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緑茶・コーヒー・アルコールと乳がんリスク~日本人女性

 日本の全国多施設前向きコホート研究であるJapan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk(JACC)Studyにおいて、緑茶・コーヒー・アルコールと乳がんリスクの関連を調べた結果、アルコール摂取と乳がんリスク増加との関連がみられた一方、乳がんリスクとの関連の結論が出ていない緑茶やコーヒーについては関連がみられなかった。Asian Pacific Journal of Cancer Prevention誌2020年6月1日号に掲載。 本研究の対象は、JACC Studyにおける国内24地域の40〜79歳の日本人女性3万3,396人。20年以上の追跡期間中に乳がんが255例に発症した。乳がんリスクと緑茶、コーヒー、アルコールの摂取の間の独立した関連性を評価するために、多変量ロジスティック回帰分析を行った。緑茶とコーヒーについては、毎日摂取しない人を基準として、毎日摂取する人のオッズ比(OR)を算出した。アルコール摂取については、摂取しない人を基準として、週当たりの摂取頻度(1回未満、1~2回、3~4回、毎日)およびアルコールの種類(日本酒、ビール、ワイン、ウイスキー)別のORを算出した。 主な結果は以下のとおり。・最も多く摂取されていたのは緑茶(参加者の81.6%)で、次いでコーヒー(34.7%)、アルコール(23.6%)であった。・緑茶(OR:1.15、95%信頼区間[CI]:0.82~1.60)およびコーヒー(OR:0.84、95%CI:0.64~1.10)の摂取量と乳がんリスクの間に有意な関連はみられなかった。・アルコール摂取は、乳がんリスクが有意に増加し(OR:1.46、95%CI:1.11~1.92)、週1回以下の飲酒でも乳がんリスクが増加した(OR:2.07、95%CI:1.39~3.09)。・アルコールの種類別では、日本酒とビールでは有意な増加はみられなかった。ワイン(OR:1.79、95%CI:0.99~3.23)とウイスキー(OR:1.68、95%CI:0.91~3.08)ではORが高かったが、統計学的に有意ではなかった。

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COPDへの3剤配合吸入薬、ICS半量でも有効/NEJM

 中等症~最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、ブデソニド標準用量または半量によるブデソニド/グリコピロニウム/ホルモテロール3剤配合吸入薬(ブデソニド半量の3剤配合吸入薬は本邦未承認)はいずれも、グリコピロニウム/ホルモテロールまたはブデソニド/ホルモテロールの2剤配合吸入薬と比較し、中等度~重度のCOPD増悪頻度を抑制したことが示された。ドイツ・LungenClinic GrosshansdorfのKlaus F. Rabe氏らが、26ヵ国で実施した52週間の第III相無作為化二重盲検比較試験「Efficacy and Safety of Triple Therapy in Obstructive Lung Disease trial:ETHOS試験」の結果を報告した。COPDに対する固定用量の吸入ステロイド(ICS)+長時間作用型抗コリン薬(LAMA)+長時間作用型β2刺激薬(LABA)3剤併用療法は、これまで1つの用量のICSでのみ検討されており、低用量ICSでの検討が不足していた。NEJM誌オンライン版2020年6月24日号掲載の報告。ICS標準用量/半量による3剤配合の有効性を2剤配合と比較 研究グループは、過去1年間に1回以上の増悪を認めた中等症~最重症のCOPD患者8,588例を、ブデソニド320μg/日+グリコピロレート(グリコピロニウム臭化物として18μg/日、以下、グリコピロニウム)+ホルモテロール(ホルモテロールフマル酸塩水和物9.6μg/日)(ブデソニド標準用量3剤配合群)、ブデソニド160μg/日+グリコピロニウム+ホルモテロール(ブデソニド半量3剤配合群)、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群、またはブデソニド(320μg/日)/ホルモテロール2剤配合群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日2回52週間吸入投与した。 主要評価項目は、52週間における中等度~重度増悪(中等度増悪:3日以上の全身性ステロイドまたは抗生物質の投与、重度増悪:入院または死亡)の年率(推定平均回数/患者/年)であった。標準用量・半量とも3剤配合吸入薬は、2剤配合吸入薬に比べ増悪頻度を有意に改善 無作為割り付けから治験薬投与中止までの間にデータが得られた8,509例(修正intention-to-treat:mITT集団)を主要評価項目の解析対象集団とした。 中等度~重度の増悪頻度は、ブデソニド標準用量3剤配合群(2,137例)が1.08回/患者/年、ブデソニド半量3剤配合群(2,121例)が1.07回/患者/年、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群(2,120例)は1.42回/患者/年、ブデソニド/ホルモテロール2剤配合群(2,131例)は1.24回/患者/年であった。 ブデソニド標準用量3剤配合群は、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群(24%減少、率比:0.76、95%信頼区間[CI]:0.69~0.83、p<0.001)、およびブデソニド/ホルモテロール2剤配合群(13%減少、0.87、0.79~0.95、p=0.003)と比較して増悪頻度が有意に減少した。ブデソニド半量3剤配合群も同様に、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群(25%減少、0.75、0.69~0.83、p<0.001)、およびブデソニド/ホルモテロール2剤配合群(14%減少、0.86、0.79~0.95、p=0.002)と比較して、増悪頻度が有意に減少した。 有害事象の発現頻度は治療群間で類似していた(範囲:61.7~64.5%)。独立評価委員会で確定された肺炎の発現頻度は、ブデソニドを用いた治療群で3.5~4.5%、グリコピロニウム/ホルモテロール2剤配合群で2.3%であった。

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アロプリノールはCKDの進行を抑制するか?/NEJM

 進行リスクが高い慢性腎臓病(CKD)患者において、アロプリノールによる尿酸低下療法はプラセボと比較し、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下を遅らせることはなかった。オーストラリア・St. George HospitalのSunil V. Badve氏らが、アロプリノールによる尿酸低下療法の有効性を検証した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Controlled Trial of Slowing of Kidney Disease Progression from the Inhibition of Xanthine Oxidase:CKD-FIX」の結果を報告した。血清尿酸値の上昇はCKDの進行と関連している。しかし、アロプリノールを用いた尿酸低下療法が進行リスクの高いCKD患者のeGFR低下を抑制できるかどうかは不明であった。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。2年間のeGFRの変化を、プラセボと比較し評価 研究グループは、2014年3月~2016年12月の期間に、オーストラリアおよびニュージーランドの31施設において、尿中アルブミン(mg)/クレアチニン(g)比が265以上または前年からのeGFR低下が3.0mL/分/1.73m2で、痛風の既往がない、ステージ3または4の成人CKD患者を、アロプリノール(100~300mg/日)群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、CKD-EPI(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)式を用いて算出した、無作為化から104週(2年)までのeGFRの変化であった。eGFRの変化はプラセボと有意差なし 目標症例は620例であったが、登録の遅れのため369例(目標の60%)がアロプリノール群(185例)またはプラセボ群(184例)に割り付けられた時点で登録中止となった。無作為化直後に各群3例が同意を撤回し、363例が主要評価項目の解析対象となった。363例のベースラインにおけるeGFR平均値は31.7mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比の中央値は716.9、平均血清尿酸値は8.2mg/dLであった。 主要評価項目であるeGFR変化量は、アロプリノール群が-3.33mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-4.11~-2.55)、プラセボ群が-3.23mL/分/1.73m2/年(95%CI:-3.98~-2.47)であり、両群に有意差は認められなかった(平均群間差:-0.10mL/分/1.73m2/年、95%CI:-1.18~0.97、p=0.85)。 重篤な有害事象は、アロプリノール群で182例中84例(46%)、プラセボ群で181例中79例(44%)に認められた。 なお、著者は、登録が完全ではなかったこと、治療を中断した患者の割合が高かったこと、代替エンドポイントを使用したことなどを研究の限界として挙げている。

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多発性骨髄腫、3剤併用療法の長期アウトカムは?/JCO

 多発性骨髄腫に対する3剤併用(レナリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン:RVD)療法の有効性について、最大規模のコホートで長期追跡したアウトカムの結果が報告された。米国・エモリー大学のNisha S. Joseph氏らによる検討で、移植後患者の奏効率は90%近くに上り、リスクに留意した維持療法により、先例のない長期アウトカムがもたらされる可能性があることが示されたという。RVD療法は、移植治療の適格・不適格を問わず、導入療法としての有効性は高く、重宝するレジメンであることが示されていた。Journal of Clinical Oncology誌2020年6月10日号掲載の報告。 研究グループは、2007年1月~2016年8月にRVD導入療法を受けた、新規に診断された多発性骨髄腫の連続患者1,000例について検討した。 施設内倫理委員会が承認した多発性骨髄腫のデータベースから、被験者の人口統計学的および臨床的特性とアウトカムデータを入手。International Myeloma Working Group Uniform Response Criteriaに準じて奏効率と病勢進行を評価した。 主な結果は以下のとおり。・全奏効率(ORR)は、導入療法後97.1%、移植後98.5%であった。・移植後患者において、追跡期間中央値67ヵ月時点で、最良部分奏効(VGPR)または良好(better)の達成割合は89.9%であり、厳格完全奏効(sCR)の達成割合は33.3%であった。・無増悪生存(PFS)期間の推定中央値は、全集団で65ヵ月(95%信頼区間[CI]:58.7~71.3)、高リスク集団で40.3ヵ月(同:33.5~47)、標準リスク集団で76.5ヵ月(同:66.9~86.2)であった。・全生存(OS)期間の推定中央値は、全集団で126.6ヵ月(95%CI:113.3~139.8)、高リスク集団で78.2ヵ月(同:62.2~94.2)、標準リスク集団では未達成であった。・5年OS率は、高リスク集団57%、標準リスク集団81%であり、10年OS率はそれぞれ29%、58%であった。

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第52回 転倒しそうなときは横向き・おへそを見るよう意識して頭を守る!【使える!服薬指導箋】

第52回 転倒しそうなときは横向き・おへそを見るよう意識して頭を守る!1)John Stephen Batchelor, et al. Br J Neurosurg. 2012 Aug;26:525-530.2)John Stephen Batchelor, et al. Br J Neurosurg. 2013 Feb;27:12-18.3)Ramesh Grandhi, et al. J Trauma Acute Care Surg. 2015 Mar;78:614-621.4)根來 信也, 他. 身体教育医学研究. 2005;6:39-47.

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デュルバルマブ承認後の実臨床における、局所進行非小細胞肺がんCCRTの肺臓炎(HOPE-005/CRIMSON)/ASCO2020

 デュルバルマブが局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線同時療法(CCRT)後の地固め療法の標準治療として確立された。しかし、デュルバルマブ承認後の実臨床におけるCCRTの実態は明らかになっていない。この実臨床の状況を調べるため、Hanshin Oncology critical Problem Evaluate group(HOPE)では、プラチナ化学療法と放射線の同時療法(CCRT)を受けた局所進行NSCLC患者を対象にした後ろ向きコホート研究を実施。肺臓炎/放射線肺臓炎(以下、肺臓炎)の実態に関する結果を千葉大学の齋藤 合氏が米国臨床腫瘍学会(ASCO20 Virtual Scoentific Program)で発表した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、2018年5月〜2019年5月に、HOPEの15施設でCCRTを開始したわが国各地の切除不能局所進行NSCLC患者で、解析対象は275例であった。・患者の年齢中央値は69.9歳、V20(20Gy以上照射される肺体積の全肺体積に対する割合)中央値は19.5%、線量中央値は60Gy、CCRT開始からの観察期間中央値8.4ヵ月であった。・275例中、肺臓炎の発症は全Gradeで81.8%(225例)、内訳はGrade 1が134例, Grade 2以上が91例, Grade 3以上が18例, Grade 5が4例であった。・CCRT開始から肺臓炎の発現までの期間(中央値)は14週、デュルバルマブ開始からの期間(四分位範囲)は7〜10週であった。・ 多変量ロジスティック回帰解析による症候性(≧Grade 2)肺臓炎の独立した危険因子はV20 25%以上であった(OR:2.74、95%信頼区間[CI]:1.35〜5.53、p=0.0045)。・デュルバルマブの維持療法を受けた患者の割合は204例(全体の74.2%)であった。そのうち84%(171例)で肺臓炎が発現し、24.7%(51例)はデュルバルマブの中止とステロイド治療が行われた。・肺臓炎によりデュルバルマブを中止し、ステロイドが投与された51例中41%(21例)で同剤の再投与が行われた。再投与21例中72%(15例)は再燃なく同剤を継続できた。28%(6例)で肺臓炎が再燃したが、6例中3例はデュルバルマブを継続され、3例は中止となった。 発表者の千葉大学 齋藤 合氏との1問1答この研究実施の目的について教えていただけますか。 2018年、デュルバルマブが承認され、切除不能局所進行NSCLCにおけるCCRTの維持療法の標準治療となりました。デュルバルマブの承認後、治療成績向上に対する期待だけでなく、日本人に多いとされる肺臓炎に対する懸念もあり、CCRTにおける放射線治療の部分に関しても内科系の医師の関心が高まっています。しかし、合併症である肺臓炎の詳細など、実臨床で知りたい情報は、同剤による地固め療法の効果を検討した第III相PACIFIC試験で不明な点が多く存在します。デュルバルマブ登場以降の実臨床におけるCCRTの全体像を明らかにするためにこの研究を行いました。デュルバルマブの再投与についての分析も行われていますね。 局所進行NSCLCのCCRTでは、薬剤だけでなく放射線による肺臓炎の懸念もあります。薬剤性の肺障害は残念なことに致死的なケースも多く経験されます。ところが、前述のPACIFIC試験では、条件を満たせば肺臓炎発症患者へのデュルバルマブ再投与がプロトコルで認められていました。従来の臨床医の感覚としては、再投与はややためらいをおぼえるものでした。実臨床においてもある程度の割合で再投与が行われ、かつ、継続できていたことは、実地臨床で悩まれる先生方の参考にもなるのではないかと思います。ただし、本検討は介入研究でないことは強調したいと思います。この研究結果はどのように実臨床に活かせるのでしょうか。 今回の検討結果のポイントは、3点あると思います。 1つ目は、デュルバルマブ登場以降のわが国のCCRTにおいて、どのくらいの重症度の肺臓炎がどのくらいの頻度で起きているかを示したという点です。実際に本検討の観察期間中に約5分の4が肺臓炎を発症しましたが、過半数はGrade 1であったという結果でした。 2つ目は、CCRTにおいて放射線治療医との連携が重要であると確認できたことです。従来から、V20が高いことはCCRTにおける肺臓炎発現のリスク因子として報告されていましたが、今回の検討でも同様の結果が示されました。これにより放射線科医と連携してリスクを把握し、患者さんのインフォームドコンセントに活かすことの重要さを再確認できました。 3つ目は、前述のデュルバルマブの再投与の可能性についてです。従来わが国の肺がん診療において、肺障害出現後の再投与には抵抗を覚える先生も多かったかと思います。しかし、デュルバルマブ地固め療法による全生存期間の延長効果が示され、かつ治験の段階で再投与が許容されたことで、再投与が可能なのであれば検討したいと考えていた先生方もいたのではないかと思います。今回、再投与が行われた患者さんは比率として多いわけではありませんが、4割にデュルバルマブの再投与が行われたこと、さらに多くの患者さんで投与が継続できていたという結果は、あくまでも参考ですが、デュルバルマブの再投与という選択肢を検討するきっかけになるかもしれません。

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週1回のインスリンの有効性・安全性/ノボ ノルディスク ファーマ

 ノボ ノルディスク ファーマは、週1回投与のinsulin icodec*の第II相試験で1日1回投与のインスリン グラルギンU100と同程度の有効性および安全性を示したことを6月19日にリリースするとともに、第80回米国糖尿病学会で発表した。 本試験は、DPP-4阻害薬の併用または非併用下でメトホルミンによって十分にコントロールされていないインスリン治療歴のない成人2型糖尿病患者247名を対象とした、26週間、無作為割り付け、二重盲検、ダブルダミー、treat-to-target、第II相臨床試験。*本製剤および効能・効果は日本を含めて現在開発中であり未承認の製剤basalインスリンの注射回数が週1回になる 主要評価項目である血糖コントロール(HbA1c)のベースラインから投与後26週までの変化量は、insulin icodec週1回投与群とインスリン グラルギンU100の1日1回投与群で同程度(それぞれ-1.33%および-1.15%、p=0.08)だった。また、副次評価項目であるベースラインから投与後26週までの空腹時血糖値(FPG)の変化量は、insulin icodecおよびインスリン グラルギンU100で同程度(それぞれ-58mg/dLおよび-54mg/dL)、ベースラインから投与後26週までの9点測定血糖値プロファイル(血糖自己測定による)の平均値の変化量は、insulin icodecでより大きかった(-7.9mg/dL、p=0.01)ことが示された。 安全性に関し低血糖は、両投与群で同程度だった(レベル2の低血糖[血糖値

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血液による大腸がん術後再発リスク評価、医師主導治験開始/国立がん研究センター

 リキッドバイオプシーと遺伝子パネル検査を活用し、“見えないがん(術後微小残存病変)”を対象とした、大腸がんの新たな術後再発リスク評価手法の確立を目指す、世界最大規模の医師主導国際共同臨床試験が開始された。国立がん研究センターによる新プロジェクト「CIRCULATE-Japan」の一環として実施されるもので、同プロジェクトでは産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業「SCRUM-Japan」の基盤を活用し、切除可能大腸がんにおける、遺伝子異常・臨床情報を大規模データベース化していく。 現在、大腸がんの術後再発リスク評価は術後の病理組織検査によるがんの術後ステージによって推定され、術後補助化学療法が行われる。しかし、ステージに基づく再発リスク推定だけでは、本来必要がない症例にも再発リスクの高い症例と同じ治療が実施され、末梢神経障害が後遺症として残るなど、副作用が発現する場合がある。 「CIRCULATE-Japan」では、5月8日より、根治的外科治療可能の結腸・直腸がんを対象としたレジストリ研究(GALAXY試験)の登録を開始。国内外約150施設(台湾1施設を含む)が参加している。 同試験では、根治的外科治療を予定しているステージ2期から4期を含む大腸がん患者約2,500名を対象に、術後2年間、リキッドバイオプシーを用いた再発のモニタリング検査(Signatera検査:米国・Natera社が開発中の、血液を用いた微小残存腫瘍検出専用の遺伝子パネル検査)を実施。手術で取り出した腫瘍組織を用いた全エクソーム解析の結果をもとに、患者さんごとにオリジナルの遺伝子パネルを作製する。その後、術後1ヵ月時点から定期的に血液を採取し、オリジナル遺伝子パネルを用いて、血液中のがん遺伝子異常の有無を調べる。 さらに、術後1ヵ月時点でがん遺伝子の異常が検出されないステージ2期から3期の患者さん1,240名を対象に、従来の標準的治療である術後補助化学療法群と経過観察群とを比較する第III相試験(VEGA試験)も同時に登録を開始している。 これらの研究を通してリキッドバイオプシーによる再発リスク評価精度とその臨床的有用性が示されれば、術後補助化学療法の効果がより期待される患者さんのみを選別することが可能となり、不要な治療を避けることで副作用や後遺症を軽減することができる。また、本検査は身体に負担の少ない採血で繰り返し測定可能となるため、がんの再発をより早期に発見できることが期待される。「CIRCULATE-Japan」では、今後他がん種への展開も予定している。

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すべての診療科に関わる!タバコ問題を自分事にするために知っておきたいこと(1)【新型タバコの基礎知識】第20回

第20回 すべての診療科に関わる!タバコ問題を自分事にするために知っておきたいこと(1)Key Points新型タバコ問題に行く前の段階で、いかに社会はタバコ産業によって歪められているかについて知っておくことがとても重要歴史上、タバコ会社による“安全なタバコ”の開発は一度も成功していないタバコ会社の歴史を知ることで新型タバコ問題がみえてくる残念ながらタバコ問題を客観的に捉え、自分事にできている人は少ないのが現状です。われわれが生まれる前から認識が歪められてしまっていて、そのこと自体に気付くことが難しいからかもしれません。それは医師も例外ではありません。新型タバコ問題に行く前の段階で、いかに社会はタバコ産業によって歪められているかについて知っておくことがとても重要です。新型タバコ問題についてきちんと理解するために、知っておかなければならないことは、人々とタバコとタバコ会社の歴史です。歴史上、タバコ会社による“安全なタバコ”の開発は一度も成功していません。しかし、タバコ会社は、新しいタバコ製品が従来からのタバコ製品よりもより安全ではないかと誤解させることには、何度も成功してきています。その最新の事例が加熱式タバコだと言えるでしょう。人々とタバコとタバコ会社の歴史を知ることで新型タバコ問題がみえてきます。今回は、タバコについてのよくある疑問と一緒に、歴史をみていこうと思います。よく聞かれるのが、「タバコを禁止してくれたら禁煙するのに、なぜ禁止してくれないのか?」というものです。そもそも、なぜ、いまだにタバコは合法であり続けているのでしょうか? 今でもタバコが合法だからこそ、新しいタバコが市場に出てきたとも言えます。紙巻タバコは20世紀前半にかけての産業技術開発により大量生産が可能となり、まず高所得国を中心に普及しました。1900年以前において、タバコは広く普及しておらず、大衆文化ではありませんでした。タバコが国民・住民の文化であるというイメージは、近年にタバコ産業によって意図的に創出されたものです。普及前や普及直後には、タバコによる健康被害は当然分かっていませんでした*1。タバコ産業による巧みなマーケティング戦略により、タバコは20世紀に急激に普及しました。*1:ただし、タバコが普及した当初からタバコの健康被害を懸念する者もいた。そのはるか昔にも、タバコの健康被害は指摘されていた。たとえば、1712年に貝原益軒が著した「養生訓」には「煙草は性毒あり」「煙をふくみて眩ひ倒るゝ事あり」「病をなす事あり」「習へばくせになり、むさぼりて後には止めがたし」などと書かれている。タバコの害を懸念していた状況というのは、現在の新型タバコをめぐる状況と同じだとも言えそうだ。その後、タバコの害に関する研究が進み、1950年前後になってようやく喫煙による健康被害が報告されはじめました。この時になってはじめてタバコには害があると公に分かったわけですが、すでにタバコは広く普及してしまっていました。タバコ利権はすでに巨大なものとなっていたのです。その利権があまりに大きかったがゆえにタバコを擁護する勢力が強大で、すぐにタバコを禁止することができなかったと言えるでしょう。タバコには明らかに害があるとされたにも関わらず、です。今でもタバコが合法であり続けているのには、さらなる理由があります。タバコの害が明らかになったその時、世界のタバコ会社の幹部による会議が開かれました。そこで、タバコ会社は、「できるだけ人々がタバコの害に気付かず、吸い続けてくれるようにマーケティング戦略を駆使して、人々をだましていこう」との方針を決めたのです。タバコの害が報告されて以降も、世の中には、タバコの害を認識していない人がまだ多くいました。タバコの害を認識していない医師をつかまえてきて、タバコは良いものだ! と訴える広告に使ったのです(図)。画像を拡大するタバコ会社がお金を出して、「ストレスが体に悪い」*2、「タバコはストレスを減らす」というストーリーが作られてきたということが、タバコ会社の内部文書等の分析から明らかにされています。タバコはまったくストレスを減らさず、むしろ、ニコチン欠乏によるストレスを増やすと分かっています。ストレスが悪い、というストーリーは、タバコ以外にも悪いものを作りたかったタバコ産業の意図に完全に沿ったものとして作られました。その結果として、ストレスといえば悪いもの、とのイメージができてしまっていますが、これは誤ったイメージです*3。*2:実は、この「ストレスが体に悪い」というストーリーは、動物実験の結果から導かれたものだ。その動物実験では、ストレスとして、お腹に針を刺すと健康が害される、というような実験がされていた。お腹に針を刺すというのはストレスというよりは傷害事件になるレベルの出来事である。それであれば、健康を害してもなんらおかしくはない。そんな実験結果をもとにして、「ストレスは悪い!」というイメージだけが作られてしまったのである。*3:精神科医の中沢正夫氏は「ストレスは悪玉なのではない…ストレスを1つ1つ乗り越えることが、『人間』の発達なのである。ストレスは元来、避けるべき対象ではなく、乗り越えるべき対象なのである。一切のストレスを回避すれば、それは楽であろうが、その人は成長もまたあきらめることになるのである」と書いている。出典:中沢正夫著、ストレス善玉論、情報センター出版局、1987年ストレスはまったくないよりも適度にあった方がよい、過度でない適度なストレスはむしろやる気につながる、といった認識に対して反対される方は少ないのではないでしょうか。タバコ産業が意図的にストレスは悪いという極端なイメージを植え付けてきたために、われわれの認識は大きく歪められてしまっているのです。さて、タバコ問題の歴史に話をもどします。1964年、タバコ問題にとって非常に重要な報告がなされました。米国公衆衛生総監による最初のタバコの有害性に関する報告書が公開されたのです。1950 年代に喫煙と肺がんとの関連を示す研究が相次いで発表されたことを背景にして、喫煙と健康に関する包括的評価が実施され、男性において喫煙と肺がん、喫煙と喉頭がんとの間に因果関係がある*4と結論付けました。この報告の影響もあり、欧米の高所得国では喫煙率が減少傾向となり、日本でも1960年代をピークに喫煙率は減少に転じました。*4:「因果関係がある」とは単に関連しているということではなく、時間的前後関係として先に「喫煙」したことによって後に「肺がん」に罹患したり、肺がんを原因として死亡したりすることが増えるということを指す。1990年代、米国では各地でタバコ病に関する集団訴訟が起こり、タバコ会社が販売するタバコのために人々が病気になり、社会的損失が大きいとして、タバコ会社は追い詰められました。その結果、1998年にMaster Settlement Agreement というタバコ病訴訟の和解があり、米国のタバコ会社はその後25年間をかけて42 兆円にのぼる賠償金(和解金)を米国政府に支払うこととなったのです。その賠償金を使い、米国では多額の費用を要するテレビCM 等の脱タバコ・メディアキャンペーンが積極的に展開されてきています。こういった影響もあり、米国をはじめとした先進国では喫煙率は減少してきました。しかし、タバコ会社が世界中にマーケットを広げていったため、中低所得国にもタバコが普及しました。東南アジアなどの国では以前はほとんどタバコを吸う人はいなかったにもかかわらず、近年急激にタバコが普及してしまっています。タバコ産業は世界のタバコマーケットを維持するために莫大な予算をマーテティング活動に投じているのです。そして、地球人口の増加や中国などの経済新興国におけるタバコ消費量の増大も影響し、実は世界のタバコ消費量は増え続けています1)。1964年にタバコの害が明確に証明されてから50年以上がたっていますが、世界のタバコ消費量はその当時に比べて減るどころか、増えています。タバコ問題は決して過去の問題ではないのです。タバコ会社は、中低所得国では昔の日本や欧米で使われたような古典的なマーケティング戦略を駆使してタバコを売り込んでいます。一方で、日本や欧米のように喫煙率が低下傾向にある先進国におけるタバコ会社の戦略は基本的に一貫しています。「喫煙率が低下していくとしても、少しでも低下するスピードを遅くする。そのために、あらゆる手段を駆使して、タバコ対策を阻害し、少しでも多くの人にタバコを始めてもらい、吸い続けてもらうように仕向ける」という戦略です。2010年に神奈川県で受動喫煙防止条例が制定されました。日本で初めての受動喫煙防止条例です。この時、タバコ会社からの妨害工作がすさまじく、神奈川県は住民世論調査をまるまるやり直す事態となりました。はじめの調査では、タバコ会社による組織的動員によって不自然な反対票の急増が確認されたのでした。調査をやり直した結果、8割近くの県民が条例に賛成していると分かり、この世論が条例成立の後ろ盾となりました。もし、不自然な票の動きに気付いていなければ、日本で最初の受動喫煙防止条例は成立していなかったかもしれません。この辺りの事情はその当時の神奈川県知事であった松沢成文氏の著書『JT、財務省、たばこ利権』2)に詳しく書かれています。第21回は、「すべての診療科に関わる!タバコ問題を自分事にするために知っておきたいこと(2)(最終回)」です。1)Eriksen M, et al. The Tobacco Atlas, Fifth Edition: Revised, Expanded, and Updated. Atlanta, USA: American Cancer Society,2015.2)松沢成文 著. JT、財務省、たばこ利権 ~日本最後の巨大利権の闇~. ワニブックス;2013.

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ASCO2020レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介2020 ASCO Virtual Scientific ProgramCOVID-19の影響で初のバーチャル開催となったASCO2020。オープニングセッションでは2019~20年のプレジデントであるDr. Howard A. “Skip” Burris IIIは冒頭のあいさつで、本会の約1年前に“Unite & Conquer: Accelerating Progress Together”というテーマを掲げた際には現在の世の中の在り方を想像だにしていなかったが、われわれの働き方、社交の仕方にとどまらず、ものの見方まで変えてしまったパンデミック状況下で、このテーマが新たな意味を持つことになったと述べています。確かに地域・人種・民族・性別・職種の多様性を超えて団結し進歩を加速することの必要性は、COVID-19という喫緊の課題を前により明確になりました。「われわれは今年の年次総会では同じ部屋にいませんが、これまで以上に団結しています」という言葉が印象的でした。さて、Scientific Programの中から注目の演題をピックアップして紹介するこのレポート、前立腺がん領域では新規ホルモン治療薬の臨床試験結果とPSMA-PET関連の報告が、尿路上皮がんと腎細胞がんでは免疫チェックポイント治療の話題が中心となっています。経口LHRHアンタゴニストは進行前立腺がんに対する抗アンドロゲン療法を変えるか経口LHRHアンタゴニストの安全性・有効性を検証したHERO試験(NCT03085095)の結果が口演発表で報告されました(Abstract#5602)。従来の進行性前立腺がんにおけるアンドロゲン除去療法(ADT)では、LHRHアゴニストあるいはアンタゴニストの注射が中心でしたが、1ヵ月から6ヵ月ごとの注射が必要になる点や、アゴニスト製剤の場合にはLHサージが起こる点などの問題点がありました。国際第III相HERO試験では初の経口GnRH受容体アンタゴニスト製剤であるレルゴリクスの安全性・有効性を、従来臨床で用いられている酢酸リュープロライド注射製剤と比較しました。本試験では去勢感受性進行性前立腺がん患者934例を2:1の比率で経口レルゴリクス(120mg/日)あるいは酢酸リュープロライド皮下注射(3ヵ月ごとに11.25あるいは22.5mg)に無作為割付を行いました。主要評価項目である血清テストステロン(T)値の去勢レベル(<50ng/dL)への抑制(29日目時点)とその維持(48週間)は、レルゴリクス群では96.7%(95%CI:94.9~97.9%)で、酢酸リュープロライド群の88.8%(84.6~91.8%)と比較して、非劣性・優位性ともに統計学的に証明されました。副次的評価項目として、4日目の去勢達成率も56対0%でレルゴリクス群が優れており、治療中断後のT回復を検討した184例の検討では、治療中止90日後のTレベルの中央値は、270.76対12.26ng/dLとレルゴリクス群が有意に優れていました。さらに、心血管イベントの発生率もレルゴリクス群において低いという結果が示されました(2.9対6.2%)。そのほかの点では、安全性と忍容性のプロファイルはほぼ同等でした。著者らは、酢酸リュープロライド皮下注射と比較してレルゴリクスは、素早く(4日目までに去勢達成率)より確実に(48週間にわたる去勢域維持)血清Tを抑制し、中止後はより早期にT回復をもたらし、心血管イベントを50%減少するなどの優位性を示し、今後進行性前立腺がん患者に対するADTにおいて新しい標準治療になる可能性があると結論付けています。なおレルゴリクスは本邦でも「子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善」を適応としてすでに承認を受けています(用量は40mg/日)。本試験の結果はASCO2020における発表に合わせてNEJM誌(Shore ND, et al. N Engl J Med. 2020;382:2187-2196.)に発表されました。PSMA関連診断/治療モダリティは前立腺がんマネージメントのGame Changerとして期待PSMA関連では、3演題が口演発表に採択され、その注目度の高さがあらためて浮き彫りになったかたちです。診断関連では、根治治療後の生化学的再発(BCR)を来した前立腺がん患者の病巣部位確定における18F-DCFPyL(PyL)を用いたPSMA-PET/CT検査の有用性を検証した前向き第III相CONDOR試験(NCT03739684)の結果が紹介されました(Abstract#5501)。根治的治療後にPSAが上昇(PSA中央値0.8ng/mL[範囲:0.2~98.4])し、CT、MRI、骨シンチグラフィーなどの標準的な画像検査では病巣がはっきりしなかった208例の前立腺がん患者がエントリーされ、PyL-PET/CTの所見を3人の評価者によって検討した結果、病巣が認められた患者の割合は69.3%(142/208例)でした。主要評価項目である病巣部位特定率は84.8%~87.0%で、63.9%の患者でPyL-PET/CTの所見を基に治療方針が変更されました。重篤な有害事象が認められたのは1例(過敏症)のみで、最も頻度が高かった有害事象は頭痛(4例)でした。PyL-PET/CTは、BCR患者において従来の画像検査では描出できない病巣の特定と、それに基づく治療方針決定に有用であると結論付けられています。また、診断関連ではもう1演題、前立腺全摘除術+骨盤内リンパ節郭清を受ける中〜高リスクの限局性前立腺がんの患者を前向きにエントリーし、術前の68Ga-PSMA-11 PETのリンパ節転移の診断精度を郭清リンパ節の病理所見(pN診断)を参照標準として評価した研究の結果が公表されました(Abstract#5502)。その結果、68Ga-PSMA-11 PETの感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率(95%CI)はそれぞれ、0.40(0.34~0.46)、0.95(0.92~0.97)、0.75(0.70~0.80)、0.81(0.76~0.85)だったとのことです。治療関連では、PSMAを発現する腫瘍に治療用β線を照射する放射性標識された小分子LuPSMAの安全性と治療効果を検証したランダム化第II相TheraP試験(NCT03392428)の結果も報告されました(Abstract#5500)。本試験ではドセタキセル不応性転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を対象とし、まず68Ga-PSMA-11および18F-FDG PET/CTを施行しました。両検査の結果、(1)PSMA強陽性の病変があること、(2)FDG陽性かつPSMA陰性の病変がないこと、という2つの条件を満たした患者をLuPSMA(6週ごと×最大6サイクル)あるいはカバジタキセル(20mg/m2/3週×10サイクル)による治療に無作為に割り付けました。主要評価項目は、PSAの50%以上の低下(PSA50-RR)で、副次的有効性エンドポイントには、PSA無増悪生存期間(PSA-PFS)および全生存期間(OS)が含まれていました。1次スクリーニングを受けた291例のうち200例がエントリー基準を満たし、LuPSMA群(n=99)あるいはカバジタキセル群(n=101)に割り付けられました。追跡期間の中央値は11.3ヵ月でした。PSA50-RRは、LuPSMA群のほうがカバジタキセル群よりも良好でした(65/99[66%、95%CI:56~75]vs.37/101[37%、95%CI:27~46]、p<0.001)。PSA-PFSにおいてもLuPSMAは有意に良好な結果を示しました(HR:0.63、95%CI:0.45~0.88、p=0.007)。OSデータは規定のイベント数に達していないため今回は示されていません。安全性に関して、Grade3〜4の有害事象(AE)発生率は、LuPSMA群で32%(31/98)に対し、カバジタキセル群では49%(42/85)でした。毒性による治療中止は、LuPSMA群で1%(1/98)、カバジタキセル群で4%(3/85)に認められました。治療に関連した死亡はありませんでした。著者らは上記要件を満たすmCRPC患者において、LuPSMAはカバジタキセルに比べてより治療活性が高く、AEが少ない治療法であると結論付けています。nmCRPC 3試験はだんご3兄弟かそれとも…前立腺がん領域ではこれ以外に、非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)を対象とした新規アンドロゲン受容体(AR)シグナル阻害薬治療のOSアウトカムに関する報告がありました。ARAMIS試験(NCT02200614, Abstract#5514)、PROSPER試験(NCT02003924, Abstract#5515)、SPARTAN試験(NCT01946204, Abstract#5516)はそれぞれPSA倍化時間(PSA-DT)<10ヵ月のnmCRPC患者を対象に、それぞれダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミドを投与する実薬群とプラセボ(PBO)群に2:1の比で割り付け、無転移生存(MFS)を主要評価項目としてその効果を検証するデザインで、すでにいずれの試験もMFSの延長を報告しています(ARAMIS試験 HR:0.41、95%CI:0.34~0.50、p<0.001 Fizazi K, et al. N Engl J Med. 2019;380:1235-1246.)(PROSPER試験 HR:0.29、95%CI:0.24~0.35、p<0.001 Hussain M, et al. N Engl J Med. 2018;378:2465-2674.)(SPARTAN試験 HR:0.28、95%CI:0.23~0.35、p<0.001 Smith MR, et al. N Engl J Med. 2018;378:1408-1418.)。今回発表されたOSに関する成績もMFSと同様、3試験ともほぼ同等と言ってよい結果でした(ARAMIS試験 未到達 対 未到達、HR:0.69、p=0.003)(PROSPER試験 67.0対56.3ヵ月、HR:0.73、p=0.0011)(SPARTAN試験 73.9対59.9ヵ月、HR:0.784、p=0.0161)。SPARTAN試験は2次治療後のデータ(2nd PFS)を報告しているという点で後続治療も考慮した、実臨床における治療選択に有用な情報を提供しているといえますが、ARAMIS試験はダロルタミドの有害事象(AE)プロファイルとしてPBO群とまったく遜色ない成績を報告しており、腫瘍学的転帰に関する成績がほぼ同等な3薬剤の選択に当たってはダロルタミドに有利なデータであると考えられます。切除不能/転移性尿路上皮がん:免疫チェックポイント阻害薬はこう使え!?尿路上皮がん(UC)では免疫チェックポイント阻害薬を従来の全身治療のさまざまなセッティングで用いる試みが報告され、今後の標準治療を考えるうえで大きな影響を与える可能性を感じさせる内容でした。なかでもLate-breaking abstractとしてプレナリーでJAVELIN Bladder 100試験(NCT02603432)の中間解析結果が報告され、大きな注目を集めました(Abstract#LBA1)。この無作為化第III相試験ではプラチナベースの1次化学療法(4~6コースのG-CDDPあるいはG-CBDCA)によって奏効(CR/PR)または安定(SD)を示した進行UC患者を、抗PD-L1抗体製剤であるアベルマブによる維持療法(10mg/kg IV 2週間ごと)+支持療法(BSC)とBSCのみのいずれかに割り付けました(n=350 vs.350)。その結果、主要評価項目であるOSはアベルマブ+BSC群で有意に良好でした(21.4 対 14.3ヵ月、HR:0.69、95%CI:0.56~0.86、片側p=0.0005)。サブグループ解析ではアベルマブ+BSC群の優位性に関して一様な傾向が示されました。副次的評価項目であるPFSも有意に良好でした(HR:0.62、95%CI:0.52~0.75、p<0.001)。Grade3以上のAEはアベルマブ+BSC群の47.4%、BSC群の25.2%で認められたと報告されています。現在のプラチナ適格・進行UCに対する標準治療は、1次治療がプラチナベースの化学療法、2次治療でペムブロリズマブという流れですが、本治験の結果に伴ってアベルマブが承認されると、1次治療がCR/PR/SDだった場合に維持療法としてアベルマブを投与するのか、いったんoff-treatmentとして再燃時にペムブロリズマブを投与する方針とするのか、選択を迫られることになります。今回公表されたデータによれば、JAVELIN Bladder 100試験のBSC群では進行時に2次治療を受けた患者は75.3%(PD-L1/PD-1阻害薬治療は52.9%)だったとのことです。一部患者において進行時に状態の悪化によって2次治療が受けられなかった結果なのか、あるいは本来実施可能であった適切な2次治療が施されなかった結果なのかによって、大きく解釈が変わる可能性があります。いずれにしても、ほかの切除不能/転移性尿路上皮がんに対する1次治療に関する治験で、免疫チェックポイント阻害薬単独あるいは免疫チェックポイント阻害薬+化学療法の併用レジメンが軒並み苦戦している現状で、本試験の結果は大きなインパクトがあり、1次治療からの治療シークエンスが大きく影響を受けることは間違いないと考えられます。周術期補助療法としての免疫チェックポイント阻害薬と効果予測バイオマーカーUCに関する口演発表では膀胱全摘除術後の術後補助療法としてのアテゾリズマブの効果を検証したIMvigor010試験(NCT02450331)の結果が公表されました(Abstract#5000)。本試験では膀胱全摘標本を用いた病理学的病期が、(1)ypT2-4aまたはypN+(ネオアジュバント化学療法を受けた患者の場合)もしくは(2)pT3-4aまたはpN+(ネオアジュバント化学療法を受けなかった患者の場合)と診断された患者を対象に、アテゾリズマブ(1,200mg IV 3週間ごと)あるいは経過観察の2群に1:1の無作為割付を行い、無再発生存(DFS)を主要評価項目としました。今回はDFSの最終解析とOSの中間解析の結果が示されましたが、いずれもアテゾリズマブ群の優位性を示すことができませんでした(DFS 19.4対16.6ヵ月、95%CI:15.9~24.8対11.2~24.8ヵ月、HR:0.89、95%CI:0.74~1.08、p=0.2466、OS 未到達 対 未到達、HR:0.85、95%CI:0.66~1.09、p=0.1951)。転移性UCを対象としたIMvigor130試験(Doctors' Picks 2020年5月20日もご参照ください)と比較して、AEによる治療中断率が高かったことが原因として示唆されています。今後このセッティングでの免疫チェックポイント阻害薬の位置付けがどうなるかについては不透明なままとなっています。周術期補助療法としての免疫チェックポイント阻害薬の話題としては、無作為第II相DUTRENEO試験(NCT03472274)の結果がClinical Science Symposiumで報告されています(Abstract#5012)。本試験では、シスプラチン適格の筋層浸潤性膀胱がん(MIBC,、cT2-T4a、N≦1、M0)と診断された患者を、まず腫瘍の炎症誘発性IFN-γシグネチャー(腫瘍免疫スコア、TIS)を基準に「ホット」あるいは「コールド」に分類しました。このTISは以前にPD-1経路阻害薬の効果を予測すると報告されています(Ayers M, et al. J Clin Invest. 2017;127:2930-2940.)。「ホット」と診断された患者は術前補助療法としてPD-L1阻害薬デュルバルマブ1,500mg+CTLA-4阻害薬tremelimumab 75mg×3サイクル(DU+TRE群)あるいはシスプラチンベースの化学療法(G-CDDPまたはdd-MVAC、標準CT群)に無作為割り付けされ、「コールド」と診断された患者は全例が化学療法に割り付けられました。合計61例がエントリーされ、「ホット」と診断された患者のうち22例が標準CTを、23例がDU+TREを受け、それぞれ36.4%(n=8)、34.8%(n=8)が主要評価項目であるpCRを達成しました(オッズ比:0.923、95%CI:0.26~3.24)。一方「コールド」と診断され標準CTを受けた16例の患者のうち68.8%(n=11)がpCRを達成しました。DU+TREの組み合わせは、MIBCに対する術前補助療法における効果的および安全なオプションであることが示されましたが、炎症誘発性IFN-γシグネチャーによる層別化では免疫チェックポイント阻害薬治療と標準化学療法のどちらから利益を得る可能性が高いかを予測することはできませんでした。免疫チェックポイント阻害薬治療の効果予測バイオマーカー研究としては、無作為第III相IMvigor130試験(NCT02807636)の患者における腫瘍の変異頻度(TMB)、PD-L1発現、Tエフェクター遺伝子発現(GE)および線維芽細胞TGF-β応答シグネチャー(F-TBRS)のバイオマーカーとしての有用性が報告されています(Abstract#5011)。これらのバイオマーカーは既報(Mariathasan S, et al. Nature. 2018;554:544-548.)によりアテゾリズマブ単独治療の効果予測因子として見いだされたものです。IMvigor130試験では転移性UC患者の1次治療としてアテゾリズマブ+プラチナベースの化学療法(PBC)、アテゾリズマブ単独、またはPBC単独に1:1:1で無作為割り付けされ、主要評価項目としてPFSとOSを検証しました(Doctors' Picks 2020年5月20日もご参照ください)。上記項目は本試験における探索的バイオマーカー分析の対象とされていました。全1,200例の組み入れ患者のうち851例でバイオマーカー解析が可能でした。PD-L1高発現(IC2/3)はアテゾリズマブ単独 対 PBCにおけるアテゾリズマブ群の良好なOSを予測し、さらにPD-L1高発現(IC2/3)と高TMB(>10変異/Mb)を組み合わせることによって、予測能が上昇しました。APOBEC関連変異は、アテゾリズマブ含有レジメンによるOSの改善と関連していました。このように、免疫チェックポイント阻害薬が進行性UCに対する1次治療あるいはMIBCに対する術前補助療法における治療オプションに入ってくるにつれて、治療効果予測に有用なバイオマーカーの重要性も高まってくることが予想されます。検体採取から検査を経て治療開始に至るまでの時間をいかに短縮できるかという点も、今後重要な課題となってくると思われます。腎細胞がん:免疫チェックポイント阻害薬+TKIの中長期予後腎細胞がん(RCC)領域は前立腺がん・尿路上皮がんに比べると今年はややおとなしい印象でしたが、その中で、KEYNOTE-426試験(NCT02853331)の追加フォローアップのデータが口演セッションで発表されたので取り上げたいと思います(Abstract#5001)。この試験では861例の進行性淡明細胞型RCC(cc-RCC)に対する1次治療としてのペムブロリズマブ+アキシチニブとスニチニブを、OSとPFSを主要評価項目として比較しました。今回、中央値27.0ヵ月(範囲:0.1~38.4ヵ月)のフォローアップで、ペムブロリズマブ+アキシチニブ群のOS(HR:0.68、95%CI:0.55~0.85、p<0.001、24ヵ月OS 74% vs.66%)およびPFS(HR:0.71、95%CI:0.60~0.84、p<0.001、24ヵ月PFS 38% vs.27%)の延長効果が示されました。これらのベネフィットはIMDCリスク分類やPD-L1発現にかかわらず認められたということです。追加解析の結果、ペムブロリズマブ+アキシチニブ群においては腫瘍縮小率がOSと相関していたことも示されました。また、RCC領域でも免疫チェックポイント阻害薬の治療効果予測因子に関する探索的研究の結果が散見されました(Abstracts#5009, 5010)。おわりに総じて、前立腺がんでは新規ARシグナル阻害薬のより早期ステップでの使用とPSMA関連核医学検査/治療(いわゆるTheranostics)の話題が、UCとRCCでは免疫チェックポイント阻害薬のさまざまなセッティングにおける有効性・安全性と治療効果予測のためのバイオマーカー探索が中心となった年であったと考えられます。来年になるとAntibody-conjugated drug(ACD)も登場し、各腫瘍いよいよ「役者」が出そろってくることになり、治療効果予測のバイオマーカー探索、さらにはバイオマーカーベースの治療方針を決める前向き試験等が登場することを期待しています。

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第14回 ヒト胚のCRISPR遺伝子編集はいらぬ大異変を誘発しうる

1年半ほど前の2018年11月、世界初となる“遺伝子編集ベビー”が誕生したというニュースが世間を騒がせました。HIVに感染し難くすることを意図したCRISPR遺伝子編集を経た胚が、双子として出産まで至ったことを中国の研究者He Jiankui氏が香港の遺伝子編集学会で発表し、物議を醸したのです1)。ロシアの科学者Denis Rebrikov氏は、世界の科学者の反対をよそにJiankui氏の後に続いてCRISPR遺伝子編集胚を女性に移植すること計画しています2)。ただしロシアの保健省は時期尚早との見解を表明していて、計画の実行は容易ではなさそうです。ロシア保健省の見解はおそらく正しく、ヒト胚のCRISPR遺伝子編集が下手をすると染色体まるごと1本を失うほど大規模な、いらぬ異変を招きうることが最近立て続けに発表された研究3報で示されました3)。3つの研究チームはいずれもたった1つの遺伝子の編集を試みたのですが、結果的にその目当ての一帯がDNAの大欠損や入れ替え等を被りました。英国・ロンドンのFrancis Crick Instituteの生物学者Kathy Niakan氏等は胚の発達や多能性に必要なPOU5F1遺伝子を変異させるCRISPR-Cas9編集を18の胚細胞に施しました。その結果、4つ(22%)の胚のPOU5F1遺伝子一帯に、広範囲に及ぶ欠損や増幅が生じました4)。ニューヨーク市・コロンビア大学の幹細胞学者Dieter Egli氏等による2つ目の試験では、胚細胞の6番染色体のEYS遺伝子失明変異をCRISPR-Cas9編集で正すことが試みられました。その結果、23の胚の約半分が6番染色体の大規模欠損を呈し、極端な場合には染色体がまるごと欠如していました5)。3つ目の研究はオレゴン州ポートランドのOregon Health & Science Universityの生殖生物学者Shoukhrat Mitalipov氏のチームによるもので、心臓病を引き起こすMYBPC3遺伝子変異をCRISPR-Cas9編集で正すことを試みたところ、その変異を含む染色体領域にやはり大規模な異変が生じました6)。上記3つの報告はいずれも研究目的であり、女性への移植を見越して実施されたわけではありません。使われた胚はいずれも研究で使われた後に尽き果てています。CRISPRで切断されたゲノムに生体がどう対処するのかは、実はほとんど分かっていないことを今回の3報告は浮き彫りにしました3)。CRISPR編集で生じた新たなDNA切断面はあっさり元通りになるとは限らず、でたらめな修復のせいでDNA損壊に至ることもあるのです。体内へゲノム編集成分を直接投与する試験7)がすでに始まっていますが、CRISPR標的部位一帯の大規模な異変についてこれまで以上に慎重を期す必要があるとカリフォルニア大学バークレー校の遺伝学者にしてCRISPR研究者でもあるFyodor Urnov氏は言っています。また、胚の編集には絶対取り掛かってはいけないとUrnov氏は警告しています8)。参考1)CRISPR Scientists Slam Methods Used on Gene-Edited Babies / TheScientist 2)Russian ‘CRISPR-baby’ scientist has started editing genes in human eggs with goal of altering deaf gene / Nature 3)CRISPR gene editing in human embryos wreaks chromosomal mayhem / Nature 4)Frequent loss-of-heterozygosity in CRISPR-Cas9-edited early human embryos. biorxiv. June 05, 20205)Reading frame restoration at the EYS locus, and allele-specific chromosome removal after Cas9 cleavage in human embryos. bioRxiv. June 18, 20206)FREQUENT GENE CONVERSION IN HUMAN EMBRYOS INDUCED BY DOUBLE STRAND BREAKS. bioRxiv. June 20, 20207)Allergan and Editas Medicine Announce Dosing of First Patient in Landmark Phase 1/2 Clinical Trial of CRISPR Medicine AGN-151587 (EDIT-101) for the Treatment of LCA10 8)CRISPR Gene Editing Prompts Chaos in DNA of Human Embryos / TheScientist

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全身療法が計画されている高齢者での高齢者機能評価の有用性(INTEGERATE試験)/ASCO2020

 オーストラリア・モナシュ大学Eastern Health Clinical SchoolのWee-Kheng Soo氏は、全身療法が計画されている高齢者での包括的な高齢者機能評価や老年医学専門家の介入の有無を比較する無作為化非盲検試験・INTEGERATE試験の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。老年医学的介入群ではQOLが有意に改善し、予期せぬ入院や有害事象による早期治療中止が減少すると報告した。・対象:固形がんあるいはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)で、3ヵ月以内に化学療法、分子標的薬治療、免疫チェックポイント阻害薬療法が予定されている70歳以上の高齢者154例・試験群:本人申告による質問票での回答と高齢者機能評価(CGA)を実施。栄養、身体機能などの改善に向けた標準的介入に加え、併存疾患のケアなど、アセスメントに基づく個別介入を実施(76例)・対照群:通常ケア(78例)・評価項目:[主要評価項目] ELFI(Elderly Functional Index)スコアによるQOL評価[副次評価項目]ヘルスケアサービスの利用状況、治療提供状況、機能、施設入所状況、気分、栄養状態、健康上の効用、生存状況 主な結果は以下のとおり。・追跡12週目でのELFIスコアは老年医学的介入群では71.4、通常ケア群で60.3(p=0.004)、追跡18週目でのELFIスコアはそれぞれ72.0と58.7(p=0.001)、追跡24週目ではそれぞれ73.1と64.6であった(p=0.037)。・QOL評価での社会的機能、疾患による苦しみ、将来への不安の項目は追跡24週間中、一貫して老年医学的介入群は通常ケア群を上回っていた。・老年医学的介入群では通常ケア群と比較して救急対応が39%減少、予期せぬ入院が41%減少、予期せぬ入院時の終日横臥状態が21%減少した。・有害事象による早期治療中止率は老年医学的介入群が32.9%、通常ケア群が53.2%であった(p=0.01)。  これらの結果から、Soo氏は「抗がん療法が予定されている70歳以上の高齢者では包括的な老年医学的アセスメントを受けるべきである」と述べた。

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COVID-19に関連する医師のメンタルヘルスやストレス

 COVID-19のアウトブレイクによる医師の不安やストレス、抑うつレベルへの影響について、トルコ・Istanbul Medeniyet UniversitesiのRumeysa Yeni Elbay氏らが調査を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2020年5月27日号の報告。 COVID-19アウトブレイクにおける医療従事者の心理的反応と関連要因を評価するため、オンライン調査を実施した。調査内容は、社会人口統計学的データ、個別の労働条件に関する情報、Depression Anxiety and Stress Scale-21(DAS-21)のセクションで構成した。 主な結果は以下のとおり。・調査対象442人中、各症状が認められた人数は以下のとおりであった。 ●うつ症状:286人(64.7%) ●不安症状:224人(51.6%) ●ストレス:182人(41.2%)・スコアの高さと関連していた要因は、女性、若年、独身、実務経験の少なさ、最前線での診療であった。・一方、子供がいることは、各サブスケールスコアの低さと関連していた。・最前線での診療に当たっていた医師において、DAS-21合計スコアの上昇と関連する要因は以下のとおりであった。 ●毎週の労働時間の増加 ●ケアするCOVID-19患者数の増加 ●同僚や上司からのサポートレベルの低さ ●後方支援の低下 ●COVID-19関連タスクでの技量に対する不安 著者らは「本調査結果は、世界中の社会に多大な影響を与える災害と闘う中で、医師のメンタルヘルスを守るために注意すべき要因を強調するものである」としている。

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リンチ症候群の大腸がん予防にアスピリンが有効/Lancet

 リンチ症候群は、大腸がんのリスクを増大させ、他の広範ながん、とくに子宮内膜がんと関連する。英国・ニューカッスル大学のJohn Burn氏ら「CAPP2試験」の研究グループは、リンチ症候群における大腸がんの予防において、アスピリンの2年投与はプラセボに比べ、その発症を有意に抑制することを確認した。研究の成果は、Lancet誌2020年6月13日号に掲載された。本試験では、2011年(平均フォローアップ期間55.7ヵ月[SD 31.4])の時点におけるアスピリンによる遺伝性大腸がんの予防効果を報告している。今回、予定されていた10年間のフォローアップを終了したことから、この高リスク集団における定期的なアスピリン服用の長期的な有効性のデータが報告された。アスピリン長期投与の予防効果を評価する無作為化試験 本研究は、欧州、オーストララシア、アフリカ、南北アメリカ大陸の43施設が参加した二重盲検無作為化試験であり、1999年1月~2005年3月の期間に患者登録が行われた(Cancer Research UKなどの助成による)。 対象は、年齢26歳以上、DNAミスマッチ修復遺伝子変異の保持者と証明された患者(遺伝子診断)、およびアムステルダム診断基準を満たし、治癒したリンチ症候群による新生物の既往歴があるが、腸管にはほとんど損傷がない患者家族に属する患者(臨床的診断)であった。 被験者は、アスピリン(600mg/日)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。2年間の介入が行われ、さらに2年間の継続が選択可能とされた。解析には、10~20年間、がんのアウトカムのモニタリングを受けたイングランド、フィンランド、ウェールズの参加者のデータを用いた。 主要評価項目は大腸がんの発生とし、intention to treat解析とper protocol解析を行った。大腸がんリスク35%低下、至適用量の非劣性試験が進行中 適格基準を満たしたリンチ症候群937例の平均年齢は45歳であった。このうち861例が無作為割り付けの対象となり、アスピリン群に427例、プラセボ群には434例が割り付けられた。 平均介入期間は25.2ヵ月(SD:13.4、範囲:0.8~74.4)であり、平均フォローアップ期間は118.4ヵ月(63.5、1.1~238.9)であった。この間に、アスピリン群は9%(40/427例)、プラセボ群は13%(58/434例)で大腸がんが発生した。 Cox比例ハザードモデルを用いたintention to treat解析では、アスピリン群はプラセボ群に比べ、大腸がんのリスクが有意に低かった(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.43~0.97、p=0.035)。リンチ症候群のがんスペクトルにおけるすべての原発がんを考慮して、負の二項回帰モデルで解析したところ、アスピリンの保護効果に関して同様のエビデンスが得られた(発生率比:0.58、95%CI:0.39~0.87、p=0.0085)。 また、2年間の介入を完了した509例(67イベント)のper protocol解析では、HRは0.56(95%CI:0.34~0.91、p=0.019)、発生率比は0.50(0.31~0.82、p=0.0057)であり、アスピリン群で発がんのリスクが低かった。 リンチ症候群関連の大腸がん以外のがんは、両群とも36例で発生した。intention to treat解析(HR:0.94、95%CI:0.59~1.50、p=0.81)およびper protocol解析(0.75、0.42~1.34、p=0.33)ともに、発がんのリスクに関して両群間に差は認められなかった。 これらを合わせたすべてのリンチ症候群関連がんの発生については、intention to treat解析(HR:0.76、95%CI:0.56~1.03、p=0.081)では有意な差はなかったが、per protocol解析(0.63、0.43~0.92、p=0.018)ではアスピリン群で発がんのリスクが有意に低下していた。 介入期間中の有害事象は、アスピリン群とプラセボ群で類似していた。また、介入期の完全なデータのある患者では、介入群間で服薬コンプライアンスに有意な差はみられなかった。 著者は、「リンチ症候群では、少なくとも2年間、毎日600mgのアスピリンを服用することで、将来の大腸がんのリスクが有意に減少するが、この効果は少なくとも4年間は明らかにならない点に留意する必要がある」とまとめ、「現在進行中のCaPP3試験は、用量の非劣性試験であり、がん予防と有害事象のバランスに関する至適な用量について、有益な情報をもたらすだろう」としている。

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ASCO2020レポート 肺がん

レポーター紹介2020年のASCO、とくに肺がん領域は、比較的おとなしいエビデンスの報告が主体であった昨年に比べ、新たな知見が数多く報告された。その中でも、JCOG1205/1206試験の釼持先生、NEJ026試験の前門戸先生、NivoCUP試験の谷崎先生など、日本人演者のOral presentationが数多く報告されたことは特筆に値する。肺がん全体では、ADAURA試験などの初めての報告、さらには、CheckMate 9LA、CTONG1104試験、CASPIAN試験、CheckMate227試験、KEYNOTE-189試験など重要な試験のフォローアップの報告に注目が集まった。今回はその中から、とくに注目すべき演題について概観したい。JCOG1205/1206試験JCOG肺がん外科グループ、肺がん内科グループのインターグループ試験として実施された、完全切除後の、肺の高悪性度神経内分泌腫瘍(HGNEC)を対象として、標準治療としてのシスプラチン+エトポシド、試験治療としてのシスプラチン+イリノテカンを比較する第III相試験の結果を、研究事務局の釼持先生が報告された。本試験では、完全切除後の肺HGNEC、病理病期StageI~IIIA、221例が1:1にランダム化され、無再発生存割合を主要評価項目として実施された。HGNECは小細胞肺がん、大細胞神経内分泌がんなどを含み、完全切除例は非常にまれである。当初全生存期間が主要評価項目とされていたが、想定よりも予後が良好であったことから無再発生存期間に変更されている。本試験は、残念ながら中間解析で主要評価項目である無再発生存期間での有効性を示すことができる可能性が低いことが判明し、無効中止とされ、現在は全生存期間のフォローアップを行っている。今回報告された無再発生存に関するデータでは、両群のハザード比が1.076、95%信頼区間0.666~1.738、3年の無再発生存割合が標準治療群で65.4%、試験治療群で69.0%という結果であり、無再発生存期間中央値は両群とも到達していない。全生存期間についても、結果が報告されているものの、両群で明らかな違いは認められなかった。有害事象に関しては、すでに知られているシスプラチン+エトポシド、シスプラチン+イリノテカンの毒性プロファイルが再現されていた。肺がんの中でも希少フラクションに該当する完全切除後のHGNECに対して、第III相試験が実施されたことは世界で初めての快挙であり、これまで観察研究や単群試験の結果に基づいて実施されてきたHGNECの術後療法に、明確なエビデンスが確立された重要な試験である。全生存期間についてのフォローアップは継続中であり、そちらの結果も注目されている。CASPIAN試験進展型小細胞肺がんを対象に、プラチナ+エトポシドを標準治療とし、デュルバルマブの追加、デュルバルマブ+tremelimumabの追加をそれぞれ評価する第III相試験がCASPIAN試験である。主要評価項目は全生存期間、副次評価項目に無増悪生存期間、奏効割合などが設定されている。すでにデュルバルマブの追加が、有意に生存を延長するという結果が報告されており、IMpower133試験の結果で承認されたアテゾリズマブに続き、近い将来デュルバルマブが進展型小細胞肺がんの初回治療において使用可能となる見込みである。今回の発表では、本試験のうち、デュルバルマブ+tremelimumabを使用する群に関する結果が示されている。主要評価項目の全生存期間において、ハザード比0.82、95%信頼区間0.66~1.00であり、これは事前に設定された有意水準をわずかに下回っており、デュルバルマブ+tremelimumabについては主要評価項目を達成できなかった。また、アップデートされたデュルバルマブを単独で追加する群も含めた3本の生存曲線の解析結果も示されており、免疫チェックポイント阻害剤の追加により全生存期間の利益が得られることは明確であったが、デュルバルマブに加えてtremelimumabまで追加することの意義は生存曲線から見ても明らかではなかった。今後、進展型小細胞肺がんの1次治療においても、複数の免疫チェックポイント阻害剤、具体的にはアテゾリズマブ、デュルバルマブの使い分けについての議論を行う必要がある。KEYNOTE-604試験進展型小細胞肺がんを対象として、標準治療としてのプラチナ+エトポシド療法に対して、ペムブロリズマブを追加することの意義を検証するために実施された第III相試験である。主要評価項目としては、無増悪生存期間、全生存期間がCo-primaryとして設定されており、無増悪生存期間にはα0.0048、全生存期間にはα0.0128がそれぞれ割り振られている。無増悪生存期間については、ハザード比0.75、95%信頼区間0.61~0.91であり、p値は0.0023と当初予定された有意水準を達成している。一方、全生存期間については、ハザード比が0.80、95%信頼区間0.64~0.98であり、p値は0.0164と一見すると有意であるように見えるものの、事前に設定された有意水準には到達しておらず、全生存期間については有効性を統計学的には示すことができなかった。この結果をどのように判断し、各国の規制当局がペムブロリズマブを承認するか否かは今後の情報を待ちたい。一方、無増悪生存、全生存の生存曲線を確認すると、いずれもIMpower133、CASPIANで示されたものと類似した形態を示しており、小細胞肺がんと非小細胞肺がんにおける免疫チェックポイント阻害剤の挙動の違いが明瞭に示される結果であり、興味深い。CTONG1104試験EGFR遺伝子変異陽性、完全切除後のN1-2非小細胞肺がん患者を対象に、ゲフィチニブを試験治療(24ヵ月)、シスプラチン+ビノレルビンを標準治療(4サイクル)として実施する第III相試験が、CTONG1104試験である。ADJUVANT試験とも呼ばれ、222例が登録されている。無病生存期間を主要評価項目とした本試験の結果は、すでに報告されている。今回アップデートされた無病生存期間の報告では、5年の無病生存割合が、ゲフィチニブ群で22.6%、シスプラチン+ビノレルビン群で23.2%であった。生存曲線を見ると、当初ゲフィチニブ群の無病生存が明らかに良い傾向であったが、最終的に生存曲線は重なり、ハザード比は0.56、95%信頼区間0.40~0.79という結果であった。今回報告された全生存期間については、生存曲線は当初ゲフィチニブ群がやや上回る傾向があったものの全体ではほぼ一致しており、ハザード比は0.92、95%信頼区間0.62~1.36という結果であった。5年生存割合は、ゲフィチニブ群で53.2%、シスプラチン+ビノレルビン群で51.2%であり、全生存期間においてゲフィチニブを術後療法として使用することの明確な意義は示されなかった。その背景として、シスプラチン+ビノレルビン群で再発した患者のうち、51.5%がゲフィチニブなどEGFR-TKIの治療を受けていることが指摘されている。ADAURA試験の結果が初めて報告される中、本試験の意義は大きい。とくに、無病生存期間でハザード比では明らかにゲフィチニブの有効性が示されながらも、5年無病生存割合ではシスプラチン+ビノレルビン群に追いつかれており、さらに、全生存期間でも両群に差がなかったことは注目すべき点である。これは、ゲフィチニブは無病生存期間を延長することにつながっているが、術後患者における根治率の向上には貢献していないあるいは、貢献していたとしても本試験の規模では検出できない程度のインパクトであることが示している。IV期非小細胞肺がんにおいてゲフィチニブに無増悪生存期間、全生存期間ともに勝利したオシメルチニブにより、異なる結果が得られるのか、ADAURA試験の結果とフォローアップデータに注目が集まる。ADAURA試験EGFR遺伝子変異陽性、完全切除後のStageIB、II、IIIA非小細胞肺がんを対象として、オシメルチニブを試験治療(36ヵ月)、プラセボと比較した第III相試験がADAURA試験である。プラチナ併用療法による標準的な術後療法を受けていない患者の登録も許容されており、両群とも約半数が術後療法を受けている。682例の患者が1:1で両群に割り付けられた、EGFR-TKIを用いた試験としては大規模な試験である。主要評価項目はII期、IIIA期の患者における無病生存割合、副次評価項目として全患者集団での無病生存期間、全生存期間などが設定されている。久しぶりにASCOのPlenaryで発表された本試験の無病生存期間は、ハザード比0.17、95%信頼区間0.12~0.23という驚異的な結果であり、36ヵ月時点でのオシメルチニブ群の無病生存割合が80%、プラセボ群の無病生存割合が28%という明らかな違いが示されている。IB期も含む全集団においても、オシメルチニブの無病生存割合は79%と変化しなかったが、プラセボ群では41%とIB期が入った分良好な結果が示されている。サブセット解析においても一様にハザード比の点推定値はオシメルチニブの有効性を示しており、IB期212例の結果もハザード比0.50、95%信頼区間0.25~0.96と、1をまたいでいないことは注目に値する。この点はステージ別の無病生存曲線でも詳細に示されており、最も大きな恩恵を得るのはIIIA期など、より進行した集団であった。幸いなことに、オシメルチニブ群において治療関連死が報告されていないことも重要である。全生存期間については、示された生存曲線は24ヵ月前後の部分でオシメルチニブ群がやや良好な傾向を示しており、ハザード比は0.40、95%信頼区間0.18~0.90と報告されているが、現時点でのイベントは全体で5%程度までしか到達しておらず、今後大きく変動しうる。本結果については、発表当初からASCOのVirtual meetingのコメント欄、さらにはSNSで多数の議論を呼んでおり、オシメルチニブを標準治療としてEGFR遺伝子変異陽性、完全切除後の集団における術後アジュバントに使用するべきという意見と、全生存期間の結果を待つべきとする意見がともに提示されている。前述のCTONG1104試験が222例の試験で、無病生存の生存曲線が最終的には重なり、全生存期間でも明らかな違いを示すことができなかったのに対し、ADAURA試験は700例弱の十分な検出力を持った試験である。この試験規模の違いにより、CTONG1104試験では示されなかった全生存期間でのベネフィットが、ADAURAで示されるのか、肺がんの専門家が固唾をのんで見守っている。NEJ026試験EGFR遺伝子変異陽性、根治放射線治療不能のIIIB期、IV期非小細胞肺がんを対象として、エルロチニブを標準治療に、エルロチニブ+ベバシズマブを評価した第III相試験がNEJ026試験である。同じレジメンを第II相試験で評価したJO25567試験は、無増悪生存期間で良好な結果を示したものの、当初予定されていなかった全生存期間の評価では、一部再同意の取得ができなかった患者のフォローアップができなかったなどの理由から、全生存に関しては満足できる評価が行われておらず、当初から全生存期間の評価を予定していたNEJ026試験の結果に注目が集まっていた。今回報告された全生存期間において、ハザード比は1.007、95%信頼区間0.681~1.490であり、生存曲線もほぼ重なっており、ベバシズマブを追加する明確な意義は示されなかった。サブグループ解析では、とくに無増悪生存期間の報告の際から注目されていた、EGFR遺伝子変異のタイプ別、具体的にはL858RとExon19delにおける効果の違いがOSで示されるのかが注目されたが、結果的にはいずれの変異でも全生存期間に明らかな違いは認められなかった。昨年初めて報告されたRELAY試験において、もう一つの血管新生阻害剤であるラムシルマブとエルロチニブの併用療法について、さらに大きなサンプルサイズでの検証が進められており、こちらの結果が今後の血管新生阻害剤とEGFR-TKI併用の評価を分ける重要な試験となる。さらに、血管新生阻害剤とオシメルチニブの併用療法についても、Phase III含めいくつもの試験が開始されており、TKIの違いにより異なる結果が得られうるのか、注目されている。CheckMate 9LA試験IV期あるいは再発のEGFR陰性、ALK陰性の非小細胞肺がんを対象として、初回治療におけるプラチナ併用療法とニボルマブ+イピリムマブの有効性を、標準治療としてのプラチナ併用療法と比較する第III相試験がCheckMate 9LA試験である。主要評価項目は全生存期間とされており、副次評価項目に無増悪生存期間などが設定されており、719例が登録され、全生存期間について最短でも12.7ヵ月のフォローアップがされた時点での結果が報告されている。ニボルマブ+イピリムマブのみでも化学療法に勝る結果がCheckMate227試験で報告されている中、プラチナ併用療法を2サイクル追加することにより、治療開始直後の生存曲線の落ち込み、すなわち、早期にPDとなり免疫チェックポイント阻害剤の恩恵を受けられない可能性がある患者集団を意識したレジメンとなっている。全生存期間における目標ハザード比0.75を、α0.05(両側)、検出力81%で検定し、全生存期間が統計学的に有意と示された場合はヒエラルキカルに無増悪生存期間、奏効割合の検定に進むという、ほかのニボルマブ+イピリムマブ関連の試験に比べるとシンプルな試験設定が採用されている。アップデートされた全生存期間では、生存曲線もきれいに分かれ、打ち切りを多数認めるものの、いわゆるTail plateauのような雰囲気が示されている。ハザード比は0.66、95%信頼区間0.55~0.80であり、12ヵ月時点での生存割合が試験治療群で63%、標準治療群で47%と全生存期間での試験治療の意義が確認された。この結果は、組織型、PD-L1の発現割合別のそれぞれのサブセットでもほぼ再現されており、とくにPD-L1陰性の集団においても、全生存期間での明確なベネフィットが示されている。ニボルマブ+イピリムマブということで、有害事象にも注目が集まり、やはり免疫関連有害事象の頻度は多いものの、ほかの免疫チェックポイント阻害剤と比較して根本的に異なる結果ではなかった。ただ、今回の報告では比較的有害事象に関する内容はシンプルであり、今後の追加報告に期待したい。また、別途報告されたCheckMate227試験の3年フォローアップ結果とも併せて、とくにPD-L1のサブセットによらない有効性という点でニボルマブ+イピリムマブの特性が示されている。今後本試験レジメン、ニボルマブ+イピリムマブが初回治療の選択肢として加わった場合の使い分けについて、今後さらに議論が続くものと思われる。KEYNOTE-189ポスター発表ではあるものの、KEYNOTE-189試験の“Final analysis”が報告されている。PD-L1発現レベルによらず、進行期、非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、プラチナ+ペメトレキセドに対して、ペムブロリズマブの上乗せを検証した第III相試験である。すでに試験内容については各所で報告されている。今回のアップデートでは、全生存期間についてフォローアップ期間が延長された結果が示されている。とくに注目されたのは、いわゆるTail plateauと呼ばれる、ペムブロリズマブにより長期の効果が得られる患者集団が存在することによる効果が、プラチナ+ペメトレキセドの上乗せによりさらに強化されるのか、それともペムブロリズマブ単剤と大きく異ならないのかという点であった。今回の発表において、PD-L1 50%以上の集団においては、生存曲線の後半が平坦になる雰囲気が出現しているものの、そのほかのサブセットではその気配はまだ認められていない。さらに、PD-L1 50%以上のサブセットにおいて、フォローアップ後半戦の生存割合、すなわちtailの高さに着目すると、ペムブロリズマブ単剤のKEYNOTE-024試験(全体集団)とはほぼ同等であり、KEYNOTE-042試験(PD-L1 50%以上のサブセット)よりは良い結果が得られている。試験に参加した患者集団が異なるため、試験間の比較は意味を持たないとはわかりつつも、KEYNOTE-189試験の長期フォローの結果は、とくにPD-L1高発現の患者において、免疫チェックポイント阻害剤にプラチナ併用療法を加える意義があるか否かについての議論で、注目され続けるものと考えられる。NivoCUP試験肺がんの話題から少し離れるものの、NivoCUP試験については本稿でも触れておきたい。本試験は、原発不明がんの患者を対象としたPhase II、医師主導治験であり、研究事務局の近畿大学の谷崎 潤子先生が報告されている。原発不明がんの精査のために、十分な組織診断、画像診断に加え、各診療科の診察を受けることが規定され、その結果をもって原発不明がんと診断された55例の患者が登録されている。無治療でも登録可能ではあるが、統計学的設定は既治療例を対象に組まれており、主要評価項目である奏効割合の期待値が20%、閾値が5%、α0.025(片側)、検出力80%で、38例の登録を目指し、実際は45例が登録された。この既治療45例での奏効割合は22.2%、95%信頼区間は11.2~37.1、CR 4.4%、PR 17.8%、SD 31.1%という結果であり、主要評価項目を達成している。同集団における無増悪生存期間は4.0ヵ月、全生存期間は15.9ヵ月であった。原発不明がんという治療選択肢が限定され、治療開発の対象となりにくい集団において、免疫チェックポイント阻害剤の有効性を示した試験の価値は高く、本試験の結果に基づき国内でニボルマブが原発不明がんにおいて保険診療で使用可能となることが期待される。企業の治療開発の対象となりにくい希少フラクションを対象として、患者に近い研究者が医師主導治験を実施し、Unmet needsを解消しようとする非常に良い事例である。さいごに残念ながら完全にVirtual開催となったASCOであるが、報告された知見には肺がんの日常診療を刷新させうる内容が含まれていた。Virtual meetingのシステムもおおむね安定しており、情報を得るという意味ではこの開催方法も一定の評価を受けるものと思われるが、発表者、また多数のエキスパートが一堂に会する中で、目の前で報告される新たなエビデンスについて議論する場として、Virtualな会議室はまだまだ不十分な点が多いと感じたことも確かであった。昨今の状況が一刻も早く解決され、会場に集えない方がVirtualで、また、会場に集える場合は現地で、同じように最新のエビデンスを体感できる時代が来ることを祈念している。

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細胞療法の成功例、CAR-T細胞療法の仕組みに迫る!【そこからですか!?のがん免疫講座】第6回

はじめに前回までは、がん免疫療法における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の話が多かったのですが、最近登場してきた細胞療法のことにも触れておきたいと思い、全5回の連載予定をオーバーしていますが、もう少しお付き合いください。ICIは間接攻撃、細胞療法は直接攻撃ICIは、元々われわれの身体にある免疫細胞(とくにT細胞)を活性化させる治療であり、抗CTLA-4抗体や抗PD-1/PD-L1抗体がその代表です。つまり、ICIは「元々備わっている免疫を介して間接的にがんを攻撃している治療」だといえます。一方で、細胞療法は、「外からがん細胞を攻撃する細胞を入れる治療」です。利用している細胞が免疫細胞なので、「免疫療法」のくくりに入れる場合が多いです。細胞療法は、間接的なICIに比べて直接的な治療であり、その攻撃の仕方にはいろいろな免疫の要素が含まれます。「外から細胞を入れるなんて」と抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、実はこの方法、かなり昔から取り組まれていたんです1)。抗体でT細胞を活性化させる「CAR-T細胞」細胞療法の中で、代表的な成功例がCAR-T細胞療法です2)。CARとは「キメラ抗原受容体:Chimeric Antigen Receptor」の略です。「キメラ」なので何かを「融合」させているのですが、「何を」「何のために」わざわざ融合させているのか、少し詳しく述べてみたいと思います。これまで、「T細胞ががん免疫の主役である!!」と繰り返し、しつこいくらいに述べてきました。少し思い出してほしいのですが、T細胞はその受容体であるTCRを介して、MHCというお皿の上に乗った抗原を認識して活性化し、がん細胞を攻撃していました(図1)。このTCRの替わりに「抗体」を使おう、というのがCARの発想です。画像を拡大する抗体とは、B細胞というリンパ球が産生し血中などに放出しているものです(正確には形質細胞ですが、これは元をたどるとB細胞なので、ややこしいのでここではB細胞とします)。繰り返しになりますが、がん細胞を含む異常細胞を攻撃・排除するための免疫を「細胞性免疫」と呼んでおり、T細胞が主役でした。一方、B細胞から産生され血中などに放出された抗体は、細胞の外にある異物を抗原として認識・結合して免疫反応を起こし、防御機構が働きます。血液で起きるということで、抗体が主につかさどる免疫を「液性免疫」と呼んでいます。抗体の由来はB細胞抗原受容体(BCR)です。BCRはTCRと同じように非常に多くのレパートリーを持つことで、さまざまな抗原を認識できます。治療にも用いられる抗EGFR抗体はEGFRを認識する抗体ですし、これまでにも散々登場した抗PD-1抗体はPD-1を認識する抗体です。抗体がTCRと大きく違うのは「MHCのお皿が必要ない」という点です。MHCは実はかなりの個人差があって、そのタイプに合わないとTCRが認識できないのですが、抗体はMHCとは無関係に抗原を認識することができます。T細胞ががん細胞を攻撃するためには、がん細胞を認識することが重要です。この認識の過程にTCRではなく抗体を使ってあげよう、というのがCARの発想です。人工的に合成した「抗体の抗原を認識する部分」をT細胞に導入することで、がん細胞の表面に出ている抗原であれば、MHCとは関係なくT細胞が認識できるようになります。しかし、単に認識するだけでは、がん細胞を攻撃できません。認識してさらにT細胞を活性化する必要があります。そこでT細胞に活性化シグナルを伝えるためのCD3という分子の一部分を抗体の抗原認識部分とキメラ化し、導入したものがCAR-T細胞です(図2)。画像を拡大するCD3はT細胞マーカーでもあり、同じ部分はT細胞の活性化にも重要です(図1)。単純な表現にすると「TCRの替わりに抗体を使ってT細胞を活性化させているものがCAR-T細胞」なのです。最近では、さらに活性化シグナルが入るように活性化共刺激分子であるCD28や4-1BBもキメラ化して導入したものが、すでに臨床で使われています(図2)。CAR-T細胞療法における成功例は、CD19という分子に対するものです。ある種の血液腫瘍にはCD19が非常に特異的に細胞表面に発現しており、これに対するCAR-T細胞療法は劇的な効果が報告され、臨床にも応用されています3)。ほかにも骨髄腫などで有望なものが報告されています。CAR-T細胞療法、ほかのがんへの応用は?ここまでの話で、「じゃあ、がん細胞表面の抗原とそれに対する抗体さえあれば、どんながんにも応用できるのでは?」と思われた方もおられるかもしれません。その発想は間違っていないのですが、いくつか問題点があります。一番の問題は、その細胞傷害効果が強力過ぎる、という点です。正常細胞にも発現している抗原を認識して傷害すると、大変な副作用が出る可能性が指摘されています。免疫を活性化させる物質であるサイトカインが体中で大量に放出され、ショック状態になってしまう「サイトカイン放出症候群」(これは正しく対処すればそこまで問題はないようです)や、中枢神経系に障害を起こす有害事象も報告されています。したがって、CD19のようにがん細胞表面に非常に特異的でないと開発が難しく、血液腫瘍以外への開発はなかなか進んでいません。そのほかの細胞療法CAR-T細胞療法の成功例を紹介しましたが、「わざわざ面倒なキメラなんて作らなくてもいいのでは?」と思った方もいるかと思います。そうですね、「TCRを直接使ってあげればいいんじゃない?」というのはより単純な発想で、実はこちらも以前から取り組まれており、TCR-T細胞療法と呼ばれています。紆余曲折はあるのですが、特定のがん抗原に対して有望なものも報告され、本邦でも開発が進んでいます。ただし、CARと異なり、TCRはMHCのタイプによっては認識できないため、特定のMHCを持つ患者さんにしか使用できない、という別の問題点もあります。患者さん由来の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を体外で培養・増殖させて、がんを攻撃するT細胞を増やし、体内に戻すTIL療法も効果が報告されています1,4)。本邦ではなかなか手間の問題でできていませんが、海外ではベンチャーもできており、大々的に治験が行われています。TIL療法は悪性黒色腫に対して古くから効果が報告されていましたが、最近ではそれ以外の腫瘍でも効果が報告され、注目を集めています。人工的に細胞を作ることに関して、「えっ」と思う方もおられるかもしれませんが、実は以前から実験室レベルで細胞の遺伝子操作をすることは、比較的簡単にできるようになっています。私も大学院時代の初期に教えてもらいました。CAR-T細胞療法は本邦ではこれから広がる治療ですが、そういった技術面の進歩もあり、今後もこれまでなかったような治療が次々に登場してくるかもしれません。次回はそんな将来像に少し触れ、締めにしたいと思います。1)Rosenberg SA, et al. Science. 2015;348:62-68.2)Singh AK, et al. Lancet Oncol. 2020;21:e168-e178.3)June CH, et al. N Engl J Med. 2018;379:64-73.4)Zacharakis N,et al. Nat Med. 2018;24:724-730.

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HER2+大腸がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの成績(DESTINY-CRC01)/ASCO2020

 イタリア・Universita degli Studi di MilanoのSalvatore Siena氏は、HER2陽性転移大腸がんに対する抗HER2抗体薬物複合体製剤トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、DS-8201)の多施設共同非盲検第II相試験DESTINY-CRC01の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。標準治療に抵抗性を示す転移大腸がんでは注目すべき活性を示すと報告した。・対象:2次治療以上の治療歴を有するHER2陽性切除不能・転移大腸がん患者78例  コホートA(53例):HER2 IHC3+またはIHC2+/ISH+  コホートB(7例):HER2 IHC2+/ISH-  コホートC(18例):HER2 IHC1+・介入:トラスツズマブ デルクステカン6.4mg/kg 3週ごと・評価項目:[主要評価項目]コホートAでの独立中央判定による確定奏効率(ORR)[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、コホートBとCでのORR 主な結果は以下のとおり。・全治療のレジメン数中央値は4、全例がイリノテカン、フルオロウラシル、オキサリプラチンの投与歴を有した。また、全症例の20.5%、コホートAの30.2%で抗HER2療法の治療歴があった。・コホートAの確定ORRは45.3%で、うちCRは1例、DCRは83.0%であった。・コホートAのDoR中央値は未到達であった。・コホートAのPFS中央値は6.9ヵ月、OS中央値は未到達であった。・HER2低発現(IHC2+/1+)の2コホートにおいては、奏効が認められなかった。・全Gradeの治療関連有害事象(TEAE)発現率は症例全体、コホートA共に100%であった。Grade3以上のTEAEは全体が61.5%、コホートAが60.4%であった。・対象症例全体では薬剤関連の間質性肺炎は5例(6.4%)で認定され、Grade2が2例、Grade3が1例、Grade5が2例であった。・サブグループ解析では抗HER2療法の治療歴がある患者でも効果が認められた。 Siena氏は「進行HER2陽性大腸がんに対する治療オプションとしての潜在力を示している」との見解を表明した。

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血清葉酸レベルと統合失調症の性別に基づく関連性

 血清葉酸濃度に性差があることはよく知られているが、血清葉酸レベルと統合失調症の関連性を性別に基づいて調査した研究はこれまでなかった。徳島大学の富岡 有紀子氏らは、日本人を対象に、性別で層別化した統合失調症患者と精神疾患でない健康な対照者における血清葉酸レベルの違いを調査した。以前の研究データを用いて、血清葉酸レベル、血漿総ホモシステイン(tHcy)、血清ビタミンB6(ピリドキサール)レベルとの関係も調査した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年5月23日号の報告。 統合失調症患者482例および精神疾患でない健康な対照者1,350例の血清葉酸濃度を測定した。性差に基づく両群間の血清葉酸レベルの違いを調査するため、共分散分析を用いた。葉酸、 tHcy、ビタミンB6レベルとの関係を評価するため、スピアマンの順位相関係数を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対照群では、男性よりも女性において、血清葉酸濃度が高かった。・統合失調症群では、男女ともに血清葉酸レベルが低かった。・血清葉酸レベルとtHcyとの逆相関、血清葉酸レベルとビタミンB6との弱い正の相関が認められた。 著者らは「性別に関係なく、低血清葉酸レベルと統合失調症が関連していることから、統合失調症治療において、葉酸の投与が有益であると考えられる。血清葉酸レベルが低い統合失調症患者に対して葉酸の投与を行うことで、高tHcyおよび低ビタミンB6レベルが改善する可能性がある」としている。

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COVID-19の肺がん患者、死亡率高く:国際的コホート研究/Lancet Oncol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行期における、肺がん等胸部がん患者の転帰について、初となる国際的コホート研究の結果が公表された。COVID-19に罹患した胸部がん患者は死亡率が高く、集中治療室(ICU)に入室できた患者が少なかったことが明らかになったという。イタリア・Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのMarina Chiara Garassino氏らが、胸部がん患者における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の影響を調査する目的で行ったコホート研究「Thoracic Cancers International COVID-19 Collaboration(TERAVOLT)レジストリ」から、200例の予備解析結果を報告した。これまでの報告で、COVID-19が確認されたがん患者は死亡率が高いことが示唆されている。胸部がん患者は、がん治療に加え、高齢、喫煙習慣および心臓や肺の併存疾患を考慮すると、COVID-19への感受性が高いと考えられていた。結果を踏まえて著者は、「ICUでの治療が死亡率を低下させることができるかはわからないが、がん治療の選択肢を改善し集中治療を行うことについて、がん特異的死亡および患者の選好に基づく集学的状況において議論する必要がある」と述べている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年6月12日号掲載の報告。 TERAVOLTレジストリは、横断的および縦断的な多施設共同観察研究で、COVID-19と診断されたあらゆる胸部がん(非小細胞肺がん[NSCLC]、小細胞肺がん、中皮腫、胸腺上皮性腫瘍、およびその他の肺神経内分泌腫瘍)の患者(年齢、性別、組織型、ステージは問わず)が登録された。試験適格条件は、RT-PCR検査で確認された患者、COVID-19の臨床症状を有しかつCOVID-19が確認された人と接触した可能性のある患者、または、臨床症状があり肺画像がCOVID-19肺炎と一致する患者と定義された。 2020年1月1日以降の連続症例について臨床データを医療記録から収集し、人口統計学的または臨床所見と転帰との関連性について、単変量および多変量ロジスティック回帰分析(性別、年齢、喫煙状況、高血圧症、慢性閉塞性肺疾患)を用いて、オッズ比(OR)およびその95%信頼区間(CI)を算出して評価した。なお、データ収集は今後WHOによるパンデミック終息宣言まで継続される予定となっている。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、2020年3月26日~4月12日に、8ヵ国から登録された最初の200例であった。・200例の年齢中央値は68.0歳(範囲:61.8~75.0)、ECOG PS 0~1が72%(142/196例)、現在または過去に喫煙81%(159/196例)、NSCLC 76%(151/200例)であった。・COVID-19診断時に、がん治療中であった患者は74%(147/199例)で、1次治療中は57%(112/197例)であった。・200例中、入院は152例(76%)、死亡(院内または在宅)は66例(33%)であった。・ICU入室の基準を満たした134例中、入室できたのは13例(10%)で、残りの121例は入院したがICUに入室できなかった。 ・単変量解析の結果、65歳以上(OR:1.88、95%CI:1.00~3.62)、喫煙歴(OR:4.24、95%CI:1.70~12.95)、化学療法単独(OR:2.54、95%CI:1.09~6.11)、併存疾患の存在(OR:2.65、95%CI:1.09~7.46)が死亡リスクの増加と関連していた。・しかし、多変量解析で死亡リスクの増加との関連が認められたのは、喫煙歴(OR:3.18、95%CI:1.11~9.06)のみであった。

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進行悪性黒色腫の1次治療、アテゾリズマブ追加でPFS延長/Lancet

 未治療のBRAFV600変異陽性進行悪性黒色腫患者の治療において、BRAF阻害薬ベムラフェニブ+MEK阻害薬cobimetinibによる標的治療に、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害薬アテゾリズマブを追加すると、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、安全性と忍容性も許容範囲であることが、ドイツ・ハノーバー医科大学のRalf Gutzmer氏らが行った「IMspire150試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年6月13日号に掲載された。免疫チェックポイント阻害薬、およびBRAF阻害薬+MEK阻害薬併用はいずれも、BRAFV600変異陽性転移悪性黒色腫のアウトカムを改善すると報告されている。BRAF阻害薬+MEK阻害薬併用は高い奏効率を有するが奏効期間は短く、免疫チェックポイント阻害薬は持続的な奏効をもたらすものの奏効率は相対的に低い。このような相補的な臨床的特徴から、これらの併用療法に注目が集まっているという。PFS期間を評価するプラセボ対照無作為化試験 本研究は、20ヵ国112施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2017年1月~2018年4月の期間に患者登録が行われた(F Hoffmann-La RocheとGenentechの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、StageIVまたは切除不能なStageIIIcのBRAFV600変異陽性悪性黒色腫で、全身状態(ECOG PS)が0/1の患者であった。前治療を受けた患者は除外した。 被験者は、アテゾリズマブ+ベムラフェニブ+cobimetinibまたはプラセボ+ベムラフェニブ+cobimetinibを投与する群に無作為に割り付けられた。28日を1サイクルとし、1サイクル目にはベムラフェニブ+cobimetinibのみが投与され、2サイクル目以降にアテゾリズマブまたはプラセボが追加された。 主要アウトカムは、担当医判定によるPFSであった。奏効率は同等、奏効期間は延長 514例が登録され、アテゾリズマブ群に256例(年齢中央値54.0歳[範囲:44.8~64.0]、女性41%)、プラセボ群には258例(53.5歳[43.0~63.8]、42%)が割り付けられた。 追跡期間中央値18.9ヵ月の時点におけるPFS中央値は、アテゾリズマブ群がプラセボ群に比べ有意に延長した(15.1ヵ月vs.10.6ヵ月、ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.63~0.97、p=0.025)。事前に規定されたサブグループのほとんどで、PFS中央値がアテゾリズマブ群で良好な傾向が認められた。 アテゾリズマブ群は93例(36%)、プラセボ群は112例(43%)が死亡し、全生存期間(OS)に差はなかった(HR:0.85、95%CI:0.64~1.11、p=0.23)。2年時の無イベント生存率はそれぞれ60%および53%だった。 担当医判定による客観的奏効率は、両群でほぼ同等であった(アテゾリズマブ群66.3% vs.プラセボ群65.0%)。一方、奏効期間中央値は、アテゾリズマブ群のほうが長かった(21.0ヵ月vs.12.6ヵ月)。 両群で最も頻度の高い有害事象は、クレアチニン・ホスホキナーゼ上昇(51.3% vs.44.8%)、下痢(42.2% vs.46.6%)、皮疹(両群とも40.9%)、関節痛(39.1% vs.28.1%)、発熱(38.7% vs.26.0%)、アラニン・アミノトランスフェラーゼ上昇(33.9% vs.22.8%)、リパーゼ上昇(32.2% vs.27.4%)であった。有害事象による治療中止は、アテゾリズマブ群が13%、プラセボ群は16%で発生した。 著者は、「OSのデータはimmatureであったが、15ヵ月時の生存曲線はアテゾリズマブ群で良好な傾向がみられた。本研究の生存データは、この患者集団における至適な治療パラダイムに、有益な情報をもたらすであろう」としている。

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