9.
経口セマグルチド(GLP-1受容体作動薬)は、2型糖尿病で心血管リスクの高い患者において心血管系の安全性が確立されている。米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのDarren K. McGuire氏らSOUL Study Groupは「SOUL試験」により、2型糖尿病でアテローム動脈硬化性心血管疾患または慢性腎臓病、あるいはこれら両方を有する患者において、プラセボと比較して同薬は、重篤な有害事象の発生率を増加させずに主要有害心血管イベント(MACE)のリスクを有意に減少させることを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年3月29日号で報告された。33ヵ国の無作為化プラセボ対照優越性第IIIb相試験 SOUL試験は、アテローム動脈硬化性心血管疾患または慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者における経口セマグルチドの安全性の評価を目的とするイベント主導型の二重盲検無作為化プラセボ対照優越性第IIIb相試験であり、2019年6月~2021年3月に33ヵ国444施設で参加者の無作為化を行った(Novo Nordiskの助成を受けた)。 年齢50歳以上、2型糖尿病(糖化ヘモグロビン値6.5~10.0%)と診断され、冠動脈疾患、脳血管障害、症候性末梢動脈疾患、慢性腎臓病(推算糸球体濾過量[eGFR]<60mL/分/1.73m2)のうち少なくとも1つを有する患者9,650例(平均[±SD]年齢66.1±7.6歳、女性28.9%)を対象とした。 被験者を、標準治療に加え、セマグルチド(3mgで開始し、7mg、14mgに増量、1日1回)を経口投与する群(4,825例)、またはプラセボ群(4,825例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)とし、time-to-first-event解析で評価した。主要アウトカムは、経口セマグルチド群12.0%vs.プラセボ群13.8% 全体の70.7%に冠動脈疾患、23.1%に心不全、21.2%に脳血管疾患、15.7%に末梢動脈疾患の既往歴があり、42.4%に慢性腎臓病の既往歴を認めた。両群とも、ベースラインで26.9%がSGLT2阻害薬の投与を受けていた。平均(±SD)追跡期間は47.5±10.9ヵ月、追跡期間中央値は49.5ヵ月(四分位範囲:44.0~54.9)で、9,495例(98.4%)が試験を完了した。 主要アウトカムのイベントは、プラセボ群で4,825例中668例(13.8%、イベント発生率3.7件/100人年)に発生したのに対し、経口セマグルチド群では4,825例中579例(12.0%、3.1件/100人年)と有意に優れ(ハザード比[HR]:0.86[95%信頼区間[CI]:0.77~0.96]、p=0.006)、MACEの発生に関して経口セマグルチド群の優越性が示された。 主要アウトカムの個々の項目のイベント発生率のHRは、心血管死が0.93(95%CI:0.80~1.09)、非致死的心筋梗塞が0.74(0.61~0.89)、非致死的脳卒中が0.88(0.70~1.11)であった。 また、検証的副次アウトカムの解析におけるイベント発生率のHRは、主要腎障害イベントが0.91(95%CI:0.80~1.05、p=0.19)、主要有害下肢イベントが0.71(0.52~0.96)だった。注射薬の知見と一致 重篤な有害事象は、経口セマグルチド群で47.9%、プラセボ群で50.3%に発現した(p=0.02)。消化器系の障害はそれぞれ5.0%および4.4%にみられた。試験薬の恒久的な投与中止に至った有害事象は、15.5%および11.6%に認めた。 著者は、「これら結果は、この患者集団での経口セマグルチドの心血管系における有益性を示しており、セマグルチド注射薬や心血管系における有効性が確立されている他のGLP-1受容体作動薬で報告されている知見と一致する」としている。