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EGFR-TKI抵抗性NSCLC、HER3-DXd最新データ(U31402-A-U102)/日本臨床腫瘍学会

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)抵抗性のEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、抗HER3抗体薬物複合体patritumab deruxtecan(HER3-DXd)を投与したU31402-A-U102試験について、最新の結果が報告された。2023年3月16日~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で近畿大学病院の林 秀敏氏が発表した。 HER3はHERファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)であり、ホモダイマーを形成することはできず、ヘテロダイマーを形成することにより、対となるRTKを活性化するとされている。主にHER2とヘテロダイマーを形成する1-3)。HER3は、NSCLCでは腫瘍組織の83%に発現し、転移や無再発生存期間(RFS)の短縮に関与していることが報告されている4)。また、EGFR-TKIに対する耐性を獲得すると、HER3の発現量が増加することも示されている5)。なお、抗HER3抗体薬物複合体HER3-DXdは、国内で製造販売承認を取得しているトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)と同じリンカーとペイロードを用いた製剤である。 U31402-A-U102試験6)は、EGFR-TKIによる治療後に病勢進行が認められた進行・転移EGFR変異陽性NSCLC患者を対象とした第I相試験。用量漸増パートと用量拡大パートから構成されている。用量拡大パートでは、第II相試験の推奨用量となったHER3-DXd 5.6mg/kgが3週ごとに投与された(コホート3bを除く)。用量拡大パートは、コホート1~4で構成され、今回はコホート1と3aを統合し、2022年1月28日をデータカットオフ日として解析した結果が報告された。コホート1~3の主要評価項目はRECIST 1.1に基づく客観的奏効率(ORR)であった。各コホートの対象患者とレジメンは以下のとおり。・コホート1:EGFR変異陽性NSCLC(腺がん)、5.6mg/kgを3週ごと・コホート2:EGFR変異陽性(EGFR ex19del、L858R、L861Q、G719Xは除外)NSCLC(扁平上皮がん、非扁平上皮がん)、5.6mg/kgを3週ごと・コホート3a:EGFR変異陽性NSCLC(組織型は問わない。ただし、小細胞がんは除外)、5.6mg/kgを3週ごと・コホート3b:EGFR変異陽性NSCLC(組織型は問わない。ただし、小細胞がんは除外)、3.2~6.4mg/kgの用量で漸増投与・コホート4:EGFR変異陽性NSCLC(組織型は問わない。ただし、小細胞がんは除外)、5.6mg/kgを3週ごと(試験薬は商業生産施設で生産) 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者は102例(日本人16例)で、投与期間中央値は5.5ヵ月(範囲:0.7~27.5)であった。前治療として第3世代EGFR-TKIとプラチナ療法の併用療法を受けた患者(前治療サブグループ)は78例(日本人10例)で、投与期間中央値は5.5ヵ月(範囲:0.7~27.5)であった。・主要評価項目のORRは、解析対象患者全体では40.2%(95%信頼区間[CI]:30.6~50.4)、奏効期間中央値は7.6ヵ月(95%CI:6.9~14.7)であった。前治療サブグループでは、ORRが41.0%(95%CI:30.0~52.7)、奏効期間中央値が11.2ヵ月(95%CI:7.0~推定不能)であった。・全生存期間(OS)中央値は、解析対象患者全体では15.8ヵ月(95%CI:10.8~21.5)、前治療サブグループでは16.2ヵ月(95%CI:11.2~21.9)であった。・無増悪生存期間(PFS)中央値は、解析対象患者全体では6.4ヵ月(95%CI:5.3~8.3)、前治療サブグループでは6.4ヵ月(95%CI:4.4~10.8)であった。・中枢神経系(CNS)転移のある患者(55例)におけるORRは36.4%(95%CI:23.8~50.4)、CNS転移のない患者(47例)では44.7%(95%CI:30.2~59.9)であった。・奏効と治療開始前のHER3の発現量には明確な関連はみられなかった。・Grade3以上の有害事象は76.5%、副作用は56.9%に認められた。重篤な有害事象は50.0%、重篤な副作用は19.6%に認められた。・副作用としての間質性肺疾患(ILD)は8例(7.8%)に認められた(Grade1/2が5例、Grade3が1例、Grade5が2例)。日本人集団では、16例中3例(18.8%)に認められた(Grade1/2が2例、Grade5が1例)。 林氏は「HER3-DXdは複数の前治療を有する進行・転移EGFR変異陽性NSCLC患者において有望な抗腫瘍活性を示した。抗腫瘍活性はHER3の発現量、CNS転移の有無、EGFR-TKI耐性の種類にかかわらず認められた。安全性解析の結果は過去の報告と同様で、管理可能かつ許容可能なプロファイルが確認された」とまとめた。なお、進行・転移EGFR変異陽性NSCLC患者を対象としたHER3-DXdの臨床試験として、第II相試験(HERTHENA-Lung01、NCT04619004)、第III相試験(HERTHENA-Lung02、NCT05338970)が進行中である。■参考文献1)Lyu H, et al. Acta Pharm Sin B. 2018;8:503-510.2)Haikala HM, et al. Clin Cancer Res. 2021;27:3528-3539.3)Tzahar E, et al. Mol Cell Biol. 1996;16:5276-5287.4)Scharpenseel H, et al. Sci Rep. 2019;9:7406.5)Yonesaka K, et al. Clin Cancer Res. 2022;28:390-403.6)U31402-A-U102試験(Clinical Trials.gov)

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再発/転移乳がんへのHER3-DXd、HER2低発現/ゼロでの有効性と日本人での安全性~第I/II相試験サブ解析/日本臨床腫瘍学会

 HER3は乳がんの30~50%に発現しており、HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)のpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)が開発されている。HER3陽性再発/転移乳がんに対する第I/II相U31402-A-J101試験において、本剤の有望な有効性と管理可能な安全性プロファイルを示したことはASCO2022で報告されている。今回、HER2ゼロ(IHC 0)とHER2低発現(IHC 1+、もしくはIHC 2+かつISH-)患者での探索的サブグループ解析と、日本人における安全性について、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で愛知県がんセンターの岩田 広治氏が発表した。 本試験の対象は、HER3陽性の再発/転移乳がん(HR+/HER2-もしくはHR-/HER2-)182例。HER3-DXd(1.6、3.2、4.8、6.4、8.0mg/kg)を3週間ごとに静脈内投与し、dose expansion phaseでは4.8mg/kgまたは6.4mg/kgを投与した。有効性についてはHR(+/-)とHER2(低発現/ゼロ)によるサブグループ別に奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)などを評価し、安全性については実施国別(日本142例、米国40例)および用量別に解析した。 今回のサブグループ解析における主な結果は以下のとおり。・サブグループごとのORR、DOR中央値、PFS中央値(95%信頼区間)は以下のとおりで、多くの治療歴がある再発/転移乳がん患者に対して、HER2発現(低発現/ゼロ)にかかわらず有効性が示された。<HR+> HER2低発現(58例):36.2%、7.2ヵ月、5.8ヵ月(4.1~8.5) HER2ゼロ(39例):28.2%、7.0ヵ月、8.2ヵ月(5.8~9.1)<HR->  HER2低発現(29例):20.7%、4.1ヵ月、4.4ヵ月(2.6~5.6) HER2ゼロ(19例):26.3%、8.4ヵ月、8.4ヵ月(3.9~13.9)・有害事象は、間質性肺炎(ILD)が日本でのみ12例(8.5%)に認められた。Grade5が1例、それ以外の11例はGrade3以下だった。ILD以外の有害事象は日米で同様だった。 これらの結果について、岩田氏は「これらのデータは、再発/転移乳がん治療のオプションとして、またHER2+およびHER2低発現乳がんに対する他のADCを含む新たな治療とのシーケンスアプローチにおいて、HER3-DXdのさらなる研究を支持する」とまとめた。

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オールシングスマストパス~高齢者の抗うつ薬の選択についての研究の難しさ(解説:岡村毅氏)

 従来のRCTの論文とはずいぶん違う印象だ。無常(All Things Must Pass)を感じたのは私だけだろうか。この論文、老年医学を専門とする研究者には、突っ込みどころ満載のように思える。とはいえ現実世界で大規模研究をすることは大変であることもわかっている。 順に説明していこう。2種類の抗うつ薬に反応しないものを治療抵抗性うつ病という。こういう場合、臨床的には「他の薬を追加する増強療法」(augmentation)か「他の種類の薬剤への変更」(switch)のどちらを選択するべきかというのは臨床的難問だ。これに対して、うつ病一般においてはSTAR*Dなどの大規模な研究が行われてきた。本研究はOPTIMUM研究と名付けられ、やはりNIH主導で大規模に行われた。 結果であるが、アリピプラゾールの増強療法が比較的優れた効果を示した。とはいえ、ステップ1で比較されているbupropionは本邦未承認であるから日本の臨床家への示唆はあまりない。なおステップ2で比較対象となっているのはリチウムの増強療法とノルトリプチリンへの変更であるが、これらは本邦でも使用できる。 以下は、この論文を批判的に眺めた感想である。 第1にプロトコルがまったく安定していない。途中までステップ2への直接参加が可能になっているが、途中から禁じられた。参加基準も当初PHQ-9で6点以上であったのが、途中から10点以上になっている。さまざまな横やりがあったことが推測される。 第2に参加者は普通に薬局で薬をもらっているので、増強(追加)されているのか変更されているのかがわかってしまう。単純化すると、前者は錠剤が1錠増えるし、後者は増えない。プラセボで良くなる高齢者が多いから、この点は重要だ。 第3に認知機能の検査は一応しているが(supplementaryの隅まで読んでようやく書いてあったが、これは最も重要な点ではないか?)、Short blessed testで10点以上はダメというあまりにも粗い基準だ。さまざまな認知機能の人が含まれているに違いない。 第4に脳梗塞に伴う治療抵抗性うつ病も含まれているはずだが、これはdepression-executive dysfunctionともいい、高齢期のうつ病の難問の一つである。生活障害が大きく、むしろ非薬物治療が効果的とされる。この群は何をやっても変わらないだろうが、期間中に良いデイケアに行き始めたら劇的に回復することだろう。この議論が抜け落ちている。 第5に、アウトカムは「健やかさ」(wellbeing)になっている。これは当事者団体の意見等を反映させたということである。「症状は外から見ると減ったようです、でも本人は苦しいです」というのでは意味がないのだから良いことともいえる。薬剤の効果を症状だけで見るのは「古い」医学者であり、リカバリーのようなより主観的なものが現在好まれる。しかし薬剤の効果をwellbeingで見ることは、拡大した医療化であり、危険をはらんでいると個人的には思っている。というのは、高齢者ではとくにそうだが、さまざまな出来事(人間関係、出会いと別れ、とくに死別、体調、他の疾患の状態など)によりwellbeingは大きく影響を受けるのだ。公平を期すために、この研究でも「社会参加」も測定されていることは述べておく。 第6に、結果的には、bupropion変更組とリチウム増強組では、きちんと定められた分量までいって寛解している者は10%もいないとのことであり、とても低いところで比較しているというのは否めまい。 第7に転倒が多い。対照がないので、高齢者とはそういうものだと言われればそれまでだが、良い結果の治療でも3人に1人は転倒しているし、最も悪い群は55%が転倒している。この研究は増強vs.変更を比較しているので、これを言ってしまうとちゃぶ台返しになってしまうが…「この人はうつ病で、薬で治すべし」という大前提がここでは間違っているんじゃないか。この際、漢方薬に変えて、生活も変えてみてはどうかと提案する(たとえば地域の集まりや運動に行くとか、それこそお寺に行ってみるとか)というのが日本の小慣れた臨床医の対応ではないだろうか。 第8に…これくらいでやめておこう。 僕らはRCTで少しでも科学的に妥当な知見を手に入れて、患者さんにより妥当な治療を提案し、結果的に多くの患者さんを幸せにしたいという根源的な欲求がある。しかし高齢者を対象にしたこの論文を読むと、さまざまな現実のノイズにより、非常に読みにくく、苦しい印象を受けた。RCT、メタアナリシス、さらにネットワークメタアナリシスに心躍らされた時代はもしかしたら、長い歴史の中のそよ風なのかもしれず(Times They Are A-Changin)、無常(All Things Must Pass)を感じる。一方で、批判だけするつもりはない。医療者の主観や勘に頼った時代に戻ってよいわけはない。なんか苦しいなあと思いながら、批判的に読み、そしてこのような大規模研究を苦しみながら遂行した仲間に最大の敬意を払いつつも、この知見が目の前の患者さんに適応できるかどうかを考え続けるしかないのではないか。 考えてみれば、この薬が一番いいですという単純な世界(うつ病ですか、じゃあエスシタロプラムかゾロフトでしょうみたいな)なら、医師なんていらないではないか。目の前の患者さんが、医療の対象にするべきことが何割で、医療が対象にしてはいけないことが何割かを判断する必要があるし、どの見方を採用するか(たとえば高齢者の抑うつ症状なら、感情障害、認知機能障害、脳血管障害といったさまざまな次元がある)を常に選択する必要がある。患者の高齢化に伴い、臨床はより頭を使う仕事になってきたように感じる。

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教育実習で発生したデータ改ざん事件【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第58回

第58回 教育実習で発生したデータ改ざん事件「教育実習中止、いますぐに君は教室を出ていきなさい!」自分が高校生時代に、化学の授業中に大声で響きわたった言葉です。今でも鮮烈に記憶に残る瞬間です。教職志望の学生が、在学中に教育の現場において学習指導法の実地練習のために教育活動を実際に経験することが教育実習です。教育職員免許状の授与を受けるためには、この教育実習が必須です。この教育実習生を「教生」と呼びます。国立大学の教員養成系では、国立大学附属学校で実習を行うことが通常です。自分は金沢大学教育学部附属高等学校の出身なので、教生による授業を多く受けてきました。教生による授業を教室の最後列で聴いていた、本来の高校教員が授業停止を宣言し、その教生は教室から退場させられました。実際には、叩き出されたという表現が適切でした。教生は茫然とした表情でした。彼は何をしでかしたのでしょうか。この化学の講義では、教生が化学実験を教室内で実際に行い、そのデータをもとに考えるという内容でした。中和滴定であったように記憶します。中和滴定とは、濃度が不明な酸(もしくは塩基)でも、中和反応を利用することで、その濃度を求めることができる方法です。濃度がわかっている水酸化ナトリウムとの中和点を測定することで、濃度がわからない硫酸の正しい濃度を求めるというのが中和滴定の具体例です。教生は生徒の前で行った実験で得られた生データを黒板に記していました。この生データをもとに計算をしてみるのですが、想定した通りの結果にはなりませんでした。「このデータを変えてみましょう」こう言って黒板に書かれた生データの数字を、想定される答えが算出されるであろう数値に書き換えたのです。その直後に彼の退場が宣告されました。退場した後に、化学教師は私たち生徒に、以下のように語りました。「実験で得られた生データを自分勝手に改ざんすることは絶対に許されない。データを書き換える者に化学を教える資格はない。附属高校の生徒は教生の犠牲になってはいけない、俺は君たちを守る」、正確な文言までは記憶しておりませんが、このような趣旨の内容であったことは間違いありません。この教生が、教育実習の単位を認定されたのか、不合格となったのか知る由もありません。しかし、この授業で実験に臨む研究者としてのあるべき姿を、私たち生徒が学んだことは事実です。もちろん、この教生に悪気はなかったと思います。張り切って実験の準備をして教育実習に臨み、生徒に中和滴定を教えようと一生懸命であったでしょう。しかし、実験で得られた生データを消して書き換えることは絶対に許されないのです。自分が学んだ高校の、化学の中原 吉晴先生の思い出です。厳しい先生でしたが多くを教えていただきました。中原先生は一流の研究者を創り出すことを自分の仕事と考え、生徒に接していたように思います。すでに鬼籍に入られた中原先生のご冥福をお祈りいたします。文部科学省のガイドラインで不正行為等の定義では、捏造(Fabrication)・改ざん(Falsification)・盗用(Plagiarism)の3つを特定不正行為として位置付けています。捏造は、存在しないデータや研究結果などの作成です。改ざんは、データや研究結果などの加工です。盗用は、他の研究者のアイデアや論文などの流用です。こういった不正行為を行うことは、自身のキャリアや学位を失うだけでは済みません。周囲の関係者に多大な負担をかけることはもちろん、大学や学術に対する社会の信頼を損ないます。自分が所属する滋賀医科大学においても、研究不正防止のために、教育で指導が繰り返し行われています。定期的に研究不正防止の講義受講が義務付けられています。自分にとっては、高校生の時に体験した教生退場から学んだことが大きなインパクトを持っています。研究不正防止という矮小化した問題を超えて、この事案から実験というものの意義を学ばせていただきました。近ごろ、高校生の頃の体験がフラッシュバックしてくることがよくあります。これが正常なのか加齢現象なのか不明です。過去の経験を思い出すというよりも、最近の経験のような新鮮さを伴って脳内に再現されるのです。不思議な現象です。

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日本におけるオミクロン期のコロナワクチンの有効性は?/長崎大

 長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの多施設共同研究チームは、2021年7月1日より、日本国内における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン効果のサーベイランス「VERSUS(Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2)」を実施している。オミクロン株BA.1/BA.2の流行期における新型コロナmRNAワクチンの効果についてVERSUSのデータを基に評価したところ、初回シリーズの接種により緩やかな予防効果が得られ、さらに、有症状感染を防ぐにはブースター接種がより効果的であったことが明らかとなった。本結果は、Expert Review of Vaccines誌オンライン版2023年3月8日号に掲載された。 本研究では、2022年1月1日~6月26日のオミクロン株BA.1/BA.2の流行期に、11県の医療機関14施設に、COVID-19の徴候または症状(発熱[37.5℃以上]、咳嗽、疲労、息切れ、筋肉痛、咽頭痛、鼻づまり、頭痛、下痢、味覚障害、嗅覚障害)があって受診した7,931例(16歳以上)が登録された。ワクチン効果を多施設共同test-negative case-control研究で評価した。初回シリーズ(1次接種)とブースター接種ともにmRNAワクチンのファイザーの1価ワクチン(BNT162b2)もしくはモデルナの1価ワクチン(mRNA-1273)について評価し、それ以外の新型コロナワクチン接種者は試験結果から除外した。 主な結果は以下のとおり。・サーベイランスに登録された7,931例のうち、検査陽性3,055例、検査陰性4,876例を解析対象とした。年齢中央値39歳(四分位範囲:27~53)、男性3,810例(48.0%)、基礎疾患のある人が1,628例(20.5%)、COVID-19罹患歴がある人が142例(1.8%)であった。・対象者のワクチン接種歴は、ワクチン未接種13.8%、1次接種60.1%、ブースター接種20.1%であった。65歳以上では、未接種5.8%、1次接種49.7%、ブースター接種34.8%であった。検査陽性者の割合は、未接種52.7%、1次接種42.2%、ブースター接種20.3%であった。・未接種と比較した1次接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種完了から90日以内で35.6%(95%信頼区間[CI]:19.0~48.8)、91~180日で32.3%(20.7~42.2)、180日超で33.6%(18.5~45.8)であった。・未接種と比較したブースター接種の効果は、16~64歳では、ブースター接種完了から90日以内で68.7%(95%CI:60.6~75.1)、91~180日で59.1%(37.5~73.3)であった。・65歳以上では、未接種と比較した1次接種の効果は31.2%(95%CI:-44.0~67.1)、ブースター接種では76.5%(46.7~89.7)に上昇した。・1次接種、ブースター接種ともに、mRNA-1273のほうがBNT162b2よりも効果が高かったが有意差はなかった。・1次接種(接種から180日超)と比較したブースター接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種から90日以内で52.9%(95%CI:41.0~62.5)、91~180日で38.5%(6.9~59.3)であった。・65歳以上では、1次接種と比較したブースター接種の効果は65.9%(95%CI:35.7~81.9)であった。 本結果について著者は、デルタ株流行期での日本における1次接種のSARS-CoV-2有症状感染への効果は、16~64歳では、接種完了から90日以内で91.8%(95%CI:80.3~96.6)、91~180日で86.4%(56.9~95.7)、65歳以上では90.3%(73.6~96.4)と非常に高かったが、オミクロン株流行時には1次接種の有効性はかなり低下しており、有症状感染を防ぐにはブースター接種が必要だと指摘している。

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CAD患者のLDL-C 50~70mg/dL目標の治療 、高強度スタチンに非劣性/JAMA

 冠動脈疾患(CAD)患者の治療において、LDLコレステロール(LDL-C)の目標値を50~70mg/dLとする目標達成に向けた治療(treat-to-target)は高強度スタチン療法に対し、3年の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合に関して非劣性であり、これら4つの構成要素の個々の発生率には差がないことが、韓国・延世大学のSung-Jin Hong氏らが実施したLODESTAR試験で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年3月6日号に掲載された。韓国の無作為化非劣性試験 LODESTAR試験は、韓国の12施設が参加した医師主導の非盲検無作為化非劣性試験であり、2016年9月~2019年11月の期間に患者の登録が行われた(Samjin Pharmaceuticalなどの助成を受けた)。 CAD(安定虚血性心疾患または急性冠症候群[不安定狭心症、急性心筋梗塞])患者が、LDL-C値50~70mg/dLを目標とするtreat-to-target治療を受ける群、またはロスバスタチン20mgあるいはアトルバスタチン40mgによる高強度スタチン療法を受ける群に、無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、3年の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合であり、非劣性マージンは3.0%とされた。treat-to-target戦略の適合性を支持する新たなエビデンス 4,400例(平均年齢65.1[SD 9.9]歳、女性27.9%)が登録され、2つの群に2,200例ずつが割り付けられた。4,341例(98.7%)が3年の追跡を完了した。ベースラインの平均LDL-C値は、treat-to-target群が86(SD 33)mg/dL、高強度スタチン群は87(SD 31)mg/dLであった。 高強度スタチン療法は、treat-to-target群では1年目に患者の53%、2年目に55%、3年目に56%が受けており、高強度スタチン群ではそれぞれ93%、91%、89%が受けていた。 試験期間中の平均LDL-C値は、treat-to-target群が69.1(SD 17.8)mg/dL、高強度スタチン群は68.4(SD 20.1)mg/dLであり、両群間に有意な差はなかった(p=0.21)。 3年時の主要エンドポイントの発生率は、treat-to-target群が8.1%(177例)、高強度スタチン群は8.7%(190例)で、絶対群間差は-0.6%(片側97.5%信頼区間[CI]:-∞~1.1)であり、treat-to-target群の高強度スタチン群に対する非劣性が示された。 死亡(treat-to-target群2.5% vs.高強度スタチン群2.5%、絶対群間差:<0.1%[95%CI:-0.9~0.9]、p=0.99)、心筋梗塞(1.6% vs.1.2%、0.4[-0.3~1.1]、p=0.23)、脳卒中(0.8% vs.1.3%、-0.5[-1.1~0.1]、p=0.13)、冠動脈血行再建術(5.2% vs.5.3%、-0.1[-1.4~1.2]、p=0.89)の発生率は、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。 著者は、「これらの知見は、スタチン治療における薬物反応の個人差を考慮した個別化治療を可能にする、treat-to-target戦略の適合性を支持する新たなエビデンスをもたらすものである」としている。

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第155回 コロナ罹患後症状をメトホルミンが予防 / コロナで父親の顔がわからなくなった女性

long COVIDを糖尿病治療薬メトホルミンが予防昔ながらの糖尿病治療薬メトホルミンの新型コロナウイルス感染症罹患後症状(long COVID)予防効果が米国の無作為化試験で認められ1)、「画期的(breakthrough)」と評するに値する結果だと有力研究者が称賛しています2)。COVID-OUTと呼ばれる同試験では駆虫薬として知られるイベルメクチンとうつ病治療に使われるフルボキサミンも検討されましたが、どちらもメトホルミンのようなlong COVID予防効果はありませんでした。COVID-OUT試験は2020年の暮れ(12月30日)に始まり、被験者はメトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミン、プラセボのいずれかに割り振られました。被験者、医師、その他の試験従事者がその割り振りを知らない盲検状態で実施されました。また、被験者をどこかに出向かせることがなく、試験従事者と直接の接触がない分散化(decentralized)方式の試験でもあります。募ったのは肥満か太り過ぎで年齢が30~85歳、コロナ発症から7日未満、検査でコロナ感染が判明してから3日以内の患者です。箱に入った服用薬一揃いは試験参加決定の当日または翌日に被験者に届けられ、結果的に試験参加同意から最初の服用までは平均して1日とかかりませんでした。メトホルミンの服用日数は14日間で、用量は最初の日は500mg、2~5日目は500mgを1日に2回、6~14日目は朝と晩にそれぞれ500mgと1,000mgです。メトホルミン投与群とプラセボ群合わせて1,125例がlong COVIDの検討に協力することを了承し、1ヵ月に1回連絡を取ってlong COVIDの診断があったかどうかが300日間追跡されました。その結果、およそ12例に1例ほどの8.4%がその診断に至っていました。肝心のメトホルミン投与群のlong COVID発生率はどうかというと約6%であり、プラセボ群の約11%に比べて40%ほど少なく済んでいました。発症からより日が浅いうちからのメトホルミン開始はさらに有効で、発症から4日未満で開始した人のlong COVID発現率は約5%、4日以上経ってから開始した人では約7%でした。上述のとおりイベルメクチンやフルボキサミンのlong COVID予防効果は残念ながら認められませんでした。COVID-OUT試験のlong COVID結果報告はまだプレプリントであり、The Lancet on SSRNに提出されて審査段階にあります。メトホルミンの効果はlong COVIDの枠にとどまらずコロナ感染の重症化予防も担いうることが他でもないCOVID-OUT試験で示されています。その結果はすでに査読が済んで昨夏2022年8月にNEJM誌に掲載されており、第一の目的である低酸素血症、救急科(ED)受診、入院、死亡の予防効果は認められなかったものの、メトホルミン投与群のED受診、入院、死亡は有望なことにプラセボ群より42%少なくて済みました3)。さらに試験を続ける必要はあるものの、値頃で取り立てるほど副作用がないことを踏まえるにメトホルミンが用を成すことは今や確からしいことをCOVID-OUT試験結果は示していると米国屈指の研究所Scripps Research Translational Instituteの所長Eric Topol氏は述べています2)。Topol氏はbreakthroughという表現を安易に使いませんが、安価で安全なメトホルミンのCOVID-OUT試験での目を見張る効果はその表現に見合うものだと讃えています。メトホルミンの効果を重要と考えているのはTopol氏だけでなく、たとえばハーバード大学病院(Brigham and Women's Hospital)の救急科医師Jeremy Faust氏もその1人であり、「コロナ感染が判明したらすぐにメトホルミン服用を開始する必要があるかと肥満か太り過ぎの患者に尋ねられたら、COVID-OUT試験結果を根拠にして “必要がある”と少なくとも大抵は答える」と自身の情報配信に記しています4)。コロナ感染で顔がわからなくなってしまうことがあるコロナ感染で匂いや味がわからなくなることがあるのはよく知られていますが、顔が区別できなくなる相貌失認(prosopagnosia)が生じることもあるようです。神経系や振る舞いの研究結果を掲載している医学誌Cortexに相貌失認になってしまった28歳のコロナ感染女性Annie氏の様子や検査結果などをまとめた報告が掲載されました5,6)。Annie氏は2020年3月にコロナ感染し、その翌月4月中ごろまでには在宅で働けるほどに回復しました。コロナ感染してから最初に家族と過ごした同年6月に彼女は父親が誰かわからず、見た目で叔父と区別することができませんでした。そのときの様子をAnnie氏は「誰か知らない顔の人から父親の声がした(My dad's voice came out of a stranger's face)」と説明しています。相貌失認に加えて行きつけのスーパーまでの道で迷うことや駐車場で自分の車の場所が分からなくなるという方向音痴のような位置把握障害(navigational impairment)もAnnie氏に生じました。また、long COVIDの主症状として知られる疲労や集中困難などにも見舞われました。Annie氏のような症状はどうやら珍しくないようで、long COVID患者54例に当たってみたところ多くが視覚認識や位置把握の衰えを申告しました。脳損傷後に認められる障害に似た神経精神の不調がコロナ感染で生じうるようだと著者は言っています。参考1)Outpatient Treatment of COVID-19 and the Development of Long COVID Over 10 Months: A Multi-Center, Quadruple-Blind, Parallel Group Randomized Phase 3 Trial. The Lancet on SSRN :Received 6 Mar 2023.2)'Breakthrough' Study: Diabetes Drug Helps Prevent Long COVID / WebMD3)Carolyn T, et al. N Engl J Med. 2022;387:599-610.4)Metformin found to reduce Long Covid in clinical trial. Jeremy Faust氏の配信5)Kieseler ML, et al. Cortex. 9 March 2023. [Epub ahead of print]6)Study Says Long COVID May Cause Face Blindness / MedScape

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PTSDやうつ病に対するドパミンD2受容体遺伝子変異の影響~メタ解析

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)およびうつ病のリスク因子として、ドパミンD2受容体遺伝子の変異が多くの研究で評価されているが、その結果は一貫していない。中国・北京林業大学のXueying Zhang氏らは、ドパミンD2受容体遺伝子変異とPTSDおよびうつ病リスクとの関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。その結果、ドパミンD2受容体遺伝子の変異は、PTSDおよびうつ病の遺伝的な感受性に潜在的な影響を及ぼしている可能性が示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年2月4日号の報告。 2021年までの文献を、Web of Science、PubMed、Google Scholar、Excerpta Medica Database(EMBASE)、Springer、ScienceDirect、Wiley Online Library、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Chinese Biomedical Literature Database (CBM)、WANFANG Data、CQVIP、Chinese National Knowledge Infrastructure(CNKI)よりシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・ドパミンD2受容体遺伝子の27の遺伝子変異が収集され、それらのうち選択基準を満たした7つをメタ解析に含めた。・メタ解析では、rs1800497(TaqIA)多型がPTSDのリスク増加と有意に関連していることが示唆された(優性モデルA1A1+A1A2 vs.A2A2[オッズ比[OR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.08~2.04、Z=2.46、p=0.014])。・人種によるサブグループ解析では、アジア人(優性モデルA1A1+A1A2 vs.A2A2[OR:1.39、95%CI:1.08~1.79、Z=2.60、p=0.009])と白人(優性モデルA1A1+A1A2 vs.A2A2[OR:1.87、95%CI:1.02~3.41、Z=2.04、p=0.042])において、PTSDリスクの有意な増加が観察された。・うつ病とドパミンD2受容体遺伝子の関連については、rs1799978(ホモ接合型の比較GG vs.AA[OR:0.60、95%CI:0.37~0.97、Z=2.08、p=0.038])とrs2075652(ホモ接合型の比較AA vs.GG[OR:1.82、95%CI:1.32~2.50、Z=3.67、p<0.001])多型の間に有意な関連の強固性が検出された。・累積メタ解析では、PTSDおよびうつ病の関連の強固性に、継続的な傾向が認められた。・PTSDおよびうつ病のリスク因子としてドパミンD2受容体遺伝子の変異を用いるためには、適切に設計された大規模ケースコントロール研究でさらに検証する必要がある。

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IL-13を特異的に中和するアトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ皮下注」【下平博士のDIノート】第117回

IL-13を特異的に中和するアトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ皮下注」今回は、アトピー性皮膚炎治療薬「トラロキヌマブ(遺伝子組換え)製剤(商品名:アドトラーザ皮下注150mgシリンジ、製造販売元:レオファーマ)」を紹介します。本剤は、アトピー性皮膚炎の増悪に関与するIL-13を特異的に中和するモノクローナル抗体であり、中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者の新たな治療選択肢となることが期待されています。<効能・効果>既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の適応で、2022年12月23日に製造販売承認を取得しました。本剤は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間受けても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に使用します。<用法・用量>通常、成人にはトラロキヌマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与します。本剤による治療反応は、通常使い始めてから16週までには効果が得られるため、16週までに効果が得られない場合は投与の中止を検討します。<安全性>全身療法が適用となる中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験において、5%以上の頻度で認められた副作用は、上気道感染(上咽頭炎、咽頭炎を含む)、結膜炎、注射部位反応(紅斑、疼痛、腫脹など)でした。重大な副作用として、重篤な過敏症(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.アトピー性皮膚炎の増悪に関与し、過剰に発現しているインターロイキン-13(IL-13)を特異的に中和するモノクローナル抗体です。2.この薬を投与中も、症状に応じて保湿外用薬などを併用する必要があります。3.寒気、ふらつき、汗をかく、発熱、意識の低下などが生じた場合は、すぐに連絡してください。<Shimo's eyes>本剤は、末梢での炎症を誘導する2型サイトカインであるIL-13を選択的に阻害することで、中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)に効果を発揮する生物学的製剤です。IL-13は皮膚の炎症反応の増幅、皮膚バリアの破壊、病原体の持続性増強、痒みシグナルの伝達増強などに作用し、IL-13の発現量とADの重症度が相関するとされています。そのため、IL-13を阻害することによって、皮膚のバリア機能を回復させ、炎症や痒み、皮膚肥厚を軽減することが期待されています。現在、ADの薬物療法としては、ステロイド外用薬およびタクロリムス外用薬(商品名:プロトピックほか)が中心的な治療薬として位置付けられています。近年では、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用を有するデルゴシチニブ外用薬(同:コレクチム)、ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害作用を有するジファミラスト外用薬(同:モイゼルト)も発売されました。さらに、これらの外用薬でも効果不十分な場合には、ヒト型抗ヒトIL-4/IL-13受容体モノクローナル抗体のデュピルマブ皮下注(遺伝子組換え)(同:デュピクセント)、ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体のネモリズマブ皮下注(遺伝子組換え)(同:ミチーガ)、JAK阻害薬のバリシチニブ錠(同:オルミエント)などが発売され、治療選択肢が広がっています。本剤は、医療施設において皮下に注射され、原則として本剤投与時もADの病変部位の状態に応じて抗炎症外用薬を併用します。IL-13を阻害することにより2型免疫応答を減弱させ、寄生虫感染に対する生体防御機能を減弱させる恐れがあるため、本剤を投与する前に寄生虫感染の治療を行います。また、本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないため避けます。臨床効果としては、16週目にEASI75(eczema area and severity index[皮膚炎の重症度指標]が75%改善)を達成した割合は、ステロイド外用薬+プラセボ群では35.7%でしたが、ステロイド外用薬+本剤併用群では56.0%でした。また、32週目のEASI-75達成率は92.5%でした。16週時までのステロイド外用薬の累積使用量はステロイド外用薬+プラセボ群では193.5gでしたが、ステロイド外用薬+本剤併用群では134.9gでした。初期投与期間での主な有害事象はウィルス性上気道感染、結膜炎、頭痛などですが、アナフィラキシーなど重篤な過敏症の可能性があるので十分注意する必要があります。投与は大腿部や腹部、上腕部に行い、腹部へ投与する場合はへその周りを外し、同一箇所へ繰り返しの注射は避けます。遮光のため本剤は外箱に入れたまま、30℃を超えない場所で保存し、14日間以内に使用します。使用しなかった場合は廃棄します。本剤は、海外ではEU諸国、イギリス、カナダ、アラブ首長国連邦、アメリカ、スイスで承認を取得しており、中等度~重度のAD療薬として使用されています(2022年8月現在)。参考1)Silverberg JI. et al. Br J Dermatol. 2021;184:450-463.2)レオファーマ社内資料:アトピー性皮膚炎患者を対象とした国際共同第III相TCS併用投与試験(ECZTRA3試験)

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循環器の世界的な権威に推薦状を書いてもらうまで【臨床留学通信 from NY】第45回

第45回:循環器の世界的な権威に推薦状を書いてもらうまで前回まではマサチューセッツ総合病院(MGH)の面接から、そこのポジションをゲットするに至るまでをご説明いたしました。今回はそのなかでも重要な推薦状についてご説明いたします。推薦状は、多くのレジデントまたはフェローの出願で必要になるのが4通。現在の施設のボス(レジデント、フェローであればプログラムディレクターと呼ばれる人)から1通、臨床的なレターを2通、研究のレターを1通、というのが一般的です。とくに私のように米国経験がない状態でレジデントに入る際は、レターをもらうのが大変です。海軍病院など含めた米国経験がないと、月単位で米国での病院実習をしてレターをもらうのが通例です。しかし、私はそのような時間があまり取れなかったので、東京海上日動メディカルサービス主催のNプログラムのような仕組みは合理的でした。いざ米国に来れば、いろいろなレターをもらう機会があります。私の場合は日本の専門医等の臨床的な能力にアドバンテージがあるため、今回はまずプログラムディレクターに臨床的なレターを書いてもらいました。プログラムディレクター以外には、カテ室のトップの先生から、日本での経験を鑑みてカテーテルの経験に問題がないことを示してもらい、あと2通は、研究レターを2人の大御所から書いてもらうことにしました。1人は世界的に有名な循環器内科医のGregg Stones先生で、先日のACC(American College of Cardiology)でCOAPT trial(機能性MR[僧帽弁閉鎖不全症]に対するMitraClipの有効性を調べた論文)の筆頭著者です1)。ひょんなことから渡米直後より面倒を見ていただき、EXCEL trialという左主幹部病変に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)vs.冠動脈バイパス術(CABG)のサブ解析でご指導もいただきました2,3)。現時点でも数個のプロジェクトのご指導をいただいています。もう1人は同じく世界的に有名な循環器内科医のDeepak Bhatt先生で、Roxana Mehran先生の研究室にいた時に書いた論文4)の共著者で、2年半前の循環器フェローの面接の時期に親身になって相談に乗っていただきました。そしてCirculation誌の姉妹誌に1件の論文が掲載されたこともあり5)、推薦状を書いていただきました。現在この方はMount Sinaiにいるのですが、それまではBrigham and Women’s Hospitalに在籍されていたため、MGHの方々にコネクションがあり、採用に至ったのだと思います。このようなResearch Giantとの研究はもちろん、繋がりを今後も大切にして米国での展開をしていきたいと思います。Column画像を拡大する2023 ACC/WCC @ニューオーリンズの写真です。Moderated Posterで発表した演題は先ほどのDeepak Bhatt先生に共著者に入っていただき、JACC Advances誌に同時発表となりました6)。ニューヨークからの便が5時間遅れて、あやうく空港泊かと思いましたが、なんとかニューオーリンズに着いての発表でした。参考1)Stone GW, et al. N Engl J Med. 2023 Mar 5. [Epub ahead of print]2)Stone GW, et al. N Engl J Med. 2019;381:1820-1830.3)Kuno T, et al. J Invasive Cardiol. 2021;33:E619-E627.4)Kuno T, et al. J Thromb Thrombolysis. 2021;52:419-428.5)Kuno T, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2022;15:e011990.6)Kuno T, et al. JACC Adv. 2023 Mar 13. [Epub ahead of print]

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DELIVER試験を踏まえた慢性心不全治療の今後の展望/AZ

 アストラゼネカは「フォシーガ錠5mg、10mg(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、以下フォシーガ)」の添付文書が改訂されたことを機に、「慢性心不全治療に残された課題と選択的SGLT2阻害剤フォシーガが果たす役割」と題して、2023年3月2日にメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、はじめに阪和病院・阪和記念病院 統括院長・総長 北風 政史氏より、「慢性心不全治療の現状とDELIVER試験を踏まえた今後の展望」について語られた。DELIVER試験でフォシーガがLVEFにかかわらず予後を改善 日本では、主な死因別死亡において心疾患による死亡率が年々増加しており1)、2021年では14.9%と、がん(26.5%)に次いで多かった。心疾患の中でも心不全は5年生存率が50%と予後が不良な疾患であることが知られている。 心不全は左室駆出率(LVEF)の値によって、3つの病態(HFrEF:LVEF40%未満、HFmrEF:LVEF40%以上50%未満、HFpEF:LVEF50%以上)に分類されるが、これまで治療法が確立されていたのはHFrEFのみであった。しかし、このたびDELIVER試験により、フォシーガがLVEFにかかわらず予後を改善するという結果が示され、添付文書が改訂された。DELIVER試験のポイント・幅広い層を対象にしている2,3)組み入れ時にLVEF40%を超える患者(組み入れ前にLVEF40%以下であった患者も含む)を対象とした。・投与開始後早い時点で有効性が示された2,4)主要評価項目である主要複合エンドポイント(心血管死、心不全による入院、心不全による緊急受診)のうち、いずれかの初回発現までの期間は、フォシーガ10mg群でプラセボ群と比較して有意に低下し、この有意なリスク低下は投与13日目から認められた。・LVEFの値によらず有効性が認められた2,4)全体集団とLVEF60%未満群で、主要複合エンドポイントのうちいずれかの初回発現までの期間を比較したところ、フォシーガ群におけるリスク低下効果が同等であった。この結果から、LVEF60%以上の心不全患者にもフォシーガが有効であることが示唆された。DELIVER試験でHFpEF治療におけるSGLT2阻害薬の知見が蓄積 現在、HFpEFの薬物療法におけるSGLT2阻害薬の位置付けは、海外のガイドラインではIIa5)、国内ではガイドラインへの記載はない。しかし、DELIVER試験などでHFpEF治療におけるSGLT2阻害薬の知見が蓄積された今、ガイドラインによる位置付けが変更される可能性がある。 続いて矢島 利高氏(アストラゼネカ メディカル本部 循環器・腎・代謝疾患領域統括部 部門長)より「慢性心不全領域におけるダパグリフロジンの臨床試験プログラム」について語られた。 矢島氏はDAPA-HF試験とDAPA-HF/DELIVER試験の統合解析結果について解説し、DAPA-HF/DELIVER試験の統合解析によれば、LVEFの値によってフォシーガの有効性に差はないことが示されている6)と述べた。 今回、フォシーガの効能または効果に関する注意が、LVEFによらない慢性心不全に変更されたことで、今後、慢性心不全治療がどのように変化していくか注視したい。■参考文献1)厚生労働省/平成29年(2017)人口動態統計2)アストラゼネカ社内資料:国際共同第III相試験-DELIVER試験-(承認時評価資料)、Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2022;387:1089-1098.3)Solomon SD, et al. Eur J Heart Fail. 2021;23:1217-1225.本試験はAstraZenecaの資金提供を受けた4)Vaduganathan M, et al. JAMA Cardiol. 2022;7:1259-1263.本試験はAstraZenecaの資金提供を受けた5)Heidenreich PA, et al. Circulation. 2022;145:e876-e894.6)Jhund PS, et al. Nat Med. 2022;28:1956-1964.本論文作成に当たっては、AstraZenecaの資金提供を受けた

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ベンゾジアゼピンの使用および中止に伴う離脱症状とその期間は

 ベンゾジアゼピンの漸減や中止を行うと、さまざまな症状が一定期間発現することがある。このように数ヵ月~数年間続くこともある症状のメカニズムは、数十年前から報告されているものの、いまだ解明されていない。米国・Benzodiazepine Information CoalitionのChristy Huff氏らは、ベンゾジアゼピンの使用および中止に関連する急性および慢性的な離脱症状を明らかにするため、インターネット調査結果の2次解析を行った。その結果、ベンゾジアゼピンの漸減および中止でみられる急性で一過性の症状は、多くのベンゾジアゼピン使用患者が経験する持続的な症状とは性質や期間が異なる可能性が、改めて示唆された。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2023年2月6日号の報告。ベンゾジアゼピンの離脱症状で回答者の85%以上が報告した症状 1,207人を対象に、ベンゾジアゼピンの使用に関連する離脱症状や長期的な症状に関する情報をインターネット調査より収集した。 ベンゾジアゼピンに関連する離脱症状の調査結果を解析した主な結果は以下のとおり。・調査回答者が報告したベンゾジアゼピンに関連する離脱症状の平均数は、23症状中15症状であった。・23症状のすべてを報告した回答者は、6%に及んだ。・報告頻度が低かった症状は、全身の震え、幻覚、発作などであり、数日~数週間しか継続していなかった。これらの症状は、継続期間の短い症状としての報告頻度が高かった。・回答者の85%以上が報告したベンゾジアゼピンに関連する離脱症状は、緊張/不安/恐怖、睡眠障害、低エネルギー、集中困難/注意散漫であり、記憶の喪失を含めたこれらの症状は、継続期間が長かった。・ベンゾジアゼピンを中止した患者の多くは、不安や不眠症状の継続期間が長かったが、これらの患者の50%以上は、適応外でベンゾジアゼピンを使用していた。・各症状が、ベンゾジアゼピンの曝露により誘発される神経適応、神経毒性の変化に起因しているかどうかは、不明であった。・ベンゾジアゼピンの離脱症状は、アルコールの場合と同様に、さまざまなメカニズムに起因する急性および慢性的な症状と関連している可能性が示唆された。

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etrasimod、中等~重症の活動期UCの導入・維持療法に有効/Lancet

 開発中のetrasimodは、中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎(UC)の導入および維持療法として有効であり、忍容性も良好であることが示された。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のWilliam J. Sandborn氏らが、2つの第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。etrasimodは、1日1回経口投与のスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体モジュレーターであり、S1P受容体サブタイプの1、4および5を選択的に活性化し(2、3は活性化しない)、UCを含む免疫系疾患の治療のために開発が進められている。今回の結果を踏まえて著者は、「etrasimodは独自の組み合わせでUC患者のアンメットニーズに応える治療オプションとなる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年3月2日号掲載の報告。2つの試験で導入療法と維持療法としての有効性・安全性を評価 2つの第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ELEVATE UC 52試験」と「ELEVATE UC 12試験」は独立して行われた。 被験者は、中等症~重症の活動期UCで、1つ以上の承認されたUC治療効果が不十分または減弱が認められる、もしくは不耐の成人患者であり、無作為に2対1の割合で、etrasimodを1日1回2mgまたはプラセボを経口投与する群に割り付けられた。ELEVATE UC 52試験の患者は40ヵ国315施設から、ELEVATE UC 12試験の患者は37ヵ国407施設から登録された。無作為化では、生物学的製剤またはJAK阻害薬の既治療有無、ベースラインでのコルチコステロイド使用有無、およびベースラインの疾患活動性(修正Mayoスコア[MMS]4~6 vs.7~9)で層別化が行われた。 ELEVATE UC 52試験は、12週の導入療法期間+40週の維持療法期間からなる治療を完了するデザインで構成された。ELEVATE UC 12試験では、12週時に独自に導入療法を評価した。 主要な有効性エンドポイントは、ELEVATE UC 52試験では12週時と52週時に、ELEVATE UC 12試験では12週時に、臨床的寛解を示した患者の割合であった。安全性は両試験で評価された。臨床的寛解を達成した患者の割合はetrasimod群で有意に高率 ELEVATE UC 52試験の患者は2019年6月13日~2021年1月28日に登録され、ELEVATE UC 12試験の患者は2020年9月15日~2021年8月12日に登録された。それぞれ821例、606例の患者がスクリーニングを受け、433例、354例の患者が無作為化を受けた。 ELEVATE UC 52試験の完全解析セットでは、etrasimod群に289例、プラセボ群に144例が割り付けられ、ELEVATE UC 12試験の同セットでは、238例、116例が割り付けられた。 ELEVATE UC 52試験で、臨床的寛解を達成した患者の割合は、12週の導入期間終了時(74/274例[27%]vs.10/135例[7%]、p<0.0001)、および52週時(88/274例[32%]vs.9/135例[7%]、p<0.0001)のいずれにおいても、プラセボ群と比較してetrasimod群で有意に高かった。 ELEVATE UC 12試験で、12週の導入期間終了時に臨床的寛解を達成した患者は、プラセボ群17/112例(15%)に対して、etrasimod群は55/222例(25%)であった(p=0.026)。 有害事象は、ELEVATE UC 52試験ではetrasimod群206/289例(71%)、プラセボ群81/144例(56%)、ELEVATE UC 12試験ではetrasimod群112/238例(47%)、プラセボ群54/116例(47%)で報告された。死亡や悪性腫瘍の報告例はなかった。

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「キムチ好き」の体重がどうなるかを調べた韓国の大規模研究【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第230回

「キムチ好き」の体重がどうなるかを調べた韓国の大規模研究イラストACより使用私は京都府にある有名キムチ店のキムチを取り寄せるほど、キムチが好きです。キムチを食べると、基本的にご飯が進むので、結果的に米の食べ過ぎで太ってしまうのではないかという懸念があります。Tan L, et al.Effect of kimchi intake on body weight of general community dwellers: a prospective cohort study.Food Funct. 2023 Feb 21;14(4):2162-2171.この研究は、キムチ摂取と体重の関連性を調べた疫学研究です。ベースラインのBMIが25kg/m2以上の肥満の参加者2万66人を対象に、前向きリスク評価分析を実施しました。まず、相関をみると、キムチ摂取量が少ない群と比較して、キムチ摂取量が多い群ではBMIの増加が少ないことが示されました(男性β=0.169、95%信頼区間[CI]:0.025~0.313、女性β=0.140、95%CI:0.046~0.236)。また、リスク評価分析では、中程度のキムチ消費は、男性において正常体重と関連することが示されました(ハザード比:1.28、95%CI:1.06~1.54)。キムチは辛いので、なんとなく代謝が良くなって痩せそう、というイメージがありますが、当たらずも遠からずといったところでしょうか。過去の研究でも、キムチは体重だけでなく、脂肪の蓄積や体内の炎症をも抑える働きがあるのではないかとされています1)。キムチにはLactobacillusが豊富に含まれていますが、これがコレステロールの上昇を抑えるという働きもあります2,3)。スゴイぜ、キムチ!キムチ摂取者の体重増加は抑制できるかもしれませんが、冒頭で述べたように、ご飯が進んでしまうと元も子もないので注意が必要です。1)Kim N, et al. Kimchi intake alleviates obesity-induced neuroinflammation by modulating the gut-brain axis. Food Res Int. 2022 Aug;158:111533.2)Heo W, et al. Lactobacillus plantarum LRCC 5273 isolated from Kimchi ameliorates diet-induced hypercholesterolemia in C57BL/6 mice. Biosci Biotechnol Biochem. 2018 Nov;82(11):1964-1972.

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DOAC時代のVTE診療の国内大規模研究、再発リスクの層別化評価と出血リスク評価の重要性が明らかに/日本循環器学会

 日本では過去に静脈血栓塞栓症 (肺塞栓症および深部静脈血栓症、以下VTE)の患者を対象とした多施設共同の大規模観察研究:COMMAND VTE Registry(期間:2010年1月~2014年8月、対象:3,024例)が報告されていた。しかしながら、同研究はワルファリン時代のデータベースであり、抗凝固薬の88%がワルファリンであった。現在はVTE患者の治療には直接経口抗凝固薬(DOAC)が広く普及しており、そこでDOAC時代における日本のVTE診療の実態を明らかにすることを目的としたCOMMAND VTE Registry-2が実施され、3月10~12日に開催された第87回日本循環器学会学術集会の「Late Breaking Cohort Studies Session」にて、同研究班の金田 和久氏(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)が、その主解析の結果を報告した。DOAC時代のVTE患者を対象とした大規模な観察研究 COMMAND VTE Registry-2は、日本の31施設において2015年1月~2020年8月の期間に、急性の症候性の肺塞栓症および深部静脈血栓症と診断された患者5,197例を登録した多施設共同の観察研究である。本研究の特徴は、1)DOAC時代に特化したデータベースであること、2)世界的にみてもDOAC時代を対象とした最大規模のリアルワールドデータであること、3)詳細な情報収集かつ長期的なフォローアップが実施されたレジストリであることだ。 日本循環器学会が発行するガイドライン最新版1)では、VTE再発リスクを3つのグループに分類し検討されていたが、近年は国際血栓止血学(ISTH)よりさらなる詳細なリスク層別化が推奨され、世界中の多くの最新のVTEガイドラインでは、VTE再発リスクに応じて5つのグループに分類している(メジャーな一過性リスク群[大手術や長期臥床、帝王切開など]、マイナーな一過性リスク群[旅などで長時間姿勢保持、小手術、ホルモン療法、妊娠など]、VTE発症の誘因のない群、がん以外の持続的なリスク因子を有する群[自己免疫性疾患など]、活動性のがんを有する群)。 今回の主解析では、ISTHで推奨されている詳細な5つのグループに分類し、患者背景、治療の詳細、および予後が評価された。 DOAC時代における日本のVTE診療の実態を明らかにすることを目的としたCOMMAND VTE Registry-2の主な結果は以下のとおり。・全対象者は5,197例で、平均年齢は67.7歳、女性は3,063例(59.0%)、平均体重は58.9kgだった。・PE(肺塞栓症)の症例は、2,787例(54.0%)で、DVTのみの症例は2,420例(46.0%)であった。・初期治療において経口抗凝固薬が使用されたのは4,790例(92.0%)で、そのうちDOACが処方されたのは4,128例(79%)だった。DOACの処方状況は、エドキサバン2,004例(49%)、リバーロキサバン1,206例(29%)、アピキサバン912例(22%)、ダビガトラン6例(0.2%)であった。・治療開始1年間の投与中止率は、グループ間で大きく異なっていた(メジャーな一過性リスク群:57.2%、マイナーな一過性リスク群:46.3%、VTE発症の誘因のない群:29.1%、がん以外の持続的なリスク因子を有する群:32.0%、活動性のがんを有する群:45.6%、p<0.001)。・メジャーな一過性リスク群(n=475[9%])はVTE再発リスクの5年間の累積発生率が最も低かった(2.6%、p<0.001)。・マイナーな一過性リスク群(n=788[15%])では、メジャーな一過性リスク群と比較するとVTE再発リスクの5年間の累積発生率が比較的高かった(6.4%、p<0.001)。・VTE発症の誘因のない群(n=1,913[37%])では長期にわたり再発リスクがかなり高かった(5年時点にて11.0%、p<0.001)。・活動性のがんを有する群(n=1,507、29%)では再発リスクが高く(5年時点にて10.1%、p<0.001)、また、大出血の5年間の累積発生率は最も高く(20.4%、p<0.001)、抗凝固療法の中止率も高かった。 発表者の金田氏は「欧米の最新のVTEガイドラインでもマイナーな一過性リスク群に対する抗凝固療法の投与期間は、短期vs.長期で相反する推奨の記載があるが、今回の結果を見る限り、日本人でも出血リスクの低い患者においては長期的な抗凝固療法を継続するベネフィットがあるのかもしれない。欧米のVTEガイドラインでは、VTE発症の誘因のない群では、半永久的な抗凝固療法の継続を推奨しているが、日本人でも同患者群での長期的な高い再発リスクを考えると、出血リスクがない限りは長期的な抗凝固療法の継続が妥当なのかもしれない。活動性がんを有する患者では、日本循環器学会のガイドラインでもより長期の抗凝固療法の継続が推奨されているが、DOAC時代となっても出血イベントなどのためにやむなく中止されている事が多く、DOAC時代となっても今後解決すべきアンメットニーズであると考えられる」と述べた。 最後に同氏は「今回、日本全国の多くの共同研究者のご尽力により実施されたDOAC時代のVTE患者の大規模な観察研究により、日本においても最新のISTHの推奨に基づいた詳細な再発リスクの層別化が抗凝固療法の管理戦略に役立つ可能性があり、一方で、より長期の抗凝固療法の継続が推奨されるようになったDOAC時代においては、その出血リスクの評価が益々重要になっていることが明らかになった」と話し、「本レジストリは非常に詳細な情報収集を行っており、今後、さまざまなテーマでのサブ解析の検討を行い共同研究者の先生方とともに情報発信を行っていきたい」と結論付けた。 なお、本学術集会ではCOMMAND VTE Registry-2からサブ解析を含めて総数20演題の結果が報告された。(下記、一部を列記)―――Actual Management of Venous Thromboembolism Complicated by Antiphospholipid AntibodySyndrome in Japan. From the COMMAND VTE Registry-2久野 貴弘氏(群馬大学医学部附属病院 循環器内科)Risk Factors of Bleeding during Anticoagulation Therapy for Cancer-associated Venous Thromboembolism in the DOAC Era: From the COMMAND VTE Registry-2平森 誠一氏(長野県厚生連篠ノ井総合病院 循環器科)Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension after Acute Pulmonary Embolism in the Era of Direct Oral Anticoagulants: From the COMMAND VTE Registry-2池田 長生氏(東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科)Clinical Characteristics and Outcome of Critical Acute Pulmonary Embolism Requiring Extracorporeal Membrane Oxygenation: From the COMMAND VTE Registry-2高林 健介氏(枚方公済病院 循環器内科)Clinical Characteristics, Anticoagulation Strategies and Outcomes Comparing Patients with and without History of Venous Thromboembolism: From the COMMAND VTE Registry-2土井 康佑氏(京都医療センター 循環器内科)Risk Factor for Major Bleeding during Direct Oral Anticoagulant Therapy in Patients with Venous Thromboembolism: From the COMMAND VTE Registry-2上野 裕貴氏(長崎大学循環病態制御内科学)Utility and Application of Simplified PESI Score for Identification of Low-risk Patients withPulmonary Embolism in the Era of DOAC西川 隆介氏(京都大学医学研究科 循環器内科学)Management Strategies and Outcomes of Cancer-Associated Venous Thromboembolism in the Era of Direct Oral Anticoagulants: From the COMMAND VTE Registry-2茶谷 龍己氏(倉敷中央病院 循環器内科)Clinical Characteristics and Outcomes in Patients with Cancer-Associated Venous Thromboembolism According to Cancer Sites: From the COMMAND VTE Registry-2坂本 二郎氏(天理よろづ相談所病院 循環器内科)Direct Oral Anticoagulants-Associated Bleeding Complications in Patients with Gastrointestinal Cancer and Venous Thromboembolism: From the COMMAND VTE Registry-2西本 裕二氏(大阪急性期・総合医療センター 心臓内科)Influence of Fragility on Clinical Outcomes in Patients with Venous Thromboembolism and Direct Oral Anticoagulant: From the COMMAND VTE Registry-2荻原 義人氏(三重大学 循環器内科学)Comparison of Clinical Characteristics and Outcomes of Venous Thromboembolism(VTE)between Young and Elder Patients: From the COMMAND VTE Registry-2森 健太氏(神戸大学医学部附属病院 総合内科)Off-Label Under- and Overdosing of Direct Oral Anticoagulants in Patients with VenousThromboembolism: From the COMMAND VTE Registry-2辻 修平氏(日本赤十字社和歌山医療センター 循環器内科)The Association between Statin Use and Recurrent Venous Thromboembolism: From theCOMMAND VTE Registry-2馬渕 博氏(湖東記念病院 循環器科)Clinical Characteristics and Outcomes of Venous Thromboembolism Comparing Patients with and without Initial Intensive High-dose Anticoagulation by Rivaroxaban and Apixaban大井 磨紀氏(大津赤十字病院 循環器内科)Initial Anticoagulation Strategy in Pulmonary Embolism Patients with Right Ventricular Dysfunction and Elevated Troponin Levels: From the COMMAND VTE Registry-2滋野 稜氏(神戸市立医療センター中央市民病院 循環器内科)Current Use of Inferior Vena Cava Filters in Japan in the Era of DOACs from the COMMAND VTE Registry-2高瀬 徹氏(近畿大学 循環器内科学)Patient Characteristics and Clinical Outcomes among Direct Oral Anticoagulants for Cancer Associated Venous Thromboembolism: From the COMMAND VTE Registry-2末田 大輔氏(熊本大学大学院生命科学研究部 循環器内科)―――

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世界最大のがんゲノム解析、スキルス含む日本人胃がんの治療標的を同定/国立がん研究センター

 国立がん研究センターは、2023年3月14日、世界最大の胃がんゲノム解析により、日本人胃がんの治療標的を同定したと発表。 同センターがんゲノミクス研究分野分野長 柴田 龍弘氏を中心とする研究チームが、国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC-ARGO)における国際共同研究として、日本人胃がん症例697例を含む総計1,457例の世界最大となる胃がんゲノム解析を行い、新たな治療標的として有望なものも含めこれまでで最大の75個のドライバー遺伝子を発見した。 この研究の中で、これまで原因不明であったびまん型胃がんについて、飲酒に関連したゲノム異常がその発症に関連することを初めて明らかにし、さらに胃がんの免疫治療における新たなゲノムバイオマーカーも16個同定した。 本研究成果は、米国科学雑誌「Nature Genetics」に、2023年3月13日付で掲載されている。

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治療抵抗性うつ病の高齢者、抗うつ薬増強で改善/NEJM

 治療抵抗性うつ病の高齢者において、既存の抗うつ薬にアリピプラゾールを併用する10週間の増強療法は、bupropionへの切り替えと比較し、ウェルビーイングを有意に改善し寛解率も高かった。また、増強療法あるいはbupropionへの切り替えが失敗した患者において、リチウム増強療法またはノルトリプチリンへの切り替えは、ウェルビーイングの変化量や寛解率が類似していた。米国・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らが、医師主導によるプラグマティックな2ステップの非盲検試験「Optimizing Outcomes of Treatment-Resistant Depression in Older Adults:OPTIMUM試験」の結果を報告した。高齢者の治療抵抗性うつ病に対する抗うつ薬の増強療法または切り替えのベネフィットとリスクは、広く研究されていなかった。NEJM誌オンライン版2023年3月3日号掲載の報告。抗うつ薬の増強療法と切り替えについて、2ステップで比較 研究グループは、ステップ1として、60歳以上の治療抵抗性うつ病患者を、現在の抗うつ薬+アリピプラゾール(2.5mg/日で開始、最大15mg/日まで増量)(アリピプラゾール増強群)、現在の抗うつ薬+徐放性bupropion(150mg/日で開始、目標300mg/日、最大450mg/日まで増量)(bupropion増強群)、現在の抗うつ薬から徐放性bupropionへの切り替え(bupropion切り替え群)の3群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。次にステップ2として、ステップ1で寛解が得られなかった患者または不適格であった患者を、現在の抗うつ薬+リチウム増強群、ノルトリプチリンへの切り替え群に1対1の割合で無作為に割り付けた。各ステップは、10週間とし、最大10週間追加可とした。 主要アウトカムは、心理的ウェルビーイングのベースラインからの変化とし、米国立衛生研究所Toolbox Emotion Battery(NIHTB-EB)のPositive AffectとGeneral Life Satisfactionの2つのサブスケールの平均値をTスコアとして算出して評価した(標準集団の平均値50、スコアが高いほどウェルビーイングが良好)。副次アウトカムは、うつ病の寛解率とした。アリピプラゾール増強療法、切り替えと比較して有意に改善 2017年2月22日~2019年12月31日の期間に合計742例が登録された。ステップ1が619例、ステップ2が248例(主に治療失敗のためステップ1からステップ2への移行125例、ステップ2に直接登録123例)であった。 ステップ1において、心理的ウェルビーイングTスコアのベースラインからの増加(改善)は、アリピプラゾール増強群(211例)で4.83点、bupropion増強群(206例)で4.33点、bupropion切り替え群(202例)で2.04点であった。アリピプラゾール増強群とbupropion切り替え群の群間差は2.79点(95%信頼区間[CI]:0.56~5.02、p=0.014)で有意差が認められた(事前に設定した有意水準はp=0.017)が、アリピプラゾール増強群vs.bupropion増強群、あるいはbupropion増強群vs.bupropion切り替え群とでは有意差はなかった。 うつ病の寛解率は、アリピプラゾール増強群28.9%、bupropion増強群28.2%、bupropion切り替え群19.3%であった。 ステップ2において、心理的ウェルビーイングTスコアのベースラインからの増加は、リチウム増強群(127例)で3.17点、ノルトリプチリン切り替え群(121例)で2.18点(群間差:0.99、95%CI:-1.92~3.91)、うつ病寛解率はそれぞれ18.9%、21.5%であった。

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肺動脈性肺高血圧症へのsotatercept、24週後の運動耐容能を改善/NEJM

 安定した基礎療法を受けている肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者において、sotaterceptはプラセボと比較し6分間歩行距離(6MWD)で評価した運動耐容能を有意に改善させることが、ドイツ・ハノーバー医科大学のMarius M. Hoeper氏らが21ヵ国91施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「STELLAR試験」の結果、報告された。PAHは肺血管リモデリングが関与する進行性の疾患で、治療法の進歩にもかかわらずPAH関連疾患の有病率/死亡率は依然として高い。sotaterceptは、PAHに関与するアクチビンと成長分化因子を捕捉するアクチビン受容体IIA-Fc(ActRIIA-Fc)融合タンパク質で、第II相のPULSAR試験において24週後の肺血行動態を改善することが示されていた。NEJM誌オンライン版2023年3月6日号掲載の報告。24週時の6MWDの、ベースラインからの変化量を比較 研究グループは、安定した基礎療法を受けているPAH成人患者(WHO機能分類クラスIIまたはIII)を、sotatercept(開始用量0.3mg/kg、目標用量0.7mg/kg)群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、それぞれ3週ごとに皮下投与した。 主要エンドポイントは、24週時における6MWDのベースラインからの変化量。副次エンドポイントは、次の9項目を階層的に検定した。(1)複合項目の改善(6MWDの改善、NT-proBNP値の改善、WHO機能分類の改善またはクラスIIの維持)、(2)肺血管抵抗(PVR)のベースラインからの変化、(3)NT-proBNP値のベースラインからの変化、(4)WHO機能分類の改善、(5)死亡または初回臨床的悪化までの時間、(6)Frenchリスクスコア、(7)PAH-SYMPACT質問票の身体的影響ドメインスコアのベースラインからの変化、(8)同質問票の心肺症状ドメインスコアのベースラインからの変化、(9)同質問票の認知/感情影響ドメインスコアのベースラインからの変化。死亡または初回臨床的悪化までの時間は、最後の患者が24週時の診察を完了した時点に評価し、それ以外の項目はすべて24週時に評価した。6MWDの変化量の群間差は40.8m 2021年1月25日~2022年8月26日の期間に適格性を評価された434例中、323例が無作為化され(sotatercept群163例、プラセボ群160例)、24週間の主要評価期間を完了した(データカットオフ日2022年8月26日)。 24週時における6MWDのベースラインからの変化量(中央値)は、sotatercept群34.4m(95%信頼区間[CI]:33.0~35.5)、プラセボ群1.0m(-0.3~3.5)で、群間差(Hodges-Lehmann推定量)は40.8m(95%CI:27.5~54.1、p<0.001)であった。 副次エンドポイントについては、(1)~(8)はプラセボ群と比較してsotatercept群で有意な改善が認められたが、(9)のPAH-SYMPACT質問票の認知/感情影響ドメインスコアは両群で有意差はなかった。 プラセボと比較してsotatercept群で多く発現した有害事象は、鼻出血、めまい、毛細血管拡張症、ヘモグロビン値上昇、血小板減少症、血圧上昇などであった。

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抗精神病薬とプロラクチンレベル上昇が骨折リスクに及ぼす影響

 抗精神病薬による治療が必要な患者は、骨粗鬆症関連の脆弱性骨折を含む骨折リスクが高いといわれている。これには、人口統計学的、疾患関連、治療関連の因子が関連していると考えられる。インド・National Institute of Mental Health and NeurosciencesのChittaranjan Andrade氏は、抗精神病薬治療と骨折リスクとの関連を調査し、プロラクチンレベルが骨折リスクに及ぼす影響について、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年1月30日号掲載の報告。 主な結果は以下のとおり。・たとえば、認知症患者では、認知機能低下や精神運動興奮により転倒リスクが高く、統合失調症患者では、身体的に落ち着きがない、身体攻撃に関連する外傷リスクが高く、抗精神病薬服用患者では鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連する転倒リスクが高くなる。・抗精神病薬は、長期にわたる高プロラクチン血症により生じる骨粗鬆症に関連する骨折リスクを高める可能性がある。・高齢者中心で実施された36件の観察研究のメタ解析では、抗精神病薬の使用が大腿骨近位部骨折リスクおよび骨折リスクの増加と関連していることが示唆された。この結果は、ほぼすべてのサブグループ解析でも同様であった。・適応疾患と疾患重症度の交絡因子で調整した観察研究では、統合失調症患者の脆弱性骨折は、1日投与量および累積投与量が多く、治療期間が長い場合に見られ、プロラクチンレベルを維持する抗精神病薬よりも、上昇させる抗精神病薬を使用した場合との関連が認められた。また、プロラクチンレベル上昇リスクの高い抗精神病薬を使用している患者では、アリピプラゾール併用により保護的に作用することが示唆された。・骨折の絶対リスクは不明だが、患者の年齢、性別、抗精神病薬の使用目的、抗精神病薬の特徴(鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連するリスク)、1日投与量、抗精神病薬治療期間、ベースライン時の骨折リスク、その他のリスク因子により異なると考えられる。・社会人口統計学的、臨床的、治療に関連するリスク因子に関連する転倒および骨折リスクは、患者個々に評価し、リスクが特定された場合には、リスク軽減策を検討する必要がある。・プロラクチンレベルの上昇リスクの高い抗精神病薬による長期的な治療が必要な場合、プロラクチンレベルをモニタリングし、必要に応じてプロラクチンレベルを低下させる治療を検討する必要がある。・骨粗鬆症が認められた場合には、脆弱性骨折を予防するための調査やマネジメントが求められる。

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EU・英国の2023年がん死亡率、肺がんは減少も女性で増加の国あり/Ann Oncol

 イタリア・ミラノ大学のMatteo Malvezzi氏らは、欧州連合(EU)に加盟する27ヵ国全体および、EUのなかで人口が多い5ヵ国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド)、英国の2023年のがん死亡率の予測を発表した。本調査は毎年実施され、2023年の重点調査は肺がんとされた。EU加盟27ヵ国における2023年のがん死亡率は、2018年と比べて男性では6.5%、女性では3.7%減少すると予測された。また、EU加盟27ヵ国における2023年の肺がんによる死亡率は、2018年と比べて男性では10.2%減少すると予測されたが、女性では1.2%増加すると予測された。本調査結果は、Annals of Oncology誌オンライン版2023年3月5日号に掲載された。 1970~2018年における、EU加盟27ヵ国および英国の死亡に関するデータ(イタリアは2017年まで、フランスは2016年まで)について、世界保健機関(WHO)のデータベースを用いて検索し、最も一般的な10種のがん(胃がん、大腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、子宮がん[頸部および体部]、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、白血病)およびすべてのがんによる死亡数を調査した。2023年のがん死亡率の予測にあたり、予測人口はEU統計局(Eurostat)のデータを用いた。 主な結果は以下のとおり。・EU加盟27ヵ国における2023年のがん死亡数は126万1,990人と予測された。年齢調整死亡率(ASR)は、男性123.8人/10万人(2018年と比べて6.5%減少)、女性79.3人/10万人(同3.7%減少)であった。・EU加盟27ヵ国では、がん死亡率のピークであった1988年と比べて、1989~2023年の期間に約586万2,600人のがん死亡が回避されたと推定された。・EU加盟27ヵ国では、ほとんどのがん種において2023年のASRは2018年と比べて、良好な減少傾向が示された。しかし例外として、膵臓がんは男性で0.2%の減少にとどまり、女性では3.4%増加すると予測された。また、肺がんは女性において1.2%増加すると予測された。・英国では、すべてのがん種において2023年のASRは2018年と比べて、男女ともに減少すると予測された。・重点調査とした肺がんについて、2023年のASRと2015~19年のASRを比べた結果、EU加盟27ヵ国において男性では全年齢層で減少が予測され、女性では若年層(25~44歳)で35.8%の減少(ASR:0.8人/10万人)、中年層(45~64歳)で7.0%の減少(ASR:31.2人/10万人)が予測されたが、高齢層(65歳以上)では10%の増加(65~74歳のASR:102.2人/10万人、75歳以上のASR:118.2人/10万人)が予測された。・肺がんについて、国別に2023年のASRと2015~19年のASRを比べた結果、フランス、イタリア、スペインにおいて女性のASRの増加が予測された(それぞれ13.9%、5.6%、5.0%増加)。 また、EU加盟27ヵ国における男女別にみた、各がんの2023年のASRの予測値と2018年からの変化率は以下のとおり。【男性のASR(人/10万人)、変化率】肺がん:29.76、-10.24%大腸がん:14.65、-5.46%前立腺がん:9.49、-6.52%膵臓がん:8.19、-0.17%胃がん:5.27、-12.66%膀胱がん:4.32、-9.73%白血病:3.65、-12.61%全がん:123.75、-6.45%【女性のASR(人/10万人)、変化率】肺がん:13.63、+1.15%乳がん:13.58、-4.63%大腸がん:8.11、-8.70%膵臓がん:5.88、+3.39%子宮がん(頸部および体部):4.61、-4.56%卵巣がん:4.26、-6.94%胃がん:2.29、-18.84%白血病:2.18、-12.91%膀胱がん:1.10、-0.37%全がん:79.31、-3.72%

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