青年期からの適切な対策で精神疾患の発症予防は可能か

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2015/10/26

 

 青年から成人への移行期には、身体的、感情的および社会的な変化が大きいが、この発達期における慢性症状と精神疾患との関連について調べた研究はほとんどない。カナダ・マックマスター大学のM. A. Ferro氏は、青年から成人への移行期(emerging adulthood)に該当する15~30歳成人の疫学的サンプル調査により、慢性症状の有無別に性特異的な生涯精神疾患の有病率を調べた。結果、同年代では、身体的症状と精神的症状の併存は一般的であり、それらが相乗的に増大するという関連はみられなかったが、障害や痛みのレベルによっては関連する可能性があることを明らかにした。そのうえで、慢性症状を有するこの年代の成人の精神疾患の予防・減少を促進するために、行政は健康、教育、社会的サービスを統合・調整していくことが重要であると報告した。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌オンライン版2015年9月8日号の掲載報告。

 研究グループは、慢性症状の有無を問わず15~30歳成人の疫学的サンプルを用いて、生涯精神障害の性特異的有病率を調べた。社会人口統計学的因子、健康因子で補正後、慢性症状と精神障害の関連を定量化し、また、性別、障害および痛みのレベルによる調節・媒介の可能性を調べた。Canadian Community Health Survey-Mental Healthの回答者で、慢性症状について自己報告していた15~30歳5,947例のデータを用いて分析を行った。慢性症状は、呼吸器系、筋骨格/関節組織、心血管、神経学的、内分泌/消化器系で分類。WHOの統合国際診断面談(Composite International Diagnostic Interview ; CIDI)3.0版を用いて、精神疾患(うつ病、自殺行為、双極性障害、全般性不安症)の有無を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・生涯精神疾患有病率は、慢性症状あり群が健康対照と比べて有意に高率だった。
・精神疾患の有病率は、女性では認められなかったが男性では、かなりの不均一性が認められた。
・社会人口統計学的および健康因子で補正後のロジスティック回帰モデルにおいて、慢性症状がある人は、精神疾患リスクが高いことが示された。
・障害や痛みのレベルが、慢性症状と精神疾患との関連を調整するというエビデンスは認められなかった。
・性別は、筋骨格/関節組織症状と双極性障害の関連を調整することが認められた(β=1.71、p=0.002)。
・探索的分析においては、障害と痛みのレベルが慢性症状と精神疾患との関連を媒介することが示唆された。

関連医療ニュース
青年期うつは自助予防可能か
若年男性のうつ病予防、抗酸化物質が豊富な食事を取るべき
日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき


  担当者へのご意見箱はこちら

(ケアネット)