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【荻野☓池野対談】第1回 世界から見た日本の“惨状”

日本の国際競争力が失われてきている――誰しも漠然とそう感じているのではないだろうか。とくにアカデミズムの分野では、その傾向が顕著だ。国別の論文発表数のランキングは年々下落し、国内大学の研究費も減少。それに伴い、若手研究者の待遇悪化や海外流出なども目立っている。こうした現状にあって、再び日本が技術開発力を持ち、イノベーションを生み出して国際社会で存在感を放つためには、どんな施策がありえるのか。日本の医学部を卒業した医師であり今は米国を拠点に活躍する、ハーバード大学の医学大学院および公衆衛生学大学院教授の荻野 周史氏とスタンフォード大学主任研究員の池野 文昭氏。ともに日米の大学・起業現場を熟知する教育者・研究者である2人が対談で語り合った。データでも肌感でも明らかに「凋落した国」池野私は日本で省庁の委員会委員や地方自治体のアドバイザリー業務をしており、月に3回程度は帰国しているので、日本の状況は空気感を含めて理解しているつもりです。データを見れば、名目GDPランキングではかろうじて世界3位(2018年)の座を保っていますが、中国との差は開くばかり。スイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)が発表する「世界競争力ランキング」では、昨年から5つ順位が下がって30位(2019年1))。1位はシンガポールで、その後に香港、米国と続き、中国は14位で韓国は28位。日本はマレーシアやタイよりも下なのです。とくに政治やビジネスの効率に対する評価がきわめて低い。「世界時価総額ランキング2)」(2019年9月)のトップ50を見ても、トヨタが38位に入っているだけで、そのほかは圧倒的に米国の会社、続いて中国系の会社が目立ちます。平成元年の時点3)では、トップ5をNTTと大手銀行といった日本企業が独占し、そのほかに27社もの日本企業が50位内にランクインしていました。当時のバブル経済の影響が大きかったとはいえるものの、この状況からはその後30年間、日本がまったく新たな産業を生み出せていないことがわかります。世界から見た日本は「急速に凋落した国」です。荻野帰国はたまに里帰りをする程度ですが、米国にいても日本の競争力が落ちていることを感じます。たとえば、ハーバードへの留学生やポスドク。日本からの応募は今でも一定数ありますが、かつてに比べ受からなくなっています。その代わり、中国人が大幅に増加しました。採用側としては、同等の学力ならコミュニケーション力が高く、国としての勢いもある中国人を採ろう、となるのです。また、日本国内における研究者や教育者のポストを見ると、待遇や裁量などの条件が米国と比べてあまりにも悪い。これでは世界で活躍している人をリクルートできません。日本から出るほうも日本に来るほうも人材が減り続け、日本がさらに世界から取り残されることを危惧しています。池野今、シリコンバレーに進出している日本の会社は約950社あるのですが、現地の人を雇おうとしても来てくれない、という話をよく聞きます。会社側は「米国企業のように簡単に首にはしない。福利厚生が手厚い」という点を売りにしているのですが、シリコンバレーで職を求める優秀な人のニーズとまったくマッチしない。GAFA(Google、Amazon.com、Facebook、Apple Inc.)に代表されるように、高い給与は当然として、新しい挑戦ができる、自分の夢をかなえられる、大きな裁量を持って働ける、といった環境を提供しないと優秀な人は雇えません。生き残ることの苦しさ・楽しさ荻野私は学生のころから病理学を研究したいと思っていました。当時、その希望をかなえるには大学院に行くというのが普通に考えて唯一の道でした。しかし、大学院に半年通って絶望しました。硬直した組織、旧態依然としたテーマ…。ここで長くはやっていられない、と危機感を持ち、考えたのが米国留学でした。渡米には研修資格取得や語学の準備などが必要で、最低1年ほどはかかる。そこで在沖縄米国海軍病院でインターンシップをしながら準備を進め、研修先の病院を見つけたのです。その後、苦労しながらもハーバードに職を得て、今に至ります。池野海外への興味は学生時代からありました。私は自治医科大学の出身で、当時の日本ではまだ僻地医療が確立していなかったので、卒業後の勤務に役立つと考え、2ヵ月間シアトルのワシントン大学で僻地医療を見学したのです。そこで、米国の自由と力強さに魅せられました。しかし、卒後は地域医療に従事する義務がありましたので米国への思いは封印し、出身地である静岡県の公務員として地域医療に従事しました。荻野それが、どうして渡米されることになったのですか?池野9年間の研修・勤務を終え、地域医療にやりがいも感じていたので、「このまま静岡の県立病院で定年まで働けばいいかな」と考えていました。それが、知り合いの医師から「米国の大学で動物実験を手掛ける医師を探している。学費も出すので行かないか」という誘いが来たのです。当時の私はスタンフォードについて詳しくは知らなかったのですが、学生の時の憧れを思い出し、何もわからないまま海を渡りました。来てみれば、周囲にノーベル賞受賞者などの有名研究者がぞろぞろいて、環境の違いに圧倒されました。「3年くらい米国を満喫したら帰ろう」と思っていたのですが、さまざまなご縁があり、米国に拠点を置いたまま今に至ります。荻野留学中は学費を払っているので、ある意味で「お客さん」ですが、仕事に就く時はご苦労があったのではないですか? 私は大変でした。6年間の研修期間中に3つの大学病院に勤務したのですが、終わり近くになると、優秀な同僚には研修先から就職のオファーが来るのです。私にも来るだろう、と待っていたのですが、まったく来ません(笑)。今から思えば実力不足だったので、当然のことなのですが、当時はショックでしたね。必死になって全米の大学に空ポジションを探したところ、私の専門に合うポジションは3つしかなくて。なんとかハーバードに職を得られたことは、本当にラッキーでした。池野私も職探しには苦労しました。渡米初年度に永住権の抽選に申し込んだら、偶然にも当たったのです。早くから就労できたのは非常に幸運だったのですが、それを知った周囲の同僚の視線がガラリと変わりました。「いつかは帰るお客さん」だったのが、職を争うライバルになったわけです。しかも、私は子供が4人おり、彼らを養いながら世界一生活費が高いといわれるシリコンバレーで生活するだけのサラリーを稼がねばならない。すべてが保障された公務員の身分を捨ててきた、という焦りもあり、そのプレッシャーはすさまじいものがありました。荻野本当にタフでないと生きていけない世界です。運よく仕事を得ても、成果を出さないと、あっという間にそこにいられなくなる。その半面、自分にしかできない成果を出していると、誰かが見て評価してくれる世界でもあります。その簡明さと働きやすさに惹かれ、今まで働き続けてきました。7人の主君を渡り歩いた藤堂 高虎4)のように、よりよい評価をしてくれるところで存分に仕事ができる点が大きいですね。こちらでは、学生時代から同じところに居続けることはマイナスになります。多くの日本人のように学生時代からずっと同じところにいると「変化を嫌い、現状維持を好む」と受け取られますし、実際にそのとおりだと思います。池野非常にドライで「アウトプットなき者は去れ」という文化ですよね。最初はそれがきつかったのですが、次第に慣れ、今ではこちらのほうが心地よくなりました。第2回に続く 参考1)https://www.imd.org/contentassets/6b85960f0d1b42a0a07ba59c49e828fb/one-year-change-vertical.pdf2)https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/ranking/?kd=43)https://diamond.jp/articles/-/177641?page=24)戦国・江戸時代の武将・大名。浅井 長政、豊臣 秀吉、徳川 家康をはじめ多くの主君に仕え、功を立てた

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アルツハイマー病患者における抗コリン薬の不適切な使用

 認知症でよくみられるアルツハイマー病は、通常、アセチルコリンレベルを上昇させる薬剤で治療を行う。コロンビア・Universidad Tecnologica de PereiraのLuis Fernando Valladales-Restrepo氏らは、アルツハイマー病と診断された患者に使用された抗コリン作用を有する薬剤の特定を試みた。Geriatrics & Gerontology International誌2019年9月号の報告。 コリンエステラーゼ阻害薬およびグルタミン酸N-メチル-D-アスパラギン酸受容体拮抗薬で治療されたアルツハイマー病外来患者を、コロンビアの国民データベースより特定し、横断的研究を実施した。抗コリン作動性負荷は、抗コリン作用評価尺度(Anticholinergic Cognitive Burden scale)を用いて評価し、抗コリン作用に応じて軽度~中等度(1~2点)または重度(3点以上)に分類した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病患者4,134例が抽出された。・平均年齢は81.50±8.16歳、女性の割合は67.8%であった。・抗コリン作用を有する薬剤を使用していた患者は、22.9%以上であった。・最も頻繁に使用されていた薬剤は、クエチアピン(8.6%)であった。・86歳以上の年齢は、抗コリン作動性負荷リスクの重度と関連が認められた(OR:2.19、95%CI:1.159~4.162)。・コリンエステラーゼ阻害薬と抗コリン薬との潜在的な相互作用は、7.8%の患者で認められた。 著者らは「抗コリン薬を使用していたアルツハイマー病患者の多くは、高齢女性であり、総抗コリン作動性負荷が大きく、コリンエステラーゼ阻害薬との薬理学的相互作用が認められた。抗コリン薬の使用は、抗認知症薬の臨床効果を低下させ、副作用のリスクを高める可能性がある」としている。

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アテゾリズマブ+化学療法の1次治療、進行尿路上皮がんのPFS改善(IMvigor130試験)/ESMO2019

 未治療の進行尿路上皮がん患者に対する、抗PD-L1抗体のアテゾリズマブとプラチナベース化学療法併用の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、スペイン・MD Anderson Cancer Center MadridのEnrique Grande氏から発表された。 本試験は日本も参加した国際共同の部分盲検の第III相比較試験である。・対象:シスプラチン投与適応または不適応の局所進行もしくは転移を有する尿路上皮がん患者1,213例・試験群:1次療法として、アテゾリズマブ+化学療法群(ATEZ併用群:451例)、およびアテゾリズマブ単剤投与群(ATEZ単独群:362例)・対照群:プラセボ+化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン/カルボプラチン)群(CT群:400例)・評価項目:[主要評価項目]ATEZ併用群とCT群における、主治医判定による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率、奏効期間(DOR)、PD-L1陽性集団におけるPFSとOS、安全性 事前に計画された統計学的な設定として、初めにATEZ併用群とCT群間のPFSを検討し、そこで有意差が検出されれば、OSの検定を実施するといった階段的な統計手法が用いられている。さらに、OSで有意差が示された場合、ATEZ単独群とCT群のOSを比較する設定となっている。 主な結果は以下のとおり。・観察期間中央値は11.8ヵ月であった。・登録全症例(ITT集団)におけるPFS中央値はATEZ併用群で8.2ヵ月、CT群で6.3ヵ月、ハザード比(HR)0.82(95%信頼区間[CI]:0.70~0.96)、p=0.007と統計学的な有意差が認められた。・ITT集団におけるOS中央値はATEZ併用群で16.0ヵ月、CT群は13.4ヵ月、HR 0.83(95%CI:0.69~1.00)、p=0.027であり、本中間解析の時点では事前に設定した水準を超えず、統計学的な有意差は認められなかった。 探索的な解析として、ATEZ単独群とCT群の比較も実施された。・ITT集団におけるOS中央値は、それぞれ15.7ヵ月、13.1ヵ月で、HR 1.02(95%CI:0.83~1.24)だった。・PD-L1陽性(IC2/3)の患者層では、ATEZ単剤群とCT群のOS中央値はそれぞれ未到達と17.8ヵ月、HR 0.68(95%CI:0.43~1.08)であった。PD-L1陽性/陰性(IC0/1)の患者層では、それぞれ13.5ヵ月と12.9カ月、HR 1.07(95%CI:0.86~1.33)だった。・各群の奏効率はATEZ併用群47%、CT群44%、ATEZ単独群23%で、そのうち完全奏効の割合はそれぞれ13%、7%、6%だった。・各群のDOR中央値はATEZ併用群8.5ヵ月、CT群7.6ヵ月、ATEZ単独群は未到達であった。・有害事象による治療中止はATEZ併用群34%、CT群34%、ATEZ単独群6%、であり、ATEZ併用群の忍容性が認められた、また、ATEZ併用群の安全性プロファイルは、これまでのそれぞれの治療薬のプロファイルと同様であり、新たな予見はみられなかった。

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学会のツイッターがバズる条件を解析【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第148回

学会のツイッターがバズる条件を解析いらすとやより使用最近、日本の学会でもTwitterで情報発信をする公式アカウントや医師が増えてきました(参考記事:学会でツイッター活用、日循の取り組みはどこまでバズったか?)。しかし、やはりスライドそのものを撮影するのは禁止されており、海外と比べてやや閉鎖的な状況が続いています。Cevik M, et al.How scientists and physicians use Twitter during a medical congress.Clin Microbiol Infect. 2019 May 16. pii: S1198-743X(19)30208-3. doi: 10.1016/j.cmi.2019.04.030.これは、ヨーロッパ臨床微生物感染症学会(ECCMID)2017・2018の2回において、NodeXL(Excelで行うことができるネットワーク分析用のオープンソースのテンプレート)を用いて、SNSデータを後ろ向きに抽出した研究です。この2回の学会開催におけるSNS活動を比較しました。その中で、バズったツイートや、リツイートが多かったツイートなどを調べ、どういうツイートが評価を得ているのか調べました。ちなみに「バズる」というのは、「SNSにおいて短期間で爆発的に話題が広がり、多くの人から注目を集めること」を意味します。天空の城ラピュタの主人公っぽく振る舞うことではありません。私も匿名でSNSをやっているのですが、学会中に流れてくるツイートを見ていると、大規模臨床試験結果の速報や、スライド画像が添付されているツイートは、バズっている印象です。2018年の学会には1万3,000人が参加しましたが、活発に学会についてツイートしていたのは、わずか591アカウントでした。2017年、18年も、全体で4,000余りのツイートが流れていましたが、18年はリツイート数が多かったという結果でした(p

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大腸がん、末梢神経障害を考えるならCAPOX3ヵ月療法

 これまでに、大腸がんに対するFOLFOX療法およびCAPOX療法の3ヵ月投与の6ヵ月投与に対する非劣性は報告されているが、オキサリプラチン併用化学療法は、末梢性感覚ニューロパチー(PSN)と関連することが知られている。国立がん研究センター東病院の吉野孝之氏らは、StageIII大腸がん患者を対象とした無作為化非盲検第III相臨床試験「ACHIEVE試験」において、長期持続性PSNの発生率は6ヵ月投与法より3ヵ月投与法で、またmFOLFOX6療法よりもCAPOX療法で、有意に低いことを明らかにした。治療期間を短縮しても有効性の主要評価項目である無病生存期間(DFS)に差はなかったことから、著者は「特に低リスクの患者には、CAPOX療法3ヵ月投与が最適な治療選択肢となるだろう」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月12日号掲載の報告。 研究グループは、StageIII大腸がん治癒切除例に対する術後補助化学療法としてのmFOLFOX6療法またはCAPOX療法について、3ヵ月投与法の6ヵ月投与法に対するDFSの非劣性を検討するとともに、持続性PSNを評価する検討を行った。 2012年8月1日~2014年6月30日に、アジア人患者1,313例を両投与法群に無作為に割り付けた。レジメンの選択は担当医の判断に委ねられた。データの解析は、2017年7月~2018年6月に行われた。 主要評価項目はDFS、副次評価項目は3年後までのPSNおよび全生存期間であった。 主な結果は以下のとおり。・無作為化された1,313例(性別:女性651例、年齢:平均66歳、範囲28~85歳)のうち、22例は治療を受けなかった(10例は登録後2週以内に治療を開始できず、7例は同意撤回、5例はその他の理由)。・治療を受けた1,291例(3ヵ月群650例、6ヵ月群641例)のうち、969例(75%)がCAPOX療法を受けた。・6ヵ月群に対する3ヵ月群のDFSのハザード比は0.95(95%CI:0.76~1.20)であった。・同ハザード比は、mFOLFOX6群で1.07(95%CI:0.71~1.60)、CAPOX群で0.90(95%CI:0.68~1.20)であり、また低リスク(TNM分類T1~3およびN1)群で0.81(95%CI:0.53~1.24)、高リスク(T4またはN2)群で1.07(95%CI:0.81~1.40)であった。・3年間持続する全GradeのPSNは、3ヵ月群9.7% vs.6ヵ月群24.3%であった(p<0.001)。・3年間持続するPSNの発現率は、mFOLFOX6療法よりCAPOX療法のほうが、3ヵ月群および6ヵ月群のいずれにおいても有意に低かった(3ヵ月群:7.9% vs.15.7%[p=0.04]、6ヵ月群:21.0% vs.34.1%[p=0.02])。

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転移TN乳がんへのアテゾリズマブの効果、PD-L1検査法が重要(IMpassion130)/ESMO2019

 PD-L1陽性の転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する1次治療として、nab-パクリタキセル(PTX)への抗PD-L1抗体アテゾリズマブの追加による臨床ベネフィットを示したIMpassion130試験。本試験におけるPD-L1陽性は、VENTANA PD-L1 SP142アッセイを用いて判定している。今回、本試験のサンプルを用いて、SP142アッセイのほか、VENTANA SP263 IHCアッセイ、Dako PD-L1 IHC 22C3アッセイでの分析結果と無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を評価したところ、SP142陽性の患者群において臨床ベネフィットが最大であることが示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が発表した。転移TNBC614例のPD-L1陽性率は、SP142陽性が46%、22C3陽性が81%、SP263陽性が75% IMpassion130は、PD-L1陽性転移mTNBCへの1次治療として、アテゾリズマブ+nab-PTXとプラセボ+nab-PTXを比較した第III相試験であり、免疫療法による臨床ベネフィットが初めて示された試験である。本試験におけるPD-L1陽性の定義は、SP142アッセイによるPD-L1免疫染色細胞が腫瘍細胞の1%以上とされ、本アッセイがアテゾリズマブ追加によるベネフィットが見込まれるmTNBC患者を決定する検査として承認されている。今回、本試験のサンプルを用いてバイオマーカーに関する探索的事後解析を実施し、SP142アッセイ、SP263アッセイ(どちらも腫瘍浸潤免疫細胞[IC]≧1%で陽性)、22C3アッセイ(複合陽性スコア[CPS] ≧1で陽性)の分析が一致するかを検討し、さらに臨床ベネフィットの予測能力について評価した。 SP142アッセイのほか、SP263アッセイ、22C3アッセイでの分析結果を評価した主な結果は以下のとおり。・PD-L1陽性mTNBC614例(ITT集団の68%)のPD-L1状態について、3種類のアッセイを使用して評価可能であった。・PD-L1陽性率は、SP142陽性が46%、22C3陽性が81%、SP263陽性が75%であった。・SP142と22C3もしくはSP263との全体的な割合の一致(overall percentage agreement)はそれぞれ64%、69%で、分析一致率は基準以下(90%未満)となり同等ではなかった。・PFSのハザード比(HR)は、SP142陽性群で0.60(95%信頼区間[CI]:0.47~0.78)、22C3陽性群で0.68(95%CI:0.56~0.82)、SP263陽性群で0.64(95%CI:0.53~0.79)、またOSでは、SP142陽性群で0.74(95%CI:0.54~1.01)、22C3陽性群で0.78(95%CI:0.62~0.99)、SP263陽性群で0.75(95%CI:0.59~0.96)であり、どちらもSP142陽性群で最も小さかった。・SP142陰性/SP263陽性群、SP142陰性/22C3陽性群では、どちらも陽性であった群に比べて、アテゾリズマブ追加によるPFSおよびOSへのベネフィットが少なかった。

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不安障害に対するベンゾジアゼピン長期使用~メタ解析

 不安障害の治療ガイドラインでは、ベンゾジアゼピン(BZD)の長期使用は認められていないが、実際の臨床現場では一般的に行われている。慶應義塾大学の新福 正機氏らは、不安障害に対するBZD長期使用に関するメタ解析を実施した。International Clinical Psychopharmacology誌2019年9月号の報告。 不安障害患者に対する13週以上のBZD長期使用における有効性を検討したランダム化比較試験(RCT)またはRCT後の維持研究を対象とし、2019年5月までに公表された研究をPubMedより検索した。その後、ベースラインからエンドポイントまでのハミルトン不安評価尺度(HAM-A)スコアの変化、すべての原因による中止、副作用、パニック発作回数に関してメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・8研究(1,228例)が特定された。・最初の8週間の治療後、BZDと抗うつ薬におけるすべての結果に、有意な差は認められなかった。・BZDのHAM-Aスコアの変化は、プラセボと比較し、有意な差が認められなかった。BZDは、プラセボよりも中止率が低く、便秘および口渇の頻度が高かった。 著者らは「最初の8週間で治療反応が認められる患者では、継続的なBZD使用の有効性および安全性は、抗うつ薬と同等であることが示唆された。しかし、研究数は限られており、BZD長期使用の有効性および安全性については、さらなる調査が必要とされる」としている。

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インフルエンザ発症リスクは喫煙者で5倍超

 喫煙者は、非喫煙者と比較してインフルエンザの発症リスクが高い可能性が示唆された。英国・ノッティンガム大学のLawrence Hannah氏らは、喫煙とインフルエンザ感染との関連をシステマティックレビューで調査し、結果をthe Journal of Infection誌2019年8月26日号に報告した。 研究グループは、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、LILACS、Web of Scienceのデータベースを、それぞれ創刊から2017年11月7日までの期間検索し、関連するランダム化比較試験、コホート研究および症例対照研究を特定した。臨床症状からインフルエンザを定義した研究6件と、検査でインフルエンザウイルスが確認された研究3件が対象とされた。 研究の質は、Newcastle-Ottawa Scaleを使用して評価され、プールされたオッズ比(OR)は、ランダム効果モデルを使用して推定された。 主な結果は以下のとおり。・9つの研究、4万685例の患者についてレビューを行った。・インフルエンザ様症状を報告した6つの研究において、現在の喫煙者は非喫煙者よりも、発症リスクが34%高かった(OR:1.34、95%信頼区間[CI]:1.13~1.59)。・検査で発症が確認された3つの研究において、現在の喫煙者は、インフルエンザ発症リスクが非喫煙者の5倍を超えていた(OR:5.69、95%CI:2.79~11.60)。

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福井大、臨床実習を「見える化」するシステムを開発・販売

 2019年9月、福井大学はICTを使った臨床実習の管理システムを開発、発売すると発表した。医学部の5、6年生が病院に出向いて行う臨床実習は、いまだに紙で管理されているケースが多い。結果として、電子カルテとの連携が限られる、管理や評価が煩雑、双方向コミュニケーションに限界がある、など多くの問題点が生じていた。 今回発表した「F.CESS(エフ・セス)」は福井大学が学内ベンチャーと共同で開発。実習スケジュール管理、実習用カルテの記載、評価、学生と教員のコミュニケーション、他科連携など、従来さまざまな手段で行われてきた臨床実習周りの機能を一元的に管理できるようにした。 学生は、策定されたスケジュールに沿って実習先に出向き、割り振られた患者のカルテを「F.CESS」経由で参照、実習が終われば専用端末から実習用カルテに学んだ内容を入力する。教員はオンライン上で実習内容を評価し、質疑応答もシステム上で完結する。学習履歴や達成度も一覧で確認できるなど、学生・教員双方にとって大きな効率改善負担軽減につながる、という。福井大学医学部附属教育支援センター長の安倍 博氏は「計画・実施・評価・改善という実習のPDCAサイクルをシステム内で完結できる」と胸を張る。 「F.CESS」を開発したきっかけについて、同大医学部長の内木 宏延氏は「臨床実習にもアウトカム(学習成果)が求められる時代。米国の医師免許資格受験時に求められる国際認証基準に対応するためにも、臨床実習を参加型に改革しなければならない。ICTはそのために必須のツール」と説明する。関連30施設との電カル連携も実現 臨床実習の管理にあたって肝となるのは、院内の電子カルテとの連携だ。セキュリティの問題から電子カルテと外部システムとの連携はハードルが高く、臨床実習においては学生が大学病院だけではなく関連病院に出向く機会も多いため、そことの連携も必要となる。大学病院と関連病院とで電子カルテの方式が異なるケースも多く、データ連携の難易度はさらに上がる。福井大学の場合も臨床実習先となる学外の関連病院は30施設にのぼるが、VPN網を使って安全にデータをやり取りできる学外病院アクセス機能を開発、実装することに成功した。 「F. CESS」は福井大学の学内版として、2018年から運用を開始。1年間の運用後に行った学生や教員へのアンケートでは、約8割がシステムについて「非常によい」または「よい」と回答した。学生からは「診療に参加している実感が持てる」「疑問点を気軽に質問できる」、教員からは「空き時間に使えるので診療の妨げにならない」「指示が出しやすい」といった声が寄せられたという。小規模大学ならではの機動性とチーム力 今回、同大が開発に至った理由について、同大医学部附属教育支援センター客員准教授 兼 日本医学教育技術研究所代表の田中 雅人氏は「どの大学でも必要性はわかっていても、他科や関連病院との連携が難しく、実現に至らないのではないか。私たちは小規模大学で縦割文化がなく、以前から教育現場とシステム開発の本学認定ベンチャーが深く関わってきたことが実現の土台となった」と述べる。 他大学へ紹介をはじめたところ関心は高く、既に複数の大学から引き合いが来ているという。AIを使って蓄積された学習データを基に学生ごとに実習内容を最適化する、看護学部や薬学部などほかの医療実習の用途にも展開する、など次のフェーズの検討もはじめている。※画像は福井大学の提供

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適切な治療法を届けたい、「バセドウ病治療ガイドライン2019」

 バセドウ病は1,000~2,000人に1人に発症する疾患であり、日常診療において遭遇率の高い疾患の1つである。なかでも、若い女性では約300人に1人が罹患しているとされ、妊娠中の検査で判明することも少なくない。 2019年5月、日本甲状腺学会によるバセドウ病治療ガイドラインが8年ぶりに改訂。本書は専門医だけではなく非専門医やそのほか医療者のバイブルになることを目的として作成されていることから、吉村 弘氏(伊藤病院/バセドウ病治療ガイドライン作成委員会委員長)に一般内科医にも知ってもらいたい改訂ポイントや「バセドウ病治療ガイドライン2019」の特徴について聞いた。バセドウ病治療ガイドライン2019はFCQを新設 今回の「バセドウ病治療ガイドライン2019」の改訂では、FCQ(Foreground Clinical Question)を新設し、クリニカルクエスチョンをFCQ6項目とBCQ(Background Clinical Question)39項目の2つに分けて記載している。これについて吉村氏は、「FCQの項を設けたガイドラインは日本では数少ない。FCQは今現在の課題や結果が出ていない事項に対して、世界中のエビデンスを基にして作成するので、ガイドライン本来の役割を果たす項である。ForegroundをMindsに従って翻訳すると“前景的”となるが、読者が意味を取りやすいよう“発展的”重要検討課題とした」と説明。なお、FCQは、推奨度を「強く推奨する」「弱く推奨する」「推奨なし」の3段階で、推奨決定のためのエビデンス総体の質(確信性)のグレードは、「強」「中」「弱」「とても弱い」の4段階で示されている。 一方、教科書的な内容を記載しているBCQは、推奨ではなく、エビデンスに基づく回答や解説などで構成されている。同氏は非専門医に向けて、「ガイドラインすべてを把握するのは労力が必要。まずは、BCQの回答と解説を熟知してほしい」とコメントした。 また、「バセドウ病治療ガイドライン2019」のBCQには妊娠中の管理はもちろんのこと、「バセドウ病患者の生活指導」「特殊な病態と合併症の治療」「手術」に関する項目が盛り込まれているほか、「ヨウ素を多く含む食品」など、BCQに該当しない内容がコラムとして記載されているので、非専門医がバセドウ病合併患者を対応する際にも有用である。「バセドウ病治療ガイドライン2019」の妊娠中の治療方針における変更点 妊娠兆候がある人は、産婦人科による甲状腺疾患の有無を確認する血液検査が必須である。そのため、同氏の所属病院には産婦人科からの紹介も多く、同氏の調べによると「不妊治療を行っている人の2~3割に甲状腺の精査が必要」という。 さらに、バセドウ病の治療は妊娠の有無にかかわらず、すべての患者に薬物治療が必要になることから、日本甲状腺学会は妊娠前~妊娠中の薬物治療への対応に注意を払っている。たとえば、今回の「バセドウ病治療ガイドライン2019」では妊娠中のバセドウ病の治療方針と管理方法(BCQ37)について、「器官形成期である妊娠4週から妊娠15週、とくに妊娠5週から妊娠9週はMMI(チアマゾール)の使用は避ける。妊娠16週以降はMMIを第一選択薬とする」と変更されている。これについて同氏は、「エビデンスを検索するかぎり、MMIの影響については妊娠10週までしか報告されていない。しかし、一般的な薬物の影響を考慮して、「バセドウ病治療ガイドライン2019」では妊娠5~15週でのMMIの使用回避を記載した」と改訂時の留意点をコメント。加えて、「バセドウ病の場合は、永続的に疾患と付き合っていかなければならず、挙児希望のある患者、とくに131I内用療法後の男性への指導については現時点ではエビデンスが乏しいため、FCQ6に対応法を盛り込んだ」と述べた。 最後に同氏は「FCQ2、4、6は、とくに重要な項目なので注目してほしい」と強調した。<バセドウ病治療ガイドライン2019の主な変更点>FCQ1:妊娠初期における薬物治療は、第一選択薬として何が推奨されるか?(変更前)推奨なし・MMIは妊娠4~7週は使用しないほうが無難(変更後)抗甲状腺薬が必要な場合はPTU(プロピルチオウラシル)を使用、MMIは妊娠5週0日から9週6日まで避けるべきFCQ2:無顆粒球症にG-CSFは推奨されるか?(変更前)推奨なし(変更後)無症候性で顆粒球数100/μL以上では低用量のG-CSFを外来で試験投与可能、顆粒球数100/μL未満は入院のうえ高用量のG-CSF投与が推奨FCQ3:抗甲状腺薬服薬中および治療後にヨウ素制限を行うか?(変更前)食事性ヨード摂取の制限を勧める必要はない(変更後)行わないFCQ4:18歳以下のバセドウ病患者に131I内用療法は推奨されるか?(変更前)慎重投与[他の治療法が選択できないとき](変更後)6~18歳以下でほかの治療法が困難である場合のみ容認、5歳以下は禁忌FCQ5:授乳中のバセドウ病患者にMMI、PTU、無機ヨウ素は推奨されるか?(変更前)PTU300mg/日以下、MMI10mg/日以下であれば授乳を制限する必要はない(変更後)PTU、MMIは変更なし、治療量の無機ヨウ素薬は可能な限り避けるFCQ6:131I内用療法後、挙児計画はいつから許可するか?(男性の場合)(変更前)推奨なし、6ヵ月以上期間を置く(変更後)4ヵ月過ぎてからの挙児計画推奨[強い]、6ヵ月過ぎてからの挙児計画推奨[弱い]

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オピオイド誘発性便秘わが国の実態(OIC-J)/Cancer Medicine

 オピオイド誘発性便秘(OIC)は、オピオイド疼痛治療で頻繁にみられる副作用だが、その発生率は報告によりさまざまで、十分に確立されているとはいえない。この発生率のばらつきは、臨床試験および横断研究におけるOICの診断基準の複数があることも要因である。 近年、大腸疾患の基準であるRome IVがOICの基準に取り入れられた。そのような中、Rome IV基準を用いた日本人がん性疼痛患者におけるOICの発生率を検討した多施設共同前向き観察研究の結果がCancer Medicine誌8月号で発表された。 対象は、オピオイド疼痛治療を行っている安定した⽇本⼈がん患者(20歳以上、ECOG PS0〜2、便秘なし)。主要評価項目はROME IV診断基準によるOIC発症割合(14日間の患者の日記入力による)。副次評価項⽬は、Bowel Function Index(BFI、スコア28.8以上)、⾃発的排便回数([spontaneous bowel movement、以下SBM]、週3回以下)、医師診断によるOIC発症割合、および予防的便秘薬投与の有無によるOICの回数である。観察期間中の便秘治療は許容されていた。 主な結果は以下のとおり。・2017年1月5日~2018年1月31日に220例の患者が登録された。・平均モルヒネ相当量は22mg/日であった。・Rome IV基準によるOICの累積発生率は56%であった(95%CI:49.2〜62.9)。1週目の発生率は48%、2週目では37%であった。・予防的便秘薬を投与された患者のOICの累積発生率は48%(38.1〜57.5)で、投与されなかった患者65%(55.0〜74.2)に比べて低かった。・Rome IV以外の診断基準を用いた2週間累積OIC発症率は、BFIで59%(95%CI:51.9~66.0)、SBMで45%(95%CI:38.0~51.8)、医師診断61%(95%CI:54.3~68.1)であった。 オピオイド開始前の週あたりのBMの頻度は、OICの発生に最も影響力のある因子であった。便秘症に対する予防薬の利用は、OICの発生率の減少に対する中程度の効果と関連していた。報告されたOICの発生率は、関与する診断ツールに応じて変動した。

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転移TN乳がん、GEM/CBDCAにtrilaciclib追加でOSが大きく改善/ESMO2019

 強力なCDK4/6阻害薬であるtrilaciclibは、その作用機序および前臨床試験から骨髄毒性の抑制および抗腫瘍作用の改善効果が期待されている。今回、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する多施設無作為化非盲検第II相試験において、ゲムシタビン/カルボプラチン(GEM/CBDCA)にtrilaciclibを追加することにより、全生存期間(OS)を有意に改善したことが報告された。一方、主要評価項目である好中球減少症の有意な抑制効果は示されなかった。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Texas Oncology-Baylor Sammons Cancer CenterのJoyce O'Shaughnessy氏が発表。なお、本試験結果はLancet Oncology誌オンライン版9月28日号に同時掲載された。・対象:再発/転移乳がんに対して0~2レジメンの化学療法を受けたmTNBC患者・試験群:以下の3群に無作為に割り付け グループ1:GEM/CBDCA(Day1、8) 34例 グループ2:GEM/CBDCA(Day1、8)+trilaciclib(Day1、8) 33例 グループ3:GEM/CBDCA(Day2、9)+trilaciclib(Day1、2、8、9) 35例 病勢の進行(PD)もしくは不耐の毒性発現まで21日ごとに投与・評価項目: [主要評価項目]GEM/CBDCAによる好中球減少症の抑制(1サイクル目におけるGrade4の好中球減少症の期間、治療期間におけるGrade4の好中球減少症の発症) [副次評価項目]奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、OSなど 主な結果は以下のとおり。・52.0%がECOG PS 0、37.3%が化学療法を受けていた。・追跡期間中央値は10.5ヵ月(範囲:0.1~25.8ヵ月)であった。・薬物曝露期間の中央値は、グループ1(3.3ヵ月、4サイクル)に比べ、グループ2(5.3ヵ月、7サイクル)およびグループ3(5.5ヵ月、8サイクル)で延長した。・1サイクル目のGrade4の好中球減少症の平均日数、治療期間におけるGrade4の好中球減少症の患者割合とも有意な差がみられず、trilaciclibによる骨髄抑制の有意な改善は認められなかった。・ORRは、グループ1の33.3%に対して、グループ2(50.0%)、グループ3(36.7%)とも有意な差はなかった。・PFSは、グループ1に対してグループ2(HR:0.60、95%信頼区間[CI]:0.30~1.18、p=0.13)およびグループ3(HR:0.59、95%CI:0.30~1.16、p=0.12)で有意な改善は認められなかったが、グループ2と3の合計では改善傾向がみられた(HR:0.59、95%CI:0.33~1.05、p=0.063)。・OSは、グループ1に対してグループ2(HR:0.33、95%CI:0.15~0.74、p=0.028)、グループ3(HR:0.34、95%CI:0.16~0.70、p=0.0023)、グループ2と3の合計(HR:0.36、95%CI:0.19~0.67、p=0.0015)とも有意に改善した。・trilaciclib関連の重篤な有害事象はみられなかった。

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第29回 検脈法ふたたび~“妙技”をブラッシュアップせよ【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第29回:検脈法ふたたび~“妙技”をブラッシュアップせよここしばらく『心電図の壁』のエッセイや『空飛ぶ心電図』での対談などの企画が続きましたが、久しぶりに“いつもの”心電図レクチャー形式に戻りましょう。今日にでも出会いそうな症例を題材に、心電図クイズに続いて、心拍数の計算法に関して再考します。Dr.ヒロの最近の“気づき”を皆さんはどう考えるかなぁ。では、はじめましょう!症例提示64歳、男性。関節リウマチ、COPD(チオトロピウム吸入、テオフィリン内服)にて通院中。主訴は発熱と労作時呼吸苦。3月某日、定期受診当日の夕方より熱発、翌日いったん解熱するも再発した。息切れも増強したため来院した。やせ型。体温38.4℃、血圧145/87mmHg、脈拍103/分・整、酸素飽和度91%(室内気吸入)だが軽労作にて容易に80%台前半となる。WBC:18,720/μL、CRP:>20mg/dL。胸部X線で右下肺野の透過性低下あり。インフルエンザ迅速検査は陰性。受診時の心電図を示す(図1)。(図1)救急受診時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として正しいものを2つ選べ。1)心房細動2)右軸偏位3)左房拡大4)時計回転5)ST低下解答はこちら2)、4)解説はこちらCOPDの典型的な身体所見(やせ型、男性、熱発、呼吸困難)ですね。多くの方が、上気道感染や肺炎などによる急性増悪を第一に考えると思います。それでOKですが、こんな時でも心電図はとられるわけで、その読みを問うています。ええ、もちろん「系統的判読」です(第1回)。1)×:「心房細動」の診断基準を復習しましょう。「R-R不整」と「洞性P波を欠く代わりにf波(細動波)」でしたね(第4回)。一見してR-R間隔は整で、II誘導などでQRS波の手前に明瞭なP波がコンスタントに確認できます。2)○:QRS電気軸の定性判定は、IとaVF(またはII)誘導に着目でした(第8回)。I:下向き、aVF(II)誘導:上向きのパターンは「右軸偏位」ですね。QRS波高が変動*1して、やや難しいですが、“トントン法Neo”を駆使して「+100°」ないし「+105°」(“トントン・ポイント”はIと-aVR間でI寄り)と言えたら最高です(第11回)。3)×:これはDr.ヒロお得意の“左右違い”(笑)。正解は「右房拡大」です。診断基準を整理しておきましょう(図2)。(図2)右房拡大の診断基準画像を拡大する教科書そのほかでは、「II、III、aVF、V1、V2*2のいずれかの誘導でP波高2.5mm以上」という基準がよく示されますが、これはかなりハードルが高く、めったに満たしません。「右房拡大」ではP波が“ホッソリ”かつ“ツンッ”と尖った形になることが一番の特徴なので(尖鋭化)、こうした“人相”ならぬ“波相”にまず反応しましょう。その上でどれか1つでもP波が2mm以上なら積極的に診断する姿勢をボクは推奨しています。4)○:正常ではV1からV6誘導に向かうにつれてR波は増高、S波は減高してゆき、真ん中(V3~V4)あたりで入れ替わります(移行帯)。V5誘導時点でも“下向き”(R<S)な場合に「時計回転」と言います。いくつか原因があり、その一つは今回のようなCOPDなどの慢性肺疾患です。5)×:ST偏位は、基線(T-P/T-QRS/Q-Qライン)に対するJ点(QRS波の「おわり」)の相対位置で決まります(第14回)。“(スター)ト”のプロセスでは、目の“ジグザグ運動”で肢誘導から胸部誘導まで漏れなくST偏位をチェックしましょう。本例ではST低下・上昇いずれもありません。*1:V1誘導でとくに顕著なQRS波高の変動(QRS amplitude variation)は「呼吸」による影響が強いとされ、3秒強のサイクルは呼吸促迫状態なのかとボクなら推察します。QRS波が減高する部分が吸気相に一致し、その際、膨張した肺によりV1誘導が心臓から最も遠ざかることで理解されるようです。*2:ニサンエフ(下壁誘導)は“兄弟”で、V1とV2は“お隣さん”のイメージ。ともに波形が類似すること多し。【問題2】自動診断は「高度な頻脈」となっているが、正確な調律診断は何か? 具体的な心拍数とともに述べよ。解答はこちら135/分(新・検脈法)、洞(性)頻脈解説はこちら心電図に自信のない人がついつい頼ってしまいがちな自動診断。これを見ることについて、基本的にボクは全然OKだと思います。慣れないうちは、自分なりの判読に漏れがないかのチェックにも使えるので、積極的に“カンニング”しようと薦めているくらいです(笑)。ただし、以前よりだいぶ精度が上がっているとはいえ、機械は“万全”ではないのです。この方の自動診断には「高度な頻脈」の記載があるだけで、そのほか調律に関係するものはありません。自身で判定する際には基本に忠実に、はじめの“レーサー(R3)・チェック”を適用すれば答えは簡単です。正確に調律診断をすることも大切ですが、今回は心拍数の計算法に関して“検脈法”から最近感じたことを述べたいと思います。“「高度な頻脈」に喝!”皆さんが普段使っている心電計は、大半が国産メーカー製のはず。そこでしばしば見られる「高度な頻脈(または徐脈)」という診断表示*3は、心拍数がおおむね「120/分超」か「40/分未満」の時に出ることが多いようです。ただ、この「高度な~」は、調律でも不整脈の名称でもないんです。穏やかな日曜の朝、スポーツ選手のプレイに「喝!」という長寿番組がありますが(笑)、Dr.ヒロ的にはこの表現に“喝”!…これは「診断」ではありません。以前から言いたかったのはこのことだったんです。「調律」と「心拍数」は常にセットです。基本調律を述べずに心拍数の速い・遅いだけを宣言するような診断と、ほかの心電図所見を同列で語るから紛らわしくなるのです。機械(≒心電計)が診断できない時こそ人間の目が必要なんです。R-R間隔は整で5mm四方の太枠マスがほぼ2つ分ですから、“300の法則”(第3回)的には150/分に近い「頻脈」です。しかも、“イチニエフの法則”(第2回)にピッタリのP波がコンスタントにいるから…そう、「洞調律」ですね。2つをあわせて「洞(性)頻脈」*4、これが正しい調律診断です。*3:「極端な」という表現を用いるメーカーもあり。*4:循環器学用語集(第3版)では「性」はなく「洞頻脈」が「sinus tachycardia」の正式な表現とされる。“あとは心拍数を求めよう”「心拍数○○/分の洞(性)頻脈です」こう述べるべく、あと知りたいのは心拍数の数字だけ。“ドキ心”レクチャー受講生なら、“検脈法”でしょ。R-R間隔が整なら肢誘導か胸部誘導のどっちか片方(5秒間)かでQRS波を数えればいいわけでした(第3回)。肢誘導に11個、胸部誘導に12個とカウントすれば、132/分(肢誘導のみ)、144/分(胸部誘導のみ)、138/分(肢誘導+胸部誘導)のいずれかの数値となるでしょう。いずれの方法でも、心拍数は「130~140/分」程度だとわかります。検脈法を用いる時、“不整脈”がある場合は基本的に10秒間カウントすべし、というのがDr.ヒロ流。ここで言う「不整脈」とは、R-R間隔の整・不整ではなく“レーサー・チェック”の3項目のいずれかが正常でない場合*5を想定しています。ですから、通常の検脈法では、138/分、四捨五入して「心拍数約140/分の洞(性)頻脈です」と述べることになるでしょう。基本的にはこれで正解です。*5:今回は心拍数が「50~100/分」の正常範囲から外れるので「不整脈」に該当すると考えて欲しい。“両端が気になって仕方ない”「高度な頻脈(徐脈)」に対するネガティブ・キャンペーンと正しい調律診断をしてレクチャーを終えてもいいのですが、ボクが本当に伝えたいことは別にあります。検脈法を適用していたある日、ふと“端っこ”が気になったんです。肢誘導と胸部誘導から一つずつ、今回の心電図からIII誘導とV4誘導を抜き出してみましょう(図3)。(図3)気になる“両端”の心拍たち画像を拡大するオリジナルの検脈法では(1)、(3)、(4)は1個のQRS波とカウントし、(2)はノーカウントになります。一部分しかなくても、1周期まるまるある心拍と同じ扱いでいいんだろうか…そう悩んだのです。“両端が気になったワケ”以前から検脈法で求めた心拍数と心電計の表示する値とが、まぁまぁズレるなぁと感じる時がありました。たとえば次の心電図を見てください(図4)。(図4)検脈法の“弱点”?画像を拡大する肢誘導にはQRS波が4つあります。一方、胸部誘導のほうはどうかと言うと、最後の最後にちぎれた“見切れ”QRS波がありますね。これをどうカウントしますか? オリジナル検脈法では、これも立派に「1拍」とカウントして、4+4で計8個、これを60秒(1分)に換算して「48/分」です。一方の自動診断では「43/分」となっています。「検脈法」は驚くほどに正確な心拍数を提供してくれるんです、大半のケースでは。その“実力”を知っているがゆえ、ボクにはこのズレが大きく感じるのです。“たかが5”とはいえ、48と43の差は“されど5”と感じてしまうのはビビリだから?…いや否。なんとかこれを乗り越えようと、最近になってオリジナル検脈法を“改良”することにしたのです。名付けて“新・検脈法”。■新・検脈法のルール■1)「QRS-T」全体を“1組”として心拍と見なし、一部でも欠けていたらQRS波0.5個とカウントする2)「P波だけ」はカウントしない心拍数が1分間の「心室」拍動回数である以上、P波は無視してQRS波+T波に注目しようと思いました。心室の脱分極・再分極を表して常に“2つで1組”の「QRS-T」を“1心拍”とみなすルールです。ほんのちょびっと見切れていても、9割方あり残りわずかに足りない場合でも“恨みっこなし”。すべて「0.5個」分の心拍と数えるのがミソです。もう一度、心電図(図4)に戻りましょう。肢誘導と胸部誘導の境界はIIとV2間の微妙なギャップ部分であり、このラインまでに肢誘導4拍目はT波の“おわり”がギリギリ滑り混んでいますから、肢誘導のQRS数は4個でOKです。一方の胸部誘導は“見切れている”最後の1拍は“半分カウント”ですから「3.5個」です。4+3.5で計「7.5個」と考えれば…そう心拍数は「45/分」です。これで心電計の数値との差が2に縮まりました。これならDr.ヒロ的にも許容範囲です。今回の心電図(図1)に対しても“新・検脈法”を用いてみましょう。図3の(1)、(3)は「1個」、(2)は「0個」、そして(4)は「0.5個」分の心拍となります。すると肢誘導11個、胸部誘導11.5個(最後だけ0.5個)となるので、全部で22.5個と思えば、6倍して…「135/分」。なんと心電計の計算にぴったり一致しました! ちなみに、0.5があっても、6倍ないし12倍で算出するため、“新・検脈法”による心拍数は必ず整数で算出されるので安心です。“腕比べをやってみた”Dr.ヒロのふとした妄想から誕生した“新・検脈法”ですが、本当か?…そう悩んだらほかの人に相談するより、まず自分で確かめるまで決して納得しないのがDr.ヒロの悪いところ(笑)。心拍数に関しては、心電計の計算値が常に正しいと考えて、数千にも及ぶ“杉山ライブラリー”の心電図から抽出した計100例(洞調律45例、期外収縮20例[PAC:10例、PVC:10例]、心房細動20例、その他15例)を用いて“腕比べ”をしてみました。「しかし、果たしてそこまでやる必要あるの?」という批判も聞こえてきそうですが…その結果を表にして示します(表1)。(表1)画像を拡大する皆さんは結果をどう見ますか? 平均値、中央値や最大・最小値どれをみても“イイ線いってる”感じです。“半分(0.5個)カウント”の影響か、新・検脈法のほうがオリジナルの検脈法よりも小さい値で見積もるようです。フィッティングに関しては、最終列の「決定係数」、いわゆるR2値を見ると、両者とも99%以上の高精度の予測能力があると言えますでしょうか。煩雑さの面では、オリジナル法よりも“一手間”加わる新・検脈法の方でわずかにR2値が高く見えてしまうのは開発者の性、いや“親心”でしょうか。でも、こうした結果を得るちょっと前から、臨床研究で心電図を扱う場合にも、ボクは手動計算の心拍数値は新・検脈法で求めるようにしています。あくまでも印象として、こちらのほうが従来法よりも精度が上がっている気がするからです。皆さんはどう思われるでしょうか? “新・検脈法”に関するご意見・ご感想をお寄せいただけたら嬉しいです。Take-home Message「高度な頻脈(徐脈)」という診断は不要!~調律と心拍数で表現せよ。「T-QRS」を1組と見て“見切れQRS波”を「0.5拍」でカウントする“新・検脈法”が多少手間でも有用かも!?【古都のこと~随心院門跡~】随心院門跡(山科区)は、古来より「小野郷*1」として、そして現在も小野と呼ばれる場所にあり、地下鉄(東西線)に乗れば市内中心部から30分程度で行くことができます。正暦二年(991年)、“雨僧正”仁海(にんがい)*2の開基とされ、もとは牛皮山曼荼羅寺*3と言ったそう。その後、増俊阿闍梨(ぞうしゅんあじゃり)が曼荼羅寺(まんだらじ)の子房として随心院を建立し、後堀河天皇から宣旨を受け「門跡」となりました(寛喜元年:1229年)。総門をくぐってすぐ右方には「小野梅園」があり、ここもオススメ観梅スポットの一つです(早春以外も緑が溢れる)。長屋門から入って庫裡(くり)を通って書院の襖絵や調度品を楽しみ、普段は開かない薬医門を内側から眺めると独特の趣を感じました。回廊を少し歩けばお目当ての庭が姿を現します。コンパクトながら池をたずさえ、縁側から見える奥深い緑の景色が実に目に映えます。さぁ、これからは紅葉シーズン。あまり人混みのない“ひっそり系”ながら、母親への愛情に溢れた由緒ある寺院に一緒に来られたら、良い親孝行になるでしょう。*1:三宅八幡宮(左京区上高野)の回で登場した「小野郷」とは異なる。*2:宮中からの勅命でしばしば請雨の法を行った。“雨降らし”の達人の意味か。*3:仁海僧正は一夜の夢に牛に生まれ変わった亡母を見て、飼養したが日なくして死んだ。それを悲しみ、その皮に両界曼荼羅の尊像を描いて本尊にしたことにちなんだ名称。

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糖尿病と食道腺がんリスク(プール解析)/Cancer

 糖尿病とさまざまながんの関係が研究されているが、食道/食道胃接合部の腫瘍との関係は明らかになっていない。米国国立がん研究所(NCI)のJessica L. Petrick氏らは、2,309例の食道腺がん(EA)、1,938例の食道胃接合部腺がん(EGJA)、1,728例のバレット食道(BE)、および1万6,354例の対照を含む、国際バレットおよび食道腺がんコンソーシアム(International Barrett's and Esophageal Adenocarcinoma Consortium:BEACON)の13の研究データを統合し、糖尿病とEA、EGJA、BEの関連についての研究固有のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を、ロジスティック回帰を用いて推定した。Cancer誌オンライン版2019年9月6日号掲載の報告。 主な結果は以下のとおり。・糖尿病によるEAリスクのオッズ比は1.34(95%CI:1.00~1.80、I2=48.8%)、EGJAリスクのオッズ比は1.27(95%CI:1.05~1.55、I2=0.0%)、EAとEGJAを合わせたリスクのオッズ比は1.30(95%CI:1.06~1.58、I2=34.9%)であった。・胃食道逆流症状がある患者では、糖尿病によるEA/EGJAのリスクはさらに増加し、オッズ比は1.63(95%CI:1.19~2.22、交互作用のp=0.04)であった。・胃食道逆流症状がない患者では、糖尿病とEA/EGJAリスクとの関連はみられなかった(OR:1.03、95%CI:0.74~1.43)。・糖尿病とBEの間に一貫した関連性はみられなかった。

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PPCI前の遠隔虚血プレコンディショニング、STEMI予後に有意義か/Lancet

 プライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PPCI)を受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者では、PPCI前に遠隔虚血コンディショニング(remote ischaemic conditioning:RIC)を行っても心臓死/心不全による入院は減少しないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDerek J. Hausenloy氏らが行ったCONDI-2/ERIC-PPCI試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月6日号に掲載された。RICは、上腕に装着したカフの膨張と解除を繰り返すことで、一時的に虚血と再灌流を引き起こす。これにより、PPCIを受けるSTEMI患者の心筋梗塞の大きさが20~30%縮小し、臨床アウトカムが改善すると報告されていたが、十分な検出力を持つ大規模な前向き研究は行われていなかった。欧州4ヵ国33施設の医師主導無作為化試験 本研究は、英国、デンマーク、スペイン、セルビアの33施設が参加した医師主導の単盲検無作為化対照比較試験であり、2013年11月~2018年3月の期間に患者登録が行われた(英国心臓財団などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、胸痛がみられてSTEMIが疑われ、PPCIが適応とされた患者であった。被験者は、PPCI施行前にRICを行う群または標準治療を行う群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 RIC群では、上腕に装着した自動カフの膨張(5分間)と収縮(5分間)を交互に4回繰り返すことで、間欠的に虚血と再灌流を誘発した。英国の施設のみ、対照群にシャムRICを行った。 データ収集とアウトカムの評価を行う医師には、治療割り付け情報がマスクされた。主要複合エンドポイントは、12ヵ月後の心臓死と心不全による入院の複合とし、intention-to-treat解析を行った。新たな心臓保護の標的の特定が必要 5,115例(intention-to-treat集団)が登録され、RIC群に2,546例(平均年齢63.9[SD 12.1]歳、女性24.0%)、対照群には2,569例(63.1[12.2]歳、22.4%)が割り付けられた。 12ヵ月後の主要複合エンドポイントの発生率は、RIC群が9.4%(239/2,546例)、対照群は8.6%(220/2,569例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.10、95%信頼区間[CI]:0.91~1.32、p=0.32)。 同様に、12ヵ月後の心臓死(3.1% vs.2.7%、HR:1.13、95%CI:0.82~1.56、p=0.46)および心不全による入院(7.6% vs.7.1%、1.06、0.87~1.30、p=0.55)にも、両群間に差はみられなかった。 事前に規定されたサブグループ解析では、年齢、糖尿病の有無、PPCI前のTIMI血流分類、梗塞部位、first medical contact to balloon timeの違いによる主要複合エンドポイントの発生に関して両群間に有意な差はなかった。 主要複合エンドポイントのper-protocol解析の結果も、intention-to-treat解析ときわめて類似しており、両群間に差はなかった(RIC群9.0% vs.対照群8.1%、HR:1.11、95%CI:0.90~1.36、p=0.35)。 30日以内の心臓死と心不全による入院の複合、および個々のイベントの発生には両群間に有意差はなく、30日以内の主要心血管イベント/脳有害事象(全死因死亡、再梗塞、予定外の血行再建、脳卒中)、および個々のイベントの発生にも差はなかった。また、12ヵ月以内の植え込み型除細動器の施術の頻度にも差は認められなかった。 また、試験治療関連の予想外の有害事象はみられなかった。RIC群で皮膚点状出血が2.8%、一過性の疼痛や知覚障害が5.8%で報告された。有害事象による治療中止はなかった。 著者は「RICは、STEMI発症後の臨床転帰改善の最も有望な心臓保護戦略であり、他の選択肢は少ない。それゆえ、新たな心臓保護の標的を特定し、複数の標的への併用治療のような革新的な保護アプローチを開発するために、新たな研究を要する」としている。

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H. pylori除菌と栄養補助、胃がん抑制に効果/BMJ

 2週間のHelicobacter pylori除菌治療と7年間のビタミンまたはニンニクの補助食品による3つの介入は、それぞれ22年以上にわたり胃がんによる死亡のリスクを有意に改善し、除菌とビタミン補助は胃がんの発生も抑制することが、中国・Peking University Cancer Hospital and InstituteのWen-Qing Li氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年9月11日号に掲載された。H. pylori感染は胃がんの確立されたリスク因子であり、その除菌は胃がんの予防戦略となりうる。一方、胃がんの予防におけるH. pylori除菌治療の効果の持続期間や、関連のあるすべての有益な作用および有害な作用を知るには、長期の追跡調査を要する。胃がんに及ぼす栄養補助食品の効果の評価にも長期の調査が必要とされている。中国の地域住民を対象とする要因デザインの無作為化試験 研究グループは、H. pylori除菌および栄養補助による胃がんの予防効果を評価する目的で、プラセボ対照無作為化試験を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 対象は、中国山東省臨ク県の胃がんリスクが高い地域の住民3,365例であった。このうち、H. pylori抗体が血清学的陽性の2,258例は、2×2×2要因デザインにより、H. pylori除菌、ビタミン補助、ニンニク補助、それぞれのプラセボに無作為に割り付けられた。また、H. pylori抗体が血清学的陰性の1,107例は、2×2要因デザインにより、ビタミン補助、ニンニク補助、それぞれのプラセボに無作為に割り付けられた。 H. pylori除菌治療では、アモキシシリン+オメプラゾールが2週間投与された。ビタミン補助はビタミンC、Eとセレニウムが、ニンニク補助はニンニク抽出物とニンニク油が、7.3年間投与された(1995~2003年)。 主要アウトカムは、2017年まで定期的に行われた胃内視鏡検査で同定された胃がんの累積発生率と、死亡証明書と病院記録で確定された胃がんによる死亡とした。副次アウトカムは、胃がん以外のがんや心血管疾患などの他の原因による死亡であった。H. pylori除菌の効果は、比較的早期に発現 1995~2017年の期間(フォローアップ期間22.3年)に、151例の胃がんが発生し、94例が胃がんで死亡した。このうちベースラインでH. pylori陽性であったのは、それぞれ119例(79%)および76例(81%)だった。 H. pylori除菌治療による胃がん発生の保護効果は介入後22年間持続した(オッズ比[OR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.32~0.71、p<0.001)。また、ビタミン補助により、胃がん発生は有意に減少したが(0.64、0.46~0.91、p=0.01)、ニンニク補助に有意な保護効果は認められなかった(0.81、0.57~1.13、p=0.22)。 3つの介入はいずれも、胃がんによる死亡を有意に抑制した(H. pylori除菌治療の完全補正後ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.39~0.99、p=0.05、ビタミン補助の完全補正後HR:0.48、0.31~0.75、p=0.001、ニンニク補助の完全補正後HR:0.66、0.43~1.00、p=0.05)。 胃がんの発生と死亡の双方に及ぼすH. pylori除菌治療の効果と、胃がんによる死亡に及ぼすビタミン補助の効果は比較的早期に認められたが、胃がんの発生に及ぼすビタミン補助とニンニク補助の効果の発現には時間を要した。 全死因死亡に関しては、H. pylori除菌とニンニク補助は影響を及ぼさず、ビタミン補助は改善の傾向が認められたものの有意な差はなかった(HR:0.87、95%CI:0.76~1.01、p=0.07)。また、3つの介入と、他のがん種および心血管疾患の間には、統計学的に有意な関連はみられなかった。 著者は、「これらの知見は胃がん予防の潜在的な機会をもたらすが、ビタミン補助とニンニク補助の良好な効果を確定し、H. pylori除菌治療とビタミン、ニンニク補助に関する可能性のあるリスクを特定するには、さらに規模の大きな介入試験を要する」としている。

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子供のスキューバダイビングは要注意!【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第147回

子供のスキューバダイビングいらすとやより使用セレブな医師の中には、スキューバダイビングセットを持っていて、もしかすると子供と一緒にスキューバダイビングをしている人もいるかもしれません。自家用クルーザーとか持っていたりして…、きぃー!羨ましいったらありゃしない!…とまぁ、そんな嫉妬はさておき。子供のダイビングについて、指導団体ごとに規準は異なりますが、体験ダイビング・Cカード(ライセンス)取得講習を受けて、10歳から参加可能としている団体が多いです。浅瀬や安全なエリアであれば、8歳も許可しているところもあります。紹介するのは、子供におけるスキューバダイビングの脳動脈空気塞栓症の報告です。Johnson V, et al.Should children be SCUBA diving?: Cerebral arterial gas embolism in a swimming pool.Pediatr Emerg Care. 2012;28:361-362.この症例報告は、脳の動脈空気塞栓を起こした10歳の子供について紹介しています。肺の過膨脹により肺胞が破裂し、肺静脈から左心系に空気塞栓が起こる機序がもっとも多く、脳塞栓と心筋梗塞が空気塞栓の中ではもっとも致死的になります。とくにスキューバダイビングの場合、浮上するときに立位になるため、脳塞栓のリスクが倍増します。過去に、アイドルの12歳の女の子がヘリウムガスを胸いっぱいに吸い込んで、空気塞栓をおこした事例があり、テレビ番組のロケ中ということもあって話題になりました。これも上述した、肺気圧外傷という機序によって起こります。脳動脈空気塞栓症は、減圧症(decompression sickness)と似た症状を起こすことがあり、鑑別が重要になります(表)。これら2つをまとめて減圧病(decompression illness)と呼びます。表 減圧症と脳動脈空気塞栓症の違い画像を拡大する成人と比べて気圧外傷に弱い小児において、とくに致死的となりうる空気塞栓は回避したいところです。各種団体が書いているように、10歳を超えてから注意深く始めるのがよさそうですね。また、ダイビング中、少量の静脈ガスであっても卵円孔開存があれば右左シャントによって動脈にガスが入るので、脳動脈空気塞栓症のリスクは高くなります。喘息やブラ・ブレブなどの肺嚢胞もリスクになるので、小児喘息例では要注意です。

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日常的な問診こそ、最大のハードル【臨床留学通信 from NY】第2回

第2回:日常的な問診こそ、最大のハードル今回から、USMLE全体の対策等について述べていきたいと思います。概略は下記の通りです。USMLE Step1: 基礎医学anatomy,behavioral science,biochemistry,microbiology,pathology, pharmacology, physiologyなどUSMLE Step2 CK: 臨床医学internal medicine, surgery, pediatrics, psychiatry, obstetrics/gynecology, preventive medicineUSMLE Step2 CS: Clinical skills医学的なアセスメント、患者への気遣い、英語力USMLE Step3: Case SimulationStep3は渡米してからの受験でもよいのですが、内容はStep2 CKに毛が生えたようなものです(ただし、Visaの関係でStep3が渡米前に必要になることもあります)。わたしにとって大きなハードルだったのは、Step2 CSでした。とにかく英語で問診し、英語で模擬患者の訴えを聞き、英語で説明し、英語でカルテを書くという、徹底的に英語力が問われる試験です。わたしの場合、医師3年目にUSMLE受験を志し、同年にStep1を受験したものの、4年目は忙しく循環器研修に没頭し、5年目にようやくStep2 CKとCSを受験しました。とにもかくにも、日本を出て外人と英語で話したことなど、これまでまったくと言っていいほどなかったわけですから、医学英語が頭には浮かんでも口からスラスラ出て来ず、CSには本当に苦労しました。しかも、ベースはあくまで問診なので、本当に試されるのは医学英語というより、むしろ日常英会話力です。USMLEを受けるといったん心に決めたら、USMLEの勉強はもちろんですが、英語 (特に話す力)を並行して勉強することを強くお勧めします。実際、1年程度で英会話を身に付けるのは、かなりの労力を要しました。USMLEは高得点での一発合格が必須!ここで最も大事なことは、USMLEを受験するからには、勝負は一度きりと肝に銘じ、一回で合格すること、それも高得点で、ということです。それが後々のレジデンシーのマッチングに影響するのみならず、仮にも不合格となると、レッテルは永続的に記録として残ってしまいます。そこで必要なのが、受験に向けた戦略の立て方です。例えば、受験の順序がStep1→2CK→2CSである必要はありません(ただし、Step3については必ず最後でなければいけません)。わたしの場合は順番通りでよかったのですが、Step2CKについては、臨床をある程度積んだ研修医2年目後半以降などがいいのかもしれません。Step 1と2CSは勤めている病院によりけりですが、対策に時間がかかるので、半年以上の時間が確保できるタイミングで受けるのが望ましいでしょう。また、試験対策にはいずれも1,000ドル前後の受験費用、およびそれぞれ参考書や問題集の購入、またCS対策として現地でKaplanの講習を受けるとなると相当な出費を余儀なくされます。更にCSは現地で受けなければいけません。そして、晴れて試験をパスして留学してからも何かとお金がかかりますので、貯蓄は必須です。臨床と並行した試験勉強は、ゴールを決めてから着手USMLEの各ステップとも参考書となるのはKeyとなるFirst Aidを、問題集についてはUSMLE worldというネット問題集をお勧めします(https://www.uworld.com)。ネット問題集は期間でいくらと決まっているため、集中的に利用するのがよいでしょう。わたしは学生のころ、何となくFirst Aidを買ってはみたものの、結局にらめっこしておしまいでした。また、参考書だけでは頭にも残りません。問題集を買ったり、実際に試験を申し込んだりするような形 (日付を決める)で、背水の陣で臨むべきです。日々の臨床をやりながら試験勉強を並行するのはモチベーションも上がりにくく、相当な労力と時間を要しますので、かなりの覚悟がないと合格までたどり着けません。ちなみに、USMLEを受験するにはECFMGのウェブサイトに飛び、アカウントを作成し、Application form(form 183)を提出して、初めて申し込むことができます。詳細はウェブサイトとなりますが、提出には学部長のサインが必要となるため、久々に学事課なるところへ足を運びました。次回は、各々の試験の対策事項について述べます。

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ワクチンガイドラインが9年ぶりに改訂

 格安航空会社(LCC)の乗り入れによる海外旅行や海外商圏の広がりによる出張などで渡航する日本人の数は減少することがない。その一方で、海外に渡航し、現地で感染症に罹患するケースも後を絶たない。現地で病に臥せったり、国内には存在しない、または、まれな感染症を国内に持ち込んだりというケースもある。 こうした感染症の予防には、渡航前にワクチンを接種することが重要だが、具体的にどのようなワクチンを、いつ、どこで、誰に、どのようなスケジュールで接種するかは一部の専門医療者しか理解していないのが現状である。 そんな渡航前のワクチン接種について、医療者の助けとなるのが海外渡航者のためのワクチンガイドラインである。今回9年ぶりに改訂された『海外渡航者のためのワクチンガイドライン/ガイダンス2019』では、研究によるエビデンスの集積が困難な事項も多いトラベラーズワクチン領域にあって、現場で適切な接種を普及させるために、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益(疾病の予防効果、他)と害(副反応の可能性、他)のバランスなどを考量し、最善のアウトカムを目指した推奨を呈示すべくClinical Question(CQ)を設定した。また、今版では「I ガイドライン編」と「II ガイダンス編」の2構成となった。6つのCQで接種現場の声に答える 「I ガイドライン編」では、大きく6つのCQを示すとともに、各々のエビデンスレベル、推奨グレードについて詳細に記載した。 たとえば「日本製と海外製のA型肝炎ワクチンの互換性はあるか」というCQでは、「互換性はある程度確認されており、同一ワクチンの入手が困難となった場合、海外製のA型肝炎ワクチンでの接種継続を提案する」(推奨の強さ〔2〕、エビデンスレベル〔C〕)と現場の悩みに答えるものとなっている。インバウンド向けの対応も詳しく記載 「II ガイダンス編」では、総論として海外渡航者に対する予防接種の概要を述べ、高齢者や基礎疾患のある小児などのリスク者、小児・妊婦などの注意すべき渡航者、留学者など接種を受ける渡航者について説明するとともに、渡航先(地域)別のワクチンの推奨、わが国の予防接種に関する諸規定の解説、未承認ワクチンへの取り扱い、インバウンド対応(海外ワクチンの継続、宗教・文化・風習への対応など)が記載されている。 各論では、個々のワクチンについて、特徴、接種法、スケジュール、有効性、安全性、接種が勧められる対象などが説明されている。ワクチンは、A/B型肝炎、破傷風トキソイド・ジフテリアトキソイド・DT、DPT・DPT-IPV・Tdap、狂犬病、日本脳炎、ポリオ、黄熱、腸チフス、髄膜炎菌、コレラ、ダニ媒介性脳炎、インフルエンザ、麻しん・風しん・おたふくかぜ・水痘が記載されている。 その他、付録として、疾患別のワクチンがまとめて閲覧できるように「各ワクチン概要と接種法一覧」を掲載。さらに渡航者から相談の多い「マラリア予防」についても概説している。 2019年のラグビー・ワールドカップ、2020年の東京オリンピックと日本を訪問する外国人も増えることから、渡航者の持ち込み感染も予想される。本書を、臨床現場で活用し、今後の感染症対策に役立てていただきたい。

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エヌトレクチニブ発売、脳転移へのベネフィットに注目

 臓器横断的ながん治療薬として本邦で2剤目となる低分子チロシンキナーゼ阻害薬エヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)が販売開始したことを受け、9月5日、都内でメディアセミナー(主催:中外製薬)が開催された。吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科長)が登壇し、同剤の臨床試験結果からみえてきた特徴と、遺伝子別がん治療の今後の見通しについて講演した。 エヌトレクチニブは、2018年3月に先駆け審査指定を受け、2019年6月に「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がん」を適応症とした承認を世界で初めて取得した。すでに承認・販売されているMSI-H固形がんへのペムブロリズマブの適応が、標準的治療が困難な場合に限られるのに対し、NTRK融合遺伝子陽性固形がんであれば治療歴および成人・小児を問わないことが特徴。遺伝子検査にはコンパニオン診断薬として承認されたFoundationOne CDxがんゲノムプロファイルを用いる。がん種ごとの陽性率は? NTRK融合遺伝子陽性率をがん種ごとにみると、成人では唾液腺分泌がん(80~100%)1,2)、乳腺分泌がん(80~100%)3-6)などの希少がんで多く、非小細胞肺がん(0.2~3.3%)7,8)や結腸・直腸がん(0.5~1.5%)7,9-10)、浸潤性乳がん(0.1%)7)などでは少ない。しかし患者の絶対数を考えると、1%であっても相当数の患者がいるという視点も持つ必要があると吉野氏は指摘した。 一方、小児では、乳児型線維肉腫(87.2~100%)11-14)、3歳未満の非脳幹高悪性度神経膠腫(40%)15)など陽性率の高いがん種が多く、同氏は「小児がんへのインパクトはとくに大きい」と話した。治療開始後“早く・長く効く”こと、脳転移への高い有効性が特徴 今回の承認は、成人に対する第II相STARTRK-2試験および小児に対する第Ib相STARTRK-NG試験の結果に基づく。STARTRK-2試験は、NTRK1/2/3、ROS1またはALK遺伝子陽性の局所進行/転移性固形がん患者を対象としたバスケット試験。このうち、とくにNTRK陽性患者で著明な効果が確認され、今回の迅速承認につながった経緯がある。 NTRK有効性評価可能集団は51例。肉腫が13例と最も多く、非小細胞肺がん9例、唾液腺分泌がんおよび乳がんが6例ずつ、甲状腺がんが5例、大腸がん・膵がん・神経内分泌腫瘍が3例ずつと続く。また、何らかの治療歴がある患者が約6割を占めていた。主要評価項目である奏効率(ORR)は56.9%、4例で完全奏功(CR)が確認された。本試験結果だけでは母数が少ないが、がん種ごとに有効性の大きな差はないと評価されている。吉野氏は、とくに奏効例のスイマープロットに着目。初回検査の時点で奏効が確認された症例、治療継続中の症例が多く、「奏功例では早く長く効くことが特徴」と話した。また、ベースライン時の患者背景として、脳転移症例が11例含まれることにも言及。評価対象となった10例での成績は、頭蓋内腫瘍奏効率50%、2例でCRが確認されている。 Grade3以上の有害事象は多くが5%以下と頻度が低く、貧血が10.7%、体重増加が9.7%でみられた。同氏は、「総じて、副作用は非常に軽いといえる」と述べた。3学会合同、臓器横断的ゲノム診療のガイドラインを発行予定 小児・青年期対象のSTARTRK-NG試験においても、エヌトレクチニブの高い有効性が確認されている(ORR:100%)。5例はCNS原発の高悪性度の腫瘍で、うち2例でCRが確認された。周辺組織への浸潤が早い小児がんにおいて、非常に大きなインパクトのある治療法と吉野氏は話し、「どのタイミングで、どんな患者に検査を行い、薬を届けていくかを標準化していく必要がある」とした。 今回の承認を受け、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本小児血液・がん学会は合同で、『成人・小児進行固形がんにおける臓器横断的ゲノム診療のガイドライン(案)』をホームページ上で公開、パブコメの募集を行った。同ガイドラインは、今回のエヌトレクチニブ承認を受け、2019年3月公開の『ミスマッチ修復機能欠損固形がんに対する診断および免疫チェックポイント阻害薬を用いた診療に関する暫定的臨床提言』を改訂・進化させた内容となっている。「NTRK融合遺伝子の検査はいつ行うべきか?」など、NTRK融合遺伝子の検査・治療についてもCQが設けられ、実践的な診断基準として知見が整理される。 最後に、同氏はこれまで消化器がん・肺がん領域を対象として行ってきたSCRUM-Japanのがんゲノムスクリーニングプロジェクトが、2019年7月からすべての進行固形がん患者を対象に再スタートしたことを紹介(MONSTAR-SCREEN)16)。リキッドバイオプシーおよび便のプロファイリング(マイクロバイオーム)を活用しながら、臓器によらないTumor-agnosticなバスケット型臨床試験を実施していくという(標的はFGFR、HER2、ROS1)。承認申請に使用できる前向きレジストリ研究を推進させ、全臓器での治療薬承認を早めていきたいと語り、講演を締めくくった。■参考1)Skalova A, et al.Am J Surg Pathol. 2016;40:3-13.2)Bishop JA, et al.Hum Pathol. 2013;44:1982-8.3)Del Castillo M, et al. Am J Surg Pathol. 2015;39:1458-67.4)Makretsov N, et al. Genes Chromosomes Cancer. 2004;40:152-7.5)Tognon C, et al. Cancer Cell. 2002;2:367-76.6)Lae M, et al. Mod Pathol. 2009;22:291-8.7)Stransky N, et al. Nat Commun. 2014;5:4846.8)Vaishnavi A, et al. Nat Med. 2013;19:1469-1472.9)Ardini E, et al. Mol Oncol. 2014;8:1495-507.10)Creancier L, et al. Cancer Lett. 2015;365:107-11.11)Knezevich SR, et al. Nat Genet. 1998;18:184-7.12)Rubin BP, et al. Am J Pathol. 1998;153:1451-8.13)Bourgeois JM, et al. Am J Surg Pathol. 2000;24:937-46.14)Chiang S, et al. Am J Surg Pathol. 2018;42:791-798.15)Wu G, et al. Nat Genet. 2014;46:444-450.16)国立がん研究センターSCRUM-Japan/MONSTAR-SCREEN

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