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治験の非特定化被験者データ、共有基準を満たした大手企業は25%/BMJ

 米国・イェール大学のJennifer Miller氏らは、臨床試験の非特定化された被験者レベルデータについて、その共有の実態を調べると同時に改善するためのランキングツールを開発した。同ツールを用いたところ、大手製薬企業においてデータ共有評価基準を完全に満たしていたのは25%であったという。同値はランキングツール使用後に33%まで改善したことや、その他の試験の透明性については高得点であったこと、また一部の会社については透明性やデータの共有について、改善にはほど遠い結果が示されたことなども報告した。BMJ誌2019年7月10日号掲載の報告。10のガイドラインを基に評価基準を作成 Miller氏らは、2015年に米国食品医薬品局(FDA)で新規薬物の承認を受けた大手製薬企業を対象に、各社の非特定化された被験者レベルデータ共有に関する状況を調査した。 ClinicalTrials.gov、Drugs@FDA(FDA承認薬データベース)、企業ウェブサイト、データ共有のためのプラットフォームおよびレジストリ(Yale Open Data Access[YODA]プロジェクトやClinical Study Data Request[CSDR]など)、製薬企業への聞き取り調査を基に、データ共有法や方針について評価した。データシェアリングの評価基準としては、患者や企業、研究者や規制当局なども加わり作成された、データ共有に関する主な10のガイドラインを基に行った。 主要評価項目は、企業レベルでの多項目評価で、臨床試験の患者レベルデータ(分析準備ができているデータセットやメタデータなど)の入手のしやすさ、各薬物・治験レベルの登録と結果報告およびパブリケーション、企業レベルの全般的透明性のランキング、企業のデータ共有に関する方針や実態を改善するための評価・ランキングツールの実用性だった。評価のフィードバックで3社が改善 大手製薬企業のうちデータ共有評価基準を完全に満たしていたのは、全体の25%だった。企業のデータ共有に関するスコアの中央値は、63%(四分位範囲:58~85%)だった。 評価結果を対象企業にフィードバックしたところ、3社が改善し、同基準を完全に順守する企業の割合は33%に、全体のスコア中央値は80%(同:73~100%)にそれぞれ上昇した。 当初、データ共有評価基準を満たさなかった理由で最も多かったのは、共有データの期日までの提出不履行(75%)と、データ数とアウトカムの未報告であった。 新規医薬品において、患者登録率は中央値100%(四分位範囲:91~100%)、結果の報告率は同65%(36~96%)で、雑誌などで発表された割合は同45%(30~84%)だった。一方で医薬品ごとにみると、新薬承認申請のための臨床治験データが承認後6ヵ月以内に公に入手可能だった割合は半数に満たなかった(42%)。 Miller氏らは、開発した評価・ランキングツールは、大手製薬企業のデータ共有方針と実態が評価可能であり、企業の実態改善に影響力をもつものだと述べている。

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非定型抗精神病薬治療に対する精神科医と精神科薬剤師の考え方

 統合失調症や双極性障害の治療選択は、その治療効果の不均一性により複雑化する。米国・イリノイ大学のDaniel R. Touchette氏らは、統合失調症および双極性障害への非定型抗精神病薬の治療選択に、臨床家の考え方や健康システム/保険政策がどのように影響するか検討を行った。Journal of Pharmacy Practice誌オンライン版2019年6月25日号の報告。 American College of Clinical Pharmacy(ACCP)およびCollege of Psychiatric & Neurologic Pharmacists(CPNP)のメンバーを対象に横断的調査を実施した。非定型抗精神病薬の有効性および安全性、薬剤選択に対する併存疾患の影響、非定型抗精神病薬の治療選択に影響を及ぼす因子に関する考え方を評価した。非定型抗精神病薬を選択する際に有効性と安全性は同程度に重要視 非定型抗精神病薬の治療選択への影響を検討した主な結果は以下のとおり。・対象は、精神科薬剤師24人および精神科医18人。・平均年齢は39.6歳、女性の割合は57.1%であった。・薬物療法の有効性と安全性を同程度に重要視していた臨床家は64.3%、安全性をより重要視していた臨床家は26.2%、有効性をより重要視していた臨床家は9.4%であった。・統合失調症における最も重要な薬剤特性は、陽性症状の軽減(92.7%)、入院の減少(87.8%)であった。・双極性障害における最も重要な薬剤特性は、躁病エピソードの軽減(87.8%)、再発の減少(53.7%)、入院の減少(53.7%)であった。・最も注意すべき懸念点は、無顆粒球症(78.1%)、不整脈(70.7%)、錐体外路系副作用(68.3%)であった。・処方制限は、抗精神病薬の選択(80.5%)、服薬アドヒアランス(55.0%)、治療結果(53.4%)に影響を及ぼすと考えられていた。 著者らは「非定型抗精神病薬を選択する際に、有効性と安全性は同程度に重要視されていた。処方制限は、治療選択や治療結果に影響を及ぼすと考えられている」としている。

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時間とは何か? 風呂場で生存時間解析だ!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第13回

第13回 時間とは何か? 風呂場で生存時間解析だ!今日も論文片手に入浴です。浴槽に持ち込んだのはREAL-CAD試験(Circulation.137: 1997-2009, 2018)。安定冠動脈疾患の患者への、ストロング・スタチンの高用量投与は低用量投与に比べ心血管イベントを抑制することを示した試験です。日本人でも厳格なLDLコレステロール管理が有用であることを示した、画期的な臨床研究です。ここで注目したいのが解析法です。心血管イベントの発生率は「カプランマイヤー法」で、イベント抑制効果については「Cox比例ハザードモデル」を用いて解析しています。臨床研究で頻用される定番の解析パターンといえるでしょう。イベントはいっせいに起こるのではなく、時間経過の中で徐々に発生します。この2つは共に時間的な要素を考慮して解析する方法で、生存時間解析に分類されます。単変量解析の「カプランマイヤー法」が生存時間を解析するための要因として1変数しか利用できないのに対して、「Cox比例ハザードモデル」は複数の要因を評価することができます。これらの生存時間解析では、時間は等質なものとして扱われます。30代の人の1年も、80代の人の1年も同じ1年として解析されます。しかし、それは現実的でしょうか? 自分に当てはめてみても、高校生時代の1年と、50代に突入した現在の1年の密度は明らかに異なります。同じ1年とは思えません。時間とは何か? 難問です。好地由太郎という明治時代の人物の話をご存じでしょうか? 奉公先の女主人を殺害して放火し、死刑囚となり、牢獄の中でも牢名主として他の犯罪者達に恐れられた、札付きの極悪人です。服役中に、クリスチャンの青年が冤罪で投獄されてきました。冤罪というよりも単純な手続きミスで連行・投獄されたそうです。牢名主は、この新参者を袋叩きに締め上げたのですが、青年は屈することなく逆に「聖書を読みなさい」と勧め続けたのです。この出来事から、彼は聖書を読みたいと思うようになりました。文字が読めなかった彼は、字を勉強するところから始め、新約聖書を完全に暗記するまでに読み込んだのです。後に減刑され、釈放後にキリスト教の伝道者として多くの人々に教えを授けました。高級食器のノリタケや衛生陶器のTOTOの創業者である森村市左衛門は、彼の説教を聞いて感銘を受け洗礼を受けたそうです。この死刑囚を伝道者に変身させた青年が好地由太郎に会っていた時間は、わずか20分間ほどとのことです。時間の長さは本当に不思議です。何十年という時間を無駄に過ごす人生もあるでしょう。一方でこの逸話のように、人生に大きな影響を与える濃密な20分間もあります。どの時間も同じスピードで流れているのか不思議な気持ちを抱きます。小生は医学生に講義や実習などで話す機会も多いのですが、短い時間でも密度の高い内容にしなければと思います。優等生ぶった内容を書いて気恥ずかしいですが、こんなことを考えながらの入浴タイムは真に豊かで贅沢な時間ですね。ありがたや。

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仮想現実=VRを活用した医学コンテンツの可能性

杉本 真樹氏手術前、VRゴーグルをかけて、眼前に浮かび上がる「仮想の臓器」で病変を確認。それに対してどこからアプローチして、どのように切除するか、仮想現実の中で本番さながらにシミュレーション手術を行う。そんな未来が現実になりつつある。このシステムを開発しているのは、Holoeyes株式会社。プロジェクトをリードするのは、消化器外科医で同社取締役COOの杉本真樹氏だ。杉本氏は医用画像解析アプリケーションOsiriXの普及に取り組み、2014年にAppleから世界を変える続けるイノベーターに選出されるなど、医療分野でのICT活用を積極的に推し進めてきた人物として知られる。VR(仮想現実)を実現する同社のHoloeyes XRのおおまかな仕組みは以下の通り。まず患者のCTスキャンデータやMRIデータから3次元のVirtual Reality(VR)やAugmented Reality(AR)のアプリケーションを生成。利用者がVRゴーグルをかければ、患者の臓器の3Dモデルが目の前に浮かび上がり、その仮想現実の世界に自ら介入できる。仮想現実をチームで共有することも可能で、術前のシミュレーションや術後の症例カンファレンスなどに取り入れれば、より質の高いコミュニケーション、教育効果が期待できる。ケアネットではHoloeyesと協力し、このVR技術を活用した新しい医学コンテンツを開発していく方針だ。今回、第74回日本消化器外科学会でHoloeyesとイブニングセミナーを共催するのを機に、CareNet.com上で試作コンテンツを公開する。100円から購入できるVRゴーグルにスマートフォンを設置してのぞき込めば、消化器外科の主な術式を杉本氏が解説する動画が3Dで視聴できる。アプリではないため、角度を変えたり介入したりすることはできないが、VR医学コンテンツの世界を感じていただければと思う。

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周術期化学療法による脱毛の程度や経過は/日本乳癌学会

 化学療法による有害事象の治療後の経過についての報告は少なく、とくに脱毛に関しての報告はきわめて少ない。また、正確な頻度や程度、経過についてまとまったエビデンスはない。今回、群馬大学乳腺・内分泌外科の藤井 孝明氏らは、アンケート調査による前向き観察研究でこれらを検討した。その結果、治療終了後でも有害事象が継続する症例が多く認められること、頭髪以外の部位の脱毛も高頻度で起こりうることが明らかになった。第27回日本乳癌学会学術総会にて報告された。 本研究の対象は、FEC療法、タキサンの順次投与を周術期に施行し、化学療法終了後、半年後の経過観察とアンケート調査の評価が可能であった45例。レジメン変更時、治療終了時、治療終了半年後および1年後に、アンケート調査を実施した。悪心、嘔吐、しびれ(末梢神経障害)、口内炎、味覚障害、不眠症、排便、爪脱落については、CTCAE v4.0に準じたアンケートで調査した。脱毛については、頻度、程度(0、25、50、75、100%で評価)、脱毛の部位(頭髪、眉毛、睫毛、体毛)、脱毛・発毛の開始時期、発毛後の毛質、脱毛時のケア、症状についてアンケートを行った。 主な結果は以下のとおり。・治療開始時の年齢中央値は53歳(38~74歳)、術前化学治療が23例、術後化学治療が22例であった。HER2陽性例ではトラスツズマブを投与していた。・治療終了時と治療終了半年後の有害事象(全Grade)の頻度の変化は、悪心71.1%→4.4%、嘔吐8.9%→0%、口内炎57.8%→20.0%、便秘77.8%→34.8%、下痢48.9%→22.2%、味覚障害84.4%→40.0%、不眠症77.8%→35.6%、末梢神経障害55.6%→80.0%、爪脱落13.3%→44.4%であった。悪心、嘔吐は治療終了半年後に改善を認め、末梢神経障害は継続例が多かった。・脱毛の頻度と75%以上の脱毛の頻度は、頭髪100%/100%、眉毛88.9%/34.1%、睫毛88.9%/28.9%、体毛97.8%/48.9%であった。・脱毛開始時期の中央値は治療開始から14日目(9~28日)であった。・脱毛時のケアは全例で行っており、ウイッグ88.9%、帽子91.1%、バンダナ22.2%であった。・発毛の開始時期は、頭髪では治療中が10例(中央値:4ヵ月)、治療後が34例(同:2ヵ月)、眉毛では治療中が7例(同:4ヵ月)、治療後が29例(同:1.5ヵ月)、睫毛では治療中が6例(同:4.5ヵ月)、治療後が29例(同:1.5ヵ月)、体毛では治療中が6例(同:5ヵ月)、治療後が31例(同:2ヵ月)であった。・治療後の毛髪の変化は、太さでは「細くなった」が40.9%、硬さでは「柔らかくなった」が52.3%、質では「巻き髪になった」が59.1%、色では「白髪になった」が22.7%であった。

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Sepsisの4タイプの表現型の提唱とその評価(解説:吉田敦氏)-1077

 敗血症にはさまざまな症例が含まれ、臨床症状・徴候のスペクトラムは幅広い。このため臨床病型を分別し、より精確なマネジメントにつなげようとする試みはこれまで長く続けられてきた。2016年には「敗血症および敗血症性ショックの国際コンセンサス定義 第3版(Sepsis-3)」が発表され、定義も新しくなり、SOFA(PaO2/FiO2、血小板数、ビリルビン、平均動脈圧、Glasgow Coma Scale[GCS]、クレアチニン)・qSOFA(収縮期血圧、呼吸数、GCS)が導入されたが、このような試みはそれ以前からのものである。今回3個の観察コホート研究と3個のランダム化臨床試験(合計6個)から得られたデータを後方視的に解析することで、病型自体導出できるのか、できるならば病型はいくつか、導出された病型の妥当性・再現性はどうか、検討が行われた。 本研究はピッツバーグ大学を中心として行われたもので、この中にはSOFA・qSOFAの提唱に使われたSENECA試験も含まれている。6試験はそれぞれ特色を有するが、最も影響する因子は組み入れ基準(inclusion criteria:Sepsis-3のものもあれば、以前のSIRSを用いたものも、重症敗血症を来した肺炎のものもある)と場所(Emergency departmentのほか、ICUのみならず内科病棟も)であろう。導出されたタイプはα、β、γ、δの4種類であり、概して、αは異常値が少なく、臓器障害が少ないタイプ、βは慢性疾患を有する高齢者に多いタイプ、γは炎症関連バイオマーカーの上昇が大きなタイプ、δは乳酸値やトランスアミナーゼの上昇と低血圧を特徴とするタイプであった。炎症マーカーの上昇と凝固異常・血管内皮細胞の異常はγ・δで、腎障害のマーカーの異常はβ・δで、心血管および肝臓のマーカーの異常はδで多く、来院時のSOFAスコアと死亡率もやはりδで最も高かった。 興味深いのは、これら4タイプは生体側の免疫反応と深く関連している一方で、それぞれがさまざまな感染巣(focus)の患者を含んでおり、タイプの導出にも、菌血症の証明や、原因微生物の分類・種類、菌の侵入門戸を問うていない点である。微生物側の詳しい因子を含めることなく、導出されたこれら4タイプによる成績に、もし微生物側の因子も加えて解析したら、結果はどうであろうか。今回のような複数の大規模試験の集合であっても、どれほどの差が認められるか予測し難いところがあるが、それこそが臨床医が日常的に敗血症・菌血症例を診療する際に、「感染臓器」・「微生物」・「患者個々の背景・基礎疾患」の3因子を重ね合わせて考え、評価する、その思考プロセスに似てはいないだろうか。 本検討で得られた結論は、背景と重症度が異なる集団であっても、27以上のバイオマーカーから導出された4表現型が、再現性よく臨床的重症度・予後と相関するというものであった。臨床応用にはまだ距離はあろうが、たとえばバイオマーカーから4タイプを導出するプログラムを電子カルテに実装しておき、敗血症疑い例の初期評価の進行に同期させつつ、自動的に表示させるようにするのも、有用かもしれない。本検討の所見のさらなる評価の継続とともに、実用にもまた期待したいところである。

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ピロリ除菌、親が失敗なら子の失敗リスク高い

 クラリスロマイシン(CAM)耐性Helicobacter pylori(H. pylori)とCYP2C19多型は、何世代にもわたって受け継がれる可能性があり、H. pylori除菌失敗の危険因子として知られている。しかし、親がCAM3剤併用療法による除菌失敗歴を有する患者における失敗リスクを評価した研究はなかった。今回、出口 尚人氏(京都大学/武田薬品工業)らの横断研究により、CAM3剤併用療法での親の除菌失敗歴が子孫の除菌失敗の危険因子であることが示された。Journal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2019年7月1日号に掲載。 本研究は、被保険者310万人の大規模な診療報酬請求データベースを使用。2005年1月~2018年2月に、1次除菌のCAM3剤併用療法の記録と親の記録の両方を有する404例を同定した。父親または母親のCAM3剤併用療法の失敗を、親のCAM3剤併用療法の失敗歴とした。オッズ比は、年齢・性別・真性糖尿病・消化性潰瘍で調整したロジスティック回帰モデルを用いて推定した。 その結果、CAM3剤併用療法の除菌失敗率は22.5%(91/404)であった。単変量解析では、オッズ比が1.90(95%信頼区間:1.10~3.29)、多変量解析ではオッズ比1.93(同:1.10~3.39)であり、親のCAM3剤併用療法の失敗歴は子孫のCAM3剤併用療法の失敗に関連していた。

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アリピプラゾールやハロペリドールによる神経突起病変保護作用

 ドパミンD2受容体(D2R)の機能亢進は脳の発達に変化を及ぼし、その後、統合失調症に類似した症状を引き起こす。D2RがDISC1遺伝子(Disrupted in schizophrenia 1)と相互作用を示すことが知られているが、細胞内シグナル伝達や神経突起におけるこれらの相互作用の影響は、明らかとなっていない。オーストラリア・ウーロンゴン大学のPeng Zheng氏らは、皮質ニューロンにおけるAkt-GSK3βシグナル伝達および神経突起形態に対するD2R過剰活性の影響について検討を行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2019年6月8日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・D2R過剰活性は、皮質ニューロンにおけるプロテインキナーゼB(Akt)およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)リン酸化の減少と関連した神経突起損傷を引き起こした。・アリピプラゾールは、ハロペリドールと比較し、神経突起病変の予防において、より有効であった。・アリピプラゾールは、ハロペリドールと異なり、D2R機能亢進によって誘導されるホスホ(p)Akt-pGSK3βのダウンレギュレーションを保護し、このことは異なる経路の関与が示唆された。・DISC1突然変異マウスの皮質ニューロンにおいて、D2Rの機能亢進が認められ、これはキンピロール処置した皮質ニューロンにおいて、より重度の神経突起損傷を引き起こした。・Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)の蛍光免疫染色法では、皮質錐体神経細胞がD2R機能亢進誘導の神経突起損傷と関連していることが確認された。・D2R機能亢進が、pGSK3βシグナル伝達を変化させたD2R-DISC1複合体形成をもたらすことが、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術を用いて明らかとなった。 著者らは「D2R機能亢進誘導のD2R-DISC1複合体形成が、pAkt-pGSK3βシグナル伝達の減少と関連しており、神経突起障害を引き起こすことが示唆された。アリピプラゾールとハロペリドールは、神経突起病変を予防したが、異なる細胞内シグナル伝達経路を介していると考えられる」としている。

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終末期がん患者、併発疾患への薬物療法の実態

 終末期緩和ケアを受けているがん患者において、併発している疾患への薬物療法はどうなっているのか。フランス・Lucien Neuwirth Cancer InstituteのAlexis Vallard氏らは、前向き観察コホート研究を行い、緩和ケア施設に入院した終末期がん患者に対する非抗がん剤治療が、一般的に行われていることを明らかにした。著者は「それらの治療の有益性については疑問である」とまとめている。Oncology誌オンライン版2019年6月20日号掲載の報告。 研究グループは、緩和ケア施設のがん患者に対する抗がん剤治療および非抗がん剤治療の実態と、非抗がん剤治療を中止するか否かの医療上の決定に至る要因を明らかにする目的で調査を行った。 2010~11年に緩和ケア施設に入院したがん患者1,091例のデータを前向きに収集し、解析した。 主な結果は以下のとおり。・緩和ケア施設入院後の全生存期間中央値は、15日であった。・緩和ケア施設入院後、4.5%の患者を除き、最初の24時間以内に特定の抗がん剤治療は中止されていた。・非抗がん剤治療については、患者が死亡するまで、強オピオイド(74%)、副腎皮質ステロイド(51%)、および抗うつ薬(21.8%)について十分に投与が続けられていた。・抗潰瘍薬(63.4%)、抗菌薬(25.7%)、血栓症予防療法(21.8%)、糖尿病治療薬(7.6%)、輸血(4%)もしばしば、継続して処方されていた。・多変量解析の結果、ECOG PS 4は、モルヒネについては継続の独立した予測因子であり、副腎皮質ステロイド、プロトンポンプ阻害薬、糖尿病治療薬、予防的抗凝固療法については中止の独立した予測因子であった。・感染症症状はパラセタモール継続の、麻痺および触知可能ながん腫瘤は副腎皮質ステロイド中止の、脳転移は抗潰瘍薬中止の、出血は予防的抗凝固療法中止の、それぞれ独立した予測因子であった。

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安定狭心症の血行再建適応評価はMRIとFFRのいずれで行うべきか?(解説:上田恭敬氏)-1076

 典型的な狭心症症状があって、トレッドミル負荷心電図陽性で、複数の冠危険因子を持つ918症例を登録して、MRIによる虚血評価を行う群とFFRによる虚血評価を行う群に無作為に割り付ける、国際多施設無作為化非劣性試験が行われた。主要評価項目は12ヵ月時点でのMACE(全死亡、心筋梗塞、target-vessel revascularization)であった。 MRI群(454症例)のうち445例が実際にMRIを受け、221例が虚血陽性となったためCAGが必要とされた。実際にCAGを実施した219例のうちCAG陽性であった184例(40.5%)が血行再建(PCIまたはCABG)の適応ありと判断されたが、実際に血行再建を受けたのは162例(35.7%)であった。逸脱としては、MRIを受けなかったのが9例、CAGを受けなかったのが2例、血行再建を受けなかったのが22例であった。 FFR群(464症例)のうち449例がCAGを受け、282例がCAG陽性であったためFFRが必要とされた。実際にFFRを実施した265例のうちFFR陽性であった213例(45.9%)が血行再建の適応ありと判断されたが、実際に血行再建を受けたのは209例(45.0%)であった。逸脱としては、CAGを受けなかったのが15例、FFRを受けなかったのが17例、血行再建を受けなかったのが15例であった。 MRI群とFFR群を比較すると、血行再建の適応ありと判断された割合は40.5%対45.9%(p=0.11)と差がなかったが、実際に血行再建を受けた割合は35.7%対45.0%(p=0.005)とFFR群で有意に高値であった。主要評価項目のMACEは3.6%対3.7%で非劣性が示された。また、12ヵ月時点で狭心症症状が消失している割合は49.2%対43.8%で差がなかった。よって、MRIによって虚血評価を行うことは、FFRによって虚血評価を行うことに比して、血行再建の実施率が低くなり、12ヵ月時点のMACEにおいて非劣性であることが示されたと結論している。 MACEの多くは虚血の有無や血行再建の必要性が検討された関心病変とは関係なく発生することや、虚血の原因とならないことが示された関心病変も後日MACEの原因となる場合があることから、予後が虚血の評価法に左右されないことを示唆する本研究の結論は正しいようにも思われるが、試験としてはいくつか疑問点がある。まず、典型的な狭心症症状があってトレッドミル陽性の症例を集めているにもかかわらず、半数以下の症例でしか血行再建の適応がなく実施もされておらず、12ヵ月の時点では狭心症症状が半数弱の症例で残存している状況をみると、それら数値の説明が論文中にないため、いずれの群においても血行再建の適応評価が適切に行われたのか疑問である。次に、MRI陽性者中のCAG陽性率が83.3%、FFR割付群全体のCAG陽性率が60.8%となっているが、「CAG陽性」の定義が記載されておらず、CAGの結果についても記載がない。CAG陰性の167例ではFFR群であるにもかかわらずFFRが実施されず、CAG陽性&FFR陰性の2例で狭心症症状軽減を目的としてPCIが実施されていることからも、FFRの実施が適切だったかどうか疑問である。CAGでは有意な狭窄でなくても虚血の原因となりうることは、FFRを用いた多くの研究で示されていることである。CAGやFFR、PCIといったinvasive strategyに関して、適切に行われたか否か疑問の残る試験ではないだろうか。

5111.

前立腺がんのアンドロゲン除去療法と認知症~15万例の解析

 アンドロゲンの低下は、除脂肪体重の減少や糖尿病、心血管疾患、うつ病など、アルツハイマー病や認知症の危険因子を増大させる可能性がある。前立腺がんにおけるアンドロゲン除去療法(ADT)は認知機能に影響するのだろうか。今回、米国ペンシルバニア大学のRavishankar Jayadevappa氏らが、15万例超の高齢前立腺がん患者のデータを分析したところ、アンドロゲン除去療法を受けた後少なくとも10年間は、アルツハイマー病や認知症の診断と関連することが示された。JAMA Network Open誌2019年7月3日号に掲載。アンドロゲン除去療法の曝露:非曝露で認知症は21.6%:15.8% 本研究は、米国国立がん研究所(NCI)のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)-Medicare Linked Databaseを用いた後ろ向きコホート研究で、1996~2003年に新たに前立腺がんと診断された65歳以上の男性29万5,733例のうち、研究基準を満たした15万4,089例が対象。分析は2018年11月1日~2018年12月31日に行われた。著者らは、前立腺がんの診断から2年以内にアンドロゲン除去療法を受けた患者を同定し、生存期間分析でアンドロゲン除去療法曝露と追跡期間におけるアルツハイマー病または認知症の診断との関連を検討した。 アンドロゲン除去療法と認知症の関連についての主な研究結果は以下のとおり。・15万4,089例のうち、前立腺がん診断の2年以内に6万2,330例(平均年齢:76.0[SD:6.0]歳)がアンドロゲン除去療法を受け、9万1,759例(平均年齢:74.3歳[SD:6.0])がアンドロゲン除去療法を受けていなかった。平均追跡期間は8.3年(SD:4.7)であった。・アンドロゲン除去療法曝露はアンドロゲン除去療法非曝露と比較して、アルツハイマー病(13.1% vs.9.4%、差:3.7%、95%CI:3.3~3.9%、p<0.001、ハザード比[HR]:1.14、95%CI:1.10~1.18)と認知症(21.6% vs.15.8%、差:5.8%、95%CI:5.4~6.2%、p<0.001、HR:1.20、95%CI:1.17~1.24)の診断と関連していた。・NNT(number needed to harm)は、アルツハイマー病で18例(95%CI:17~19)、認知症で10例(95%CI:9.5~11)であった。

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DES留置後のクロピドグレル併用DAPT、至適期間は?/BMJ

 中国・中南大学のShang-He-Lin Yin氏らは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で薬剤溶出ステント(DES)留置後のクロピドグレルを用いる抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)について、標準(12ヵ月間)または長期(>12ヵ月間)と短期(<6ヵ月間)の有効性と安全性を比較検証したシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。すべての臨床症状を有する患者において短期と比較して、長期は大出血と非心臓死が増加し、標準で全出血のリスクが増加した。また、急性冠症候群(ACS)患者では、短期と標準で有効性と安全性は同様であった。新世代DES留置患者では、短期と比較して長期で全死因死亡が増加した。著者は、「DAPTの至適期間は、患者個々の虚血/出血リスクを考慮すべきではあるが、本検討において、DESを留置するPCIではほとんどの患者に短期DAPTを考慮することが望ましいことが示唆された」とまとめている。BMJ誌2019年6月28日号掲載の報告。無作為化比較試験17件についてネットワークメタ解析を実施 研究グループは、Medline、Embase、Cochrane Library for clinical trials、PubMed、Web of Science、ClinicalTrials.govおよびClinicaltrialsregister.euを用い、1983年6月~2018年4月に発表された、PCIによるDES留置後のDAPTに関する無作為化比較試験を特定し、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を行った。 解析には、DAPTの3つの期間(短期、標準、長期)のうち2つを比較検証した研究17件(計4万6,864例)が組み込まれた。 主要評価項目は、心臓死または非心臓死、全死因死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、すべての出血性イベントとした。DES留置後のクロピドグレルを用いたDAPTは6ヵ月未満が望ましい 短期DAPTと比較し、長期DAPTは大出血(オッズ比[OR]:1.78、95%信頼区間[CI]:1.27~2.49)および非心臓死(OR:1.63、95%CI:1.03~2.59)の発生率増加が、標準DAPTはあらゆる出血(OR:1.39、95%CI:1.01~1.92)の発生率が増加することが示された。他の評価項目については顕著な差は確認されなかった。 感度解析の結果、短期または標準DAPTと比較し、18ヵ月以上のDAPTでは非心臓死と出血がさらに増加することが明らかとなった。サブグループ解析では、新世代DESを留置した患者において、長期DAPTは短期DAPTより全死因死亡が増加した(OR:1.99、95%CI:1.04~3.81)。また、ACSを呈し新世代DESを留置した患者において、標準DAPTは短期DAPTと同様の有効性と安全性を示した。 著者は、プールした試験の異質性は低く、結果の解釈に対する信用性は高いと考えられるとする一方、研究の限界として、クロピドグレルを基本にしたDAPTの期間を主に評価したもので、他のP2Y12阻害薬では結論が異なる可能性があること、いくつかの試験では報告されていない評価項目があることなどを挙げている。

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疼痛・疲労・精神的苦痛の支援を受けたことがない―がん患者の3~5割/JCO

 どれほどのがん患者が疼痛、疲労、精神的苦痛を有し、またそれらに対するケアは行われているのか。米国・がん協会のTenbroeck G. Smith氏らは、地域のがんセンターで治療を受けている患者を対象に、それらの有症率などを調査した。その結果、30~50%のがん患者が、疼痛、疲労および精神的苦痛について、話し合ったり、アドバイスを受けたり、期待した支援を受けたことがないと回答したという。著者は、「これら3つのがん関連症状の管理に関して改善の余地がある」と述べたうえで、それぞれの症状の有症率の高さについても「重要と思われる」と指摘している。Journal of Clinical Oncology誌2019年7月1日号掲載の報告。 研究グループは、米国のCommission on Cancer認定がんセンター17施設から、local/regional乳がん(82%)または大腸がん(18%)の患者を抽出してアンケート調査を行い、2,487例の回答を得た(回答率61%)。 主な結果は以下のとおり。・疼痛、疲労および苦痛について、臨床医と話し合ったと報告した患者の割合はそれぞれ76%、78%および58%、アドバイスをもらったと報告した患者の割合はそれぞれ70%、61%および54%であった。・疼痛、疲労および苦痛を経験した患者の割合は、それぞれ61%、74%および46%であった。・疼痛、疲労および苦痛を経験した患者の中で、支援を得たと報告した患者はそれぞれ58%、40%および45%であった。・根治的治療を受けている(または最近治療が完了した)患者は、根治的治療から時間が経った患者に比べ、症状に対する良好なケアを受けていると回答した。

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日本人卵巣がんのBRCA変異保有率は欧米と同等/アストラゼネカ

 アストラゼネカ株式会社は、卵巣がんにおけるBRCA1/2(以下、BRCA)遺伝子変異の保有率に関する大規模調査 Japan CHARLOTTE study(以下、CHARLOTTE)を国内63の医療施設で実施した。日本人症例における初の大規模な調査であり、婦人科領域のがんゲノム医療を推進する貴重なデータとなる。なお、CHARLOTTEの結果は、2019年7月1日付でInternational Journal of Gynecological Cancer電子版に掲載されている。卵巣がんにおけるBRCA遺伝子変異陽性の割合は14.7% CHARLOTTEは、国内における新規診断を受けた上皮性卵巣がん、原発性腹膜がん、卵管がん症例のBRCA遺伝子変異の保有率を把握することを目的に、2016年12月~2018年6月までに登録された666症例のうち、BRCA遺伝子検査を実施した634症例を対象に調査した。 日本人における卵巣がん患者のBRCA遺伝子変異の保有率については、データが限られていたが、本調査の結果から新規診断を受けた卵巣がんにおけるBRCA遺伝子変異陽性の割合は14.7%と欧米人を対象とした研究報告(14.1%)と同程度であることが明らかとなった。また進行卵巣がん(FIGO分類III期またはIV期)における陽性の割合は24.1%と、早期卵巣がん(4.9%)より高い保有率であった。 BRCA遺伝子変異の保有率に関する大規模調査Japan CHARLOTTE studyの主な結果は以下のとおり。・進行卵巣がん(FIGO分類III期またはIV期)におけるBRCA遺伝子変異の割合は24.1%(78例/BRCA1:16.3%、BRCA2:7.7%)であった。・卵巣がん全体(FIGO分類I期~IV期)のBRCA遺伝子変異の割合は14.7%(93例/BRCA1:9.9%、BRCA2:4.7%)で、欧米保有率と同程度であることが確認された。・診断名別のBRCA遺伝子変異は、上皮性卵巣がんで12.7%(68/534例)、卵管がんで29.2%(14/48例)、原発性腹膜がんで21.2%(11/52例)であった。・組織学的分類別では、短期間で発症し、進行がんが多い高異型度漿液性がんにBRCA遺伝子変異が最も多く、その割合は28.5%(78/274例)であった。・BRCA遺伝子検査を受けた患者の96%以上が、実施前のカウンセリングに対して実施者(臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーまたは担当主治医)の職種にかかわらず、「十分満足している」または「満足している」と回答した。

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第24回 脳梗塞/TIA患者の抗血小板薬2剤併用療法はいつまで行うのがベスト?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗血小板薬2剤併用療法(Dual antiplatelet therapy:DAPT)は、脳梗塞の既往がある患者さんやステント留置後の患者さんでよく行われるため、薬局で処方を見掛けることも多いと思います。今回は、2018年にBMJ誌に掲載された軽症虚血性脳梗塞または高リスク一過性脳虚血発作(TIA)患者におけるクロピドグレル+アスピリンのDAPTとアスピリン単独療法を比較したシステマティックレビュー(以下、SR)を紹介します1)。この研究が行われた背景には、BMJ Rapid Recommendations(RapidRecs)プロジェクトの一環として、治療方法の推奨を作るという目的があります。インパクトのある新規研究が発表されたら、診療ガイドラインの推奨を素早く作成するのが望ましいですが、現実的には特定の臨床上の疑問(Clinical question)に対して網羅的に研究を調査し、それらをまとめて分析統合を行う手順、つまりSRが行われ、新規研究が出てから推奨を作成するまでの時間的ギャップが課題となっています。たとえば、SRが最新かつ信頼があつい期間といえる“寿命”を調べた研究では、後行研究が出た後の統計的有意差の変化、効果量の50%を超える相対的な変化や意思決定に影響を与えるために十分な新情報、先行研究への重要な警告、より優れた治療法の出現を既存SRの寿命のシグナルとみた場合に、SRの“寿命”の中央値は5.5年で、1年以内に15%、2年以内に23%のエビデンスが覆り、7%はすでに出版時点で逆の結果が出ているという報告があり2)、タイムリーに新規研究を含めたまとめを作ることの大切さを物語っています。2020年には医学情報量が倍増するのにかかる期間はわずか0.2年(73日)になるという予測すらありますから3)、RapidRecsのように即座にSRを行う重要性は今後ますます増えるでしょう。DAPTを24時間以内に開始し、10~21日間の継続でベネフィット最大DAPT vs.アスピリン単独療法のSRに話を戻しますと、本研究は2018年7月にNew England Journal of Medicine誌に掲載されたPOINT trial(Johnston SC, et al. N Engl J Med. 2018;379:215-225.PMID: 29766750)の結果を受けて行われています。内容としては、急性軽症虚血性脳卒中または高リスクTIAと診断された患者で、クロピドグレル+アスピリンのDAPTを発症後3日以内に開始した場合と、アスピリン単独療法を発症後3日以内に開始した場合を比較し(最終的に組み入れられた研究は発症後24時間以内または12時間以内)、90日までの転帰(全死亡、脳卒中による死亡、非致死的虚血性/出血性脳卒中、頭蓋外出血、TIA、心筋梗塞、機能的転帰など)を調査した研究です。データベースのMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、Cochrane Library、ClinicalTrials.gov、WHO website、PsycINFO、grey literatureを網羅的に検索して研究を集めています。2名の評価者によって、各研究のバイアスのリスクが評価され、最終的な合意形成は第三者を交えてされています。バイアスのリスクの評価基準は、Cochraneのrisk of biasツールの調整版が用いられており、各研究におけるランダム割り付けの有無、脱落データの割合、割り付けの隠蔽化、研究参加者/介入者/アウトカム評価者のマスキング、その他バイアスが評価されていますので、厳密な方法論で行われたSRとみてよいと思います。最終的に採用されたランダム化比較試験は3件(FASTER、CHANCE、POINT)で、合計症例数は1万447例でした。アウトカムごとに統合された結果をみると、DAPT群ではアスピリン単独群に比べ、非致死的脳卒中の再発が低減しており、リスク比は0.70(95%信頼区間[CI]:0.61~0.80)、絶対リスク減少率は1.9%(NNT換算すると53)でした。総死亡については両群で有意差はありませんでしたが(リスク比:1.27、95%CI:0.73~2.23)、中等度または重度の頭蓋外出血については、DAPT群のリスク比は1.71(95%CI:0.92~3.20)、絶対リスク上昇率は0.2%とアスピリン単独群よりも増加傾向にあり、軽微または小出血もDAPT群のリスク比は2.22(95%CI:1.60~3.08)、絶対リスク上昇率は0.7%と有意に増加しています。機能的転帰には有意差はありませんでした。経時的変化を見てみると、脳卒中イベントの発症の多くはDAPT群でもアスピリン単独群でもランダム化後10日以内に生じていますが、21日以降はほぼ平行線となっています。一方で、出血イベントはDAPT群で長期的にやや増えていきます。これらのことから、ハイリスクのTIAおよび軽度の虚血性脳卒中の患者における本研究の結果は、BMJ誌のClinical Practice Guideline4)のまとめとして以下の2点が強く推奨されています。イベント発生後24時間以内にDAPTを開始するDAPTは10~21日間継続し、21日を超える継続はしないDAPT継続中の患者さんの中には、脳卒中の再発が心配で治療を継続させたいという方もいるかもしれませんが、もし2剤で21日を超えて長期間投与されている場合は出血イベントのリスクを考慮し、処方医への情報提供を検討すべきと思います。1)Hao Q, et al. BMJ. 2018;363:k5108.2)Shojania KG, et al. Ann Intern Med. 2007;147:224-233.3)Densen P. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2011;122:48-58.4)Prasad K, et al. BMJ. 2018;363:k5130.

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仮想現実=VR技術が手術を変える!セミナーのお知らせ

2019年7月18日(木)に開催される第74回日本消化器外科学会総会イブニングセミナーにて、医療VR(仮想現実)サービスを手掛けるHoloeyes株式会社とCareNetの共催で、手術をリアルにシミュレートする最新VR技術Holoeyes XRのレクチャーと体験を行います。Holoeyes XRは、患者のCTスキャンデータやMRIデータから3次元のVirtual Reality(VR)やAugmented Reality(AR)のアプリケーションを生成。患者の臓器の3Dモデルを共有して、術前のシミュレーションや術後の症例カンファレンスなどに活用できます。立体のビジュアルを共有することにより、非言語の豊なコミュニケーションが実現します。プレゼンターのHoloeyes COOで外科医の杉本真樹氏は、これまでに医用画像解析や手術支援システム、3Dプリンターによる生体質感臓器造形など、医学・工学分野の横断的な研究開発や科学教育に尽力。2014年Apple社Webにて、世界を変え続けるイノベーター30名に選出。2017年Microsoftイノベーションアワード優秀賞、およびWIRED AUDI イノベーションアワード受賞しています。本セミナーでは、参加者先着200名様にVRゴーグルを配布し、会場でHoloeyes XRで記録した複数の術例シミュレーションをVRで体験いただくことができます。医療現場や教育現場で活用できる次世代コミュニケーションツールを、この機会にぜひ体感ください。本セミナーと連携し、CareNet.comでもVRの世界を体感できる新しい医学教育コンテンツを紹介します。詳細概要日 時 :2019年7月18日(木)16:30~18:00場 所 :グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール1階 暁光(第13会場)地図はこちらテーマ :「VR仮想現実が消化管・肝胆膵手術支援を変える」~ホログラフィ手術支援加算と遠隔VRテレカンファレンス~演 者 :杉本 真樹 氏 (帝京大学冲永総合研究所 特任教授、Holoeyes株式会社 共同COO)座 長 :佐野 圭二 氏 (帝京大学医学部 外科学講座 教授)定 員 :200名注意事項:※VR体験にはスマートフォンをご持参ください。

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非左脚ブロックに対するCRT-Dの効果【Dr.河田pick up】

 非左脚ブロックに対する心臓再同期療法(CRT)の有効性については、賛否両論があり、いまだ結論が出ていない。本研究では、米国のナショナルデータベースである、全米心血管データ登録(NCDR)の植込み型除細動器(ICD)レジストリを用いて、非左脚ブロック患者を右脚ブロック群と非特異的心室内伝導障害群に分け、除細動器を伴った心臓再同期ペースメーカー(CRT-D)の有効性を評価した。 この論文は、私(Hiro Kawata)とJonathan Hsu氏らがJournal of the American College of Cardiology誌6月号に発表した。非左脚ブロック患者11,505例を多変量解析 メディケアは主に65歳以上の高齢者を対象とする保険制度である。NCDRは、メディケア対象患者のエビデンスを構築するために作られ、米国心臓病学会(ACC)が管理するNCDRのデータにICD患者の情報を登録することが義務付けられている。この種のデータでは世界でも最大規模である。今回の研究は、そのNCDR-ICDデータベースを用いて、2010年~13年にICDが植込まれた患者のうち、CRTの植込みの適応がある11,505例が対象。ICDが植込まれた患者とCRT-Dが植込まれた患者の予後を、右脚ブロック群と非特異的心室内伝導障害群に分けて多変量解析を行った。右脚ブロック群、QRS幅に関わらず、CRT-D(ICDと比べて)で予後は改善せず このうち右脚ブロック群においては、QRSの長さにかかわらず、ICDと比較しても予後の改善が見られなかった。一方、非特異的心室内伝導障害群においては、QRSが150ms以上の患者で、3年後における死亡率低下との関連が認められた(ハザード比[HR]:0.602、95%信頼区間[CI]:0.416~0.871、p=0.0071)。非特異的心室内伝導障害、QRS≧150ならCRT-Dが有用 今回の研究において、右脚ブロック群では、QRSの長さにかかわらずCRT-DはICDを上回る効果を示すことができなかった。つまり、右脚ブロックへのCRT-D移植を支持するエビデンスはなく、やみくもにCRT-Dを植え込むことは避けるべきであると思われる。一方、非特異的心室内伝導障害を有するケースでは、QRSが150ms以上であればCRT-Dが有用な可能性がある。 右脚ブロックでCRT-D適応が不明確なケースにおいては、最近では行われなくなってはいるものの、心エコーでの同期不全による評価も有用との報告もある1)。現在、非特異的心室内伝導障害に対するCRT-D移植を評価する無作為試験が進行中であり、今後その報告が待たれる2)。1)Hara H,et al.European heart journal. 2012 Nov;33(21);2680-91. doi: 10.1093/eurheartj/ehs013.2)Eschalier R,et al. BMJ open. 2016 11 11;6(11);e012383. doi: 10.1136/bmjopen-2016-012383.(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)

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ステントを捨てんといてな! 薬剤コーティングバルーンの好成績(解説:中川義久氏)-1074

 薬剤コーティングバルーン(Drug-coated balloon:DCB)は、ステント再狭窄病変や小血管への治療において有効とされてきた。血管径が十分に維持されたde-Novo病変を、バルーン拡張のみで終了することは、急性冠閉塞の危険性も高く再狭窄の懸念もあることから、金属製ステントの適応とされてきた。とくに薬剤溶出性ステント(DES)の成績向上とともに、DESの使用は確立したものと考えられていた。その確信に風穴を開けるような報告がLancet誌オンライン版2019年6月13日号にデビューした。その名も「DEBUT試験」である。出血リスクが高い患者に対するPCIにおいて、DCBはベアメタルステントに比べて勝っていることを示したものである。前拡張を適切に行い、血流を障害するような解離もなく、強いリコイルもないことを確認した場合にDCBで薬物を塗布して終了するという治療戦略である。確かに、この方法で急性閉塞や再狭窄などのイベントなく経過できれば、leave nothing behind(異物を残さない)というコンセプトを実現することができる。 一方で克服すべき課題もある。実臨床の現場から退場宣告を受けた状態にあるベアメタルステントへの優越性を証明したところでインパクトは小さい。比較すべきは、DCB vs.DESであろう。また、DCBのみで終了しても急性冠閉塞のリスクが本当にないのかは懸念がある。かつてバルーンのみでのPCI(当時はPTCAと呼んでいた)の時代に、急性冠閉塞の怖さを体験している自分には、その不安は払拭できないというのが正直な気持ちである。末梢動脈疾患へのDCB治療を巡る混乱についても注意が必要である。これは、大腿動脈・膝窩動脈へのパクリタキセルコートバルーンによる治療で死亡リスクが増すのではないかという懸念である。冠動脈領域であれば末梢動脈領域への治療よりも薬剤の曝露量は少ないことは推測される。しかし、この懸念へのエビデンス提示も必要と考えられる。 このような課題があるとはいえ、かつて生体吸収性スキャホールドが達成しようとして挫折した理想をDCBが具現化しようとしていることは興味深い。DCBは世界に先駆けて日本での使用実績が多い分野でもあり、本邦からの情報発信に期待したい。

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ASCO2019レポート 乳がん

レポーター紹介2019年5月31日~6月4日まで5日間にわたり、ASCO2019が開催された。2019年のテーマは“Caring for every patient, Learning from every patient”であった。薬物療法の大きな演題が少なかった代わりに、支持療法やサバイバーケアの演題が多く取り上げられているように感じた。乳がんにおいては直接私たちの実臨床を変えるような試験の発表はなかったが(残念ながらプレナリーセッションもなし)、日常臨床の中で解決しなければならないクリニカルクエスチョンに回答する試験、今後の開発の方向性を示唆する試験の発表が多かったように感じる。その一方で、日本が参加していない試験の報告も多く、わが国の世界の治療開発の中での課題を再認識させられた学会でもあった。乳がんのLocal/Regional口演から2演題、Metastatic口演から5演題を紹介する。臨床的リスク因子がOncotypeDXによる再発スコアに及ぼす影響(TAILORx追加解析)OncotypeDXは乳がん組織中の21遺伝子のメッセンジャーRNA発現を解析することにより再発リスクの予測、化学療法の上乗せ効果を予測する検査である。TAILORx試験は、再発スコア(RS)を11以下の低リスク、12~25の中間リスク、25以上の高リスクに分け、中間リスクに対する化学療法の上乗せ効果を検証した第III相試験である。主たる解析結果は昨年のASCOで発表され、中間リスクに対する化学療法の上乗せ効果は認められなかった。サブグループ解析では50歳以下でRSが16~20では2%の、21~25では7%の化学療法上乗せ効果が示唆された(Sparano JA, et al. N Engl J Med.2018;379:111-121.)。今回の発表では、RSに臨床的リスク因子を加えた解析が行われた。臨床的低リスクは3cm以下かつ低グレード、2cm以下かつ中間グレード、1cm以下かつ高グレードと定義され、臨床的低リスクに当てはまらない症例が臨床的高リスクと分類された。臨床的高リスクは30%であった。無病生存期間(disease free survival:DFS)および遠隔無再発生存期間は、RS11~25の中間リスクにおいて臨床リスクによる差を認めなかった。化学療法の有益性が示唆されている50歳以下のRS16~25に限った解析では、RS16~20かつ臨床低リスクでは化学療法上乗せ効果を認めなかった。また、この集団における化学療法の上乗せ効果は化学療法誘発閉経によるものである可能性が示唆された。今回の結果はOncotypeDXの実臨床での使い方に大きな影響を及ぼすものではないが、50歳以下(未閉経)RS16~25の場合に化学療法を上乗せするかどうかの参考にはなりえるかもしれない。本研究の結果は発表同日、論文発表された(Sparano JA, et al. N Engl J Med. 2019;380:2395-2405.)。HER2陽性乳がんに対する術前ペルツズマブ+化学療法vs.T-DM1+ペルツズマブ (KRISTINE試験)本試験はHER2陽性早期乳がんを対象とした、ペルツズマブ+トラスツズマブ+カルボプラチン+ドセタキセル(TCH+P)とT-DM1+ペルツズマブ(T-DM1+P)を比較する第III相試験である。各施設判定での主要評価項目は病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)率であり、pCRは56% vs.44%でTCH+P群で良好であった (Hurvitz SA, et al. Lancet Oncol. 2018;19:115-126.)。一方で、Grade3の有害事象や重篤な有害事象の発生頻度などでT-DM1+ペルツズマブ群のほうが安全性は良好であった。今回の発表では、副次評価項目の無イベント生存率(event free survival: EFS)、無浸潤がん生存率(invasive disease free survival:IDFS)などについて発表された。3年EFSはTCH+P群 vs.T-DM1+P群で94.2% vs.85.3%(層別化ハザード比:2.61、95%CI:1.36~4.98)とTCH+P群で良好であり、主要評価項目のpCR率と同様の傾向を示した。イベントとしては手術前の増悪がT-DM1+P群で15例(6.7%)と、イベントの約半数を占めていた。TCH+P群では0例であり、手術前の増悪がEFSの差につながったと考えられる。手術前に増悪した15例のうち14例についてHER2のmRNA発現が解析されており、全例で中央値を下回っていた。また、HER2の免疫組織化学染色は15例のうち10例(66.7%)が2+であり、このようなHER2の発現状況がT-DM1+Pの効果に影響を及ぼした可能性が考えられる。3年IDFSは92.0% vs.93.0%で両群に差は認めなかった。KATHERINE試験(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2019;380:617-628.)では術前治療で腫瘍が残存した症例に対してT-DM1の術後治療が無病生存(disease free survival:DFS)、全生存期間(overall survival:OS)を改善している。今回の結果との違いはHER2の発現の違いによる可能性は示唆されるが、さらなる検討が必要であろう。抗HER2療法で進行したHER2陽性転移乳がんに対するmargetuximab+化学療法 vs.トラスツズマブ+化学療法の比較第III相試験(SOPHIA試験)本試験は新しい抗HER2抗体であるmargetuximabと化学療法の併用をトラスツズマブと化学療法の併用と比較する試験である。margetuximabはトラスツズマブと同様の特異性と結合性の抗体認識部分を持ち、下流シグナルの抑制効果も同等である。トラスツズマブと異なるのはFCγ受容体結合部位であり、IgG1の野生型のままのトラスツズマブと異なり、CD16Aを活性化し、CD32Bを抑制するよう改変されている。CD16Aの遺伝子型が抗HER2抗体の治療効果予測因子となることが示唆されているため、margetuximabはCD16Aの変異型を有する腫瘍に対しても有効性が高いことが期待された。本試験は2レジメン以上の抗HER2治療歴(転移乳がんに対して1~3レジメン)の症例を対象として、主治医選択化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビンまたはビノレルビン)と併用して抗HER2抗体を1:1に割り付けた。margetuximab群に266例、トラスツズマブ群に270例が割り付けられた。主要評価項目は無増悪生存期間(progression free survival:PFS)およびOSであった。前治療としてトラスツズマブおよびペルツズマブは両群で全例が、T-DM1はそれぞれ約91%が受けていた。PFSの中央値は5.8ヵ月 vs.4.9ヵ月(ハザード比:0.76、95%CI:0.59~0.98、p=0.033)とmargetuximab群で良好であった。事前に計画されたCD16Aの遺伝子型によるサブ解析ではCD16A-FFもしくはFVではmargetuximab群で良好であったが、VVでは有意差を認めなかった。FF、FVのみでの解析では有意差を認めなかったが、margetuximab群で良好な傾向であった。また、OSについては有意差を認めなかった。奏効率、臨床的有用率についてもmargetuximabで良好であった。有害事象においてはmargetuximab群でinfusion-related reactionが多い傾向を認めた。今後、抗HER2抗体で進行した転移乳がんの治療として、margetuximabは1つの選択肢となってくる可能性があるが、残念ながら日本からはこの試験には参加していない。転移のあるHER2陽性乳がんにおけるneratinib+カペシタビンvs.ラパチニブ+カペシタビンの比較第III相試験(NALA試験)neratinibはHERファミリーのチロシンキナーゼドメインに不可逆的に結合することにより、下流シグナルを抑制する少分子化合物である。NALA試験は転移乳がんに対し2レジメン以上の抗HER2治療の既往がある症例を対象としてneratinib+カペシタビンvs.ラパチニブ+カペシタビンを比較する第III相試験で、主要評価項目はPFSおよびOSであった。neratinib群に307例が、ラパチニブ群に314例が登録された。PFSはハザード比0.76(p=0.0059)とneratinib群で良好であった。もう1つの評価項目であるOSではneratinib群で良好な傾向は認めたものの、統計学的には有意ではなかった。副次評価項目の中枢神経転移に対する介入の割合はneratinib群の22.8%に対し、ラパチニブ群で29.2%とneratinib群で良好であった(p=0.043)。有害事象は下痢(とくにGrade3/4の下痢)、悪心、嘔吐、食欲低下がneratinib群で多く、手足症候群はラパチニブ群で多い傾向にあった。患者報告によるQOLでは両群間に差を認めなかった。トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するアテゾリズマブ+nab-PTX併用試験のOSアップデート(IMpassion130)アテゾリズマブ+nab-PTX併用療法のTNBCに対する初回治療の結果は昨年の欧州臨床腫瘍学会で発表され、乳がんへの適応拡大が期待されている(Schmid P, et al. N Engl J Med. 2018;379:2108-2121.)。本試験ではPD-L1の発現(1%以上または未満)によって層別化が行われた。PD-L1は41%の症例で陽性であった。主要評価項目はPFSであり、ITT集団では7.2ヵ月 vs.5.5ヵ月、PD-L1陽性集団では7.5ヵ月 vs.5.0ヵ月で、アテゾリズマブ群で良好であった。今回は2回目の中間解析の結果が発表された。観察期間の中央値は18.0ヵ月であり、ITT集団で59%の死亡イベントが発生していた。ITT集団における生存期間中央値(median survival time:MST)は21.0ヵ月 vs.18.7ヵ月(ハザード比:0.86、95%CI:0.72~1.02、p=0.0777)、24ヵ月生存率は42% vs.39%であり、アテゾリズマブ群で良好な傾向を認めたものの、統計学的有意差は認めなかった。PD-L1陽性集団における解析はITT集団で陽性だった場合にのみ行う統計手法が用いられていたため参考値ではあるが、MSTは25.0ヵ月 vs.18.0ヵ月、24ヵ月生存率は51% vs.37%であり、より差が開く傾向がみられた。PD-L1陰性では、MSTは19.7ヵ月 vs.19.6ヵ月であり、アテゾリズマブ追加の有無にかかわらず差を認めなかった。MST、24ヵ月生存率のいずれもプラセボ群ではPD-L1陽性の場合に短い傾向がみられ、PD-L1が予後予測因子でもある可能性が示されている。乳がんにもついに免疫チェックポイント阻害剤の波が到達しようとしている。有害事象のマネジメントも含めて、先人たちに学びながら有効な治療を安全に患者さんに届けるようにしていきたい。なお、余談ではあるが本試験の共同演者には愛知県がんセンターの岩田 広治先生が入っていた。最近では国内からの参加のある国際共同試験の多くで共同演者に日本の先生が入っていることも多く、非常にうれしく感じている。ホルモン受容体陽性乳がんを対象としたエリブリン+ペムブロリズマブ併用療法とエリブリン単剤療法のランダム化第II相試験ホルモン受容体陽性乳がんは免疫学的には“コールド”と考えられており、免疫チェックポイント阻害剤の効果が得られにくいと考えられている。免疫チェックポイント阻害剤単剤では2.8~12%の奏効率が報告されている。一方で化学療法との併用の術前治療ではpCR率を上げることが報告されており、化学療法と免疫チェックポイント阻害剤の併用はホルモン受容体陽性乳がんの治療として有望である可能性が残されていた。本研究ではエストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体陽性HER2陰性で、2レジメン以上のホルモン療法歴(術後治療含む)、転移乳がんに対する0~2レジメンの化学療法歴を有する症例を対象として、エリブリン+ペムブロリズマブ併用療法とエリブリン単剤療法を比較した第II相試験である。主要評価項目はPFS、副次評価項目として奏効率・臨床的有用率とOSが設定されていた。44例が併用群、46例が単剤群に割り付けられた。PFSは4.1ヵ月 vs.4.2ヵ月(ハザード比:0.8、95%CI:0.5~1.3、p=0.33)であり両群間に差を認めなかった。PD-L1陽性集団に限った解析でも同様の傾向であった。奏効率はITT集団で27% vs.34%、PD-L1陽性集団で23% vs.45%と、併用群で低い傾向であった。OSは両群間に差を認めなかった。有害事象は多くの項目で両群間に大きな差を認めなかったが、併用群では2例の免疫関連有害事象による治療関連死を認め、単剤群では認めなかった。本試験の結果をもって、ホルモン受容体陽性乳がんに対する免疫チェックポイント阻害剤の有用性を結論付けることはできないが、併用群で奏効率が低下した理由についてはreverse translational researchが必要であろう。MONALEESA-7 副次評価項目の全生存期間の中間解析で有意に延長MONALEESA-7は閉経前転移乳がんを対象に1次ホルモン療法に対するCDK4/6阻害剤であるribociclibの上乗せをみた第III相試験である。ホルモン療法としてはタモキシフェンもしくはアロマターゼ阻害剤とLHRHアゴニストであるゴセレリンが併用された。前治療としてホルモン療法は許容されておらず、化学療法は1レジメンのみ許容されていた。主要評価項目はPFS、キー副次評価項目としてOSが設定されていた。PFSの結果は昨年のSan Antonio Breast Cancer Symposiumで発表され、ribociclib群で23.8ヵ月に対しプラセボ群で13ヵ月(ハザード比:0.55、95%CI:0.44~0.69、p<0.0001)とribociclib群で良好であり、閉経前の症例においてもこれまでに閉経後を対象として行われてきたCDK4/6阻害剤と同様の上乗せ効果が得られることが示された。今回の発表では観察期間中央値34.6ヵ月時点でのOSの中間解析結果が発表された。生存期間中央値はribociclib群では未達であり、プラセボ群では40.9ヵ月であり、中間解析に割り振られたp値を下回りribociclib群で有意に長かった(ハザード比:0.712、95%CI:0.535~0.948、p=0.00973)。点推定値では、36ヵ月で71.2% vs.64.9%、42ヵ月で70.2% vs.46.9%と観察期間が延長するにつれて差が開いていく傾向を認めた。本試験はCDK4/6の1次治療への上乗せを検証した試験の中で、OSの結果を公表し統計学的有意差を認めた初の試験である。本試験の対象は閉経前であるため、現在の国内で1次治療に使用できるCDK4/6阻害剤に直接応用することはできない。また、中間解析でありイベントが十分に発生していないことなどから、今後の結果については最終解析の結果を待つ必要がある。本試験結果は発表同日New England Journal of Medicine誌に論文公表された( Im SA, et al. N Engl J Med. 2019 Jun 4. [Epub ahead of print])。なお、ribociclibは国内での開発が中止となっているため、本試験には日本からは不参加である。閉経前に対するCDK4/6の国内における開発は非常に重要であり、閉経前後を含めてタモキシフェンにパルボシクリブの上乗せを検証する、日本を含めたアジア共同医師主導治験のPATHWAY試験(UMIN000030816)の症例集積が完了する見込みである。結果の公表が待たれる。

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抗精神病薬使用と胃がんリスクとの関係

 台湾・桃園長庚紀念病院のYi-Hsuan Hsieh氏らは、抗精神病薬使用と胃がんの発症率との関連を明らかにするため、検討を行った。これまで、抗精神病薬の使用と胃がんリスクとの関連は、明らかとなっていなかった。Cancer Medicine誌オンライン版2019年6月10日号の報告。 ネステッド・ケース・コントロール研究を用いて、1997~2013年の台湾全民健康保険研究データベースより、胃がん患者3万4,470例および非胃がん患者16万3,430例を抽出した。交絡因子の可能性を調整するため、条件付きロジスティック回帰モデルを用いてデータ分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の使用は、潜在的な交絡因子(収入、都市部、薬剤、身体疾患、アスピリン使用、NSAIDs使用、3剤併用療法)で調整した後、胃がんリスクと独立した逆相関が認められた。・さらに、胃がんリスクに対する各種抗精神病薬(thioridazine、ハロペリドール、スルピリド、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、amisulpride、リスペリドン)の用量依存的傾向も示された。・感度分析では、消化性潰瘍疾患の有無にかかわらず、胃がんリスク減少に対し、第2世代抗精神病薬の有意な用量依存的作用が認められた。 著者らは「抗精神病薬の使用は、胃がんリスクと逆相関が認められた。また、いくつかの抗精神病薬において、胃がんリスクに対する用量依存的作用が認められた」としている。■「スルピリド」関連記事スルピリドをいま一度評価する

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