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外傷性脳損傷に対するSB623の第II相試験の結果を米国脳神経外科学会で発表/サンバイオ

 サンバイオ株式会社およびその子会社である SanBio, Inc.は、2019年3月6日、現地時間 2019 年4月13日~17日に米国サンディエゴで行われる米国脳神経外科学会(American Association of Neurological Surgeons)の年次総会にて、同グループが日米グローバルで行ったSB623の外傷性脳損傷を対象にした第II相試験(STEMTRA試験)の結果を発表する予定であると発表した。 STEMTRA試験は、2018年4月に被験者(61名)の組み入れを完了し、同年11月に「SB623の投与群は、コントロール群と比較して、統計学的に有意な運動機能の改善を認め主要評価項目を達成」という良好な結果を得た。これをもって、日本の慢性期外傷性脳損傷プログラムにおいては、国内の再生医療等製品に対する条件および期限付承認制度を活用し、2020年1月期(2019年2月~2020年1月)中に、再生医療等製品としての製造販売の承認申請を目指している。■関連記事【GET!ザ・トレンド】脳神経細胞再生を現実にする(5)

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絶食治療患者の消化吸収力と血糖管理/糖尿病学の進歩

 2019年3月1~2日に開催された第53回糖尿病学の進歩において、瓜田 純久氏(東邦大学総合診療・救急医学講座)が「絶食治療を要する疾患で救急搬送された糖尿病患者の臨床経過と栄養管理」について講演し、絶食治療による消化吸収とそれに付随する血糖値変動について講演した(特別企画1:低栄養リスクのある糖尿病患者の栄養サポートと栄養管理)。救急搬送される糖尿病患者の栄養状態とは? 慢性的な栄養不足は、栄養障害によるランゲルハンス島細胞の栄養不良、β細胞量と機能の低下などを引き起こす。そして、救急搬送される患者の多くには、β細胞機能不全を招くほどの急性の負荷が生じている。このような状況下での低栄養を防ぐため、瓜田氏は同施設における2005年7月からの1,531名のカルテを用いて、糖尿病患者の急性疾患時の栄養状態をケトアシドーシス以外の観点から解析した。 まず、救急搬送された患者の糖尿病の有無と絶食期間を調べるために、入院後3日以上の絶食が必要な症例を抽出、HbA1cで区分したところ、HbA1cが6%より高い患者の割合は4割程度であった。また、高齢糖尿病入院患者の栄養状態をMNA-SF1)(簡易栄養状態評価表)で評価したスペインの研究2)によると、入院患者の54%に低栄養または低栄養の恐れがあったという。これらのことから、急性疾患によって搬送される糖尿病患者は、意外と栄養状態が悪いということが明らかになった。栄養障害の原因を探る方法 同施設で入院後3日以上の絶食が必要な症例は、肺炎、急性腸炎、憩室炎、イレウス、消化管出血、虫垂炎、尿路感染症などが全体の45%を占め、同氏が担当する症例には、糖尿病患者の血糖コントロールを悪化させるような急性疾患が多く含まれている。そこで、同氏らは、栄養障害がみられる全患者に対して「食事摂取状況の写真撮影とRapid turnover protein(RTP:レチノール結合タンパク)によるタンパク漏出測定による診断」を実施し、栄養障害の早期発見に努めている。 タンパク質の合成障害や摂取不足がある状態では、半減期(Alb:20日、Tf:7~10、Pre Alb:3~4日、RTP:半日)が短い成分ほど大きく低下するが補いやすい。この性質を活かし、栄養障害がタンパク合成能、摂取不足どちらに起因しているものかをRTPで判断する。たとえば、1900kcalの食事をしっかり食べているにもかかわらずAlb値が下がる糖尿病患者に対し、この検査を実施すると合成障害とわかり、「糖尿病患者のタンパク合成能は落ちていない」と判断することができるという。ただし、下痢、体重減少、貧血、腹部膨満感、浮腫、無力脱力感などがある場合は、まずは、消化管検査や心電図を含む主要な検査を実施して評価を行うことが望ましく、それらに異常がない場合は、開腹などの既往歴や吸収障害を惹起する薬剤(ステロイド、刺激性下剤、酸分泌抑制薬など)の服用を確認してから、低栄養と断定する」と、栄養評価時の注意ポイントを示した。食事を再開した時の消化吸収力と血糖コントロール 絶食治療後の明確な食事再開基準はなく、患者の意思に委ねられている。同氏は、この問題を解決する方法として“呼気中水素総排出量”の算出が有用と考えている。これは炭水化物の消化吸収を表す指標で、絶食期間中は低値を示す。実際に、同氏の解析したデータでも食事再開時は消化吸収の効率が低下していることが明らかとなり、「糖尿病患者の血糖値に“食べた物がすべて反映されている”という考えを間引かなければならない」とし、「たった1日の絶食が消化吸収阻害に影響を及ぼしている」と、絶食におけるリスクを示した。 最後に同氏は「絶食治療により、消化吸収は大きく変化する。絶食治療は必要であるが、血糖、栄養、消化吸収を同時に評価する必要性がある」と締めくくった。■参考1)Nestle Nutrition Institute:MNA-SF2)Sanz Paris A,et al. Nutr Hosp. 2013;28:592-599.

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日本は職業階層が高いと冠動脈疾患リスク高い?

 欧米では、職業階層が高い(専門職や管理職)ほど、冠動脈疾患(CHD)や脳卒中を含む心血管疾患リスクが低いと報告されているが、日本では明らかになっていない。今回、東京大学/Harvard T.H. Chan School of Public Healthの財津 將嘉氏らが実施した病院ベースの症例対照研究の結果、日本では職業階層が高いほどCHDリスクが高く、脳卒中リスクは低いことが報告された。著者らは、「心血管疾患における職業による“勾配”(地位の高い仕事に就業している人ほど低リスク)は普遍的ではなく、現代の日本社会では、管理職や専門職のCHDリスクは高い可能性がある」と指摘している。Journal of the American Heart Association誌2019年3月19日号に掲載。 本研究は、日本の全国的な多施設の入院患者データ(1984~2016年)を使用し、約110万例の被験者を対象とした症例対照研究。国内の標準的分類に基づいて、それぞれの産業分野(ブルーカラー産業、サービス産業、ホワイトカラー産業)の中で、最も長く就業している職業階層(ブルーカラー、サービス、専門職、管理職)により患者をコード化した。オッズ比と95%信頼区間(95%CI)は、ブルーカラー産業のブルーカラーの労働者を基準とし、性別・年齢・入院日・入院病院を調整して、多重代入法を用いた条件付きロジスティック回帰によって推定した。さらに喫煙と飲酒について調整した。 主な結果は以下のとおり。・職業階層が高い(専門職および管理職)ほど、CHDの過剰リスクと関連していた。喫煙・飲酒の調整後も、すべての産業で過剰オッズはCHDと有意に関連し、サービス産業の管理職で最も顕著だった(オッズ比:1.19、95%CI:1.08~1.31)。・一方、高い職業階層におけるCHDの過剰リスクは、低い脳卒中リスク(例:ブルーカラー産業における専門職のオッズ比:0.77、95%CI:0.70~0.85)で代償されていた。

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せん妄のマネジメントと予防のための薬理学的介入~メタ解析

 せん妄に対する薬理学的介入については、さまざまな調査が行われているが、全体的なベネフィットや安全性はよくわかっていない。台湾・林口長庚紀念医院のYi-Cheng Wu氏らは、せん妄の治療および予防に対する薬理学的介入に関するエビデンスの評価を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2019年2月27日号の報告。 せん妄の治療および予防に対する薬理学的介入を検討した、2018年5月17日までのランダム化臨床試験(RCT)を、各種データベース(PubMed、Embase、ProQuest、ScienceDirect、Cochrane Central、Web of Science、ClinicalKey、ClinicalTrials.gov)より検索した。事前リストに従いデータを抽出した。PRISMA(システマティックレビューおよびメタ解析のための優先的報告項目)ガイドラインを適用し、すべてのメタ解析は、ランダム効果モデルを用いて行った。主要アウトカムは、せん妄患者の治療反応およびせん妄リスクのある患者におけるせん妄発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・合計58件のRCTが抽出された。内訳は、治療アウトカムを比較したRCTが20件(1,435例、平均年齢:63.5歳、男性の割合:65.1%)、予防を検討したRCTが38件(8,168例、平均年齢:70.2歳、男性の割合:53.4%)であった。・ネットワークメタ解析では、ハロペリドールとロラゼパムの併用が、プラセボや対照群と比較し、せん妄の治療に最も高い奏効率を示した(オッズ比[OR]:28.13、95%CI:2.38~333.08)。・せん妄の予防については、ラメルテオン(OR:0.07、95%CI:0.01~0.66)、オランザピン(OR:0.25、95%CI:0.09~0.69)、リスペリドン(OR:0.27、95%CI:0.07~0.99)、デクスメデトミジン塩酸塩(OR:0.50、95%CI:0.31~0.80)が、プラセボや対照群と比較し、せん妄の発生率を有意に低下させた。・いずれの薬理学的介入も、プラセボや対照群と比較し、すべての原因による死亡リスクと有意な関連は認められなかった。 著者らは「せん妄の薬理学的介入において、治療にはハロペリドールとロラゼパムの併用、予防にはラメルテオンが最良の選択肢である可能性が示唆された。また、せん妄の治療および予防に対するいずれの薬理学的介入も、すべての原因による死亡率を上昇させなかった」としている。■関連記事せん妄に対する薬物治療、日本の専門家はどう考えているかせん妄治療への抗精神病薬投与のメタ解析:藤田保健衛生大せん妄ケアの重要性、死亡率への影響を検証

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第15回 アナタの心電図は“男女”どっち?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第15回:アナタの心電図は“男女”どっち?皆さんは心電図に「性差」があるのをご存知ですか? 男性と女性では、波形にいくつかの違いがあるのです。今回は、それを見極めるために、ST部分の“男女差”についてDr.ヒロが解説します。症例提示81歳、男性。糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群(CPAP治療中)で通院中。以前から徐脈を指摘されており、不定期にめまいを認める。以下に定期外来での心電図を示す(図1)。(図1)定期外来時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図(図1)の所見として誤っているものはどれか。1)洞(性)徐脈2)時計回転3)ST低下4)右軸偏位5)陰性T波解答はこちら4)解説はこちらいつ・どんな時でも系統的な判読が大事です(第1回)。1)○:“レーサー(R3)・チェック”をしましょう。R-R間隔は整、心拍数は42/分(検脈法:10秒)です。遅くてもP波はコンスタントで、向きも“イチニエフの法則”を満たします。「めまい」は徐脈に関連した症状かもしれず、精査対象となる可能性があります。2)○:「回転」は移行帯の異常です。胸部誘導の上からR波(上向き)とS波(下向き)のバランスを見ていきます。「R>S」となるのがV5とV6誘導の間であり、「時計回転」の診断でOKです。3)○:ST偏位は、J点に着目して、基線(T-Pライン)からのズレを見るのでした(第14回)。V5、V6誘導で「ST低下」があります(水平型)。4)×:I誘導:上向き、aVF(またはII)誘導:下向きは「左軸偏位」でしたね(第8回)。具体的な数値は、“トントン法Neo”を利用すると「-40°」です(トントン・ポイントは-aVRとIIの間で後者寄りです)。5)○:T波の「向き」を“スタート”の“ト”でチェックします。aVR誘導以外は上向きなのが基本です。全体をくまなく見渡して、aVL、V5、V6誘導で「陰性T波」を指摘して下さい。問題を続けましょう。次が今回の本題、男女に特徴的なST部分の“型”に関する問いです。【問題2】この高齢男性のST部分は男性型か、女性型か述べよ。解答はこちら女性型解説はこちら「ST部分」には、明確な性差が存在します。つまり男女で波形が異なる訳です。ただし、生物学的な“男・女”と100%完全には一致しません。前回扱った若年男性の心電図は、「男性型」の典型で、V1~V4誘導の“猛々しい”「ST上昇」が特徴です(この所見は女性では珍しい)。ただ、加齢と共に低下傾向を示し、高齢になると「女性型」を示すこともまれではありません。このST部分の性差について理解しておきましょう。皆さんは、心電図波形に「性差」があるって知っていましたか?…実際、男性か女性かまで意識して心電図を読んでいる方は、あまり多くないのではと推察します。しかし、純然たる“違い”があることが古くから知られており、とりわけ「ST部分」に現れやすいとされています*1。はじめに言っておくと、今回の話もあくまでも“雑談”です。細部まで逐一暗記しようとせず、『ふーん、そうなのかぁ』程度に思ってもらえば大丈夫。注目するのはV1~V4(前胸部)誘導のJ点とST角度(ST angle)の2点。「J点」はQRS波の“おわり”で、いわゆる“変曲点”です(第14回)。もう一つの「ST角度」という名前は聞き慣れないかもしれないので、図2で説明しましょう。(図2)J点とST角度の関係画像を拡大する男女別のST部分の差を3つに分類したSurawicz先生によると、J点を認識し、そこを通り基線に平行な線Aを引きます。次に、J点と点B(J点から60ms[1.5mm]先のST部分で“ST60”と称される)を結ぶ線がなす角度(図中のC)を表します。ST部分の“傾き”と理解すれば良いでしょう。では、この2つを用いてST部分を1)女性型(F型)、2)男性型(M型)、3)不定型(I型)の3つに分類する方法*2を紹介します(図3)。(図3)J点・ST角度によるST型分類画像を拡大するまずは、V1~V4誘導でJ点レベルが最高となる誘導に注目します。V1~V4誘導のいずれでもJ点が「0.1mV」、つまり、基線からの上昇が1mm未満なのが「F型」(ST角度は不問)です。今回の心電図(図1)も、これに相当します。残る2つ(M型、I型)では、4誘導のどこかで1mm以上のST上昇(J点)があるわけですが、今度は「ST角度」も見渡してみて下さい。角度が一番キツい(最大となる)誘導で、その角度が20°以上だったら「M型」、それ未満なら「I型」とします。具体的な数値は忘れてかまいませんが、若年男性ほど角度が急峻、つまり「M型」となる傾向なんです。ボクの経験上、ST角度はおおむねT波高が一番のところで最大となるため、ざっと見てJ点が1mm以上であれば、T波が最も高くツンと立った誘導を使ってST角度を調べるスタンスでOKです。『そんなこと言われても、どれを選ぶか悩むよなぁ~』というアナタ!…ならエイヤッとV2誘導の“一択”でJ点レベルとST角度を調べる感じで大丈夫かも(前回学んだように、多くのケースでJ点(ST)レベルが最大となりますから)。性別によってST部分に差があって、こうやって見るんだと知ってもらえたらボク的には十分。あくまでも厳格な心電図診断というよりは、“趣味”の世界みたいなものなので、がんじがらめにならずに楽しみましょう!この分類法のルールさえわかったら、皆さんも心電図を見て、どの型になるか言えますでしょ? 上記で説明したそれぞれのST型を以下に示したので、作図法も確認してみて下さい(図4)。I型とM型ではいずれもV3誘導でT波高が最大に見えるため、そこにフォーカスしてST角度を測りました。(図4)SurawiczらによるST型の3区分を作図画像を拡大するさて、現実にはどの型が多いのでしょうか?…Circulationという有名誌に前述のSurawicz先生が年齢・性別ごとの違いを報告しているので、そのグラフを以下に示します(図5)。(図5)性別・年齢によるSTパターン画像を拡大するまず、女性のほうはシンプル。全年代にわたって8割方がF型です。残り2割、成人の場合ではM型とI型が半分ずつ占めています。一方の男性はどうでしょう? 思春期以降、40歳くらいまではM型ないしI型で9割近くを占め、“若さ”の象徴的な「ST上昇」が目立ちます。ただ、よーく見ると、成人以降、M型は徐々に減り、代わりにF型がぐんぐん増えてきます(I型は1~2割のままほぼ一定)。50歳前後でF型はM型を凌駕し、最終的に今回の症例のような高齢男性では、7割がF型となる様子が読み取れます。心電図が年をとった結果、生物学的には男性でも、心電図は“女性”…そんなことが珍しくないというワケ。この“理由”はと言えば、皆さんお察しの通り「性ホルモン」の影響が強いようです。“力こぶ”を連想させるST-T部分はテストステロンの影響を受けるため、加齢によって“更年期”を迎え、最終的には枯渇してゆく…。そんな様子には、はかなさすら漂います…。ですから、STEMI(ST上昇型急性心筋梗塞)の診断を考えた場合、F型が増加するのは嬉しいです(つくづく、うまくできてるなぁと思います)。でも、高齢でも2~3割の男性はM型ないしI型ですから、注意が必要ですね。最後に、こうしたST型の分類は、あくまでも正常QRS-T波形を想定したもので、脚ブロックや心室肥大などのいわゆる「二次性ST変化」をきたす波形には適用できないので、ご注意あれ!今回は、あまり真面目に語られることのない、性別による心電図波形の違いについて扱いました。やや雑学的はハナシですが、ボクが医学生の頃、友達と面白いなぁと話した日々を懐かしく思いました。Take-home MessageJ点(STレベル)とST角度には性差が現れやすい(3つの区分あり)男性に特徴的な加齢に伴うST型の変化を知っておこう1)Bidoggia H, et al. Am Heart J. 2000;140:430–436.2)Surawicz B, et al. J Am Coll Cardiol. 2002;40:1870–1876.【古都のこと~南禅寺水路閣】時は明治、東京遷都で意気消沈した京都リバイバルのカギであった琵琶湖疎水事業。施工責任者は田邉朔郎(さくろう)。史上初ジャパン・オリジナルの大規模土木建設の重積が、大卒間もない一青年*の肩にいかほどに感じられたか…。南禅寺(左京区)の敷地内に同居する水路閣もその一部。赤レンガ・花崗岩によるモダンな風貌、アーチ型橋脚の見事な曲線美に圧倒されました。老朽化が叫ばれていますが、130年たった今でも文明開化当時の“勢い”が感じられるボクのお気に入りスポットです。*:後に東京・京都帝国大学の教授となった

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気候変動と認知症入院リスクとの関連

 人間が引き起こす気候変動がここ数十年で加速しており、健康への悪影響が懸念されている。しかし、高齢者の神経疾患に対する気候変動の影響は、まだよくわかっていない。米国・ハーバード公衆衛生大学院のYaguang Wei氏らは、ニューイングランドにおける認知症の入院と夏季、冬季の平均気温および気温変動との関連について検討を行った。Environment International誌オンライン版2019年2月26日号の報告。 認知症の入院と夏季、冬季の平均気温および気温変動との関連を推定するため、時間依存共変量Cox比例ハザードを用いた。各地域の気温は、衛星画像データを利用した予測モデルを用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・夏季(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.96~1.00)または冬季(HR:0.97、95%CI:0.94~0.99)の気温が平均よりも高かったとき、認知症関連入院リスクは低下した。一方、気温変動の大きい地域の高齢者では、認知症関連入院リスクが上昇した。・性別、人種、年齢、メディケア二重資格による交互作用(Effect modification)は、サブグループにおける脆弱性を調査するために考慮された。 著者らは「本結果より、平均気温より低いとき、および気温変動が大きいときに、認知症関連入院リスクの上昇が示唆された。気候変動は、認知症の進行やそれに伴う入院コストに影響を及ぼす可能性がある」としている。■関連記事なぜ、フィンランドの認知症死亡率は世界一高いのか統合失調症患者の入院、1日の気温差が影響気温31℃超で気分症状が再発!入院も増加(3月18日 記事の一部を修正いたしました)

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テストステロンが血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞に関連/BMJ

 JMJD1C遺伝子変異で予測した遺伝的内因性テストステロンは、とくに男性において、血栓塞栓症、心不全および心筋梗塞にとって有害であることを、中国・香港大学のShan Luo氏らが、UK Biobankのデータを用いたメンデル無作為化試験の結果、明らかにした。テストステロン補充療法は世界的に増大しているが、心血管疾患でどのような役割を果たすのか、エビデンスは示されていない。そうした中、最近行われたメンデル無作為化試験で、遺伝的予測の内因性テストステロンが、虚血性心疾患や虚血性脳卒中と、とくに男性において関連していることが示されていた。検討の結果を踏まえて著者は、「内因性テストステロンは、現在の治療法でコントロール可能であり、血栓塞栓症や心不全のリスク因子は修正可能である」と述べている。BMJ誌2019年3月6日号掲載の報告。UK Biobank40~69歳の英国人男女39万2,038例のデータを用いて評価 研究グループは、内因性テストステロンが血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞と因果関係を有するのかを明らかにするため、無作為化試験「Reduction by Dutasteride of Prostate Cancer Events(REDUCE)」の被験者から遺伝的予測の内因性テストステロンを入手。UK Biobankのデータを用いて、それらテストステロンと血栓塞栓症、心不全および心筋梗塞との関連性を評価し、「CARDIoGRAMplusC4D 1000 Genomes」でゲノムワイドベースの関連性検証試験を行った。 被験者数は、REDUCE試験は50~75歳の欧州系の男性3,225例、UK Biobankは40~69歳の英国人男女39万2,038例、CARDIoGRAMplusC4D 1000 Genomesは17万1,875例(約77%が欧州直系)であった。 主要評価項目は、自己申告と、病院エピソードおよび死亡記録に基づく血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞の発生であった。JMJD1C遺伝子変異を活用、女性では関連性認められず UK Biobankの被験者のうち、血栓塞栓症の発生は1万3,691例(男性6,208例、女性7,483例)、心不全は1,688例(それぞれ1,186例、502例)、心筋梗塞は1万2,882例(1万136例、2,746例)であった。 男性において、JMJD1C遺伝子変異で予測した遺伝的内因性テストステロンは、血栓塞栓症(対数変換テストステロン値[nmol/L]の単位増加当たりのオッズ比[OR]:2.09、95%信頼区間[CI]:1.27~3.46、p=0.004)、心不全(7.81、2.56~23.81、p=0.001)と明らかな関連性が認められたが、心筋梗塞との関連性は認められなかった(1.17、0.78~1.75、p=0.44)。ただし検証試験では、被験者全体において、JMJD1C遺伝子変異による遺伝的予測の内因性テストステロンと心筋梗塞の、明らかな関連性が認められた(1.37、1.03~1.82、p=0.03)。 女性においては、いずれも明らかな関連性はみられなかった(ORは血栓塞栓症:1.49[p=0.09]、心不全:0.53[p=0.47]、心筋梗塞:0.91[p=0.80])。 アウトカムと関連する遺伝子変異において、過剰な不均一性は観察されなかった。一方で、潜在的なSHBG遺伝子多面的変異で予測した遺伝的内因性テストステロンが、アウトカムと関連しないことも示された。

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医療に関するYouTube動画の質【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第135回

医療に関するYouTube動画の質 いらすとやより使用 将来なりたい職業ランキングに必ず登場するのがユーチューバー。大きく稼げる可能性はありますが、安定的な収入が得られるわけではないので、個人的には子供に勧めたくない職業です。 Loeb S, et al.Dissemination of Misinformative and Biased Information about Prostate Cancer on YouTube.Eur Urol. 2018 Nov 27. [Epub ahead of print]さて、がんのYouTube動画は非常に多いです。今はまさに動画最盛期。あまたの医療系動画が存在し、玉石混交の状況です。本日紹介する研究は、がんのYouTube動画に関する報告です。全体の動画のうち、75%が医学的なメリットに関するもので、比較的良心的なものが多かったようです。しかしながら、正しい医学用語を用いているのは全体の54%であり、現行のガイドラインに準拠しているものも半数程度だったそうです。全体の77%に誤った情報やバイアスの強い情報が含まれていました。がんだけでなく、難病の特発性肺線維症でも同様の報告があります1)。コンテンツの質を評価したスコアは、財団/医療団体や医療専門家によって制作された動画のほうが、業界が制作した動画よりも高かったので、「誰が何のために作ったか」というのが質を大きく左右するようです。ウェブサイトでは比較的良心的なものが増えてきましたが、動画の世界はまだ“野放し”の状態です。ぜひとも、この分野にもメスを入れていただきたいと思います。残念ながら、私は人前でしゃべるのが苦手なので、ユーチューバーにはなれません。しくしくしく。1)Goobie GC, et al. Ann Am Thorac Soc. 2019 Jan 4. [Epub ahead of print]

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医師1,000人の意見割れる! 時間外労働規制に賛成か、反対か

 1年半以上にわたり続けられてきた「医師の働き方改革」の議論がいよいよ大詰めを迎えている。この間、学会や関連団体は提言を行い、特例の上限時間に反対を唱える医師有志らによる署名活動も巻き起こっている。実際に、現場で働く医師1人ひとりは現行の枠組み案をどのように受け止めているのか。ケアネットでは、CareNet.comの医師会員を対象にアンケート調査を実施し、1,000人にその時間外労働の実情や意見を聞いた。 厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」は2019年3月13日、20回目となる検討会を開催し、月内にとりまとめ予定の報告書案を提示した。この報告書案には、勤務間インターバル9時間・当直明けは18時間確保、それらが難しい場合には随時代償休息(時間単位での休息)を付与といった健康確保措置のほか、大きく3つの枠組みを設けた時間外労働の上限規制案が盛り込まれている:・原則「月45時間・年360時間以下」・臨時的な必要がある場合に「月100時間未満・年960時間以下」・特例(指定医療機関および集中的な技能習得が必要な医師)では「月100時間未満・年1,860時間以下」 アンケートは、2019年3月1~13日、ケアネット会員の医師を対象にインターネット上で実施した。回答者の内訳は、年代別では30代が31%で最も多く、40代(26%)、50代(23%)、60代(11%)と続く。病床数別では、200床以上が64%で最も多く、以下、0床(13%)、100~199床(12%)、20~99床(5%)、1~19床(3%)。 このうち、現在提案されている上限規制案に、賛成か、反対かを尋ねたところ、48%が「賛成(どちらかといえば賛成を含む)」と答えた。その理由として、「現実的な内容で、今後段階的に改善を図る上で適当な水準」「規制しないと医師が体力的に疲弊する」などスタートとしては妥当とするコメントが多くみられた。一方、「反対(どちらかといえば反対を含む)」(52%)と答えた医師からは、「規制を作ることには賛成だが、時間枠が広すぎて反対」「特例とはいえ、過労死基準をはるかに超える上限規制は意味がない」など、特例の上限として提案されている“年1,860時間”に対する懸念の声が多くあがっている。 “年1,860時間”は過労死基準を超えて長すぎるために「反対」とする意見がある一方で、「人員が足りず時間外を制限されてしまっては成り立たない」ために反対する声もみられた。現在の時間外労働について聞いた質問では、年1,860時間を超える時間外労働をしていると答えた医師は6.5%。現実問題として負担の集中している現場があることが浮き彫りとなり、時間外規制だけにとどまらない、偏在解消や受診行動を変えるためのアプローチなど、実効性のある対策を求める声があがっている。 また、これらの時間外規制には、アルバイトの勤務時間を含むとされているが、75%の医師がこのことを「知らなかった」と回答。「若手のバイト医師がいなくては病院が回らない」など、アルバイトが制限されることを危惧する意見が上がっている。厚労省では現在、一般労働者の副業・兼業の労働時間管理についての検討がスタートしている。医師においても、規制の適用が開始される2024年4月までを目途に、副業の労働時間管理や健康確保措置の在り方が検討される見通しとなっている。 今回の調査の詳細と、具体的なエピソードやコメントはCareNet.comに掲載中。■関連記事申告や支払いなしの残業ゼロへ、労務管理の徹底求める~働き方改革残業年960時間、特例2,000時間の中身とは~厚労省から水準案宿日直や自己研鑽はどう扱う?~医師の働き方改革「働き方改革」は医師を救う?勤務医1,000人のホンネと実情

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特例1,860時間は妥当? あり得ない? 医師1,000人のリアルな本音

5年後の2024年4月から、医師においても時間外労働規制が適用される見通しとなっており、枠組みについての議論が大詰めを迎えています。将来的にさらなる削減を目指しつつも、まずは著しい過重労働を軽減するという方向性で議論が進んでいますが、現場の先生方はどのように受け止めているのでしょうか。ケアネットでは、CareNet.com会員医師約1,000人に、その実情と提示されている案への意見をお聞きしました。コメントはこちら結果概要約半数が時間外労働は週7時間と回答、一方で週40時間超えも厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」では、大きく分けて下記3つの上限水準案が示されている(2018年3月13日現在):原則「月45時間・年360時間」臨時的な必要がある場合に「月100時間未満・年960時間以下」特例(指定医療機関および集中的な技能習得が必要な医師)では「月100時間未満・年1,860時間以下」このうち、現状の時間外労働時間がどの枠組みに当てはまるかについて聞いたところ、47.1%の医師が一般労働者と同様の水準である「月45時間・年360時間(≒週7時間)」と回答した。一方で、「月100時間未満・年960時間以下(≒週20時間)」の医師が34.3%、「月100時間未満・年1,860時間以下(≒週40時間)」の医師が12.1%、それを超える医師も6.5%おり、半数強の医師で長時間労働の実態がうかがえる結果となった。画像を拡大する年代別にその割合をみると、若い世代で長時間労働が多くなり、週7時間程度と回答したのは20代で25.8%、30代で36.6%に留まっている。50代以降では、6割以上の医師が週7時間程度と回答している。画像を拡大するまた、勤務先の救急体制別にみると、三次救急医療機関勤務の医師では42.6%が週20時間、そして33.1%が週40時間あるいはそれを超えると回答し、重症患者を受け入れる現場でとくに負担がかかっている状況がみられる。一方で、二次・三次救急医療機関以外でも、一定数長時間の時間外労働のある医師がいることがうかがえる。画像を拡大する時間外労働規制の現案に対し、賛成/反対が半数ずつ現在提案されている上限規制の枠組みに対し、賛成(どちらかといえば賛成を含む)が48%、反対(どちらかといえば反対を含む)が52%と、会員医師の意見は半分に割れる結果となった。回答理由について、賛成派からは「妥当なところ」「まずは始めてみるべきだと思うから」など、とにかく一歩踏み出すことを評価する声が上がった。反対派からは、「過労死ラインを超えるのはおかしい」「特例がそのうち当たり前とされるようになる」など、長時間労働が容認される可能性に対する懸念の声が多く上がっている。画像を拡大する現状の時間外労働が長くなるほど、反対意見が多くなる傾向がみられた(“どちらかといえば反対”を含めると、48.7%<51.7%<60.5%<60.6%)。時間外労働が週40時間あるいはそれを超えると回答した医師のうち、賛成派では「多忙すぎる」「体がきつい」など、限界を感じていることがうかがえるコメントが寄せられている。また、「事務仕事を除くことができれば実現可能」「コンビニ受診などの意識改革がなければ業務削減できずサービス残業になる」など、上限時間規制だけに留まることなく、タスクシフトや受診者側の意識改革などの実行を求める声が上がった。反対派では、「地方ではあり得ない。医師がほとんどいないのに無理」「時間制限するならば、同レベルの医師をその分増やさないと到底現場が回らない」など現状の人員だけでは実現不可能とする声や、「臨時的な必要」という言葉のあいまいさを危惧する意見が上がっている。また、今回の働き方改革により本来一番大きく労働環境が改善されるべき年1,860時間を超える医師において、反対意見が33.3%と最も多くなっている。しかしその理由としては、「さすがに長すぎる」という意見がある一方で、「医療の質が落ちる」「抑制されると部門の運営ができない」など、医療現場の切実な状況や医療の質に対する懸念を反映した意見が上がった。画像を拡大する年代別にみると、とくに20~30代の若い世代で賛成意見を反対意見が上回り、60代以上では56%が賛成・どちらかといえば賛成と答えている。画像を拡大する時間外規制にアルバイトの勤務時間も含まれることを、75%が「知らなかった」と回答アルバイトの勤務時間が、上記時間外規制の時間内に含まれることについては、75%と多くの医師が認識していなかった。「アルバイト時間を制限されると困る」「若手のバイト医師がいなくては病院が回らない」など、現実問題として医師自身の生活や病院運営を支えていることを訴える声が上がっている。画像を拡大するコメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承ください)賛成意見[スタートには妥当]原則を規定しないと、働き方改革は進まない今回をきっかけに医師の労働時間管理を進めるべき現実的な内容で、今後段階的に改善を図る上で適当な水準と思われる意欲ある労働には上記の時間が妥当当直=時間外なので、月45時間では病院が機能しないから[現場の疲弊に対策は待ったなし]働きすぎで疲弊している医師が多い規制しないと医師が体力的に疲弊し、モチベーションが落ち医療の質低下につながる現場が回らなくなることを国に気づいてもらい、もっと根本的な原因対策のきっかけに[集中的な技能習得の必要性]短期間に集中的に練習したほうが、技術習得は早いキャリアが浅いうちは進んで働くケースが許容され、それに見合った給与をもらうべき[支払いなしの残業時間はなくすべき]上限があろうがなかろうが実質勤務時間は変わらないので、時間外勤務を給与に反映させられるほうがいい下手に上限時間が短いと、事務で時間外労働を勝手に削るという現状がまかり通ってしまう[並行して時間規制以外の対策を]窓口徴収額を上げる、救急車有料化などの対策が望まれる。費用が安ければ需要を喚起するのは当然で、不要な受診を増やしているのは間違いないコンビニ受診などが減らない限り業務量は減らせない働き方だけを変えても問題解決にならず、病院の受診方法など根本的に変えないと無理応召義務があるから年360時間以内など不可能反対意見[1,860時間への懸念]1,860時間までなら働かせてよいという認識になってしまいそうだから前年度の勤務時間が1,860時間以上の医師に限るなどの条件が必要『臨時的な必要』が拡大解釈されて、結局は急性期病院勤務の医師の多くが過剰な残業を余儀なくされる規制を作ることには賛成。時間枠が広すぎて反対特例とはいえ、過労死基準をはるかに超える上限規制は意味がない善意につけこむ形で長時間労働が行われている現状なのに、さらにそこに法的根拠を与えるのは危険[応召義務についての議論が不十分]患者の容体によって仕事が左右されるのが医師の宿命だし、時間外勤務時間が超過しているから診察しないは通らない誤解を招きうる応召義務は撤廃すべき[科や地域による偏在解消が先決]人員適正配置といったバックアップなしに議論しても意味がない人がいない。休診時間が増えれば救急が大変になる過疎地域での臨床に問題が起こる[サービス残業が増えるという懸念]タイムカード上の操作が行われ、超勤手当がつかなくなるかもしれない医師の少ない当地方では、制限がかかっても働かざるを得ない状況も生じうる。結局無償で働かされることになる上限を決めても仕事が減るわけではない。サービス残業になるだけ1,860時間分時間外手当が支給されるとは思えない時間外割増賃金の支払義務の定めなしに時間上限だけ決めるのは良くない[インセンティブを効果的に設ける必要性]給料をもっと上げて救急医を増やすべき当直代に+αとして診療1人/入院1件あたりなどでインセンティブを設けるべき基本給が低く、残業代が入らなくなるなら、大学の基本給を上げてからするべきまずは大学病院医師の待遇改善に取り組む必要がある設問詳細Q1.勤務先の病院についてお教えください一次救急医療機関(軽症・帰宅可能患者対応、休日夜間急患センター)二次救急医療機関(中等症~重症・一般病棟入院患者対応、当番制)三次救急医療機関(重症~危篤・ICU入院患者対応、救命救急センター)それ以外Q2.時間外労働時間について、検討会で示されている下記枠組みのうち、先生はどちらにあてはまりますか※1日8時間・週40時間(=5日)勤務を基準として、当直を含む時間外労働時間の合計としてあてはまるものを選択ください月45時間未満・年360時間以下(≒週7時間)月100時間未満・年960時間以下(≒週20時間)月100時間未満・年1,860時間以下(≒週40時間)上記を超えるQ3.時間外上限規制について現状提案されている、原則「月45時間・年360時間」、臨時的な必要がある場合に「月100時間未満・年960時間以下」、特例として指定された医療機関(および一定期間集中的な技能習得が必要な医師)では「月100時間未満・年1,860時間以下」に、賛成ですか?反対ですか?賛成どちらかといえば賛成どちらかといえば反対反対Q4.Q3の回答について理由をお教えください(自由記述)Q5.上記には「アルバイトの勤務時間も含まれる」ことを知っていましたか?知っていた知らなかった画像を拡大する

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前立腺がんの生存率改善に関連するスタチンは?

 スタチン使用が前立腺がんの転帰改善に関連することを示す複数の疫学的研究が報告されている。スタチンの効果を確認するための大規模臨床試験を実施する前に、最も適切な対象患者とスタチンの種類を特定することが必要である。今回、台北医学大学のSzu-Yuan Wu氏らは、後ろ向きコホート研究により「アンドロゲン除去療法を受けている進行前立腺がん患者の生存率改善に、アトルバスタチン、プラバスタチンおよびロスバスタチンが関連することが示唆される」と報告した。European Journal of Cancer誌オンライン版2019年2月28日号に掲載。 本研究は、2008~14年の台湾がん登録を用いた後ろ向きコホート研究で、対象は、がん診断後1年目にアンドロゲン除去療法のみを受けた局所進行および転移を有する前立腺がん患者5,749例。スタチンを28日間以上処方された場合にスタチン使用者と定義した。逆確率重み付けCoxモデルを用いて、全死因死亡および前立腺がんによる死亡(PCSM)におけるスタチン使用の影響を推定した。 主な結果は以下のとおり。・全体で2,259例が死亡し、うち1,495例は診断後1年から追跡調査期間中央値3.6年の間に前立腺がんで死亡した。・スタチン使用は、全死因死亡率(ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.70~0.86)、転移例におけるPCSM(HR:0.76、95%CI:0.68~0.86)、局所進行例における全死因死亡率(HR:0.66、95%CI:0.54~0.81)の有意な低下と関連していた。・アトルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、もしくはピタバスタチンを投与された患者は、他のスタチンを投与された患者より死亡率の大幅な減少を示した。・スタチンの有益性は、診断後にスタチンを投与された男性で一貫して観察され、合併症の多い人や高齢者でも認められた。

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NSCLC1次治療のニボルマブ+低用量イピリムマブにおけるORR:PD-L1 1%以上 vs.1%未満(CheckMate-568)/JCO

 転移のある進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療として、ニボルマブと低用量イピリムマブ併用の効果と安全性を評価した、オープンラベル第II相CheckMate-568試験。 今回、米国・Duke University Medical CenterのNeal Ready氏らによる結果が、Journal of clinical oncology誌オンライン版2019年2月20日号に掲載された。ニボルマブ+低用量イピリムマブは、転移のある進行NSCLCの1次治療として有効かつ忍容性が高いことが示唆された。 本試験では、未治療StageIVまたは再発StageIIIBのNSCLC患者288例を対象として、ニボルマブ3mg/kgを2週間ごと、イピリムマブ1mg/kgを6週間ごとに投与した。主要評価項目は、PD-L1の発現率が1%以上の患者および1%未満の患者における客観的奏効率(ORR)。副次的評価項目として、腫瘍変異負荷(TMB)に基づく有効性についても検討された。 主な結果は以下のとおり。・対象の患者群のうち、288例中252例(88%)でPD-L1が評価され、120例中98例(82%)でTMBが評価された。・PD-L1レベル別のORRは、PD-L1 1%以上群で41%、PD-L1 1%未満群で15%であり、PD-L1の発現レベルは、ORRに関与した。・TMB別でみると、TMB10mut/mB未満の群と比較して、TMB10mut/mB以上の群では、PD-L1の発現レベルにかかわらずORRが高かった(12% vs.44%)。・無増悪生存期間(PFS)も、TMB10mut/mB未満の群に対し、TMB10mut/mB以上の群でより延長がみられた(2.6ヵ月 vs.7.1ヵ月)。・Grade3~4の治療に関連する有害事象は、患者の29.2%に認められた。

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第10回 循環の異常がある時1 患者さんにはどのような変化が?【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は脈拍と血圧の異常について考えてみます。脈拍と血圧の異常からは循環の異常を察知します。バイタルサインに加え、患者さんを観察することにより循環の異常に気付くことがあるでしょう。循環の異常がある時、患者さんにはどのような変化が起こるのでしょうか。症例を通して考えたいと思います。患者さんBの場合経過──185歳、男性。75歳の時に急性心筋梗塞※1を発症し、当時カテーテル治療を受けました。その時から抗血小板薬を内服しています。81歳の時には、脳梗塞のため2週間入院しました。後遺症は軽く済み、自宅では、つたい歩きで過ごしていましたが、最近は訪問診療を受けていました。本日、薬剤師であるあなたがいつもの薬を届けるため患者さん宅を訪れると、そこにはぐったりとして顔色が真っ青になった患者さんがベッドのうえに横たわっていました。「いつもはもっと元気な方なのに...」とあなたが思っていると、家族(妻)から「今日は朝から特に具合が悪そうなんです。最近は調子が悪くて。いつもの薬はきちんと飲んでいたんですが...」と相談されました。※1 急性心筋梗塞冠動脈の狭窄や閉塞により心筋の血流が減少して起こる心筋壊死。冠動脈の動脈硬化に起因する場合が多い。本症例では、カテーテルを用いて狭窄病変を広げることで、直接的に再開通を図るカテーテル治療を行った。経過──2「顔色が真っ青でぐったりしている。そんなに暑くないのに額に汗もかいている。熱でもあるのかな?」そう思ったあなたは、バイタルサインをチェックしてみることにしました。「まず脈を測ってみよう」と患者さんの手をとると、その手はとても冷たくジットリと湿っていました。「まさか...」と思って額に手をあてたその時、「まさかショック!?」額にあてた手が感じ取ったのは、発熱ではなく、とても冷たい汗でした。ショックとはちまたで言う、びっくりして衝撃を受けることではありません(笑)。医療の場での「ショック」とは、「循環不全によって、重要臓器や細胞へ十分な血液が供給されなくなり、これらの機能異常が出現する臨床症候群」と定義されます。循環(circulation)は救急のABCのうちの「C」ですが、それが臓器の機能異常を来すほど悪くなっている状態です。経過──3「循環」に異常があるかもしれないと思ったあなたは、急いでバイタルサイン〈表1〉を確認してみました。脈は弱く110回/分の頻脈で、血圧も低下していました。「Bさん、大丈夫ですか?」と話しかけると眼を開けますが、すぐに疲れきったように眼を閉じてしまいます。家族(妻)の話では、この1週間ほどみぞおちのあたりの痛みがあり、あまり食事が摂れていなかったそうです。便はゆるく泥状で、真っ黒な状態が続いていました。観察とバイタルサインよりバイタルサインの異常は「頻呼吸・頻脈・血圧の低下・意識レベルの低下」でした。ABCで考えると、気道に異常はなく、呼吸については頻呼吸がありますがSpO2は良好な値ですので低酸素の状態ではなさそうです。頻脈と血圧の低下があり循環の異常があります。さて、循環不全・ショックの診断基準〈表2〉についてお話ししましょう。原因が何であれ、循環不全の状態になると診断基準にあるような徴候が見られます。大きな変化は血圧の低下(大項目)ですが、ショックの初期には身体の代償機転が働いて血圧が低下していない場合があるため、小項目にあるような所見を素早く察知することが重要です。心拍数増加・脈拍微弱血圧が低下すると脈拍は弱くなります。さらに重要臓器に血液を送ろうとするために多くの場合、頻脈となります。爪床毛細血管の refilling 遅延末梢循環不全のため、毛細血管再充満時間が延長します。自分の爪を押してみてください。爪の下にある皮膚がピンク色から白く変化しますね〈写真1〉。3秒以上圧迫してそれを解除するともとのピンク色に戻ります〈写真2〉。圧迫を解除してからもとのピンク色に戻るまでの時間を毛細血管再充満時間(capillary refilling time; CRT)といい、CRTが2秒以上のとき異常である(=末梢循環不全がある)と判断します。これは救急隊が現場でよく使う手技の1つです。とても役に立つ手技ですが、外気温などの影響を受けやすいので注意が必要です。意識障害または不穏・興奮、乏尿・無尿脳や腎臓への循環不全の結果、意識障害または不穏・興奮、乏尿・無尿の所見がみられます。皮膚蒼白と冷汗、または39℃以上の発熱血圧が低下し、交感神経が過緊張の状態となると、末梢の血管は収縮し冷汗が出ます。これは末梢血管を収縮させて重要臓器の血流を維持しようとする生体反応といえます。また、敗血症性ショックとなると感染症ですから当然高熱となります。診断基準からわかるように、ショックの状態か否かは、バイタルサインと身体の観察により判断できます。

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超急性期に脳卒中が疑われる患者に対する搬送中の経皮型ニトロは機能的転帰を改善しない(中川原譲二氏)-1014

 高血圧は急性期脳卒中によくみられ、不良なアウトカムの予測因子である。大規模な降圧試験でさまざまな結果が示されているが、超急性期の脳卒中に関する高血圧のマネジメントについては不明なままだった。著者らは、経皮型ニトログリセリン(GTN)が、発症後超早期に投与された場合に、転帰を改善するかどうかについて検討した。90日後の修正Rankin Scaleスコアを評価 研究グループ「The RIGHT-2 Investigators」は多施設共同の救急隊員による救急車内でのシャム対照無作為化試験を行った。被験者は、4時間以内に脳卒中を発症したと考えられ、FAST(face-arm-speech-time)スコアは2または3、収縮期血圧値が120mmHg以上の成人だった。被験者を無作為に2群に分け、GTN群には経皮型GTNを投与し(5mg/日を4日間)、シャム群にはシャム処置を、いずれも救急隊員が開始し、病院到着後も継続した。救急隊員は治療についてマスキングされなかったが、被験者はマスキングされた。主要アウトカムは、90日後の7段階修正Rankin Scale(mRS)による機能的アウトカムのスコアだった。評価は治療についてマスキングされた追跡調査員が電話で行った。分析は段階的に行い、まずは脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)と診断された患者について(コホート1)、次に被験者全員を対象に無作為化した患者について行った(コホート2)。機能的転帰に有意差なし、死亡や重大有害イベントも低下せず 試験は、2015年10月22日~2018年5月23日にかけて、英国8ヵ所の救急車サービス拠点から救急隊員516人、被験者数1,149例(GTN群は568例、シャム群581例)が参加して行われた。無作為化までの時間の中央値は71分(IQR:45~116)。被験者のうち虚血性脳卒中を発症したのは52%(597例)、脳内出血は13%(145例)、TIAは9%(109例)、脳卒中類似症例は26%(297例)だった。GTN群の入院時点の血圧値はシャム群と比べて、収縮期血圧値が5.8mmHg(p<0.0001)、拡張期血圧値が2.6mmHg(p=0.0026)、それぞれ低かった。コホート1において、最終的に脳卒中またはTIAと診断された被験者におけるmRSスコアに有意差はみられなかった。GTN群の同スコアは3(IQR:2~5)、シャム群も3(同:2~5)、不良なアウトカムに関する補正後commonオッズ比(acOR)は1.25(95%信頼区間[CI]:0.97~1.60)で、両群間に有意差はみられなかった(p=0.083)。コホート2でも、GTN群のmRSスコアは3(同:2~5)、シャム群も3(同:2~5)で、acORは1.04(95%CI:0.84〜1.29)と同等だった(p=0.69)。死亡(治療関連の死亡:GTN群36例vs.シャム群23例、p=0.091)や重大有害イベント(188例vs.170例、p=0.16)といった副次的アウトカムも、両群で差はみられなかった。本研究での降圧効果は、十分であったか? 本研究では、脳卒中が疑われる患者に対する搬送中の経皮型ニトログリセリン(GTN)の投与は、機能的アウトカムを改善しないことが示された。死亡率や重大有害イベントの発生リスクも低減しなかった。患者の登録時の収縮期血圧値が平均163mmHg前後、拡張期血圧値が平均92mmHg前後であり、GTN群ではシャム群に比較して、収縮期血圧値で5.8mmHg、拡張期血圧値で2.6mmHg低下しているが、この程度の血圧低下では、機能的転帰は改善しないとも考えられる。層別解析では、登録時の収縮期血圧値が、140mmHg以下の2群間で、GTN群の転帰がやや良好な傾向がみられるため、超急性期における降圧のさらなる強化療法について、検討の余地があると思われる。

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ブルガダ症候群、ICD植込み後の成績に関するメタアナリシス【Dr.河田pick up】

 日本を含めたアジアでよくみられるブルガダ症候群に対する植え込み型除細動器(ICD)の適応は、以前と比べて変わってきており、どの症例で本当にICDが必要なのかの判断はいまだに難しい。オランダ・エラスムス大学医療センターのAdem Dereci氏らが、メタアナリシスの結果をJACC.Clinical Electrophysiology誌2019年2月号に報告している。 本研究の目的は、ICDが植込まれたブルガダ症候群患者の予後を要約することである。ブルガダ症候群は、心臓伝導障害や突然死につながる心室性不整脈の発生リスクが高いことで知られる。臨床的な予後、適切および不適切なICD治療、そしてICD治療による合併症についてすべて要約したものはない。22の研究から1,539例のデータを抽出 オンラインのMEDLINEデータベースを用いて、2017年12月までに発表された報告が抽出され、ブルガダ症候群に対するICD植込み後の臨床成績と合併症に関する828の研究が調べられた。それらを慎重に評価した結果、22の研究から1,539例がメタアナリシスに組み込まれた。ICDの適切作動は100患者・年当たり3.1 1,539例の平均年齢は45歳、18%が女性で、79%の患者は一次予防目的、21%の患者は二次予防目的でICDが植込まれていた。4.9年の平均フォローアップ期間中、適切および不適切ICD作動は、100患者・年あたりそれぞれ3.1、3.3であった。 100患者・年あたりの心臓関連死亡率は0.03で、非心臓関連死亡率は0.3であった。100患者・年あたりのICDに関連した合併症は、リードの不具合が1.6、精神的な合併症が1.3、感染症が0.6、リードの移動が0.4、その他の合併症が0.6であった。リードの不具合、心房細動に伴う不適切作動の評価にはより長期の評価が必要 ブルガダ症候群の患者で、心室性不整脈のリスクが高いと判断された患者は、ICD治療からかなりの恩恵を受ける可能性があり(100患者・年当たり3.1)、ICDの植込み後の心臓関連死亡率と非心臓関連死亡率は低い。ただし、不適切なICDによる治療とICDに伴う合併症は重篤な問題となりうる。 今回の研究では患者の平均年齢が45歳であり、平均フォローアップ期間が5年程度しかないことは、ICDのリードの長期使用に伴う合併症や心房細動による不適切作動が十分に評価されていないことを示唆している。また、ブルガダ症候群のリスク評価手法はこれらの論文が発表された頃とは変わってきており(たとえばEPSの有効性は今では疑問視されている)、個別の症例に応じたリスク評価が必要と考えられる。(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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高齢者の尿路感染症、抗菌薬即時処方で死亡リスク減/BMJ

 プライマリケアにおいて尿路感染症(UTI)と診断された高齢患者では、抗菌薬の非投与および待機的投与は、即時投与に比べ血流感染症および全死因死亡率が有意に増加することが、英国・Imperial College LondonのMyriam Gharbi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年2月27日号に掲載された。大腸菌(Escherichia coli)による血流感染症の約半数が、原疾患としてのUTIに起因し、高齢患者はリスクが高いとされる。また、自然治癒性の疾患(上気道感染症など)では抗菌薬の「非投与」「待機的または遅延投与」は重度の有害アウトカムとはほとんど関連しないが、若年女性のUTI患者ではわずかだが症状発現期間が延長し、合併症が増加するとの報告がある。しかし、これらの研究は症例数が少なく、その一般化可能性は限定的だという。投与開始時期と血流感染症、入院、死亡との関連を評価 研究グループは、イングランドにおける高齢UTI患者への抗菌薬治療と重度有害アウトカムとの関連の評価を目的に、住民ベースの後ろ向きコホート研究を実施した(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成による)。 英国のClinical Practice Research Datalink(2007~15年)のプライマリケアのデータを、イングランドの全入院情報を含むhospital episode statisticsおよび死亡記録と関連付けた。2007年11月1日~2015年5月31日の期間に、プライマリケア医を受診し、下部UTI疑い、または確定診断が1回以上なされた65歳以上の患者15万7,264例が解析の対象となった。 主要アウトカムは、UTIのインデックス診断日から60日以内の血流感染症、入院ならびに平均入院期間、全死因死亡率とした。抗菌薬の即時投与(初回UTI診断時または同日)、待機的投与(初回UTI診断から7日以内)、非投与の患者に分けて比較した。とくに85歳以上の男性患者でリスクが高い 全体の平均年齢は76.7(SD 9.2)歳で、22.1%が85歳以上、78.8%が女性であった。UTIエピソード31万2,896件(15万7,264例)のうち、7.2%(2万2,534件)で抗菌薬処方の記録がなく、6.2%(1万9,292件)では遅延投与の処方が記録されていた。 初診時に処方された抗菌薬(27万1,070件)は、トリメトプリム(54.7%)が最も多く、次いでnitrofurantoin(19.1%)、セファロスポリン系(11.5%)、アモキシシリン/クラブラン酸(9.5%)、キノロン系(4.4%)の順であった。 初回UTI診断から60日以内に、1,539件(0.5%)の血流感染症エピソードが記録されていた。血流感染症の発症率は、初診時に抗菌薬が処方された患者の0.2%に比べ、初診から7日以内の再診時に処方された患者は2.2%、処方されなかった患者は2.9%であり、いずれも有意に高率だった(p=0.001)。 主な共変量で補正すると、抗菌薬の即時投与群と比較して、待機的投与群(補正後オッズ比[OR]:7.12、95%信頼区間[CI]:6.22~8.14)および非投与群(8.08、7.12~9.16)は、いずれも血流感染症を経験する可能性が有意に高かった。 また、抗菌薬即時投与群と比較した血流感染症の有害必要数(number needed to harm:NNH)は、非投与群が37例と、待機的投与群の51例よりも少なく、非投与のリスクがより高いことが示された。これは、抗菌薬即時投与群では発症しないと予測される血流感染症が、非投与群では37例に1例、待機的投与群では51例に1例の割合で発症することを意味する。 入院の割合は、待機的投与群が26.8%、非投与群は27.0%と、いずれも即時投与群の14.8%の約2倍であり、有意な差が認められた(p=0.001)。平均入院日数は、非投与群が12.1日であり、待機的投与群の7.7日、即時投与群の6.3日よりも長かった(p<0.001)。 60日以内の全死因死亡率は、即時投与群が1.6%、待機的投与群が2.8%、非投与群は5.4%であった。死亡リスクは、60日のフォローアップ期間中のどの時期においても、即時投与群に比べ待機的投与群(補正後OR:1.16、95%CI:1.06~1.27)および非投与群(2.18、2.04~2.33)で有意に高かった。 85歳以上の男性は、血流感染症および60日以内の全死因死亡のリスクが、とくに高かった。 著者は、「イングランドでは、大腸菌による血流感染症が増加していることを考慮し、高齢UTI患者に対しては、推奨される1次治療薬の早期の投与開始を提唱する」としている。

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重度アルコール離脱症候群に対する早期集中ベンゾジアゼピン療法

 アルコール離脱症候群(AWS)治療の現在のエビデンスでは、symptom-triggered therapyが支持されている。早期段階での集中的なベンゾジアゼピン(BZD)治療は、ICU在室期間を短縮させるといわれているが、在院日数への影響については、よくわかっていない。米国・カリフォルニア大学のJin A. Lee氏らは、最初の24時間での集中的なBZD治療がAWS患者の在院日数を短縮させるかどうかについて、介入前後コホート研究により検討を行った。Clinical Toxicology誌オンライン版2019年2月7日号の報告。 対象は、重度AWS患者。介入前コホート(PRE)は、2015年1~11月に入院した患者とし、鎮痛尺度(Richmond Agitation-Sedation Scale:RASS)に基づき、ジアゼパムおよびフェノバルビタールの漸増によるsymptom-triggered therapyを行った。介入後コホート(POST)は、2016年4月~2017年3月に入院した患者とし、最初の24時間(導入相)でジアゼパムおよびフェノバルビタールの漸増療法を行い、その後72時間(終了相)ですべての治療を終了させた。重度AWSの定義は、ジアゼパム30mg超を必要とする患者とした。集中治療の定義は、AWS診断後24時間以内の総ジアゼパム投与量の50%超とした。AWSの非興奮症状、ジアゼパム追加用量を評価するためRASSの補助としてSHOT尺度を用いた。主要アウトカムは、在院日数とし、副次的アウトカムは、ICU在室日数、BZD使用、人工呼吸器未使用日数とした。 主な結果は以下のとおり。・AWSプロトコルを用いて治療した患者532例中、113例が重度AWSであった。・PRE群75例、POST群38例の年齢、性別、AWS歴、疾患重症度は均一であった。・集中治療を受けたPOST群では、かなりの差が認められた(51.3%vs.73.7 %、p=0.03)。・POST群では、在院日数(14.0日vs.9.8日、p=0.03)およびICU在室日数(7.4日vs.4.4日、p=0.03)において、有意な短縮が認められた。 著者らは「重度AWS患者の対する早期集中マネジメントは、ICU在室期間や在院日数の減少させることが示唆された」としている。■関連記事アルコール依存症に対するナルメフェンの有効性・安全性~非盲検試験ベンゾジアゼピン耐性アルコール離脱症状に対するケタミン補助療法アルコール関連での緊急入院後の自殺リスクに関するコホート研究

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ASCO-GU2019レポート 前立腺がん

レポーター紹介ASCO-GU 2019に参加してきました。ASCO-GU前夜にレストランで前列左から鈴木先生(東邦大学医療センター佐倉病院 教授)杉元先生(香川大学教授)、後列左から松原先生(国立がん研究センター 東病院)、私(三好:横浜市立大学附属市民総合医療センター)、加藤先生(香川大学)2019年2月14日~16日のスケジュールで、ASCO-GU 2019が開催されました。学会正式名称はGenitourinary Cancers Symposium 2019、場所は今年もサンフランシスコ Mosconeセンターです。学会参加者は年々増えていて2016年3,320人、2017年3,409人、2018年4,300人、今年の参加者は4,400人とのことです。抄録の55%が米国外からで、総数765件、疾患別では前立腺がんの抄録が最多で進行前立腺がん232件、限局性前立腺がん151件だそうです。全体の約半数が前立腺がんの抄録のようです。今回は1泊4日での参加でしたので初日に行われた前立腺がんのsessionしか聴講できませんでした。この中から気になる注目演題3つを取り上げたいと思います。ARAMIS:efficacy and safety of darolutamide in nonmetastatic castration-resistant prostate cancer.(Poster Session A, board A4)【Abstract No.:140】First Author:Karim FizazinmCRPC(非転移性去勢抵抗性前立腺がん)におけるdarolutamide(本邦未承認)の有効性を示した第III相ランダム化比較試験、ARAMIS試験の結果です。nmCRPCはsurvivalが比較的長く、OSに代わる適切なsurrogate endpointがないために、これまで臨床試験が組まれなかった経緯があります。しかしながら米国にて年間5~6万人のnmCRPC患者発生があるとの推計もあり、nmCRPCの治療はunmet needsとされてきました。FDAにおいてmetastasis-free survival(MFS)がOSのsurrogate endpointとして設定され、それに基づいてapalutamide(本邦未承認)(SPARTAN試験)、enzalutamide(PROSPER試験)のnmCRPCにおけるMFS改善効果が2018年に報告されました。今回発表されたのはdarolutamideです。darolutamide はapalutamide、enzalutamideと同様に新規抗アンドロゲン薬に分類される薬剤です。今回darolutamide(ARAMIS試験)のMFS改善効果が発表され、同日N Engl J Medに報告されています。背景:nmCRPCの治療としてapalutamide、enzalutamideがありますが、fall、fracture、other adverse eventsとの関連が報告されています。darolutamideはapalutamide、enzalutamideとは構造が異なり、blood-brain barrierを通過しにくいため、中枢神経系への副作用が少なく忍容性が改善される可能性があると報告されています。また、darolutamideはARへのaffinityは高く、GABA-Aへの親和性や薬物相互作用が低いと報告されています。ARAMIS試験trial design:PSADT10ヵ月未満のハイリスクnmCRPC 1,509例を2:1にランダム化したdarolutamide1,200mg+ADT vs.プラセボ+ADTの比較試験のprimary endpointはMFSです。MFSは遠隔転移または死亡と定義されています。画像検査は16週間ごとに行われ、もしbaselineの状態がindependent reviewで遠隔転移と診断されると、baseline eventとしてカウントされます。secondary endpointはOSなどです。患者:PSADTは6ヵ月以下のハイリスク症例が両群とも約7割、Bone-sparing agentの使用は3~6%です。結果:primary endpointであるMFSはHR:0.41(95%CI:0.34~0.50)、p

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心不全患者への在宅移行支援、予後は改善せず/JAMA

 心不全入院患者に対する、看護師などによる患者中心の在宅移行支援は、入院中の担当医の裁量の下で行われる通常ケアと比べて、再入院や救急受診などの複合臨床アウトカムを改善しなかったことが、カナダ・Population Health Research InstituteのHarriette G. C.Van Spall氏らによる、約2,500例を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果、示された。在宅移行支援は心不全患者のアウトカムを改善可能とされるが、これまで系統的な検証は行われていなかったという。ただし、今回の試験はカナダ・オンタリオ州で行われたものであることを踏まえて著者は、「ほかのヘルスケアシステムや地域で有効かどうかのさらなる検討が必要だろう」と述べている。JAMA誌2019年2月26日号掲載の報告。退院後のセルフケア教育やかかりつけ医への受診予約などを提供 研究グループは、在宅移行支援モデル「Patient-Centered Care Transitions in HF(PACT-HF)」の有効性を評価する目的で、2015年2月~2016年3月にかけて、カナダ・オンタリオ州の10病院で、心不全で入院した2,494例の成人患者を対象に試験を行った。対照期からある時点で介入期へ移行するステップ・ウェッジ(stepped-wedge)法でのクラスター無作為化試験を行い、2016年11月まで追跡した。 同グループは試験対象病院を無作為に2群に分け、一方を介入群(1,104例)として、退院時に看護師が患者に対し、セルフケア教育と個別的に作成された退院サマリーの提供を行い、退院後1週間以内のかかりつけ医への受診予約を手配した。また高リスク患者に対しては、看護師による組織的な訪問看護と心機能に関する外来ケアを行った。 もう一方は対照群(1,390例)として、在宅移行期のケアについては入院中の担当医の裁量に任せた。 主要アウトカムは、階層的に順位付けて評価した複合アウトカムで、(1)退院3ヵ月時点で評価したあらゆる再入院・救急受診・死亡の複合(第1複合アウトカム)、(2)30日時点のあらゆる再入院・救急受診(第2複合アウトカム)だった。 副次アウトカムは、退院準備に関する「B-PREPARED」スコア(範囲:0[最良]~22[最少])、移行期ケアの質に関する指標「3-Item Care Transitions Measure:CTM-3」(範囲:0[最も悪い]~100[最良])、生活の質に関する指標「5-level EQ-5D:EQ-5D-5L」(範囲:0[死亡]~1[健康状態最良])、質調整生存年(QALY、範囲:0[死亡]~0.5[6ヵ月時点で健康状態最良])だった。退院準備や移行期ケアの質などは向上 被験者2,494例は、平均年齢77.7歳、1,258例(50.4%)が女性だった。 主要アウトカムの発生について、第1複合アウトカムは介入群49.4%(545件)、対照群50.2%(698件)と、両群で有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.83~1.19)。第2複合アウトカムも、それぞれ27.5%(304件)、29.3%(408件)と有意差はみられなかった(HR:0.93、95%CI:0.73~1.18)。 一方、副次アウトカムについて、6週時点の平均B-PREPAREDスコアが、介入群16.6 vs.対照群13.9(群間差:2.65[95%CI:1.37~3.92]、p<0.001)、平均CTM-3スコアが76.5 vs.70.3(6.16[0.90~11.43]、p=0.02)と有意差が認められた。平均EQ-5D-5Lスコアも、6週時点で0.7 vs.0.7(0.06[0.01~0.11]、p=0.02)、6ヵ月時点で0.7 vs.0.6(0.06[0.01~0.12]、p=0.02)と有意差があった。しかし、6ヵ月時点の平均値QALYは0.3 vs.0.3(0.00[-0.02~0.02]、p=0.98)で有意差は認められなかった。

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ADHD患者の就労に関するレビュー

 これまでの研究では、多くの注意欠如多動症(ADHD)児が、成人期までの間に数々の障害を抱え続けていることが示唆されている。米国・ニューヨーク州立大学バッファロー校のChanelle T. Gordon氏らは、小児ADHD患者が抱える将来の職業的障害、それに伴う教育上・経済上の問題に関するシステマティックレビューを行った。Clinical Child and Family Psychology Review誌オンライン版2019年2月6日号の報告。 PsycINFO、PubMed、その他のソース(専門家によるコンサルタントや専門書)よりシステマティックに検索し、ADHDまたは関連症状の既往歴のある成人患者を対象とした19件の縦断的研究に関する35論文を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・複数の研究において、ADHD既往者は、そうでない人と比較し、教育的障害が多く、高校や大学を卒業する可能性が低いことが示唆された。・その後、ADHD既往者は、業務達成率の低下、雇用状況の不安定性の増加、業務パフォーマンスの低下がみられ、これらの結果は、性別、薬歴、症状の持続性に関係なく、一貫して認められた。・同様の結果が、米国内外の臨床試験および代表的な国内試験でも認められていたが、より古い試験においては、職業的障害が少ないことを示唆する傾向が認められた。・さらに、ADHDは、年収低下、公的支援への依存増大、ホームレスリスクの増大など、いくつかの経済的問題との関連が認められた。 著者らは「今後の研究では、より多様なソースを利用し、マクロおよびミクロレベルでの分析による、職業的障害に対する革新的な対策が求められる。また、職場環境におけるADHD患者への効果的な支援および介入に関する研究が必要とされる」としている。■関連記事ADHD発症しやすい家庭の傾向2つのADHD治療薬、安全性の違いは日本でのADHDスクリーニング精度の評価:弘前大学

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