乳房温存術後の放射線療法による再発抑制効果は背景因子で異なる

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2011/11/24

 



乳房温存術後の温存乳房に対し放射線療法を追加することにより、再発率がほぼ半減して乳がん死は約6分の5にまで低下し、これらのベネフィットはほとんどのサブグループで認められるが、その程度は背景因子によって異なることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)によるメタ解析で示された。早期乳がんには通常、乳房温存術が行われるが、温存乳房内には微小腫瘍病変が残存している可能性があり、後年、局所再発や遠隔転移を来す恐れがある。乳房温存術後の放射線療法により再発や乳がん死が低減することが示されているが、より有効性の高いサブグループが存在する可能性があるという。Lancet誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月20日号)掲載の報告。

放射線療法追加の効果の背景因子による違いを評価




EBCTCGは、乳房温存術後に放射線療法を受けた患者において、さまざまな予後因子や背景因子に応じて再発や乳がん死の状況を解析し、15年乳がん死リスクに対する10年再発リスクの影響を検討するためのメタ解析を行った。

解析には、乳房温存術後に放射線療法を受けた患者と受けなかった患者の予後を比較した17件の無作為化試験に登録された1万801例の個々の患者データを用いた。このうち、病理学的にリンパ節転移陰性(pN0)あるいは陽性(pN+)と確定された患者は8,337例であった。

1例の15年乳がん死の回避には4例の10年再発の予防が必要




初回再発(局所および遠隔)の10年リスクは、乳房温存術単独群の35.0%から放射線療法追加群では19.3%まで有意に低下し(絶対低下率:15.7%、95%信頼区間:13.7~17.7、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の25.2%から追加群では21.4%まで有意に減少した(同:3.8%、1.6~6.0、2p=0.00005)。

pN0例(7,287例)においては、10年再発リスクは乳房温存術単独群の31.0%から放射線療法追加群では15.6%まで(絶対低下率:15.4%、95%信頼区間:13.2~17.6、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の20.5%から追加群では17.2%まで有意に低減した(同:3.3%、0.8~5.8、2p=0.005)。

pN0例における再発リスクの絶対低下率は年齢、腫瘍の悪性度、エストロゲン受容体の状態、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスほか)の使用状況、手術範囲によって変動がみられ、これらの背景因子を用いて10年再発リスクの絶対低下率を「高(≧20%)」「中(10~19%)」「低(<10%)」に分けて予測が可能であった。また、この分類に対応した15年乳がん死リスクの絶対低下率が高い群は7.8%、中等度の群は1.1%、低い群は0.1%であった(死亡の絶対低下率の傾向検定:2p=0.03)。

pN+例(1,050例)は、10年再発リスクが乳房温存術単独群の63.7%から放射線療法追加群では42.5%まで有意に低下し(絶対低下率:21.2%、95%信頼区間:14.5~27.9、2p<0.00001)、15年乳がん死リスクは単独群の51.3%から追加群では42.8%まで有意に減少した(同:8.5%、1.8~15.2、2p=0.01)。

全体として、10年後の再発を4例で予防できれば、1例を15年後の乳がん死から救うことが可能であった。このような関連は、リンパ節転移の状態が確定された患者におけるリスク低減の高/中/低の予測カテゴリーでも同様に認められた。

著者は、「乳房温存術後の温存乳房に対する放射線療法により再発率がほぼ半減し、乳がん死は約6分の5にまで低下した。これらのベネフィットはほとんどのサブグループでみられたが、ベネフィットの程度は患者の背景因子によって実質的に異なっており、治療の決定の際に予後の予測が可能と考えられる」と結論し、「温存乳房内の微小残存腫瘍を放射線療法で死滅させることで局所再発と遠隔転移の双方を抑制可能なことが示唆される」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)