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去勢抵抗性前立腺がん、オラパリブが有効/NEJM

 新規のホルモン療法薬投与中に病勢が進行し、BRCA1、BRCA2遺伝子などに変異が認められた、転移がある去勢抵抗性前立腺がんの患者に対して、PARP阻害薬オラパリブの投与はホルモン療法薬投与と比べて、無増悪生存(PFS)期間を延長し、奏効率や、患者評価のエンドポイント(疼痛増悪までの期間など)も有意に良好であることが示された。英国・Institute of Cancer ResearchのJohann de Bono氏らが第III相無作為化非盲検試験の結果を報告した。相同組み換え修復などDNA修復に関与する遺伝子における複数の機能喪失の変化は、前立腺がんやその他のがん患者においてPARP阻害に対する反応との関連が示唆されている。これを踏まえて研究グループは、遺伝子変異が認められ転移がある去勢抵抗性前立腺がん患者に対する、PARP阻害薬を評価する試験を行った。NEJM誌オンライン版2020年4月28日号掲載の報告。画像判定による無増悪生存を比較 試験は、相同組み換え修復に直接的・間接的な役割を持つ規定遺伝子に、修飾的な変異が認められた患者を対象に行われた。 コホートA(245例)の被験者は、BRCA1、BRCA2またはATM遺伝子に1つ以上の変異がある患者で、コホートB(142例)は、事前に規定したその他12種の遺伝子に変異がある患者で、いずれも腫瘍組織の前向き・中央検査にて確認された。 研究グループは被験者を無作為に2対1の割合で2群に分け、オラパリブか、医師の選択に基づきエンザルタミドまたはアビラテロンを(対照群)、それぞれ投与した。 主要評価項目は、コホートAにおける画像診断に基づくPFSで、盲検化された独立中央検査により確認された。オラパリブ群の奏効率オッズ比は20超 コホートAのPFS期間中央値は、対照群3.6ヵ月に対し、オラパリブ群は7.4ヵ月と有意に延長した(病勢進行または死亡に関するハザード比[HR]:0.34、95%信頼区間[CI]:0.25~0.47、p<0.001)。確認された客観的奏効率と疼痛増悪までの期間についても、オラパリブ群の有意な有益性が確認された(奏効率に関するオッズ比:20.86、疼痛増悪に関するHR:0.44)。 コホートAの全生存(OS)期間中央値は、対照群15.1ヵ月に対し、オラパリブ群は18.5ヵ月だった。なお、対照群では病勢進行が認められた患者の81%がクロスオーバーを受けてオラパリブの投与を受けていた。 コホートA・Bを併せた被験者全集団でも、画像診断に基づくPFSについて、オラパリブの有意な有益性が認められた。 オラパリブを受けた患者の主な毒性効果は、貧血、吐き気だった。

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第6回 新型コロナ感染者、全国で一元管理へ 厚労省の新システム

<先週の動き>1.新型コロナ感染者、全国で一元管理へ 厚労省の新システム2.COVID-19治療薬「レムデシビル」が7日に特例承認3.新型コロナ相談・受診の目安改訂 「37.5度」が削除4.「アビガン」に注がれる期待と安全性 民間機関が意見書を提出5.やまない医療従事者への誹謗中傷・風評被害に苦悩6.医療従事者の新型コロナ感染、世界で9万人超も1.新型コロナ感染者、全国で一元管理へ 厚労省の新システム先月、厚生労働省より「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」についての事務連絡が出されており、今週にも一部保健所などで先行利用開始、5月中旬以降には全国で利用されるようになる見通し。新型コロナ感染者の情報を全国で一元管理し、国・都道府県だけでなく、医療機関や医師会なども即時に情報共有できる仕組み。新型コロナの動向を迅速に把握・対応できる体制を築く。稼働後は、感染症法に基づく保健所への発生届などが、本システムに入力する形式に変更される見込み(具体的な運用方法に関しては、別途通知が発出される予定)。また、各医療機関からの報告に基づいて、行政が医療物資の優先配布や重症患者の受け入れ先の調整などに活用する。(参考)新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(仮称)の導入について(厚労省 事務連絡 令和2年4月30日)厚労省が新型コロナ感染者情報を一元管理する新システム、開発費用は10億円(日経クロステック)2.COVID-19治療薬「レムデシビル」が7日に特例承認ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬「レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液・同点滴静注用)」が、申請からわずか3日後の7日に特例承認された。翌8日には中央社会保険医療協議会が開催され、レムデシビルの医療保険上の取り扱いについて議論が行われた。現時点では供給量がきわめて限定的であるため、公的な管理の下で無償提供され、時限的・特例的な対応として、公的医療保険との併用が可能とされる。この間、薬価収載はされない予定。レムデシビルは、エボラ出血熱などの治療薬として開発されていた薬剤であり、ウイルスのRNAポリメラーゼを阻害する作用を有する。適応患者の選定においては、7日に発出された留意事項に、適格基準と除外基準が示されている。(参考)COVID-19に特例承認のレムデシビル、添付文書と留意事項が公開レムデシビル製剤の使用に当たっての留意事項について(厚労省)新型コロナウイルス感染症に係る医薬品(レムデシビル)の医療保険上の取扱いについて(同)3.新型コロナ相談・受診の目安改訂 「37.5度」が削除以前から、相談・受診の目安を参考にPCR検査を希望しても、帰国者・接触者相談センターには受け入れてもらえないなどの意見が聞かれたが、8日、専門家会議の議論を踏まえ、相談・受診の目安についての改訂が行われた。従来との違いは、「37.5度以上の発熱が4日以上続く」としていた記載が、個人差があるなどの理由で削除された。改訂版では、「息苦しさ(呼吸困難)・強いだるさ(倦怠感)・高熱などの強い症状のいずれかがある」、「重症化しやすい方で、発熱や咳などの比較的軽い風邪症状がある」、「これら以外で、発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が4日以上続く」場合には、すぐに相談するよう促している。各自治体は、地域の医師会と連携するなどしてPCR検査の実施施設を増やしており、今後の検査件数は増えていくと考えられる。(参考)【改訂版】新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安(厚労省)新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安について(事務連絡 令和2年5月8日)4.「アビガン」に注がれる期待と安全性 民間機関が意見書を提出中国でいち早く臨床試験が行われた新型インフルエンザ治療薬「ファビピラビル(商品名:アビガン)」は、新型コロナ患者への有効性について大きく期待されている。本剤は富山化学工業が開発したRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬であり、厚労省は、治療薬候補として5月中の承認を目指している。その一方で、動物実験で観察された催奇形性などの副作用が懸念されている。民間の医薬品監視機関である「薬害オンブズパースン会議」が、厚労省に「アビガンに関する意見書(新型コロナウイルス感染症に関して)」を5月1日付けで提出している。COVID-19治療薬として、科学的根拠の乏しい過剰な期待に対する厳しい警告を含んでおり、メディアの過熱報道とは裏腹に十分なエビデンスと安全性の確立が求められる。(参考)「アビガンに関する意見書(新型コロナウイルス感染症に関して)」を提出(薬害オンブズパースン会議)5.やまない医療従事者への誹謗中傷・風評被害に苦悩現場で奮闘する多くの医療従事者に感謝の気持ちを示すため、ライトアップや拍手などの報道がされる一方で、近隣の住民などから医療従事者やその家族に対して嫌がらせや誹謗中傷を受けたという話が報道されている。感染者の受け入れによって、医療機関が院内外の感染対策に追われ、一般人に十分に説明する機会がないまま、メディアを通して恐怖心が増幅された結果かもしれない。医療従事者は患者さんの治療と安全を最優先に働いているが、最前線で尽力している医療機関や医療者に対してそのような事例があるのは残念でならない。メディアには医療・介護従事者を支援する輪を積極的に広げていただきたい。(参考)医療従事者への風評被害に対する国民へのメッセージ動画を制作(日本医師会)「会社辞めるか、奥さんが辞めるか」看護師と家族に誹謗中傷(神戸新聞)6.医療従事者の新型コロナ感染、世界で9万人超も世界的に広がる新型コロナウイルスにより、医療従事者の感染が問題となっている。先日、国際看護師協会(International Council of Nurses)が30ヵ国の看護協会のデータを元に推計した結果によると、世界全体で新型コロナウイルスに感染した医療従事者は9万人以上、その内死亡した看護師は260人を超えると推測されている。全感染者のうちの平均6%が医療従事者であるとされる。同協会は、医療従事者の感染について正確なデータがないため、「より大きなリスクにさらされている」と指摘している。各国の政府が医療従事者の感染と死亡に関するデータを体系的に収集し、それを世界保健機関(WHO)が保管することを求めている。(参考)ICN calls for data on healthcare worker infection rates and deaths(ICN)

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心臓再同期療法後、神経体液性因子抑制薬の中止は可能か?【Dr.河田pick up】

 左脚ブロックを伴う心不全患者において、神経体液性因子抑制薬による左室駆出率(LVEF)の改善は2%程度にとどまる。一方、心室再同期療法(CRT)は、心室同期不全を伴う心筋症において、進行したケースにおいても劇的に左室駆出率を改善することがある。これは、左脚ブロックなどの伝導障害が、一部の心筋症において大きな要因となっていることを意味する。一方で、CRTの植込み後に心機能が正常化した心不全患者に対し、神経体液性因子抑制薬を継続する必要性ついてはいまだに不明である。本研究では、CRT植込み後に左室駆出率が正常化した患者において、神経体液因子抑制薬を中止することが安全かつ可能かどうかが評価されている。ベルギー・Ziekenhuis Oost-Limburg病院のPetra Nijst氏らによる報告で、Journal of the American College of Cardiology誌3月号に掲載。左脚ブロックを有する非虚血性心筋症が対象、RAA系およびβ遮断薬を中止もしくは継続で4群に無作為化 本研究は、プロスペクティブランダム化オープンラベルの2X2クロスオーバー試験で行われた。レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害剤(RAA阻害剤)を中断した群、RAA阻害剤に加えてβ遮断薬も中断した群、RAA阻害剤の代わりにβ遮断薬を中断した群、そして双方を継続する群の4つに分け、連続した患者80例を各々20例ずつ無作為に割り付けた。 一次エンドポイントは、「24ヵ月後における左室収縮末期容積係数の15%以上の増加」と定義されたネガティブリモデリングの再発。二次エンドポイントでは、24ヵ月における全死亡および心不全に関連した入院、そして持続性心室性不整脈を組み合わせ、複合した安全性の評価を行った。3分の2の症例では神経体液性因子抑制薬を中止しても、心不全は悪化せず 全症例中62%で、RAA阻害剤とβ遮断薬もしくはその両方を2年間中止しても、臨床症状、エコーでの心室のサイズ、NT-Pro BNPのレベルに変化は認められなかった。しかしながら、17例(2割)において高血圧や上室性不整脈のために神経体液性因子抑制薬の再開が必要となった。一次エンドポイントの発生は少ないが、それらの患者では神経体液性因子抑制薬の再開で左室駆出率と径は正常化した 2年のフォローアップ期間中、80例のうち6例(7.5%)が一次エンドポイントに達し、4例(5%)が二次エンドポイントに達した。一次エンドポイントに達した6例の患者では、神経体液性因子抑制薬がすぐに再開され、左室駆出率と左室径は6ヵ月以内に正常化した。 本研究は、あくまでも左脚ブロックを有する非虚血性心筋症で、CRT後に左室駆出率が大幅に改善した患者(試験開始時の平均LVEF:55%)が対象である。つまり、左脚ブロックが心室駆出率の低下の原因と考えられる患者群と言える。それらの患者でも、一部では神経体液性因子抑制薬の中止が、心機能の増悪と関連していることをこの研究は示唆している。また、その他の多くの心不全患者においては、たとえLVEFが改善したとしても、神経体液性因子抑制薬は継続すべきである。■関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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進行NSCLC、PS不良患者へのICI投与/Cancer

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与について、全身状態(PS)が重要な指標となるようだ。米国・マサチューセッツ総合病院のLaura A. Petrillo氏らによる検討で、PSが低下した患者は良好な患者と比べて、投与後の生存期間が有意に短いこと、終末期での投与が多いことが判明したという。また、終末期の投与は、ホスピス利用の低さおよび院内死亡リスクの増大とも関連していた。Cancer誌2020年3月15日号掲載の報告。 検討は後ろ向きの単施設試験で、2015~17年にICI治療を開始していた進行NSCLC患者237例を対象に行われた。 Cox比例法を用いて、ICI治療開始時にPS不良(≧2)の患者と、良好(0または1)の患者の全生存(OS)を比較した。また、ロジスティック回帰法を用いて、死亡前30日間のICI使用と、末期医療(エンドライフケア)の関連を分析した。 主な結果は以下のとおり。・ICI開始時の患者の平均年齢は67歳、PS≧2の患者は35.4%であった。・2次治療またはそれ以降の治療としてICIを受けた患者が最も多く、80.8%を占めた。・OS中央値は、PS≧2の患者では4.5ヵ月、PS 0/1の患者では14.3ヵ月であった(ハザード比:2.5、p<0.0001)。・死亡前30日間にICI投与を受けた患者は、 PS≧2では28.8%であったのに対して、PS 0/1では10.8%であった(p=0.002)。・死亡前30日間のICI投与は、PSにかかわらず、ホスピスへの紹介率の低さと関連しており(オッズ比:0.29、p=0.008)、また院内死亡の増大と関連していた(6.8、p=0.001)。

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CLL1次治療、acalabrutinibの第III相試験成績/Lancet

 未治療の症候性慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療において、acalabrutinib±オビヌツズマブは、標準治療であるオビヌツズマブ+chlorambucilによる化学免疫療法と比較して、無増悪生存(PFS)を有意に改善し、安全性プロファイルも良好であることが、米国・Willamette Valley Cancer Institute/US OncologyのJeff P. Sharman氏らの検討「ELEVATE TN試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年4月18日号に掲載された。acalabrutinibは、選択的な共有結合性ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬。未治療CLL患者を対象とした第I/II相試験では、単剤またはオビヌツズマブとの併用で、高い有効性(全奏効割合95~97%)とともに、持続性の寛解、良好な長期忍容性、低い治療中止率が報告されている。オビヌツズマブは抗CD20モノクローナル抗体、chlorambucilは化学療法薬(アルキル化薬)である。3群を比較する国際的な無作為化第III相試験 本研究は、18ヵ国142施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2015年9月14日~2017年2月8日に患者登録が行われた(Acerta Pharmaの助成による)。 対象は、年齢65歳以上、およびクレアチニンクリアランス30~69mL/分(Cockcroft-Gault式)またはCumulative Illness Rating Scale for Geriatrics(CIRS-G)スコア>6点の18~<65歳の未治療CLLで、全身状態(ECOG PS)≦2の患者であった。重度の心血管疾患を有する患者は除外された。 被験者は、acalabrutinib(経口投与)+オビヌツズマブ(静脈内投与)(併用群)、acalabrutinib単剤(単剤群)、オビヌツズマブ+chlorambucil(経口投与)(標準治療群)の3群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、28日を1サイクルとする治療が行われた。 主要エンドポイントは、独立の判定委員会(IRC)の評価によるPFSとした。標準治療群の増悪例は、acalabrutinibへのクロスオーバーが可能とされた。増悪/死亡リスクが併用群で90%、単剤群は80%低減 適格基準を満たした535例が登録され、併用群に179例、単剤群に179例、標準治療群に177例が割り付けられた。ベースラインの年齢中央値は70歳(IQR:66~75)で、448例(84%)が65歳以上であった。CLL国際予後指標(CLL-IPI)スコアで、高リスクが368例(69%)、超高リスクが66例(12%)含まれた。また、標準治療群の55例(31%)が追加治療を要し、このうち45例(82%)でacalabrutinib単剤へのクロスオーバーが行われた。 フォローアップ期間中央値28.3ヵ月(IQR:25.6~33.1)の時点におけるPFS期間中央値は、併用群は未到達(95%信頼区間[CI]:評価不能~評価不能)であり、標準治療群の22.6ヵ月(95%CI:20.2~27.6)に比べ有意に延長し、増悪または死亡のリスクが90%低下した(ハザード比[HR]:0.10、95%CI:0.06~0.17、p<0.0001)。また、単剤群もPFS期間中央値には未到達(34.2~評価不能)で、標準治療群の22.6ヵ月(95%CI:20.2~27.6)に比し有意に延長し、増悪または死亡のリスクが80%低下した(HR:0.20、95%CI:0.13~0.30、p<0.0001)。 24ヵ月PFS率は、併用群が93%、単剤群が87%、標準治療群は47%であった。また、全奏効率(完全奏効+骨髄機能の回復を伴わない完全奏効+結節性病変の部分奏効+部分奏効の割合)は、併用群が94%と、標準治療群の79%に比べ有意に優れ(p<0.0001)、単剤群は85%であり、標準治療群との間に有意な差はなかった(p=0.08)。 全生存(OS)期間中央値には、3群とも未到達であった。併用群と標準治療群のHRは0.47(95%CI:0.21~1.06、p=0.06)、単剤群と標準治療群のHRは0.60(0.28~1.27、p=0.16)であった。 最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、3群とも好中球減少であった(併用群29.8%、単剤群9.5%、標準治療群41.4%)。全Gradeの輸注反応の頻度は、併用群が13.5%と、標準治療群の39.6%よりも低かった。Grade3以上の感染症は併用群で頻度が高かった(併用群20.8%、単剤群14.0%、標準治療群8.3%)。また、全死因死亡は、併用群が8例(4%)、単剤群が12例(7%)、標準治療群は15例(9%)だった。 著者は、「これらのデータは、未治療の症候性CLL患者の新たな治療選択肢として、acalabrutinib単独またはacalabrutinib+オビヌツズマブの使用を支持し、化学療法薬を含まない選択肢をもたらすものである」としている。

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膝OA、ゾレドロン酸の年1回投与は有効か/JAMA

 骨髄病変を有する症候性の変形性膝関節症者の治療では、ゾレドロン酸の年1回投与はプラセボと比較して、2年後の軟骨量減少の改善効果に差はないことが、オーストラリア・タスマニア大学のGuoqi Cai氏らの検討「ZAP2試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年4月21日号に掲載された。変形性膝関節症患者では、ゾレドロン酸の静脈内投与により膝の痛みや骨髄病変の大きさが低減することが、原理証明研究で示唆されているが、大規模臨床試験のデータはないという。年1回で2回投与の効果を比較するプラセボ対照無作為化試験 本研究は、オーストラリアの4施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2013年11月~2015年9月の期間に患者登録が行われた(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成による)。 対象は、年齢50歳以上、直近の1ヵ月間のほとんどの日に膝関節痛(100mm視覚アナログ尺度[VAS]疼痛スコア≧40mm)がみられ、リウマチ専門医の判定で米国リウマチ学会の症候性変形性膝関節症の基準を満たし、MRIで軟骨下の骨髄病変が認められた患者であった。 被験者は、ベースラインと12ヵ月後に、ゾレドロン酸(100mL生理食塩水に5mg含有)を静脈内注入する群またはプラセボ(100mL生理食塩水)群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、24ヵ月後のMRIによる脛骨大腿骨の軟骨量の絶対変化とした(臨床的に意義のある最小変化量[MCID]は確立されていない)。 また、事前に規定された副次アウトカムは、24ヵ月後のVAS疼痛スコア(0[痛みがない]~100[耐え難い痛み]点)による膝関節痛の変化(MCID:15点)、およびWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)の疼痛スコア(0[痛みがない]~500[耐え難い痛み]点)による膝関節痛の変化(MCID:75点)と、24ヵ月後の骨髄病変の量の変化(MCIDは未確立)であった。3つの副次アウトカムにも差はない 223例(平均年齢62.0[SD 8.0]歳、女性117例[52%])が登録され、190例(85%)が試験を完遂した。予算の制限により、予定のサンプルサイズ(264例)には達しなかった。 ゾレドロン酸群に比べプラセボ群は、ベースラインの平均膝関節痛スコア(VAS:47.7点vs.54.5点、WOMAC:180.8点vs.219.9点)が高く、脛骨大腿骨の軟骨量(1万6,994mm3 vs.1万6,039mm3)が少ない傾向がみられた。 ベースラインから24ヵ月後までに、脛骨大腿骨の軟骨量は平均で、ゾレドロン酸群が878mm3、プラセボ群は919mm3、それぞれ減少した。群間差は41mm3(95%信頼区間[CI]:-79~161)で、有意な差は認められなかった(p=0.50)。 また、3つの副次アウトカムにも有意差はみられなかった。24ヵ月後のVAS疼痛スコアの変化は、ゾレドロン酸群-11.5点vs.プラセボ群-16.8点(群間差:5.2点、95%CI:-2.3~12.8、p=0.17)、WOMAC疼痛スコアの変化は、-37.5点vs.-58.0点(20.5点、-11.2~52.2、p=0.21)、骨髄病変の量の変化は-33mm2 vs.-6mm2(-27mm2、-127~73、p=0.60)であった。 1つ以上の有害事象は、ゾレドロン酸群が96%、プラセボ群は83%で発現した。急性期反応(発熱、筋骨格系・消化器・眼などの症状で、投与後3日以内に消散)は、ゾレドロン酸群が87%、プラセボ群は56%にみられ、このうちゾレドロン酸群で最も頻度が高かったのは筋骨格系の痛みやこわばり(70% vs.30%)で、次いで発熱(52% vs.8%)、頭痛/めまい(42% vs.26%)の順であった。これらの症状は、両群とも、2回目の投与後には発現が低下した。 著者は、「これらの知見は、変形性膝関節症患者の治療において、軟骨量減少の緩徐化を目的としたゾレドロン酸の使用を支持しない」としている。

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衝撃のISCHEMIA:安定冠動脈疾患に対する血行再建は「不要不急」なのか?(解説:中野明彦氏)-1224

はじめに 安定型狭心症に対する治療戦略は1970年代頃からいろいろな構図で比較されてきた。最初はCABG vs.薬物療法、1990年代はPCI(BMS) vs.CABG、そして2000年代後半からPCI(+OMT)vs.OMT(最適な薬物療法)の議論が展開された。PCI vs.OMTの代表格がCOURAGE試験(n=2,287)1)やBARI-2D(n=2,368)、FAME2試験(n=888)である。とりわけ米国・カナダで行われ、総死亡+非致死性心筋梗塞に有意差なしの結果を伝えたCOURAGE試験のインパクトは大きく、米国ではその後の適性基準見直し(AUC:appropriate use criteria)や待機的PCI数減少につながった。一方COURAGEはBMS時代のデータであり、症例選択基準やPCI精度にバイアスが多いなど議論が沸騰、結局「虚血領域が広ければPCIが勝る」とのサブ解析2)が出て何となく収束した。しかしこの仮説は後に否定され3)、本試験15年後のfollow-up4)も結論に変化はなかった。ISCHEMIA試験:主要評価項目安定冠動脈疾患、侵襲的戦略と保存的戦略に有意差なし/NEJM 上記PCI vs.OMTの試験はサンプルサイズ・デバイス(BMSが主体)・虚血評価不十分・低リスクなどが問題点として指摘された。ISCHEMIA試験はこうしたlimitationを払拭し COURAGEから10年以上の時を経て発表されたが、そのインパクトはさらに大きかった。構図は侵襲的戦略 vs.保存的戦略、すなわち血管造影を行い可能なら血行再建療法(PCI or CABG)を行う群と、基本的にはOMTで抵抗性の場合のみ血行再建療法を加える群との比較である。米国の公的施設(NHLBI)の援助を受けた37ヵ国の国際共同試験で、対象はストレスイメージング・FFRや運動負荷試験によって中等度~高度の虚血が証明された安定型狭心症である。そもそもOMTで事足りるということか、血管造影は行わず冠動脈CT で左冠動脈主幹病変を除外してランダム化された(n=5,179)のも特徴的であり、結果として造影による選択バイアスは減少した。実際の血行再建はそれぞれ79%(PCI 76%、CABG 24%)と21%に施行され、PCIはDESを原則とした。 今度こそは侵襲的戦略(血行再建療法)有利と思われたが、3.2年以上(中間値)の追跡期間で、主要評価項目(心血管死、心筋梗塞、不安定狭心症・心不全・心停止後の蘇生に伴う入院、の複合エンドポイント)の血行再建群の調整後ハザード比は0.93(95%CI:0.80~1.08、p=0.34)と優位性は示されなかった。 ACSの多くは非狭窄部から発生することが以前から指摘されている。したがってPCIで stable plaqueをつぶしても予後改善や心筋梗塞発症抑制につながらない。これが永らくPCI がCABGに勝てない理由である。しかしISCHEMIA試験ではそのCABGを仲間に加えてもOMTに勝てなかった。ソフトエンドポイント:QOLの改善効果 ISCHEMIA試験の「key secondary outcomes」の1つに狭心症由来のQOLが加えられ、今回その詳細が報告された。1次エンドポイントである「SAQ Summary score:Angina Frequency score・Physical Limitation score・Quality of Life scoreの平均値」は両群とも平均70強(登録時)だった。Angina Frequency scoreは登録時平均80強(週1回程度の狭心症状に相当)で、それ以上(毎日あるいは週数回)が2割、無症状も1/3を占めていた。少なくとも36ヵ月までは血行再建群で症状緩和効果は維持され、登録時に狭心症状が強い症例ほど恩恵が多い、という骨子は常識的な結論であろう。 しかし同様の検討が行われたCOURAGE試験では、24ヵ月まで保たれたQOLの改善効果が36ヵ月後には消滅してしまった5)。確かに本試験でもポイント差が縮まってきており、この先を注視する必要がある。予後もイベントも抑えないから「不急」であるが、もし症状を抑える効果も限定的なら「不要」の議論も起こり得る。そして折しも 新たなデバイスや手技の進化に閉塞感が漂う血行再建術と、PCSK9阻害薬・SGLT2阻害薬・新規P2Y12受容体拮抗薬など次々EBMが更新される薬物療法、両者の位置付けはこれからどうなるだろうか? 日本でも数年前から安定冠動脈疾患に対する治療戦略が問われており、PCIへの診療報酬はAUCを前提にしつつ冷遇の方向に改定されている。折しも、新型コロナウイルスパンデミックへの緊急事態宣言発令を受けて、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)から“感染拡大下の心臓カテーテル検査及び治療に関する提言”が出された。曰く「慢性冠症候群、安定狭心症に対するPCIで、緊急性を要しないものについては延期を推奨する」である。時同じくして掲載されたISCHEMIA試験はこれにお墨付きを与えることになった。 今回のパンデミックにより今まで当たり前だったことが当たり前ではなくなった。人々の価値観や人生観・死生観までもが変容するに違いない。虚血性心疾患に対する医療もアフター・コロナでは新たなパラダイムシフトで臨むことになるのかもしれない。

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SSRI治療抵抗性うつ病に対するボルチオキセチン補助療法

 うつ病の治療において、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は基本となる。しかし、SSRIでは治療反応が得られないこともあり、多くの場合、併用戦略が必要となる。イタリア・University "G. D'Annunzio" ChietiのDomenico De Berardis氏らは、SSRI治療抵抗性うつ病患者に対する併用療法としてのボルチオキセチンの有効性を評価した。Revista Brasileira de Psiquiatria誌オンライン版2020年3月9日号の報告。 8週間以上のSSRI治療で治療反応が得られなかった外来の成人うつ病患者36例を対象とし、レトロスペクティブにレビューした。対象患者に対し、現在のSSRIにボルチオキセチン(5~20mg/日)を追加し、8週間の治療を行った。主要アウトカムは、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)合計スコアのベースラインからの変化量と治療反応率(HAM-Dスコアの50%以上減少およびエンドポイントでの臨床全般印象度の改善度[CGI-I]スコアが1または2)とした。HAM-Dスコア7以下を寛解と定義した。追加アウトカムの指標は、Snaith-Hamilton Pleasure Scale(SHAPS)、Scale for Suicide Ideation(SSI)とした。 主な結果は以下のとおり。・8週間の治療を完了した患者は32例であった。・8週間後、HAM-Dスコアの有意な減少が認められた(p≦0.001)。・治療反応率は41.7%、寛解率は33.3%であった。・SHAPSおよびSSIの有意な減少も認められた(各々p≦0.001)。 著者らは「本研究は、サンプルサイズが小さく、無作為化および対照研究ではなく、レトロスペクティブデザインであることを考慮する必要がある」としながらも、「治療抵抗性うつ病に対する最初の治療として、ボルチオキセチン補助療法は有用性および忍容性が高いと考えられる」としている。

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NYのCOVID-19入院患者、高血圧57%、糖尿病34%/JAMA

 米国ニューヨーク州の12病院に入院した、新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019、COVID-19)患者5,700例について症例研究(case series)を行ったところ、年齢中央値は63歳、約57%が高血圧症を、また約34%が糖尿病を有していたことなどが明らかにされた。米国・Northwell HealthのSafiya Richardson氏らが報告した。試験期間中(2020年3月1日~4月4日)に退院・死亡した患者は、約半数近くの2,634例で、うち死亡は21%だった。また、侵襲的機械的人工換気を要した患者は320例で、その死亡率は88.1%だったという。米国におけるCOVID-19入院患者の特徴とアウトカムの情報は限定的であったが、著者は、「今回の症例研究により、ニューヨーク市周辺におけるCOVID-19入院患者の特徴と早期アウトカムが明らかになった」と述べている。JAMA誌オンライン版2020年4月22日号掲載の報告。3月1日~4月4日の入院患者の臨床アウトカムや併存疾患を調査 研究グループは、ニューヨーク市、ロングアイランド、ウェストチェスター郡のNorthwell Healthが運営する12病院で、2020年3月1日~4月4日に入院したCOVID-19の連続症例5,700例について症例研究を行った。被験者は、鼻咽頭検体によるPCR検査でSARS-CoV-2の感染が確認されていた。 入院中の臨床アウトカム(侵襲的機械的人工換気、腎代替療法、死亡など)、患者の人口統計学的情報、ベースラインでの併存疾患、バイタルサイン、検査結果なども収集して評価した。女性患者は39.7%、トリアージ時の発熱患者は30.7% 被験者5,700例の年齢中央値は63歳(四分位範囲[IQR]:52~75、範囲:0~107)で、女性は39.7%だった。最も多くみられた併存疾患は、高血圧症(56.6%、3,026例)、肥満(41.7%、1,737例)、糖尿病(33.8%、1,808例)だった。トリアージ時点で発熱が認められた患者は30.7%、呼吸数24回/分超だった患者は17.3%、酸素補充療法を要した患者は27.8%だった。呼吸器ウイルス重複感染率は2.1%だった。 試験期間中に退院または死亡した患者2,634例のうち、ICUでの治療を受けた患者は373例(14.2%)で、年齢中央値は68歳、女性は33.5%だった。侵襲的機械的人工換気を受けたのは320例(12.2%)、腎代替療法を受けたのは81例(3.2%)で、死亡は553例(21%)だった。機械的換気を必要とした患者の死亡率は88.1%だった。 退院後のフォローアップ中央値は4.4日(IQR:2.2~9.3)で、試験期間中の再入院率は2.2%(45例)。再入院までの日数中央値は3日(IQR:1.0~4.5)だった。 フォローアップ最終日時点での入院者は3,066例(年齢中央値65歳[IQR:54~75])で、観察打ち切りまでのフォローアップ期間中央値は4.5日(IQR:2.4~8.1)だった。

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COVID-19流行下で不安募らせるがん患者、医師は受け身から能動へ?

 がん患者の自分が感染したら致命的なのではないか、治療を延期しても大丈夫なのか、この発熱は副作用かそれとも感染か―。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染が拡大する中、がん患者の不安は大きくなってしまっている。エビデンスが十分とはいえない中、また医師自身にも感染リスクがある中で、治療においてどのような判断をし、コミュニケーションを図っていけばよいのか。4月21日、「新型コロナ感染症の拡大を受け、がん患者・家族が知りたいこと」(主催:一般社団法人CancerX)と題したオンラインセッションが開催され、腫瘍科や感染症科など各科の専門医らが、患者および患者家族からの質問に答える形で議論を行った。がんの既往があると重症化リスクが高いのか?と聞かれたら 大須賀 覚氏(アラバマ大学バーミンハム校脳神経外科)は、現状のデータだけでは十分とは言えないとしたうえで、「すべてのがん患者さんが同じように重症化リスクが高いとはかぎらない」と説明。英国・NHSによるClinical guideから、とくに脆弱とされる状況を挙げた:• 化学療法を現在受けている• 肺がんで、放射線治療を受けている• 血液または骨髄のがん(白血病、リンパ腫、骨髄腫)に罹患している• がんに対する免疫療法または他の継続的な抗体治療を受けている• その他、免疫系に影響するタンパク質キナーゼ阻害薬やPARP阻害薬などの分子標的療法を受けている• 6ヵ月以内に骨髄移植や幹細胞移植を受けた人、または現在、免疫抑制剤の投与を受けている• 60歳以上の高齢• がん以外の持病がある(心・血管系疾患、糖尿病、高血圧、呼吸器疾患など) 市中に感染が蔓延している状況下では、病院へ行く頻度が高い人はやはり感染リスクが高くなるとして、治療によるベネフィットを考慮したうえで、受診の機会をどうコントロールしていくかが重要になると話した。感染のリスクと治療のベネフィットを、どう考えるか 大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター病院国際感染症センター)は今後の流行の状況について、「いま来ている波が落ち着いたとしても、また次の波に警戒しなければならない」とし、ある程度長い期間、寄せては返しを繰り返すのではないかと話した。先がみえない状況の中で、治療延期の判断、延期期間をどう考えていけばよいのか。 勝俣 範之氏(日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科)は、「がん治療の延期・中止は非常に慎重に行うべき」として、病状が安定していて、半年に一度などのフォローアップの患者さんで、たとえば1ヵ月後に延期する、といったところから始めていると話した。 大須賀氏は、医療資源が確保できず安全な治療自体が行えない場合、いま治療を実施することによって感染リスクが高まると判断される場合は延期・治療法の変更が検討されるとし、治療自体の緊急性や効果といった個別の状況のほか、地域での感染状況などから総合的に判断されるというのが現状の世界での基本的見解だろうと話した。 そして、もし治療の延期や変更を決めた場合には、「なぜ延期/変更されたのかを患者さんが理解しないといけないし、医師は理解できるように説明できないといけない」と上野 直人氏(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター乳腺腫瘍内科)。会場の参加医師からは、貴重な受診機会を効率的なものにするために、平時以上に、患者さんに事前に質問事項をメモして来院するよう伝えるべきではという声も聞かれた。続く緊張と感染への不安で食事がとれなくなっている患者も 秋山 正子氏(認定NPO法人マギーズ東京)は、感染を心配しすぎて過敏になり、食事や水分をまともにとれていないような状況もある、と指摘。電話相談などを受けていると、家にずっと閉じこもる状況下で緊張状態になり、身体をうまく休めることができなくなっている人もいるという。 天野 慎介氏(一般社団法人 全国がん患者連合会)は、「まず自分がストレスを感じていることを認めて受け入れる」ことが重要と話した。そのうえで、日本心理学会によるアウトブレイク下での精神的ストレスを軽減させるための考え方(もしも「距離を保つ」ことを求められたなら:あなた自身の安全のために)について、その一部を紹介した:• 信頼できる情報を獲得する• 日々のルーティンを作り,それを守る• 他者とのヴァーチャルなつながりをもつ• 健康的なライフスタイルを維持するつながらない代表電話、医師ができる積極的アプローチとは がん治療中に発熱した場合、それが化学療法による副作用なのか、あるいは感染の疑いがあるのか、患者自身が判断するのは不可能で、味覚障害や下痢なども、鑑別が難しい。佐々木 治一郎氏(北里大学病院 集学的がん診療センター)は、「がん治療中の患者さんに関しては、発熱などの何らかの症状があった場合、保健所ではなく、まず主治医に連絡してもらうようにしている」と話した。 しかし現在、多くの病院で代表電話は非常につながりにくい状況になっている。会場からは、各病院でもがん相談支援センターの直通電話は比較的かかりやすいといった情報が提供された。佐々木氏は、「自粛して1人あるいは家族だけと自宅にいる患者さんに、何らかの支援を提供できるよう動いていくときなのではないか」とし、医師は普段は受け身で相談を受けているが、今はこちらから電話をするなど、積極的なアプローチが必要なのではないかと話した。正しい情報にアクセスし、適切なサポートにたどり着いてもらうために 「10秒息を止められれば大丈夫」「水を飲めば予防できる」など、驚くようなデマが拡散し、そして思った以上に患者さんたちはそういった情報に翻弄されてしまっていると勝俣氏。信頼できる情報にアクセスできるように、医療者がサポートしていく必要性を呼び掛けた。また秋山氏は、「直接ではなくても、電話やネットなどのツールを活用し、誰かとつながって話すことで、かなり不安が軽減する」とし、電話相談の窓口などを活用してほしいと話した。本セッション中に登壇者や参加者から提供された情報源や相談窓口について、下記に紹介する。■新型コロナウイルスに関する情報臨床腫瘍学会「がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A」チームオンコロジー「新型コロナウイルス(COVID-19)関連リンク集」日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT)「新型コロナウイルス情報リンク集」大須賀 覚先生のnote■相談窓口などマギーズ東京「メールやお電話などのご案内」日本臨床心理士会「新型コロナこころの健康相談電話のご案内」厚生労働省「新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談」

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第6回 ARDS合併COVID-19患者、間葉系幹細胞治療で8割が生存

JCRファーマ社の急性移植片対宿主病(急性GvHD)治療薬・テムセルHS注の技術を提供したオーストラリア拠点のMesoblast社が開発している間葉系幹細胞(MSC)治療薬remestemcel-Lが、米国・ニューヨーク市の緊急事態を斟酌して新型コロナウイルス感染(COVID-19)患者に使用され、有望なことに急性呼吸窮迫症候群(ARDS)合併患者12例中10例(83%)が生存し続けました1)。肺に水が溜まって重度の酸素欠乏をもたらすARDSに陥ると人工呼吸器が必要ですが、12例中9例(75%)はおよそ10日(中央値)ほどで人工呼吸器を無事外すことができました。4月初め、米国FDAはCOVID-19によるARDS患者へのremestemcel-Lの試験実施や試験に参加できない患者に同剤を広く使うことを許可しています2)。その認可を受け、Mesoblast社はニューヨーク市での治療成績を参考にして準備を進め、中等~重度ARDSを患う人工呼吸器使用COVID-19患者を対象にしたプラセボ対照第II/III相試験を早速始めています3)。免疫調節作用があると考えられている多能性細胞・間葉系幹細胞(MSC)のCOVID-19患者への投与は中国でも試みられており、3月中旬にAging and Disease誌に掲載されたプラセボ対照試験では、重度COVID-19患者7例全員がMSC投与で回復したと報告されています4,5)。一方、プラセボ群の3例のうち1例は安定状態を維持したものの1例は死亡し、1例は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に陥りました。ただし、悪化したそれら2例はMSC投与群の最高齢の患者よりおよそ10歳歳上でした。年齢とCOVID-19患者の死亡率はおそらく密接に関連することが知られており、年齢差が結果に影響したとするアイルランド大学Daniel O’Toole氏の指摘を、科学ニュースThe Scientistは紹介しています6)。65歳の重症COVID-19女性患者1例に臍帯MSCを投与した症例報告もあります7)。査読前論文登録サイトChinaXivに2月末に掲載されたその報告によると、女性の状態は改善しましたが、女性の臨床検査値の多くはMSC開始前に改善していて説得力に欠ける、とアラバマ大学のサイトカインストーム(cytokine storm)研究家のRandy Cron氏は言っています。ニューヨーク市でMesoblast社開発品が使われた患者数は以前のそれらの報告に比べて多く、有望そうですが、治療効果の確立には何はともあれ無作為化試験が必要です。Mesoblast社もそれは十分承知のようで、先月末に早速始まったプラセボ対照無作為化試験でremestemcel-LがARDS合併COVID-19患者の生存を延長するかどうかの白黒をきっちりつける(rigorously confirm)つもりです1)。試験は米国立衛生研究所(NIH)が助成するCardiothoracic Surgical Trials Network(CTSN)と協力して進められ、ARDS合併のCOVID-19患者最大300例が参加します。ARDSの引き金となるサイトカインストームを鎮めることを目指すMSCのCOVID-19試験は20以上もClinicalTrials.govに登録されており、remestemcel-LをはじめとするMSC治療がCOVID-19に有効かどうかはそう時を待たず判明しそうです。また、本連載第1回で紹介した、ARDS合併のCOVID-19患者へのt-PA投与試験は米国で予定通り患者組み入れがスタートしています8)。参考1)83% Survival in COVID-19 Patients with Moderate/Severe Acute Respiratory Distress Syndrome Treated in New York with Mesoblast’s Cell Therapy Remestemcel-L / GlobeNewswire2)FDA CLEARS INVESTIGATIONAL NEW DRUG APPLICATION FOR MESOBLAST TO USE REMESTEMCEL-L IN PATIENTS WITH ACUTE RESPIRATORY DISTRESS SYNDROME CAUSED BY COVID-193)Phase 2/3 Randomized Controlled Trial of Remestemcel-L in 300 Patients With COVID-19 Acute Respiratory Distress Syndrome Begins Enrollment4)Leng Z ,et al. Aging Dis. 2020 Mar 9;11:216-228.5)Can cell therapies halt cytokine storm in severe COVID-19 patients? / Science6)Are Mesenchymal Stem Cells a Promising Treatment for COVID-19? / TheScientist7)Clinical remission of a critically ill COVID-19 patient treated by human umbilical cord. ChinaXiv. 2020-02-278)Old Drug, New Treatment? /Harvard Medical School

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VICTORIA試験を読み解く(解説:安斉俊久氏)-1223

 第69回米国心臓病学会年次学術集会は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け開催は見送られたが、心不全増悪の既往を有する心不全患者5,050例を対象として、可溶型グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬の効果をプラセボ群と比較したVICTORIA試験の結果は2020年3月28日にWEB上で公開され、同日、New Engl J Med誌に掲載となった1)。結論として、左室駆出率(LVEF)が45%未満の症候性慢性心不全において、ガイドラインに準じた治療にsGC刺激薬であるvericiguat(1日1回、10mgまで増量)を追加投与することで、心血管死ならびに心不全入院からなる複合エンドポイントを10%有意に減少させることが明らかになった(35.5% vs.38.5%、ハザード比[HR]0.90、95%信頼区間[CI]0.82~0.98、p=0.02)。ただし、心血管死単独、心不全入院単独では2群間に有意差を認めなかった。全死亡と心不全入院を合わせた複合エンドポイントは、1次エンドポイントと同様にvericiguat群でプラセボ群に比較し、有意に低率であった(HR:0.90、95%CI:0.83~0.98、p=0.02)。また、同薬剤の治療効果は、併用する心不全治療薬に関係なく、一貫して認められ、治験開始時のN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値が比較的低値の患者集団においてより有効であった。症候性低血圧や失神などの有害事象に有意差は認めず、従来の治療を行いつつも入院加療あるいは心不全増悪を来した症例に対して、良好な予後改善効果をもたらす新規治療薬として着目されるに至った。また、1件の主要アウトカムイベントを予防するために1年間の治療が必要な症例数(NNT:number needed to treat)は約24例であった。 心不全治療薬の中でも、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)であるsacubitril-バルサルタンは、sGC刺激薬と同様に膜結合型グアニル酸シクラーゼ(pGC)の活性化を介して細胞内のcGMPを増加させる薬剤であるが、同薬剤を併用している群においても有効性が示された意義は大きい。LVEFの低下した心不全(HFrEF)における一酸化窒素(NO)の利用能障害の存在は古くからいわれているが2-4)、あらためてNO-sGC-sGMP経路の重要性が示唆されたといえる。 心不全におけるNO利用能障害には、酸化ストレスなどによる血管内皮機能障害が関与しており、HFrEFの併存症として頻度の高い冠動脈疾患、高血圧、慢性腎臓病などでも血管内皮機能障害を認めることから5)、結果として血管拡張反応を減弱させ、前・後負荷を増大させることにより心不全を悪化させる要因となる。また、肺高血圧を合併した心不全においては、肺動脈における血管内皮機能障害も生じ6)、心不全の増悪因子になるほか、骨格筋における血管内皮機能障害は運動耐容能低下にも関与する7)。sGC刺激薬によるcGMP増加は、こうした全身における内皮機能障害を代償するとともに、心筋においては虚血の改善と同時に心筋細胞内のcGMP産生を増加させることで、プロテインキナーゼG(PKG)の活性化を介して心筋の拡張能を改善し、左室充満圧の上昇を抑制する可能性も考えられる。 VICTORIA試験では、治験開始時のNT-proBNP値が2,816pg/mlであり、最近行われたARNIを用いたPARADIGM-HF試験やSGLT2阻害薬を用いたDAPA-HF試験9)におけるNT-proBNP値の1,608pg/ml、1,437pg/mlに比べ高値であったが、sGC刺激薬の効果は、NT-proBNP値が低値であった全体の4分の3の患者集団で認められていた。したがって、1次エンドポイントの抑制効果がこれらの試験よりも低かった原因として、より重症の症例がエントリーされていた可能性があり、sGC刺激薬の効果を得るには、NT-proBNP値が著明に上昇し重症心不全に至る前の段階で追加投与すべきと考えられる。VICTORIA試験では、アジア人の登録が全体の22.4%を占めており、10mgに対するアドヒアランスも89%と良好であったことより、いずれ本邦においても入退院を繰り返す心不全症例に対して積極的な使用が推奨されるものと考えられる。引用文献1)Armstrong PW, et al. N Engl J Med. 2020 Mar 28. [Epub ahead of print]2)Kubo SH, et al. Circulation. 1991;84:1589-1596.3)Ramsey MW, et al. Circulation. 1995;92:3212-3219.4)Katz SD, et al. Circulation. 2005;111:310-314.5)Zuchi C, et al. Heart Fail Rev. 2020;25:21-30.6)Elkayam U, et al. J Card Fail. 2002;8:15-20.7)Carbone S, et al. Current Prob Cardiol. 2019:100417.8)McMurray JJV, et al. N Engl J Med. 2014;371:993-1004.9)McMurray JJV, et al. N Engl J Med. 2019;381:1995-2008.

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ラメルテオンとスボレキサントのせん妄予防に対する有効性

 実臨床における、せん妄予防に対するラメルテオンとスボレキサントの有効性について、順天堂大学の八田 耕太郎氏らが、調査を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2019年12月17日号の報告。ラメルテオンとスボレキサントのせん妄予防効果が示唆された 本研究は、多施設共同プロスペクティブ観察研究である。コンサルテーションリエゾン精神科サービスでトレーニングを受けた精神科医により、2017年10月1日~2018年10月7日に実施した。対象は、急性疾患または待機手術により入院した65歳以上の、せん妄は認められていないがせん妄のリスクを有する患者(リスク患者)、および診察前夜に不眠症またはせん妄が認められた患者(せん妄患者)。対象患者に対し、ラメルテオンおよび/またはスボレキサントが処方された。薬剤の処方は、各患者の裁量に委ねられた。主要アウトカムは、最初の7日間におけるDSM-Vに基づくせん妄の発症率とした。 せん妄予防に対するラメルテオンとスボレキサントの有効性を調査した主な結果は以下のとおり。・リスク患者526例では、ラメルテオンおよび/またはスボレキサントを使用した患者(15.7%)は、使用しなかった患者(24.0%)と比較し、リスク因子で制御後のせん妄発症率が有意に少なかった(オッズ比[OR]:0.48、95%CI:0.29~0.80、p=0.005)。・せん妄患者422例でも、同様の結果であった(39.9% vs.66.3%、OR:0.36、95%CI:0.22~0.59、p<0.0001)。 著者らは「ラメルテオンとスボレキサントには、実臨床におけるせん妄予防効果が示唆された」としている。

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第6回 COVID-19パンデミックと“テレリハ”?【今さら聞けない心リハ】

第6回 COVID-19パンデミックと“テレリハ”?今回のポイント新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐため、全国の病院では外来の心リハを休止せざるを得ない状況となっている心リハは運動療法だけではなく疾患管理プログラムとしての役割を担っているため、外来の心リハ休止により心疾患の再発悪化の増加が懸念される外来の心リハ休止の悪影響を最小限に抑えるためには、どのような対応が求められるか、外来再開時には何に注意すべきか現在、新型コロナウイルス感染拡大は全世界に及んでおり、その収束の見通しは立っていません。日本では都市部を中心として感染者が急増しており、政府は4月7日に東京など7都府県を対象に緊急事態宣言を発出しました。4月17日には全国都道府県に緊急事態宣言の対象が拡大。それとともに、これまでの宣言の対象であった7都府県に京都を含む6つの道府県を加えた13都道府県については、とくに重点的に感染拡大防止の取り組みを進めていくべき「特定警戒都道府県」と位置付けられました。筆者の勤務する京都大学医学部附属病院(京大病院)でも、新型コロナウイルス感染症対策として外来の心リハを4月9日より中止しています。心リハは心筋梗塞や心不全などの心疾患患者にとってとても大切な治療であることをこれまでの連載で語ってきました。今回は、『緊急事態とは言っても、心疾患患者にとって重要な心リハを中止しても大丈夫?』という疑問を持つ読者の皆様とともに、国内外の心リハの状況と対策について考えてみたいと思います。心リハ学会の指針は?4月20日に日本心臓リハビリテーション学会より、“COVID19 に対する心臓リハビリテーション指針”が公開されました。要点は以下の3つです。1)入院中の心リハは自粛せず、適切に導入・継続する2)外来の心リハは中止し、自宅での在宅リハを推奨する3)運動処方目的の心肺運動負荷試験(CPX)は実施しない補足事項として、入院患者に心リハを行う場合も、手指消毒・マスク装着・密集を避ける(患者間は2mの距離を設ける)などの感染対策を徹底する、感染患者の新規発生がみられない地域では外来の心リハ実施も許容される、と書かれています。ただし、こちらの指針が作成されたのは緊急事態宣言の対象が全国に拡大されるより前の4月13日のことであり、現時点では全国の施設での外来心リハ実施は中止することが妥当と考えられます。ヨーロッパ・アメリカでは?世界保健機構(WHO)の発表によると、4月22日時点の新型コロナウイルスの感染者数は日本では1万1,118例です。一方、ヨーロッパでは118万7,184例、アメリカでは89万3,119例と桁違いに多く、まさに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにあることがわかります。心リハの先進国でもあるヨーロッパ・アメリカですが、COVID-19パンデミックで心リハはどうなっているのでしょうか。ヨーロッパ心臓病学会(ESC)の推奨ヨーロッパ心臓病学会(ESC)は4月8日に‘Recommendations on how to provide cardiac rehabilitation activities during the COVID-19 pandemic’を公開しています。ここでは、COVID-19パンデミックにより各国での心リハの実施に障害が生じていることを述べたうえで、以下、10の推奨が示されています。1)COVID-19パンデミックの状況を定期的に確認する2)COVID-19患者を扱える準備をする3)COVID-19パンデミックが心疾患患者に与える結果について系統的に検討する4)現状で提供できる最大限の心リハを実施する5)患者の要望に対して個別の病状に配慮したうえで応じられるよう準備する6)なんらかの症状がでた際には、必要な医療を後回しにせず適切な支援を受けられるように患者に指導する7)偽情報に惑わされない8)包括的心リハのすべての要素を含む電話での遠隔リハ(telerehabilitation programmes:テレリハプログラム)を実施する9)医療および地域連携による患者の心理サポートを行う10)施設における心リハ再開の準備をする施設の状況によっては、通常通りの心リハ運営が難しくなっている場合もあります。COVID-19患者対応でスタッフが配置転換となり、心リハを完全に閉じている施設もあります。ESCは施設の状況に応じた推奨を示しています。心リハを閉じている施設に対しては、残っているスタッフまたは配置転換となったスタッフ間で連携し、COVID-19が心疾患に与える影響についての情報共有や遠隔リハの開始について検討することが推奨されています。心リハの運営ができている施設には、入院患者と回復期の外来患者は、手指消毒・マスク装着・密集を避けるなどの感染対策を実施したうえで行うこと、ただし回復期または維持期の外来患者については可能であれば対面ではなく、電話やメール、アプリなどを活用した遠隔リハ(患者評価と指導)を行うことが推奨されています。米国のほうはCOVID-19パンデミック下の心リハについてESCほどまとまったものはありませんが、AACVPR(American Association of Cardiovascular and Pulmonary Rehabilitation)が3月13日に公表した‘AACVPR Statement on COVID-19’には、各施設の方針に従って心リハを実施すること、外来の心リハが実施できない患者には有効な在宅運動指導を検討することが書かれています。米国ではCOVID-19パンデミック以前の昨年7月に“在宅心リハについてのステートメント”が公表されています。テレリハ、具体的にどうする?では、テレリハ、“電話やメール、アプリなどを活用した遠隔リハ”は、どのように実践すればいいでしょうか。言うは易し、行うは難し、ですね。患者さんに心リハスタッフが電話して、『運動しましょうね』と言えばそれだけでいいのでしょうか。心疾患患者さんには、運動をするにあたってメディカルチェックが必要です。テレリハであっても、そのプロセスは省けません。さらに、テレリハを行うにあたって、スタッフ間での対応も統一する必要があります。電話での患者情報聴取は何を聞けばよいか、もし患者が症状の悪化を訴えたら、どの程度で受診を促すべきなのか…。当院では、複数のメディカルスタッフが心リハに携わっています。そこで今回、心リハのメディカルスタッフで協働して「テレリハプログラム」を作成し、4月9日より運用を開始しました。(表)京大病院で活用している、テレリハ問診チェックリストPDFで拡大するこれはESCの‘Recommendations on how to provide cardiac rehabilitation activities during the COVID-19 pandemic’の公開を知る前に作成したものでしたが、ESCの推奨8)の“包括的心リハの全ての要素を含む電話でのテレリハプログラム(telerehabilitation programmes)”にほぼ相当する内容になっているようです。心リハを専門にする医療者の考えることは、日本もヨーロッパも同じようなレベルにあるということでしょうか。運動の内容についても、具体的な指導が必要です。「一人で運動してください」と言われても、どうしたらいいのか、患者の立場だったら困りますよね。単に歩けばそれでいいのでしょうか。外出を控えることが一人一人の国民に求められている現状で、どこを歩けばいいのか、街中に住んでいる患者さんには難しい問題です。具体的な運動内容を患者さんに提供するために、当科のホームページに当院の心リハで実施している体操プログラムを公開しました。外来の心リハ患者さんでインターネットアクセスが可能な方には活用していただくようお伝えしています。COVID-19パンデミックは心リハイノベーションをもたらすか?緊急事態宣言により、さまざまな企業・病院で、テレワークなどの新しい働き方が整備されました。大学での会議や授業もWebが導入されるなど、教育にも新しい仕組みが導入されています。これまで、1~2時間の会議のために京都から東京まで出張することが多かった私も、往復の交通に要する時間や費用など、無駄を省けたことにはメリットを感じています。通常の外来でも電話診療が本格的に始まりました。遠方から検査がない日に薬の処方目的に来院されていた患者さんにとっては、かなりメリットが大きいようです。心リハでも、今回を機に遠隔リハ体制が整えば、外来の心リハの一部はテレリハに移行できる可能性があります。しかし、現在のテレリハは医療者の無償奉仕に依存しており、テレリハの普及には診療報酬制度の見直しなども必要そうです。<Dr.小笹の心リハこぼれ話>今回はDr.小笹とともに当科で活躍する、鷲田 幸一氏(京大病院 慢性心不全看護認定看護師)のこぼれ話を紹介します。「テレリハを開始して」私が実際に患者さんにお電話をして感じたのは、「多くの患者さん・ご家族は先の見えない現状に不安を抱いていること」、また外出自粛などにより、身体活動度が減少するだけでなく「social distance(社会的距離)を超えて、social isolation(社会的孤立)に陥っていること」でした。これらは、とくに独居の高齢者には大きな問題のように思います。ESCの推奨9)にあるように、心理面での支援も医療者として非常に重要だと感じています。疾患管理をするための形式的な問診だけではなく、患者さん・ご家族を気遣いながらコミュニケーションを取り、不安を増大させることなく日常の生活(食事・睡眠)を続けているかを確認する。そして、その中で、疾患管理としてのモニタリングや、適切な食事・活動についてのアドバイスを行う必要があるのだと思っています。今後、多くの病院で同様の取り組みが拡がり、自宅で孤立している患者さんの疾患・生活・心理面で支援拡大を願います。

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アルコール使用障害に対する運動介入~メタ解析

 アルコール使用障害(AUD)患者に対する運動介入の影響について、トルコ・パムッカレ大学のFatih Gur氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。American Journal of Health Promotion誌オンライン版2020年3月26日号の報告。 2000~18年に公表された、成人AUD患者を対象に運動介入の有効性を評価した研究を、PubMed、Medline、Web of Science、Scopus、Academic Search complete、Sport Discuss、ERICデータベースより検索した。システマティックレビュー・メタ解析の標準的プロトコールおよび観察研究ガイドラインに基づき、データを抽出した。身体活動レベルおよびフィットネス(最大酸素摂取量[VO2max]、最大心拍数[HRmax])、うつ病、不安、自己効力感、QOL、アルコール消費(1日および1週間に消費される標準的な飲酒数)のデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・VO2max(標準平均差[SMD]:0.487、p<0.05)およびHRmax(SMD:0.717、p<0.05)による評価では、運動介入は、身体的なフィットネスを有意に改善した。・運動介入は、QOLにより評価されるメンタルヘルスを有意に改善したが(SMD:0.425、p<0.05)、うつ病、不安、自己効力感、アルコール消費では、有意な変化が認められなかった。・有酸素運動では、ヨガや混合した場合と比較し、うつ症状や不安症状の緩和が認められた。・運動時間も、うつ症状や不安症状に影響を及ぼしていた。 著者らは「AUD患者に対する運動介入は、効果的かつ持続可能な補助療法となりうる」としている。

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RA系阻害薬、COVID-19の重症度に関連みられず/JAMA Cardiol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院中、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を服用している高血圧患者が、COVID-19の重症度や死亡リスクを上昇したかどうかを中国・武漢市の華中科技大学のJuyi Li氏らが検討した。その結果、これらのRA系阻害薬の服用はCOVID-19の重症度や死亡率と関連しないことが示唆された。JAMA Cardiology誌オンライン版2020年4月23日号に掲載。 本研究では、2020年1月15日~3月15日に武漢中央病院に入院したCOVID-19患者1,178例を後ろ向きに調査した。COVID-19はRT-PCR検査で確認し、すべての患者の疫学、臨床、放射線、検査、薬物療法のデータを分析した。ACEI/ARBを服用している高血圧患者の割合を、COVID-19重症者と非重症者、および生存者と死亡者の間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・1,178例の平均年齢は55.5歳(四分位範囲:38~67歳)で、男性が545例(46.3%)だった。・入院中の全死亡率は11.0%だった。・高血圧患者は362例(30.7%)、平均年歳は66.0歳(四分位範囲:59~73歳)、男性が189例(52.2%)で、115例(31.8%)がACEI/ARBを服用していた。・高血圧患者の入院中の死亡率は 21.3%だった。・ACEI/ARBを服用していた高血圧患者の割合は、COVID-19重症者と非重症者の間で差はなく(32.9% vs.30.7%、p=0.65)、死亡者と生存者の間でも差はなかった(27.3% vs.33.0%、p=0.34)。・ACEI服用患者とARB服用患者のデータの分析でも同様の結果が観察された。

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ペムブロリズマブ単剤は高齢患者にも有用かKEYNOTE-010、024、042統合解析【肺がんインタビュー】 第45回

第45回 ペムブロリズマブ単剤は高齢患者にも有用かKEYNOTE-010、024、042統合解析肺がん患者の多くは高齢者である。近年登場した免疫治療薬は、肺がん治療においても幅広く適用され始め、高齢肺がんにおいても、その有用性が期待される。しかし、臨床試験での高齢者のデータは少ない。そのような中、高齢者への有効性と安全性を評価した、ペムブロリズマブ単剤の大規模RCTの統合解析がLung Cancer誌で発表された。筆頭著者である野崎 要氏にこの試験から得られる新たな知見について聞いた。肺がん最大の高齢者データセット―この試験を実施した背景を教えていただけますか。ご存じのとおり、肺がん患者さんの多くは高齢者です。高齢者の定義は日本肺癌学会ガイドラインでは75歳となっています。免疫チェックポイント阻害薬が登場し、その使用機会も著しく増加していますが、免疫チェックポイント阻害薬のピボタル試験では65歳を境にした解析が多く、75歳以上のデータは数少ないのが現状です。そこで、ペムブロリズマブ単剤の3つのピボタル試験の統合解析から75歳以上の患者のデータを抽出し、75歳以上の高齢患者におけるペムブロリズマブ単剤の効果と安全性を評価しました。―3つのピボタル試験について教えていただけますか。KEYNOTE-010、024、042試験の3つです。これらはすべて企業(MSD)主導のグローバル試験です。KEYNOTE-010試験は2016年のLancet誌に結果が発表された既治療のPD-L1発現(1%以上)非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するペムブロリズマブ単剤の試験です。KEYNOTE-024試験は、1次治療のPD-L1高発現(50%以上)NSCLC患者に対するペムブロリズマブ単剤とプラチナ併用化学療法の比較試験で、2016年、New England Journal of Medicine誌に結果が発表されました。私は、前勤務地でこの試験に施設の試験責任医師として参加しています。KEYNOTE-042試験は、同じく1次治療ですが、PD-L1発現(1%以上)NSCLC患者に対するペムブロリズマブ単剤とプラチナ併用化学療法の比較試験で、2019年のLancet誌に結果が発表されています。画像を拡大する―試験デザインについて教えていただけますか。今回の研究では、前出のペムブロリズマブの3つのピボタル試験で、下記の4つの統合解析を行い、1次治療であるKEYNOTE-024、KEYNOTE-042試験については、下記の2つの統合解析を行いました。画像を拡大する高齢者へのペムブロリズマブ単剤治療、有効性、安全性とも若年者と同様―この研究の主な結果を教えていただけますか。3試験全体でみた75歳以上のペムブロリズマブ単剤の全生存期間(OS)は、化学療法に比べ有意に良好でした。PD-L1≧1%でのOSは、ペムブロリズマブ単剤15.7ヵ月に対し、化学療法は11.7ヵ月(HR:0.76)、PD-L1≧50%でのOSは19.2ヵ月vs.11.9ヵ月です(HR:0.40)。また、1次治療であるKEYNOTE-024と042における75歳以上のOSは、PD-L1≧50%で23.1ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.41)と、こちらもペムブロリズマブ単剤群は化学療法に比べ良好でした。―高齢患者の有害事象の発現についてはいかがでしたか。75歳以上における治療関連有害事象(TRAE)は、化学療法に比べ、ペムブロリズマブ単剤で少なく、全Gradeで68.5% vs.94.3%、Grade3以上では24.2% vs.61.0%でした。75歳以上と75歳未満を比べても同様でした。TRAE発現は75歳以上68.5%に対し75歳未満65.2%、免疫関連有害事象(irAE)発現は24.8% vs.25.0%と同等でした。―この研究は、264例という75歳以上では最大規模の試験となりますが、この結果を高齢者肺がんの実臨床にどう応用できるとお考えですか。当研究は、事後解析ですので、いくつかの限界(limitation)があります。組織型(ペムブロリズマブに扁平上皮がんが多い)、喫煙状況(ペムブロリズマブに喫煙者が多い)といった患者背景に偏りがあります。また、1次治療として行われた2試験(KEYNOTE-024と042)に参加できたのは、プラチナ併用療法に忍容性がある方で、実地臨床における高齢患者さんとはやや異なる可能性があります。また、PD-L1 1~49%のデータは示されていません。とはいえ、前向き試験によって抽出された臨床データで、ペムブロリズマブ単剤の有効性、有害事象も高齢者とそれ以外で大きく変わらないことが示されたことは重要だと思います。とくに、PD-L1高発現に対するペムブロリズマブの治療効果(OSカーブ)は75歳以上と75歳未満で変わらないように見えます。このようなことから、少なくともPD-L1高発現の全身状態の良い高齢者には積極的にペムブロリズマブを使用することを勧めて良い、ということはいえると思います。参考原著:Nosaki K, et al. Lung Cancer.2019;135:188-195.KEYNOTE-010: Herbst RS, et al. Lancet. 2016;387:1540-1550.KEYNOTE-024: Reck M, et al. N Engl J Med. 2016 ;375:1823-1833.KEYNOTE-042: Mok TSK, et al. Lancet. 2019;393:1819-1830.

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ルムジェブ:より速やかなインスリン作用発現を実現

血糖変動を意識した糖尿病治療近年、糖尿病治療ではHbA1cに加えて日々の血糖変動、いわゆる血糖トレンドが重要視されるようになっている。2019年には新たな国際コンセンサスレポートも公表され、1日のうち70%以上の時間で、血糖変動を70~180mg/dLの範囲内に収めることが推奨された1)。血糖変動を目標の範囲内に収めるためには、食後の急激な血糖上昇を抑えることも重要だ。その治療法としては、速効型、超速効型のインスリン製剤が主流であり、投与タイミングは食事開始15~30分前となっている。しかし、実際には食事開始前2分以内に投与する人も多いという報告があり2)、そういったケースでは食後の血糖上昇の抑制が遅れる可能性があった。速やかなインスリン作用発現が実現こうした背景から、食後のより速やかなインスリン作用発現を実現すべく、超速効型インスリンアナログ製剤ルムジェブ注(一般名:インスリン リスプロ[遺伝子組み換え])が開発された。ルムジェブ注は、既存の超速効型インスリンアナログ製剤ヒューマログ注(一般名:インスリン リスプロ[遺伝子組み換え])の有効成分に添加剤を加えることで、皮下からの吸収をより速めた薬剤で、2020年3月に製造販売承認を取得した。実際に日本人1型糖尿病患者を対象とした試験では、ヒューマログ注と比較して最高血中濃度到達までの時間が約13分、曝露持続時間が88分短縮したことが報告されている3)。食後血糖上昇の抑制について優越性を確認ルムジェブ注の有効性は、1型糖尿病患者を対象としたPRONTO-T1D試験、および2型糖尿病患者を対象としたPRONTO-T2D試験で検討された4), 5)。本試験では、基礎インスリンを併用する糖尿病患者(1型1,222例、2型673例)に対して、ルムジェブ注またはヒューマログ注を盲検下で1日3回食直前(食事開始0~2分前)に皮下投与した。主要評価項目である投与26週時におけるHbA1cのベースラインからの変化量の差は、T1D、T2D試験それぞれ-0.08%(95%CI[-0.16、0.00])、0.06%(95%CI[-0.05、0.16])であり、ヒューマログ注に対するルムジェブ注の非劣性が認められた(非劣性マージン0.4%)。また同試験では、食後の血糖上昇の低減作用も検討された。投与26週時における食後血糖のベースラインからの変化量の差は、食後1時間でT1D、T2D試験それぞれ-27.9 mg/dL(95%CI[-35.3、-20.6])、-11.8 mg/dL(95%CI[-18.1、-5.5])だった。また食後2時間でそれぞれ-31.2 mg/dL(95%CI[-41.1、-21.2])、-17.4 mg/dL(95%CI[-25.3、-9.5])であり、食後1時間、2時間ともにヒューマログ注に対するルムジェブ注の優越性が認められた。なおT1D試験では、ルムジェブ注を非盲検下で食後(食事開始後20分)に投与した群と、ヒューマログ注を食事前に投与した群についても、投与26週時におけるHbA1cのベースラインからの変化量の差が検討された。その結果は0.13%(95%CI[0.04、0.22])であり、食事後の投与においてもヒューマログ注に対するルムジェブ注の非劣性が認められた。ルムジェブ注への期待上記臨床試験などの結果から、ルムジェブ注は食直前の投与でよりメリットが大きいと考えられるため、食時開始後(食事開始から20分以内)の投与も可能だが、通常は食事開始時(食事開始前 2 分以内)の投与が推奨されている。ルムジェブ注の効果を最大限発揮するためには、こうした投与タイミングについて患者にきちんと指導することも重要だ。速やかなインスリン作用発現が得られるルムジェブ注により、食後の血糖上昇を抑え、血糖変動を目標範囲内に収めることを目指せると期待したい。1)Battelino T, et al. Diabetes Care. 2019;42:1593-1603.2)Ishii H et al. Diabetes Res Clin Pract. 2020;162:108076.3)Shiramoto M, et al. J Diabetes Investig. 2019 Dec 9. [Epub ahead of print]4)Klaff LJ, et al. ADA 2019.5)Blevins T, et al. ADA 2019.

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軽度~中等度のうつ病に対するサフランの効果~メタ解析

 うつ病治療において、ハーブ療法のニーズが高まってきている。最近までに蓄積された研究によると、抑うつ症状の緩和に対するサフラン(Crocus sativus L.)の好影響が明らかとなっている。中国・Jiujiang University Clinical Medical CollegeのLili Dai氏らは、利用可能なすべてのデータを結合し、軽度~中等度のうつ病治療におけるサフランの安全性および有効性を評価するため、メタ解析を実施した。The Journal of Nervous and Mental Disease誌2020年4月号の報告。 電子データベースおよびリファレンスリストのクロスチェックにより、関連文献を収集した。適格試験を慎重にレビューし、必要なデータを抽出した。ハミルトンうつ病評価尺度またはベックのうつ病自己評価尺度、治療反応率、寛解率、副作用について、サフラン治療とプラセボまたは抗うつ薬治療との比較検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、12研究を含めた。・全体的な結果として、サフラン治療は、プラセボと比較し、抑うつ症状の改善効果がより優れており、抗うつ薬治療と同等の効果が認められた。・副作用に関しては、サフラン治療とプラセボまたは抗うつ薬治療との間に、有意な差は認められなかった。 著者らは「サフランは軽度~中等度のうつ病患者を治療するうえで、抗うつ薬の代替薬となりうる可能性がある。しかし、この結果を確認するためには、サンプルサイズが大きく、治療期間の長い、異なる民族による多施設試験が必要とされる」としている。

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AI活用の皮膚がんスクリーニング、患者の受け止めは?

 COVID-19パンデミックを受け、国内では、時限措置ながら初診からのオンライン診療が解禁され、対面診療至上主義に大きな風穴を開けた。患者サイドの不安・不満が気になるところだが、人工知能(AI)による皮膚がんのスクリーニングについて、医師・患者の人間的な関係性が担保された状態ならば許容されうることが、米国・イェール大学医学大学院のCaroline A. Nelson氏らによる皮膚がん患者を対象とした質的研究結果によって示された。AIの利用は医学のあらゆる領域に及んでおり、皮膚科領域では、皮膚病変を分類するdirect-to-patientおよびclinician decision-supportのAIツールに関する評価が行われている。患者の受診行動を変えるAIの態勢はできているが、患者側からの観点はまだ十分に理解されていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年3月11日号掲載の報告。 研究グループは、患者がAIをどのように捉えているのか、また皮膚がんスクリーニングでのAI使用についてどのように理解しているかを調べる質的研究を行った。 ブリガム&ウィメンズ病院の一般皮膚科クリニックとダナ・ファーバーがん研究所の皮膚がんクリニックで、グランデッド・セオリーアプローチ(Grounded Theory Approach:GTA)を用いた半構造化インタビュー解析を行った。 各インタビューは、評価者相関測定法により2人のリサーチャーがそれぞれコード化した。調整済みコードを使って、コードの出現頻度を評価した。 主要評価項目は、AIの概念化について、AIのベネフィットとリスク、強みと弱み、AI適用の受け止め、ヒトとAIの臨床意思決定の齟齬に対する反応、AIを推奨するのか反対するのかについてであった。 主な結果は以下のとおり。・被験者対象は48例。研究は2019年5月6日~7月8日に行われた。・48例のうち26例(54%)が女性であり、平均年齢は53.3(SD 21.7)歳であった。・16例(33%)が黒色腫既往、16例(33%)が非黒色腫の皮膚がん既往、16例(33%)が皮膚がん非既往であった。・24例がdirect-to-patient AIツールについてインタビューを受け、24例がclinician decision-support AIツールについてインタビューを受けた。・2つのコーディングチームの評価者相関評価結果は、κ=0.94とκ=0.89であった。・患者はAIを主として、認知・認識(cognition)の概念として捉えていた。・皮膚がんスクリーニングにおけるAI使用のベネフィットとして最も多く認められたのは、診断スピードの上昇(29例[60%])および受診アクセスの増大(29例[60%])であった。・患者の不安の増大が最も多く認められたのは、リスクに関してであった(19例[40%])。・患者がAIの最大の強みと捉えているのは診断の正確性(33例[69%])である一方、最大の弱みと捉えているのは診断の不正確性(41例[85%])であった。・調査から浮かび上がった課題は、ヒトとAIの共生の重要性であった(45例[94%])。・ヒトとAI間の臨床意思決定の対立において、最も多く認められた反応は、生検を求めることであった(32例[67%])。・全体として36例(75%)が、AIを家族や友人に推薦するとした。

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