サイト内検索|page:255

検索結果 合計:10331件 表示位置:5081 - 5100

5081.

急性脳梗塞、迅速な血管内治療開始でアウトカム改善/JAMA

 脳主幹動脈閉塞による急性虚血性脳卒中(AIS)患者の実臨床治療では、血管内治療開始までの時間の短縮によりアウトカムが改善することが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校David Geffen医学校のReza Jahan氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年7月16日号に掲載された。AISにおける脳主幹動脈閉塞への血管内治療の有益性は時間依存性とされる。一方、治療開始までの時間短縮が、アウトカムや実臨床への一般化可能性に、どの程度の影響を及ぼすかは不明だという。治療の迅速性とアウトカムの関連を評価するコホート研究 研究グループは、AIS患者における血管内治療の迅速性とアウトカムの関連の評価を目的とする後ろ向きコホート研究を行った(米国心臓協会[AHA]/AHA脳卒中部門[ASA]などの助成による)。 2015年1月~2016年12月の期間に、米国の全国レジストリであるGet With The Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke)に登録されたデータを後ろ向きに解析した。対象は、前方循環系の脳主幹動脈閉塞によるAISで、発症から8時間以内に血管内治療を開始した患者であった。 主要アウトカムは、発症(最終確認時刻)から動脈穿刺までの時間(発症-穿刺時間)および病院到着から動脈穿刺までの時間(到着-穿刺時間)と、有効再開通(modified thrombolysis in cerebral infarction[mTICI]スコア:2b~3[閉塞血管領域の50~100%で再灌流])、退院時の歩行状況・全般的な機能障害(modified Rankin scale[mRS])・退院先、症候性頭蓋内出血(sICH)、院内死亡/ホスピス転院率との関連とした。発症-穿刺時間30~270分では、15分短縮ごとに退院時自立歩行が1.14%増加 米国の231施設から6,756例が登録された。平均年齢は69.5(SD 14.8)歳、女性が51.2%(3,460例)で、治療前の米国国立衛生研究所脳卒中尺度(NIHSS)スコア中央値は17点(IQR:12~22)であった。 発症-穿刺時間中央値は230分(IQR:170~305)、到着-穿刺時間中央値は87分(62~116)であった。有効再灌流の達成率は85.9%(5,433/6,324例)だった。 有害事象として、sICHが6.7%(449/6,693例)、院内死亡/ホスピス転院率が19.6%(1,326/6,756例)に認められた。退院時に、自立歩行が36.9%(2,132/5,783例)、機能的自立(mRS:0~2)が23.0%(1,225/5,334例)、機能障害なし(mRS:0~1)が15.9%(847/5,334例)、自宅退院が27.8%(1,876/6,756例)で達成された。 発症-穿刺時間の補正後解析では、時間-アウトカム関連は30~270分が271~480分に比べ急勾配であり、時間が短縮するほどアウトカムが改善した。すなわち、発症-穿刺時間30~270分では、時間が15分短縮するごとに、退院時の自立歩行の達成率が1.14%(95%信頼区間[CI]:0.75~1.53)増加し、院内死亡/ホスピス転院率が0.77%(-1.07~-0.47)低下し、sICHのリスクは0.22%(-0.40~-0.03)減少した。 到着-穿刺時間についても同様に、時間の短縮によりアウトカムの改善が得られた。すなわち、30~270分のウィンドウでは、15分の短縮ごとに、自宅退院の達成率が2.13%(95%CI:0.81~3.44)増加し、院内死亡/ホスピス転院率が1.48%(-2.60~-0.36)低下した。 著者は、「これらの知見は、脳卒中患者における病院到着までの時間、および血管内治療までの時間の短縮に向けた取り組みを支持するものである」としている。

5083.

免疫CP阻害薬のやめ時は?最終サイクル後の30日死亡率/日本臨床腫瘍学会

 進行・難治性がん患者に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用する機会が増えているが、明確な中止基準は確立されていない。2011 national cancer strategy for Englandでは、回避可能な全身性抗がん剤治療(SACT)による害の臨床指標として、30日死亡率を提唱している。今回、一宮市立市民病院 龍華 朱音氏らが、ICI治療の最終サイクル後30日以内に死亡した患者について調査したところ、PS不良の患者にICI治療が選択される傾向があり、また、最終サイクルの治療費が従来の治療の約10倍となっていることが明らかになった。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で報告された。 本研究では、2016年1月~2018年6月にSACTを受けたすべてのがん患者のデータを同定し、最終サイクル後30日以内に死亡した患者を後ろ向きに収集した。ICIの最終サイクル後30日以内に死亡した患者(ICI群)と、主に細胞障害性抗がん剤による従来のSACTの最終サイクル後30日以内に死亡した患者(非ICI群)の2群に分け、死因、臨床的特徴、治療関連因子を比較した。なお、経口抗がん剤および局所動脈/髄腔内注射の投与患者は除外した。 主な結果は以下のとおり。・SACTを受けた1,442例のうち90例が、最終レジメンをICIで治療されていた。・ICIの最終サイクル後30日以内に16.7%(15/90例)が死亡し、ICI以外のレジメンで治療され死亡した1.6%(22/1,352例)より死亡率が高かった。・ICI群の年齢中央値(範囲)は71歳(60~86歳)、男性14例/女性1例、最終サイクル時のECOG PSが0~1が4例、2~4が11例であった。死因は、腫瘍の進行11例、感染症3例、その他(免疫関連肝炎)1例であった。・ICI群は非ICI群と比べて、男女の割合(14/1 vs. 13/9、p=0.028)、PS 2~4の割合(73.3% vs.40.9%、p=0.040)、治療費中央値(821,310円vs.87,610円、p<0.001)が有意に高かった。 龍華氏は、抗がん剤治療後早期死亡を引き起こす主因として、治療関連死および積極的治療適応外の2点を挙げた。また、ICI治療における30日死亡率が高い理由として、細胞障害性抗がん剤に忍容性がない患者にICIが投与されている可能性を指摘した。さらに、医療資源の浪費抑制のために、上記の積極的治療適応外に該当する緩和ケアが有用な患者においては、ICI中止のための適切なガイドラインが必要である、と結論した。 発表後の質疑において、龍華氏は、肺癌診療ガイドライン2018年版では、PS 3~4の患者(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明、PD-L1発現は問わない)へは薬物療法を行わないよう推奨されているが、実臨床では、ICIは免疫関連有害事象が発現しなければ投与できてしまうこと、治療効果が得られず腫瘍増大を来した症例にもPseudo-Progressionであることを期待して4サイクルまで継続しようとするなど、やめ時が難しいという問題を提起した。

5084.

がん免疫療法ガイドライン第2版発刊【Oncologyインタビュー】第9回

がん免疫療法ガイドライン第2版が本年(2019年)3月に発刊された。第1版から2年3ヵ月のスピード改訂である。本版制作の実務を担った日本臨床腫瘍学会がん免疫療法ガイドライン改訂版作成ワーキンググループ長である九州大学 馬場 英司氏に、第2版の改訂ポイントを聞いた。2年3ヵ月(第1版は16年12月、第2版は19年3月に発刊)という短期間で第2版を発刊されていますが、その背景について教えてください。このガイドラインの対象は主に免疫チェックポイント阻害薬で、それらを適正に使用することを目的にしています。この分野は新しい薬剤が次々に登場し、適応疾患も急速に拡大しています。そのため、早めの改訂を行いました。改訂の準備段階で、web版で出すか冊子として出すかを検討しました。当初は部分的なものを想定していましたが、実際に始めてみると改訂すべきボリュームがかなり多いことがわかり、web版ではなく第2版として冊子にしようということとなりました。第1版からの改訂ポイントはどのようなところでしょうか。全体の構成は第1版と同様です。1つ目が「がん免疫療法の分類と作用機序」、2つ目は「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」、最後に「がん免疫療法の癌種別エビデンス」という3つの大項目からなっています。まずがん免疫療法の概論、次に副作用の説明、最後に各臓器における免疫療法の使い方という組み立てです。1つ目の「がん免疫療法の分類と作用機序」は、全体的に大きく変わっていませんが、より詳細な記載になっています。2つ目の「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」については、各項目でボリュームが増しています。なかでも「15.心筋炎を含む心血管障害」については、頻度が高くないという理由から、第1版では独立させていませんでしたが、今回は新たな項目として独立させ、より詳細に記載しました。この分野は腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)と呼ばれ、がん治療、あるいはがんそのものによる循環器系の合併症対策として、腫瘍と循環器との連携の重要性についての認識が高まっています。免疫療法においてもこの分野は重要なものとなっています。3つ目の「がん免疫療法の分類と作用機序」で特徴的なことは「19.高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能の欠損(dMMR)を有する切除不能・転移性の固形癌」を加えたことです。このテーマは第2版作成当初から重要性に注目し、準備していました。MSI-H検査が保険診療で使えるようになったのは、この第2版が出る数ヵ月前(2018年12月)であり、タイミング良く載せられたと思います。このような臓器横断的な遺伝子変化を対象とした治療薬は今後もでてきますので、他学会と協力した取り組みも進めています。副作用対策も治療エビデンスも広範囲にわたります。貴学会内だけでなく、他学会のサポートもあったのでしょうか制作に関わっていただいたのは全部で23名です。適応がん種は幅広いので、日本臨床腫瘍学会のがん種横断的な先生方の協力をいただいています。また、他学会からの協力もいただいており、日本免疫学会から玉田耕治先生、日本臨床免疫学会から鳥越俊彦先生に代表として入っていただき、腫瘍循環器学の分野からは向井幹夫先生にご協力いただきました。医療者の方々に有効に活用いただくためのアドバイスをお願いします。免疫チェックポイント阻害薬は非常に期待されている薬剤である一方、従来の抗がん剤とはまったく異なる副作用が発現します。これらの有害事象を上手にマネジメントしないとせっかくの薬が有効活用できません。また循環器や内分泌など、腫瘍専門家に馴染みの少ない分野の有害事象への対応も必要となります。このガイドラインを活用し、さまざまな臓器の有害事象を頭に入れ、対策に役立てていただきたいと思います。そして、ガイドラインの活用と共に、他の専門家とのネットワーク構築などを進めていただければ、期待される薬剤をさらに有効に活用できると思います。

5085.

最もOSが良好な乳がんのサブタイプは?

 乳がん治療について、ステージ分類に加えて腫瘍サブタイプの重要性を強調するエビデンスが報告された。現行の乳がん治療では、これまで各ステージにおける腫瘍サブタイプの寄与は明らかになっていなかったが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJose P. Leone氏らが、Surveillance Epidemiology and End Results(SEER)プログラムのデータを解析し、臨床病理学的特徴が良好であるのはホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)乳がんであること、しかしながら、ほとんどのステージで全生存(OS)が最も良好だったのはHR+/HER2+乳がんであることを報告した。乳がんの4つの各ステージにおいて、OSは腫瘍サブタイプにより有意に異なっており、多変量モデルにおいても有意なままであったことも明らかにした。American Journal of Clinical Oncology誌2019年7月号掲載の報告。各ステージでの腫瘍サブタイプ別にOSは有意に異なる 研究グループは、各ステージでの腫瘍サブタイプ別によるOSの違いを分析する目的で、SEERプログラムに登録された乳がん患者のうち、2010~13年の間に診断され、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体(HR)ならびにHER2の状態が既知の患者を対象に、患者特性を腫瘍サブタイプ別に比較した。 単変量および多変量解析により、OSに対する各変数の影響を明らかにするとともに、乳がん特異的生存についても解析した。 腫瘍サブタイプ別に患者特性を比較した、主な結果は以下のとおり。・解析対象は16万6,054例で、腫瘍サブタイプの分布はHR+/HER2-が72.5%、HR+/HER2+が10.8%、HR-/HER2+が4.8%、トリプルネガティブ(TN)が12%であった。・HR+/HER2-の患者は、年齢が高く、グレードが低く、ステージは早期であった(すべてp<0.0001)。・OSは、各ステージにおいて、腫瘍サブタイプにより有意に異なっていた(交互作用のp<0.0001)。・StageIで最もOSが高かった腫瘍サブタイプは、HR+/HER2-で、3年OSは97.2%であった。・StageII、StageIII、StageIVで最もOSが高かった腫瘍サブタイプは、HR+/HER2+で、3年OSはそれぞれ94.5%、87.8%、54.8%であった。・SageIVでは、腫瘍サブタイプのTNとHR+/HER2+との間で3年OSに40.1%の差があった。・これらの結果は年齢、人種、グレード、組織型および配偶者の有無について調整した多変量解析によって確認された。

5086.

毎週パクリタキセル療法の末梢神経障害、冷却療法による予防効果/日本乳癌学会

 乳がんに対する毎週パクリタキセル(PTX)療法に伴う末梢神経障害に対する予防方法として、冷却方法が有用である可能性が報告されている。今回、呉医療センター中国がんセンターの尾崎 慎治氏(4月より県立広島病院)らが無作為化比較第II相試験にて、frozen gloves/socksによる冷却療法を検証したところ、忍容性は良好であり、毎週パクリタキセル療法に伴う末梢神経障害の予防に有用と考えられた。第27回日本乳癌学会学術総会にて発表された。毎週パクリタキセル療法に伴う末梢神経障害は冷却療法群で有意に低かった 本試験では、毎週パクリタキセル療法を4サイクル施行予定の乳がん44症例を、毎週パクリタキセル療法開始時からfrozen gloves/socksによる予防的冷却療法を併用する試験群と、有意な末梢神経障害が発生した時点から冷却療法を併用開始するコントロール群の2群にランダム化した。併用群ではパクリタキセルの投与開始前15分から治療中を含め、治療終了後15分までの90分間、frozen gloves/socksを装着し、治療中に2個目のfrozen gloves/socksに切り替えた。末梢神経障害の評価はパクリタキセル各コースの投与前と4コース終了後に、患者アンケートとしてFACT-NTx subscale日本語版とPNQ(patient neurotoxicity questionnaire)を、また主治医評価としてCTCAE(commonterminology criteria for adverse event)v4.0を用いて評価した。FACT-NTxでは6ポイント以上または10%以上を、PNQではGradeD以上を、CTCAEではGrade2以上を有意な末梢神経障害として評価した。 毎週パクリタキセル療法に伴う末梢神経障害に対する冷却療法の予防効果を検証した主な結果は以下のとおり。・44症例を冷却療法群とコントロール群に22症例ずつ無作為化された。・冷却療法の忍容性については、22症例中15症例(68%)が良好であり、冷却療法に関連した副作用(凍傷、末梢循環不全、悪寒)は認めなかった。・FACT-NTxにおける有意な末梢神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群: 41% vs.73%、p=0.03)。・PNQにおけるGradeD以上の末梢性感覚神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群:14% vs.42%、p=0.02)。・CTCAEにおけるGrade2以上の末梢性感覚神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群:9% vs.54%、p=0.001)。・冷却療法の忍容性不良例や、コース数の増加とともに末梢神経障害が悪化する症例が存在した。

5087.

ICU患者のせん妄、家族の自由面会で減少せず/JAMA

 集中治療室(ICU)における家族の面会時間を自由にしても、制限した場合と比較してせん妄発生の有意な低下は確認されなかった。ブラジル・Hospital Moinhos de VentoのRegis Goulart Rosa氏らが、ICUにおける家族の面会がせん妄の発生に及ぼす影響を検証したクラスター・クロスオーバー無作為化臨床試験の結果を報告した。ICUにおける家族の面会時間を自由にする方針は、患者および家族中心のケアの重要なステップとして、米国クリティカルケア看護師協会(AACN)や米国集中治療医学会(SCCM)のガイドラインにより推奨されているが、その影響ははっきりしていなかった。JAMA誌2019年7月16日号掲載の報告。患者、家族、医師を組み込んだクラスター・クロスオーバー無作為化試験を実施 研究グループはブラジルの、面会時間が制限(1日4.5時間未満)されている成人ICU 36施設において、患者、家族および医師を対象としたクラスター・クロスオーバー無作為化臨床試験を実施した。 2017年4月~2018年6月の期間に参加者を募り、被験者を自由面会群(19施設、1日最長12時間、患者837例、家族652例、医師435例)または制限面会群(17施設、中央値1.5時間/日、患者848例、家族643例、医師391例)のいずれかに無作為化して、2018年7月まで追跡調査した。 主要評価項目は、ICU入室中のせん妄発生率で、Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit(CAM-ICU)を用いて評価した。副次評価項目は、患者のICU感染、家族の不安と抑うつ(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADSで評価、範囲:0[良好]~21[最悪])、ICUスタッフのバーンアウト(燃え尽き症候群)(Maslach Burnout Inventoryで評価)などであった。せん妄発生率、家族の自由面会19%vs.制限面会20%で有意差なし 患者1,685例、家族1,295例、医師826例が登録され、患者1,685例全員(100%)(平均年齢58.5歳、女性47.2%)、家族1,060例(81.8%)(平均年齢45.2歳、女性70.3%)、医師737例(89.2%)(平均年齢35.5歳、女性72.9%)が試験を完遂した。 1日の平均面会時間は、家族の自由面会群で有意に長かった(4.8時間 vs.1.4時間、補正後群間差:3.4時間、95%信頼区間[CI]:2.8~3.9、p<0.001)。ICU入室中のせん妄発生率は、家族の自由面会群と制限面会群との間に有意差は認められなかった(18.9% vs.20.1%、補正後群間差:-1.7%、95%CI:-6.1%~2.7%、p=0.44)。 事前に定義した9つの副次評価項目のうち、ICU感染(3.7% vs.4.5%、補正後群間差:-0.8%、95%CI:-2.1%~1.0%、p=0.38)、スタッフのバーンアウト(22.0% vs.24.8%、補正後差:-3.8%、95%CI:-4.8%~12.5%、p=0.36)などを含む6つの項目でも、両群に有意差はなかった。家族に関しては、不安(スコア中央値:6.0 vs.7.0、補正後群間差:-1.6、95%CI:-2.3~-0.9、p<0.001)および抑うつ(スコア中央値:4.0 vs.5.0、補正後群間差:-1.2、95%CI:-2.0~-0.4、p=0.003)のいずれも、自由面会群が有意に良好であった。

5088.

第1回 今さら聞けない心臓リハビリ【今さら聞けない心リハ】

第1回 今さら聞けない心リハケアネット読者の皆さん、「心臓リハビリテーション」についてどの程度ご存じでしょうか? 「心臓リハビリ」「心リハ」「Cardiac rehabilitation」、これらはすべて同じことを意味しています。日本では「心大血管疾患リハビリテーション料」という名称で、保険適用されています。『何それ、聞いたことないよ』『心臓病は自分の専門分野と違う』『循環器領域の患者を診ることなんてない』というあなた。実は、心臓リハビリテーション(以下、心リハ)の知識はご自身の健康管理上でもなくてはならないものなのです。そんな方にこそ、心リハを知ってもらいたく、この連載を執筆することになりました。医療に携わるケアネット読者の皆さんなら、生活習慣病の予防・治療に運動や食事が重要ということはすでにご存じと思います。運動不足や不健康な食習慣により、高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病が生じやすくなることは、もはや“日本人の常識”と言えるでしょう。でも、具体的にどんな運動をどれくらいすればいいのか? 何をどのように食べればいいのか? となると、途端に答えられなくなる人が多いようです。生活習慣病、そしてその先にある心血管疾患に対して、健康を維持するための具体的な運動療法・食事療法を提案し、継続的に実践することをサポートする医学的介入…それが心リハです。生活習慣病をまだ発症していない、「未病」の段階から予防のための運動習慣・食習慣を実践することも、広い意味では心リハと呼べます。いかがでしょう、心リハを知りたい気持ちになっていただけましたか?~運動は医師自身にも必要~早く知りたい!手短に!というあなたのために、まずは運動の極意をお伝えしましょう。健康な方でも、生活習慣病や心血管疾患をすでに発症している方でも基本は同じ。キーワードは、『1日20~60分間の有酸素運動』です。有酸素運動=ジョギングではありません。有酸素運動とは、好気的代謝によりゆっくりとエネルギー(ATP)を消費する、長時間続けて行う運動です。好気的代謝の能力には個人差がありますので、有酸素運動と一口に言っても、一人ひとりで適切な強度が異なります。ゆっくり1時間歩くこと(時速2~3km程度)は、多くの方にとって有酸素運動ですが、若い人では強度が弱すぎて運動の効果がなかなかでません。一方で、ジョギング(時速5~6km程度)は、運動習慣を持たない中高年にとって無酸素運動となり持続することができません。では、あなたにとってのベストな有酸素運動とは、どのような運動でしょう?~ベストな運動強度の調べ方~心リハでは、患者さん一人ひとりにとって最適な運動強度を決定するために、心肺運動負荷試験(CPET:Cardiopulmonary exercise testing[CPX])という検査を行います。写真は当院でのCPXの様子です(図1)。(図1)心肺運動負荷試験[CPX]の実施風景画像を拡大する心肺~と呼ばれるのは、通常の運動負荷試験のように運動中の心電図・血圧を評価するだけではなく、口と鼻をすっぽりと覆うマスクを装着して、運動中の酸素摂取量・二酸化炭素排出量・換気量を測定するためです。運動の強度(自転車エルゴメータの仕事量[ワット数]、またはトレッドミルでの歩行速度・傾斜角度)を徐々に増加させたときに、ある強度以上で酸素換気当量(換気量/酸素摂取量)・呼吸商(二酸化炭素排出量/酸素摂取量)が急激に増加し始めます。この強度が嫌気性代謝閾値(AT:Anaerobic Threshold)であり、嫌気性代謝が始まる点です。最も効果的な有酸素運動は、ATの時点より少しだけ強度の低い運動、ということになります。AT未満の運動は、心血管疾患においても交感神経の活性化による過度の血圧上昇や不整脈を生じにくく、安全に実施しやすいため、心リハでの運動指導に用いられています。実際に運動する際は、検査で求められたAT時点の心拍数を維持することを目標に20分間以上の運動を行うようにします。有酸素運動は代謝・自律神経系の異常や血管内皮機能を改善し、さらには心血管疾患の増悪による入院率低下と生命予後の改善が数々の臨床試験で示されており、心血管疾患の治療手段の一つとして「運動療法」と呼ばれています。~自分の有酸素運動レベルを知っておく~あなたも、CPXを受けてご自身の有酸素運動レベルを知ってみたくありませんか? 「心臓ドック」の一環としてCPXの様子を行っている施設もあるみたいです。でも、なかなか検査を受けに行く時間をとれませんよね。大丈夫、特別な心血管疾患のない方であれば、AT時点の心拍数を以下の式で推定することができます。運動時の至適心拍数=安静時心拍数+0.6×(予測最大心拍数-安静時心拍数)1)一般的に、「予測最大心拍数=220-年齢」で推定できるので、たとえば、40歳で安静時心拍数が80bpmという場合、AT時点の心拍数=80*+0.6×(220-40**-80*)=80+0.6×100=140bpm*:安静時心拍数、**:予測最大心拍数と計算され、心拍数が140bpmとなるような早さで20~60分間歩く、もしくはジョギングする、というのが“ちょうどいい運動”ということになります。~心電図モニターの装着が鍵~病院で行う心リハでは、心拍計だけではなく心電図モニターを装着してもらい、心拍数のほかに不整脈も確認しながら運動を行います。頻発性の期外収縮や心房細動を有する患者などでは、通常の心拍計では正確に心拍数を評価しにくいため、心電図モニタリングが有用です。心リハの保険適用期間は5ヵ月間を基本としており、心リハ開始から5ヵ月が経過し病状が安定している患者では、病院での心電図モニター監視下での運動療法は終了し、一般のスポーツ施設や自宅などで運動療法を継続してもらうことになります。病状がまだ安定していないと考えられる場合は、期間を延長して病院での運動療法を継続します。Take home messageいかがでしたか? 今回は心リハでの運動療法と健常人が生活習慣病・心血管疾患を予防するための運動強度の決定法を中心にご紹介しました。ご自身の健康のためにも、ぜひ有酸素運動を始めてみてください。1日20~60分、と書きましたが、まずは10分でも大丈夫です。とにかく、始めることが大切。厚生労働省も『健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)』で、「+10(プラス・テン)から始めよう!」(今より10分多くからだを動かすだけで、健康寿命を伸ばせます)とうたっています。勇気を出して、まずは一歩を踏み出すことが大切ですよ。次回は、心リハの対象・プログラムの内容について具体的にお話しします。ご期待ください。<Dr.小笹の心リハこぼれ話>ケアネット読者の心リハ認知度は?2010年に行われた一般健常人5,716名を対象とした心臓リハビリの認知度に関するインターネット調査では、心臓リハビリという言葉やその内容を「知っている」と回答した人はわずか7%で、「知らない」、「聞いたことはあるが内容は知らない」と答えた人が合わせて93%であったと報告されています2)。では、ケアネット読者の心リハ認知度はどうなのでしょう。実は、この連載を開始するに当たり、2019年4月、ケアネット読者(内科医102名)に任意のアンケート調査を行いました(図2)。「心リハという言葉を知らない」と答えた医師は7%とさすがに少なかったものの、「心リハという言葉は知っているが治療内容については知らない」と答えた医師は54%でした。日本はフィットネス後進国とも言われていますが、このような状況では、日本の内科医は患者の健康はおろか、自らの健康を守ることも難しいのではないかと考えられます。医療の進歩により、生活習慣病・心血管疾患を発症しても“長生き”は当たり前になった昨今ですが、運動習慣なくして“元気に長生き”はできません! 向学心旺盛なケアネット読者の皆さんには、この連載を通じて、ぜひとも心リハの基礎知識を身に付けていただきたいと願っています。(図2)ケアネット企画・心リハについての認知度調査1)JCS Joint Working Group. Circ J. 2014;78:2022-2093.2)後藤葉一. 日本冠疾患学会雑誌. 2015;21:58-66.

5089.

HIV感染の1次治療、4剤cARTは3剤より優れるか/BMJ

 未治療のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者の治療において、4剤による併用抗レトロウイルス薬療法(cART)の効果は、3剤cARTと比較して高くないことが、中国・香港中文大学のQi Feng氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2019年7月8日号に掲載された。4剤と3剤のcARTを比較する無作為化試験は、過去20年間、継続的に行われてきた。その一方で、同時期の診療ガイドラインでは、標準的1次治療として3剤cARTが継続して推奨されており、4剤cARTへの言及はまれだという。HIV治療における4剤と3剤のcARTの有効性を比較するメタ解析 研究グループは、未治療のHIV感染患者の治療における4剤と3剤のcARTの効果を比較し、臨床および研究における既存の試験の意義を検証する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 2001年3月~2018年6月の期間に医学データベースに登録された文献を検索し、選出された研究および関連する総説の引用文献リストも調査した。 対象は、未治療のHIV感染患者において4剤と3剤のcARTを比較した無作為化対照比較試験であり、1つ以上の有効性または安全性のアウトカムの評価を行った試験とした。 関心アウトカムは、検出限界未満のHIV-1 RNA量(<50コピー/mL)、CD4陽性T細胞数(/μL)の増加、ウイルス学的失敗、新たなAIDS関連イベント、全死因死亡、重症有害事象(≧Grade 3)とした。変量効果モデルを用いてメタ解析を行った。HIV感染患者4,251例の6つのアウトカムのすべてで、両cART群に差がない 12件の試験(HIV感染患者4,251例、このうち4剤cART群1,693例)が解析に含まれた。12試験の登録患者数中央値は214例(範囲:30~1,216例)で、平均年齢が37.1歳(32.9~43.5歳)、男性割合中央値が77.1%(58~100%)、フォローアップ期間中央値は48週(48~144週)であった。 対象のHIV感染患者について、すべての有効性および安全性のアウトカムに関して、4剤cART群と3剤cART群の効果は類似していた。3剤cART群を基準としたリスク比は、検出限界未満のHIV-1 RNA量が0.99(95%信頼区間[CI]:0.93~1.05)、ウイルス学的失敗が1.00(0.90~1.11)、新たなAIDS関連イベントが1.17(0.84~1.63)、全死因死亡が1.23(0.74~2.05)、重症有害事象は1.09(0.89~1.33)であった。また、CD4陽性T細胞数増加の2群間の平均差は、-19.55/μL(-43.02~3.92)だった。 結果は全般に、cARTのレジメンにかかわらず類似しており、すべてのサブグループおよび感度分析において頑健であった。 著者は、「これらの知見は、HIV感染患者の1次治療として3剤cARTを推奨する現行のガイドラインを支持するものである」とし、「この主題に関するこれ以上の試験は、既存のエビデンスの適正な系統的レビューで新たな研究が正当化された場合にのみ行うべきであるが、新たなクラスの抗レトロウイルス薬の登場により4剤cARTが3剤cARTを凌駕する可能性を排除するものではない」と指摘している。

5090.

HR+/HER2-進行乳がんへのPI3K阻害薬alpelisib、日本人解析結果(SOLAR-1)/日本臨床腫瘍学会

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラント併用療法の有効性を評価する第III相SOLAR-1試験の日本人解析結果を、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で、愛知県がんセンターの岩田 広治氏が発表した。なお、同患者に対するalpelisib併用療法は、SOLAR-1試験の結果に基づき、2019年5月にPI3K阻害薬として初めてFDAの承認を受けている。alpelisib併用群とプラセボ群に割り付け SOLAR-1試験は、HR+/HER2-進行乳がん患者(ECOG PS≦1、1ライン以上のホルモン療法歴あり、進行後の化学療法歴なし)を対象とした国際第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。登録患者はPIK3CA遺伝子変異陽性もしくは陰性コホートに分けられ、それぞれalpelisib併用群(alpelisib 300mg/日+フルベストラント500mg/1サイクル目のみ1日目、15日目に投与、以降28日を1サイクルとして1日目に投与)とプラセボ群(プラセボ+フルベストラント)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、PIK3CA陽性コホートにおける無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、PIK3CA陰性コホートのPFS、両コホートの全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などであった。 alpelisib併用療法の主な結果は以下のとおり。・全体で572例が登録され、うち日本人は68例(PIK3CA陽性が36例、陰性が32例)。両コホートでそれぞれalpelisib併用群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた(陽性:alpelisib併用群17例 vs.プラセボ群19例、陰性:15例 vs.17例)。・日本人集団の年齢中央値は両群とも67歳。BMI中央値は25kg/m2 vs.21.4kg/m2で全体集団(26.5kg/m2 vs.26.1kg/m2)よりも低く、PS 0の割合は88.2% vs.89.5%と全体集団(66.3% vs.65.7%)よりも高かった。その他のベースライン特性は全体集団と同様であった。・PIK3CA陽性コホートにおけるPFS中央値は、全体集団ではalpelisib併用群11.0ヵ月に対しプラセボ群5.7ヵ月とalpelisib併用群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.50~0.85; p=0.00065)。これに対し日本人集団では、alpelisib併用群9.6ヵ月に対しプラセボ群9.2ヵ月と両群で差はみられなかった(HR:0.78、95%CI:0.35~1.75)。・PIK3CA陽性コホートにおけるalpelisibの曝露期間は、全体集団で平均8.0ヵ月、中央値5.5ヵ月(0.0~29.0)、平均相対的用量強度(RDI)77.8%だったのに対し、日本人集団では曝露期間の平均4.2ヵ月、中央値1.4ヵ月(0.3~21.1)、平均RDI 58.8%であった。・日本人集団において、全体集団と比較してalpelisib併用群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、皮疹(日本人集団:43.8%/ 全体集団:20.1%)、膵炎(15.6%/5.6%)、重度皮膚有害反応(9.4%/1.1%)であった。・alpelisib併用群の有害事象による治療中止は、日本人集団では全Gradeで56.3%、Grade3以上で25.0%と、全体集団(25.0%、13.0%)と比較して多く発生した。日本人集団で治療中止につながった有害事象は、高血糖症(18.8%)、皮疹(12.5%)、重度皮膚有害反応(9.4%)など。Grade3以上の皮疹は多くが14日以内に起きていた。・投与開始後8日目におけるalpelisibの血中トラフ濃度を日本人と日本人以外で比較すると、平均値474ng/mL vs.454ng/mL、中央値410ng/mL vs.442ng/mLと差はみられなかった。 ディスカッサントを務めた虎の門病院の尾崎 由記範氏は、他のPI3K阻害薬による臨床試験での重篤な皮疹の発生率は3.8~8.0%(全体集団)1)2)で、43.8%という数字は顕著に高いことを指摘。alpelisibの第I相試験で皮疹の発生は用量依存的に増加している点3)、今回のサブセット解析で最初の数週間で多く発生している点などに触れ、日本人集団での最適用量の再検討や、経口非鎮静性抗ヒスタミン薬の予防的使用の検討が必要ではないかとの考えを示した。 岩田氏は発表後の質疑において、アジア人の他のポピュレーションでは全体集団と同様の結果が得られていることを明らかにし、日本人集団を対象とした追加試験を行う必要があるとした。

5091.

非難されても致し方がない偏った論文(解説:野間重孝氏)-1081

 今回の論文評では少々極端な意見を申し述べると思うので、もし私の思い違い・読み違いだったとしたら、ご意見を賜りたくお願いしてから本題に入らせていただく。 本研究は虚血性心筋障害が疑われる患者に対して高感度トロポニンT/Iが心筋梗塞の正確な診断に利用されうるだけでなく、その予後情報としても利用できることを示そうと行われた研究である。具体的には救急外来受診時すぐに採血された値とその後一定時間をおいてから採血された2回目の採血結果を比較し、初回値だけを見るのではなく、2回目の数値を採血の間隔とも統合して見ることにより、より正確な診断のみでなく、その後の心血管イベントの発生リスクまでも予測できるとしたものである。 ここでまず重要なことは、典型的な症状を示し、心電図上明らかなST上昇が認められた症例は除外されていることである。この論文評をお読みの方の中には研修医の方もいらっしゃるのではないかと考えるので一言しておくと、2012年のESC/ACCF/AHA/WHFによる“Third Universal Definition of Myocardial Infarction”で心筋マーカーの上昇が心筋梗塞診断要件の1つとして位置付けられたことから、急性心筋梗塞の診断には心筋マーカーの上昇が必要と考え、臨床検査の結果を待とうという向きがありはしないかと懸念される。典型的症状+心電図上のST上昇は最も確実な心筋梗塞の診断であり、血液検査結果の到着を待つことなくただちに急性期治療を開始しなければならない。若い先生方、このあたりは絶対に過たないように声を大にしてお願いしたいと思う。 さて、問題は非典型例である。わが国においては、心電図変化が非典型的であったとしても心エコー図所見からasynergyがみられれば、緊急カテーテル検査を行うという方が多数派なのではないだろうか。かくいう私もそうしたほうなのだが、現在、海外では非典型例については(処置の準備をしておくことはもちろんだが)、まず検査結果をみようという向きが結構多いように感じられる。もちろんこれには純粋な科学的な理由ばかりではなく、保健医療などの問題も関係しているのではないかと推察するが…。 そこで本題であるが、そうした医療事情等の議論はさておいて、評者にはこの論文について、2つの重大な不満点がある。 第1はトロポニン測定に関する考え方がまったく述べられていないことである。 トロポニンT/IはトロポニンCとともに結合体を作り、アクチン・ミオシンへのカルシウムのコントロールをつかさどっている。これは骨格筋と同様であるのだが、トロポニンT/Iはその立体構造(conformation)が心筋固有のもの(isoform)であるため、健常時には血中にほとんど存在せず、心筋逸脱物質として取り扱うことができる。心筋に虚血性損傷が起こるとまず細胞膜に損傷が起こり、細胞液内可溶成分画内物質が逸脱する。代表的なのがCK、CK-MB、H-FABPなどである。これらがearly markerと呼ばれる。損傷がさらに進むと心筋の損傷から筋原線維タンパクが逸脱する。これらがlate markerと呼ばれ、その代表がトロポニン、ミオシン軽鎖である。すると、なぜトロポニンが早期反応物質として使用できるのかという疑問が起こるが、これには二通りの考え方がある。実はトロポニンはその6~7%が細胞質内に浮遊しており、それが測定されるのだという考え方。もう1つはmyocardiumの損傷は早期からトロポニン複合体の剥離を起こすため、測定が可能になるという考え方である。実際、トロポニンの上昇は厳密に測定すれば2層性なのだと主張する学者もいる。ちなみにearly markerといっても、必ずしもごく早期から測定できるわけではないのはCK-MBが良い例で、損傷が起こってから3~4時間を必要とする。高感度トロポニンがなぜ2時間程度から測定できるのか正確な機序はまだわかっていない。いずれにしても逸脱物質である以上、その値から心筋損傷の程度や予後を推定しようとするなら何度か測定し、AUC(area under curve)の積分値を考える必要がある。いつ起こったともわからない心筋損傷に対して、2点、それもその間隔が比較的ゆるく決められた2点の測定で代用できるというのなら、その根拠をしっかり示し、考察する必要がある。本論文ではこの点についてまったく述べられていない。学術論文では結果だけ示せばよいというものではないし、実際たまたまそうなったという可能性も否定できないのである。 なお、さきほど研修医の皆さんについて述べたが、生体内微量物質の定量とカットオフ値についての統計学的な知識については整理しておかれることを勧める。微量物質の正常値やカットオフ値の求め方について知っておくことは重要だからである。 第2点はさらに重要である。 こうしてトロポニン測定が行われた患者たちが、具体的にどのように治療されたのかという点についてまったく言及されていないのである。この論文は異常ともいえる長さのSupplementary Appendixが付けられているが、そのどこにもこうした問題についてのプロトコールが書かれていないのである(少なくともわかりやすいかたちで明記されていない)。というより、臨床試験で実患者を対象とした試験においてはこうした項目に対する記述は論文の倫理面からも結果解釈からも最重要項目の1つであるはずであるから、本文に明記されなくてはならないはずなのだが、まったく触れられていないのである。トロポニンを測定してみて、これはかなり危ないと考えられた患者もそのまま内科的に経過観察され、30日間のイベント発生に加えられたのだろうか? 加えて、本論文では心エコー図など他の検査所見についてもまったく言及されていないのである。当たり前だが、心筋梗塞の診断は血液検査のみで行うものではない。現在心筋梗塞の急性期の患者に対しては急性期インターベンションが施行されることにより、その予後が大幅に改善されることが証明されている。高名な臨床研究施設でそれぞれの倫理委員会を通った臨床研究なのだから、いい加減なやり方ではあろうはずがないと信じるが、このままの記述では人体実験が行われたと揶揄されても仕方のない論文構成ではないだろうか。 言い方は悪くなるのだが、いくつかの施設がそれぞれ自分たちのやり方で血液検査と予後調査をして、後から全体に通用させられるプロトコールを作って無理やりまとめたような印象があると言ったら少し言い過ぎだろうか? たとえば、現時点において臨床の場でトロポニンT、トロポニンIが並列的に測定されていることが多いが、それぞれの得失についての議論はまだ定まったとは言えない。実際、上昇までの時間、持続時間が微妙に異なることが知られている。また測定系の問題から、トロポニンT値からトロポニンI値を計算したり推定したりすることはできない。なぜトロポニンの研究をしようとしてトロポニンT/Iを混用したのか。各組織の都合に合わせたということではないのかというのは邪推だろうか。研究の全体像がつかみにくく、評価が難しい論文ではないかと思う。

5092.

ウェルナー症候群〔WS:Werner syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義ウェルナー症候群(Werner syndrome:WS)とは、1904年にドイツの眼科医オットー・ウェルナー(Otto Werner)が、「強皮症を伴う白内障症例(U[ウムラウト]ber Kataract in Verbindung mit Sklerodermie:Cataract in combination with scleroderma)」として初めて報告した常染色体劣性の遺伝性疾患である。思春期以降に、白髪や脱毛、白内障など、実年齢に比べて“老化が促進された”ようにみえる諸症状を呈することから、代表的な「早老症候群(早老症)」の1つに数えられている。■ 疫学第8染色体短腕上に存在するRecQ型のDNAヘリカーゼ(WRN)遺伝子のホモ接合体変異が原因と考えられる。これまで全世界で80種類以上の変異が同定されているが、わが国ではc.3139-1G>C(通称4型)、c.1105C>T(6型)、c3446delA(1型)の3大変異が症例の90%以上を占める。一方、この遺伝子変異が、本疾患に特徴的な早老症状、糖尿病、悪性腫瘍などをもたらす機序の詳細は未解明である。■ 病因希少な常染色体劣性遺伝病だが、日本、次いでイタリアのサルデーニャ島(Sardegna)に際立って症例が多いとされる。1997年に松本らは、全世界1,300例の患者のうち800例以上が日本人であったと報告している。症状を示さないWRN遺伝子変異のヘテロ接合体(保因者)は、日本国内の100~150例に1例程度存在し、WS患者総数は約2,000例以上と推定されるが、その多くは見過ごされていると考えられる。かつては血族結婚に起因する症例がほとんどとされたが、最近では両親に血縁関係を認めない患者が増え、患者は国内全域に存在する。遺伝的にも複合ヘテロ接合体(compound heterozygote)の増加が確認されている。■ 症状思春期以降、白髪・脱毛などの毛髪変化、両側性白内障、高調性の嗄声、アキレス腱に代表される軟部組織の石灰化、四肢末梢の皮膚萎縮や角化と難治性潰瘍、高インスリン血症と内臓脂肪蓄積を伴う耐糖能障害、脂質異常症、骨粗鬆症、原発性の性腺機能低下症などが出現し進行する。患者は低身長の場合が多く、四肢の骨格筋など軟部組織の萎縮を伴い、中年期以降にはほぼ全症例がサルコペニアを示す。しばしば、粥状動脈硬化や悪性腫瘍を合併する。内臓脂肪の蓄積を伴うメタボリックシンドローム様の病態や高LDLコレステロール(LDL-C)血症が動脈硬化の促進に寄与すると考えられている。また、間葉系腫瘍の合併が多く、悪性黒色腫、骨肉腫や骨髄異形成症候群に代表される造血器腫瘍、髄膜腫などを好発する。上皮性腫瘍としては、甲状腺がんや膀胱がん、乳がんなどがみられる。■ 分類WRN遺伝子の変異部位が異なっても、臨床症状に違いはないと考えられている。一方、WSに類似の症状を呈しながらWRN遺伝子に変異を認めない症例の報告も散見され、非典型的ウェルナー症候群(atypical Werner syndrome:AWS)と呼ばれることがある。AWSの中には、LMNA遺伝子(若年性早老症の1つハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候の原因遺伝子)の変異が同定された症例もあるが、WSに比べてより若年で発症し、症状の進行も早いことが多いとされる。■ 予後死亡の二大原因は動脈硬化性疾患と悪性腫瘍であり、長らく平均死亡年齢が40歳代半ばとされてきた。しかし、近年、国内外の報告から寿命が5~10年延長していることが示唆され、現在では60歳を超えて生活する患者も少なくない。一方、足部の皮膚潰瘍は難治性であり、疼痛や時に骨髄炎を伴う。下肢の切断を必要とすることも少なくなく、患者のADLやQOLを損なう主要因となる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)WSの診断基準を表1に示す。早老症候はさまざまだが、客観的な指標として、40歳までに両側性白内障を生じ、X線検査でアキレス腱踵骨付着部に分節型の石灰化(図)を認める場合は、臨床的にほぼWSと診断できる。診断確定のための遺伝子検査を希望される場合は、千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学へご照会いただきたい。なお、本疾患は、難病医療法下の指定難病であり、表2に示す重症度分類が3度または「mRS、食事・栄養、呼吸の各評価スケールを用いて、いずれかが3度以上」または「機能的評価としてBarthel Index 85点以下」の場合に重症と判定し、医療費の助成を受けることができる。表1 ウェルナー症候群の診断基準画像を拡大する図 ウェルナー症候群のアキレス腱にみられる特徴的な石灰化像 画像を拡大する分節型石灰化(左):アキレス腱の踵骨付着部から近位側へ向かい、矢印のように“飛び石状”の石灰化がみられる。火焔様石灰化(右):分節型石灰化の進展した形と考えられる(矢印)。表2 ウェルナー症候群の重症度分類 画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 薬物療法WSそのものの病態に対する根本的治療法は未開発である。糖尿病は約6割の症例に見られ、高度なインスリン抵抗性を伴いやすい。通常、チアゾリジン誘導体が著効を呈する。これに対してインスリン単独投与の場合は、数十単位を要することも少なくない。ただし、チアゾリジン誘導体は、骨粗鬆症や肥満を助長する可能性を否定できないため、長期的かつ客観的な観察結果の蓄積が望まれる。近年、メトホルミンやDPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬の有効性を示唆する報告が増え、合併症予防や長期予後に対する知見の集積が期待される。高LDL-C血症に対しては、非WS患者と同様にスタチンが有効である。四肢の皮膚潰瘍に対しては、皮膚科的な保存的治療を第一とする。各種の外用薬やドレッシング剤に加え、陰圧閉鎖療法が有効な症例もみられる。感染を伴う場合は、耐性菌の出現に注意を払い、起炎菌の同定と当該菌に絞った抗菌薬の投与を心掛ける。足部の保護と免荷により皮膚潰瘍の発生や重症化を予防する目的で、テーラーメイドの靴型装具の着用も有用である。■ 手術療法白内障は手術を必要とし、非WS患者と同様に奏功する。40歳までにみられる白内障症例を診た場合、一度は、鑑別診断としてWSを想起して欲しい。四肢の皮膚潰瘍は難治性であり、しばしば外科的デブリードマンを必要とする。また、保存的治療で改善がみられない場合は、形成外科医との連携により、人工真皮貼付や他部位からの皮弁形成など外科的治療を考慮する。四肢末梢とは異なり、通常、体幹部の皮膚創傷治癒能はWSにおいても損なわれていない。したがって、甲状腺がんや胸腹部の悪性腫瘍に対する手術適応は、 非WS患者と同様に考えてよい。4 今後の展望2009年以降、厚生労働科学研究費補助金の支援によって研究班が組織され、全国調査やエビデンス収集、診断基準や診療ガイドラインの作成や改訂と普及啓発活動、そして新規治療法開発への取り組みが行われている(難治性疾患政策研究事業「早老症の医療水準やQOL向上をめざす集学的研究」)。また、日本医療研究開発機構(AMED)の助成により、難治性疾患実用化研究事業「早老症ウェルナー症候群の全国調査と症例登録システム構築によるエビデンスの創生」が開始され、詳細な症例情報の登録と自然歴を明らかにするための世界初の縦断的調査が行われている。一方、WSにはノックアウトマウスに代表される好適な動物モデルが存在せず、病態解明研究における障壁となっていた。現在、AMEDの支援により、再生医療実現拠点ネットワークプログラム「早老症疾患特異的iPS細胞を用いた老化促進メカニズムの解明を目指す研究」が推進され、新たに樹立された患者末梢血由来iPS細胞に基づく病因解明と創薬へ向けての取り組みが進んでいる。なお、先述の全国調査によると、わが国におけるWSの診断時年齢は平均41.5歳だが、病歴に基づいて推定された“発症”年齢は平均26歳であった。これは患者が、発症後15年を経て、初めてWSと診断される実態を示している。事実、30歳前後で白内障手術を受けた際にWSと診断された症例は皆無であった。本疾患の周知と早期発見、早期からの適切な管理開始は、患者の長期予後を改善するために必要不可欠な今後の重要課題と考えられる。5 主たる診療科内科、皮膚科、形成外科、眼科(白内障)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学 ウェルナー症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ウェルナー症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)米国ワシントン州立大学:ウェルナー症候群国際レジストリー(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報ウェルナー症候群患者家族の会(患者とその家族および支援者の会)1)Epstein CJ, et al. Medicine. 1966;45:177-221.2)Matsumoto T, et al. Hum Genet. 1997;100:123-130.3)Yokote K, et al. Hum Mutat. 2017;38:7-15.4)Takemoto M, et al. Geriatr Gerontol Int. 2013;13:475-481.5)ウェルナー症候群の診断・診療ガイドライン2012年版(2019年中に改訂の予定)公開履歴初回2019年7月23日

5093.

高齢者NSCLCの1次治療、カルボプラチン+ペメトレキセドがドセタキセルに非劣性/日本臨床腫瘍学会

 高齢者の進行期非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対しては、ドセタキセル単剤(DOC)が標準治療である。一方、カルボプラチン+ペメトレキセドからペメトレキセドの維持療法(CBDCA/PEM)は、その実用性から非扁平上皮NSCLCの1次治療として多く使われており、また高齢者の進行期非扁平上皮NSCLCの第II相試験においても有効性を示している。そのような中、徳島大学の軒原 浩氏らは、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会でCBDCA/PEMのDOC単剤治療に対する非劣性を検証するJCOG1210/WJOG7813L試験の結果を発表した。対象:化学療法未治療の75歳以上のStageIII/IVまたは術後再発非扁平上皮NSCLC試験薬:カルボプラチン(AUC5)+ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと4サイクル→ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと病勢悪化まで対照薬:ドセタキセル60mg/m2 3週ごと病勢悪化まで評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効割合(ORR)、症状スコア、有害事象などCBDCA/PEMの非劣性マージンは、ハザード比(HR)1.154に設定された。 主な結果は以下のとおり。・433例がドセタキセル群217例とCBDCA/PEM群216例に無作為に割り付けられた。治療対象は両群共に214例であった。・患者の年齢中央値は両群とも78歳、男性はCBDCA/PEM群57%とDOC群58%、StageIVが75%と76%、腺がんが98%と96%であった。・OS中央値はCBDCA/PEM群18.7ヵ月、DOC群15.5ヵ月(HR:0.850、95%CI:0.684~1.056、片側p<0.0029)と、予め設定された非劣性マージン(1.154)を達成し、CBDCA/PEMのドセタキセルに対する非劣性が証明された。・PFS中央値はCBDCA/PEM群6.4ヵ月、DOC群4.3ヵ月であった(HR:0.739:95%CI:0.609~0.896)。・ORRはCBDCA/PEM群36.8%、DOC群28.2%であった(p=0.0740)。・Grade3~4の好中球減少症の発現(46.3%対86.0%)および白血球減少の発現(28.0%対68.7%)はCBDCA/PEM群で低く、Grade3~4の血小板減少の発現(25.7%対1.4%)および貧血の発現(29.4%対1.9%)はCBDCA/PEM群で高かった。また、Grade3~4の発熱性好中球減少の発現(4.2%対17.8%)はCBDCA/PEM群で低かった。

5094.

日本人高齢者の身体能力と認知症発症との関連

 身体能力を評価することは、認知症リスク評価を容易にする可能性がある。しかし、どのような身体能力が認知症発症と最も関連するかについては、明らかとなっていない。国立長寿医療研究センターの土井 剛彦氏らは、日本人高齢者における身体能力と認知症発症との関連について検討を行った。Physical Therapy誌オンライン版2019年6月4日号の報告。 本研究は、地域在住の高齢者を対象としたプロスペクティブ研究である。65歳以上の高齢者1万4,313人のうち、2011~12年に5,104人が研究参加を承諾し、そのうち4,086人(女性の割合:52%、平均年齢72.0歳)が基準を満たしていた。ベースライン時の身体能力として、握力テスト、5回椅子立ち上がりテスト(Five-Times Sit-to-Stand Test:FTSST)、Timed Up & Go Test(TUG)より身体能力レベルを収集した。各テストにおける身体能力レベルは、性別層別四分位値に基づいて、最高レベルのC1から最低レベルのC4に分類した。認知症発症に関する情報は、毎月の医療記録より収集した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中(平均期間:42.9ヵ月)に認知症を発症した高齢者は、243人(5.9%)であった。・log-rank検定では、低身体能力レベルは、認知症の重大なリスク因子であることが示唆された。・共変量で調整した後、Cox比例ハザードモデルでは、FTSST-C4群において、認知症リスクと有意な関連が認められた(ハザード比:1.69、95%CI:1.10~2.59)。・同様に、TUG-C4群においても、認知症リスクと有意な関連が認められた(ハザード比:1.54、95%CI:1.01~2.35)。・握力レベルと認知症リスクとの間に有意な関連は認められなかった。・本研究では、医療記録データの使用による制限を受けた。 著者らは「身体能力レベルの低さは、認知症リスクと関連が認められた。認知症リスクを評価する際には、身体機能の適切な評価を行うべきである」としている。

5095.

片頭痛の急性期治療、CGRP受容体拮抗薬rimegepantが有効/NEJM

 片頭痛発作の治療において、経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬rimegepantはプラセボに比べ、急性期の痛みおよび痛み以外の最も苦痛な症状の改善効果が優れることが、米国・アルベルト・アインシュタイン医学校のRichard B. Lipton氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年7月11日号に掲載された。片頭痛の成因には、CGRP受容体の関与が示唆されており、rimegepantは片頭痛の急性期治療に有効である可能性がある。本薬はトリプタンとは作用機序が異なるため、トリプタンに反応しない患者にも有効である可能性があるという。米国の49施設が参加したプラセボ対照無作為化試験 本研究は、米国の49施設が参加した多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2017年7月~2018年1月の期間に患者登録が行われた(Biohaven Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、50歳前に片頭痛を発症し、1年以上の既往歴があり、直近3ヵ月間に中等度または重度の片頭痛発作が月に2~8回発現した患者であった。被験者は、1回の片頭痛発作の治療としてrimegepant 75mgを経口投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、痛みの消失および患者が自覚する(痛み以外の)最も苦痛な症状の消失とし、いずれも投与後2時間の時点で評価した。2時間後に19.6%で痛みが、37.6%で最も苦痛な症状が消失 1,086例が登録され、1,072例(修正intention-to-treat集団、rimegepant群537例、プラセボ群535例)で有効性の評価が可能であった。全体の88.7%が女性で、平均年齢は40.6±12.0歳だった。 ベースラインの片頭痛発作の頻度は平均4.6±1.8回/月で、未治療では症状が平均32.5±22.1時間持続した。前兆のない片頭痛が734例、前兆のある片頭痛は338例であり、痛み以外の最も苦痛な症状は、光過敏が51.9%と最も多く、次いで悪心が29.6%、音過敏が15.3%であった。 投与後2時間時に、痛みが消失していた患者の割合は、rimegepant群が19.6%と、プラセボ群の12.0%に比べ有意に高かった(絶対差:7.6ポイント、95%信頼区間[CI]:3.3~11.9、p<0.001)。 また、投与後2時間時に、最も苦痛な症状が消失していた患者の割合は、rimegepant群は37.6%であり、プラセボ群の25.2%に比し有意に優れた(絶対差:12.4ポイント、95%CI:6.9~17.9、p<0.001)。 投与後2時間時の光過敏がない患者の割合(rimegepant群37.4% vs.プラセボ群22.3%、絶対差:15.1ポイント、95%CI:9.4~20.8、p<0.001)、音過敏がない患者の割合(36.7% vs.26.8%、9.9、3.2~16.6、p=0.004)、痛みが軽減(投与直前の中等度または重度の痛みが、軽度または消失)した患者の割合(58.1% vs.42.8%、15.3、9.4~21.2、p<0.001)は、rimegepant群が有意に良好であった。悪心は両群間に差はなかった。 とくに頻度が高かった有害事象は、悪心(rimegepant群1.8%、プラセボ群1.1%)と尿路感染症(1.5%、1.1%)であった。重篤な有害事象は、rimegepant群が1例(背部痛)、プラセボ群は2例(胸痛、尿路感染症)で認められた。肝機能検査では、正常上限値を超える血清アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇が、それぞれ2.4%、2.2%にみられた。 著者は、「反応の一貫性や、他の治療法と比較した薬剤の安全性および有効性を決定するために、より大規模で長期の試験を要する」としている。

5096.

小児がん、アントラサイクリンの心筋症リスクは?/JAMA Oncol

 アントラサイクリンは、小児がんに対する有効な治療薬の1つであり、ほとんどの小児腫瘍治療グループは、アントラサイクリンの血液毒性と心毒性は同等と考えている。今回、オランダ・アムステルダム大学のElizabeth A. M. Feijen氏らは小児がんサバイバーの大規模コホートのデータを解析し、「ドキソルビシンと比較してダウノルビシンは心筋症リスクが低く、エピルビシンはほぼ同等である」ことを明らかにした。また、現在の造血器ベースでのミトキサントロンのドキソルビシン用量等量比は4 vs.1とされているが、同比では、ミトキサントロンの長期心筋症リスクを有意に過小評価していると考えられる所見も明らかになったという。JAMA Oncology誌オンライン版2019年5月号掲載の報告。 研究グループは、ドキソルビシンと他のアントラサイクリン、またはアントラキノン系のミトキサントロンとの間の遅発性心筋症に関する最適用量等量を決定する検討を行った。 1970~99年にChildhood Cancer Survivor Studyで治療された2万367例、1963~2001年にオランダのChildhood Oncology Group LATER studyで診断された5,741例、および1962~2005年にSt Jude Lifetime studyで治療された2,315例から、5年以上生存した小児がんサバイバーを対象として併合解析を行った。 各薬剤(ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン)の、累積投与量と胸部放射線照射について医療記録から要約した。主要評価項目は、40歳までの心筋症であった。Cox比例ハザードモデルを用い、胸部放射線療法、がん診断時の年齢、性別およびアントラサイクリンまたはアントラキノンへの曝露を調整した心筋症リスクを評価。また、ドキソルビシンの心筋症に対する各薬剤の等量比を推定し、次いで加重平均によりすべての用量カテゴリーにわたる全体的な薬剤特異的等量比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・2万8,423例のサバイバー(女性46.4%、がん診断時年齢中央値6.1歳)のうち、9,330例がドキソルビシン、4,433例がダウノルビシン、342例がエピルビシン、241例がイダルビシン、265例がミトキサントロンを投与された。・がん診断後の追跡期間中央値20.0年で、心筋症399例が確認された。・ドキソルビシンと比較した等量比は、ダウノルビシン0.6(95%CI:0.4~1.0)、エピルビシン0.8(95%CI:0.5~2.8)、ミトキサントロン10.5(95%CI:6.2~19.1)、イダルビシンに関してはイベントがまれで推定できなかった。・線形用量反応関係に基づく比は、ダウノルビシン(0.5、95%CI:0.4~0.7)、エピルビシン(0.8、95%CI:0.3~1.4)で類似していた。

5097.

初期研修医の労働時間、大幅減でもアウトカムに関連せず/BMJ

 米国の卒後医学教育認定評議会(Accreditation Council for Graduate Medical Education:ACGME)は2003年、初期研修医の労働時間を改正した。それまでは週80時間以上、交替勤務の拘束時間は30時間以上が慣習化されていたが、週の労働時間の上限を80時間とし、交替勤務の上限は24時間(患者ケアの引き継ぎ時間は含まない)、当直勤務は3日ごと、28日間に休日4日(平均7日に1日)の義務化が課せられた。この改正の影響について、米国・ハーバード大学医学大学院のAnupam B. Jena氏らが改正前後の入院患者の30日死亡率、30日再入院率および入院費について調べた結果、初期研修期間の労働時間の大幅な削減は、医師訓練の質の低下とは関連していなかったという。BMJ誌2019年7月10日号掲載の報告。入院患者約49万例で、初期研修の労働時間改正前後のアウトカムを比較 研究グループは2000~12年の期間に、入院して一般内科医の治療を受けた65歳以上のメディケア受給者から無作為抽出(20%)した48万5,685例を対象として後ろ向き観察研究を行った。 30日死亡率、30日再入院率、入院患者のメディケア・パートB入院費用について、2003年のACGME労働時間改正後に研修を始めた1年目の内科医(2006年以降に初期研修を修了)が治療した患者と、改正前または初期研修期間の一部が改正後の1年目の内科医(2006年以前に初期研修を修了)が治療した患者とで比較した。また、入院医療の一般的な傾向に関して、この改正に関係しない上級内科医(10年目の内科医)が治療した患者を対照群として評価に加えた。統計解析には差分の差分(difference-in-differences)法を用いた。30日死亡率、30日再入院率、入院費に有意差なし 30日死亡率、30日再入院率および入院費用に関して、初期研修期間の労働時間改正による統計学的に有意な差は認められなかった。 1年目の内科医が治療した患者の30日死亡率は、2000~06年および2007~12年の期間でそれぞれ10.6%(1万2,567/11万8,014例)および9.6%(1万3,521例/14万529例)、10年目の内科医が治療した患者ではそれぞれ11.2%(1万1,018/9万8,811例)および10.6%(1万3,602/12万8,331例)であり、補正後差分の差分効果は-0.1ポイントであった(95%信頼区間[CI]:-0.8~0.6、p=0.68)。 同様に1年目の内科医が治療した患者の30日再入院率は、それぞれ20.4%(2万4,074/11万8,014例)および20.4%(2万8,689/14万529例)、10年目の内科医が治療した患者では、それぞれ20.1%(1万9,840/9万8,811例)および20.5%(2万6,277/12万8,331例)で、補正後差分の差分効果は0.1ポイント(-0.9~1.1、p=0.87)であった。 1年目の内科医が治療した患者のメディケア・パートB入院費用は、それぞれ1,161ドルおよび1,267ドル、10年目の内科医が治療した患者では1,331ドルおよび1,599ドルで、補正後差分の差分効果は-46ドル(95%CI:-94~2、p=0.06)であった。 なお、著者は研究の限界として、解析対象が入院患者のみに限定されていること、2011年のACGMEの再改正後に初期研修を修了した医師のデータが活用できていないこと、外科領域については解析していないことなどを挙げている。

5098.

反復性群発頭痛の予防にgalcanezumabが有効/NEJM

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)ヒト化モノクローナル抗体galcanezumabは、1回用量300mgを月1回皮下注射することにより、プラセボと比較して初回投与後1~3週における1週間当たりの反復性群発頭痛の頻度を減少させることが示された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのPeter J. Goadsby氏らが、反復性群発頭痛に対するgalcanezumabの安全性と有効性を検証した国際無作為化二重盲検第III相試験の結果を報告した。反復性群発頭痛は、数週間あるいは数ヵ月間毎日生じる頭痛発作を特徴とする日常生活に支障を来す神経疾患で、galcanezumabは群発頭痛を予防する可能性が示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「galcanezumabの効果の持続性と安全性を確認するため、より長期で大規模な臨床試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2019年7月11日号掲載の報告。投与後1~3週間の群発頭痛の発作頻度を評価 本研究は、欧州および北米の35施設において実施された。対象は、10~15日間のベースライン評価期間中に少なくとも隔日1回以上、計4回以上、および1日当たり8回以内の頭痛発作があり、6週間以上持続する群発頭痛の既往を有する患者であった。 galcanezumab群(1回300mg)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、ベースラインおよび1ヵ月時に皮下注射した。 主要評価項目は、初回投与後1~3週間に認めた群発頭痛の発作頻度(回/週)のベースラインからの平均変化であった。副次評価項目は、3週目の群発頭痛の発作頻度(回/週)がベースラインから50%以上減少した患者の割合とし、安全性も評価した。すべての有効性と安全性の解析は、修正intention-to-treat集団で実施された。群発頭痛の発作頻度、galcanezumab群がプラセボ群より平均3.5回/週減少 登録予定症例数は162例であったが、適格基準を満たす被験者が少なかったため、106例(galcanezumab群49例、プラセボ群57例)が無作為に割り付けされた時点で試験は中止となった。 ベースライン評価期間中の1週間当たりの群発頭痛の発作回数(平均±SD)は、galcanezumab群17.8±10.1回、プラセボ群17.3±10.1回であった。 初回投与後1~3週間の群発頭痛は、ベースラインと比較してgalcanezumab群で平均8.7回/週、対するプラセボ群で平均5.2回/週減少した(群間差:3.5回/週、95%信頼区間[CI]:0.2~6.7、p=0.04)。 3週目の群発頭痛の発作頻度(回/週)がベースラインより50%以上減少した患者の割合は、galcanezumab群71%、プラセボ群53%であった。有害事象については、galcanezumab群で8%に注射部位疼痛がみられたことを除いて、両群で重大な差は認められなかった。

5099.

抗炎症効果が期待できる高齢者に適した食事療法とは?

 血糖値低下や体重減少を目的とした食事療法は数多い。その中で、最近注目を集めているトピックスが「抗炎症」。慢性炎症は生活習慣病などにつながる可能性があり、炎症を引き起こす栄養素を避け、炎症を抑える(抗炎症)作用を持つ栄養素を取る、という考え方だ。 2019年6月に行われた第19回日本抗加齢医学会総会において「抗炎症Diet」と題するシンポジウムが行われ、抗炎症作用を踏まえた食事療法として、山田 悟氏(北里大学北里研究所病院糖尿病センター センター長)が糖質制限食、古家 大祐氏(金沢医科大学医学部 教授)が低タンパク食を、最新の研究結果と共に紹介した。糖質制限の抗炎症作用は検証できる段階にはない 山田氏は、現時点で推奨すべきは糖質制限食という考えを示した。 その理由として、・カロリー制限食は、継続がきわめて困難かつ有効性がない(2型糖尿病発症予防のための介入試験[J-DOIT3]1)において調整後に全死因死亡や主要心血管イベントの発生率を有意に低下させることが実証されたが、介入から3年後には強化治療群・通常治療群ともにBMIが増加していた)。また、フレイルやサルコペニアにつながるリスクがある・タンパク制限食もフレイルやサルコペニアのリスクがあり、とくに筋肉の落ちやすい高齢者には不適という点を挙げた。 糖質制限食は、糖尿病患者の血糖値改善効果の研究ですでに多くのエビデンスがあり、これらの無作為化比較試験をメタ解析した9件の研究においても、血糖(HbA1c)・体重・脂質すべての数値がほかの食事療法より改善した、という結果を紹介した。一方、これらのメタ解析においてLDL-C値は全般的に改善効果が低く、極端な糖質制限はコレステロール値に悪影響を与える可能性があることに注意が必要とした。そして、注目の抗炎症作用については、糖質制限食とCRP値との関連を調べた研究が数件あるものの明確な結果は得られず、期待は持てるもののまだ検証できる段階にはない、と述べた。いわゆる地中海食に腎保護作用と抗加齢につながる可能性 続いて、古家氏が低タンパク食とメタボリックヘルスとの関連を調査した結果を発表した。ショウジョウバエを使ってカロリーと寿命の関係をみた過去の研究2)では、タンパク質制限は、カロリー制限と同等の延命効果が認められた。これを踏まえ、2型糖尿病モデルラットを使い、低タンパク食と腎障害・メタボリックヘルス改善との関連についての調査を実施。24週齢で腎障害が出ているラットを通常食群(タンパク質23.84%、脂質18.80%、炭水化物59.36%、エネルギー3.55kcal/g)と低タンパク食群(タンパク質5.77%、脂質16.48%、炭水化物77.75%、エネルギー3.54kcal/g)に割り付け、20週間の介入後に各数値の変化をみた。 結果として、低タンパク食群は血糖(HbA1c)・脂質が低下し、コレステロール値では有意差はなかったものの低下した。古家氏は「低タンパク食には腎保護効果とメタボリックヘルスの改善に関連が強く、寿命延伸につながる期待がもてる」と述べた。 また、低タンパク食は長期効果を疑問視する声やフレイルやサルコペニアを招くリスクが指摘されていることから、低タンパク食の量とともに「質」についても検討を行った。赤肉を多く取ると末期腎不全・腎死のリスクが高まり、赤肉をほかのタンパク質(鶏肉・魚・卵・豆類など)に換えることでリスクが減ったことから、「赤肉を減らし、魚や植物性タンパク質を多く取る、いわゆる地中海食が腎保護作用と抗加齢につながる可能性がある」とまとめた。■「卵コレステロール」関連記事特売卵のコレステロール量は?/日本動脈硬化学会

5100.

アジア・アフリカの小児重症肺炎、原因はRSVが最多/Lancet

 肺炎は、5歳未満の子供の主要な死因とされる。米国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のKatherine L. O'Brien氏ら「Pneumonia Etiology Research for Child Health(PERCH)試験」の研究グループは、アフリカとアジアの子供を対象に、臨床所見と微生物学的所見を適用した最新の分析法を用いて検討を行い、入院を要する肺炎の多くはRSウイルス(RSV)などの少数の病原体群が主な原因であることを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年6月27日号に掲載された。7ヵ国の5歳未満を対象とする症例対照研究 研究グループは、アフリカとアジアの子供における肺炎の原因の解明を目的に、国際的な症例対照研究を実施した(ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成による)。7ヵ国(バングラデシュ、ガンビア、ケニア、マリ、南アフリカ共和国、タイ、ザンビア)の9施設が参加した。 患者登録は、2011年8月15日~2014年1月30日の期間に、各施設で24ヵ月をかけて行われた。症例は、重症または超重症肺炎で入院した生後1~59ヵ月の子供であった。対照として、各施設の周辺に居住する、年齢をマッチさせた子供を無作為に選択した。 培養法またはマルチプレックスPCR法、あるいはこれら双方を用いて、鼻咽頭および中咽頭(NP-OP)、尿、血液、誘発喀痰、肺吸引物、胸水、胃吸引物の検査が行われた。 主解析の対象は、HIV感染がなく、かつX線画像所見で異常がみられる症例と、HIV感染のない対照に限定された。ベイジアン法による部分潜在クラス分析を用い、症例と対照を合わせた個人および住民レベルの病原体の可能性を推定した。全体ではウイルスが多く、超重症例では細菌が多い、約3割がRSV 症例群4,232例および対照群5,119例が登録された。主解析には、HIV感染がなく、かつX線画像所見で異常がみられる症例1,769例(41.8%、女児44.0%)と、HIV感染のない対照5,102例(99.7%、49.7%)が含まれた。 喘鳴は、症例群の31.7%(555/1,752例)(施設別の範囲10.6~97.3%)に認められた。30日致命率(case-fatality ratio)は6.4%(114/1,769例)だった。 血液培養陽性率は3.2%(56/1,749例)であり、分離された細菌のうち最も頻度が高かったのは肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae、33.9%[19/56例])であった。 NP-OP検体のPCR検査では、ほとんどの症例(98.9%)および対照(98.0%)で、1種以上の病原体が検出された。NP-OP検体におけるRSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)、ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus)、インフルエンザウイルス(influenza virus)、肺炎球菌(S. pneumoniae)、ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b:Hib)、H.インフルエンザ菌非b型(H. influenzae non-type b)、ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)の検出は、症例の病態と関連した。 病原体分析では、原因の61.4%(95%信用区間[CrI]:57.3~65.6)がウイルスであったのに対し、細菌は27.3%(23.3~31.6)で、結核菌が5.9%(3.9~8.3)であった。一方、超重症肺炎では、重症肺炎に比べウイルスが少なく(54.5%、95%CrI:47.4~61.5 vs.68.0%、62.7~72.7)、細菌が多かった(33.7%、27.2~40.8 vs.22.8%、18.3~27.6)。 全病原体のうち、最も病因割合(aetiological fraction)が高かったのはRSV(31.1%、95%CrI:28.4~34.2)であった。また、ヒトライノウイルス、ヒトメタニューモウイルスA/B、ヒトパラインフルエンザウイルス、肺炎球菌、結核菌、H.インフルエンザ菌は、病因分布が5%以上であった。 年齢によって病因割合に差がみられた病原体として、百日咳菌(Bordetella pertussis)、パラインフルエンザ1/3型、パレコウイルスおよびエンテロウイルス(parechovirus-enterovirus)、P.イロベチイ、RSV、ライノウイルス、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎球菌があり、重症度に差がみられた病原体として、RSV、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、パラインフルエンザ3型が挙げられた。各施設の上位10種の病原体が、施設の病因割合の79%以上を占めた。 著者は、「今後の肺炎研究では、複数の病原体の関与と、肺炎の発症におけるそれらの一連の役割という困難な問題への取り組みが必要である」としている。

検索結果 合計:10331件 表示位置:5081 - 5100