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ドイツの1人の女性を苛む3つの自己免疫疾患が、それらの元凶の悪辣なB細胞を駆除するように仕立てた自己T細胞で雲散霧消し、かつては10あまりの治療を受けたのが嘘のように、さらなる治療なしで1年超を無事で過ごせています1-3)。3つの自己免疫疾患はどれも免疫系の狼藉なB細胞が作る自己抗体に端を発します。その1つの自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は、自己抗体が赤血球を破壊することを原因とします。あと2つの自己免疫疾患の症状はまるで正反対で、その1つは血小板への自己抗体を原因とする免疫性血小板減少症(ITP)で、出血を生じやすくします。もう1つの抗リン脂質症候群は、凝固を防ぐタンパク質への自己抗体を原因とし、ITPとは反対に血栓症を生じやすくします。診断の後に女性は抗体薬、ステロイド、免疫抑制薬を含む9種類の治療を試みました。長期の高用量ステロイド投与は唯一のめぼしい治療ですが、免疫系全般を抑制する故に感染症の危険と背中合わせです。そのステロイドでさえ歯が立たず、さらには最先端も免疫抑制薬の手にも負えず、女性は診断から10年超を経た2025年、47歳のときにドイツのエルランゲン大学病院の血液専門医Fabian Muller氏のチームの下へ救急搬送されました。Muller氏のチームは、自己免疫疾患のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法の先駆けの試験で知られ、2022年には全身性エリテマトーデス(SLE)患者5例がその治療で寛解したことを報告しています4)。貧血の治療に毎日の輸血を要し、血栓症を防ぐための抗凝固薬を続けていた女性にMuller氏らは、同氏いわく最後の砦であったCAR-T細胞療法を施しました。投与したCAR-T細胞は女性から採取したT細胞を加工して作られ、B細胞のタンパク質のCD19を認識します。その働きによりB細胞を見つけ出し、除去することができます。体内で分裂でき、その効果は投与後に数年、なんなら10年も持続しうることが知られます。痛みや疲れで何週間も寝たきりで過ごすこともあった女性へのCAR-T細胞投与の効果は目覚ましく、その投与の1週間後を最後に輸血が不要になりました。2週間も経つと女性はより力がみなぎっていると感じ、日々の所作が可能になりました。3週間後には赤血球のタンパク質のヘモグロビン量が倍増して正常域となり、どうやら免疫系は赤血球を破壊しなくなっているようでした。血栓と関連する抗リン脂質抗体は徐々に減って見当たらなくなり、血小板数も安定に推移するようになりました。一回きりのCAR-T細胞投与から14ヵ月経つ今日、女性は薬を一切使うことなく無症状で過ごせています3)。がんのCAR-T細胞療法の先駆者の1人のCarl June氏によると、今や種々の自己免疫疾患のCAR-T細胞療法の200あまりの臨床試験が進行中です。これまではCAR-T細胞療法といえば主に白血病などの血液がんが相手でしたが、自己免疫疾患を治療するCAR-T細胞療法の承認がSLE、筋炎、強皮症用途を皮切りにして続くだろうとJune氏は予想しています3)。いくつかは向こう2~3年以内に米国で承認に漕ぎ着けそうです。参考1)Korte IK, et al. Med. 2026 Apr 9. [Epub ahead of print]2)CAR-T therapy drives remission in patient with three autoimmune diseases / Eurekalert3)One woman, three autoimmune diseases: CAR-T therapy vanquishes ultra-rare disease trio / Nature4)Mackensen A, et al. Nat Med. 2022;28:2124-2132.