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術後輸血戦略は制限的輸血が妥当

術後輸血戦略について、非制限的に行う輸血(自由輸血)が制限的輸血と比較して、術後の死亡率を低下したり回復を促進はしないことが、股関節手術を受けた心血管リスクの高い高齢患者を対象とした無作為化試験の結果、明らかにされた。また被験者の特性の一つでもあった心血管疾患の院内発生率も抑制できなかったことも示された。術後輸血については、ヘモグロビン閾値が論争の的となっている。そこで米国・ニュージャージー医科歯科大学のJeffrey L. Carson氏らは、より閾値の高い輸血者のほうが術後回復が促進されるかどうかについて検証した。NEJM誌2011年12月29日号(オンライン版2011年12月14日号)掲載報告より。術後患者をヘモグロビン閾値8g/dL未満と10g/dLに無作為に割り付け試験は2004年7月~2008年2月の間に、米国とカナダの47の医療機関で被験者を登録して行われた。被験者は、心血管疾患の既往歴またはリスク因子のいずれかを有し、股関節骨折で手術を受け、術後ヘモグロビン値が10g/dL未満の50歳以上の患者2,016例(平均年齢81.6歳、年齢範囲:51~103歳)であった。研究グループは被験者を無作為に、自由輸血戦略群(ヘモグロビン閾値10g/dL)または制限的輸血戦略群(貧血症状があるか医師の裁量でヘモグロビン閾値<8g/dL)に割り付け追跡した。主要転帰は、追跡調査60日後の死亡または人の介助を受けずには部屋の端から端まで歩くことができない(自由歩行不能)の割合とした。副次転帰は、院内心筋梗塞・院内不安定狭心症・すべての院内死亡の複合とした。輸血自由戦略群、いずれの指標も改善できず輸血赤血球単位の中央値は、自由輸血戦略群で2単位、制限的輸血戦略群は0単位であった。主要転帰の発生率は、自由戦略群35.2%、制限戦略群34.7%で、自由戦略群のオッズ比は1.01(95%信頼区間:0.84~1.22、P=0.90)、絶対リスク差は0.5ポイント(95%信頼区間:-3.7~4.7)だった。オッズ比は男女差が認められ(P=0.03)、男性(オッズ比:1.45)が女性(同:0.91)よりも有意であった。追跡調査60日後の死亡率は自由戦略群7.6%、制限戦略群6.6%で(絶対リスク差:1.0%、99%信頼区間:-1.9~4.0)だった。また、副次転帰の発生率は、自由戦略群4.3%、制限戦略群5.2%(絶対リスク差:-0.9%、99%信頼区間:-3.3~1.6)であった。その他の合併症の発生率は両群で同程度だった。結果を踏まえてCarson氏は、「我々の所見は、貧血症状がない場合やヘモグロビン値が8g/dL以下に減少していない場合、さらには心血管疾患やリスク因子を有する高齢患者では、術後患者での輸血は控えることが妥当なことを示唆する」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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STEMIの再入院リスク、米国は他の国のおよそ1.5倍

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)による再入院率は米国が最も高く、血行再建術実施のための再入院を除いても、オーストラリアや欧州などに比べ、およそ1.5倍に上ることが明らかにされた。退院30日以内の再入院のリスク因子としては、多枝病変であることが2倍と最も高かった。米国・デューク大学医療センター臨床研究所のRobb D. Kociol氏らが、約5,700人のSTEMI患者について行った事後比較の結果で、JAMA誌2012年1月4日号で発表した。入院日数中央値は米国が最短で3日、ドイツが最長で8日研究グループは、2004年7月13日~2006年5月11日にかけて、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドと欧州13ヵ国の計296ヵ所の医療機関を通じて行われた、STEMI患者5,745人が参加した試験「Assessment of Pexelizumab in Acute Myocardial Infarction」のデータについて事後解析を行った。主要アウトカムは、退院後30日以内の再入院に関する予測因子だった。その結果、被験者のうちSTEMIによる院内死亡を除く5,571人のうち631人(11.3%)が、退院後30日以内に再入院していた。国別に再入院率をみると、米国は14.5%と、その他の国の9.9%に比べ有意に高率だった(p<0.001)。一方で、入院日数の中央値は米国が3日(四分位範囲:2~4)と最短で、最長はドイツの8日(同:6~11)だった。米国の院内死亡率や入院後30日死亡率は同等多変量回帰分析の結果、30日再入院に関する予測因子は、多枝病変(オッズ比:1.97、95%信頼区間:1.65~2.35)、米国で入院(同:1.68、1.37~2.07)だった。米国で入院という再入院予測因子は、血行再建術実施のための再入院を除いた後もオッズ比は1.53(同:1.20~1.96)だった。しかし各国の入院日数で補正後は、30日全死因死亡や緊急再入院の独立した予測因子ではなかった。また米国での入院は、院内死亡(オッズ比:0.88、同:0.60~1.30)や入院後30日死亡(オッズ比:1.0、同:0.72~1.39)のリスク因子ではなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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植物状態の患者の意識をベッドサイドで検出する新たな脳波検査

植物状態と診断された患者の一部には、健常者と同様の脳波検査(EEG)反応が認められ、意識の存在が示唆されることが、カナダ・Western Ontario大学のDamian Cruse氏らの検討で示された。植物状態と診断された患者は覚醒している時間帯があるが、この間も自己および周囲の環境を意識していないようにみえる。一方、機能的MRI(fMRI)ではこれらの患者の中には意識のある例がいることが示されているが、多くの場合、費用や近接性(accessibility)の問題によりfMRIの使用は難しいに状況にあるという。Lancet誌2011年12月17日号(オンライン版2011年11月10日号)掲載の報告。EEGによる意識の有無の検出能を評価するコホート試験研究グループは、植物状態の患者における意識の有無をベッドサイドで検出する方法として、EEGの有用性を評価するコホート試験を行った。2010年7月~2011年6月に、ヨーロッパの2施設(イギリスAddenbrooke’s病院、ベルギーLiege大学病院)からComa Recovery Scale-Revised(CRS-R)で植物状態と判定された外傷性および非外傷性の脳損傷患者を、カナダWestern Ontario大学から健常対照者を登録した。顕性行動がなくても意識の存在を示唆する臨床指標として、指示に従った場合に検出される運動イメージに関連する新たなEEGのタスクを開発した。患者は右手と爪先を動かすイメージを想い浮かべるよう指示を受けた。この指示に特異的な個々の患者のEEG反応を解析して、健常者と同様に一貫性がみられ統計学的に信頼性の高い運動イメージのマーカーを検索した。3人で健常者と同様のEEG反応を検出植物状態と診断された16人(外傷性脳損傷患者5人、非外傷性脳損傷患者11人)と健常対照12人について評価を行った。16人中3人(19%、外傷性脳損傷患者2人、非外傷性脳損傷患者1人)において、2種類の指示に対し身体的にはまったく無反応だったものの、健常者と同様の適切なEEG反応が繰り返し検出された(分類精度:61~78%)。臨床的背景因子(脳損傷時年齢、脳損傷後経過期間、脳損傷の原因、行動スコア)と指示への応答能力には有意な関連はなかった。著者は、「厳格な臨床評価が行われているにもかかわらず、植物状態と診断された患者の一部には、健常者と同様のEEG反応が認められ、意識の存在が示唆された」と結論し、「われわれが開発したEEGは安価で持ち運びが可能であり、入手も簡単で、得られたデータは十分な客観性を備えている。身体行動上は完全な植物状態にみえるが認知機能や意識が残存している可能性のある患者の再診断において、ベッドサイドで広く使用可能と考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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腎細胞がん患者を対象としたTIVO-1試験にてソラフェニブに対する優越性を証明 チボザニブ第III相臨床試験

アステラス製薬株式会社は4日、米アヴェオ社と共同で開発を進めている、経口トリプル血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体阻害剤チボザニブ(一般名、英語名称:tivozanib、開発コード:ASP4130)の進行性腎細胞がん患者を対象としたグローバル第III相臨床試験TIVO-1について、チボザニブがソラフェニブに対し主要評価項目である無増悪生存期間において優れていることが証明されたと発表した。TIVO-1は、VEGF受容体阻害剤またはmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)阻害剤での治療歴のない、腎摘出を受けた腎明細胞がん患者517人を対象に、チボザニブの有効性と安全性を検証するために、ソラフェニブを対照薬として行ったグローバル二重盲検比較試験。腎細胞がんの第一選択薬として既承認のVEGF受容体阻害作用を有する薬剤と比較した初めての試験となる。独立データモニタリング委員会の解析によると、チボザニブは、ソラフェニブと比較して、統計学的有意に、無増悪生存期間(中央値)を延長(チボザニブ11.9ヵ月に対してソラフェニブ9.1ヵ月)したという。また、TIVO-1全症例の約70%を占めるサイトカイン等薬剤での治療経験がない患者群においても統計学的に有意な無増悪生存期間(中央値)の延長(チボザニブ12.7ヵ月に対してソラフェニブ9.1ヵ月)が示されたとのこと。なお、同剤の安全性についてはすでに実施された第II相臨床試験と同様の良好な忍容性を示す結果が得られたという。最も高頻度で認められた副作用は、VEGF受容体阻害作用に起因することが知られ、他のVEGF阻害剤においても同様に認められる高血圧であった。 TIVO-1については、さらなる解析のためのデータ収集を行うため、組み入れ患者の経過観察を引き続き行うという。なお、詳細な試験結果については、2012年6月1日~5日に米国シカゴで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO: Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology)での発表予定とのことで、さらに同社と米アヴェオ社は本試験の最終解析を行った後、2012年内にチボザニブの製造販売承認申請を欧米で行う予定だという。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/iii-tivo1.html

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影響力のある医学雑誌の名誉著者とゴースト著者の出現率は21%

JAMA(米国医師会雑誌)サーベイ調査専門家のJoseph S Wislar氏らが2008年刊行の主要な医学専門誌6誌の掲載論文について調査した結果、21%で名誉著者およびゴースト著者の存在が認められたことを報告した。名誉著者、ゴースト著者の存在、関連した透明性やアカウンタビリティの欠如は、サイエンス誌、研究者、教育研究機関にとって大きな課題となっている。本論はWislar氏らが、1996年当時と現状とを比較することを目的に行った調査の結果で、BMJ誌2011年12月10日号(オンライン版2011年10月25日号)に掲載された。ウェブアンケートで国際的な横断調査を実施Wislar氏らは、2008年に出版された主要な総合医学専門誌6誌における名誉著者とゴースト著者の出現率を調べ、これを1996年に出版された論文の著者について報告された出現率と比較するため、ウェブアンケートによる国際的な横断調査を行った。評価の対象となったのは、2008年刊行の総合医学専門誌6誌(Annals of Internal Medicine、JAMA、Lancet、Nature Medicine、New England Journal of Medicine、PLoS Medicine)に掲載された研究論文(research article)、総説(review article)、エディトリアル/オピニオン論文(editorial/opinion article)の計896本の責任著者(corresponding author)。彼らに対し30項目にわたるアンケートを行い、その回答にみられたICMJE(International Committee of Medical Journal Editors)オーサーシップ基準へのコンプライアンスの度合いを主要評価項目とした。ゴーストは減ったが名誉著者は相変わらずアンケートに回答したのは896人中630人(70.3%)だった。結果、名誉著者、ゴースト著者、あるいは両方が認められた論文は21.0%(95%信頼区間:18.0~24.3%)で、1996年に報告された29.2%からは減少していた(P=0.004)。しかし、名誉著者に関する545件の回答から、96論文(17.6%、95%信頼区間:14.6~21.0)に名誉著者が含まれていることが明らかとなり(雑誌によって12.2~29.3%の変動)、この割合は1996年の調査時(19.3%)と比べ有意な変化は認められなかった(P=0.439)。一方でゴースト著者に関する622件の回答からは、49論文(7.9%、同:6.0~10.3)にゴースト著者が存在し(雑誌によって2.1~11.0%の変動)、1996年の調査時(11.5%)と比べ有意に低下していたことが明らかとなった(P=0.023)。名誉著者の出現率は、オリジナル研究報告で25.0%、レビュー15.0%、エディトリアル11.2%だった。一方で、ゴースト著者の出現率は11.9%、6.0%、5.3%だった。Wislar氏はこれら結果を踏まえ、「今回の結果は、オーサーシップの信頼性、アカウンタビリティ、透明性を促進するため、またサイエンスパブリケーションの健全性を維持するために、サイエンス雑誌、個々の著者、学術研究機関によるさらなる努力が欠かせないことを示唆するものである」と結論している。

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腎細胞がんに対するセカンドライン治療の第III相試験、axitinib対ソラフェニブ

新規の分子標的薬であるaxitinibは、進行腎細胞がんに対するセカンドライン治療の標準的治療薬であるソラフェニブに比べ、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、新たな選択肢となる可能性があることが、米国・Cleveland Clinic Taussig Cancer InstituteのBrian I Rini氏らが行ったAXIS試験で示された。毎年、世界で約17万人が腎細胞がんと診断され、7万2,000人が死亡している。多くが切除不能な進行病変として発見され、局所病変の多くは再発し、化学療法薬やサイトカイン製剤に抵抗性を示す頻度も高い。進行腎細胞がんの治療は分子標的薬の登場によって激変したが、現在まで分子標的薬同士の効果を比較した第III相試験の報告はされていなかった。Lancet誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月4日号)掲載の報告。2つの分子標的薬を直接比較する無作為化第III相試験AXIS試験の研究グループは、第2世代の選択的血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体阻害薬であるaxitinibと、欧米で転移性腎細胞がんのセカンドライン治療として承認されているVEGF受容体阻害薬ソラフェニブの有用性を比較する無作為化第III相試験を行った。22ヵ国175施設から、ファーストライン治療としてスニチニブ、ベバシズマブ+インターフェロンα、テムシロリムス、サイトカイン製剤を用いた治療を行っても病勢が進行した18歳以上の腎細胞がん患者が登録された。これらの患者が、axitinib(5mg、1日2回)あるいはソラフェニブ(400mg、1日2回)を経口投与する群に無作為に割り付けられた。axitinibは、高血圧やグレード2以上の有害反応が発現しなければ7mg、10mgへと増量してもよいこととした。患者および担当医には治療薬はマスクされなかった。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であり、マスクされた独立の画像審査員によって判定され、intention-to-treat解析が行われた。PFS中央値が2ヵ月延長723例が登録され、axitinib群に361例、ソラフェニブ群には362例が割り付けられた。PFS中央値はaxitinib群が6.7ヵ月と、ソラフェニブ群の4.7ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比:0.665、95%信頼区間:0.554~0.812、p<0.0001)。有害事象による治療中止は、axitinib群で4%(14/359例)に、ソラフェニブ群は8%(29/355例)に認められた。最も高頻度にみられた有害事象は、axitinib群が下痢、高血圧、疲労感で、ソラフェニブ群は下痢、手掌・足底発赤知覚不全症候群、脱毛であった。著者は、「axitinibは、ソラフェニブに比べPFSを有意に延長したことから、進行腎細胞がんのセカンドライン治療の選択肢となる可能性がある」と結論し、「現時点では全生存期間(OS)のデータは不十分なため、さらなる追跡を行う予定である」としている。(菅野守:医学ライター)

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出生前母体ステロイド投与、在胎23~25週の早産児の死亡・神経発達障害リスクを低減

 在胎23~25週の早産児について、出生前副腎皮質ステロイド投与により、生後18~22ヵ月の死亡または神経発達障害の発生リスクを低下することが明らかにされた。1995年に発表された最新ガイドラインでは、在胎24~34週での早期分娩に関して母体への出産前ステロイド投与が推奨されているが、24週以前の早産についてはデータが不足していた。一方でそれら早産児の多くが集中治療を受けていた。米国・アラバマ大学のWaldemar A. Carlo氏らが、早産児約1万児について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2011年12月7日号で発表した。6年間、全米23ヵ所から被験児を登録し検討 研究グループは、出生前ステロイド投与の効果について、在胎22~23週出生児について検討することを目的とした。1993年1月1日~2009年12月31日にかけて、全米23ヵ所の大学付属周産期医療センターで、在胎22~25週で生まれ、出生時体重が401~1000gだった1万541児について、前向きコホート試験を行った。 出生前の母体副腎皮質ステロイド投与と、生後18~22ヵ月の死亡率や神経発達障害との関連について調べた。 神経発達障害に関する評価は、1993~2008年に生まれ、生後18~22ヵ月時点まで生存した5,691児のうち4,924児(86.5%)について行われた。なお評価者には、被験者の母体副腎皮質ステロイド投与の有無に関する情報は知らされなかった。在胎22週では、死亡・神経発達障害発生の有意な低下は認められず その結果、生後18~22ヵ月時点における、死亡または神経発達障害の発生率は、在胎23週児でステロイド群が83.4%、非ステロイド群が90.5%と、ステロイド群で低かった(補正後オッズ比:0.58)。在胎24週児でもステロイド群68.4%、非ステロイド群80.3%(補正後オッズ比:0.62)、在胎25週児でも同52.7%、67.9%(補正後オッズ比:0.61)と、いずれもステロイド群で低かった。 しかし、在胎22週児では、両群で有意差は認められなかった。 在胎23~25週児では、母体への副腎皮質ステロイド投与によって、生後18~22ヵ月までの死亡や、院内死亡、死亡・脳室内出血・脳室周囲白質軟化症、死亡または壊死性全腸炎、のいずれの発生リスクも有意に低下した。 一方で在胎22週児では、母体への副腎皮質ステロイド投与により、死亡または壊死性全腸炎リスクについてのみステロイド群での有意な低下が認められた(ステロイド群73.5%対非ステロイド群84.5%、補正後オッズ比:0.54、95%信頼区間:0.30~0.97)。

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2型糖尿病患者への強化血糖コントロール、全死因死亡の低下を証明できず

2型糖尿病患者への強化血糖コントロールは、従来血糖コントロールと比べて、全死因死亡を低下するとは証明できなかったことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のBianca Hemmingsen氏らが検討した、システマティックレビューによる無作為化試験のメタ解析および系列分析の結果、報告された。心血管死亡、非致死的心筋梗塞、微小血管合併症の複合、網膜症についても、10%リスク減少を証明、論破するだけのデータを示すことはできなかった。一方で、強化血糖コントロールは、重度低血糖を30%増大することが実証されたという。BMJ誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月24日号)掲載報告より。14無作為化試験・2万8,614例のデータをメタ解析と系列分析でレビューHemmingsen氏らは、2010年12月までにアップされたCochrane Library、Medline、Embase、Science Citation Index Expanded、LILACS、CINAHLの自動探索から、また参照リストと記要の手動探索からと、著者、製薬会社、FDAからの直接入手によって、2型糖尿病患者に対する強化血糖コントロールと従来血糖コントロールを比較した無作為化試験データを収集した。対象とした試験は、言語、公表・未公表、事前特定アウトカムの有無を問わず収集され、14の無作為化試験、被験者2万8,614例(強化血糖コントロール群:1万5,269例、従来血糖コントロール群:1万3,345例)のデータが分析対象に同定された。2人の独立したレビュワーによって、研究方法、介入、結果、バイアスリスク、有害事象に関連するデータが抽出され、固定およびランダム効果モデルを用いて、95%信頼区間を算出したリスク比を推定算出して評価が行われた。系列分析で重度低血糖の30%リスク増大は支持される結果、強化血糖コントロールの全死因死亡の相対リスクに対する有意な効果(12試験2万8,359例対象で検討)は認められなかった(リスク比:1.02、95%信頼区間:0.91~1.13、P=0.74)。また、心血管死に対する効果(12試験2万8,359例対象)も有意ではなかった(同:1.11、0.92~1.35、P=0.27)。系列分析による、全死因死亡率の相対リスク10%減少は証明できず、心血管死亡に関してはデータ不十分であることが示された。 非致死的心筋梗塞についてはリスク減少の可能性は示されたが(同:0.85、0.76~0.95、P=0.004、8試験2万8,111例対象)、系列分析では証明できなかった。同様に、微小血管合併症の複合(同:0.88、0.79~0.97、P=0.01、3試験2万5,600例対象)、網膜症(同:0.80、0.67~0.94、P=0.009、7試験1万793例対象)もリスク減少は示されたが、系列分析では十分なエビデンスには達しないことが示された。腎障害リスクへの効果は、統計的に有意ではなかった(同:0.83、0.64~1.06、P=0.13、8試験2万7,769例対象)。一方で重度低血糖のリスクは、強化血糖コントロール群で有意な増大が認められ(相対リスク比:2.39、95%信頼区間:1.71~3.34、P<0.001、9試験2万7,844例対象)、系列分析で重度低血糖の30%リスク増大が支持された。

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新しい冠動脈疾患診断法CCTA、手術や医療費を増大、アウトカム効果はわずか

 冠動脈疾患診断の新しい非侵襲的診断検査法である冠動脈CT血管造影法(CCTA)について、米国メディケア受給者を対象に、ストレステストとの利用状況の比較および検査後の医療費支払いについての比較が行われた。結果、CCTAを受けた人のほうが、その後に侵襲的な手技を受けている割合が高く、冠動脈疾患関連の医療費支払いが高い傾向にあることが報告された。米国・スタンフォード大学のJacqueline Baras Shreibati氏らが2005~2008年の66歳以上メディケア受給者28万人超のデータを解析した結果、報告した。JAMA誌2011年11月16日号掲載報告より。CCTAを受けた人とストレステストを受けた人を比較 Shreibati氏らは、メディケア受給者を対象に、非侵襲的心臓検査を機能的検査(ストレステスト:心筋血流シンチグラフィー、負荷心エコー、運動負荷心電図)で受けた人と解剖学的検査(CCTA)で受けた人との利用状況およびその後の医療費支払いについて比較する後ろ向き観察コホート研究を行った。 対象は、66歳以上の2005~2008年のメディケア診療報酬支払受給者で、請求データから20%無作為抽出で選出された、非緊急かつ非侵襲の冠動脈疾患診断を受けた年の前年には冠動脈疾患に関する支払いがなかった28万2,830例だった。 主要評価項目は、診断を受けてから180日間の、心臓カテーテル治療(心カテ)、冠動脈血行再建の施行率、急性心筋梗塞の発生率、全死因死亡率、メディケア支払いの総額およびCAD関連の支払額についてだった。CCTA群で総医療費支払いが有意に高かった 結果、心筋血流シンチグラフィー(MPS)を受けた人(参照群)と比べてCCTAを受けた人は、その後に侵襲的手技を受けている割合が増大する可能性が示された。心カテを受けていたのは、CCTA群22.9%に対しMPS群12.1%(補正後オッズ比:2.19、95%信頼区間:2.08~2.32、P<0.001)、経皮的冠動脈介入(PCI)は同7.8%対3.4%(同:2.49、2.28~2.72、P<0.001)、冠動脈バイパス移植(CABG)は同3.7%対1.3%(同:3.00、2.63~3.41、P<0.001)で、それぞれCCTA群の有意な増大が認められた。 またCCTA群のほうが、総医療費支払いが有意に高かった[MPS群より4,200ドル増(95%信頼区間:3,193~5,267)、P<0.001]。その要因のほとんどは、冠動脈疾患関連の支払いが多かったこと[MPS群より4,007ドル増(同:3,256~4,835)、P<0.001]によるものだった。一方で、負荷心エコー群や運動負荷心電図群の総医療費支払いは、MPS群より少なかった。負荷心エコー群はMPS群より-4,981ドル(同:-4,991~-4,969、P<0.001)、運動負荷心電図群は同-7,449ドル(同:-7,452~-7,444、P<0.001)だった。 しかし180日時点の全死因死亡率、急性心筋梗塞による入院率は、CCTA群で減少する可能性はわずかだった。全死因死亡率はCCTA群1.05%に対しMPS群1.28%(補正後オッズ比:1.11、95%信頼区間:0.88~1.38、P=0.32)、急性心筋梗塞による入院率は同0.19%対0.43%(同:0.60、0.37~0.98、P=0.04)だった。 著者は、「現状ではCCTAの利用は3%だが、今後10年で相当な増加が予想される。しかし、本結果が示すようにCCTAはその後の侵襲的手技を増やし、医療費コストを増大する。臨床家と政策担当者は、その後のアウトカムの試験結果に基づき、臨床でのCCTA利用を批判的に評価すべきであろう」とまとめている。

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研究論文の質を高め、インパクトあるものにするには?

STROBE(疫学で観察研究の報告を強化する)やCONSORT(試験報告の標準を強化)のようなレポートガイドラインに基づく付加的レビューを行えば、原稿の質を高めることができることが報告された。ただし、その質的向上はわずかで、明確に立証することはできなかったという。スペイン・Elsevier-Barcelona社Medicina ClinicaのE Cobo氏らが盲検無作為化試験を行い報告した。BMJ誌2011年11月26日号(オンライン版2011年11月22日号)掲載報告より。従来レビュー単独群と、付加的レビューを加味した群に無作為化し、原稿改善を評価試験は、2008年5月~2009年4月にMedicina Clinica学術誌に提出され、刊行にふさわしいとみなされたオリジナルリサーチ研究343例を対象とした。そのうち従来法レビューを受けている126例を、対照群(従来法のピアレビュー単独)と介入群(従来法レビューに加えて、レポートガイドラインから見つからない項目を探す付加的レビューを行う)に無作為化し、著者に戻したのち、レビューに基づき改稿された原稿の質を、5ポイント制のリカート尺度で評価するという方法で検討が行われた。主要アウトカムは、原稿の質とし、副次的アウトカムは、論文中の特異的な項目(ガイドラインでのチェックポイント)についての平均的な質とされた。主要解析は、基線因子の補正後、無作為化群全体で比較をした(共分散分析)。感度解析はレビュー群間で比較され、レビュアー示唆に対する厳守はリカート尺度で評価した。付加的レビュー実施群のほうが原稿の質は改善、しかし著者が耳を傾けるのは……一連の論文126例のうち34例は刊行にふさわしくないものだったため、残りの92例が、従来法レビュー単独群(41例)と付加的レビュー実施群(51例)に割り付けられた。また従来法レビュー群に割り付けられた論文のうち4例は、プロトコルから逸脱しており、それらは、レポートガイドラインに基づく付加的レビューを受けた。解析から、付加的レビューを受けた原稿のほうが改善していることがうかがえた(無作為化群間比較:0.25、95%信頼区間:0.05~0.54、レビュー群間比較:0.33、同:0.03~0.63)。基線から改善した原稿は、従来法レビュー単独群よりも付加的レビュー実施群のほうが多かった[22(43%)vs. 8(20%)、格差:23.6%(同:3.2~44.0%)、NNT:4.2(同:2.3~31.2)、相対リスク:2.21(同:1.10~4.44)]。一方で、付加的レビュー群の著者は、付加的レビューからのサジェスチョンよりも、従来法レビューからのサジェスチョンのほうを優先していた(リカート平均上昇値:0.43、同:0.19~0.67)。上記を踏まえて著者は、「レポートガイドラインに基づく付加的レビューは、原稿の質を改善する。しかし、観察された影響はわずかで、明確に立証することはできなかった」と報告。また、「各論文執筆者は、付加的レビューからのサジェスチョンより従来法レビューからのサジェスチョンに従っていた。このことは、調査方法論の高水準を厳守することが難しいことを示すものである。質の高い影響力のある論文とするには、著者は、研究をまさに始める段階で、レポートガイドラインが求める要件を知っておかなくてはならない」と結論している。

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自宅での自己採取HPV検査は子宮頸がん予防に有効か?

自宅で行う腟分泌物自己採取法によるヒトパピローマウイルス(HPV)DNA検査は、細胞診よりも陽性適中率は低いものの、医療資源に乏しく有効な細胞診プログラムを実施できない環境下では、グレード2以上の頸部上皮内がん(CIN)を検出するのに好ましい方法であることが報告された。メキシコ国立公衆衛生研究所のEduardo Lazcano-Ponce氏らによる。腟分泌物HPV DNA検査は、診療所で行う場合は、細胞診と同じかそれ以上の検出力があることが明らかになっていたが、自宅で行う場合の有効性については明らかにされていなかった。Lancet誌2011年11月26日号(オンライン版2011年11月2日号)掲載報告より。25~65歳の低所得・低医療サービス地域のメキシコ女性2万5,061例を対象に研究グループは、診療所での子宮頸部細胞診と比較した、自宅で行う腟分泌物自己採取法によるHPVスクリーニングとの相対感度と陽性適中率の検証を行うことを目的に、地域ベースの無作為化同等性試験を行った。対象は、25~65歳のメキシコ女性2万5,061例で、社会経済的地位が低く、同国モレロス州、ゲレロ州の医療サービスが不十分な、主として農村部の540地点から登録された。主要エンドポイントは、コルポスコピーによって確認されたCIN 2以上とされた。解析はper-protocolおよびintention-to-screenにて行われた。被験者は、コンピュータにて無作為にHPVスクリーニング群(1万2,330例)と子宮頸部細胞診群(1万2,731例)に割り付けられた。その後、割り付け情報を知らされていない8人の地域看護師が、被検者氏名・住所リストをデイリーで受け取り、割り付けられた訪問を行い、いずれの検査でも陽性であった女性がコルポスコピー検査を受けた。プロトコルを遵守したのは、HPVスクリーニング群9,202例、子宮頸部細胞診群1万1,054例だった。HPV検査は細胞診と比べて、CIN 2以上特定3.4倍、侵襲性がん検出4.2倍以上結果、HPV有病率は9.8%(95%信頼区間:9.1~10.4)、異常細胞率は0.38%(同:0.23~0.45)だった。CIN 2以上女性の特定は、1万人あたり、HPV検査は117.4件(同:95.2~139.5)だったのに対し、細胞診は34.4件(同:23.4~45.3)で、HPV検査の相対感度は、3.4倍以上(同:2.4~4.9)に上った。同様にHPV検査は、侵襲性のがんを細胞診よりも4.2倍以上検出した[1万人あたり30.4件(同:19.1~41.7)vs. 7.2(同:2.2~12.3)]。一方で陽性適中率は、HPV検査は12.2%(同:9.9~14.5)、細胞診は90.5%(同:61.7~100)だった。

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これならデキル!内科医のための精神科的対応“自由自在”

第1回「話を聴くということ」第2回「フォーマットで聴く」第3回「MAPSOとは?その①『うつ』と『躁』」 第1回「話を聴くということ」外来患者の中には、ひとつの疾患が原因と限らず、さまざまな原因が複雑に絡み合い症候として現れていることも少なくありません。特にメンタルな要素が伴う場合、非精神科医では非常に手こずってしまうケースが見受けられます。場当たり的な対応をして、余計に限られた時間を浪費してしまうなんてことも…。そんなお悩みを解決する本シリーズでは、米国の「Psychiatry In Primary Care」という、プライマリ・ケア医向けの優れたメンタル対応プログラムを日本の医療従事者のためにカスタマイズしてお届けします。講師の井出先生の目標は、「初診でも20分以内に問診から診察までを完了すること」。プログラムに沿って学習していけば、精神科非専門医でも心療対応力をレベルアップして、日々の診療に臨めます。ぜひ「これならデキル!」を実感してください。第2回「フォーマットで聴く」プログラムのノウハウの真骨頂とも言うべき、フォーマットについて学びます。このフォーマットとは、定型的な構造に従って患者さんの話を聴くことです。これを遵守すれば、「時間を効率的に使える」「診療の疲れが劇的に軽減する」「聴き終わったときには、診断がついている」という三つのメリットを享受できます。第3回「MAPSOとは?その①『うつ』と『躁』」今回からは、いよいよ本格的なメソッドを公開します。メソッドのキモになるMAPSOとは、患者さんの心理コンディション[M:うつ・躁エピソードチェック/A:不安5種/P:精神病症状/S:アルコール/O:器質的]の聴取方法です。MAPSOをマスターすると、用語と疾患概念が内科臨床の中で使いやすいように整理できます。また、パターン認識によって素早く疾患の存在に気付けるようになります。 第3回では、[M:うつ・躁エピソードチェック]に関して解説します。臨場感溢れる講義をお楽しみください。

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乳幼児へのマラリアワクチンRTS,S/AS01、疾患発症および重症化とも予防に効果

世界のマラリア罹患者は年間約2億2,500万人、うち死亡は78万1,000人に上り、ほとんどがアフリカの小児だという。そのような公衆衛生上の脅威であるマラリアに対して開発されたワクチンRTS,S/AS01が、5~17ヵ月児の臨床症状発症を約半分に抑え、重症化を予防し得ることが、RTS,S Clinical Trials Partnershipらにより行われている第3相試験の結果、報告された。試験は、アフリカ7ヵ国・11施設共同で行われており、本報告は同試験初の報告で、NEJM誌2011年11月17日号(オンライン版2011年10月18日号)で発表された。アフリカ7ヵ国・11施設で1万5,460例を登録し検討研究グループは、2009年3月~2011年1月に、アフリカ7ヵ国・11施設で、生後6~12週児(6,573例)と生後5~17ヵ月児(8,923例)の2つの年齢カテゴリーの乳児合わせて1万5,460例を登録し、RTS,S/AS01または比較のための非マラリアワクチンを接種した。主要エンドポイントは、プロトコルに従って3回のワクチン接種をすべて受けた5~17ヵ月児6,000例について解析した、ワクチン接種後12ヵ月間の有効性(マラリアの臨床症状発症に対するワクチン効果)とした。また、2つの年齢カテゴリーの重症マラリアへのワクチン有効性の評価は、250例の小児が重症マラリアを発症した時点で行われた。初回接種後14ヵ月時点、ワクチン有効性は3回接種児で55.8%ワクチンの初回接種後14ヵ月時点で、5~17ヵ月児6,000例の臨床的マラリアエピソードの発生率は、RTS,S/AS01群は0.32件/人・年、対照群は0.55件/人・年で、ワクチン有効性は、intention-to-treat集団(ワクチン接種を最低1回接種児)では50.4%(95%信頼区間:45.8~54.6)、パープロトコル集団(同3回接種児)では55.8%(97.5%信頼区間:50.6~60.4)であった。重症マラリアに対するワクチンの有効性は、intention-to-treat集団45.1%(95%信頼区間:23.8~60.5)、パープロトコル集団47.3%(同:22.4~64.2)であった。両年齢カテゴリー群合わせての重症マラリアに対するワクチンの有効性は、平均追跡期間11ヵ月のパープロトコル集団で34.8%(同:16.2~49.2)であった。重篤な有害事象の発生頻度は、2つの試験群で同程度だった。なお5~17ヵ月児群において、RTS,S/AS01ワクチン接種後の全身性痙攣発作の割合は、1.04件/1,000回接種(95%信頼区間:0.62~1.64)だった。(武藤まき:医療ライター)

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初発の心筋梗塞後の院内死亡率、冠動脈心疾患リスクが少ないほど増大

 心筋梗塞を初めて発症し、それ以前に心血管疾患歴のない人の院内死亡リスクについて、5つの主要な冠動脈心疾患リスクの数との関連を調べた結果、リスクが少ないほど高くなる逆相関の関連がみられることが大規模試験の結果、示された。米国フロリダ州にあるWatson ClinicのJohn G. Canto氏らが、約54万人を対象とした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月16日号で発表した。これまで地域ベースでの急性心筋梗塞の冠動脈心疾患リスク因子数とアウトカムとの関連について、調査されたことはほとんどなかった。全米心筋梗塞レジストリ54万2,008人について調査 研究グループは、1994~2006年の全米心筋梗塞レジストリから、心筋梗塞を初めて発症し、それ以前に心血管疾患歴のない54万2,008人について調査を行った。 冠動脈心疾患の主要リスク因子である、高血圧、喫煙、脂質異常症、糖尿病、冠動脈心疾患の家族歴の5つと、院内総死亡リスクの関連について分析を行った。 被験者の平均年齢は66.3歳、うち女性は41.4%だった。そのうち、来院時に冠動脈心疾患のリスク因子が全く認められなかったのは14.4%、1~3個のリスク因子があったのは81%、4~5個のリスク因子があったのは4.5%だった。リスク因子0の人は、5つを有する人に比べ院内死亡リスクが1.54倍 リスク因子の数は、年齢が増すほど増加し、リスクがまったく認められなかった群の平均年齢は56.7歳だったのに対し、5つすべてが認められた群の平均年齢は71.5歳だった(傾向に関するp<0.001)。 被験者のうち、院内総死亡数は5万788人だった。補正前の院内死亡率は、同リスク因子が少ないほど高率で、リスク因子総数0群14.9%、同1群10.9%、同2群7.9%、同3群5.3%、同4群4.2%、同5群3.6%だった。 年齢とその他臨床的リスク因子を補正後、主要な冠動脈心疾患リスク因子の数と、院内総死亡率との間には逆相関の関連が認められた。同リスク因子総数0群の、同5群に対する同死亡に関するオッズ比は1.54(95%信頼区間:1.23~1.94)だった。

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関節リウマチ患者が求める治療とは? ~患者パネルを用いた実態調査~

関節リウマチ(RA)治療は、痛みを取ることしかできなかった“care”の時代から、メトトレキサート(MTX)と生物学的製剤の登場によって、臨床的寛解や生命予後改善を目指す“cure”の時代へとめざましい進歩を遂げている。現在は、5年後10年後を考えて治療することが重要となってきているが、現在の薬物治療の実態や患者さんの意識はどうなのか? ここでは、2011年11月24日に開催されたセミナー「リウマチ治療が抱える課題:治療が遅れ、痛みがとりきれない患者さんも ~早期診断・治療が十分でない現状が明らかに~」(主催:ファイザー株式会社)から、RA患者を対象としたインターネット調査結果に関する山中 寿氏(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長)の講演をレポートする。■500名のRA患者を対象としたインターネット調査今回のインターネット調査は、電通リサーチ・ミリオネットのパネル登録者から、RA治療のために医療機関に通院中で、薬剤によるRA治療が行われているRA患者500名(RA罹患率に合わせ、男女比を1:4に調整)を対象に2011年6月に実施された。患者背景は、年齢49.8±10.6歳、JHAQスコア0.55±0.64、生物学的製剤使用患者割合24%であった。 本調査の対象患者は、自らパネルに登録していることを考慮すると、治療や情報収集におけるモチベーションはより高いと考えられる。しかしながら、山中氏によると、同氏が2000年から実施し、毎回約5,000名のRA患者の情報を集積している前向き観察研究のJ-ARAMIS(Japanese Arthritis Rheumatism and Aging Medical Information System、2006年にIORRA;Institute of Rheumatology, Rheumatoid Arthritisと改称)とほぼ同様な結果が得られたとのことである。■発症から確定診断・薬物治療までの現状自覚症状発現から確定診断までの期間は、3ヵ月以上が53.6%、4割近くが6ヵ月以上であった。自覚症状発現からMTX開始までの期間は2年以上が56.5%を占め、またMTX無効な場合に投与できる生物学的製剤使用までの期間は、78.5%が自覚症状発現から2年以上の期間を要していた。なおMTXについては、2011年2月に添付文書が改訂され、治療の最初から使用できるようになったため、今後、この期間は短くなるものと思われる。 また本調査では、RAの確定診断やMTXおよび生物学的製剤の投与は、整形外科よりも膠原病・リウマチ科で積極的に実施されている傾向が認められた。診療科におけるこれらの差は、地域の医療環境に差がある可能性が高い、と山中氏は推察している。■生物学的製剤による治療状況生物学的製剤の使用状況については、エタネルセプト(商品名:エンブレル)が45.0%ともっとも多く、次いでインフリキシマブ(商品名:レミケード)が27.5%であった。IORRAのデータ(2011年4月時点)でも、エタネルセプトが47.6%であり、同様の傾向を示していた。 RA治療に対する満足度では、生物学的製剤使用患者では72.5%、非使用患者では49.7%が「満足である」と回答し、生物学的製剤を使用している患者のほうが治療満足度が高いことが示された。しかし、生物学的製剤使用患者では、二次無効や副作用などで薬剤変更経験がある患者は31.6%存在していた。 実際の生物学的製剤の選定においては、71.7%が医師主導で薬剤を選定しており、投与方法や投与回数などの使い方はよく理解しているものの、長期にわたる効果や安全性については理解が十分ではないことが明らかとなった。その一方で、生物学的製剤使用患者は長期的な治療効果の維持を望んでいることが示されたことから、長期的な治療効果や副作用についてもしっかりと情報提供を行い、長期的な治療の必要性を伝えていくことが必要である、と山中氏は指摘した。■就労・医療費における問題RAの発症によって、仕事を辞めたり変更したりしたことのある患者は4割を超え、とくに女性は5割近くにのぼり、就労に支障を来たしていることが示された。 医療費に関する調査結果からは、医療費の問題で生物学的製剤を使用していない患者さんが存在する可能性が示唆された。現在、生物学的製剤を使用する場合の薬剤費が年間約140万円であり、3割負担でも月々4~5万円かかることが生物学的製剤使用のネックとなっていることがうかがわれる。また、世帯年収別の生物学的製剤の使用状況を調べたところ、300万円未満の世帯を除くと、年収の増加に伴って使用患者の割合が増加していた(300万円未満の世帯での使用割合は、生活保護などのサポート制度などの影響が推察される)。山中氏は薬剤選定の際には患者さんに治療費用を含めて選択肢を示しているが、ほとんどの患者さんがその場では決められないという。■RA患者が求める情報提供情報の入手度に関する質問には、半数以上のRA患者が「適切な治療や薬剤に関する情報」や「RAに関する一般疾病情報」については「得られている」と回答している。しかし、「研究成果などに関する最新診療情報」や「医療機関およびサービスの選択に関わる情報」については3割前後であり、今後はこれらについての情報提供が望まれる。■「壁抜け」まであと少し今回の調査結果について、山中氏は、「これらのRA治療における問題点を今後の診療に生かし、RA患者さんが少しでも楽な生活、楽しい人生を送るためによい方向に向けていきたい」と語り、さらにRA診療について「かなり進歩したが、まだ壁を抜けきったわけではない。半分は壁の向こうにあり、まだまだ解決すべき問題は多い。それを自覚して努力していきたい」と述べて講演を締めくくった。(ケアネット 金沢 浩子)

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リピート処方の質と安全に、受付・事務スタッフの創造的判断が貢献

リピート処方(repeat prescribing)、いわゆるDo処方について、受付または事務スタッフが、質および安全性に対して重大な「隠れた」貢献を行っているとの研究結果が報告された。英国・バーツ&ロンドン医科歯科大学校のDeborah Swinglehurst氏らによる。BMJ誌2011年11月12日号(オンライン版2011年11月3日号)掲載報告より。リピート処方をめぐる質・安全への貢献および障壁について調査Swinglehurst氏らは、GP(general practice)におけるリピート処方に関して、組織業務の様子を描出、調査、比較検討することで、質および安全に対する貢献者および障壁を特定する研究を行った。研究対象となったのは、電子患者記録を使用しており、患者への処方が準オートメーション化されている英国4都市の組織形態が多様なGP。395時間にわたって民族誌学的事例研究の手法でスタッフ(医師25人、看護師16人、ヘルスアシスタント4人、マネジャー6人、受付・事務スタッフ56人)を観察し、28の文書と、リピート処方に関わる部分的、全体的な人為的な現象について調べた。主要評価項目は、患者安全や良好な診療の特徴に対する潜在的な脅威とした。研究グループは、医師、受付・事務スタッフがリピート処方について、どのような貢献をしているか、また協同しているかを観察し、処方作業をマッピングすること、組織的実践を描出すること、それらを一緒に話し合って描画しているかなどについて解析した。これらは社会的モデルとして知られるもので、ICT(information and communications technologies)により形成化されているものであった。これからの患者安全の研究は、テクノロジーサポートを研究することが大切調査・解析の結果、リピート処方は複雑で、患者安全に重大な影響を有し、医師とスタッフの協働が求められるテクノロジーサポート・ソーシャルプラクティスであることが明らかになった。リピート処方の半数以上が、受付スタッフによって“例外”と判断されていた。大半は、電子リスト上にあったものと異なる薬、投与量、タイミングなどの理由によるものであった。形式的な処方プロトコルと、リピート処方を書くことにはギャップが存在する。そのギャップを埋める作業として、医師が知らないうちに、受付・事務スタッフの創造的な判断が貢献していた。Swinglehurst氏は、「一見、平凡で、標準的で、自動化されていると見られるテクノロジーサポート・ルーチンワークは、実際には高度な部分的な調整や判断が最前線のスタッフによって求められる。それらを研究することが、患者安全研究の新たなアジェンダになっていくだろう」と結論している。

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専門病棟での集学的管理プロトコールが急性期脳卒中の予後を改善

急性期脳卒中専門病棟における看護師による発熱、高血糖、嚥下障害の集学的な管理プロトコールの実践により、退院後の良好な患者アウトカムがもたらされることが、オーストラリア・カソリック大学看護学研究所のSandy Middleton氏らが行ったQASC試験で示された。組織化された脳卒中専門病棟は脳血管イベントによる死亡や身体機能障害を低減するが、長期的な患者の回復に重要なことが知られているにもかかわらず十分な管理が行われていない因子として、発熱、高血糖、嚥下障害が挙げられるという。同氏らは、これら3つの因子のエビデンスに基づく集学的な管理プロトコールを専門病棟で遂行するための標準化された教育プログラムを開発した。Lancet誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月12日号)掲載の報告。ASUにおけるFeSS管理プロトコールの有用性を評価するクラスター無作為化試験QASC(Quality in Acute Stroke Care)試験の研究グループは、急性期脳卒中の専門病棟(acute stroke unit: ASU)に入院中の患者において、エビデンスに基づく発熱(fever)、高血糖(hyperglycaemia=sugar)、嚥下障害(swallowing dysfunction)(FeSS)の管理が、退院後のアウトカムに及ぼす影響を評価する単盲検クラスター無作為化対照比較試験を実施した。対象は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のCTとhigh dependency unit(HDU)を備えたASUに入院した発症後48時間以内の虚血性脳卒中または脳出血患者で、英語を話す18歳以上の者とした。FeSS群には、集学的チームによるFeSS管理のための治療プロトコール(ASU入院後72時間内に行う看護師による管理が中心)が施行され、対照群は既存のガイドラインの簡易版に基づく治療を受けた。介入前(無作為割り付け前)と、介入後の患者コホートを登録し、90日後の死亡または要介助[修正Rankinスケール(mRS)≧2]、機能評価[Barthelインデックス(BI)]、QOL(SF-36の「身体機能」と「心の健康」)を比較した。研究助手、統計解析担当、患者には割り付け情報はマスクされた。脳卒中専門病棟の拡充につながる知見19のASUがクラスターとして登録され、FeSS群に10施設、対照群には9施設が割り付けられた。介入前(2005年7月30日~2007年10月30日)のデータは687例から、介入後(2009年2月4日~2010年8月25日)のデータは1,009例(FeSS群:558例、対照群:451例)から得られた。介入前データの解析結果はすでに報告されており、90日後の死亡、死亡または要介助、機能評価などはFeSS群と対照群で同等であった。介入後は、脳卒中の重症度にかかわらず、90日後における死亡またはmRS≧2の割合はFeSS群が42%(236/558例)と、対照群の58%(259/449例)に比べ有意に低かった(p=0.002)。SF-36の「身体機能」の平均スコアはFeSS群[45.6(SD 10.2)]が対照群[42.5(SD 10.5)]よりも有意に良好だった(p=0.002)が、死亡率[4%(21/558例)vs. 5%(24/451例)、p=0.36]やSF-36の「心の健康」[49.5(SD 10.9)vs. 49.4(SD 10.6)、p=0.69]に差はなく、機能評価[BI≧60:92%(487/532例)vs. 90%(380/423例)、p=0.44]も両群で同等であった。著者は、「エビデンスに基づく看護師による発熱、高血糖、嚥下障害の集学的な管理プロトコールは、脳卒中専門病棟退院後の患者において良好なアウトカムをもたらす」と結論し、「これらの知見は脳卒中専門病棟の拡充の可能性を示すものだ」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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乳房温存術後の放射線療法による再発抑制効果は背景因子で異なる

乳房温存術後の温存乳房に対し放射線療法を追加することにより、再発率がほぼ半減して乳がん死は約6分の5にまで低下し、これらのベネフィットはほとんどのサブグループで認められるが、その程度は背景因子によって異なることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)によるメタ解析で示された。早期乳がんには通常、乳房温存術が行われるが、温存乳房内には微小腫瘍病変が残存している可能性があり、後年、局所再発や遠隔転移を来す恐れがある。乳房温存術後の放射線療法により再発や乳がん死が低減することが示されているが、より有効性の高いサブグループが存在する可能性があるという。Lancet誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月20日号)掲載の報告。放射線療法追加の効果の背景因子による違いを評価EBCTCGは、乳房温存術後に放射線療法を受けた患者において、さまざまな予後因子や背景因子に応じて再発や乳がん死の状況を解析し、15年乳がん死リスクに対する10年再発リスクの影響を検討するためのメタ解析を行った。解析には、乳房温存術後に放射線療法を受けた患者と受けなかった患者の予後を比較した17件の無作為化試験に登録された1万801例の個々の患者データを用いた。このうち、病理学的にリンパ節転移陰性(pN0)あるいは陽性(pN+)と確定された患者は8,337例であった。1例の15年乳がん死の回避には4例の10年再発の予防が必要初回再発(局所および遠隔)の10年リスクは、乳房温存術単独群の35.0%から放射線療法追加群では19.3%まで有意に低下し(絶対低下率:15.7%、95%信頼区間:13.7~17.7、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の25.2%から追加群では21.4%まで有意に減少した(同:3.8%、1.6~6.0、2p=0.00005)。pN0例(7,287例)においては、10年再発リスクは乳房温存術単独群の31.0%から放射線療法追加群では15.6%まで(絶対低下率:15.4%、95%信頼区間:13.2~17.6、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の20.5%から追加群では17.2%まで有意に低減した(同:3.3%、0.8~5.8、2p=0.005)。pN0例における再発リスクの絶対低下率は年齢、腫瘍の悪性度、エストロゲン受容体の状態、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスほか)の使用状況、手術範囲によって変動がみられ、これらの背景因子を用いて10年再発リスクの絶対低下率を「高(≧20%)」「中(10~19%)」「低(<10%)」に分けて予測が可能であった。また、この分類に対応した15年乳がん死リスクの絶対低下率が高い群は7.8%、中等度の群は1.1%、低い群は0.1%であった(死亡の絶対低下率の傾向検定:2p=0.03)。pN+例(1,050例)は、10年再発リスクが乳房温存術単独群の63.7%から放射線療法追加群では42.5%まで有意に低下し(絶対低下率:21.2%、95%信頼区間:14.5~27.9、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の51.3%から追加群では42.8%まで有意に減少した(同:8.5%、1.8~15.2、2p=0.01)。全体として、10年後の再発を4例で予防できれば、1例を15年後の乳がん死から救うことが可能であった。このような関連は、リンパ節転移の状態が確定された患者におけるリスク低減の高/中/低の予測カテゴリーでも同様に認められた。著者は、「乳房温存術後の温存乳房に対する放射線療法により再発率がほぼ半減し、乳がん死は約6分の5にまで低下した。これらのベネフィットはほとんどのサブグループでみられたが、ベネフィットの程度は患者の背景因子によって実質的に異なっており、治療の決定の際に予後の予測が可能と考えられる」と結論し、「温存乳房内の微小残存腫瘍を放射線療法で死滅させることで局所再発と遠隔転移の双方を抑制可能なことが示唆される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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重症型急性アルコール性肝炎に対するプレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法

 死亡率が高い重症型急性アルコール性肝炎について、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法が生存率を改善するかについて検討した試験が行われた。結果、1ヵ月生存率は上昇したが、主要転帰とした6ヵ月生存率は改善されなかったという。フランス・Picardy大学のEric Nguyen-Khac氏らが、174例を対象とした無作為化試験の結果、報告した。同疾患患者の死亡率は、グルココルチコイド治療を行っても6ヵ月以内の死亡率が35%と高い。NEJM誌2011年11月10日号掲載報告より。プレドニゾロン単独療法と、+N-アセチルシステイン併用療法とを比較 Nguyen-Khac氏らAAH-NAC(Acute Alcoholic Hepatitis–N-Acetylcysteine)研究グループは、2004~2009年にフランスの11大学病院に重症型急性アルコール性肝炎で入院した患者174例を対象に試験を行った。 被験者は無作為に、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法を受ける群(85例)とプレドニゾロン単独療法を受ける群(89例)に無作為に割り付けられた。被験者は全員4週間にわたってプレドニゾロン40mg/日の経口投与を受け、そのうち併用群は最初の5日間にN-アセチルシステイン静注を受けた。同投与量は、1日目は150mg/kg体重を5%ブドウ糖液250mLに溶解したものを30分間、50mg/kgを同500mLに溶解したものを4時間、100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを16時間かけて投与。2~5日目は、1日当たり100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを投与した。 単独群はその間、5%ブドウ糖液1,000mLのみが投与された。試験中、腹水治療のための利尿薬投与などや門脈圧亢進症のためのβ遮断薬の使用は認められた。飲酒癖は本人任せであった。アセトアミノフェン、ペントキシフィリン、抗TNF-αの使用は禁止された。全患者は標準病院食(1日1,800~2,000kcal)を受けた。主要転帰6ヵ月生存、併用群のほうが低かったが有意差は認められず 主要転帰は6ヵ月での生存とした。結果、併用群(27%)のほうが単独群(38%)よりも低かったが有意ではなかった(P=0.07)。 副次転帰は、1ヵ月、3ヵ月の生存、肝炎の合併症、N-アセチルシステイン使用による有害事象、7~14日のビリルビン値の変化などであった。結果、1ヵ月時点の死亡率は併用群(8%)のほうが単独群(24%)よりも有意に低かったが(P=0.006)、3ヵ月時点では有意差は認められなくなっていた(22%対34%、P=0.06)。6ヵ月時点の肝腎症候群による死亡は、併用群(9%)のほうが単独群(22%)よりも低かった(P=0.02)。 多変量解析の結果、6ヵ月生存に関連する因子は、「年齢がより若いこと」「プロトロンビン時間がより短いこと」「基線のビリルビン値がより低いこと」「14日時点でのビリルビン値低下」であった(いずれもP<0.001)。 感染症は、単独群よりも併用群で頻度が高かった(P=0.001)。その他副作用は両群で同等であった。

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クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)治療薬 カナキヌマブ

2011年9月、カナキヌマブ(商品名:イラリス)がクリオピリン関連周期性症候群(CAPS)の適応を国内で初めて取得した。この承認にあたり2011年11月8日(火)に「ノバルティスファーマ・メディアフォーラム」が開催された。演者の横田俊平氏(横浜市立大学大学院 医学研究科 発生成育小児医療学 教授)、および「CAPS患者・家族の会」代表を務める利根川聡氏の講演内容をレポートする。待望の新薬の承認本講演の冒頭において、横田氏は、「これまで、国内でCAPSに適応のある薬剤がなかった。そのため、患者さんは日々進行する辛い症状に耐え、そのご家族もまた、その姿を目の当たりにし、苦しみ続けてきた。そのような方々にとって、カナキヌマブは、まさに長い間待ち望まれてきた新薬である」と述べ、カナキヌマブが画期的な新薬であることを強調した。CAPSとは炎症性サイトカインのひとつであるヒトインターロイキン(IL)-1βが過剰に産生することで、炎症反応が起こる慢性自己炎症疾患群である。生後すぐあるいは幼児期より発症し、生涯を通じて発疹、発熱、関節痛などが繰り返され、重篤な場合には、聴覚や視覚障害、骨や関節の変形、腎障害などを引き起こす可能性がある。国内では標準的治療ガイドラインがなく、また極めて稀な疾患であることから確定診断に至らない患者さんも多い1)~3)。現在、国内の患者数は30名程度とされるが、未診断の患者を含めると全国に100名くらいの患者がいると見込まれている。投与間隔8週間で効果を発揮カナキヌマブはヒトインターロイキン(IL)-1βに対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG1(IgG1)モノクローナル抗体で8週毎に皮下投与する。国内における臨床試験では、投与24週以内に完全寛解した患者さんの割合は94.7%で、投与48週以内に完全寛解した割合は100%であった。横田氏によれば、CAPS治療はこれまで、対症療法しかなかったが、カナキヌマブの登場により、CAPSの炎症症状を速やかに寛解させることができるようになったという。それは患者のQOLや予後の改善だけでなく、家族にとっても大変喜ばしいことであるとも述べた。治療上の注意点国内臨床試験における主な副作用は19例中12例(63.2%)に認められた。主な副作用は鼻咽頭炎3例(15.8%)、口内炎2例(10.5%)であった。横田氏はCAPS治療を行う上で感染症には注意が必要であると述べている。カナキヌマブの特性上、投与により発熱や炎症が治まるため、たとえば肺炎であるにも関わらず、肺炎と診断されないケースがあるという。また、世界的にみても、発売して間もない薬剤であるため、長期的な評価に乏しく、今後も慎重な経過観察が必要とも述べた。CAPS患者・家族の会の存在カナキヌマブは申請から8ヵ月間という短期間での承認に至ったが、その背景にはCAPS患者・家族の会の存在も大きい。CAPS患者・家族の会の代表を務める利根川聡氏のご息女は、1歳になる前にCAPSを発症し、全身の発疹、発熱、関節痛などにより、車いす生活を余儀なくされた。当時、CAPS治療は対症療法しかなかったため、ただひたすら苦しみに耐えるわが子の姿を見守る日々が続いた。しかし、カナキヌマブでの治療を受け、それらの症状は次第に寛解し、今では外で運動することができるまでになったという。利根川氏にとって何より嬉しかったことは毎日、苦しい表情をしていた我が子に笑顔が戻り、周囲の子供達と同じような生活が送れるようになったことだという。しかし、高額な薬剤費が家族の経済的な負担になっているという課題も残されている。現在、CAPS患者・家族の会では、国による患者支援を受けるため、難病指定・特定疾患の認定を要望する活動を続けている。まとめカナキヌマブは世界的にみても、発売されて間もない薬剤であるため、今後も慎重な経過観察が必要であるといえる。しかしながら、カナキヌマブの登場により、今後CAPS治療は大きく変わっていくであろう。これまでCAPS患者はCAPSと診断されず、施設を転々とするケースも多かったという。この薬剤の登場を契機に、より多くの医療関係者がCAPSという希少疾患に対する見識を深め、早期診断、早期治療を行っていくことも次の課題といえよう。

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