓のリスク予測モデル/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のRickard Strandberg氏らの研究チームは、プライマリケアで容易に入手できるバイオマーカーを用いて、肝臓の不良なアウトカムのリスク予測モデル「CORE(cirrhosis outcome risk estimator)」を開発。観察研究により、COREは一般集団の肝関連アウトカムの予測において、現時点で第1選択として推奨される検査法であるFIB-4を上回る性能を発揮し、肝疾患リスク患者を層別化する新たな手段となりうることを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年9月29日号に掲載された。  研究チームは、プライマリケア環境で主要有害肝アウトカム(major adverse liver outcome:MALO)の発生を予測する新たなリスクモデルとしてCOREを開発し、その妥当性の検証目的で住民ベースのコホート研究を実施した(特定の助成は受けていない)。

口腔内の細菌が膵臓がんの一因に?

 膵臓がんのリスクは口の中に生息する微生物と関係している可能性があるようだ。歯周病に直接関係する微生物も含め、27種類の細菌や真菌が膵臓がんリスクと有意に関連し、これらの微生物に基づいて構築された微生物リスクスコア(MRS)が1標準偏差(SD)上昇するごとに、膵臓がんリスクが3倍以上高まることが、新たな研究で示された。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のRichard Hayes氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に9月18日掲載された。Hayes氏は、「歯磨きとフロスの使用は、歯周病を予防するだけでなく、がんの予防にも役立つ可能性のあることが、これまで以上に明らかになってきた」と述べている。

がん手術後の遠隔モニタリングは患者の回復を助ける

 手術後のがん患者に対する遠隔モニタリングは、機能回復や症状改善に有効であることが新たな研究で示された。医療チームが遠隔で症状を追跡した患者は、手術からより早く回復したという。米マイアミ大学シルベスター総合がんセンターのTracy Crane氏らによるこの研究結果は、「npj Digital Medicine」に8月28日掲載された。Crane氏は、「退院後の最初の2週間は極めて重要だ。遠隔ケアは、病院と自宅の間の溝を埋め、問題を早期に発見し、回復をサポートするのに役立つ」と話している。  この研究では、消化器がん、泌尿・生殖器がん、婦人科がんに対する大規模な腹部または骨盤手術を受ける患者293人を対象にランダム化比較試験を実施し、周術期の遠隔モニタリングの有効性を検討した。対象患者は、スマートフォン(以下、スマホ)のアプリによる遠隔モニタリングを受ける群と、手術のみを受ける群(対照群)にランダムに割り付けられた。両群とも手首に活動量計を装着して歩数などの機能的活動量を測定するとともに、手術前と退院後7・14・30・60・90日目にモバイルアプリを通じて症状を報告したが、遠隔モニタリング群では、トリアージ看護師が患者の症状と歩数データを追跡し、問題があると判断した際には患者に連絡を取った。一方、対照群では、基準値を外れた場合には病院に電話するよう促す自動メッセージが患者に送られた。

複数種類のがんを調べる血液検査、有用性を判断するには時期尚早

 血液サンプルを用いて複数種類のがんの有無を検査する多がん検出(multicancer early detection;MCD)検査(以下、MCD検査)は、目に見えない腫瘍を発見できる可能性があるため、大きな注目を集めている。しかし、MCD検査によるスクリーニングのベネフィットを評価した、完了した対照試験は存在せず、この検査法の有効性を判断するには時期尚早であるとする研究結果が発表された。米RTI-ノースカロライナ大学Evidence-based Practice Centerの最高医療責任者代理であるLeila Kahwati氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に9月16日掲載された。  MCD検査は、未検出の腫瘍から血液中に放出されたDNAやタンパク質、その他の生化学物質を検出することで、がんの有無を判定する。MCD検査のいくつかは、医師の診断書があれば製造元からオンラインで注文できる。ただし、いずれも米食品医薬品局(FDA)の承認を受けていない。

トイレでのスマホ使用は痔のリスクを高める

 トイレにいる間にスマートフォン(以下、スマホ)でニュースや電子メール、ソーシャルメディアをチェックしている人は、注意した方が良いようだ。トイレでのそのような行動は、痔の発症リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。トイレでスマホを使う人は使わない人に比べて、痔の発症リスクが46%高いことが示されたという。米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのTrisha Pasricha氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に9月3日掲載された。  研究グループは、トイレでスマホを使用していると、無意識のうちに滞在時間が長くなって肛門への圧力が高まり、それが痔の原因になる可能性があると説明している。Pasricha氏は、「スマホと現代の生活様式が健康に及ぼすさまざまな影響については、まだ全てが判明しているわけではない。トイレの中での使用など、スマホの使い方や使う場所によっては予期せぬ結果をもたらす可能性がある」と話している。

世界のがん発症や死亡、2050年に6~7割増/Lancet

 がんは世界の疾病負担の大きな要因であり、2050年まで症例数と死亡数の増加が続くことが予測され、とくに資源の乏しい国との負担格差が大きくなることが見込まれること、また、がんの年齢標準化死亡率は低下するものの、国連による2030年の持続可能な開発目標(SDG)の達成には不十分であることが、米国・ワシントン大学のLisa M. Force氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Cancer Collaboratorsの解析で示された。がんは世界的に主要な死因の1つで、政策立案には正確ながん負担情報が欠かせないが、多くの国では最新のがんサーベイランスデータがない。著者は、「世界的ながん負担に効果的かつ持続的に対処するには、予防、診断、治療の全過程にわたるがん対策戦略の策定と実施において、各国の医療システムや開発状況を考慮した包括的な国内外の取り組みが必要である」と提言している。Lancet誌オンライン版2025年9月24日号掲載の報告。