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国の所得格差と心血管疾患2次予防薬の入手のしやすさ/Lancet

 世界の中・低所得国では、いまだに心血管疾患の2次予防薬が入手できない地域が多く、また世帯収入に比べ価格が高く入手しにくい状況も多いことが明らかにされた。パレスチナ・ビルゼイト大学のRasha Khatib氏らが、18ヵ国596ヵ所の都市部・農村部コミュニティが参加した前向き疫学調査「PURE研究」の結果、報告した。すでにPURE研究の結果として、心血管疾患の2次予防薬の利用率が世界的に低いことが報告されている。一方でWHOでは2025年までに、心血管疾患の2次予防薬が入手可能な地域の割合を80%に、服用適応者の服用率を50%にそれぞれ引き上げることを目標に掲げている。Lancet誌オンライン版2015年10月20日号掲載の報告より。世帯支払い能力の20%未満を「手頃」と定義 研究グループは2003~13年にかけて、PURE研究に参加するコミュニティを対象に、アスピリン、β遮断薬、ACE阻害薬、スタチンそれぞれの、入手可能性と価格について調査を行った。 調査時点で、薬が薬局にある場合には「入手可能」とし、また価格が世帯の支払い能力の20%未満であれば「手頃な価格」と定義した。低所得国では都市部25%、農村部3%のみで入手可能 その結果、高所得国では、4種の心血管疾患薬すべてが、61/64ヵ所(95%)の都市部で、27/30ヵ所(90%)の農村部で入手可能だった。高位中所得国で入手可能だったのは、都市部で53/66ヵ所(80%)、農村部で43/59ヵ所(73%)、低位中所得国ではそれぞれ69/111ヵ所(62%)、42/114ヵ所(37%)だった。さらにインドを除く低所得国ではそれぞれ、8/32ヵ所(25%)、1/30ヵ所(3%)だった。インドでは、都市部34/38ヵ所(89%)、農村部42/52ヵ所(81%)だった。 4種の心血管疾患薬の価格が「手頃」ではない可能性がある家庭の割合は、高所得国の0.14%、高中所得国の25%、低中所得国の33%、低所得国の60%、インドの59%だった。 また、中・低所得国では、4種すべての薬が入手不可能の場合、心血管疾患歴のある人が同4種の薬を服用する傾向は低く、オッズ比は0.16(95%信頼区間:0.04~0.57)だった。同4種すべてが入手可能であるコミュニティでは、価格が手頃ではない家庭で使用する傾向が低く、オッズ比は0.16(同:0.04~0.55)だった。

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緑内障発症、体内の微量金属濃度が関与?

 体内の必須元素濃度の異常や有毒な微量金属への曝露は、眼を含む多くの器官系に影響を及ぼし、さまざまな疾患の発症に関与することが示唆されている。米国・カリフォルニア大学のShuai-Chun Lin氏らは、韓国の住民を対象とした横断研究を行い、血中マンガン濃度低値と血中水銀濃度高値が、緑内障と関連していることを明らかにした。著者らは、「緑内障発症における微量金属の役割を確認するためには、前向き研究により緑内障の発症が微量金属の存在で増加するかどうかを確かめる必要がある」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌2015年10月号の掲載報告。 研究グループは、微量金属の体内濃度と緑内障の有病率との関連を調べることを目的に、韓国の第4回国民健康栄養調査(2007~09年)における2年次および3年次(2008年1月1日~09年12月31日)のデータを用い、19歳以上の2,680例について血液または尿中の金属濃度と眼疾患との関連を調べた。 緑内障の診断はISGEO(International Society of Geographical and Epidemiological Ophthalmology)の基準に基づいた。また、患者背景、併存疾患および健康に関連した行動については問診で情報を得た。主要評価項目は緑内障の有無であった。 主な結果は以下のとおり。・血中マンガン濃度は、潜在的交絡因子調整後の緑内障診断のオッズ比と負の関連があることが認められた(オッズ比[OR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.21~0.92)。・血中水銀濃度は、緑内障の有病率と正の関連を認めた(OR:1.01、95%CI:1.00~1.03)。・血中カドミウム濃度、血中鉛濃度および尿中ヒ素濃度については、緑内障の診断との間で決定的な関連は確認されなかった。

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脳出血再発予防における積極的降圧の可能性(解説:有馬 久富 氏)-442

 脳出血再発予防における血圧コントロールの重要性を示す報告が、JAMA誌に掲載された。本研究は、脳出血生存者を対象とした前向きコホート研究である。1994~2013年にマサチューセッツ総合病院へ入院した脳出血患者のうち、90日以上生存した1,145例を平均約3年間追跡し、血圧コントロール状況および到達血圧と脳出血再発との関連を検討している。その結果、治療中の血圧が140/90mmHg以上(非糖尿病)あるいは130/80mmHg以上(糖尿病)であったコントロール不良例では、脳出血再発のリスクが3.5~4.2倍上昇していた。到達血圧と脳出血再発の検討では、再発の最も少ない至適血圧レベルは120/80mmHg未満であった。 本研究は、脳出血生存者に限定して血圧と再発との関連を検討した研究の中では、対象者数が最も多い。また、追跡不能例も約2%と少ないため、精度の高い研究といえるであろう。 しかしながら、本研究には、さまざまなlimitationがある。まず、マサチューセッツ総合病院へ入院した者のみを対象としているため、本研究の結果が米国内外の脳出血患者全般に当てはまるかどうかはわからない。次に、リクルート期間が1994~2013年と長期間にわたっているが、この間に脳出血の急性期治療および再発予防対策は、大きな変遷を遂げている。このような時代の影響は、解析の中で考慮されていない。また、血圧は、統一された方法で測定されておらず、通院中の医療機関で測定した血圧値を解析に用いている。追跡期間が10ヵ月から20年までばらついていることも、結果に影響を与えているかもしれない。さらに、多変量解析において調整項目を数学的に選択しているが、このようなアプローチに対しては近年批判も多い。 このようなlimitationはあるものの、本研究から得られた結果は過去の研究結果と一致しているため、外的妥当性が保たれていると考えられる。脳卒中2次予防における降圧療法の有用性を確立した無作為化比較試験PROGRESSのサブ解析では、治療中の血圧レベルと脳出血再発との間に直線的な関係を認め、脳出血再発が最も少ない至適血圧レベルは115/75mmHg以下であった1)。ラクナ梗塞生存者において、収縮期血圧130mmHg未満を降圧目標とする積極的降圧療法の効果を検討した無作為化比較試験SPS3では、積極的降圧療法により脳出血再発が有意に63%減少した2)。 「高血圧治療ガイドライン2014」および「脳卒中治療ガイドライン2015」は、脳出血生存者における再発予防のための降圧目標として、140/90mmHg未満(可能であれば130/80mmHg未満)を推奨している。しかし、本研究および過去の研究結果を考え合わせると、収縮期血圧120mmHg未満を目標とする積極的降圧療法により、脳出血再発をさらに抑制することができるかもしれない。   このような仮説を基に、わが国では、脳卒中2次予防において降圧目標を120/80mmHg未満とする積極的降圧療法の効果を検討する、無作為化比較試験RESPECTが進行中である。また、ヨーロッパでは、脳卒中2次予防における積極的降圧療法、および積極的脂質低下療法の効果を検討する無作為化比較試験ESH-CHL-SHOTも進行中である。さらに、脳出血生存者のみに対象者を限定して、降圧薬トリプル合剤を用いた積極的降圧療法の再発予防効果を検討する無作為化比較試験TRIDENTも、オーストラリアで開始される予定である。これらの臨床試験により、脳出血再発予防における至適降圧目標が明らかになるものと期待される。

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足場の足場固めをしたABSORB III試験(解説:中川 義久 氏)-443

 開発が成熟期に入った金属製薬物溶出性ステントとは異なり、今後の進歩が期待されるのが、生体吸収性スキャフォールドである。従来のステントは、金属製の構造物が永久に血管内に残ることになる。薬物溶出性ステントに塗布された薬剤の溶出は3ヵ月程度で完了するので、いったん再狭窄なく安定すれば理論的には金属は無用のものとなる。  生体吸収性スキャフォールドは、ポリ乳酸化合物で構成される完全吸収型のデバイスである。溶けるステントと考えていただいて良いのだが、従来の金属製ステントとの差別化を明確にするために、スキャフォールドと呼ばれている。スキャフォールドとは足場(あしば)を意味する英単語である。足場は、建設中の工事現場で仮の構造物として設置されるが、建設が完了すれば撤去される。この冠動脈用のスキャフォールドも、再狭窄なく血管の拡張が完了した後には分解され消滅する、まさに言い得て妙という命名である。金属製ステントのように血管内に永久的な留置物が残らないために、吸収後には生理的な血管の運動性を回復することが期待される。 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(Absorb)の有用性を、エベロリムス溶出コバルトクロム合金ステント(Xienceステント)と比較した、ABSORB III試験の結果が報告された。2,000例を超える症例を対象とした大規模なもので、NEJM誌オンライン版の2015年10月12日号に結果が掲載された。主要エンドポイントは、1年時の標的病変不全(心臓死、標的血管領域の心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建)で、その発生率は、Absorb群7.8%とXience群6.1%(両群差:1.7ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.5~3.9、非劣性p=0.007)と非劣性が示された。1年間のデバイス血栓症の発生は、Absorb群1.5%、Xience群0.7%であった(p=0.13)。 このABSORB III試験の結果は、金属製ステントから生体吸収性スキャフォールドにすべて移行することを示唆するような、絶対的な優位性を示したものではない。金属製ステントは、ベアメタルステントから薬物溶出性ステントへと進化し、現在は成熟の域に達したかに思える。 1991 年にPatrick W Serruys氏らが 冠動脈用の金属製ステントの初期臨床成績をNEJM誌に最初に報告した際には、24%という高い再閉塞率であった1)。研究開始時には冠動脈ステントは非常に注目されていたが、この報告により冠動脈ステントに対する熱狂は一気に冷め、絶望感をもって評価された。1991年に現在の金属性ステントの隆盛を予言できた者はいなかったであろう。しかし、一歩一歩を積み重ねて前進してきたのである。 今、使用可能な生体吸収性スキャフォールドは、成熟した金属製ステントに比して、ストラットが厚いという問題点を残している。これは、今後の材質や構造の改良によって解決されていくことが期待され、その面では生体吸収性スキャフォールドは産声を上げたばかりのデバイスといえる。今後の発展を期するための足場固めをしたという意味で、このABSORB III試験の結果は勇気づけられる内容である。いつの日か、「昔は冠動脈に金属のステントを入れて残していたなんて信じられない」と語られる時がやってくると小生は考える。

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免疫性血小板減少症〔ITP:immune thrombocytopenia〕(旧名:特発性血小板減少性紫斑病)

1 疾患概要■ 概念・定義特発性血小板減少性紫斑病(ITP:idiopathic thrombocytopenic purpura)は、厚生労働省の特定疾患治療研究事業対象疾患(特定疾患)に認定されている疾患であり、他の基礎疾患や薬剤などの原因がなく、血小板の破壊が亢進し減少する後天性の自己免疫疾患と考えられている。欧米では本疾患に対し、免疫性(immune)あるいは自己免疫性(autoimmune)という表現が用いられており、わが国においても本疾患の病名を免疫性血小板減少症(ITP:immune thrombocytopenia)へと改定する予定である。血小板が減少していても、必ずしも出血症状を伴うわけではないことが“purpura”を削除した理由であり、この考え方は本疾患の治療戦略とも密接に関連する。■ 疫学わが国におけるITPの有病者数は約2万人で、年間発症率は人口10万人当たり約2.16人と推計される。つまり年間約3,000人が新規に発症している計算になる。最近の調査では、慢性ITPの好発年齢として20~40代の若年女性に加え、60~80代でのピークが認められるようになってきている。高齢者の発症に男女比の差はない。急性ITPは5歳以下の発症が圧倒的である。■ 病因ITPの病因はいまだ不明な点が多いが、その主たる病態は血小板の破壊亢進である。ITPでは血小板膜GPIIb-IIIaやGPIb-IXなどに対する自己抗体が産生され、それらに感作された血小板は早期に脾臓を中心とした網内系においてマクロファージのFc受容体を介して捕捉され、破壊されて血小板減少を来す。これらの自己抗体は主として脾臓で産生されており、脾臓は主要な血小板抗体の産生部位であるとともに、血小板の破壊部位でもある。さらに最近では、ITPにおける抗血小板自己抗体は巨核球の分化・成熟にも障害を与え、血小板産生も正常コントロールと比べ減少していることが示されている。■ 症状症状は皮下出血、歯肉出血、鼻出血、性器出血など皮膚粘膜出血が主症状である。血小板数が1万/μL未満になると血尿、消化管出血、吐血、網膜出血を認めることもある。口腔内に高度の粘膜出血を認める場合は、消化管出血や頭蓋内出血を来す危険があり、早急な対応が必要である。血友病など凝固因子欠損症では関節内出血や筋肉内出血を生じるが、ITPでは通常、これらの深部出血は認めない。■ 分類ITPはその発症様式と経過より、急性型と慢性型に分類され、6ヵ月以内に自然寛解する病型は急性型、それ以後も血小板減少が持続する病型は慢性型と分類される。急性型は小児に多くみられ、ウイルス感染を主とする先行感染を伴うことが多い。一方、慢性型は成人に多い。しかしながら、発症時に急性型か慢性型かを区別することはきわめて困難である。最近では、12ヵ月経過したものを慢性型とする意見もある。■ 予後ITPでは、血小板数が3万/μL以上の場合、死亡率は正常コントロールと同じであり、予後は比較的良好と考えられている。しかし、3万/μL以下だと出血や感染症が多くなり、死亡率が約4倍に増加すると報告されている。この成績より、血小板数3万/μL以上を維持することが治療目標となっている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ITPの診断に関しては、いまだに他の疾患の除外診断が主体であり、薬剤性やC型肝炎など血小板減少を来す他の疾患を鑑別しなければならない。とくに血小板数が3~5万/μL以下の症例で無症状の場合や検査コメントに血小板凝集(+)と記載されている場合は、末血用スピッツ内のEDTAにより誘導される「見かけ上」の血小板減少(EDTA依存性偽性血小板減少症)を除外すべきである(治療の必要なし)。ITPと同様に免疫学的機序で血小板が減少する二次的ITPとして、全身性エリテマトーデスなどの膠原病やリンパ系腫瘍、ウイルス肝炎、HIV感染などが挙げられる。詳しい病歴の聴取や身体所見、時には骨髄穿刺により先天性血小板減少症や薬剤性血小板減少症、さらには血小板産生障害に起因する骨髄異形成症候群や再生不良性貧血などの鑑別を行う。骨髄検査において典型的ITPでは、幼若な巨核球が目立つが巨核球数は正常あるいは増加しており、その他はとくに異常を認めない。PAIgG(Platelet-associated IgG:血小板関連IgG)は2006年に保険収載されたが、PAIgGは血小板に結合した(あるいは付着した)非特異的なIgGも測定するため、再生不良性貧血などの血小板減少時にも高値になることがあり、その診断的意義は少ない。2023年に血漿トロンボポエチン濃度と幼若血小板比率(IPF%)を組み込んだ新たなITPの診断基準が公表されている。一方、これらのバイオマーカーの測定は現時点で保険適用外であり、その保険収載が急務の課題である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ ITPにおける治療目標ITPの治療目標は血小板数を正常化させることではなく、危険な出血を予防することである。具体的には血小板3万/μL以上かつ出血症状が無い状態にすることが当面の治療目標となる。「成人ITP治療の参照ガイド2019改訂版」では、初診時血小板が3万/μL以上あり出血傾向を認めない場合は、無治療での経過観察としている。血小板数を正常に維持するために高用量の副腎皮質ステロイドを長期に使用すべきではないとの立場である。図に「成人ITP治療の参照ガイド2019 改訂版」の概要を示す。なお、本ガイドは、https://www.jstage.jst.go.jp/article/rinketsu/60/8/60_877/_pdfにて公開されている。画像を拡大する1)第1選択治療(1)ピロリ菌除菌療法(2010年6月より保険適用)わが国においては、ITPに関してH.pylori(ピロリ菌)除菌療法の有効性が示されている。ピロリ菌感染患者には、第1選択として試みる価値がある。出血症状を伴う例に対しては、ステロイド療法をまず選択し、血小板数が比較的安定した時点で除菌療法を試みる。(2)副腎皮質ステロイド療法ピロリ菌陰性患者や除菌無効例には、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)が第1選択となる。副腎皮質ステロイドは網内系における血小板の貪食および血小板自己抗体の産生を抑制する。血小板数3万/μL以下の症例で出血症状を伴う症例が対象である。とくに口腔内や鼻腔内の出血を認める場合は積極的に治療を行う。50~75%において血小板が増加するが、多くは副腎皮質ステロイド減量に伴い血小板が減少する。初期投与量としては0.5~1mg/kg/日を2~4週間投与後、血小板数の増加がなくても8~12週かけて10mg/日以下にまで漸減する。経過が良ければさらに減量する。2)第2選択治療(1)トロンボポエチン(TPO)受容体作動薬ITPでは血小板造血が障害されているものの、血清TPO濃度は正常~軽度上昇に止まる。この成績より、血小板造血を促進する治療薬としてTPO受容体作動薬が開発され、2011年より保険適用となっている。薬剤としては、ロミプロスチム(商品名:ロミプレート/皮下注)やエルトロンボパグ オラミン(同:レボレード/経口薬)があり、優れた有効性が示されている。血栓症の発症や骨髄線維化のリスクがあるため、これらに関しては慎重にモニターすべきである。妊婦には使用できない。(2)リツキシマブB細胞に発現しているCD20抗原を認識するヒトマウスキメラモノクローナル抗体で、B 細胞を減少させ、抗体産生を低下させる作用がある。わが国では2017年3月よりITPに対して適応拡大されている。(3)脾臓摘出術(脾摘)発症後6~12ヵ月以上経過し、各種治療にて血小板数3万/μL以上を維持できない症例に考慮する。寛解率は約60%。摘脾の1週間前より免疫グロブリン大量療法(後述)にて血小板を増加させる。近年では、TPO受容体作動薬などの新規薬剤の登場により、脾摘施行例は減少している。(4)新規ITP治療薬「成人ITP治療の参照ガイド2019改訂版」公開後に新たに上市されたITP治療薬として、ホスタマチニブ([Syk阻害剤]およびエフガルチギモド(胎児性Fc受容体阻害剤)が挙げられる。これらの薬剤の治療上の位置付けに関しては、今後の検討課題である。3)難治ITP症例への治療法(第3選択治療)本項で述べる薬剤は、ITPへの適応は無いものの、文献などにて有効性が示唆されている薬剤である。4)緊急時の治療診断時、消化管出血や頭蓋内出血などの重篤な出血を認める症例や、脾摘など外科的処置が必要な症例には、免疫グロブリン大量療法やメチルプレドニンパルス療法にて血小板を速やかに増加させ、出血をコントロールする必要がある。血小板輸血は一般には行わないが、活動性出血を伴う重症例では血小板輸血も積極的に考慮する。4 今後の展望上記以外の新たなITP治療薬として、BTK阻害薬、新規TPO受容体作動薬、抗CD38抗体薬など種々の薬剤が開発、治験されており、これらの薬剤の上市が待たれる。5 主たる診療科血液内科、あるいは血液・腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2012年版(医療従事者向けのまとまった情報)妊娠合併特発性血小板減少性紫斑病診療の参照ガイド(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報つばさのひろば(血液疾患患者とその家族の会)1)Cines DB, et al. N Engl J Med.2002;346:995-1008.2)冨山佳昭. 臨床血液. 2011;52:627-632.3)柏木浩和ほか. 臨床血液. 2019;60:877-896.4)柏木浩和ほか. 臨床血液. 2024;64:1245-1257.公開履歴初回2013年03月28日更新2015年11月02日更新2024年9月16日

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114)認知症にならない退職後の過ごし方【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者先生、来年で退職をする予定にしています。 医師そうですか。長い間、お疲れ様でした。退職後はどうされるんですか? 患者まだ、具体的には考えていないんですけど……。 医師なるほど。セカンドライフの過ごし方も、人それぞれですからね。同じ様な仕事を続ける方、違う仕事を探す方、趣味やボランティア活動をされる方、中にはいつも家にいて奥様に煙たがられている人もいます。 患者ハハハ……私も煙たがられないようにしないと。 医師最近の研究では、何か目的意識や生きがいがある人の方が、脳梗塞やアルツハイマー病になるリスクが低くなるそうですよ。 患者そうですか。家でゴロゴロしていては、ボケてしまうんですね。何か目標になることを探します(うれしそうな顔)。●ポイント目的意識や生きがいが、健康寿命を延伸させることをわかりやすく伝えます 1) Yu L, et al. Stroke.2015;46:1071-1076. 2) 中原 純.生老病死の行動科学.2008;13:45-52. 3) Boyle PA, et al. Arch Gen Psychiatry. 2010;67:304-310.

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子宮鏡下避妊法のベネフィットとリスク/BMJ

 子宮鏡下避妊法(hysteroscopic sterilization)は腹腔鏡下避妊(laparoscopic sterilization)法と比べて、望まない妊娠リスクは同程度だが、再手術リスクが10倍以上高いことが、米国・コーネル大学医学部のJialin Mao氏らによる観察コホート研究の結果、報告された。数十年間、女性の永久避妊法は腹腔鏡下両側卵管結紮術がプライマリな方法として行われてきたが、低侵襲な方法として医療器具Essureを用いて行う子宮鏡下避妊法が開発された。欧州では2001年に、米国では2002年に承認されているが、米国FDAには承認以来、望まない妊娠や子宮外妊娠、再手術など数千件の有害事象が報告され、2014年には訴訟も起きているという。しかし、これまでEssure子宮鏡下避妊法の安全性、有効性に関して、卵管結紮術と比較した報告はほとんどなかった。BMJ誌オンライン版2015年10月13日号掲載の報告。2005~13年ニューヨーク州住民ベースでEssure子宮鏡下法 vs.腹腔鏡下法 検討は、Essure子宮鏡下避妊法の安全性と有効性を、大規模包括的な州コホートで腹腔鏡下避妊法と比較した住民ベースコホート研究であった。ニューヨーク州の日帰り手術施設で、2005~13年に子宮鏡下法および腹腔鏡下法を含む避妊法を複数回受けている女性を対象とした。 主要評価項目は、術後30日以内の安全性イベント、1年以内の望まない妊娠と再手術とした。患者特性およびその他交絡因子を補正後、病院クラスター混合モデルを用いて、30日アウトカムと1年アウトカムを比較した。再手術までの期間は、frailty時間事象分析法を用いて評価した。望まない妊娠リスクオッズ比0.84、再手術リスクオッズ比10.16 対象期間中、子宮鏡下法を受けた患者は8,048例、腹腔鏡下法を受けた患者は4万4,278例が特定された。同期間中、子宮鏡下法は45例(2005年)から1,231例(2013年)へと有意に増大していた(p<0.01)。一方、腹腔鏡下法は同7,852例から3,517例に減少していた。子宮鏡下法を受けた患者は腹腔鏡下法を受けた患者と比べて、高年齢で(40歳以上25.2% vs.20.5%、p<0.01)、骨盤内炎症性疾患歴(10.3% vs.7.2%、p<0.01)、重大腹部手術歴(9.4% vs.7.9%、p<0.01)、帝王切開歴(23.2% vs.15.4%、p<0.01)を有する傾向がみられた。 術後1年時点で、子宮鏡下法は腹腔鏡下法と比較して、望まない妊娠リスクは高くなかったが(オッズ比[OR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.63~1.12)、再手術リスクについて大幅な増大が認められた(OR:10.16、95%CI:7.47~13.81)。 結果を踏まえて著者は、「両避妊法のベネフィットとリスクについて患者と十分に話し合い、患者が情報に基づく意思決定ができるようにしなければならい」と提言している。

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STEMIへのPCI、ルーチン血栓除去併用は脳卒中増大/Lancet

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)時のルーチンの用手的血栓除去術併用は、長期的な臨床的アウトカムを低減しない一方で、脳卒中の増大と関連している可能性があることが示された。カナダ・マックマスター大学のSanjit S Jolly氏らが、前向き無作為化試験TOTALの1年フォローアップ評価の結果、報告した。同併用について先行する2件の大規模試験では相反する結果が報告されていたが、今回の結果を踏まえて著者は、「もはや血栓除去術は、STEMI患者へのルーチン戦略として推奨できない」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年10月12日号掲載の報告。TOTAL試験の被験者について1年の長期フォローアップ TOTAL試験は、STEMI患者におけるルーチン用手的血栓除去術+PCI併用 vs.PCI単独を比較し、血栓除去術併用の長期的ベネフィットを明らかにし、臨床ガイドに寄与することを目的とした。 被験者は、18歳以上のSTEMI患者1万732例で、20ヵ国87病院から登録を行い、発症後12時間以内に1対1の割合で無作為に、ルーチン血栓除去群またはPCI単独群に割り付けた。コンピュータ中央システムで、24時間ごとの置換ブロック無作為化法にて行い、層別化も行った。なお、被験者と研究者は、治療割り付けを知らされなかった。 試験では、180日時点における主要アウトカム(心血管死・心筋梗塞・心原性ショック・心不全)の有意差は示されなかったが、ST部位のアウトカムおよび遠位塞栓の改善が示された。しかし、この所見が長期的ベネフィットを意味するのかについては不明のままであった。 そこで研究グループは長期フォローアップを行い、今回、1年時点の主要アウトカムと副次アウトカムを報告した。主要アウトカムの分析は、修正intention to treatにて、指標PCIを受けた患者のみを含んで行われた。1年時の主要アウトカム発生にも有意差なし、ただし脳卒中発生が1.66倍に 2010年8月5日~14年7月25日に適格患者1万732例を登録し、ルーチン血栓除去術併用群(5,372例)またはPCI単独群(5,360例)に無作為に割り付けた。そのうちPCIを受けなかった患者を除外(それぞれ337例、331例)し、最終試験集団に1万64例(各群5,035例、5,029例)を組み込んで評価した。 結果、1年時点の主要アウトカム発生率は、ルーチン血栓除去術併用群395/5,035例(8%)、PCI単独群394/5,029例(8%)であった(ハザード比[HR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.87~1.15、p=0.99)。 1年間の心血管死の発生は、ルーチン血栓除去術併用群179例(4%)、PCI単独群192例(4%)であった(同:0.93、0.76~1.14、p=0.48)。 一方、安全性のキーアウトカムである1年間の脳卒中発生は、ルーチン血栓除去術併用群60例(1.2%)、PCI単独群36例(0.7%)であった(同:1.66、1.10~2.51、p=0.015)。

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坐骨神経痛のリスク、喫煙で増大:メタ解析結果

 坐骨神経痛における喫煙の役割は明確ではない。フィンランド・Finnish Institute of Occupational HealthのRahman Shiri氏らは、腰部神経根痛および坐骨神経痛に対する喫煙の影響を評価する目的でメタ解析を行った。その結果、喫煙は腰部神経根痛および臨床的な坐骨神経痛のリスクを高めることが明らかとなった。また、禁煙によりそのリスクが低下することが示唆されたが、「禁煙してもリスクがゼロになることはない」と著者は指摘している。American Journal of Medicine誌オンライン版2015年9月21日号の掲載報告。 研究グループは、PubMed、Embase、Web of Science、Scopus、Google ScholarおよびResearchGateで1964年~2015年3月までの論文を検索し、ランダム効果メタ解析を行った。不均一性と出版バイアスを評価するとともに、研究デザイン、方法論的質および出版バイアスに関して感度分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・計28件(断面的研究7件・2万111例、症例対照研究8件・1万815例、コホート研究13件・44万3,199例)の研究が、メタ解析に組み込まれた。・現在喫煙者では、腰部神経根痛または臨床的な坐骨神経痛のリスクが増加した(統合調整オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.30~1.64、n=45万9,023例)。・元喫煙者では、非喫煙者と比較してわずかにリスクが増加した(統合調整OR:1.15、95%CI:1.02~1.30、n=38万7,196例)。・現在喫煙者に関して、腰部神経根痛の統合調整オッズ比は1.64(95%CI:1.24~2.16、n=1万853例)、臨床的な坐骨神経痛1.35(95%CI:1.09~1.68、n=11万374例)、腰椎椎間板ヘルニアまたは坐骨神経痛による入院または手術1.45(95%CI:1.16~1.80、n=33万7,796例)であった。・同様に元喫煙者では、それぞれ1.57(95%CI:0.98~2.52)、1.09(95%CI:1.00~1.19)および1.10(95%CI:0.96~1.26)であった。・これらの関連は、男女間で差はなく、研究デザインから独立していた。・出版バイアスのエビデンスはなく、観察された関連は選択バイアス、検出バイアスまたは交絡因子に起因しなかった。

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教師のADHD児サポートプログラム、その評価は

 注意欠如・多動症(ADHD)の小学生を担当する教師のためのWebベースの介入について、利用可能性、満足度、有効性を評価するため、カナダ・ダルハウジー大学のPenny Corkum氏らは試験を行った。Journal of attention disorders誌オンライン版2015年9月11日号の報告。 小学校の担任教師58人は、ADHD小学生と共に無作為化対照試験に参加した。プログラムは、教室内でのADHD症状や障害を軽減するためのエビデンスに基づいた介入戦略を含む6つのセッションから構成された。教師は、ウェブ上で管理されている掲示板へのアクセスや ADHDコーチとのオンラインでのやり取りが可能だった。教師および保護者に、介入前、介入後(6週後)、6週間のフォローアップ後(12週後)にアンケートを行い、コンピュータを通じて収集した。 主な結果は以下のとおり。・ITT解析の結果、教師報告では、治療群においてADHDの中核症状や教師のサポートを有する障害について有意な改善が認められた。ただし、保護者報告では認められなかった。・教師の報告した利用可能性、および満足度は高いレベルであった。・WebベースのADHD介入は、学校でのADHD介入でよくみられる問題である治療利用や実用化の障壁を減少させる可能性がある。関連医療ニュース 2つのADHD治療薬、安全性の違いは 小児ADHD、食事パターンで予防可能か ADHD児に対するスポーツプログラムの評価は  担当者へのご意見箱はこちら

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がん疑い患者、緊急紹介制度活用で死亡率低下/BMJ

 英国で、がんの疑いがある患者を緊急に専門医に紹介する制度「緊急紹介制度」(urgent referral pathway)を活用する一般診療所の患者は、あまり活用しない一般診療所の患者に比べ、がんの初診断・治療開始から4年以内の死亡率が低いことが明らかにされた。英国・ロンドン大学のHenrik Moller氏らが、コホート試験の結果、報告した。同緊急紹介制度は2000年代初めから始まったが、制度ががん患者の生存率に与えた影響については、これまで検討されていなかった。BMJ誌オンライン版2015年10月13日号掲載の報告。英国の3つのデータベースを用い、がん患者約22万人について検討 研究グループは、英国の「Cancer Waiting Times」「NHS Exeter」「National Cancer Register」の3つのデータベースを用いて、2009~13年にがんの診断を受けた人、または初回治療を開始した人21万5,284例を対象にコホート試験を行った。試験対象となった一般診療所は8,049ヵ所だった。 診察を受けた診療所が、緊急紹介制度を活用する傾向と、死亡率との関連を分析した。制度を活用しない診療所の患者、死亡のハザード比は1.07 4年間の追跡期間中に死亡した人は、9万1,620例だった。そのうち、診断を受けて1年以内の死亡は5万1,606例(56%)だった。 緊急紹介制度を利用する傾向を示す、標準化紹介率と検出率ともに、その傾向が強い診療所の患者は、傾向が強くない診療所の患者に比べ死亡率が低かった。標準化紹介率・検出率ともにそれぞれ、低率、中程度、高率と3群に分けた場合、両割合ともに高率だった診療所の患者数は全体の16%(3万4,758例)を占め、両率ともに中程度の群を基にした患者の死亡に関するハザード比は、0.96(95%信頼区間:0.94~0.99)だった。 一方、紹介制度の標準化紹介率・検出率どちらかが低率で、もう一方が高率ではない診療所の患者数は、全体の37%(7万9,416例)で、死亡に関するハザード比は1.07(同:1.05~1.08)だった。

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セクシュアルマイノリティーにおける皮膚がんと日焼けマシーン使用

 「セクシュアルマイノリティー(同性愛者や両性愛者)の男性は、異性愛者の男性に比べて日焼けマシーンをよく使用しており、また皮膚がんになる確率が高い」というデータが発表された。JAMA Dermatology誌オンライン版2015年10月7日号での報告。 本研究で、セクシュアルマイノリティーの男性は日焼けマシーンを使うことが多いことが明らかになった。研究者らは、「彼らに対して優先的に皮膚がんリスクを伝えることが予防につながるのではないか」とまとめている。 これまでに、日焼けと皮膚がんの関係については強く示唆されていたが、性的指向によって皮膚がんリスクが変わるかどうかは不明であった。本検討は、セクシュアルマイノリティーの男女が、異性愛者(ヘテロセクシュアル)の男女に比べて、皮膚がんリスクが高いかどうかを明らかにするために行われた。 カリフォルニア州と米国の特定組織に属さない市民集団から集められた18歳以上の男女19万人強のデータを対象に解析は実施された。 対象となったデータは2001年、2003年、2005年、2009年のCalifornia Health Interview Surveys(CHISs)と2013年のNational Health Interview Survey (NHIS)である。 研究対象には7万8,487人の異性愛者の男性と、3,083人のセクシュアルマイノリティーの男性、10万7,976人の異性愛者の女性、3,029人のセクシュアルマイノリティーの女性が含まれていた。著者らは、自己報告による皮膚がんの既往歴と12ヵ月間の日焼けマシーン使用歴を調査した。  主な結果は以下のとおり。・セクシュアルマイノリティーの男性は、異性愛者の男性に比べ皮膚がんリスクが高かった。(2001~05年のCHISsでの調整OR:1.56、95%CI:1.18~2.06、p<0.001)。(2013年のNHISでの調整OR:2.13、95%CI:1.14~3.96、p=0.02)。・セクシュアルマイノリティーの男性は、異性愛者の男性に比べ日焼けマシーンを使うことが多かった。(2009年のCHISsでの調整OR:5.80、95%CI:2.90~11.60、p<0.001)。(2013年のNHISでの調整OR:3.16、95%CI:1.77~5.64、p<0.001)。・セクシュアルマイノリティーの女性は、異性愛者の女性に比べ非黒色腫皮膚がんの報告は少なかった。(2001~05年のCHISsでの調整OR:0.56、95%CI:0.37~0.86、p=0.008)。・セクシュアルマイノリティーの女性は、異性愛者の女性に比べ日焼けマシーンを使うことが少なかった。(2009年のCHISsでの調整OR:0.43、95%CI:0.20~0.92、p=0.03)。(2013年のNHISでの調整OR:0.46、95%CI:0.26~0.81、p=0.007)。

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アルツハイマー病への薬物治療、開始時期による予後の差なし

 世界中で何百万人もの高齢者がアルツハイマー病(AD)で苦しんでいる。治療薬にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンがあるが、その臨床効果は限られており、早期に薬物療法を開始することが長期的に良好な予後につながるかどうかも不明である。そこで、中国・香港中文大学のKelvin K.F. Tsoi氏らは、AD患者に対する早期治療の有効性について、前向き無作為化比較試験のメタ解析を行った。その結果、約6ヵ月早くAD治療薬の投与を開始しても投与開始が遅れた場合と比較して、認知機能、身体機能、行動問題および臨床症状に有意差は認められなかった。この結果について著者らは、「追跡期間が2年未満の早期AD患者の割合が比較的高かったためと考えられる」と指摘したうえで、「長期に追跡した場合の有効性について、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2015年9月18日号の掲載報告。 研究グループは、OVIDデータベースを用いて2000年から2010年の間に発表された前向き無作為化比較試験を検索し、ADと診断された患者を早期投与開始群と投与開始遅延群(約6ヵ月間はプラセボを投与)に無作為化した試験を適格とした。主要評価項目は、認知機能(Alzheimer's Disease Assessment Scale-Cognitive Subscale:ADAS-cog)、身体機能(Alzheimer's Disease Cooperative Study Activities of Daily Living Inventory:ADCS-ADL)、問題行動(Neuropsychiatric Inventory:NPI)、および全般的な臨床症状(Clinician's Interview-Based Impression of Change plus Caregiver Input:CIBIC plus)、副次評価項目はあらゆる有害事象とした。 主な結果は以下のとおり。・10件の無作為化試験がメタ解析に組み込まれた(計3,092例、平均年齢75.8歳)。・主要評価項目に関して、早期投与開始群が投与開始遅延群と比較して、有意な効果が認められた項目はなかった。 認知機能;ADAS-cogの平均差(MD)=-0.49、95%信頼区間(CI):-1.67~0.69 身体機能;ADCS-ADLのMD=0.47、95% CI:-1.44~2.39 行動問題;NPIのMD=-0.26、95% CI:-2.70~2.18 臨床症状;CIBIC plusのMD=0.02、95% CI:-0.23~0.27・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬で、最も頻度の高い有害事象は悪心であった。・メマンチンではプラセボと比べ、発現頻度の高い副作用はなかった。・両薬とも、早期投与開始群と投与開始遅延群の有害事象は同等であった。関連医療ニュース 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究 認知症患者の精神症状に対し、抗不安薬の使用は有用か 早期アルツハイマー病診断に有用な方法は  担当者へのご意見箱はこちら

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ぶどう膜炎に対する眼内インプラントの効果は?

 中間部、後部および全ぶどう膜炎に対するフルオシノロンアセトニド(FA)眼内インプラントと全身性ステロイド療法の有用性を比較した、米国・ペンシルバニア大学のJohn H. Kempen氏らによるMulticenter Uveitis Steroid Treatment(MUST)試験の4.5年の追跡調査において、視覚機能および黄斑浮腫に対する改善効果は両群で類似しておりどちらも良好であることが示された。結果を踏まえて研究グループは、「費用対効果と副作用を考慮すると、全身療法は多くの両側性ぶどう膜炎患者に対する初回治療として適応があるだろう。しかし、片側性ぶどう膜炎患者や全身療法ができないまたは無効の患者に対しては、眼内インプラントは適切な治療選択肢である」と報告をまとめている。Ophthalmology誌2015年10月号(オンライン版2015年8月20日号)の掲載報告。 研究グループは、中間部、後部および全ぶどう膜炎患者255例を対象としたMUST試験において、無作為化後54ヵ月までの延長追跡調査を行った。 主要評価項目は、最高矯正視力(BCVA)、視野平均偏差(MD)、ぶどう膜炎の活動性、および黄斑浮腫の有無であった。 主な結果は以下のとおり。・ぶどう膜炎眼の視覚機能の改善推移は、ベースラインから54ヵ月後まで両群で類似しており、中等度の改善が認められた。・54ヵ月時におけるBCVAの平均改善は、FA眼内インプラント群2.4文字、全身療法群3.1文字であった。患者の多くはベースラインの視力が優れており、改善に限りがあった。・MD値は、両群とも追跡調査期間48ヵ月全体を通してベースライン値が維持されていた。・炎症の抑制については、すべての評価時点でFA眼内インプラント群が優れていた(p<0.016)。しかし、全身療法群もほとんどの眼で炎症は大きく改善していた。・黄斑浮腫は、無作為化後最初の6ヵ月以内ではFA眼内インプラント群で有意な改善がみられたが、全身療法群でも経時的に改善し、36ヵ月以降は同等となった(48ヵ月時p=0.41)。

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常染色体優性多発性嚢胞腎〔ADPKD : autosomal dominant polycystic kidney disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義PKD1またはPKD2遺伝子の変異により、両側の腎臓に多数の嚢胞が発生・増大する疾患。■ 診断基準ADPKD診断基準(厚生労働省進行性腎障害調査研究班「常染色体優性多発性嚢胞腎ガイドライン(第2版)」)1)家族内発生が確認されている場合(1)超音波断層像で両腎に各々3個以上確認されているもの(2)CT、MRIでは、両腎に嚢胞が各々5個以上確認されているもの2)家族内発生が確認されていない場合(1)15歳以下では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々3個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合(2)16歳以上では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々5個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合※除外すべき疾患多発性単純性腎嚢胞(multiple simple renal cyst)腎尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis)多嚢胞腎(multicystic kidney 〔多嚢胞性異形成腎 multicystic dysplastic kidney〕)多房性腎嚢胞(multilocular cysts of the kidney)髄質嚢胞性疾患(medullary cystic disease of the kidney〔若年性ネフロン癆 juvenile nephronophthisis〕)多嚢胞化萎縮腎(後天性嚢胞性腎疾患)(acquired cystic disease of the kidney)常染色体劣性多発性嚢胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease)【Ravineの診断基準】(表)(家族歴がある場合の画像診断基準)画像を拡大する■ 疫学一般人口中に占める多発性嚢胞腎患者数(有病率)は、病院受診者数を基に調査した結果では一般人口3,000~7,000人に1人である。病院患者数に占める多発性嚢胞腎患者数は3,500~5,000人に1人、病院での剖検結果では被剖検患者約400人に1人である。メイヨー病院があるオルムステッド郡(米国)で1年間に新たに診断された患者数(発症率)は、一般人口1,000~1,250人あたり1人である。調査方法、調査年代、調査場所などにより、結果に差異が認められる。今後、治療薬が利用可能になると受療する患者数が増加し、有病率も増える可能性がある。■ 病因(図を参照)画像を拡大するPKD1またはPKD2遺伝子の変異による。PKD1は16p13.3、PKD2は4q21-23に位置する。PKD1とPKD2の遺伝子産物 polycystin 1(PC 1)とPC2はtransient receptor potential channel for polycystin(TRPP)subfamilyで、Caチャネルである。PC1とPC2は腎臓、肝臓、膵臓、乳腺の管上皮細胞、平滑筋と血管内皮細胞、脳の星状細胞に存在する。PCは腎臓上皮細胞、血管内皮細胞、胆管細胞などの繊毛に存在する。尿細管腔の内側に存在する繊毛は、尿細管液の流れに反応して屈曲する。屈曲によるshear stressはPCや繊毛機能に関係する蛋白を活性化し、細胞外と小胞体からCaイオンを細胞質内へ流入させ、細胞質内Ca濃度を高める。繊毛機能に関係する蛋白をコードする遺伝子異常が嚢胞性腎疾患をもたらすことが明らかとなり、繊毛疾患(ciliopathy)として概括されている。PKD細胞ではPC機能異常により、尿細管上皮細胞のCa濃度は低値である。細胞内Ca濃度が低下すると、cyclicAMP(cAMP)分解酵素(PDE)活性が低下し、またcAMPを産生するadenyl cyclase(AC)活性が高まり、細胞内cAMP濃度が高まる。その結果、cAMP依存性protein kinase A(PKA)機能が高まり、種々のシグナル経路(EGF/EGFR、Wnt、Raf/MEK/ERK、JAK/STAT、mTORなど)が活性化され細胞増殖が起きる。繊毛は細胞極性(尿細管構造形成)に関与しており、細胞極性機能を失った細胞増殖が起きる結果、嚢胞が形成される。また、PKAはcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)を刺激し、嚢胞内へのCl分泌を高める。腎尿細管(集合管)に存在するバソプレシン(AVP)V2受容体は、AVPの作用を受け、ACおよびcAMP、PKAを介して水透過性を高める。この過程でcAMPは嚢胞を増大させる。ソマトスタチンはACを抑制するので、治療薬として期待される。■ 症状多くの患者は30~40代までは無症状で経過する。1)腎機能低下腎機能の低下と総腎容積は相関し、総腎容積が3,000mLを超えると腎不全になる確率が高い。しかし、3,000mLを超えない場合でも腎不全になる場合もある。腎不全による症状(疲労、貧血、食欲低下、皮膚搔痒など)は、他疾患による腎不全症状と同じである。透析導入平均年齢は55歳位であったが、最近では60歳近くになっている。患者全体では70歳で約50%が終末期腎不全になる。2)高血圧血管内皮機能の異常により高血圧を来すと考えられ、腎機能が低下する以前から発症する。60~80%の患者が高血圧に罹患している。高血圧になっている患者では腎臓腫大と腎機能低下の進行が速い。3)圧迫症状腎臓や肝臓の嚢胞(60~80%の患者に嚢胞肝が併存)が腫大するにつれて、腹部膨満感、少し食べるとお腹が張る、前屈が困難になる、背腰部痛、腹部痛などの圧迫症状が出現する。腎嚢胞は平均年5~6%の割合で増大するので、加齢とともに症状は進行する。4)脳血管障害脳出血、くも膜下出血、脳梗塞の発症頻度が高い。脳出血の原因として高血圧がある。脳動脈瘤の発生頻度(約8%)は一般より高い。5)血尿・尿路感染症血管の構築異常により血管が裂け、嚢胞内に出血し、疼痛を引き起こす。出血巣と尿路が交通すると血尿になる。また、変形した尿路のために尿路感染症を起こしやすい。嚢胞感染が起きると抗菌薬が嚢胞内に移行しにくいので難治性になることがある。6)その他尿路結石、鼠径ヘルニア、大腸憩室、心臓弁膜機能異常などの頻度が高い。■ 分類遺伝子の変異部位に応じて、PKD1とPKD2に分かれる。約85%はPKD1である。PKD1の方が症状は強く、腎不全になる平均年齢も若い。■ 予後生命予後に関するデータはない。腎機能に関しては症状の項参照。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断基準に準ずる。家族歴と画像検査(超音波、CT、MRIなど)で比較的正確に診断できるが、中には診断に迷う症例もあり、遺伝子診断が有用な場合もある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)トルバプタン(商品名: サムスカ)による治療AVP V2受容体拮抗薬トルバプタンは、ナトリウム利尿をあまり伴わない水利尿作用があり、低ナトリウム血症、体液貯留の治療薬として開発され、わが国では、2010年に心不全による体液貯留、2013年に肝硬変による体液貯留への治療薬として承認を受けている。2003年にモザバプタン(トルバプタンの前段階の薬)が、多発性嚢胞腎モデル動物に有効であると発表され、2007年から多発性嚢胞腎患者1,445名を対象として、トルバプタンの有効性と安全性を検討する国際共同治験が行われた。腎臓容積増大速度を約50%、腎機能低下速度を約30%緩和する結果が2012年秋に発表され、わが国において2014年3月に多発性嚢胞腎治療薬として承認され、臨床使用が始まっている。わが国での投薬適応基準は、総腎容積≧750mL、総腎容積増大速度≧年5%、eGFR≧15 mL/min/1.73m2などである。服用開始時には入院が必要で、その後月1回の血液検査で肝機能(5%程度に肝機能障害が発生する)、血清Na値(飲水不足で高Na血症になる)、尿酸値(上昇する)などのモニターが必要である。また、トルバプタンの処方医はWeb講習を受講し、登録する必要がある。2)高血圧の治療ARBが第1選択薬として推奨される。標準的降圧目標(120/70~130/80)とより低い降圧目標(95/60~110/75)との2群を5年間追跡したところ、より低い降圧群での総腎容積増大速度が低かったことが報告されているので、可能なら収縮期血圧を110未満にコントロールすることが望ましい。3)Na摂取制限Na摂取と腎嚢胞増大速度は相関するので、Na摂取は制限したほうがよい。4)飲水動物実験では飲水によって嚢胞の増大抑制効果が認められているが、人で飲水を奨励した結果では、逆に嚢胞増大速度とeGFR低下速度が増大したことが報告されている。水道水では、消毒用塩素の副産物ジクロロ酢酸に嚢胞増大作用があることが報告されている。多発性嚢胞腎患者では、腎機能が低下するにしたがい血清浸透圧とAVPが高くなることが報告されている。人における飲水効果には疑問があるが、脱水によるAVP上昇は避けるべきである。5)カフェインや抗うつ薬カフェインはPDEを抑制しcAMP濃度を上昇させ、嚢胞増大を促進する可能性がある。SSRI、三環系抗うつ薬などはAVPの放出を促進するため、多発性嚢胞腎では嚢胞増大を促進することが考えられる。6)開発中の薬剤(1)トルバプタン〔AVP V2受容体阻害薬〕は、大規模な臨床試験で腎嚢胞増大と腎機能悪化を抑制する効果が示され1)、わが国では2014年3月、カナダ、ヨーロッパでは2015年3月に認可が下りている。(2)ソマトスタチンアナログは小規模な臨床試験で肝臓と腎臓の嚢胞増大に有効と報告されているが、当局への申請を目的とする大規模な臨床試験は行われていない。(3)mTOR阻害薬であるシロリムスとエベロリムスの臨床試験が行われたが、副作用が強く臨床効果が認められなかった。7)腎動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)腎動脈を塞栓し、腎臓を縮小させることで症状の緩和をもたらす。すでに透析が導入され、尿量が1日500mL以下の患者が対象となる。8)腹腔鏡下腎嚢胞開創術、腎摘除術抗菌薬抵抗性または反復感染の原因になっている嚢胞が特定される場合、あるいは数個の嚢胞が特別に大きくなり圧迫症状が強い場合、腹腔鏡下に特定の嚢胞を開窓する手術が適応となる。出血が強い場合や、反復する嚢胞感染がある場合、患者に腎機能の予後をよく説明したうえで同意を前提として腎摘除術(腹腔鏡下腎摘除術も行われる)が選択肢となる。4 今後の展望1)最近の研究では、総腎容積増大速度が5%/年以下でも、腎不全に進行することが示されている。トルバプタン適応基準となった総腎容積増大速度≧5%/年の基準では、これら腎不全に進行する患者を除外することになる。2)トルバプタンの作用として利尿作用があるが、利尿作用を少なくする薬剤が望まれる。3)多発性嚢胞腎の進展機序は、cAMP-PKAを介する経路のみではないので、cAMP-PKA非依存性経路を抑制する薬剤開発が望まれる。4)肝臓嚢胞に有効なソマトスタチンアナログの臨床開発が望まれる。5 主たる診療科腎臓内科、泌尿器科、脳動脈瘤があれば脳外科(多発性嚢胞腎に関心の高い医師の存在)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報多発性嚢胞腎啓発ウエブサイト(杏林大学多発性嚢胞腎研究講座)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 多発性嚢胞腎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)常染色体多発性嚢胞腎(順天堂大学医学部泌尿器科)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ADPKD.JP (~多発性嚢胞腎についてよくわかるサイト~/大塚製薬株式会社)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報PKDの会(患者と患者家族の会)1)Torres VE,et al.N Engl J Med.2012;367:2407-2418.2)東原英二 編著.多発性嚢胞腎~進化する治療最前線~.医薬ジャーナル;2015.3)Irazabal MV, et al. J Am Soc Nephrol.2015;26:160-172.公開履歴初回2013年04月18日更新2015年10月27日

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ラピッドサイクラー双極性障害、抗うつ薬は中止すべきか

 急速交代型(rapid-cycling:RC)双極性障害における抗うつ薬の使用は論争の的となっているが、米国・ルイビル大学のRif S. El-Mallakh氏らは、このトピックについて初となる無作為化試験を行った。その結果、アプリオリな分析で、良好な抗うつ薬反応と気分安定薬の使用にもかかわらず、RCにおいて抗うつ薬使用を継続することは、中断した場合と比べて、維持アウトカムの悪化、とくに抑うつ罹患と関連することが明らかにされた。Journal of Affective Disorders誌2015年9月15日号の掲載報告。 検討は、Systematic Treatment Enhancement Program for Bipolar Disorder(STEP-BD)試験の一部として行われた。急性大うつ病エピソードの最初の反応後、抗うつ薬治療継続群と中断群に無作為に割り付けた患者68例について、STEP-BD試験のアプリオリな副次アウトカムであった反応予測としてのRCを分析した。アウトカムは、エピソードの時間割合および総エピソード数を評価した。なお全患者が、標準的な気分安定薬を服用していた。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬継続群において、RC患者は非RC患者と比べて、総気分エピソード/年は268%超(3.14/1.17)、うつ病エピソード/年は293%超(1.29/0.44)経験した。・RC群 vs.非RC群のうつ病エピソード/年の平均差(SE)は0.85±0.37であった(df=28、p=0.03)。・また、抗うつ薬継続群において、RC患者は非RC患者よりも寛解期が28.8%(95%信頼区間:9.9~46.5)短かった(p=0.04)。・RC群と非RC群のこうした差は、抗うつ薬中断群ではみられなかった。・サブグループ解析では、維持期の抗うつ薬治療で層別化した場合にのみ同様の結果がみられた。ただし、サンプルサイズに限界はあった。関連医療ニュース 双極性障害ラピッドサイクラーの特徴は 双極性障害に抗うつ薬は使うべきでないのか 双極性障害への非定型抗精神病薬、選択基準は

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青年期からの適切な対策で精神疾患の発症予防は可能か

 青年から成人への移行期には、身体的、感情的および社会的な変化が大きいが、この発達期における慢性症状と精神疾患との関連について調べた研究はほとんどない。カナダ・マックマスター大学のM. A. Ferro氏は、青年から成人への移行期(emerging adulthood)に該当する15~30歳成人の疫学的サンプル調査により、慢性症状の有無別に性特異的な生涯精神疾患の有病率を調べた。結果、同年代では、身体的症状と精神的症状の併存は一般的であり、それらが相乗的に増大するという関連はみられなかったが、障害や痛みのレベルによっては関連する可能性があることを明らかにした。そのうえで、慢性症状を有するこの年代の成人の精神疾患の予防・減少を促進するために、行政は健康、教育、社会的サービスを統合・調整していくことが重要であると報告した。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌オンライン版2015年9月8日号の掲載報告。 研究グループは、慢性症状の有無を問わず15~30歳成人の疫学的サンプルを用いて、生涯精神障害の性特異的有病率を調べた。社会人口統計学的因子、健康因子で補正後、慢性症状と精神障害の関連を定量化し、また、性別、障害および痛みのレベルによる調節・媒介の可能性を調べた。Canadian Community Health Survey-Mental Healthの回答者で、慢性症状について自己報告していた15~30歳5,947例のデータを用いて分析を行った。慢性症状は、呼吸器系、筋骨格/関節組織、心血管、神経学的、内分泌/消化器系で分類。WHOの統合国際診断面談(Composite International Diagnostic Interview ; CIDI)3.0版を用いて、精神疾患(うつ病、自殺行為、双極性障害、全般性不安症)の有無を評価した。 主な結果は以下のとおり。・生涯精神疾患有病率は、慢性症状あり群が健康対照と比べて有意に高率だった。・精神疾患の有病率は、女性では認められなかったが男性では、かなりの不均一性が認められた。・社会人口統計学的および健康因子で補正後のロジスティック回帰モデルにおいて、慢性症状がある人は、精神疾患リスクが高いことが示された。・障害や痛みのレベルが、慢性症状と精神疾患との関連を調整するというエビデンスは認められなかった。・性別は、筋骨格/関節組織症状と双極性障害の関連を調整することが認められた(β=1.71、p=0.002)。・探索的分析においては、障害と痛みのレベルが慢性症状と精神疾患との関連を媒介することが示唆された。関連医療ニュース 青年期うつは自助予防可能か 若年男性のうつ病予防、抗酸化物質が豊富な食事を取るべき 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき  担当者へのご意見箱はこちら

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食事回数と肥満の関係

 食物摂取頻度と肥満との関連の研究結果は一貫していない。滋賀県立大学の村上 健太郎氏らは、米国National Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)2003-2012のデータを用いた横断研究から、米国成人の1日の全食事回数・食事(間食を除く)回数・間食回数の多さが、過体重/肥満と中心性肥満のリスク増加に関連することが示唆される、と報告した。the Journal of Nutrition誌オンライン版2015年10月14日号に掲載。 米国の20歳以上の成人1万8,696人において、食物摂取量を2回の24時間食事思い出し法を用いて評価した。50kcal以上の食物摂取すべてを、エネルギー摂取量(15%以上または15%未満)、自己申告、摂取時刻(6~10時、12~15時、18~21時、その他)のそれぞれに基づいて、食事または間食に分類した。オッズ比(OR)および95%CIの算出には多変量ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・推定エネルギー必要量に対する推定エネルギー摂取量の比率(EI:EER)を調整せずに解析した場合、全食事頻度、食事(間食を除く)頻度、間食頻度のすべてにおいて、過体重/肥満(BMI:25以上)および中心性肥満(腹囲:男性102cm以上、女性88cm以上)と逆相関の関連または関連なしと示された。しかし、EI:EERの調整後、全食事頻度と過体重/肥満および中心性肥満との間には正の相関があった。・全食事頻度が最も高い(1日5回以上)カテゴリーにおける過体重/肥満のOR(95%CI)は、最も低いカテゴリー(1日3回以下)に比べて、男性で1.54(1.23~1.93、傾向のp=0.003)、女性で1.45(1.17~1.81、傾向のp=0.001)であった。中心性肥満のORは、男性で1.42(1.15~1.75、傾向のp=0.002)、女性で1.29(1.05~1.59、傾向のp=0.03)であった。・食事(間食を除く)頻度については、「自己申告に基づく食事頻度」と「摂取時刻に基づく食事頻度」が、過体重/肥満、中心性肥満、またはその両方と相関していたが、「エネルギー摂取量に基づく食事頻度」は関連がみられなかった。間食頻度との関連については、男性ではすべての間食頻度との正の相関がみられ、女性では「エネルギー摂取量に基づく間食頻度」との正相関がみられた。

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早期アルツハイマー病診断に有用な方法は

 アミロイドPET検査ならびにCSFバイオマーカーは、いずれも高い精度で早期アルツハイマー病を診断できることを、スウェーデン・ルンド大学のSebastian Palmqvist氏らがBioFINDER研究で明らかにした。最も有効なCSF測定値とPET検査所見の間に違いはなく、それらを組み合わせて使用しても精度は向上しなかったことから、著者らは「早期アルツハイマー病の診断においてCSFバイオマーカーとアミロイドPET検査はどちらも精度は同等に高いので、利便性、費用、医師や患者の好みによる選択が可能である」とまとめている。Neurology誌2015年10月号の掲載報告。 研究グループは、前向き縦断研究BioFINDERのコホートから、健康な高齢者122例と、追跡期間中(3年以内)にアルツハイマー型認知症へ進行した軽度認知障害(MCI-AD)患者34例を対象として検討を行った。[18F]-フルテメタモールを用いたPET検査により脳の9領域におけるアミロイドβ(Aβ)の蓄積を評価するとともに、INNOTESTとEUROIMMUN ELISAを用いてCSFを分析した。さらにその結果を、ADNI(Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative)研究の対照群146例およびMCI-AD患者群64例で再検証した。 主な結果は以下のとおり。・MCI-ADの鑑別に最も有効なCSFの測定値は、Aβ42/総タウ蛋白(t-tau)およびAβ42/過リン酸化タウ(p-tau)であった(曲線下面積[AUC]:0.93~0.94)。・PET測定値も類似していた(AUC:0.92~0.93;前帯状回、後帯状回/楔前部および全新皮質の取り込み)。・CSFのAβ42/t-tauおよびAβ42/p-tauは、CSFのAβ42およびAβ42/40より良い結果であった(AUC差:0.03~0.12、p<0.05)。・カットオフ値は最適化されていないが、すべてのCSF/PETバイオマーカーの中でCSFのAβ42/t-tauが最も精度が高かった(感度97%、特異度83%)。・CSFとPETの組み合わせは、いずれか一方のバイオマーカーを単独で使用した場合より良好な結果は得られなかった。・これらの結果は、ADNI研究のコホートでも再現された。関連医療ニュース SPECT+統計解析でアルツハイマー病の診断精度改善:東北大 レビー小体型とアルツハイマー型を見分ける、PETイメージング アルツハイマーの早期発見が可能となるか

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健康寿命の延伸は自立した排尿から!

 10月19日、株式会社リリアム大塚(大塚グループ)は、膀胱内の尿量を連続的に測定するセンサー「リリアムα-200」の製品発表会と排尿ケアに関するプレスセミナーを都内にて開催した。使いやすい機能で排尿支援 「リリアムα-200」は、4つのAモード超音波で得た情報から膀胱内の尿量を推定する測定器である。尿意を失った患者さんに対し、適切に導尿のタイミングを通知する機能を有し、尿道留置カテーテルの抜去やオムツからの離脱など、患者さんの排尿自立につながることが予想されている。 基本機能として、次の機能が搭載されている。 1)残尿測定:位置決めモードにより簡便に膀胱内の尿量測定を行う 2)排尿タイミングモード:任意に設定した膀胱内尿量で患者に通知 3)定時測定モード:連続的尿量測定により蓄尿・排尿状態を把握 4)排尿日誌機能:排尿時にボタンを押すことで排尿日誌の作成が可能 同社では、本製品の普及により、排尿で問題を抱えている多くの方々のQOLの向上や患者ADLの向上、看護・介護に携わる方々の労力の軽減と効率化、さらには患者さんの尊厳に関わる医療ケアに大きく貢献できるものと、期待を膨らませている。 希望小売価格は税抜35万円(初回に同包する各種アクセサリを含むセット価格)。11月2日より発売。非専門医ももっと泌尿器診療へ プレスセミナーでは、高橋 悟氏(日本大学医学部泌尿器科学系 主任教授)が、「超高齢社会に於ける排尿ケアの課題と対策」と題しレクチャーを行った。 尿意切迫感、切迫性尿失禁などの排尿トラブルは、健康な人でも40歳を超えると年齢とともにその数は増加する。まして、脳血管障害、運動器障害、認知症などの基礎疾患がある要介護状態では、半数以上で何らかの排尿障害があると報告されている。わが国では、要介護認定者は600万人を超えており、排泄介護は今後も大きな問題になる。そして、排泄介護は、負担が非常に大きく、自宅復帰を阻害する要因となっている。 これら排尿障害の臨床では、「過活動膀胱診療ガイドライン」をはじめ、多数のガイドラインが使用されている。それらで取り上げられている残尿測定と排尿日誌は、基礎的評価として重要な項目であり、一般の外来でも行われることが期待されている(現在、残尿測定検査は超音波検査で55点、導尿で45点の保険適用)。 しかし、残尿測定検査は、特別に機器が必要とされ、外来でも煩雑であり、排尿日誌は、自立排尿できない患者さんや介護者の負担などの理由でなかなか記録されないという課題がある。 診断後は、頻尿、尿失禁、排出障害などに対して、排尿障害治療薬も発売されている。しかし、十分な治療効果がない場合は、成人用オムツが多用されており、また、在宅介護では、留置カテーテルも少なくないという。排尿予測が患者、介護者の負担を軽減する このように課題の多いわが国の排尿管理において、高齢者80名に反復的尿量測定と排尿誘導を行った結果、オムツ使用の軽症化、身体機能の改善、認知機能の改善、介護ストレスの軽減に有用であったとする研究がある(Iwatsubo E, et al. Int J Urol. 2014;21:1253-1257.)。 今後の排尿ケアにおいては、膀胱機能アセスメントとして、残尿(尿量)測定と排尿日誌、行動療法統合プログラムの実施が望まれる。また、回復期リハビリテーションや地域包括ケアでの積極的な介入が重要となる。 その際に、「リリアムα-200」のような携帯型の残尿測定器があれば、排尿ケア・プランの立案ができ、適切な排尿誘導が可能となる。これにより、必要のないオムツの取り外しや留置カテーテルの抜去ができ、患者さんの尊厳回復やQOLの向上、介護者の負担軽減につながり、ひいては高齢者の健康寿命の延伸に期待が持たれる、とレクチャーを終えた。「リリアムα-200」の製品紹介はこちら関連リンクケアネット・ドットコム 特集「排尿障害」

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