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らい性結節性紅斑〔ENL : erythema nodosum leprosum〕

1 疾患概要■ 概念・定義ハンセン病はらい菌(Mycobacterium leprae)による慢性抗酸菌感染症である。しかし、病気の経過中にらい菌の成分に対する免疫反応が亢進し、急性の炎症症状を呈することがあり、これをらい反応(lepra reaction)という1、2)。この反応によって組織障害、とくに末梢神経障害が起こり、後遺症となることがある。らい反応には2つの型、すなわち1型らい反応(type 1 reaction、同義語として境界反応〈borderline reaction〉、あるいはリバーサル反応〈reversal reaction:RR〉)と、2型らい反応(type 2 reaction、同義語としてらい性結節性紅斑〈erythema nodosum leprosum:ENL〉)がある。本項ではENLについて記載するが、理解を深めるためハンセン病についても適宜記載する2、3、4)。なお、ハンセン病、ENLは一般病院で保険診療として取り扱っている。■ 疫学ENLはハンセン病患者のうち、菌の多いタイプ(多菌型〈multibacillary:MB〉)に発症する(表1)。らい菌に対する生体の免疫応答を基にした分類であるRidley-Jopling分類では、LL型とBL型に発症する。ENLはMB患者の10~50%にみられる。発症はハンセン病治療前に1/3、1/3は治療6ヵ月以内(とくに治療数ヵ月後)に、残り1/3は6ヵ月後に起こるとされている。画像を拡大する■ 病因多菌型(MB)のLL型、BL型の患者では、らい菌に対する細胞性免疫能は低下しているが、十分なB細胞と形質細胞が存在するので、それらの細胞が活性化を受け、大量の菌抗原が大量の抗体を作る。この場合、過剰に作られた抗体と菌抗原と補体との間で免疫複合体(immune complex)が作られ、皮膚、神経、血管壁やほかの臓器に沈着し、多数の好中球浸潤を伴った炎症性反応を生む。TNF-αは、ENL発症で重要な役割を演じると考えられている。■ 症状ENLは、らい菌抗原があれば、すなわちLL型やBL型の病巣のある所では、皮膚、リンパ節、神経、関節、眼、睾丸など、どこでも急性炎症を起こしうる(表2)。画像を拡大する典型的なENLは、いわゆる発熱を伴って発症する。39~41℃ほどの高熱を発し、全身倦怠・関節痛が起きる。皮膚では一見正常の皮膚に、小豆大から拇指頭大までの圧痛を伴う硬結や隆起性紅斑を生ずる(図1)。画像を拡大する四肢によくみられるが半数の症例で顔面にも生じる。個疹は数日で消退するが、次々と皮疹が新生する。重症例では圧痛を伴う膿疱ができたり、膿瘍形成や、平坦な紅斑に囲まれた紫斑様皮疹、中心臍窩を有する結節性紅斑、水疱をもつもの、自壊して潰瘍を形成し瘢痕化するものもある。白斑や瘢痕を残すことがある。鼻腔粘膜のENLは、結節形成よりも浸潤性変化として、鼻閉、鼻汁、痂皮、鼻中隔の萎縮が起こる。病理組織学的には真皮から皮下脂肪織に多数の好中球の集積を認める。血管壁に多核球が浸潤し壊死性血管炎を認めたり、免疫組織化学染色で免疫複合体が沈着したりすることもある。末梢神経炎を起こし、耐え難い疼痛に苦しめられる。とくに尺骨神経の上方の部分に腫脹疼痛がよく起こり、ENLの経過中に手指などに変形を起こしてくる例も少なくない。神経炎だけで不眠・食欲減退・うつ状態が起こる。ENLの末梢神経炎が引き起こす機能障害は、急激に高度に現れるものではないが、目立たない形で徐々に障害が起こる。眼に急性の虹彩毛様体炎や上強膜炎を起こし、充血・眼痛・羞明・視力低下を来す。ENLを繰り返すと慢性の虹彩毛様体炎を起こし、虹彩癒着・小瞳孔の原因ともなり、続発性緑内障につながって失明の遠因になる。感覚神経障害性の難聴が起こる。精巣炎や陰嚢水腫を起こすが、その後の睾丸の萎縮の程度は、罹病期間とENLの既往歴に深く関係する。■ 予後通常良好である。しかし、軽度の炎症が数ヵ月から数年にわたって持続し、神経障害が少しずつ進行することもある。ENLは再発しやすいので、ENLを発症したときには長く経過観察を続けるようにする。ENLが起こっても、この反応自体が菌を殺したり、排除するためには役に立たないので、菌陰性化が進むわけではない。したがってハンセン病そのものの予後とは関係がない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)現在、反応状態であるという診断は、主に臨床像で決められている。らい反応を診断するには、らい反応を疑うことから始まる。ハンセン病の診断がなされていなくてENLを主訴として初めて外来受診することもある。診断は臨床症状(表2)と検査所見(白血球数増加、好中球数増多、血沈亢進、CRP高値、血清TNF-α上昇など)、皮膚病理組織所見などを総合して行う。ENLとその他の主な皮膚疾患との鑑別を表3に示した。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)基本的な注意として安静を守らせる。仕事、学校などは無理のない程度に行う。飲酒を控え睡眠を十分にとる。多臓器症状を呈する場合には、入院安静も考慮する。ENLを軽症と重症に分類し、それに従って治療方針を立てる(表4)。なお、ハンセン病の治療については、ENLを起こしていても継続する。画像を拡大する軽症では、疼痛に対して非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)や鎮静薬などを適宜投与する。重症と診断すれば、積極的に反応を抑制する治療を行う。ENLにはサリドマイド(thalidomide)が著効する。投与したその日から、ENLの自覚症状や発熱などの全身症状が劇的に消退する。サリドマイドは、ENLの90%の患者で効果的であり、第1選択薬である。サリドマイドが効果的であることが、ENLの診断を確定する方法としても有用である。サリドマイドの使用法を図2に示した。「らい性結節性紅斑(ENL)に対するサリドマイド診療ガイドライン」が作成されているので、使用にあたっては熟読する5)。画像を拡大するサリドマイドは、ヒトにおいて催奇形性が確認されているので、安全管理手順を順守する。現在日本で保険適用になっているサリドマイドは、サレド(商品名)カプセルであり、「サリドマイド製剤安全管理手順(Thalidomide Education and Risk Management System:TERMS®)」を厳守する。何らかの事情でサリドマイド治療が困難な場合、ステロイド内服薬の全身投与も有効である。投与量は0.5~1mg/kg/日で開始する。減量方法は通常の漸減方法と同様であるが、とくに少量になってからは漸減の間隔を延ばすほうがよい。ステロイド内服薬の長期投与が必要なときは、クロファジミン(clofazimine:CLF、B663〈商品名:ランプレン〉)を併用するとよい。CLFはENLを抑制する効果がある。虹彩毛様体炎を抑制するともいわれている。したがって、ENLが生じた場合に、あるいは神経痛などの症状があり、らい反応も疑われるような時期にCLFの投与を行うことがある。しかし、サリドマイドやステロイド内服薬に認められるような明らかな抗ENL作用はないと考えられる。通常50mg/日を100mg/日(外国では最大200mg/日処方する例もある)にすることで、サリドマイドやステロイド内服薬の投与量の減少を試みる。ただし100mg/日の投与で色素沈着が顕著になり、まれに下痢・腹痛も起こる。ENLについては、何か自覚症状に気付いたら、すぐに受診させる。皮疹の発赤と腫脹、新しい皮疹、神経の急な腫脹、神経痛、羞明、発熱などのほかに、かすかな筋力の低下や感覚異常、時にはかゆみ、神経過敏にも注意深い観察をするように指導する。ハンセン病治療終了後に初めてのENLが起きることがあること、3年以内は皮膚症状も生じうること、それ以降も数年にわたって神経症状だけが出ることがあることも事前に説明しておく。ENLは、年余にわたり服薬指導の厳しいサリドマイド、副反応の起こりやすいステロイド内服薬を長期間内服し、さらに全身の痛みや発熱、失明の不安などもあるため、精神的なケア(カウンセリング、抗うつ薬投与など)も重要である。4 今後の展望ENLの治療薬であるサリドマイドは、ブラジル、日本、米国などでは使用されているが、患者の多い途上国では催奇形性の関係から使用されていない。安全で有効性の高い抗ENL薬の早期の開発が望まれる。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国立感染症研究所 ハンセン病研究センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)WHOのハンセン病ページ(医療従事者向けのまとまった英文情報サイト)国立感染症研究所 感染症疫学センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)熊野公子. 日ハンセン病会誌.2002;71:3-29.2)石井則久著 中嶋 弘監修. 皮膚抗酸菌症テキスト.金原出版;2008.p.1-130.3)石井則久ほか責任編集. ハンセン病アトラス.金原出版;2006.p.1-70.4)後藤正道ほか. 日ハンセン病会誌.2013;82:143-184.5)石井則久ほか. 日ハンセン病会誌.2011;80:275-285.公開履歴初回2013年11月28日更新2016年03月01日

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統合失調症の認知機能障害、コリン作動系薬の可能性

 認知障害は統合失調症において社会性に最も悪影響を与える症状であるが、効果的な治療が行われていない。コリン作動系は、これら症状を効果的に治療することができる新規薬剤の標的として有望視されている。オーストラリア・Florey Institute of Neuroscience and Mental HealthのAndrew Gibbons氏らは、統合失調症に対するコリン作動系の新たな薬物標的に関してレビューを行った。Current pharmaceutical design誌オンライン版2016年1月26日号の報告。 著者らは、統合失調症におけるコリン作動系の機能障害を裏付ける文献をレビューし、コリン作動系の調節が統合失調症の症状を改善することを示す前臨床および臨床データの検討、ならびに統合失調症におけるコリン作動系機能障害を治療するために検討された主な薬理学的戦略をレビューした。・剖検および神経画像研究では、統合失調症患者における皮質のコリン作動性受容体シグナル伝達ならびに皮質下領域(海馬や線条体)の広範な縮小が示唆された。・潜在的なコリン作動性薬物標的は、受容体機能の亢進を進める。・これらは、シナプスのアセチルコリンレベルを増加させるため酵素アセチルコリンエステラーゼ活性を阻害し、アゴニストまたは正のアロステリックモジュレーターをもつニコチン受容体やムスカリン受容体の活性を増加させる。関連医療ニュース 統合失調症の認知機能改善に抗認知症薬は有用か グルタミン酸作用、統合失調症の認知機能への影響は認められず 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs リスペリドン

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循環器内科 米国臨床留学記 第6回

第6回:米国で使用されている冠動脈疾患に対する新しい薬 ticagrelor、ranolazine前回に引き続き、日本では未承認ですがアメリカでは処方されている薬を紹介したいと思います。ticagrelor(商品名:Brilinta、日本では2016年2月現在、承認申請中)ticagrelorは、比較的新しいP2Y12受容体拮抗薬です。日本ではチカグレロルと呼ばれていると思いますが、アメリカではタイカグレロールと発音します。ご存じのとおり、日本では長らくチクロピジンしか使用できませんでしたが、その後クロピドグレルが登場し、最近ではプラスグレルも使用されていると思います。ticagrelorは、シクロペンチルトリアゾロピリミジン群に分類される新しい薬剤です。プロドラッグであるチエノピリジン系(クロピドグレルやプラスグレル)は肝臓で代謝された後、非可逆的にP2Y12受容体を阻害します。一方、ticagrelorは同じ受容体に直接かつ可逆的に作用します。結果として、作用が発現するまでの時間は短くなります。また、可逆的な結合のため、使用中止後、3日ほどで血小板機能も回復します。プラスグレルやticagrelorは血小板機能の抑制作用がクロピドグレルよりも早いため、急性冠症候群(ACS)の患者においては、より早い効果が期待できます。また、クロピドグレルに抵抗性のある患者は2割程度いますが、プラスグレルやticagrelorはその点でも優れています。ACS患者を対象にしたランダマイズド試験であるPLATO試験において、ticagrelorは、クロピドグレルに比べて死亡や心筋梗塞、脳卒中が少ないことが示されました(大出血イベントは同等、バイパス術に関連しない出血は増加)(図1)。表1 12ヵ月の時点での複合一次エンドポイント(心血管イベントによる死亡、心筋梗塞、脳卒中)の発生(PLATO試験) バイパス手術が必要となる3枝病変が予想されるようなACSの患者においては、P2Y12受容体拮抗薬の選択や投与のタイミングは難しい問題です。米国では、日本と比べて診断から手術までの時間が圧倒的に短いため、バイパス術が冠動脈造影の翌日となることも珍しくありません。初期投与(loading dose)だけなら気にされない心臓外科医もいますが、クロピドグレルやプラスグレルは手術を遅らせる原因となります(クロピドグレルやプラスグレルの使用中止後5~7日待つことが勧められている)。また、プラスグレルは、クロピドグレルに比べて、バイパスに関連した大出血イベントが有意に増加する可能性があります(TRITON-TIMI 38試験)。ticagrelorは可逆的な結合のため、使用中止後、3日ほどで血小板機能が回復します。実際、欧州心臓病学会(ESC)からの勧告でも、バイパス前の中止期間は、クロピドグレルとticagrelorでは最低でも3日となっていますが、プラスグレルは5日となっています。この待機時間は、入院費用が高い米国においては大きな問題です。このような背景から、現状では、費用の問題を除けばticagrelorが最も使いやすいP2Y12受容体拮抗薬と考えられています。同様の薬で静注薬であるcangrelorも2015年に認可されています。ranolazine(商品名:Ranexa、日本では未承認)ranolazineは、2006年に承認された慢性狭心症の薬です。2012年のガイドラインでは、β遮断薬に忍容性がないもしくは有効でない患者に、β遮断薬の代わりとしてもしくはβ遮断薬と組み合わせて用いることが、class IIaとして推奨されています。狭心症患者が多い米国では、経皮的冠動脈血行再建術(PCI)によって改善できない慢性狭心症の患者が非常に多く、治療に難渋することがあります。内向きの遅延ナトリウムチャネルを阻害し、心筋内のカルシウムを減らし、心筋の酸素消費を減らすと考えられていますが、詳しい効果の機序は不明です。TERISA試験は、14ヵ国で行われた、2型糖尿病と慢性狭心症を有する患者に対する前向きのプラセボ対照比較試験です。薬剤投与前の観察期間中の狭心症発作は、ranolazine群6.6回/週とプラセボ群で6.8回/週でしたが、薬剤投与開始後2~8週間後では、それぞれ3.8回/週(95% CI:3.57~4.05)と4.3回/週(95% CI:4.01~4.52)で、プラセボ群と比較してranolazine群で有意に減少したという結果でした(図2)。表2 ranolazine投与前後の狭心症状発生回数(TERISA試験) しかし、解釈には注意が必要です。というのも、有意といっても週0.5回というわずかなものでしたし、プラセボでも発作が減っていたのです。個人的には、プラセボ群でも発作が減る、狭心症状は経過とともに頻度が減っていくという結果のほうが、興味深く感じられました。実際には、ranolazineは最後の切り札といった感じで使用しています。なぜなら、前述のような軽度の改善効果に加えて、高価(1錠6ドル)であることもネックになっているからです。大規模で見ると改善効果があるのかもしれませんが、実際の臨床で効果を感じるのは難しい印象です。次回は、米国の心疾患治療で使用されている新しいデバイスについて書きたいと思います。

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頸動脈狭窄症、70歳以上では内膜剥離術が明らかに優れる/Lancet

 高齢の症候性頸動脈狭窄症患者の手術治療について、これまでに頸動脈内膜剥離術(CEA)が頸動脈ステント留置術(CAS)よりもアウトカムが良好であることが示唆されていたが、詳細な年齢の影響を調べた結果、70~74歳群以降では明らかにCEAのアウトカムが優れることが示された。米国・アラバマ大学公衆衛生大学院のGeorge Howard氏らが、CAS vs.CEAを比較した4つの無作為化試験データをメタ解析。その際60~79歳の患者データについて5歳年齢単位とし、60歳未満、80歳以上を加えた各年齢群の脳卒中または死亡リスクを調べ、年齢とアウトカムとの関連を評価した。結果、高齢者における両手術間のアウトカムの差は、大半がCAS周術期脳卒中リスクの増大によるものであることが判明した。年齢とCEA周術期リスクとの関連はみられず、また両手術とも周術期以降のリスクと年齢の関連はみられなかったという。Lancet誌オンライン版2016年2月12日号掲載の報告。4つのCAS vs.CEA無作為化試験被験者のデータを6年齢群で分類しメタ解析 研究グループは、Carotid Stenosis Trialists’ Collaboration(CSTC)が症候性頸動脈狭窄症の患者を集めて行った4つの無作為化試験の、参加患者の個別データを集めて分析した。分析に組み込んだのは、CAS vs.CEAの無作為化試験の被験者、かつ症候性の狭窄症を呈した患者データのみとした。 主要アウトカムは、周術期(無作為化~120日の間)における脳卒中または死亡リスク、および周術期以降(120日以降)における同側脳卒中の発生リスクで、年齢群(60歳未満、60~64歳、65~69歳、70~74歳、75~79歳、80歳以上)ごとに評価。また、CAS群とCEA群の差についても評価した。分析はすべてintention-to-treatにて行われた。CAS群で周術期リスクに有意な年齢の影響を認める 4試験で、CASまたはCEAに無作為に割り付けられた患者は4,754例であった。追跡期間中央値は2.7年で、イベント433例が発生した。このうち、周術期以降も追跡を受けたのは4,289例で、イベント発生は98例(2.3%)であった。 分析の結果、CAS群において、60歳未満群と比較した65~69歳群の脳卒中/死亡の周術期ハザード比(HR)は2.16(95%信頼区間[CI]:1.13~4.13)であり、70歳以上群のHRはおおよそ4.0で、年齢と周術期HRの関連が認められた(傾向のp<0.0001)。一方CEA群では、年齢群が上昇するにつれて周術期リスクが増大するとのエビデンスは認められなかった(傾向のp=0.34)。これらが影響してCAS vs.CEAの周術期HRは、65~69歳群では1.61(95%CI:0.90~2.88)、70~74歳群では2.09(同:1.32~3.32)であり、年齢との関連がみられた(傾向のp<0.0001)。 周術期以降の脳卒中リスクの評価では、両手術群とも年齢の影響は認められなかった(傾向のp:CAS群≧0.09、CEA群0.83))。CAS vs.CEAの周術期以降のHRにも年齢の影響はみられなかった(傾向のp=0.84)。

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臨床試験結果の公表率と報告率、大学病院間で差/BMJ

 米国51の大学病院について、臨床試験結果の普及啓発(公表と報告)について調査した結果、実施状況は非常に低調で、大学病院間のばらつきもかなりみられるという。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のRuijun Chen氏らがClinicalTrials.gov上で断面調査を行い明らかにした。主要大学病院でみると、完了臨床試験の2年以内の論文化による公表率は29%にとどまり、ClinicalTrials.govにおける結果報告率に至っては13%であったという。著者は、「大学病院には課せられた使命とミッションがある」と指摘したうえで、エビデンスベースの臨床方針決定を蝕む恐れがあると警鐘を鳴らし、タイムリーな報告と公表の不足を補う仕組みづくりが必要だと述べている。BMJ誌オンライン版2016年2月17日号掲載の報告。ClinicalTrials.gov上で断面調査、普及啓発(公表・報告)率を調査 臨床試験結果をタイムリーに報告することは、試験参加者への責務として、また研究事業を前進させ、臨床治療を向上させていくために必須とされているが、これまでに大学病院におけるその取り組み姿勢については明らかになっていない。限定的だが、先行研究で、25~50%の論文が完了後(ときに数年経過後も)未公表のままであるというデータも示されており、大学所属研究者による試験公表・報告の行動力は、最適にはほど遠いとされていた。 そこで研究グループは、ClinicalTrials.gov上で、米国大学病院について断面調査にて、試験完了後2年以内の結果の公表率および報告率を調べた。対象期間は、2007年10月~10年9月。結果について普及啓発がなされていると認められた試験(公表またはClinicalTrials.gov上での報告を、全調査期間中または2年以内に確認)の割合を主要評価項目とした。普及啓発率は全体で66%、2年以内は35.9% 検索により、51の大学病院による、4,347例の介入臨床試験を特定した。そのうち、登録被験者が1,000例以上であった試験は1,005例(23%)、二重盲検試験は1,216例(28%)、第II~IV相試験は2,169例(50%)であった。 全体で、大学病院の結果の普及啓発率は66%(2,892試験)で、2年以内では35.9%(1,560試験)であった。 2年以内の普及啓発率については大学間でばらつきがみられ、16.2%(メリーランド大学6/37試験)から55.3%(ミネソタ大学57/103試験)にわたっていた。また、2年以内の公表率は、10.8%(ネブラスカ大学4/37試験)から40.3%(イェール大学31/77試験)にわたり、報告率は1.6%(スローン・ケタリング記念がんセンター2/122試験)から40.7%(MDアンダーソンがんセンター72/177試験)にわたっていた。

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生存曲線の比較、ハザード比でよいのか

 がん領域の臨床試験で生存曲線の差を評価するとき、ハザード比(HR)がよく使用される。しかし、HRによる評価では治療効果の不正確な評価につながる恐れがある。そこで、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のLudovic Trinquart氏らは、がん領域の無作為化比較試験における治療効果の評価におけるHRと生存曲線下面積(RMST)の差(および比)について比較した。その結果、概して、HRがRMST比よりも治療効果推定値が有意に大きかった。著者らは、絶対的効果が小さい場合にはHRが大きくなる可能性があり、イベント発生までの期間のアウトカムを評価する無作為化試験では、RMSTによる評価をルーチンに報告すべきと結論している。Journal of clinical oncology誌オンライン版2月16日号に掲載。 著者らは、2014年の後半6ヵ月間における主要5誌から、がん領域の無作為化比較試験を選択し、各試験のイベント発生までの期間のアウトカムに関して、個々の患者データを再構築した。それぞれの試験を再分析し、HRにより推定された治療効果をRMSTの差(および比)により推定された治療効果と比較した。さらに、RMST比に対するHRの平均比率を推定した(平均比率が1未満ならば、HRによる評価のほうが楽観的なことを示す)。 主な結果は以下のとおり。・合計54のランダム化比較試験、3万3,212例の患者を解析した。・21試験(39%)において、全生存がアウトカムに選択されていた。・非比例ハザード性のエビデンスが13試験(24%)で認められた・HRとRMSTベースの評価は、1つのケース以外は、効果の統計的有意性について一致した。・HRの中央値は0.84(Q1~Q3の範囲:0.67~0.97)、RMST差の中央値は1.12ヵ月(範囲:0.22~2.75ヵ月)であった。・RMST比に対するHRの平均比率は1.11(95%CI:1.07~1.15)で、試験間のばらつきは大きかった(I2=86%)。・アウトカムの違い(全生存と他のアウトカム)や比例ハザード性の成立・不成立にかかわらず、結果は一致していた。

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診療録ビッグデータを治療効果の検証には使うべきではない(解説:折笠 秀樹 氏)-486

 病院の診療録というビッグデータを利用して治療効果を見た後で、同じテーマに関して複数のRCT(ランダム化比較試験)が実施された16件の事案を検討した。 複数のRCTはメタ解析により統合された。診療録ビッグデータの解析結果のほうが、RCTのメタ解析結果より1.31倍有効へと傾いていた。つまり、診療録ビッグデータでは有効であったとしても、検証的RCTによって有効性が覆ることを示唆する。診療録ビッグデータなどの観察研究では、Confounding by indicationバイアスが入るため、傾向スコア解析などの特殊な解析を用いてはいるものの、RCTよりも治療効果が過剰に出る傾向がみられた。 これらのことから、やはり治療効果を検証するにはRCTが必須だと思われる。しかしながら、16件のテーマはマイナーなものが多く、後に実施されたRCTは比較的小規模のものが多いように見受けられた。したがって、この研究結果はもう少し慎重に評価したほうがよいかもしれない。 診療録や検診など、医療ビッグデータを有効活用するプロジェクトが全世界的に始まりつつある。これを治療効果の検証に用いることは期待せず、危険因子の探索などに限るなど、方向性を間違わないように気を付けるべきだろう。

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“糖尿病合併高血圧にはRAS阻害薬”という洗脳から解き放たれるとき(解説:桑島 巖 氏)-487

 多くの臨床医は、“糖尿病合併高血圧にはRAS阻害薬”という考えにとりつかれてはいないだろうか。この問題にあらためて挑戦し、メタ解析を行ったのが、“的確な臨床試験コメンテーター”で知られるMesserli氏らのグループである。 彼らは、PubMed、Embaseやコクランライブラリーなどといった信頼性の高いデータベースから、糖尿病患者に対するRAS阻害薬の心血管合併症予防効果を、他の降圧薬と比較するメタ解析を行った。メタ解析で最も注意すべきセレクションバイアスは、独立した3名の専門家による論文選択と、コクランライブラリー基準にのっとりながら極力除外している。 RCT選択は、100例以上のサンプルサイズであること、最低1年以上の追跡期間であること、プラセボ対照試験を除外していること、そして注意すべきことは心不全を含んだトライアルは除外していることである。ACE阻害薬の心不全予防効果が他の降圧薬よりも優れていることは、証明されているからとしている。 そのメタ解析の結果、総死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中のいずれにおいても、RAS阻害薬が他の降圧薬よりも優れているという結果は得られなかったと結論付けている。個々の降圧薬との比較をみると、Ca拮抗薬との比較では、心不全以外ではまったく差が認められず、利尿薬、β遮断薬との比較においても、心血管イベント抑制効果に優位性は認めることができなかった。 そもそも、臨床医が“糖尿病合併高血圧ではRAS阻害薬”という考えにとりつかれたきっかけは、糖尿病性腎症に対するRAS抑制薬の蛋白尿抑制効果が大規模臨床試験で報告され、以来“糖尿病にはRAS阻害薬”というように拡大解釈された結果ではないかと著者らは考察している。 わが国の「高血圧治療ガイドライン2014」では、糖尿病合併高血圧患者における降圧薬選択に関しては、糖脂質への影響と糖尿病性腎症に対する効果のエビデンスより、RA系阻害薬(ARB、ACE阻害薬)を第1選択薬として推奨するとある。 しかも、その根拠としてABCD試験やFACET試験のようなきわめて小規模なトライアルを引用しているにすぎない。さらに問題は、CASE-Jのサブ解析結果を引用していることである。CASE-JにおけるARBカンデサルタンの糖尿病新規発症予防効果は、実はスポンサーの指示によって定義を後付けで変更するという不正な操作によって導き出されたことが、調査報告書で明らかになっているのである。それにもかかわらず、ガイドラインはいまだこの部分を訂正していない。 本メタ解析では、ベースライン時に腎症を合併している糖尿病のアウトカムについても解析しているが、他の降圧薬に比べて優位性を認めることができなかったとしている。 ここ20年間、ARBの降圧を超えて臓器保護効果や、糖尿病にはRAS阻害薬といった、誤ったマインドコントロールから覚めるときが来たようである。

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非高リスク症例における頸動脈ステント留置術 vs.内膜剥離術/NEJM

 頸動脈ステント留置術(CAS)の頸動脈内膜剥離術(CEA)に対する非劣性が、高リスクではない高度無症候性頸動脈狭窄症患者において示された。5年の追跡調査で、非手術関連脳卒中、全脳卒中および全生存率も、両群間で有意差は認められなかった。これまでの臨床試験で、遠位塞栓を予防するデバイス(embolic protection device:EPD)を用いたCASは、手術による合併症の標準または高リスク患者において、CEAの代替として効果的な治療であることが示唆されていたが、米・マサチューセッツ総合病院のKenneth Rosenfield氏らは、高リスクに該当しない患者のみを対象にEPD併用CASとCEAを比較する多施設共同無作為化比較試験「Asymptomatic Carotid Trial(ACT) I」を実施、その結果を報告した。NEJM誌オンライン版2016年2月17日号掲載の報告。1,453例でEPD併用CASとCEAを比較する非劣性試験 研究グループは、無症候性(登録前180日以内の脳卒中・一過性脳虚血発作・一過性黒内障の既往なしなど)の高度(70%以上)内頸動脈狭窄を有する79歳以下の患者で、合併症高リスクに該当しない患者を、EPD併用CAS群とCEA群に3対1の割合で無作為割り付けした。試験は当初1,658例の患者登録を予定していたが、登録が進まず1,453例で中止となった。追跡調査期間は5年間であった。 主要複合エンドポイントは、術後30日以内の死亡・脳卒中・心筋梗塞、または1年以内の同側脳卒中とし、非劣性マージン3%で評価した。CASの非劣性を証明、5年転帰も有意差認められず 解析対象は2005~13年に無作為化された計1,453例(CAS群1,089例、CEA群364例)で、平均年齢は両群とも68歳、ほとんどが65歳以上であった。 主要複合エンドポイントのイベント発生率はCAS群3.8%、CEA群3.4%で、CASのCEAに対する非劣性が認められた(非劣性に関するp=0.01)。30日以内の死亡または脳卒中の発生率は、CAS群2.9%、CEA群1.7%であった(p=0.33)。 副次エンドポイントの合併症複合評価項目(術後30日における脳神経損傷、血管損傷、脳出血以外の出血など)のイベント発生率は、CAS群2.8%、CEA群4.7%であった(p=0.13)。術後30日から5年までの手術に関連しない同側脳卒中の無発生率はCAS群97.8%、CEA群97.3%(p=0.51)、全生存率はそれぞれ87.1%および89.4%(p=0.21)。5年間の累積無脳卒中生存率は93.1%および94.7%であった(p=0.44)。

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DPP-4阻害薬は心不全入院リスクを高める可能性/BMJ

 2型糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬使用をめぐる心不全リスクの増大について、中国・四川大学のLing Li氏らが、無作為化比較試験(RCT)および観察研究のシステマティックレビューとメタ解析を行った。その結果、心不全リスクを増加させるかどうかは、研究の追跡期間が相対的に短くエビデンスの質も低いため不確かであるが、心血管疾患またはそのリスクを有する患者においては非使用との比較で心不全による入院のリスクが増大する可能性があることを明らかにした。BMJ誌オンライン版2016年2月17日号掲載の報告より。無作為化比較試験43件、観察研究12件についてメタ解析 研究グループは、Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、ClinicalTrials.govを用いて2015年6月25日までの論文を検索し、成人2型糖尿病患者においてDPP-4阻害薬と、プラセボ/生活習慣改善/血糖降下薬を比較したRCT、非RCT、コホート研究ならびに症例対照研究で、心不全または心不全による入院のアウトカムを明確に報告した研究を選択した。 解析対象研究のスクリーニング、バイアスのリスク評価およびデータ収集は、研究者2人1組からなるチームがそれぞれ独立して行った。臨床試験と観察研究のデータはそれぞれメタ解析を行い、エビデンスの質はGRADEシステムを用いて評価するとともに、研究の異質性をコクランχ2検定とI2統計量を用いて検証した。 RCTは43件(6万8,775例)および観察研究12件(コホート研究9件、症例対照研究3件;177万7,358例)が本研究に組み込まれた。入院リスクは増大の可能性も 心不全について報告しているRCT38件を解析した結果、DPP-4阻害薬群と対照群との間で心不全のリスクに有意差は認められなかった(イベント数42/1万5,701 vs.33/1万2,591、オッズ比0.97、95%信頼区間[CI]:0.61~1.56)。リスク差、すなわち5年間における2型糖尿病患者1,000例当たりの心不全イベント数の差は、-2(95%CI:-19~+28)であった。ただし、バイアスリスク等のためエビデンスの質は低かった。観察研究でも臨床試験とほぼ同様の結果であったが、エビデンスの質は非常に低かった。 一方、心不全による入院に関しては、RCT5件の解析において、DPP-4阻害薬群で対照群よりリスクが増加することが示され、エビデンスの質は中等度であった(イベント数622/1万8,554 vs.552/1万8,474、オッズ比:1.13、95%CI:1.00~1.26)、リスク差は、8(95%CI:0~16)。観察研究では、DPP-4阻害薬群(シタグリプチン)と非使用群を比較した2件の統合解析の結果、DPP-4阻害薬群で心不全による入院のリスク増加が示唆されたが(統合調整オッズ比:1.41、95%CI:0.95~2.09)、エビデンスの質は非常に低かった。 著者は、「報告されたデータには限界があり、心不全による入院のリスク増加が1つのクラス効果なのかは不明である」と述べている。

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チカグレロル、心筋梗塞延長治療の適応をEUにて取得:アストラゼネカ

 アストラゼネカ(本社:英国ロンドン、最高経営責任者(CEO):Pascal Soriot、以下、アストラゼネカ)は、欧州連合(EU)において、心筋梗塞発症後1年以上経過し、アテローム血栓性イベントの再発リスクが高い患者の治療薬として、経口抗血小板薬チカグレロルの新用量である60mgに販売承認が付与されたことを2016年2月19日に発表した。 チカグレロル90mgはすでに、急性冠症候群(ACS)成人患者におけるアテローム血栓性イベントの発症抑制を適応としてEUで承認されており、ACSイベント発症後1年間のACSの管理における推奨維持用量は90mg1日2回投与。 今回の承認により、発症後1年以上経過している心筋梗塞の既往患者に、アスピリン1日維持用量75~150mgとチカグレロル60mgを1日2回投与する併用療法を継続することができる。 今回の承認は、2万1千例超の患者を対象とした大規模アウトカム試験PEGASUS TIMI-54の結果に基づいたもので、その結果は2015年3月の米国心 臓病学会議(ACC)において発表され、同時にThe New England Journal of Medicineに掲載された。PEGASUS TIMI-54試験では、試験への組み入れ前1~3年の間に心筋梗塞の既往歴がある患者を対象に、チカグレロル・低用量アスピリンとの併用と、プラセボ・低用量アスピリンとの併用と比較して、心血 管死、心筋梗塞および脳梗塞の長期にわたる2次的な発症抑制効果を評価した。その結果、チカグレロルはプラセボに比べて心血管死、心筋梗塞あるいは脳梗塞からなる複合主要評価項目を有意に低減したことが示された。3年時の複合イベント発症率は、チカグレロル60mg群で7.77%、プラセボ群で9.04%であった。本承認はEU加盟国28ヵ国に加えてアイスランド、ノルウェーおよびリヒテンシュタインに適応される。 アストラゼネカのプレスリリースはこちら。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第27回

第27回:食事における栄養の「神話」は本当?監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 日々の食事は健康の維持やあらゆる疾患管理に重要な役割を持っています。そして、健康的な食事は罹患率や早期死亡の減少に関係しています。 今回は、微量栄養素(ビタミンやミネラル)、主要栄養素(炭水化物、タンパク質、および脂肪)、非栄養素、食物エネルギーに関しての「神話」とエビデンスの比較をみてみましょう。日常診療における食事指導の参考になれば幸いです。 タイトル:臨床における栄養療法の神話と食事指導についてNutrition Myths and Healthy Dietary Advice in Clinical Practice以下、American family physician 2015年5月1日号1) より◆「骨の健康のために集中的なカルシウム摂取が必要」骨折予防に対するカルシウムサプリメントの効果は限定的で、NNT=1,000(住民女性)、NNT=111(施設入所者)である(推奨レベルA)。また、腎結石のリスクを高め、心血管イベントや大腿骨頸部骨折を高めるかもしれない(推奨レベルB)。乳製品など自然食品は、骨の健康に関する利点は明らかでないものの、サプリメントと同様のリスクはもたらさないと思われる。◆「脂質は肥満につながり、心血管系に有害」高脂質食の摂取は、低脂質食やカロリー制限食の摂取と比較して、同等かそれ以上の体重減少を示す(推奨レベル A)。ultra-processed食品(過剰加工食品:甘味料や乳化剤などをわざわざ添加しすぐに食べられるようにした食品、保存肉など)は飽和脂肪酸が多く含まれており、心血管イベントや全死亡率の増加と関連している。一方、飽和脂肪酸を含む自然食品(乳製品など)は不慮の心血管疾患、2型糖尿病、肥満の減少と関連している(推奨レベルB)。◆「あらゆる食物繊維は有益である」自然の食物繊維を豊富に摂取すると、心血管イベントや糖尿病、便秘、消化器がん、乳がんの発症を抑制しうる。しかし人工的な食物繊維の有用性は示されていない(推奨レベルB)。◆「3,500カロリーは体重1ポンド(0.45kg)に相当する」1週間で3,500カロリー制限しても体重0.45kg減量するわけではない(推奨レベルC)。しかし1日100カロリー制限すれば、ほかに何をしなくても1年後には50%の人が、3年後には95%の人が体重4.5kg減少する(推奨レベルC)。ここに示した「神話」は微量栄養素、主要栄養素、非栄養素、エネルギーとして多くの栄養学、食品成分の評価に基づいているが、患者は食品成分ではなく食品として食べているということに注意が重要である。また、ultra-processed食品の消費量を制限し、できるだけ自然に近い形の加工食品の摂取が勧告されている。家庭医は、患者のために上記の神話を払拭し、実際の食品や広い食事パターンに着目してアドバイスを与えることが望ましい。※推奨レベルはSORT evidence rating systemに基づくA:一貫した、質の高いエビデンスB:不整合、または限定したエビデンスC:直接的なエビデンスを欠く※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Lesser LI, et al. Am Fam Physician. 2015;91:634-638.

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コーヒーと膀胱がんリスク~わが国のコホート研究

 コーヒー摂取と膀胱がんリスクの関連について、最近の疫学的研究の結果は一致していない。東北大学の杉山 賢明氏らは、宮城県で実施された2つのコホート研究(宮城県コホート研究、大崎コホート研究)のプール解析により、コーヒー摂取と膀胱がん罹患率との関連を調べた。その結果、コーヒー摂取と膀胱がんリスクの間に有意な逆相関が示された。European journal of cancer prevention誌オンライン版2016年2月12日号に掲載。 著者らは、宮城県コホート研究では1990年、大崎コホート研究では1994年に、コーヒー摂取頻度と他の生活習慣因子についての自記式質問票調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・宮城県コホート研究は17.6年、大崎コホート研究は13.3年の間に、両コホートで7万3,346人を追跡し、膀胱がんを274例同定した。・コーヒーを時々飲む人、1日1~2杯飲む人、1日3杯以上飲む人において、まったく飲まない人に対する膀胱がん罹患率の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は、それぞれ1.22(0.90~1.66)、0.88(0.61~1.26)、0.56(0.32~0.99)であった(傾向のp=0.04)。・この逆相関は、喫煙状況による層別化後も認められた。

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研究目的が絞り込まれた明快な研究(解説:野間 重孝 氏)-483

 人口の高齢化に伴い、どこの施設、いずれの科においても、高齢者・超高齢者の治療方針が問題となっているのではないだろうか。本論文のdiscussionの中に大変重要な一節があるので、直接引用する。The elderly population with acute coronary syndrome is a heterogeneous group with variable frailty and differences in physiological ageing, comorbidity, functional status and social aspect. 誠にそのとおりだろう。そして、世界の権威あるガイドラインといえども、実はこのような患者さんたちの治療方針について、しっかりしたエビデンスをもって定められたものではないのである。Thus, they are rarely included in clinical trials, and guidelines are often based on extrapolation of data from a substantially younger population. 重要な指摘だろう。ガイドラインといえども、より若い人たちのデータを外挿することによって作成されているというのである。 では、読者のみなさんの手元にまとまったデータベースがあったとして(これは現在では非現実的な仮定ではないだろう)、皆さんならどのような研究デザインを考えるだろうか。 まず考えつくのは、すべての治療例を集め、その中から合併症、予後のデータを集めて多変量解析を行うという方法があるだろう。年齢は重要な決定因子となるのだろうか? 年齢が上がるにつれて治療成績はどのように変化するのだろうか? 実際、評者自身も以前このような解析を行ったことがあるが、そのような方法には限界があるというのが、冒頭の指摘なのである。多変量解析は既知の因子について、その関与の度合いを検討するためには優れた方法であるが、未知の因子を割り出してはくれないのである。 つまり、こういうことである。前日まで元気で働いていて、ある日の会議中に突然前胸部違和感を覚えて搬送された47歳のサラリーマンがいたとしよう。一方で、老人ホームの廊下を伝い歩きしていたところ、胸部圧迫感のためにしゃがみ込んでしまった85歳の老人がいたとして、この両者を同じ土俵で比較できるのか。 著者らが指摘しているように、この両者の疾病の背景はあまりにも異なっているのである。実際、このサラリーマンが大酒飲みで、血液データだけ見れば老人のデータのほうが良い場合すらあるかもしれない。しかし、老化に伴うどうしようもない相違がそこにはあり、しかも、われわれにはそれら諸因子を列挙することが不可能なのである。 では、どうするのか? このような場合、不確定な諸因子を問題にしないでよい方法は1つしかない。同年代の患者さんたちのみを集め、無作為割り付けをすることによって不確定因子を相殺する。これ以外に方法はない。本研究は、そのような発想からデザインされた一点集中型の研究なのである。 このようなデザインは、高齢者・超高齢者に対してある治療法(この場合は侵襲的治療)を選択することの可否の答えは明確に出してくれるが、細かな因子の重要性の解析には向かない。しかし著者らは、あえてこの一点集中型のデザインを選択したのである。 本研究において、著者らは高齢者に対してでも侵襲的な治療を選択することの妥当性を証明することに成功した。残念ながら、超高齢者の分析をするためには統計パワーが足りなかったとあるが、これは致し方ないだろう。これ以上の無作為データを得ることには限界があるからである。もし、85歳以上を無作為配列したとして、death from any causeの中に多数の老衰が含まれてしまっては研究にならないからである。この研究は、ギリギリの線に迫った貴重な研究と位置付けられるのではないだろうか。

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社交不安症に対するエスシタロプラムの効果は

 北海道大学の朝倉 聡氏らは、日本人社交不安症(SAD)患者におけるエスシタロプラム(10および20mg/日)の有効性、忍容性をプラセボ対照二重盲検試験により比較を行った。Current medical research and opinion誌オンライン版2016年2月5日号の報告。 一次的診断でSAD(DSM-IV-TR定義)と診断された18~64歳の患者(ベースライン時のLSAS-Jスコア:60以上、CGI-Sスコア:4以上)をプラセボ群、エスシタロプラム10mg群、エスシタロプラム20mg群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、階層検定手順を使用し、エスシタロプラム10mg群、同20mg群対プラセボにおけるLSAS-J総スコアのベースライン時から12週目までの変化量(ANCOVA、FAS、LOCF)とした。事前に設定した副次評価項目にはLSAS-J感度分析が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・有効性の主要評価項目について、LSAS-Jにおけるプラセボ群との差異は、エスシタロプラム10mg群で-3.9(p=0.089)であった。・エスシタロプラム10mg群における対プラセボ群の優位性は確認できなかったが(多重性の調整なしの分析)、エスシタロプラム20mg群において差が認められた(p<0.001)。・事前に設定した感度分析におけるプラセボとの差は、エスシタロプラム10mg群で-4.9(p=0.035[ANCOVA、FAS、OC])、-5.0(p=0.028[MMRM、FAS])、エスシタロプラム20mg群で-10.1(p<0.001[ANCOVA、FAS、OC])、-10.6(p<0.001[MMRM、FAS])。・主な有害事象は、傾眠、悪心、射精障害であった(発生率5%およびプラセボと有意に異なる)。 結果を踏まえ、著者らは「エスシタロプラムは、日本人SAD患者に効果的かつ安全で、良好な忍容性を示した。患者の特性を含めた研究の限界について、議論すべきである」とまとめている。関連医療ニュース うつ病や不安障害患者は、季節性の症状変化を実感 妊娠初期のうつ・不安へどう対処する 双極性障害患者の約半数が不安障害を併存

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観察研究は無作為化試験より過大評価になる?/BMJ

 診療記録や患者登録など、規定どおりに収集された医療データ(routinely collected health data:RCD)を用いた観察研究は、同じclinical question(CQ)に関してその後に行われた無作為化試験とは異なる答えをもたらし、実質的に治療効果を過大に評価している可能性があることが、米国・スタンフォード大学のLars G Hemkens氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年2月8日号に掲載された。無作為化試験が行われていない場合、診療の意思決定の支援にRCDによる観察研究が活用される機会が増えているという。一方、観察研究は、交絡による固有のバイアスのリスクがあり、RCDには正確性や信頼性の面でも問題があるとされる。2種の試験で、死亡の抑制効果を比較 研究グループは、RCDを用いた観察研究と、その後に同じCQについて行われた無作為化対照比較試験のエビデンスの間に、死亡の抑制効果に関してどの程度の差があるかを検討した。 RCD試験は、2010年までに公表され、傾向スコアを用いて交絡バイアスを調整し、死亡への相対的な介入効果の記載があるものとした。解析には、同一のトピックに関する既報の臨床試験に先立って行われたRCD試験のみを含めた。 RCD試験と無作為化対照比較試験で、治療効果、信頼区間(CI)、効果量(effect size、オッズ比[OR])を比較した。ランダム効果モデルで複数の試験をメタ解析的に統合してサマリーオッズ比(OR)を算出し、相対OR(無作為化試験のサマリーORをRCD試験の推定ORで除したもの)およびサマリー相対ORを得た。 サマリー相対OR>1の場合に、RCD試験のほうがその後の臨床試験よりも死亡率の結果がより良好であると判定した。無作為化試験よりも治療効果が31%も高い 16件のRCD試験(12件が循環器関連)と、同一のCQを検討した36件の無作為化対照比較試験(1万7,275例、死亡例835例)が解析の対象となった。RCD試験終了から無作為化試験の報告までの期間中央値は3年だった。 16のCQのうち8つのRCD試験で有意な差が認められた。5つ(31%)のCQでは、無作為化試験の死亡への治療効果が、RCD試験とは逆であった。これら5つのCQの無作為化試験はいずれも有意な差はなかったが、RCD試験は1つの試験で有意差がみられた。 9つ(56%)のRCD試験では、そのCI内に無作為化試験の死亡への効果の推定ORが含まれなかった。また、全体では、RCD試験の死亡抑制効果の推定ORは無作為化試験よりも31%有意に優れていた(サマリー相対OR:1.31、95%CI:1.03~1.65、I2=0%)。 著者は、「RCDを用いた観察研究は、最良の治療法に関して必ずしも最も信頼性の高い答えをもたらさないことが示唆されるため、臨床的な意思決定が間違った方向に導かれないよう注意を払う必要がある」と結論し、「無作為化試験がない場合、治療効果はRCD試験の知見よりも不確定で、より小さい可能性を考慮すべきであり、無作為化試験のエビデンスが確立されるまでは、高価な介入は差し控えるのがよいかもしれない」と指摘している。

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ジカウイルス感染症に気を付けろッ! その3【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第18回となる今回は、前回、前々回に引き続きジカウイルス感染症を取り上げたいと思います。「おいおい、どんだけジカウイルス感染症で引っ張るんだよ」と思われる読者の方もいらっしゃるでしょう。私もちょっと引っ張り過ぎかな~なんて思っています。でも…担当I氏が「ジカウイルス感染症、閲覧数伸びてます…伸びすぎてますよ~!!」と殊のほか喜んでおり、「まさかこの連載がこんなに注目されるとは…この勢いでもう1回、ジカウイルス感染症いっちゃいましょう! まだ絞れば何か出てくるでしょう!」と無茶を言うので、今までどんだけ人気なかったんだこの連載とちょっと心配になりつつも、せっかくですのでもう一度ジカウイルス感染症について語りたいと思います。われわれ医療従事者にとって大事なことは、海外でジカウイルス感染症に感染して日本で発症した患者さんを早期に診断して、その患者さんがそれ以上蚊に咬まれないようにすることです。ジカウイルス感染症を正しく診断することが、国内流行の防止につながるのです!というわけで、今回は輸入感染症の診断の原則も振り返りつつ、実際の症例アプローチについて考えてみましょう。南太平洋の楽園には危険もいっぱい【症例 とくに既往のない20代男性】●現病歴受診4日前昼過ぎから発熱と頭痛が出現。熱は微熱程度であった。夜からは全身の関節痛も出現した。受診3日前朝起きた際に、顔・体幹に皮疹が出ていることに気付いた。受診当日皮疹の原因が気になり、当院を受診した。ジカウイルス感染症患者さんは、このような経過で病院を受診されます。私が診た3名の方は、皆さん「皮疹が出てビックリしたので」というのが受診理由でした(図1)。デング熱の患者さんは「熱がつらくて」「頭が痛くて」といった主訴で受診するので、この「重症感のなさ」はジカウイルス感染症の特徴かと思います。●身体所見体温 37.2℃、脈拍数 75/分、血圧 119/69mmHg、呼吸数 12/分、SpO2 97%(RA)両後頸部リンパ節の腫脹・圧痛あり顔面・体幹に一部癒合し浸潤を触れない紅斑を認めるその他、特記すべき異常所見なし画像を拡大する皮疹の性状だけでジカウイルス感染症と診断するのは困難でしょう。デング熱、麻疹・風疹、梅毒、急性レトロウイルス症候群などさまざまな疾患との鑑別になります。試しに『ヒフミル君』(医師のための簡単・無料の診断支援サービス)に皮疹の写真を送ってみましたが、ジカウイルス感染症という診断は返ってきませんでしたッ!(麻疹・風疹というご回答でした)注目すべきはバイタルサインです。体温37.2℃。微熱です。以前の名称「ジカ熱」と言いつつ、発熱と呼べるほどの高熱ではありません。ジカウイルス感染症患者では発熱がみられないことすらあります。そういう意味では「ジカ熱」という名称よりも、「ジカウイルス感染症」のほうが正しいと言えるでしょう。輸入感染症診療のロジック名著『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』(中外医学社)に書かれているように、輸入感染症の診断の第一歩は「海外渡航歴の有無を確認すること」から始まります。発熱、下痢、皮疹のいずれかの症状のある患者さんを診たら、海外渡航歴を聴取する習慣を付けましょう!●海外渡航歴:受診の12日前から5日前までタヒチのボラボラ島などで観光していたなんと! これは驚きですッ! 海外渡航歴がありましたッ!まあこの患者さんはジカウイルス感染症なので、海外渡航歴があるのは当たり前ですね。さて、しつこいようですが、名著『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』(中外医学社)には「輸入感染症診療のロジック」として「『(1)渡航地 (2)潜伏期 (3)曝露歴』の3つから鑑別を絞り込むべし」と書かれています。最初の渡航地とは渡航していた国、地域ですね。アフリカでかかる病気と東南アジアでかかる病気とでは大きく違います。各地域の疫学を知っておくことが重要です。本症例の渡航地であるタヒチ島があるオセアニア地域ではデング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症の新興蚊媒介性感染症の三兄弟(私が勝手に呼んでるだけです)が、三つ巴状態で流行しています。本症例でもこれら3疾患は鑑別に加える必要があるでしょう。また、オセアニアではマラリア、A型肝炎、腸チフスなども鑑別に挙げる必要があります。次に潜伏期です。輸入感染症の診断において潜伏期の考え方は非常に重要です。この患者さんは受診の12日前から5日前までタヒチ島にいて、4日前から発熱が出現しています(図2)。そうしますと、この患者さんがタヒチ島で感染したと仮定すれば、この感染症の潜伏期は1~8日ということになります。この潜伏期がわかることによって、大幅に鑑別診断を絞ることができます。表は主な輸入感染症の潜伏期を3つに区切ってまとめたものです。本症例はこの表中の「短い潜伏期」グループに属します。つまり、この時点でマラリア、腸チフス、A型肝炎などは除外することができます。画像を拡大する画像を拡大する3つ目は曝露歴です。ジカウイルス感染症を考えた場合は、蚊に刺されたかどうかが重要になるわけですが、実際に自分が旅行中に蚊に咬まれたかなんて覚えてない人のほうが多いので、「具体的にどのような防蚊対策をしていたのか」を聞くことによって、蚊の曝露量を推定します。これまでわが国の輸入ジカウイルス感染症患者さんは、皆さん防蚊対策がされていませんでした。渡航者への防蚊対策の指導も、われわれ医療従事者の大事な仕事です。いよいよ確定診断へ渡航地、潜伏期、曝露歴などからデング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症が鑑別に挙がりました。もちろん発熱と皮疹を呈する疾患として、これら輸入感染症とは別に、国内で感染した梅毒や急性レトロウイルス症候群なども鑑別に挙がるかと思います。さて、血液検査を見てみましょう。●血液検査WBC 4310/μL、RBC 488×104/μL、Hb 14.0 g/dL、Hct 41.5%、Plt 16.9×104/μL、CRP 0.48mg/dL、TP 7.6g/dL、Alb 4.2g/dL、AST 21IU/L、ALT 15IU/L、LDH 207IU/L、γ-GTP 20IU/L、ALP 189IU/L、T-bil 0.6mg/dLこの血液検査から何が言えるでしょうか? ここから言えることは「何も言えねえ by 北島康介」ってことです。ジカウイルス感染症の血液検査所見は、これといった特徴がなく、血液検査所見で診断を詰めるのは困難です。ここまでの病歴・身体所見・渡航歴から、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、梅毒、急性レトロウイルス症候群などが鑑別疾患として挙がりました。さあ…ここからジカウイルス感染症までどう絞り込むのかが、今回の最大のポイント…ではなく、もうここまで絞り込めたら十分なのです。デング熱を鑑別に挙げたときには、ジカウイルス感染症も一緒に鑑別疾患として挙げる。これがボトムラインです。これさえ忘れなければ、ジカウイルス感染症を見逃すことはかなり少ないと言えるでしょう。というわけで、ここからはジカウイルス感染症の検査を保健所に依頼しましょう。血清のRT-PCRを行ってジカウイルスを検出することで診断となりますが、ジカウイルスは発症から数日で血中から消失すると考えられています。一方で、尿中からはもう少し長く検出されることがわかっています。ですので、発症から時間が経っている場合には、血液だけでなく尿も検体として採取しましょう。抗体検査による診断も可能です。デング熱と同様に、急性期と回復期のペア血清による診断を行います。この症例では、尿からジカウイルスが検出され、ジカウイルス感染症と診断されました。2016年2月15日よりジカウイルス感染症は「4類感染症」に指定されましたので、ジカウイルス感染症と診断した医師は、ただちに保健所に届け出なければなりません。そして、しつこいようですが、大事なことは患者さんが日本国内で蚊に咬まれないことです(とくに蚊が多い夏場は要注意)。さて、いかがでしたでしょうか。輸入感染症としてのジカウイルス感染症のイメージが湧きましたでしょうか? 次に輸入ジカウイルス感染症を診断するのは、あなたかもしれません。輸入ジカウイルス感染症症例に備え、日ごろからイメトレをしておきましょう!1)忽那賢志. 症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z.中外医学社;2015.2)Centers for Disease Control and Prevention. Emergency Preparedness and Response: Recognizing, Managing, and Reporting Zika Virus Infections in Travelers Returning from Central America, South America, the Caribbean, and Mexico.

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「抗凝固薬の不使用」もTAVR後の弁圧較差増加の予測因子

 大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)の使用は、急速に拡大しているが、TAVR後の大動脈弁圧較差の悪化についてのデータは限られている。TAVR後の1,521例のデータを解析した後ろ向き多施設共同研究が、Journal of The American College of Cardiology誌2016年2月号に報告された。 2007年5月から2014年10月までの間に、カナダやスペインなどの10施設で2,418例の患者がTAVRを受けた。術後に少なくとも2回(退院時と6~12ヵ月後)の経胸壁心エコーを受けた1,521例が対象。TAVR後の人工弁のピークフローは連続波ドップラーを用いて計測され、平均圧較差は修正ベルヌーイの式を使用した。絶対的な平均圧較差の変化は、最終フォローアップ時と退院時の差で計算し、年間の変化(mmHg/year)は絶対的な変化を時間で割って計算。弁血行動態の悪化は、フォローアップ期間中の10mmHg以上の平均圧較差の増加と定義された。TAVR患者の平均年齢は81±7歳、術前の平均圧較差は45.9±16.1mmHg、77.9%は径が23mmより大きい人工弁を使用 TAVR患者の平均年齢は81±7歳、術前の平均圧較差は45.9±16.1mmHg、左室駆出率(LVEF)の平均は55.6±14.4%であった。TAVRは、多くの患者において経大腿動脈アプローチで行われ、自己拡張型とバルーン拡張型の使用頻度はほぼ同様であった。77.9%の患者で、径が23mmより大きな人工弁が使用された。退院時に、半数以上の患者で抗血小板薬2剤併用療法が行われており、28%の患者でビタミンK阻害薬が投与されていた。すべての患者(1,521例)において6~12ヵ月の間に心エコーが行われ、625、258、129例の患者がそれぞれ、2、3、4年後の段階で心エコーを受けた。最後に行われた心エコーまでの期間は20±13ヵ月、平均のフォローアップ期間は28±16ヵ月。圧較差悪化(10mmHg以上)の予測因子は、抗凝固薬の不使用、valve-in-valve(外科的人工弁後のTAVR)、23mm以下の経カテーテル大動脈弁の使用、BMI高値 平均の経大動脈圧較差は、術前の45.9±16.1mmHgから9.96±5.37mmHg(退院時)に改善した。退院時からフォローアップ期間中の圧較差変化の絶対値は0.59±5.50mmHg(p<0.001)。年平均での変化は0.30±4.99mmHg/年(中央値:0.00 [IQR:-1.38~2.00])。多変量解析によると、弁圧較差の増加に有意に寄与する要因は、抗凝固薬の不使用、valve-in-valve(外科的人工弁後のTAVR)、23mm以下の経カテーテル大動脈弁の使用であった。VHD(退院時と比べて10mmHg以上の圧較差の増加)の頻度は、4.5%であり、1年後に起きた早期のVHDは2.8%であった。VHDが起きた患者に限定すると、平均圧較差は退院時の9.5±5.0mmHgから26.1±11.0mmHg に増加していた(p<0.0001)。VHDが認められた患者において、圧較差が20、30、40mmHg以上の患者はそれぞれ47例、15例、8例であった。これらの患者の傾向として、若年(p=0.022)、BMI高値(p<0.001)、径の小さい弁(p=0.038)、valve-in-valve(p=0.008)があり、また、人工弁患者不適合はより高率に認められ、抗凝固薬がTAVR後に使用されていない傾向にあった。 著者らはDiscussionで、圧較差の変化はすべての患者で一様に起きるわけではなく、VHDが認められない患者では有意な圧較差の変化は認められなかったとし、TAVR後のVHDは特定のグループの患者に起きるのではないか、と述べている。ただ、平均のフォローアップ期間も20ヵ月(最小は6ヵ月)であり、VHDの発生が過小評価されている可能性がある。TAVR後の特別な抗血栓療法でVHDの発生が減少するかどうかを確かめるには、大規模な前向き研究が必要であるとしている。

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脳卒中後の課題指向型リハ、優越性示されず/JAMA

 脳卒中後、中等度の上肢後遺症が認められた患者のリハビリテーションについて、課題指向型リハビリテーションプログラム(Accelerated Skill Acquisition Program:ASAP)がもたらす機能回復は、従来型作業療法(usual and customary care:UCC)と比べて同等もしくは低いことが、米国・南カリフォルニア大学のCarolee J. Winstein氏らが361例を対象に行った無作為化試験ICAREの結果、明らかにされた。これまで早期リハビリ完了後の期間を対象に行われた2件の大規模臨床試験において、強度・回数を増した課題指向型リハビリを行うことで通常ケアと比べて機能回復が良好であることが示されていた。今回、研究グループは外来患者を対象に試験を行ったが、結果を踏まえて著者は、「課題指向型リハビリの優越性を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2016年2月9日号掲載の報告。用量の異なる従来型作業療法とで比較 試験は単盲検にて、脳卒中後、運動機能に中等度の後遺症が認められた外来患者361例を対象に行われた。被験者は2009年6月~14年3月に7施設で1万1,051例についてスクリーニングを行って集められ、試験期間は44ヵ月間であった。 ASAPは基本原則に基づくプログラムで、機能障害にフォーカス、特異的課題、強度、必要度、自発性、患者中心などに留意し、1時間の介入を週3回10週間にわたって計30セッション行うというもの。 研究グループは被験者を、ASAPを行う群(119例)、ASAPと同量(30セッション)のUCCを行う群(DEUCC、120例)、UCCのモニタリングのみを行う群(UCC、122例)の3群に無作為に割り付け有効性を比較した。 主要アウトカムは、Wolf Motor Function Test(WMFT、平均15の上腕運動と手作業からなる)の時間スコアの12ヵ月間の変化(対数で評価)であった。副次アウトカムは、WMFT時間スコアの変化(臨床的に意義のある最小変化量[MCID]は19秒)、Stroke Impact Scale(SIS)上肢機能スコア(MCIDは17.8ポイント)が25ポイント以上改善した患者の割合などだった。12ヵ月間のWMFT時間スコアの変化に有意差なし 無作為化を受けた被験者361例(平均年齢60.7歳、男性56%、アフリカ系米国人42%、脳卒中発症後平均46日)のうち、12ヵ月間の主要アウトカム評価を完了したのは304例(84%)であった(ASAP群106例、DEUCC群109例、UCC群100例)。 主要アウトカムのintention-to-treat解析(361例対象)の結果、各群の平均スコアの変化は、ASAP群が2.2から1.4への変化(差:0.82)、DEUCC群は2.0から1.2(差:0.84)、UCC群は2.1から1.4(差:0.75)で、有意な群間差はみられなかった(ASAP vs.DEUCCは0.14、95%信頼区間[CI]:-0.05~0.33、p=0.16/ASAP vs.UCC:-0.01、-0.22~0.21、p=0.94/DEUCC vs.UCC:-0.14、-0.32~0.05、p=0.15)。 副次アウトカムについても、ASAP群のWMFT時間スコアの変化が-8.8秒、SIS改善患者割合73%、DEUCC群はそれぞれ-8.1秒、72%、UCC群は-7.2秒、69%だった。ASAP vs.DEUCCのWMFT時間スコア差は1.8秒(95%CI:-0.8~4.5秒、p=0.18)、SIS改善患者割合の差は1%(-12~13、p=0.54)、ASAP vs.UCCのWMFT時間スコア差は-0.6秒(-3.8~2.6秒、p=0.72)、SIS改善患者割合の差は4%(-9~16、p=0.48)、DEUCC vs.UCCのWMFT時間スコア差は-2.1秒(-4.5~0.3秒、p=0.08)、SIS改善患者割合の差は3%(-9~15、p=0.22)であった。 重篤有害事象(入院、脳卒中再発など)は患者109例で168件報告された。8例の患者は試験中止となっている。介入に関連した有害事象は2例で、高血圧、手首の骨折であった。

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カルシトニン製剤の働き

【骨粗鬆症】【治療薬】カルシトニン製剤について、教えてください骨粗鬆症の初期に使用します。骨を強くするとともに、痛みを和らげるお薬です。★注意顔が紅くなったり、ほてったら、先生に相談しましょう!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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