STEMIへのPCI、ルーチン血栓除去併用は脳卒中増大/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2015/10/30

 

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)時のルーチンの用手的血栓除去術併用は、長期的な臨床的アウトカムを低減しない一方で、脳卒中の増大と関連している可能性があることが示された。カナダ・マックマスター大学のSanjit S Jolly氏らが、前向き無作為化試験TOTALの1年フォローアップ評価の結果、報告した。同併用について先行する2件の大規模試験では相反する結果が報告されていたが、今回の結果を踏まえて著者は、「もはや血栓除去術は、STEMI患者へのルーチン戦略として推奨できない」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年10月12日号掲載の報告。

TOTAL試験の被験者について1年の長期フォローアップ
 TOTAL試験は、STEMI患者におけるルーチン用手的血栓除去術+PCI併用 vs.PCI単独を比較し、血栓除去術併用の長期的ベネフィットを明らかにし、臨床ガイドに寄与することを目的とした。

 被験者は、18歳以上のSTEMI患者1万732例で、20ヵ国87病院から登録を行い、発症後12時間以内に1対1の割合で無作為に、ルーチン血栓除去群またはPCI単独群に割り付けた。コンピュータ中央システムで、24時間ごとの置換ブロック無作為化法にて行い、層別化も行った。なお、被験者と研究者は、治療割り付けを知らされなかった。

 試験では、180日時点における主要アウトカム(心血管死・心筋梗塞・心原性ショック・心不全)の有意差は示されなかったが、ST部位のアウトカムおよび遠位塞栓の改善が示された。しかし、この所見が長期的ベネフィットを意味するのかについては不明のままであった。

 そこで研究グループは長期フォローアップを行い、今回、1年時点の主要アウトカムと副次アウトカムを報告した。主要アウトカムの分析は、修正intention to treatにて、指標PCIを受けた患者のみを含んで行われた。

1年時の主要アウトカム発生にも有意差なし、ただし脳卒中発生が1.66倍に
 2010年8月5日~14年7月25日に適格患者1万732例を登録し、ルーチン血栓除去術併用群(5,372例)またはPCI単独群(5,360例)に無作為に割り付けた。そのうちPCIを受けなかった患者を除外(それぞれ337例、331例)し、最終試験集団に1万64例(各群5,035例、5,029例)を組み込んで評価した。

 結果、1年時点の主要アウトカム発生率は、ルーチン血栓除去術併用群395/5,035例(8%)、PCI単独群394/5,029例(8%)であった(ハザード比[HR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.87~1.15、p=0.99)。

 1年間の心血管死の発生は、ルーチン血栓除去術併用群179例(4%)、PCI単独群192例(4%)であった(同:0.93、0.76~1.14、p=0.48)。

 一方、安全性のキーアウトカムである1年間の脳卒中発生は、ルーチン血栓除去術併用群60例(1.2%)、PCI単独群36例(0.7%)であった(同:1.66、1.10~2.51、p=0.015)。

(武藤まき:医療ライター)

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コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏

慶應義塾大学 循環器内科 専任講師

J-CLEAR評議員