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糖尿病患者は自殺死のリスクが○倍?

 糖尿病は、正常血糖と比較して自殺死のリスクが高かったことが、国立国際医療研究センターの福永 亜美氏らによって報告された。Journal of Psychosomatic Research誌2020年11月号に掲載。 本研究は、日本の労働人口における糖尿病および境界型糖尿病と自殺の関連を調査する目的で、労働衛生研究のデータを使用し実施された。 8年間の追跡調査中に、自殺前の過去3年間の健康診断で、空腹時血糖値またはHbA1cに関する情報があった56例の自殺死の症例を特定。年齢、性別、職場が一致する5つのコントロールをランダムに選択。分析には最新の健康診断データを使用した。米国糖尿病学会の基準に基づき糖尿病の状態を定義し、条件付きロジスティック回帰モデルを使用して関連を調査した。 正常血糖と比較した糖尿病と境界型糖尿病における自殺死の関連性については以下のとおりである。・正常血糖と比較した自殺死は、境界型糖尿病で0.67倍、糖尿病で3.53倍であった。・糖尿病の状態を空腹時血糖値またはHbA1cで定義した場合でも、自殺の関連性は同様の結果であった。

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米空母内の新型コロナ感染リスク、甲板上より船内で高い/NEJM

 米原子力空母セオドア・ルーズベルト(乗組員4,779人)において、2020年3月23日~5月18日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクが発生、U.S. Navy Bureau of Medicine and SurgeryのMatthew R. Kasper氏らがその調査結果をまとめた。SARS-CoV-2の感染は、狭苦しい閉鎖的な空間で無症状および症状発現前の感染者によって促進され、空母内で急速に拡大したという。SARS-CoV-2陽性と判定された乗組員の約半数は、無症状であった。NEJM誌オンライン版2020年11月11日号掲載の報告。COVID-19の1例目発生後、全乗組員にPCR検査を実施、10週間以上追跡 研究グループは、リアルタイム逆転写DNAポリメラーゼ連鎖反応(rRT-PCR)の検査結果を含めた、全乗組員の臨床および人口統計学的データを解析した。全乗組員は、検査結果や症状の有無にかかわらず、最低10週間の追跡調査を受けた。 乗組員は平均年齢27歳で若者が多く、男性が78.3%を占め、全般的に健康状態は良好で、米海軍の海上任務基準を満たしていた。 当初、3人の乗組員がCOVID-19を示唆する症状で医療部を受診し、rRT-PCR検査の結果、3人全員がSARS-CoV-2陽性と判定された(2020年3月23日)。その後、24時間以内に有症状者および濃厚接触者を特定、同艦が3月27日にグアム海軍基地に到着後、入院・隔離措置が取られた。SARS-CoV-2陽性者は26.6%、陽性判明時点で76.9%は無症状 乗組員全員にrRT-PCR検査が行われ、アウトブレイク期間中にSARS-CoV-2陽性が確認された乗組員は1,271人(26.6%)であった。このうち1,000人以上が最初の感染確認から5週以内に確認された。さらに、60人(1.3%)は、rRT-PCR検査は陰性であったが専門委員会によるCOVID-19の臨床基準を満たしており、感染が疑われた。 SARS-CoV-2陽性が確認された1,271人中、978人(76.9%)は、陽性と判明した時点では無症状で、699人(55.0%)は臨床経過中のいずれかの時点で症状が現れた。 COVID-19疑い/確定の1,331人中、23人(1.7%)が入院し、4人(0.3%)が集中治療を受け、1人が死亡した。後ろ向きに調べたところ、2020年3月11日という早い時期に症状が発現していた乗組員がいた。機関室や船内の狭い空間で任に就いていた乗組員のほうが、甲板上の乗組員よりも感染のリスクが高かった。

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心血管リスク患者へのフェブキソスタット、アロプリノールに非劣性/Lancet

 心血管リスク因子を有する痛風患者において、フェブキソスタットはアロプリノールと比較し、主要評価項目である複合心血管イベントに関して非劣性であることが示された。長期投与による死亡あるいは重篤な有害事象のリスク増加も確認されなかった。英国・ダンディー大学のIsla S. Mackenzie氏らが、多施設共同前向き無作為化非盲検非劣性試験「FAST試験」の結果を報告した。フェブキソスタットとアロプリノールはともに痛風の治療に用いられる尿酸降下薬であるが、フェブキソスタットの心血管系への安全性に懸念があり、欧州医薬品庁は安全性をアロプリノールと比較する市販後臨床試験の実施を勧告していた。Lancet誌オンライン版2020年11月9日号掲載の報告。心血管リスク因子を有する60歳以上の痛風患者約6千例が対象 FAST試験は、英国、デンマークおよびスウェーデンの18施設で実施された。対象は、すでにアロプリノールの投与を受け、少なくとも1つの心血管リスク因子を有する60歳以上の痛風患者で、過去6ヵ月間に心筋梗塞または脳卒中を発症した患者、重度うっ血性心不全または重度腎機能障害を有する患者は除外された。導入期として血清尿酸値0.357mmol/L(6mg/dL)未満を達成するためにアロプリノールの投与量を最適化した後、アロプリノール継続投与(最適化された投与量)群、またはフェブキソスタット群(80mg/日から投与を開始し、目標の血清尿酸値を達成するため必要に応じて120mg/日まで増量)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。心血管イベントの既往の有無による層別化も行った。 主要評価項目は、非致死的心筋梗塞またはバイオマーカー陽性急性冠症候群による入院、非致死的脳卒中、または心血管死の複合エンドポイントであった。層別化因子と国で調整したCox比例ハザードモデルを用い、on-treatment解析でアロプリノールに対するフェブキソスタットのハザード比(HR)を算出し非劣性を評価した(非劣性マージン:HR=1.3)。 2011年12月20日~2018年1月26日の期間に、6,128例(平均年齢71.0歳、男性85.3%/女性14.7%、心血管疾患既往歴あり33.4%)が、アロプリノール群(3,065例)およびフェブキソスタット群(3,063例)に割り付けられた。100人年当たり主要評価項目イベント発現頻度、1.72 vs.2.05 試験終了(2019年12月31日)までに、すべての追跡調査を撤回したのは、フェブキソスタット群189例(6.2%)、アロプリノール群169例(5.5%)であった。追跡期間中央値は1,467日(IQR:1,029~2,052)、on-treatment解析の追跡期間中央値は1,324日(IQR:870~1,919)であった。 主要評価項目のイベント発生は、on-treatment解析でフェブキソスタット群172例(100人年当たり1.72件)、アロプリノール群241例(100人年当たり2.05件)で、補正後HRは0.85(95%信頼区間[CI]:0.70~1.03、p<0.0001)で非劣性が認められた。 フェブキソスタット群では、3,063例中222例(7.2%)が死亡し、安全性解析対象集団3,001例中1,720例(57.3%)に重篤な有害事象が発現した(治療に関連した事象は19例[0.6%]に23件発現)。一方、アロプリノール群では、3,065例中263例(8.6%)が死亡し、安全性解析対象集団3,050例中1,812例(59.4%)に重篤な有害事象を認めた(治療に関連した事象は5例[0.2%]に5件発現)。フェブキソスタット群で973例(32.4%)、アロプリノール群で503例(16.5%)が治療を中止した。

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ニボルマブ+イピリムマブ+2週間化学療法の肺がん1次治療、アジア人の成績は?(CheckMate9LA)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、ニボルマブ+イピリムマブへの2週間の限定化学療法の追加治療を評価する第III相非盲検無作為化試験CheckMate9LA試験。そのアジア人サググループの解析が、第61回日本肺癌学会学術集会において埼玉県がんセンターの酒井 洋氏より発表された。・対象:未治療のStage IVまたは再発NSCLC患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価のPFS、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 主な結果は以下のとおり。・アジア人のOS中央値はNIVO+IPI+Chemo群未達に対しChemo群13.3ヵ月であった(HR:0.33)。・BICR評価のPFSはNIVO+IPI+Chemo群8.4ヵ月に対しChemo群5.4ヵ月であった(HR:0.47、1年PFSは35%対12%)。・BICR評価のORRはNIVO+IPI+Chemo群57%に対しChemo群23%であった。・奏効期間はNIVO+IPI+Chemo群7.0ヵ月に対しChemo群4.4ヵ月であった。・アジア人集団の全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)はNIVO+IPI+Chemo群100%、Chemo群97%、Grade3〜4のTRAEはそれぞれ57%と60%であった。・免疫関連有害事象は全集団に比べアジア人で多くみられたが、その大半はGrade1〜2であった。

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禁煙とうつ病~メタ解析

 禁煙は健康、とくにメンタルヘルスに好影響を及ぼす可能性がある。イラン・Baqiyatallah University of Medical SciencesのSohrab Amiri氏は、禁煙者におけるうつ病有病率を明らかにするため、検討を行った。Journal of Addictive Diseases誌オンライン版2020年10月21日号の報告。 PRISMAガイドラインを用いて、メタ解析を実施した。2020年7月までに英語で報告された研究を、PubMed、Scopusより検索した。うつ病の有病率に関連する結果を算出し、プールした。 主な結果は以下のとおり。・研究デザインの異なる49研究が抽出された。・禁煙者のうつ病有病率は18%(信頼区間[CI]:14~22%)であった。・うつ病の有病率が最も高かったのは、アジアと欧州、次いで米国であった。・禁煙者の大うつ病有病率は15%、うつ症状の有症率は17%であった。・禁煙者は、現在の喫煙者と比較し、うつ病のオッズ比が低かった(オッズ比:0.63、CI:0.54~0.75、I2=83.9%)。・出版バイアスは、ほとんど認められなかった。 著者らは「禁煙者のうつ病有病率は、非喫煙者や現在の喫煙者とは異なっていた。健康政策および禁煙を推奨するという観点から、メンタルヘルスへの好影響を考慮する必要がある」としている。

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クロピドグレルは奇跡の薬(解説:後藤信哉氏)-1316

 近年でこそ分子標的薬は珍しくない。クロピドグレルは薬効標的不明のまま広く臨床使用された薬剤である。冠動脈、脳血管、末梢血管疾患の広い適応を目指したCAPRIE試験の成功により世界の抗血小板薬の市場を席巻した。チカグレロルは、プラスグレルと同様クロピドグレルの薬効標的P2Y12 ADP受容体クローニングに開発された。とくに、チカグレロルはP2Y12 ADP受容体の分子標的薬ともいえる。急性冠症候群を対象としたPLATO試験では、急性期治療方針決定前にランダム化する画期的方法を用いた。約10%の症例が緊急冠動脈バイパス術となり、重篤な出血イベントの総数が増えた。チカグレロルにより惹起される出血数は希釈されたので、試験の結果を雑駁にみると「クロピドグレルよりも血栓イベントが減少し、出血イベントが増えない」ようにみえた。 本研究は米国の実臨床の後ろ向きコホート研究である。症例の対象はPLATO trialに類似しているので、PLATO trialと同様にチカグレロル群にて血栓イベントが少なく、出血イベントも少ないことが期待された。しかし、実際には1年以内の死亡、虚血イベントはチカグレロルとクロピドグレルでは差がなかった。出血イベントは有意差はないが、チカグレロル群の数が多かった。 PLATO試験は急性症候群の標準治療をチカグレロルに転換するインパクトを欧州で示した。しかし、後ろ向き観察研究とはいえ、本研究で示されたクロピドグレルと同様の血栓イベント予防効果と多めの出血というのが本当のところと思う。PLATOに参加しなかった日本を中心に施行したPLATO mirror trialのPHILOではチカグレロル群では出血、血栓イベントともにクロピドグレル群よりも多めであった。最近出版されたTICA-KOREA trialもクロピドグレルの優越性を示している。特許切れにより市場価格が10分の1以下になる米国でもチカグレロルを選択することは困難になるだろう。 単一のランダム化比較試験の結果にて特許期間内のマーケット維持を図るメガファーマの戦略も破綻がみえる。有効、安全、安価となればクロピドグレルは奇跡の薬といえるかもしれない。

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PALB2病的変異を有する遺伝性乳がん、日本での臨床的特徴は/日本癌治療学会

 PALB2はBRCA2と相互作用するDNA修復に関連する分子で、PALB2遺伝子変異は乳がん、卵巣がんのリスクを増加させ、すい臓がんとの関連も指摘される。PALB2生殖細胞系列病的遺伝子変異(pathogenic or likely-pathogenic germline variant: PGV)を有する女性の70歳までの乳がんリスクは約35~50%、生涯の乳がんリスクは約5~8倍とされるが1)、その臨床的特徴に関する知見は限られる。樋上 明音氏(京都大学乳腺外科)らは、日本人乳がん患者約2,000例を調査し、PALB2 PGV症例の頻度と臨床的特徴について、第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)で報告した。PALB2に病的変異を有する乳がんの頻度は他国より低い傾向 対象は、2011年4月~2016年10月に京都大学医学部附属病院および関連施設で同意取得した1,995例。末梢血DNAを用いて乳がん関連11遺伝子についてターゲットシークエンスを行った先行研究2)のデータを元にPALB2に病的変異を認めた症例について乳がんの状況、診断時年齢、他がんの既往・家族歴等の臨床情報を後方視的に調査した。  PALB2に病的変異を認めた症例について調査した主な結果は以下のとおり。・1,995例のうち9例にPALB2遺伝子に病的変異を認めた(0.45%)。・診断時の年齢中央値は49歳(42~73歳)。サブタイプはLuminal typeが5例(55.6%)、Luminal HER2 typeが1例(11.1%)、TNBCが2例(22.2%)、DCISが1例(11.1%)であった。・第3度以内の悪性腫瘍の家族歴を有する症例は4例(44.4%)。乳がん・卵巣がんの家族歴があったのは1例で、2人の姉が乳がん、もう1人の姉に境界悪性卵巣腫瘍、母に子宮がんを認めた。膵臓がんの家族歴は1例であり、その症例では大腸がんの家族歴も認めた。その他の症例では肝細胞がん、肺がん、胃がん、大腸がんの家族歴があった。・9例のうち4例、3バリアントはClinVarでは未報告のものであった。・非保有者との間で、サブタイプの割合に差はみられなかった。・BRCA1/2PGV症例と比較して、PALB2PGV症例では若年発症者が少なく、乳がん・卵巣がんの家族歴を有する割合が少ない傾向がみられた。・9例についてCanRisk(家族歴、生活習慣や遺伝子変異、マンモグラフィ密度などによる乳がんまたは卵巣がんの発症リスクの計算モデル)3)を用いたリスク評価を行ったところ、BRCA1/2 遺伝子変異を有する可能性が5%以上(NCCNガイドラインにおける遺伝学的検査の評価対象基準)となったのは2例のみ(22.2%)であった。 樋上氏は、日本の先行研究4)においてPALB2遺伝子病的変異を有する乳がん患者の頻度が0.40%と本結果と同程度であったことに触れ、他国における結果(ポーランド:0.93%5)、中国:0.67~0.92%6,7))と比較し低い傾向を指摘。未報告のバリアントがみられたことも踏まえ、バリアントの地域差がある可能性について言及した。 また、NCCNガイドラインにおける遺伝的検査の評価対象基準8)を今回の9症例で検討したところ、4例は該当しなかった。同氏は「BRCA1/2と比較して発症年齢が高く、乳がん・卵巣がんの家族歴が少ないため、散発性乳がんに近く、ハイリスク症例の拾い上げが難しい」とし、パネル検査の増加に伴う診断症例の増加や、PALB2 PGV症例に対するPARP阻害薬適応についての研究が進む中、拾い上げ基準やサーベイランスの最適化が重要と考察している。■参考文献・参考サイトはこちら1)Yang X,et al. J Clin Oncol. 2020 Mar 1;38:674-685.2)Inagaki-Kawata Y, et al. Commun Biol 3:578, 2020.3)CanRisk Web Tool4)Momozawa Y, et al. Nat Commun. 2018 Oct 4;9:4083.5)Cybulski C, et al. Lancet Oncol. 2015 Jun;16:638-44.6)Zhou J, et al. Cancer. 2020 Jul 15;126:3202-3208.7)Wu Y, et al. Breast Cancer Res Treat. 2020 Feb;179:605-614.8)NCCN Guidelines for Detection, Prevention, & Risk Reduction「Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breast and Ovarian Version 1.2021」

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HPVワクチン、国は積極的勧奨を早急に再開すべき/日本癌治療学会

 7月に9価HPVワクチンが国内承認され、10月に4価HPVワクチンの有効性を確認した論文がNEJM誌に掲載されるなど、今年に入ってHPVワクチンに関連する動きが出ている。10月に開催された第58回日本癌治療学会学術集会では、こうした動向を踏まえ、会長企画シンポジウム「HPV関連癌の疫学からみる予防戦略」が開催された。 この中で、大阪労災病院の田中 佑典氏は「HPV感染から見る子宮頸癌の現在の問題点と予防対策」と題し、国内のHPVワクチン接種に関するこれまでの経緯を振り返り、今後の予防戦略をどう行っていくべきかをテーマに講演を行った。 冒頭、田中氏は世界的に見れば、HPVワクチンの接種率90%、子宮頸がん検診の受診率70%、子宮頸がんの治療率90%のラインを保てば、2085~90年までに子宮頸がんを撲滅できるというWHOの推計を紹介。一方で、国内では2010年に13~16歳の女性を対象にHPVワクチン接種の公費助成が開始され、2013年に12~16歳を対象に定期接種化したものの、直後からワクチンによるとされる副反応に関する報道が行われ、厚生労働省は積極的接種勧奨の一時差し控えの勧告を出して以降、関連学会による度重なる勧奨再開要望にも関わらず、状況は変わっていない現在の状況を振り返った。 「子宮頸がんによる累積死亡リスクは0.3%、一方でワクチン接種後の副反応は2価・4価ワクチンともに0.01%未満(医療機関から報告があったもののうち重篤なもの)。リスクの見極めを見誤っている状況だ」(田中氏)。実際、大阪府堺市における中学1年生のHPVワクチン初回接種率は2012年65.4%だったものが2013年には3.9%、2014年には1.3%まで激減している。 HPVワクチンの安全性については、厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)が大規模な追跡調査を行っており、副反応のほとんどは軽い痛みや注射部位の腫れ、めまいなどの一時的な症状であり、累積の重篤症例の発生頻度はおよそ0.008%であることが報告されている1)。名古屋市が行った調査2)においても「ひどく頭が痛い」「身体がだるい」といった24症状の発現頻度において、HPVワクチン接種者と非接種者のあいだに有意差は見出せなかったという。 一方、HPVワクチンの有効性についても国内外のデータが蓄積されつつあり、10月にNEJM誌に掲載されたスウェーデンの研究3)では、4価HPVワクチンの接種により、浸潤性子宮頸がんのリスクが大幅に低減され、同リスクは接種開始年齢が若いほど低いことが報告されている。国内では新潟大学による研究(NIIGATA STUDY)4)で、初交前に2価HPVワクチンを接種した場合の HPV16/18型感染予防の有効率は93.9%(95%CI:44.8~99.3、p=0.01)と極めて高く、31/41/52型に対する交叉防御効果の可能性も認められた。 7月には、4価ワクチンの6/11/16/18型に加え、31/33/45/52/58の5つの型も含めた9価ワクチンが製造販売を承認された。9価ワクチンは子宮頸がんの原因となるHPV型の9割に対応し、肛門がんなどほかのがんの予防効果もあるとして先進国では男性も接種対象となっている。 田中氏は「HPVワクチンの接種率が極めて低い状況が続けば、日本の子宮頸がんの罹患率は先進国の中で最も高い水準になると想定される」とし、1)国はHPVワクチンの積極的勧奨をすみやかに再開する、2)男児もHPVワクチンの定期接種の対象とする、3)9価ワクチンを定期接種に加える、4)国および医療従事者はHPVワクチンの有効性・安全性に関する正確な情報を国民およびメディアにわかりやすく提供する、という4つの提言を行った。

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臨床家・研究者として直面したニューヨークのコロナパンデミック【臨床留学通信 from NY】第14回

第14回:臨床家・研究者として直面したニューヨークのコロナパンデミック前回は、留学した大学関連病院で、メタ解析の方法を勉強して臨床研究を進めていることについてお話ししました。しかし、メタ解析だけでは米国にいるメリットを生かせません。そのため、渡米後3ヵ月程して業務に慣れた頃からは、日本から引き続き行っている単施設研究やPCI レジストリを用いた研究をまとめつつ、新たな臨床研究の模索を始めました。そんな中、先に渡米して循環器内科で活躍している同年代の人のツテで、心不全を専門としているギリシャ出身の循環器内科医とつながることができました。いくつかのメタ解析を用いた研究を通じてやり取りをした後、National Inpatient Sample、National Readmission Database、United Network Organ SharingといったNDBを用いた研究をする機会も得ることができ、非常に勉強になっています1)。米国の内科レジデントは当院の場合、1年目は2~4週間、2年目、3年目は概ね10週間ずつのElective rotationがあります。日本の研修医でいう選択期間に当たり、苦手な科目のRotationをしたり、場合によっては大学関連病院にいながら大学病院のClinical rotationを2週間単位で取ったりと、経営母体が同一のためフレキシブルに選択できます。私の場合、多くの時間をResearch electiveとしました。選択期間中に研究が許されるのも、米国ならではというところです。COVID-19対応のFront line providerとしての経験を還元したい臨床研究という名目で、平日昼間に研究室に出入りできるというのが、仕事をもらう上では重要になります。実際、Mount Sinai HospitalのDr. Roxana Mehranに大変お世話になり、いくつか研究をさせてもらっています2,3)。さらにそこから、Cardiovascular Research FoundationのDr. Gregg Stoneとも面識を得ることができました4,5)。そのきっかけも、先に渡米している日本人の助けがあってこそであり、渡米している人の中での繋がりの大切さを実感します。そういったInterventional Cardiologyのフィールドにおけるビッグネームの方々と仕事をする機会を通じて、リサーチについて勉強できる上、推薦状をもらうことができ、そういったこと1つひとつが米国でのキャリア形成に非常に助けになると考えます。また、Mount Sinai医科大学のPublic healthの方とも仕事をする機会に恵まれています。今年は、state databaseを用いた研究を模索している中でCOVID-19に見舞われ、統計ソフトも従来用いていたSPSSではなく慣れないSASとなり、なかなか進まないのですが、そこは気持ちを切り替えて、COVID-19研究にシフトチェンジしました。COVID-19パンデミックの中心となったニューヨークで、Front line providerとして働いた経験を何か還元できないかと模索しています。基本的にフルタイムの臨床をやりながらですが、自分の米国における価値を高めるためのさまざまな勉強を続けています。参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=toshiki+kuno+briasoulis&sort=date2)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=roxana+mehran&sort=date3)https://doi.org/10.1016/S0735-1097(19)31899-64)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=gregg+stone&sort=date5)http://www.onlinejacc.org/content/75/11_Supplement_1/192Column画像を拡大するCOVID-19が増加傾向です。欧州各地では、再びロックダウンに踏み切っており、日本の状況も懸念しています。ニューヨークにもじわじわと第2波が押し寄せている感がありますが、10月の段階では、自然史博物館は予約制で行くことができました。平時ならば観光スポットであるこうした博物館も、今はSocial Distanceを保つために人数を制限していることから、じっくり観て回ることができます。

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第34回 COVID-19入院患者の約3人に1人が入院中か退院60日後までに死亡

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の入院中の転帰はよく調べられていますが、退院後を含む長期転帰はあまり分かっていません。そこで米国ミシガン大学の研究チームは同州全域の取り組みMI-COVID19に参加している38病院のデータを使ってCOVID-19入院患者の長期転帰を調べてみました。その結果、入院患者1,648人の4人に1人(398人)は入院中に亡くなり、3月中旬から7月1日までに退院した残りの患者1,250人のうち84人(6.7%)は退院後60日を生きて迎えることができず、入院中と退院後60日間を合わせると実に3人に1人近く(29.2%)が死亡していました。幸い生き延びたとしても困難は大きく、退院後60日を過ぎてからの電話での調査に応じた488人のうち159人の咳や呼吸困難などの心肺症状は収まっておらず、92人は症状の新規発生や悪化を被っていました。65人は味覚や嗅覚の消失が解消しておらず、58人は身支度・食事・入浴・トイレ・寝起き・室内歩行の困難が新たに生じるかより悪化していました。入院前に職に就いていた195人のうち78人は健康不調や失業で復職できていませんでした。復職した残り117人のうち30人は体調を理由に職務が変わるか就業時間が短くなっていました。精神的・経済的影響も大きく、488人のうち約半数(238人)は体調について気に病んでおり、179人は経済的逼迫を少なくともいくらか被っていました。COVID-19入院患者は退院後も負担を長く引きずり、敗血症や重度呼吸器ウイルス疾患の後遺症と一致する経過を辿ることを今回の結果は裏付けています。幸い今回の試験の患者の大半は退院後に一般診療で診てもらっていましたが、5人に1人はそうしておらず、COVID-19入院を経て暮らす人を支援するより一層の取り組みが必要と著者は言っています。今回の結果は日本のCOVID-19入院患者にそのままあてはまるものではないと思いますが、敗血症等と同様に重症のCOVID-19入院患者に退院後の手当ての筋道を提供することは大きな支えになるに違いありません。参考1)Sixty-Day Outcomes Among Patients Hospitalized With COVID-19 / Eurekalert2)Chopra V, et al. Ann Intern Med. 2020 Nov 11. [Epub ahead of print]

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統合失調症の日本人高齢者に対するブレクスピプラゾールの長期有効性、安全性

 東京女子医科大学の稲田 健氏らは、統合失調症の日本人高齢者に対するブレクスピプラゾールの長期的な有効性、安全性、忍容性を評価するため、検討を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年10月6日号の報告。 4週間の切り替え期間と52週間の非盲検期間の2つのフェーズで構成された56週間にわたるブレクスピプラゾール長期試験の事後分析を行った。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの平均変化量、治療反応率、治療中に発現した有害事象(TEAE)の数と発生率、その他の安全性パラメータの分析には、年齢層ベース(65歳以上の高齢者と65歳未満の非高齢者)の記述統計学を用いた。 主な結果は以下のとおり。・208例中33例が高齢者であった。・高齢者の治療継続率は54.5%であり、56週目のブレクスピプラゾールの1日投与量および治療期間は、非高齢者と同様であった。・ベースラインから56週目までのPANSS合計スコアの平均変化量は、高齢者で-13.8であり、非盲検期間を通じて改善効果は維持された。・非高齢者のPANSS合計スコアの平均変化量は-9.0であり、高齢者と同等であった。・TEAEの発生率は、高齢者で97.0%、非高齢者で82.3%であった。・高齢者におけるTEAEの重症度は、ほとんどが軽度(75.8%)または中等度(18.2%)であり、治療中止に関連するTEAEの発生率は、非高齢者(13.1%)よりも高齢者(9.1%)のほうが低かった。・高齢者における主な有害事象は、鼻咽頭炎(30.3%)、統合失調症症状の悪化(27.3%)であった。・安全性プロファイルは、高齢者と非高齢者で類似していた。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、日本人高齢者の統合失調症治療に対し安全かつ効果的であることが示唆された」としている。

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内視鏡検査・治療法の選択肢広がる―『大腸ポリープ診療ガイドライン2020』

 日本人のがん死亡数を部位別にみると、大腸がんは女性で1位、男性で3位となっている(男女合わせると第2位)。 早期発見・早期の適切な治療により完治を目指せるが、欧米諸国と比較すると検診受診率が大幅に低く、死亡数は増加が続いている。今年6月に6年ぶりに改訂された日本消化器病学会編『大腸ポリープ診療ガイドライン2020』(改訂第2版)では、新たなスクリーニング手法として大腸カプセル内視鏡検査、内視鏡治療法としてcold snare polypectomy(CSP)が加わり、検査・治療における選択肢が広がっている。ガイドライン作成委員長を務めた田中 信治氏(広島大学病院内視鏡診療科 教授)に、大腸ポリープ診療ガイドライン2020の改訂のポイントについてインタビューを行った(zoomによるリモート取材)。 今回の大腸ポリープ診療ガイドライン2020の改訂ではCQ(clinical question)として推奨文を明記するのは「診療において複数の選択肢がある」18項目に絞り、すでに結論が明らかなものはBQ(background question)として整理された(57項目)。また、エビデンスが存在せず、今後の研究課題であるものとして3項目のFRQ(future research question)が設定されている。大腸ポリープ診療ガイドライン2020に大腸カプセル内視鏡検査が掲載 大腸カプセル内視鏡検査が2014年1月に保険収載され、今回の大腸ポリープ診療ガイドライン2020にも掲載されている。検査に伴う苦痛がなく、病変発見の感度・特異度も高く非常に有用だが、カプセル自体が高額であり、保険適用の範囲は限定的となっていた。しかし、ガイドライン投稿後の2020年4月には適用が拡大され、高血圧症や慢性閉塞性肺疾患、高度肥満症等を有し、身体的負担により大腸内視鏡が実施困難であると判断された患者が新たに対象となり適応がやや拡大された1)。 田中氏は「検診を受診しない理由として、身体的な負担感の大きさや恥ずかしさを挙げる人も多い」と話し、腸内を空にするための前処置は必要なもののカプセルを飲むだけで簡便であり、手術や薬物療法なども含めたがん診療全体の医療経済学的バランスを評価した上で、便潜血で異常が出た場合の精査には活用可能にしていくべきではないかと考えていると展望を示した。ポリープ型腺腫は5mm以下でも切除を弱く推奨、新たな手技としてCSPを追加 ポリープ型腺腫の内視鏡切除に関して、旧版の大腸ポリープ診療ガイドラインでは6mm以上の病変は切除を推奨するものの5mm以下については原則経過観察とされていた。しかし改訂版では、5mm以下の場合も切除を弱く推奨、と変更されている。なお、陥凹型腫瘍では大きさにかかわらず切除が強く推奨される。 欧米ではポリープ型腺腫でも大きさによらない内視鏡切除が標準的だが、日本の場合は診断がしっかりなされており、良性の判断も高い精度で行われていることが背景にある。田中氏は、「腺腫の数が多すぎて一度にとりきれない、あるいは検診施設の状況などでとりきれないといったケースもありえる」とし、5mm以下の病変では経過観察も容認されるという位置づけで、ケースバイケースの判断をして欲しいと話した。 また、大腸ポリープ診療ガイドライン2020の変更点として、内視鏡治療の新しい手技としてcold foceps/snare polypectomyが加わったことがある。後出血や合併症が少なく、穿孔リスクが低く、手技としても非常に簡便なため、広く使われるようになってきている。cold snare polypectomyは10mm未満の非有茎性腺腫に適応となるが、粘膜下層は切除できないためがん(と陥凹型病変)に対しては禁忌となる。同氏は「CSPの適応を決めるためには、術前の内視鏡診断が非常に重要」とし、画像強調拡大観察やpit pattern診断はほぼ必須の時代となってきていると話した。診断や治療後サーベイランスに有用な指標の活用を 画像強調観察併用拡大内視鏡検査について、診断における有用性を示すエビデンスが蓄積されてきている。今回の大腸ポリープ診療ガイドライン2020ではNBI拡大観察における統一的な診断指標として、日本発のJNET分類が掲載された。この分類はBLI併用拡大観察でも使用が可能で、治療法選択のための指針とすることができる。 内視鏡切除後のサーベイランスの考え方については、3年以内のサーベイランスが弱く推奨されているが、日本発のエビデンスはまだ十分ではなく、Japan Polyp Studyの長期データが待たれる。しかし海外のデータではあるが、初回の治療病変の臨床病理学的所見に基づくadvanced neoplasiaの累積発生率がオッズ比として報告されており、大腸ポリープ診療ガイドライン2020改訂版ではこの結果も掲載されている。田中氏は「初回の治療病変の臨床病理学的所見に基づくリスク評価にぜひ活用してほしい」と話し、内視鏡・臨床病理学的所見のほか、家族歴や炎症性腸疾患等の既往歴、治療歴といった1人1人の背景に基づく判断が重要とした。 内視鏡的粘膜切除術 (EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、hot polypectomyに今回のcold polypectomyが加わり、治療の選択肢が増えたことで、より術前診断の重要性が増していると同氏。不要な手術や、再発への必要以上の不安をなくすために、まずは術前精査をしっかり行って、正しい診断・それに基づいた適切な治療につなげていってほしいと話した。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用NSCLC1次治療、日本人の結果(CheckMate-227)/日本肺癌学会

 第61回日本肺癌学会学術集会においてがん研有明病院の西尾 誠人氏が非小細胞肺がん(NCSLC)1次治療CheckMate-227試験Part1の3年フォローアップデータから、ニボルマブ・イピリムマブ併用の日本人サブセットの分析結果を発表した。ニボルマブ+イピリムマブ療法を日本人においても支持する結果・対象:未治療のPD-L1発現1%以上(Part1a)および1%未満(Part1b)のStageIVまたは再発NSCLCの初回治療患者(PS 0~1、組織型問わず)・試験群:ニボルマブ+イピリムマブ群     ニボルマブ単剤群(TPS1%以上)     ニボルマブ+化学療法群(TPS1%未満)・対照群:化学療法(組織型により選択)単独群・評価項目:[複合主要評価項目]高TMB(≧10/メガベース)患者におけるニボルマブ+イピリムマブ群対化学療法単独群の無増悪生存期間(PFS)、PD-L1発現(≧1%)患者におけるニボルマブ+イピリムマブ群対化学療法単独群の全生存期間(OS)[副次評価項目]高TMB(≧13/メガベース)かつPD-L1発現(TPS1%以上)患者におけるニボルマブ単剤群対化学療法単独群のPFS、高TMB(≧10/メガベース)患者におけるニボルマブ+化学療法群対化学療法単独群のOS、PD-L1なしまたは低発現(TPS1%未満)患者におけるニボルマブ+化学療法群対化学療法単独のPFS、そのほか奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性など NCSLC1次治療試験でニボルマブ・イピリムマブ併用の日本人を分析した主な結果は以下のとおり。・日本人PD-L1≧1%集団のOS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群未達に対し化学療法単独群は28.9ヵ月(HR:0.77、3年OS率は56%対45%)であった。この集団のニボルマブ+イピリムマブ群の日本人OSはグローバル(17.1ヵ月)に比べて良好であった。・日本人全集団のOS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群48.8ヵ月に対し化学療法単独群は24.9ヵ月(HR:0.63、3年OS率は56%対36%)であった。この集団のニボルマブ+イピリムマブ群の日本人OSはグローバル(17.1ヵ月)、アジア人(36.2ヵ月)に比べて良好であった。・日本人PD-L1≧1%集団のPFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群19.4ヵ月に対し化学療法単独群6.7ヵ月((HR:0.64、3年PFS率は33%対14%)であった。この集団のニボルマブ+イピリムマブ群の日本人PFSはアジア人(11.0ヵ月)に比べても良好であった。・日本人全集団のPFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群11.1ヵ月に対し化学療法単独群5.6ヵ月(HR:0.65、3年PFF率は25%対9%)であった。この集団のニボルマブ+イピリムマブ群の日本人PFSはアジア人(8.5ヵ月)に比べても良好であった。・日本人PD-L1≧1%集団のORRはニボルマブ+イピリムマブ群は63%に対し化学療法単独群40%であった。この集団のニボルマブ+イピリムマブ群の日本人ORRはグローバル(36%)、アジア人(56%)に比べて良好であった。・日本人全集団のORRはニボルマブ+イピリムマブ群53%に対し化学療法単独群36%であった。ニボルマブ+イピリムマブ群の日本人ORRはグローバル(33%)、アジア人(48%)に比べて良好であった。・ニボルマブ+イピリムマブ群の治療関連有害事象(TRAE)の全Gradeの発現は日本人96%、グローバル77%、アジア人87%、Grade3〜4のTRAEは日本人54%、グローバル33%、アジア人40%と、日本人で高い傾向にあった。今回の解析結果はグローバル、アジア人と同様、日本人においても進行NSCLCの1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブ療法を支持するものだとしている。

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高血圧や2型DM合併の肥満、オンラインプログラム+PHMが有効/JAMA

 高血圧または2型糖尿病を有する過体重/肥満の患者では、プライマリケア施設による集団健康管理(population health management:PHM)とオンライン体重管理プログラムを組み合わせたアプローチは、オンラインプログラム単独および通常治療単独と比較して、12ヵ月後の減量効果が、差は小さいものの統計学的に有意に優れることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のHeather J. Baer氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年11月3日号で報告された。わずかな体重減少(たとえば3~5%)であっても、重要な健康上の利益をもたらす可能性があることから、米国の診療ガイドラインでは、肥満および過体重の患者の生活様式への介入や助言が推奨されているが、プライマリケア医は時間の制約や研修、医療システムが原因で、患者と体重に関する話し合いをしないことが多いという。また、オンラインプログラムはプライマリケアにおいて効果的で、費用対効果が優れる可能性が示されているが、日常診療での有効性や拡張性は不明とされる。米国の24の診療所が参加した3群クラスター無作為化試験 本研究は、PHMとオンライン体重管理プログラムの併用による介入の減量効果を、オンラインプログラム単独および通常治療単独と比較する3群クラスター無作為化試験であり、米国の15のプライマリケア施設(合計24の診療所、約170人のプライマリケア医)が参加し、2016年7月~2017年8月の期間に患者登録が行われた(患者中心アウトカム研究所[PCORI]の助成による)。 対象は、年齢20~70歳、プライマリケア施設を受診予定で、BMIが27~40であり、高血圧または2型糖尿病の診断を受けている患者であった。通常治療群には、体重管理に関する一般的な情報が郵送された。オンラインプログラム単独群と併用介入群の参加者は、BMIQと呼ばれるオンラインプログラムに登録された。併用介入群は、さらに体重に関連するPHMを受けたが、これにはオンラインプログラムの進捗状況を監視し、定期的にアウトリーチを行うプライマリケア施設の非臨床系の職員による支援が含まれた。 主要アウトカムは、12ヵ月の時点における電子健康記録(EHR)に記載された数値に基づく体重の変化とした。副次アウトカムは18ヵ月時の体重変化であった。併用介入群の約3分の1が5%以上の減量を達成 3つの群にそれぞれ8つの診療所が割り付けられた。840例(平均年齢59.3[SD 8.6]歳、女性60%、白人76.8%)が登録され、通常治療群は326例、オンラインプログラム単独群は216例、併用介入群は298例であった。このうち732例(87.1%)で12ヵ月後の体重が記録されており、残りの患者の欠損データは多重代入法で補完された。ベースラインの平均体重はそれぞれ92.3kg、91.4kg、92.1kgだった。 12ヵ月の時点における体重の変化の平均値は、通常治療群が-1.2kg(95%信頼区間[CI]:-2.1~-0.3)、オンラインプログラム単独群が-1.9kg(-2.6~-1.1)、併用介入群は-3.1kg(-3.7~-2.5)であり、有意な差が認められた(p<0.001)。併用介入群と通常治療群の体重変化の差は-1.9kg(97.5%CI:-2.9~-0.9、p<0.001)、併用介入群とオンラインプログラム単独群の体重変化の差は-1.2kg(95%CI:-2.2~-0.3、p=0.01)であった。 また、12ヵ月時の体重の変化の割合は、通常治療群が-1.4%(95%CI:-2.3%~-0.6%)、オンラインプログラム単独群が-1.9%(-2.8~-1.0)、併用介入群は-3.0%(-3.8~-2.1)であった(p<0.001)。12ヵ月時に5%以上の減量を達成した患者の割合は、それぞれ14.9%、20.8%、32.3%だった(p<0.001)。 18ヵ月の時点における体重変化の平均値は、通常治療群が-1.9kg(95%CI:-2.8~-1.0)、オンラインプログラム単独群が-1.1kg(-2.0~-0.3)、併用介入群は-2.8kg(-3.5~-2.0)であり、有意差がみられた(p<0.001)。併用介入群と通常治療群の体重変化の差は-0.9kg(-1.9~0.2、p=0.10)、併用介入群とオンラインプログラム単独群の体重変化の差は-1.6kg(-2.7~-0.5、p=0.003)であった。 著者は、「これらの知見の一般化可能性、拡張性、持続性を理解するために、さらなる研究を要する」としている。

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ホルモン補充療法の乳がんリスク、治療法と期間で異なる/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らの同国コホート内症例対照研究で、ホルモン補充療法(HRT)の乳がんリスクのレベルは、HRTの種類により異なり、併用療法および長期投与で高いことが示された。ただし、メタ解析と比較し、長期のHRTに関連した乳がんのリスク増加は小さく、治療の中止でリスクは顕著に低下することも示されている。先行研究では、長期的なHRTは乳がんのリスク増加と関連しており、治療中止後はリスク増加が減るものの数年間はリスクが高いままであることが、また最近の大規模メタ解析ではHRTに関連した乳がんリスクが予想よりも高いことが示されていた。BMJ誌2020年10月28日号掲載の報告。治療法と期間別に乳がんリスクをコホート内症例対照研究で評価 研究グループは、異なるHRTの種類および投与期間と乳がんリスク増大との関連を評価するため、英国のプライマリケア研究データベース、QResearchおよびClinical Practice Research Datalink(CPRD)のデータを用いたコホート内症例対照研究を行った。これらのデータベースは、入院、死亡、社会的剥奪およびがん登録(QResearchのみ)と連携している。 解析対象は、1998~2018年の期間に乳がんの初回診断を受けた50~79歳の女性9万8,611例(症例群)、およびこの集団と年齢、一般診療、index dateを一致させた女性45万7,498例(対照群)であった。 主要評価項目は、一般診療記録、死亡記録、入院記録、がん登録に基づく乳がんの診断とし、HRTの種類ごとに患者背景、喫煙状況、アルコール摂取、併存疾患、家族歴、他の処方薬で補正したオッズ比(OR)を算出し評価した。長期のエストロゲン単独療法とエストロゲン+プロゲステロン併用療法で増加 症例群3万3,703例(34%)および対照群13万4,391例(31%)が、index dateの1年前にHRTを受けていた。 HRT使用歴なしと比較し、最近(過去5年未満)の長期(5年以上)使用者では、エストロゲン単独療法(補正後OR:1.15、95%信頼区間[CI]:1.09~1.21)およびエストロゲン+プロゲステロン併用療法(1.79、1.73~1.85)のいずれも乳がんのリスク増加と関連していた。併用するプロゲステロンについては、乳がんのリスク増加はノルエチステロンが最も高く(1.88、1.79~1.99)、ジドロゲステロンが最も低かった(1.24、1.03~1.48)。 過去(5年以上前)のエストロゲン単独療法の長期使用、および過去の短期(5年未満)エストロゲン+プロゲステロン併用療法は、乳がんのリスク増加との関連は認められなかった。しかし、過去の長期エストロゲン+プロゲステロン併用療法では乳がんのリスクは高いままであった(補正後OR:1.16、95%CI:1.11~1.21)。 HRT使用歴なしと比較した乳がん発症例の増加(1万人年当たり)は、最近のエストロゲン単独療法使用者では3例(若年女性)~8例(高齢女性)、最近のエストロゲン+プロゲステロン併用療法使用者では9例~36例、過去のエストロゲン+プロゲステロン併用療法使用者では2例~8例と予測された。 結果を踏まえて著者は、「われわれの研究は、英国におけるさまざまなHRTの使用と乳がんリスク増大に関する一般化可能な新たな推定値を提供するものである」と述べている。

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リアルワールドにおけるSGLT2阻害薬の有用性(解説:住谷哲氏)-1315

 SGLT2阻害薬のCVOTとしては腎関連エンドポイントを主要評価項目としたCREDENCEを除けば、エンパグリフロジンのEMPA-REG OUTCOME、カナグリフロジンのCANVAS Program、ダパグリフロジンのDECLARE-TIMI 58、ertugliflozinのVERTIS-CVの4試験がこれまでに報告されている。またそれらのメタ解析もすでに報告され、2型糖尿病患者の心不全による入院の抑制および腎保護作用はほぼ確立した感がある。しかしランダム化比較試験であるCVOTの結果を解釈するときに常に問題となるのは、試験結果の一般化可能性(generalizability)である。 一般化可能性は有用性(effectiveness)と言い換えてもよいが、この点を補完する目的で最近ではリアルワールドデータが注目されている。ダパグリフロジンのCVD-REAL、エンパグリフロジンのEMPRISE(中間解析のみ報告あり)がこれまでに報告されているが、それぞれ製薬企業主導の解析であり、すべてのSGLT2阻害薬を対象としたものではない。その点でエンパグリフロジン、カナグリフロジンおよびダパグリフロジンのリアルワールドにおける有用性を検討した本論文は興味深い。 本論文はカナダの研究機関のネットワークであるCNODES(Canadian Network for Observational Drug Effect Studies)からの報告である。DPP-4阻害薬を対照としてSGLT2阻害薬のリアルワールドにおけるeffectivenessを検討したものであるが、リアルワールドデータから因果関係を推測するためにはbiasをいかに処理するかが問題となる。とくに「驚くほどの有効性」(surprisingly beneficial drug effects)を示すことにつながるとされるimmortal time biasの処理が重要であるが、本論文ではprevalent new user design(これを開発したのが共著者のSamy Suissaである)を用いてこの点をクリアしている。結果は、MACE、心不全による入院、全死亡のすべてがSGLT2阻害薬投与群においてDPP-4阻害薬投与群に比較して有意に減少していた。MACE、心不全による入院の減少は、年齢(70歳以上かそれ未満か)、ASCVDの既往の有無、心不全の既往の有無、投与されたSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン)にかかわらず一貫して認められた。一方で全死亡の抑制についてはASCVDの既往を有する患者において、有意ではないがより顕著である傾向が認められた。 心血管イベント抑制の観点からは、DPP-4阻害薬に対するSGLT2阻害薬の優越性はリアルワールドにおいてもほぼ確実であろう。最近発表されたertugliflozinのVERTIS-CVの結果が他のSGLT2阻害薬のCVOTの結果と異なっていたことから、各SGLT2阻害薬の薬剤特異的効果の存在が議論されている。しかしリアルワールドにおいてはエンパグリフロジン、カナグリフロジンおよびダパグリフロジンの薬剤特異的効果は認められなかった。各薬剤間でのhead to headの試験が実施されるまではSGLT2阻害薬のクラスエフェクトと考えるのが妥当と思われる。

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高齢者AML VIALE-A試験 Oncologyインタビュー【Oncologyインタビュー】第23回

高齢者および合併のため強力な寛解導入療法が適用できない急性骨髄性白血病(AML)に対しては治療選択肢が限定されている。そのような中、上記患者に対するBCL-2阻害薬ベネトクラクスと脱メチル化薬アザシチジン併用療法の有望な結果を示した第III相VIALE-A試験の結果がNew England Journal of Medicine誌に発表された。著者の一人である愛知県がんセンターの山本一仁氏に試験の実施背景、結果、臨床応用について聞いた。―試験に至る背景(AMLの状況)について教えていただけますか。高齢者の急性骨髄性白血病(AML)では、治療侵襲が高い3+7療法*のような強力寛解導入療法ができません。こういった場合、低用量Ara-C、わが国ではCAG療法**を行っていますが、生存期間は数ヵ月~1年前後だと思います。さらに、こういった治療すら適用できず、輸血などBSCとなるケースも少なくありません。このように、高齢者のAMLは非常に予後が限られているのが現状です。*3+7療法:3日間のアントラサイクリン系抗がん剤と7日間のシタラビンを組み合わせた治療法**CAG療法:14日間の低用量(100mg/m2)Ara-C、アクラルビシン、G-CSFを組み合わせた治療法―高齢者AMLの治療法の進化について教えていただけますか。高齢者AMLの治験は以前から行われていますが、治療成績の向上はみられませんでした。試験の対象患者にもよりますが長期生存は1~2割程度です。治療の成績向上は喫緊の課題だといえます。その点、分子標的薬は高い忍容性と有効性が期待できますので、高齢者AMLの良い適用になると思われます。―VIALE-A試験では、アザシチジンとベネトクラクスを併用していますが、この併用にはどのような意味があるのでしょうか。がん細胞はアポトーシス阻害が促進しており、抗アポトーシス蛋白であるBCL-2およびBCL-2ファミリーは、そこに大きな役割を担っています。AMLをはじめとする多くの造血器腫瘍でもBCL-2が過剰発現しています。ベネトクラクスはBCL-2を選択的に阻害する分子標的薬です。しかし、ベネトクラクス単剤では十分な効果が得られていません。その理由として、MCL-1など他のBCL-2ファミリーの抗アポトーシス蛋白が働いていることが基礎データでわかっています。それを補うために、ベネトクラクスにアザシチジンや低用量Ara-Cを上乗せする方法が検討されました。Ara-CはDNA合成を阻害することでアポトーシスを誘導します。すでにVIALE-C試験としてAra-Cとベネトクラクスとの併用試験が行われています。一方、アザシチジンは、明確な機序は解明されていませんが、エピジェネティックの異常を修復してアポトーシスを促進するとされます。欧米ではすでにアザシチジンの高齢者AMLへの有効性が認められ、高齢者AMLの治療の標準薬となっています。多くの第III相試験の対照薬となっているほどです。このアザシチジンとベネトクラクスの併用は第I/II相試験で有効性が報告されており、今回は第III相試験で有用性を確認することとなったものです。VIALE-A試験の概要多施設無作為化二重盲検第III相試験対象:75歳以上または75歳以下で合併症を有し標準的な寛解導入療法が実施できないAML試験群:アザシチジン(75mg/m2 day1~7)+べネトクラクス(100mg day1、200mg day2~3、day28までに400mgまで増量)+プラセボ 28日ごと。day28以降は400mgから開始対照群:アザシチジン 75mg/m2 day1~7 28日ごと評価項目:[主要評価項目]OS、[副次評価項目]CR+CR-i率主な結果2017年2月6日~2019年5月31日、579例がスクリーニングされ、433例が無作為割り付けの対象に、431例がITT解析の対象となった。上記431例はアザシチジン+べネトクラクス群286例とアザシチジン群145例に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値は20.5ヵ月であった。OS中央値は14.7ヵ月対9.6ヵ月と、アザシチジン+べネトクラクス群で良好であった(HR:0.66、95%CI:0.52~0.85、p<0.001)。複合CR率は66.4%対28.3%、p<0.001。―この試験結果は、どのように解釈できますか。9.6ヵ月というアザシチジンのOSは標準的なものです。この5ヵ月の延長は重要だと思います。単に期間が延長したというだけではありません。このレジメンでは、患者さんの活動度が保たれ、普通の活動ができる良好なQOLが維持されています。そういう点でも、意味のある生命予後の改善だと思います。―それは、この併用レジメンの忍容性の高さから来ることなのでしょうか。この併用では、好中球減少やFNの頻度が高くなりますが、つらい有害事象は少なく、QOLへの影響は少ないと思います。また、この併用レジメンは、アザシチジン投与の1週間だけ入院していただきますが、その後の3週間は退院して過ごしていただきます。患者さんの状況によっては、外来治療さえ可能かもしれません。―この有効性の結果は、3+7療法に比べても遜色ない数字でしょうか?3+7療法のCR、CR-i率は、欧米だと6割、日本だと7割くらいです。ですので、CR+CR-i率については、3+7療法とほとんど変わらないと思います。しかし、このレジメンでは経時的にOSが下がってしまい、若年者に比べ予後は不良です。OSを改善するための寛解維持療法の開発が、今後の課題だといえます。―試験の結果をどう臨床応用していけばよいでしょうか。アザシチジン+ベネトクラクスはOSが延びますので、当然ながら、高齢者や合併症で強力な寛解導入療法が使えない患者さんへの有望な治療選択肢になると思います。ただし、好中球減少、FN、腫瘍崩壊症候群(TLS)のリスクがありますので、十分な観察と用量を1日ずつ上げていくなどの規則を順守していけば、寛解導入療法として安全に行えるのではないかと思います。一方で、今回の試験のサブ解析ではTP53変異例でも効果を示していますので、予後不良の患者さんでも、CRを得るには良い治療法ではないかと思っています。今後は若年者への適応拡大を行うような検討をすべきだろうと思います。―読者の方々にメッセージをお願いします。長い間、高齢者のAMLの治療は改善を得られませんでした。AMLの3+7療法は30年前のレジメンです。そのような中、今回の試験のように、有効な分子標的薬による治療が開発されています。まだまだ検討は必要ですが、今後出てくるさまざまな分子標的薬が、治療成績を改善していくことが期待されます。原著Azacitidine and Venetoclax in Previously Untreated Acute Myeloid Leukemia.N Engl J Med.2020;383:617-629.

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がん患者、抗凝固薬の中止時期を見極めるには/日本癌治療学会

 がん患者は合併症とどのように付き合い、そして医師はどこまで治療を行うべきか。治療上で起こりうる合併症治療とその中止タイミングは非常に難しく、とりわけ、がん関連血栓症の治療には多くの腫瘍専門医らは苦慮しているのではないだろうかー。 10月23日(金)~25日(日)にWeb開催された第58回日本癌治療学会学術集会において、会長企画シンポジウム「緩和医療のdecision making」が企画された。これには会長の弦間 昭彦氏の“decision makingは患者の治療選択時に使用される言葉であるが、医療者にとって治療などで困惑した際に立ち止まって考える機会”という思いが込められている。今回、医師のdecision makingに向けて発信した赤司 雅子氏(武蔵野赤十字病院緩和ケア内科)が「合併症治療『生きる』選択肢のdecision making-抗凝固薬と抗菌薬-」と題し、困惑しやすい治療の切り口について講演した。本稿では抗凝固療法との向き合い方にフォーカスを当てて紹介する。医師のバイアスがかからない意思決定を患者に与える がん治療を行いながら並行して緩和医療を考える昨今、その場に応じた1つ1つの細やかな意思決定の需要性が増している。臨床上のdecision makingは患者のリスクとベネフィットを考慮して合理的に形成されているものと考えられがちであるが、実際は「多数のバイアスが関係している」と赤司氏は指摘。たとえば、医師側の合理的バイアス1)として1)わかりやすい情報、2)経験上の利益より損失、3)ラストケース(最近経験した事柄)、4)インパクトの大きい事象、などに左右される傾向ある。これだけ多数のバイアスのかかった情報を患者に提供し、それを基にそれぞれが判断合意する意思決定は“果たして合理的なのかどうか”と疑問が残る。赤司氏は「患者にはがん治療に対する意思決定はもちろんのこと、合併症治療においても意思決定を重ねていく必要がある」と述べ、「とくに終末期医療において抗凝固薬や抗菌薬の選択は『生きる』という意味を含んだ選択肢である」と話した。意思決定が重要な治療―がん関連血栓症(CAT) 患者の生死に関わる血栓症治療だが、がん患者の血栓症リスクは非がん患者の5倍も高い。通常の血栓症の治療期間は血栓症の原因が可逆的であれば3ヵ月間と治療目安が明確である。一方、がん患者の場合は原因が解決するまでできるだけ長期に薬物治療するよう現時点では求められているが、血栓リスク・出血リスクの両方が高まるため薬剤コントロールに難渋する症例も多い。それでも近年ではワーファリンに代わり直接経口抗凝固薬(DOAC)が汎用されるようになったことで、相互作用を気にせずに食事を取ることができ、PT-INR確認のための来院が不要になるなど、患者側に良い影響を与えているように見える。 しかし、DOACのなかにはP糖タンパクやCYP3A4に影響する薬物もあることから、同氏は「終末期に服用機会が増える鎮痛剤や症状緩和の薬剤とDOACは薬物相互作用を起こす。たとえば、アビキサバンとデキサメタゾンの併用によるデキサメタゾンの血中濃度低下、フェンタニルやオキシコドン、メサペインとの相互作用が問題視されている。このほか、DOACの血中濃度が2~3倍上昇することによる腎機能障害や肝機能障害にも注意が必要」と実状を危惧した。DOACの調節・中止時の体重換算は今後の課題 また、検査値指標のないDOACは体重で用量を決定するわけだが、悪液質が見られる場合には筋肉量が低下しているにも関わらず、浮腫や胸水、腹水などの体液の貯留により体重が維持されているかのように見えるため、薬物投与に適した体重を見極めるのが難しい。これに対し、同氏は「自施設では終末期がん患者の抗凝固療法のデータをまとめているが、輸血を必要としない小出血については、悪液質を有する患者で頻度が高かった。投与開始時と同量の抗凝固薬を継続するのかどうか、検証するのが今後の課題」と話した。また、エドキサバンのある報告2)によると、エドキサバンの血中濃度が上昇しても大出血リスクが上昇するも脳梗塞/塞栓症のリスクは上昇しなかったことから、「DOACの少量投与で出血も塞栓症も回避することができるのでは」とコメント。「ただし、この報告は非がん患者のものなので、がん患者への落とし込みには今後の研究が待たれる」とも話した。 さらに、抗凝固薬の中止タイミングについて、緩和ケア医とその他の医師ではそのタイミングが異なる点3)、抗凝固薬を開始する医師と中止する医師が異なる点4)などを紹介した。 このような臨床上での問題を考慮し「半減期の短さ、体内での代謝などを加味すると、余命が短め週の単位の段階では、抗凝固療法をやめてもそれほど影響はなさそうだが、薬剤選択には個々の状況を反映する必要がある」と私見をまとめ、治療の目標は「『いつもの普段の自分でいられること』で、“decision making”は合理的な根拠を知りながら、その上で個別に考えていくことが必要」と締めくくった。

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医師への謝礼金額がICD/CRT-Dデバイスの選択に大いに影響/JAMA

 植込み型除細動器(ICD)や両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の初回埋め込み手術の94%が、デバイスメーカーから謝礼金を受けている医師によって行われており、さらに、採用されているのはメーカーから執刀医への謝礼金額が最も高いものである可能性が明らかになったという。米国・Yale-New Haven HospitalのAmarnath R. Annapureddy氏らが、3年間で14万5,900例の患者を対象に行った横断調査の結果を報告した。米国では議会法によって2010年に、医薬品等のメーカーから医師への謝礼金については透明性を確保するため報告開示が義務付けられ(Physician Payments Sunshine Act)、ホームページ「The Facts About Open Payments Data」で詳細情報を入手することができるようになっている。これまでの研究で、医師への謝礼がジェネリック医薬品よりも先発医薬品を処方する可能性を高めることが報告されていたが、デバイスを巡っての研究は行われていなかった。JAMA誌2020年11月3日号掲載の報告。医師への謝礼金最高額のデバイス使用率を期待使用率と比較 研究グループは、デバイスメーカーから医師へ支払われた謝礼金と、ICDまたはCRT-Dの初回埋め込み術を受けた患者のデバイス選択との関連を調べる横断研究を行った。対象は、2016年1月1日~2018年12月31日に、主要デバイスメーカー4社が製造したICDまたはCRT-Dの初回埋め込み術を受けた患者。米国心血管データレジストリ(National Cardiovascular Data Registry:NCDR)のICDレジストリと、Open Payments Programのデータをリンクし、調査した。 患者を、執刀医がメーカーから謝礼金を受けていたか否かで2コホートに層別化し、さらに謝礼金授受があった患者コホートを、執刀医が最高額の謝礼金を受け取っていたデバイスメーカー別(A~D社)に4群に分類した。各群で、実際に最高額の謝礼金が医師に支払われていたメーカー製デバイスが使われていた患者の割合(使用率)を算定し、そのうえで、被験者全体の該当デバイスの使用割合(期待使用率)との絶対差を求めた。医師への謝礼金最高額のデバイス使用率、期待使用率との差は15~31% 3年間で、14万5,900例の患者がICDまたはCRT-Dの埋め込み術を受けていた。被験者の年齢中央値は65歳、女性は29.6%だった。被験者がICD/CRT-Dの初回埋め込み術を行った施設は1,763ヵ所で、執刀医は4,435人だった。執刀医のうち、デバイスメーカーから謝礼金を受けていたのは4,152人(94%)で、金額は2ドル~32万3,559ドル(中央値:1,211ドル、四分位範囲:390~3,702ドル)だった。 執刀医に最高額の謝礼金を支払ったメーカー製デバイスが使われていた各群の患者の割合(使用率)は、A群のA社製使用率は45.4%、B群のB社製使用率は54.7%、C群のC社製使用率は47.7%、D群のD社製使用率は38.5%だった。 いずれも同一群における他社製デバイスの使用率より高率で、患者は個々のメーカーからというよりも、執刀医に最高額の謝礼金が支払われているメーカーからデバイスを受ける可能性が大幅に高かった。各群の使用率と、期待使用率との絶対差は、A群は22.4%(95%信頼区間[CI]:21.9~22.9)、B群は14.5%(14.0~15.0)、C群は18.8%(18.2~19.4)、D群は30.6%(30.0~31.2)だった。

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COVID-19パンデミック前後、遠隔皮膚科診療は3倍増に

 本邦のコロナ禍における受診動向の変化については、2020年8月6日の「第10回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で、「令和2年4月~6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証について」が発表され耳目を集めた。電話またはオンライン診療の受診者は10歳未満が最も多く、ほかの年齢では発熱での受診が最多であったが、10歳未満の受診は湿疹が最多(22.7%)で、受診科目は内科、小児科に次いで皮膚科が3番目だったことなどが報告されている。 本論は、COVID-19感染者数が米国に次いで現在世界第2位の、インド・R.D. Gardi Medical CollegeのShashank Bhargava氏らが、ウェブベースでグローバルに皮膚科医に診療形態の変化について行ったサーベイ調査の結果である。COVID-19パンデミック前後で、teledermatology(遠隔皮膚科診療:TD)の活用が3倍増になったことなどが報告されている。International Journal of Women's Dermatology誌オンライン版2020年10月12日号掲載の報告。 研究グループは、COVID-19パンデミックによる皮膚科診療の変化の大きさについては、十分に研究がされていないとして、同パンデミックの皮膚科診療への即時的および長期的影響を評価する検討を行った。評価対象には、臨床活動、診療行為の頻度および種類、TDの使用などを含んだ。Googleフォームでサーベイツールを作成し、2020年4月1日~20日に、とくに皮膚科専門医のソーシャルメディアサイトの研究者に電子的に配布された。 主要アウトカムは、対面診療、病院サービス、TD、処置の提供に関する回答者の割合。また、パンデミック時および将来的なTDの利用について、オッズ比(OR)に与える可能性がある要因をロジスティック回帰モデルで調べた。 主な結果は以下のとおり。・サーベイに応じた皮膚科医は733例であった。アジア系が47.6%、北米18.7%、中南米17.9%、欧州13.9%、その他1.9%であった。診療歴は10年以下が45.0%を占め、都市部従事者が78.6%、開業医47.2%などであった。・対面診療の提供に関する割合は、パンデミック前100%に対し、パンデミック中は46.6%に減っていた。病院サービスは52.8% vs.27%、処置100% vs.25.6%といずれも減っていた(いずれもp<0.001)。・一方で、TDは、3倍増となっていた(26.1%vs. 75.2%)(p<0.001)。・TD利用率は、パンデミック中および将来利用予測ともに、診療地域と有意に関連しており、とくに北米の回答者で最も高かった(いずれもp<0.001)。・パンデミック中のTD利用は、従前からのTD利用、操作能力、およびとくに色素性病変が疑われる場合の生検と正の相関性がみられた(いずれもp<0.001)。・パンデミック前のTD利用は、パンデミック中のTD利用の最も強力な予測因子であった(OR:16.47、95%信頼区間[CI]:7.12~38.06)。・サーベイ参加者のうち3分の2以上(68.6%)が、将来的にTDを利用するだろうと回答した。・将来的なTD利用予測についてOR増大が最も大きかった要因は、国内のCOVID-19感染者数が1,000例を超えた場合だった(OR:3.80、95%CI:2.33~6.21)。

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