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70歳以上の1次予防、スタチンは有益か?/NEJM

 地域で暮らす70歳以上の高齢者を対象としたプラセボ対照無作為化試験で、アトルバスタチンは主要心血管イベントリスクを抑制したが(追跡期間中央値5.9年時点)、障害のない生存期間の延長には寄与しなかったことが示された。オーストラリア・モナシュ大学のSophia Zoungas氏らSTAREE Investigatorsが、同国の一般診療所(general medical practice)で行った「STAREE試験」の結果を報告した。高リスク成人において、スタチンが心筋梗塞や虚血性脳卒中のリスクを低減させることは十分に確立されているが、臨床ガイドラインにおいて、70歳以上の高齢者へのスタチン処方を強く推奨する記述はなく、とくに75歳以上の高齢者への処方を推奨するエビデンスは乏しい。また、認知症や障害への影響に対するエビデンスも不足していることから、研究グループは、主要心血管イベントおよび障害のない生存へのアトルバスタチンの影響を評価した。NEJM誌オンライン版2026年8月29日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。アトルバスタチン40mgを1日1回vs.プラセボ STAREE試験では、心血管疾患、糖尿病、認知症の既往がない、地域で暮らす70歳以上の高齢者を対象とした。 研究グループは被験者を、アトルバスタチン40mgを1日1回またはプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、追跡評価した。 主要評価項目は2つで、心血管死、非致死的心筋梗塞または脳卒中、冠動脈血行再建術の複合(主要心血管イベントへの影響を評価)と、全死因死亡、認知症、持続的な身体機能障害の複合(障害のない生存への影響を評価)で、階層的に評価された。主要心血管イベントは有意に減少、障害のない生存期間は延長せず 2015年7月~2023年3月に9,971例が無作為化された(アトルバスタチン群4,984例、プラセボ群4,987例)。被験者の平均年齢(SD)は74.7±4.5歳で、女性は51.9%であった。 ベースラインで、被験者の大半は現在飲酒の習慣があり、喫煙歴なしと申告した。服用薬数中央値は2(四分位範囲:1~4)で、最も多かった薬剤は降圧薬(46.3%)、胃酸関連疾患の治療薬(27.1%)などであった。過去にスタチン服用歴ありと報告した被験者は5.2%。既往歴として多かったのはがん、うつ病であった。また、認知機能スコアは良好であることが示され、88.7%の被験者が日常生活動作(ADL)の自立度を評価する修正Katz Indexの6項目について、いずれも困難はないと報告した。 追跡期間中央値5.9年後において、主要心血管イベントの発生はアトルバスタチン群297例(1,000人年当たり10.9イベント)、プラセボ群412例(1,000人年当たり15.5イベント)であった(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.61~0.82、p<0.001)。 障害のない生存への影響を評価した、全死因死亡、認知症、持続的な身体機能障害の複合の発生は、アトルバスタチン群637例(1,000人年当たり21.6イベント)、プラセボ群676例(1,000人年当たり23.0イベント)であった(HR:0.94、95%CI:0.84~1.05、p=0.25)。 重篤な有害事象の発現は、アトルバスタチン群で131例(2.7%)、プラセボ群で129例(2.7%)に認められた。筋骨格系、肝胆道系、および糖尿病関連の有害事象はアトルバスタチン群でより多く認められた。

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降圧薬による認知症リスクの低下、ARB vs.Ca拮抗薬~日本人大規模データ

 降圧薬の「種類」の違いが、血圧低下とは独立して認知症リスクに影響するかについては、十分に明らかになっていなかった。今回、統計数理研究所/総合研究大学院大学の野間 久史氏らが実施した65歳以上を対象とした標的試験エミュレーションの結果、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の新規開始はカルシウム拮抗薬(CCB)の新規開始に比べて、認知症、とくに血管性認知症のリスクが低いことが示された。Alzheimer’s & Dementia誌2026年8月号に掲載。 本研究では、19自治体の医療・健診情報を統合した約505万人の大規模医療データベースであるLIFE Studyの2014年4月~2024年9月のデータから、新規にARBまたはCCBによる高血圧治療を開始した65歳以上の認知症ではない成人を対象に、標的試験エミュレーションによりARB開始群とCCB開始群の認知症リスクを比較した。打ち切りや競合する死亡イベントを考慮し、重み付け離散時間ハザードモデルを用いてintention-to-treatおよびper-protocol効果を推定した。 主な結果は以下のとおり。・最終的に5万2,019例(ARB群1万7,860例、CCB群3万4,159例)が解析対象となり、追跡期間中央値3.6年の間に3,524件の新規認知症が確認された。・達成された血圧レベルが同等であったにもかかわらず、ARB群はCCB群と比較して認知症全体の発症リスクが低かった(ハザード比[HR]:0.916、95%信頼区間[CI]:0.852~0.985)。・血管性認知症(129イベント)では、ARB群でより大きなリスク低下が認められた(HR:0.617、95%CI:0.409~0.930)。・アルツハイマー病(2,231イベント)では、ARB群で低い傾向は認められたものの、統計学的に有意ではなかった(HR:0.930、95%CI:0.849~1.018)。・5年後の認知症累積発症率は、ARB群が8.0%、CCB群が8.8%であった。・治療中の収縮期血圧および拡張期血圧は両群でほぼ同等であった。 著者らは、「これらの結果は、ARB群で認められた認知症リスクの低下が、より血圧が下がったことだけでは説明しにくいことを示している。とくに血管性認知症で強い関連がみられたことから、ARBが脳血管の老化、微小血管障害、血管内皮障害などに影響する可能性が考えられる」と考察している。

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フィネレノンは非糖尿病CKDのeGFR低下を抑制する(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しい? 非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(non-steroidal mineralocorticoid receptor antagonist:nsMRA)であるフィネレノン(商品名:ケレンディア)の非糖尿病慢性腎臓病(CKD)の腎機能低下抑制効果について、最近、二重盲検無作為化比較試験(RCT)のFIND-CKD研究の2報が報告された。1報は非糖尿病CKD患者全体を対象とした解析(Heerspink HJL, et al. N Engl J Med. 2026;395:533-545.)であり、もう1報は、そのうち糸球体疾患を有する患者に限定した探索的サブ解析(CLEAR!ジャーナル四天王「フィネレノンは糸球体疾患由来のCKDに対しても腎保護的である可能性がある」)である。これらの解析から、フィネレノンには、非糖尿病CKD患者全体でeGFRスロープの低下を遅延化させる腎保護効果があることが示された。CKD腎保護薬としてのフィネレノンの位置付け 糖尿病を合併するCKDに対する腎保護療法としては、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(nsMRA)、およびGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)の4剤が推奨されている。このうち、RAS阻害薬とSGLT2阻害薬は第1選択薬として推奨されている。一方、nsMRAおよびGLP-1 RAは、これらの薬剤に上乗せして使用する薬剤として推奨されている(KDIGOガイドライン:Levin A, et al. Kidney Int. 2024;105:684-701.)。これらの推奨の根拠となったエビデンスは、糖尿病CKD患者を対象としたFIGARO-DKD試験およびFIDELIO-DKD試験、ならびに両試験の統合解析であるFIDELITYの成績である。一方、非糖尿病CKDではフィネレノンに関するRCTは実施されていなかった。今回のFIND-CKD研究で得られた非糖尿病CKDにおける肯定的な結果と、これまでに蓄積されてきた糖尿病CKDにおけるエビデンスを合わせて考えると、フィネレノンの腎保護作用は糖尿病の有無にかかわらずCKD全般で期待される可能性が示唆された。本研究の主要結果 FIND-CKD研究は、世界24ヵ国で実施された国際共同第III相二重盲検RCTである。糖尿病を合併しないCKD患者1,584例を対象とし、フィネレノン群793例とプラセボ群791例を比較した。対象患者の腎機能はCKD G3bが中心で、UACRは大部分がA3に相当する中等度~高度アルブミン尿を呈していた。また、57.0%は糸球体疾患を原疾患とするCKDであり、99.8%が最大耐用量のRAS阻害薬による治療を受けていた。 主要評価項目は、ベースラインから32ヵ月時点までのeGFRの平均年間変化率である総eGFRスロープ。その結果、eGFRの平均年間変化率は、フィネレノン群で-3.3mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-3.6~-3.1)、プラセボ群で-4.0mL/分/1.73m2/年(95%CI:-4.3~-3.8)であり、群間差は0.7mL/分/1.73m2/年(95%CI:0.3~1.1、p<0.001)であった。 副次評価項目には、腎・心血管複合イベント、腎複合イベント、心血管複合イベントなど。腎・心血管複合イベントの発生リスクは、フィネレノン群でプラセボ群と比較して有意に低かった(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.60~0.99、p=0.04)。腎複合イベントのHRは0.78(95%CI:0.60~1.01)、心血管複合イベントのHRは0.60(95%CI:0.27~1.33)であった。 高カリウム血症の発現率は、フィネレノン群で17.0%(135例)、プラセボ群で13.3%(105例)であった。今後のCKD治療にどう影響する? CKDにおける腎保護の基本は、蛋白尿を減少させ、適切に降圧することである。加えて、糖尿病では血糖管理が重要であり、慢性糸球体腎炎・IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎などでは、ステロイド、扁桃摘出術、免疫抑制薬などが病態に応じて選択される。フィネレノンによるCKDの腎保護作用は、「MRの過剰活性化→炎症・線維化」という共通の経路を抑制することによる。FIND-CKDは、非糖尿病CKDにおいても同剤が腎保護作用を有するという仮説を検証したRCTである。本研究の意義と展望については、Dr. Robert TotoのEditorial(Toto R. N Engl J Med. 2026;395:600-601.)のコメントは参考になる。Totoは、「フィネレノンは、CKDや高血圧の病態の根底にあるMRの過剰活性化を抑制する可能性がある。FIND-CKD研究の成果は、フィネレノンを『糖尿病CKDの腎保護薬』から、非糖尿病CKDにおいても『MRの過剰活性化による残余リスクを抑制する薬剤』へと位置付ける可能性がある」と展望している。言い換えると、FIND-CKDはフィネレノンを、「糖尿病CKDの薬」から「CKD全般の腎保護薬」へと適応を拡大する根拠を提供した初めての研究ともいえる。もっとも、eGFR低下の遅延抑制に加えて、腎ハードエンドポイント(腎不全や透析開始など)への効果、CKD疾患別の効果、SGLT2阻害薬との併用効果など、今後検討すべき課題は残されている。 現在、国内外のガイドラインにおいて、非糖尿病CKDに対するフィネレノンの使用についての言及はない。しかし、本研究により、今後のガイドライン改訂において、同剤がCKD全般で新たな腎保護の治療選択肢として位置付けられる可能性が高い。実臨床で非糖尿病CKD患者において、フィネレノン投与を考慮すべき患者として、(1)UACRが中等度から高度、(2)eGFRが25mL/分/1.73m2以上、(3)ARBやSGLT2阻害薬による先行治療を行ってもなお残余リスクがある患者、が想定される。また、フィネレノン投与時には、高カリウム血症のリスクを念頭に入れ、血清カリウム濃度を適切にモニターすべきである。

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高血圧管理・治療ガイドライン2025(13):脳出血の降圧(1)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q174

高血圧管理・治療ガイドライン2025:脳出血の降圧(1)Q174『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では降圧目標値が設定・統一されたが、臓器障害合併時の降圧目標も一部追記や変更がされている。脳出血の急性期は、降圧目標をどれぐらいに設定するとよいだろうか?(〇〇〜〇〇mmHgの形で)

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スタチンとARBの併用で認知症リスクは低下するのか

 高血圧と脂質異常症は、認知症の修正可能な危険因子であり、スタチンと降圧薬の併用は保護的な効果をもたらす可能性がある。しかし、特定の薬剤の組み合わせに関するエビデンスは依然として限られている。オーストラリア・タスマニア大学のEyayaw Ashete Belachew氏らは、アンジオテンシンII(Ang-II)産生を増加させる降圧薬(Ang-II産生促進薬)とスタチンの併用と、Ang-II産生を減少させる降圧薬(Ang-II産生抑制薬)とスタチンの併用を、認知症リスクとの関連について比較検討した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌2026年8月号の報告。 オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の大規模な地域住民コホートである45 and Up Studyのデータを用いて、プロスペクティブに検討を行った。対象は、高血圧および脂質異常症を有し、スタチンと降圧薬を併用している45歳以上の患者であった。対象患者を、スタチンとAng-II産生促進薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]、サイアザイド系利尿薬、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬[DHP-CCB])の併用群と、スタチンとAng-II産生抑制薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬[ACEI]、β遮断薬[BB]、非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬[非DHP-CCB])の併用群に分類した。薬剤への曝露は、服薬期間割合(PDC、80%以上)に基づき判定した。1対1の傾向スコアマッチングを用いて、両群のベースライン特性をマッチングさせた。食事、身体活動、併存疾患、併用薬で調整したハザード比(HR)を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・マッチングを行った3万4,610例(各群1万7,305例、平均年齢65.8±8.8歳、平均フォローアップ期間12.4±5.1年)を対象とした解析において、スタチンとAng-II産生促進薬の併用群は、スタチンとAng-II産生抑制薬の併用群と比較し、認知症リスクの12%低下(HR:0.88、95%信頼区間[CI]:0.79~0.98)および全死亡リスクの13%低下(HR:0.87、95%CI:0.82~0.93)との関連が認められた。・ロスバスタチンまたはアトルバスタチンとAng-II産生促進薬の併用は、シンバスタチンとAng-II産生促進薬の併用と比較し、より大きな有益性を示した(各々、HR:0.43[95%CI:0.36~0.50]、HR:0.74[95%CI:0.64~0.84])。・これらの効果は男女ともに一貫して認められた。しかし、保護的な関連は65~74歳の年齢層でのみ観察された。また、ARBを含む併用療法は、ACEIを含む併用療法と比較し、より優れた有益性を示した。・死亡を競合リスクとして考慮したモデルを含む感度分析においても、これらの結果は頑健であった。 著者らは「スタチンとAng-II産生促進薬の併用は、認知症リスクの低下と関連していた。とくに、ロスバスタチンまたはアトルバスタチンとARBの併用で、より大きな有益性が確認された。このことは、認知機能への有益性が治療選択の判断材料となりうることを示唆している。今後は、ランダム化比較試験によってこれらの知見を検証し、その根底にあるメカニズムを解明する必要がある」としている。

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第39回 怖い咽頭痛、見逃せない咽頭痛【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)咽頭痛の鑑別疾患を理解しよう!2)危険な咽頭痛を疑うサインを知ろう!3)心血管疾患も忘れずに鑑別しよう!【症例】65歳男性咽頭痛を主訴に救急外来を独歩受診した。●受診時のバイタルサイン意識清明血圧108/74mmHg脈拍52回/分(整)呼吸18回/分SpO297%(RA)体温35.9℃瞳孔3.5/3.5mm+/+既往歴高血圧内服薬詳細不明だが降圧薬を1剤内服している咽頭痛の鑑別喉の痛みを訴え来院した患者さんではどのような疾患を考えるでしょうか。頻度が高いのはウイルス性咽頭炎です。細菌性では、A群溶血性レンサ球菌(group A Streptococcus:GAS)による咽頭炎が代表的です。その一方で、見逃してはいけないものとして、急性喉頭蓋炎などの“killer sore throat”が挙げられます1)。また、頻度は決して高くはありませんが、初診時に必ず意識しておいてほしいのが心血管疾患です2)(表1)。急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)の放散痛(関連痛)は有名ですね。表1 咽頭痛の鑑別疾患画像を拡大する心筋虚血では、前胸部痛だけでなく、頸部、顎、肩、上肢、背部、上腹部の痛みや不快感が生じることがあります。咽頭の痛み、締めつけ感、灼熱感、詰まり感として自覚されることもあります。これは、心臓からの内臓感覚入力と体性知覚入力が中枢神経系で収束するために生じる関連痛と考えられています。危険な咽頭痛の見極め方:発症様式、姿勢、痛みの程度に注目危険な咽頭痛と聞くと、表1のkiller sore throatがパッと思いつくでしょう。もちろんそれらも重要なのですが、心血管疾患も忘れずに意識するようにしましょう。初療では、“Hi-Phy-Vi”(History,Physical examination,Vital signs)を評価する必要があります。なかでも、まずは以下の3点に注目するとよいでしょう。(1)突然発症か否か感染症が突然発症することはありません。数時間から数日かけて症状が進行するのが一般的です。それに対して、心筋梗塞や大動脈解離は秒から分の単位で発症します。そのため、発症様式、とくに突然発症か否かを意識して確認することが重要です。「痛みが生じていたときに何をしていたのか」を確認し、発症時の様子が頭に浮かぶように確認しましょう。(2)姿勢に注目患者さんの姿勢に注目しましょう。患者さんは自身が最も呼吸がしやすい姿勢を自然ととっているはずです。座位で前傾姿勢、頸部を伸展させ、顎を突き出すような姿勢をとっていたら要注意です。これは、腫脹した喉頭蓋や周囲の組織による気道狭窄を代償しようと、上気道をなんとか開通させようとしているものであり、気道緊急ととらえ迅速な対応が求められます。“tripod position”や“sniffing position”と呼ばれますよね。(3)痛みで唾が飲み込めなかったら要注意咽頭痛のために固形物を飲み込みにくいことは、通常の咽頭炎でも起こります。しかし、「飲水も難しい」「唾液を飲み込めない」「口から唾液が垂れている」という場合には要注意です。唾液を処理できないほどの嚥下痛や流涎に加えて、含み声、嗄声、呼吸困難、吸気性喘鳴(stridor)などを認める場合には、急性喉頭蓋炎など急を要する病態を考える必要があります。表2の急性喉頭蓋炎の症状は頭に入れておきましょう3)。表2 急性喉頭蓋炎の症状バイタルサインはもちろん重要です。ただし、SpO2は酸素化の指標であり、上気道の開存性を直接示すものではありません。急性喉頭蓋炎などでは、SpO2が保たれていても気道狭窄が進行している可能性があります。呼吸数やSpO2だけで安心せず、呼吸仕事量、吸気性喘鳴、声の変化、姿勢、流涎、唾液を嚥下できるかといった所見を重視しましょう。咽頭痛の注意点「喉はあまり腫れていないので大丈夫そう」と判断してはいないでしょうか。咽頭といっても上咽頭・中咽頭・下咽頭が存在し、扁桃炎などで異常所見が認められる口蓋扁桃など中咽頭の所見は確認できても、その奥の喉頭蓋は目視することは困難です。つまり、かなり痛がっているのに喉が腫れていない、そのような場合にはむしろ安心するのではなく、焦らないといけないのです。今回の症例では、発症様式を確認すると仕事中に数分でピークに達する咽頭痛であり、嚥下にはとくに問題はありませんでした。ACSも考慮し胸部症状を聞いてみると、「胸部に違和感がある」と訴え、心電図を確認すると前胸部誘導でST上昇が認められました。ST上昇型心筋梗塞(ST-elevation myocardial infarction:STEMI)だったのです。咽頭痛を訴える患者さんは、感染症の流行期には救急外来を数多く受診します。本症例も、トリアージの段階で心筋虚血が鑑別に挙がらなければ、心電図が記録されないまま待合室で待つことになったかもしれません。今回の症例では、トリアージナースの素晴らしい判断により早期に心電図が記録され、STEMIの診断と迅速な再灌流治療につなげることができた1例でした。 1) Miller JM. et al. Clin Infect Dis. 2024:ciae104. 2) 坂本壮. それって本当に咽頭炎?!見逃せない救急・見逃さない救急.プライマリ・ケア. 2022;Vol.7:No.1. 3) Sideris A, et al. Laryngoscope. 2020;130:465-473.

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高血圧管理・治療ガイドライン2025(12):薬物療法(2)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q173

高血圧管理・治療ガイドライン2025:薬物療法(2)Q173『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)のほかに新規で推奨された高血圧症の内服薬はないが、従来の内服薬を含め、内服薬がG1(グループ1)からG3までグルーピングされた。G2降圧薬は何か?

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「よく転ぶようになった」と言う80歳女性、現処方6剤のうち見直すべきは?【高齢者処方のデザイン】第5回

【症例】患者80歳・女性80歳女性。10年前にうつ病と診断され、前医からアミトリプチリン50mg/日を継続投与されている。既往に高血圧、軽度認知機能低下、脂質異常症、変形性膝関節症、10年前からの便秘症があり、降圧にヒドロクロロチアジド(HCTZ)12.5mgとアムロジピン5mg、便秘に酸化マグネシウム 約1.0g/日、脂質異常症にアトルバスタチン10 mg、変形性膝関節症の疼痛時にアセトアミノフェン500mg 頓用が処方されている。家族に付き添われて来院し、「半年で2回転倒した」「口がいつも乾く」「便が出にくい」「立ちくらみがする」と訴える。本人は「最近忘れっぽい」と自覚するが、抑うつ症状は安定している。診察上、臥位血圧138/82に対し起立3分で108/64と起立性低血圧を認め、脈拍上昇は乏しい。eGFR 55、Na 138、K 3.9、ALT 21、補正Ca 9.2。MMSE 24/30。【Before:前医の処方箋】A)アミトリプチリン 25mg 1日2回 朝食後・就寝前B)ヒドロクロロチアジド 12.5mg 1日1回 朝食後C)アムロジピン 5mg 1日1回 朝食後D)酸化マグネシウム 330mg 1日3回 毎食後E)アトルバスタチン 10mg 1日1回 夕食後F)アセトアミノフェン 500mg 疼痛時頓用A)アミトリプチリン 25mg 1日2回 朝食後・就寝前B)ヒドロクロロチアジド 12.5mg 1日1回 朝食後C)アムロジピン 5mg 1日1回 朝食後D)酸化マグネシウム 330mg 1日3回 毎食後E)アトルバスタチン 10mg 1日1回 夕食後F)アセトアミノフェン 500mg 疼痛時頓用この6剤の中で、まず見直すべき薬はどれか? 1) 2023 American Geriatrics Society Beers Criteria Update Expert Panel. J Am Geriatr Soc. 2023;71:2052-2081. 2) Boustani M, et al. Aging Health. 2008;4:311-320. 3) Coupland C, et al. BMJ. 2011;343:d4551. 4) Mori H, et al. J Clin Biochem Nutr. 2019;65(1):76-81. 5) Musini VM, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014:CD003824. 講師紹介

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婦人科腫瘍の循環器合併症~血栓症と高血圧~/日本婦人科腫瘍学会

 婦人科がんと循環器疾患の関連は深い。第68回日本婦人科腫瘍学会学術集会にて、大阪がん循環器病予防センターの向井 幹夫氏は「婦人科腫瘍学と腫瘍循環器学の連携」と題し、両者の密接な関係について紹介した。婦人科腫瘍とがん関連血栓症(CAT) 婦人科腫瘍患者は、閉経後の動脈硬化リスク上昇に加え、卵巣摘出後の外科的閉経や薬物治療により心血管イベントリスクが増大する。中でも、CATへの対応は婦人科腫瘍の診療においてきわめて重要である。 がんはTissue Factor(TF)やサイトカイン、さらにマイクロパーティクルを分泌して凝固系を活性化し血栓を形成する。がんはこの血栓を利用して転移するのである。がん自体による血栓形成以外に、薬剤による血栓形成も問題となる。婦人科がんで汎用される内分泌薬やパクリタキセル、タキサンなどの化学療法薬は血栓症合併リスクが高い。 日本の固形がん1万例における静脈血栓塞栓症(VTE)の発症を前向きに調べたCancer VTE Registryによれば、全体集団では5.9%、婦人科腫瘍では5.5%にVTEが認められた。また、婦人科腫瘍800例超におけるVTEの発症と危険因子を調べたGOTIC-VTE試験では、全体のVTE発症は5.8%、卵巣・卵管・腹膜がんでは13.7%に上る。その多くは無症候性であり、近位部よりも遠位部が多かった。婦人科腫瘍における脚の腫れは治療によるリンパ浮腫とみなされがちだが、末梢の血栓が隠れているケースは多いと、向井氏は注意を促す。 『肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン』2025年改訂版では、がん関連VTEに関する記載が追加された。そこでは、活動性がん患者の肺血栓塞栓症/中枢型深部静脈血栓症(DVT)の治療は、がんが治癒しない/活動性がなくならない限り継続を考慮すること、中枢型DVTの延長治療には低用量DOACを考慮することなどが記載されている。婦人科腫瘍とがん関連高血圧(Onco-Hypertension) がん治療関連高血圧では、がん由来のサイトカインや化学療法の血管内皮障害により、通常の高血圧より急速に病態が重篤化する。通常5年かかるプラーク形成が、これらの薬剤では1年程度で起こる可能性があるという。 血管新生阻害薬は投与直後から血圧を上昇させ、長期使用で血管内皮の障害を引き起こす。そのほかプラチナ系薬、アルキル化薬、PARP阻害薬、アロマターゼ阻害薬など婦人科腫瘍の治療で汎用される抗がん剤には血圧を上昇させるものが多い。 『高血圧管理・治療ガイドライン』2025年改訂版では、担がん患者の項が追加され、がんと高血圧の双方向性や治療ステップが示されている。そこでは、がん治療患者の降圧治療開始時期と降圧目標、降圧薬の第1選択、治療抵抗性への対応などが取り上げられている。 婦人科腫瘍における循環器合併症の管理には、ライフステージ、性ホルモン、血栓・出血リスクといった婦人科特有の課題がある。より良い循環器疾患の合併症管理には、婦人科腫瘍医と循環器医の情報共有と連携が大きな鍵を握ることは間違いない。

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閉塞性睡眠時無呼吸へのCPAP、不眠症併存例でより血圧低下

 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と不眠症の併存(comorbid insomnia and obstructive sleep apnea:COMISA)は血圧コントロール悪化と関連している。今回、中国・Capital Medical UniversityのShuang Li氏らは、4週間の持続陽圧呼吸療法(CPAP)による降圧効果をCOMISA患者とOSA単独患者で比較したところ、COMISA患者で収縮期血圧が有意に低下したことがわかった。Chest誌オンライン版2026年7月31日号に掲載。 本研究は前向きコホート研究で、OSAおよび高血圧を有する成人71例を対象に、4週間のオートCPAPを実施した。DSM-5基準に基づき、COMISA群(22例)とOSA単独群(49例)に層別化した。主要評価項目は、臨床的に意義のある24時間収縮期血圧の低下(5mmHg以上の低下)、副次評価項目は、24時間・日中・夜間の収縮期および拡張期血圧の絶対的変化などであった。 主な結果は以下のとおり。・4週間のCPAP後、COMISA群はOSA単独群と比較して、24時間収縮期血圧が有意に低下した(-6.0±8.2mmHg vs.-0.3±6.5mmHg、p=0.002)。この効果は、日中および夜間収縮期血圧においても一貫して認められた。・不眠症状は主要評価項目と独立して関連していた(調整オッズ比:5.62、95%信頼区間:1.50~21.15)。・24時間・日中・夜間の収縮期血圧の低下との関連は、ボンフェローニ補正(α=0.017)後に有意ではなくなった。 本結果から、著者らは「COMISAは、CPAPに対する収縮期血圧低下反応の増強、とくに臨床的に意義のある24時間収縮期血圧の低下を達成する臨床的フェノタイプを示す。不眠症はこの効果と関連する独立した因子であり、両方の睡眠障害に対処することが心血管アウトカムを最適化できる可能性を示唆している。COMISAにおけるCPAPのアドヒアランスを向上させるための戦略はきわめて重要である」としている。

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高血圧の日本人、大腸がん発症率が高い

 高血圧と大腸がん発症率の関連については依然として議論されている。今回、静岡社会健康医学大学院大学の水野 仁美氏らが、日本の大規模コホートデータを用いて、高血圧と大腸がん発症率の関連を検討したところ、降圧薬非服用者では男性において高血圧と大腸がん発症率が関連し、降圧薬服用者では女性において高血圧と大腸がん発症率が関連していた。一方、血圧に関する多遺伝子リスクスコアと大腸がん発症率には関連はみられなかった。Hypertension Research誌オンライン版2026年7月28日号に掲載。 本研究は、2012~22年に収集された静岡地域の保険請求データと健康診断データを含む静岡県国保データベースを用いた集団ベースの後ろ向きコホート研究である。プロペンシティスコアマッチングを用いて、正常血圧群と高血圧群の大腸がん発症率を比較し、死亡を競合リスクとしてGray検定を行い累積発症率を分析した。また、日本多施設共同コホート研究(J-MICC STUDY)のデータを用いて、血圧に関する多遺伝子リスクスコアを解析し、遺伝学的に決定された高血圧感受性が大腸がん発症率に影響するかどうかを評価した。 主な結果は以下のとおり。・降圧薬非服用者において、正常血圧群が11万3,724人、高血圧群が8万5,399人であった。追跡期間(中央値:4.38年)中に、正常血圧群では1,130人、高血圧群では850人に大腸がんが発症した。プロペンシティスコアマッチングを行った結果、高血圧群における大腸がん発症率が有意に高く、ハザード比は1.15(95%信頼区間:1.02~1.30)であった。男女別に解析すると男性のみでこの関連が認められた。・降圧薬服用者では、女性において大腸がんリスクが高かった。・血圧に関する多遺伝子リスクスコアと大腸がん発症率との間に関連は認められなかった。 著者らは、「疫学的結果と遺伝学的解析との不一致に関して、これまで認識されていなかった大腸がんと高血圧の共通環境要因の可能性を含め、慎重な解釈が必要」としている。

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orforglipronはSGLT2阻害薬を超えた存在になるか?:ACHIEVE-2試験から(解説:永井聡氏)

 orforglipronは、空腹時の服用や飲水制限といった条件が不要で、食後投与が可能な経口GLP-1受容体作動薬である。本剤の2型糖尿病に対する実薬対照RCTとしてはすでにACHIEVE-3試験が発表されており、低用量(12mg)でも経口セマグルチド14mgに対して有意なHbA1c低下を示し「勝利」を収めている1)。 今回取り上げるACHIEVE-2試験は、メトホルミンでコントロール不十分な2型糖尿病患者を対象に、orforglipron(3/12/36mgカプセル)とSGLT2阻害薬ダパグリフロジン10mgを比較した国際多施設共同試験である。結果は、orforglipronが全用量においてダパグリフロジンに対し血糖降下作用の非劣性および優越性を示し、再び「完全勝利」となった。PIONEER 2試験において経口セマグルチド14mgがエンパグリフロジン25mgを凌駕したことを踏まえれば2)、この結果は想定内とも言えるが、実臨床に与える影響は小さくない。 本邦の2型糖尿病の薬物治療アルゴリズム3)では、病態に応じた薬剤選択(肥満)の推奨薬として、メトホルミン、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の順に記載されている。SGLT2阻害薬が優先される理由は、豊富な心血管・腎臓への保護効果のエビデンスに加え、既存の経口GLP-1受容体作動薬が服用条件に制約があるのに対し、処方や内服が容易であるためである。しかし、他の降圧薬等と一包化も可能で服薬条件に縛られないorforglipronの登場は、血糖降下作用と利便性の両面でSGLT2阻害薬を上回る存在になりうる。現在実施中の心血管アウトカム試験(ACHIEVE-4)の結果次第では、将来的に推奨順位が逆転する可能性もある。 一方で、試験結果の解釈は慎重にすべき点もある。第一に、orforglipron群は盲検化されたがダパグリフロジン群は非盲検であったため、新薬への「期待バイアス」が生じた可能性は否めず、orforglipronの臨床効果は過大評価となった可能性である。第二に、消化器症状による脱落率の高さである。本試験では、ダパグリフロジン群の6%に対し、orforglipron群では15%以上と高率であった。継続できなければ期待される恩恵にあやかれない。第三に、DECLARE-TIMI 58やDAPA-CKDなどで確立された長期安全性や心腎保護、二次予防の観点では、依然としてダパグリフロジンに軍配が上がることである。新薬への「期待バイアス」は患者だけではなく処方する医師にも起こりうる。さらに盲点となるのが薬物相互作用である。CYP3A4に関連する薬剤(クラリスロマイシンやイトラコナゾール)などではorforglipronとの併用注意・併用回避が必要な場合があり、多剤併用中の高齢者への処方はとくに注意が必要である。 ともあれ、かつて脂質異常症の治療は食事療法が主体であったが、ストロングスタチンの登場により、厳格な食事指導が緩和された歴史がある。糖尿病においても食事療法が基本であることに変わりはないが、強力な食事制限なしに血糖値と体重の改善をもたらすorforglipronは、まさに糖尿病領域における「ストロングスタチン」となる可能性がある。日進月歩でGLP-1関連薬は次々と新薬開発が進むが、個々のライフスタイルに合わせた処方や早期介入が進むことで、糖尿病寛解が夢物語でなくなることを願うばかりである。

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早朝の収縮期血圧、新築マンションへの引越しで◯mmHg低下

 高断熱・高気密および省エネ・創エネ性能を備えた新築マンション「ZEH-M(Net Zero Energy House Mansion)」への転居前後での冬季の家庭血圧について、同一被験者で前後比較を行った結果、高血圧治療中の患者や血圧高値者において、早朝収縮期血圧が最大で約7mmHg有意に低下した。本結果は大阪大学の中神 啓徳氏らの研究グループの研究によって明らかになり、Hypertension Research誌2026年7月13日号に掲載、第26回日本抗加齢医学会総会で報告された(2026年6月26〜28日開催)。 日本の多くの家屋は冬季の室温が低く、WHOが健康維持のために勧告している最低室温18℃を満たさない住宅が約9割に上る。早朝に血圧が急上昇するモーニングサージは、とくに冬季において脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントを引き起こす強力なトリガーとして知られており、室温を高く保つことがリスク低減に重要であると考えられている。 そこで同氏らは、近年の新築マンションにおいてZEH-Mの普及による室内環境の改善が急速に進んでいることに着目し、ZEH-Mへの転居が居住者の室内温熱環境および家庭血圧に及ぼす影響を明らかにすることを目的として検証を行った。研究の詳細とその結果 本研究は、全国のZEH-M仕様の新築マンション(大京および穴吹工務店が供給・分譲)を契約した人を対象に実験モニターを募集。対象は、治療中の重大な疾患がない健康な複数人世帯とした。同一被験者において、転居前(一般的な旧居:2024年2〜3月)と転居後(新築ZEH-M:2025年2月)に、洗面所の室温測定および上腕式血圧計を用いた家庭血圧・脈拍の測定(1日4回:起床後30分以内2回、就寝前2回)を3週間実施した。このうち、14日以上の血圧測定データがそろった起床後データ179例分、就寝前データ178例分を最終解析対象とした。 主な結果は以下のとおり。・被験者の平均年齢は42.5±11.4歳、このうち高血圧(降圧薬内服中)は16例(9%)、血圧高値(早朝収縮期血圧125mmHg以上)は32例(18%)であった。・179例の早朝収縮期血圧の解析では、転居前後に有意な変化は認められなかった(転居前113.9mmHg vs. 転居後114.4mmHg、p=0.403)。・高血圧(降圧薬内服)群では、早朝の収縮期血圧が転居前から転居後に約7mmHgの有意な低下を認め(130.3±13.0mmHg vs.122.9±11.9mmHg、p=0.018)、血圧高値(早朝収縮期血圧125mmHg以上)の群でも約5mmHgの有意な低下を認めた(135.9±9.9mmHg vs.131.3±14.4mmHg、p=0.020)。・年齢別解析において、60歳以上のサブグループ(18例)では早朝収縮期血圧が有意に低下した(125.7±17.4mmHg vs.119.5±14.7mmHg、p=0.032)。ただし、BMI 25以上の肥満者(30例)では、血圧が高いにもかかわらず転居前後で血圧に有意な変化はみられなかった。・高血圧群や血圧高値群において、早朝拡張期血圧(高血圧群で-5.4mmHg、p=0.003)および就寝前の収縮期血圧(高血圧群で-7.3mmHg、p=0.017)も転居後に有意な低下を認めた。・転居後の実測洗面室温は、日中・夜間ともに多くの家庭で15℃以上を保っており、夜間でも室温が下がりにくい良好な温熱環境が確認された。・アンケートによる主観的な寝室の温熱環境評価(寒さの感覚)も、高血圧群を中心に大幅に改善した一方で、肥満者では室温変化に対する主観的な影響が少ない傾向が示唆された。居住空間の変化、7mmHgの降圧を実現 中神氏は、循環器内科の立場から冬季の血圧変動の危険性に触れ、「モーニングサージの時間帯、とくに冬の朝は危険だと昔から言われている。血圧にはさまざまな急性リスク因子があるが、それらが重積して血圧が跳ね上がったときに心血管イベントが発生する。だからこそ、室温を適温に保つことは非常に重要な要素になる」と説明。また、転居後の洗面室温のデータを示しながら、ZEH-M仕様のマンションでは、夜間であってもそれほど室温が下がることがなかったことに触れ、アンケート結果からも主観的な寒さが大幅に改善している点を強調した。 一方で、対象者全体の解析で有意差が出なかった点については、「新築マンション購入者を対象としたため、平均年齢が42.5歳と若く全体の平均血圧も低かった。本研究で(全体での)差が出なかった要因の1つはここにある」と分析。BMI 25以上の肥満者で血圧や主観的温感の変化がみられなかったことに対しては、「肥満傾向の人は寒さへの耐性があるのではないか」と言及した。 最後に、高血圧群で認められた約7mmHgという降圧効果の大きさについて、「高血圧ガイドラインの生活習慣修正において、体重を1kg減らすと血圧が約1mmHg下がると言われている。今回のように室温によって収縮期血圧を7mmHg下げようと思うと、7kgも減量しなければならない計算になる。そのように考えると、住環境の室温を高く保つことによる今回の降圧効果は、非常に大きなインパクトを与える結果だ」と締めくくった。

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高齢肥満者の肥満関連リスク減少、日本含む7ヵ国データを解析/Lancet

 肥満および高血圧、脂質異常症に対して有効な治療法が存在するようになり、先進国の肥満高齢者は降圧薬や脂質低下薬の使用率が高くなっている。その恩恵を受けて肥満関連リスクが低下していると考えられるが、若年の肥満成人の心血管代謝リスクは依然として高いままであった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMajid Ezzati氏らNCD Risk Factor Collaboration(NCD-RisC)が行った、日本を含む7ヵ国・110の健康サーベイのデータ解析の結果で示された。著者は、「長期的な心血管疾患およびその他の合併症を予防するため、公衆衛生・医療システムプログラムでは、これら若年層を対象とした早期の生活習慣への介入、スクリーニング、および適切な場合は薬物療法による介入を実施すべきである」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年7月1日号掲載の報告。日本を含む7ヵ国の1990~2024年の健康サーベイデータを解析 研究グループは、先進国における肥満者と標準体重(標準BMI値)者の代謝特性を明らかにし、肥満者の肥満関連リスクが低下しているかを評価するため、各国住民ベースの健康サーベイデータを用いた解析を行った。具体的には、1990~2024年に7ヵ国(日本、韓国、台湾、タイ、フィンランド、英国、米国)で行われた110の健康サーベイに参加した20~79歳・97万8,425人の参加者データを用いた。 主要アウトカムは、収縮期血圧(SBP)、非HDLコレステロール(non-HDL-C)、HDLコレステロール(HDL-C)の平均値、および降圧薬、脂質低下薬の使用者の割合であった。 これらアウトカムについて、(1)標準体重(BMI値20.0以上25.0未満)の参加者における経時的変化、(2)肥満者(クラスI肥満者[BMI値30.0以上35.0未満]、クラスIIまたはIII肥満者[BMI値35.0以上])と過体重者(25.0以上30.0未満)と標準体重者間の変化を評価するために、グラフによる提示と傾向分析を行った。肥満の中高年者における脂質低下薬や降圧薬の使用がリスク収束に 平均non-HDL-C値と平均SBP値は、とくに40歳以上の参加者で低下していた(タイの一部の性・年齢群を除く)。すべての国、年齢層および肥満者・過体重者のBMI区分を統合した場合、標準体重者との平均non-HDL-C値の差の10年当たりの変化量は、女性は-0.05mmol/L(95%信頼区間[CI]:-0.07~-0.03)、男性は-0.07mmol/L(95%CI:-0.09~-0.05)であった。同様に平均SBP値は、女性で-0.7mmHg(95%CI:-1.0~-0.4)、男性で-0.6mmHg(95%CI:-0.9~-0.4)であった。 これらの値の低下は、標準体重者と比べて肥満者(とくにクラスII/III肥満者)で大きく、40歳以上では肥満者と標準体重者の値の差が縮小していた。その結果として、英国、米国、タイ、韓国、日本では、肥満の高齢者の平均non-HDL-C値と平均SBP値は、標準体重の高齢者と同程度か、良好である場合もみられた。そして、こうした傾向は、標準体重の中高年者と比べて肥満の中高年者における脂質低下薬や降圧薬の使用が大きく増加したことに伴っていた。 すべての国、年齢層および肥満者・過体重者を対象に、標準体重者と比較した脂質低下薬使用率の差の増加に関する統合推定値は、10年当たり女性で1.5%ポイント(95%CI:1.0~2.1)、男性で1.6%ポイント(95%CI:1.0~2.2)であった。同様に降圧薬については、女性で0.7%ポイント(95%CI:0.3~1.0)、男性で2.0%ポイント(95%CI:1.3~2.8)であった。 HDL-C値については、肥満者よりも標準体重者で大きく上昇し、両者間の乖離が進んでいた。 40歳未満では、肥満または過体重者と標準体重者の間のギャップにほとんど変化がみられなかった。若年成人ではBMI値を問わず、脂質低下薬や降圧薬を使用する人が少なかった。

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複数の降圧薬とGLP-1RA併用で低血圧関連イベント増加の可能性

 複数の降圧薬を服用している人がGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)を併用した場合、めまいや失神、転倒などの低血圧関連イベントのリスクが高まることを示唆するデータが報告された。高齢者や2型糖尿病(T2DM)患者はそのリスクがより高い可能性があるという。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部およびノースウェスタン・メディシンのMicah Eimer氏らが、米国内分泌学会年次集会(ENDO 2026、6月13~16日、シカゴ)で発表した。 GLP-1RAは、代謝・心血管・腎疾患の治療薬として広く処方されている。その副作用の多くは消化器症状であるが、低血圧が生じたとの症例報告も存在する。Eimer氏らは、電子カルテデータを用いて、セマグルチド、チルゼパチド、リラグルチドのいずれかが処方開始された外来患者を対象とする、個人内比較による後向き観察研究を実施した。 解析対象は、18歳以上で少なくとも2種類の降圧薬が処方され、血圧測定結果が記録されていた4万2,262人とした。GLP-1RA処方開始前後での低血圧関連イベントの発生率を評価した。低血圧関連イベントは、低血圧の新規診断、失神または前失神状態、めまい、転倒、収縮期血圧90mmHg以下の記録、昇圧薬の処方、これらで構成される複合エンドポイントとして定義した。 解析の結果、GLP-1RAの処方開始後に、低血圧関連イベントの発生率が有意に上昇していた。処方開始後6カ月では、発生率が8.7%から10.2%へと増えていた(P<0.001)。同様に、開始後12カ月では、13.6%から14.3%へと増加していた(P=0.003)。開始後24カ月では、17.7%から18.1%へと増加したものの、統計学的有意差は認められなかった(P=0.061)。 また、GLP-1RAが処方された患者における低血圧関連イベントは、特に65歳以上の高齢者とT2DM患者で多い傾向が認められた。具体的には、対象集団に占める高齢者の割合は37%だったのに対し、低血圧関連イベントの53%を高齢者が占めていた。同様に、T2DM患者は対象集団の63%を占めていた一方で、低血圧関連イベントの75%を占めていた。 なお、40例を対象としたサブ解析では、GLP-1RAが処方された患者の約25%で、追跡期間中に降圧薬の処方薬剤数または投与量が減らされていた。これも、低血圧を回避するために降圧薬が調整された可能性を示唆するものと考えられた。また、GLP-1RA処方後の低血圧関連イベントの増加との関連は、体重変化を考慮しても維持された。 Eimer氏は、「GLP-1RAの効果は絶大で私もその使用を支持する1人だが、一部の患者では低血圧に注意する必要があると考えている。既に複数の降圧薬が処方されている患者の場合、医師は注意深く経過を観察する必要があるだろう」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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一般的な降圧薬、2型糖尿病患者の腎障害リスク上昇と関連

 高血圧に対して広く処方されている降圧薬が、2型糖尿病患者の腎障害リスクを高める可能性を示唆するデータが報告された。ジヒドロピリジン系カルシウムチャネル拮抗薬(DCCB)が処方されている患者では、腎障害の発生リスクが、同薬が処方されていない患者に比べて33%高いという。ラビン医療センター(イスラエル)のTimna Agur氏らが、第63回欧州腎臓学会学術集会(63rd ERA Congress、6月3~6日、英・グラスゴー)で発表した。 DCCBに該当する具体的な薬剤名としては、アムロジピンやニフェジピンなどが挙げられる。研究者らによると、これらの薬剤は血管を弛緩させることで血圧を低下させるように作用し、糖尿病性腎臓病(DKD)患者に対する追加の降圧治療薬として広く処方されている。しかしAgur氏らの研究から、DCCBが処方されている患者では、腎臓保護作用のあるほかの薬剤を服用していても腎障害リスクが高まることが示唆された。同氏は、「われわれの研究結果は、最新の腎保護療法をすでに受けている患者にとって、DCCBの併用が常に最良の選択肢なのかという、重要な疑問を提起するものだ」と述べている。 今回、Agur氏らは、2016~2021年に収集された成人2型糖尿病患者3万1,031人のデータを解析した。全ての患者に、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)とナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2-i)という、DKDの治療を大きく進歩させた2種類の薬剤が処方されていた。1万2,172人(39.2%)にはさらにDCCBが処方され、1万8,859人(60.8%)にはDCCB以外の降圧薬が処方されていた。 約3年半(中央値)追跡し、主要腎イベント(推定糸球体濾過量〔eGFR〕が40%以上低下、または透析や移植を要する末期腎不全への進行)の発生リスクをDCCB処方の有無で比較した。結果に影響を及ぼし得る交絡因子を調整後、DCCBが処方されていた患者は主要腎イベントの発生リスクが33%高いことが明らかになった(ハザード比 1.33、95%信頼区間 1.03~1.73)。 研究者らによると、DCCBは腎臓に血液を送り込む血管を拡張させる一方、腎臓から血液を送り出す血管の拡張作用は弱く、その結果として糸球体内圧が上昇し、腎障害につながる可能性があるという。Agur氏は「データを解析する前は、SGLT2-iなどの腎保護効果がDCCBの潜在的な悪影響を相殺するのではないかと考えていた。しかし、そのような保護効果によってもリスク上昇は打ち消されないことが示された」と語っている。 ただし同氏らは、「今回の研究は観察研究であり、直接的な因果関係は検証できない」と解釈に注意を促しながらも、「DCCBがこの患者集団で非常に広く処方されていることを踏まえると、今回の結果は臨床的に重要な意味を持つ」としている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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家庭血圧測定値の遠隔モニタリングで心血管イベントリスクが低下

 動脈硬化性疾患(ASCVD)と診断された50歳以上の成人において、帯状疱疹(HZ)ワクチンの接種は、主要心血管イベント(MACE)およびその他の心血管アウトカムのリスク低下と関連するという研究結果が、米国心臓病学会年次総会(ACC.26、3月28~30日、米ニューオーリンズ)で発表予定である。 米カリフォルニア大学リバーサイド校のRobert Nguyen氏とAditya Desai氏は、米国のTriNetXデータベースを用い、2018年1月1日~2024年1月1日にASCVDと診断された50歳以上の成人を対象とした後ろ向きコホート研究を実施し、この集団において帯状疱疹ワクチン接種が心血管リスクを低減するかどうかを検討した。傾向スコアマッチング後、HZワクチン接種群27万5,304人と非接種群27万5,304人が解析対象となった。 解析の結果、HZワクチン接種は、MACE、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中のリスク低下と有意に関連していた(ハザード比はそれぞれ、0.54、0.39、0.73、0.73)。さらに、HZワクチン接種は、静脈血栓塞栓症、心不全、心房細動または心房粗動のリスク低下とも関連していた(同0.63、0.67、0.70)。 Nguyen氏は、「このワクチンは、心筋梗塞、脳卒中、死亡のリスク低減に対する心血管保護作用を繰り返し示している。既に心血管疾患を有する高リスク集団では、その効果は一般集団よりもさらに大きい可能性がある」と述べている。 自宅で血圧を測定するよう患者に促すことで、心血管イベントの発生リスクを低減できる可能性を示した新たな研究が報告された。家庭血圧を測定し、その結果を医師と共有した人では、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、心不全による入院や死亡のリスクが約34%低かったという。英エディンバラ大学プライマリケアeヘルス分野名誉教授のBrian McKinstry氏らによるこの研究の詳細は、「European Heart Journal-Digital Health」に5月26日掲載された。 McKinstry氏は、「本研究は、家庭血圧測定値の遠隔モニタリングが血圧を低下させるだけでなく、脳卒中や心筋梗塞の発生も減少させることを示した、これまでで最も強力なエビデンスである」とニュースリリースで述べている。 今回の研究では、2019年3月1日から2021年2月28日の間に第一選択の降圧薬を処方された高血圧患者45万4,180人を対象に、2022年3月1日まで追跡し、家庭血圧測定値の遠隔モニタリングと心血管アウトカムとの関連を評価した。心血管アウトカムは、ACS、脳卒中、コントロール不良の心不全による入院または死亡を対象とした。 対象者のうち9,465人が「Connect Me BP」と呼ばれる遠隔モニタリングサービスを利用していた。このモニタリングサービスでは、患者に家庭血圧の測定を促すショートメッセージが送信され、その測定値が収集される。その後、毎週・毎月・3カ月ごとの測定値の報告書が主治医に送られ、必要に応じて医師が患者に連絡を取る仕組みとなっている。 その結果、遠隔モニタリング群では開始から3カ月以内に血圧の低下が認められ、その効果は1年以上にわたって維持された。この遠隔モニタリングサービスを1年以上にわたり利用した患者と一度も利用しなかった患者(通常ケア群)を対象に、3年間の心血管イベントの発生率を比較したところ、ACSは遠隔モニタリング群で2.7%、通常ケア群で4.0%、心不全はそれぞれ1.1%と3.6%、脳卒中は1.4%と2.2%であった。年齢や性別、降圧薬数などの因子を一致させた遠隔モニタリング群5,297人、対照群18万7,232人を対象に解析した結果、遠隔モニタリング群でACS、脳卒中、心不全による入院または死亡のリスクが33.5%低く(調整オッズ比0.665、95%信頼区間0.501~0.884)、全死因死亡リスクも約40%低かった(同0.602、0.392~0.925)。 論文の筆頭著者であるエディンバラ・ネピア大学のJanet Hanley氏は、「脳卒中、心筋梗塞、心不全は死亡や障害の主要な原因であり、そのリスクを低減できるのであれば大きな意義がある。血圧の遠隔モニタリングは、血圧コントロールの改善を支援することで、このリスク低減に役立つ。その上、このシステムには、簡便で使いやすいという利点もある」とニュースリリースで述べている。 研究グループは今後、心血管リスクがより高い患者において、遠隔モニタリングによりさらに大きな利益が得られるのかを検証する必要があるとしている。 英国心臓財団(BHF)の研究部門ディレクターであるJames Leiper氏は、「高血圧は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める。高血圧と診断された患者は、治療が適切に行われていることを確認するため、綿密なモニタリングを受ける必要がある」と述べている。同氏はまた、「本研究は、自宅で定期的に血圧を測定し、その結果を医師に送信するとともに、測定を促す定期的なリマインダーを受けることが、血圧コントロールの改善に役立つ効率的なアプローチであることを示す新たなエビデンスである」と評価した。さらに同氏は、「今回の研究で示された、重篤な心血管イベントによる入院や死亡リスクの低下は心強い結果である。このような革新的なアプローチは、人々がより長く健康に生活することに貢献する可能性がある」と結論付けている。

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腎デナベーションの国内治療成績と期待されること/メドトロニック

 昨夏に発刊された『高血圧管理・治療ガイドライン2025』での治療に関するClinical Question*に対し、作成委員の合意率100%のもとで盛り込まれた腎デナベーション。2026年2月には『腎デナベーションシステムの適正使用指針』が各関連学会を通じて公表され、翌3月にはその治療システムが国内初の保険適用を取得、2社より同時発売された**。高血圧症治療における唯一の侵襲的治療であることからも、現時点での実施可能施設や施行可能医師は限定的であるが、治療の個別最適化が求められる今、このシステムがどのように活用されていくべきなのだろう―。*CQ16「治療抵抗性高血圧の治療において、腎デナベーションは推奨されるか?」(推奨の強さ2、エビデンスの強さB)**日本メドトロニックの「Symplicity SpyralTM腎デナベーションシステム」、大塚メディカルデバイスの「ParadiseTM 超音波式腎デナベーションシステム」 2026年5月15日、『Symplicity SpyralTM腎デナベーションシステム』の製造販売元である日本メドトロニックが主催するメディアセミナーが開催され、苅尾 七臣氏(自治医科大学循環器内科学部門 教授/日本高血圧学会 理事長)が「治療抵抗性高血圧における治療選択肢の進展―腎デナベーションがもたらす高血圧治療の新たな選択肢」と題し、現時点での治療成績、本治療が適する患者像について解説した。薬剤が到達しない領域の治療に貢献 前述のガイドラインでは、合併症を考慮しながらも“全年齢で130/80mmHg未満”の降圧目標が設定されたが、現状は140/90mmHgでさえも高血圧有病者の27%しか達成できていない。この目標未達者のうち、“真の治療抵抗性高血圧”患者を救い出すためにも腎デナベーション(Renal Denervation:RDN)の保険適応は大きな前進といえる。苅尾氏は「高血圧有病者4,300万人のうち、3ヵ月以上多剤服用を続けていても降圧しない治療抵抗性高血圧患者は約10%(400万人)と推定される」と潜在患者について触れた。また、治療抵抗性高血圧への介入の必要性について、「2007~17年に実施されたJ-HOP研究(日本人における家庭血圧の心血管予後推定能に関する研究)1)からも治療抵抗性高血圧患者では10年間で3人に1人が循環器疾患を発症していたことが明らかになっている」とコメントした。―――――――――――――――――――<RDNの適応となる“真の治療抵抗性高血圧”>◆治療抵抗性高血圧の定義:利尿薬を含むクラスの異なる3剤の降圧薬を用いても血圧が目標値まで下がらないもの・診察室血圧140/90mmHg以上 かつ・診察室外血圧 自由行動下血圧測定(ABPM):24時間130/80mmHg以上、昼間135/85mmHg以上、夜間120/70mmHg以上 いずれかに該当 家庭血圧:朝/晩 135/85mmHg以上、夜間 120/70mmHg以上 いずれかに該当・eGFR40mL/分/1.73m2未満は除外する―――――――――――――――――――期待される治療効果、国内症例から明らかに RDNシステムとは、高周波エネルギー(ラジオ波)あるいは超音波を用いて腎動脈周囲を走行する交感神経線維(遠心路、求心路)を選択的に焼灼することでパーフェクト24時間血圧コントロール2)の達成が可能となるという。同氏はこれまでに実施された国内試験(SYMPLICITY HTN-Japanほか)や7つのシャム対照試験を比較した研究などを踏まえ、「シャム群の降圧には薬剤のOn-Offが影響している可能性が高いが、薬剤を完全OffしたHTN-OFF MED試験でもRDNによる降圧効果が認められている」と述べ、「(多剤)薬物治療では長期持続性がないため、24時間血圧のなかでも夜から朝にかけてのコントロールに難渋するが、RDNではとくに“モーニングサージ型”あるいは“夜間高血圧型”患者の血圧改善が見込まれる」と強調した。 RDNの特徴は、交感神経線維を完全に焼灼するのではなく部分的に焼灼することで、起立性低血圧や腎機能低下などの予測しうる副作用の回避につながっている。一方で、「手技のエンドポイントがない」「ドラッグフリーになるまでの降圧効果が現時点で明らかになっていない」「高周波システムと超音波システムの患者ごとの使い分けに対するエビデンスが不足している」といったウィークポイントもあり、その解決は今後の検討課題であるという。また、二次性高血圧のうち、原発性アルドステロン症例は治療対象外となる。これについて「降圧の作用機序が異なるため、効果が得られにくい可能性がある」と同氏は説明した。学会総会で実施症例を徹底検討!恩恵を受ける患者発掘に注力 本システムを使用するには、日本高血圧学会(JSH)・日本循環器学会(JCS)・日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の3学会合同で作成された適正使用指針ならびにコンセンサスステートメントに則り、認定専門施設でのみ実施可能である。それらの施設には“高血圧RDN治療チーム(HRT)”があり、3学会専門医、看護師、薬剤師、管理栄養士が患者介入し、患者嗜好を共有意思決定(SDM)したうえでようやく適応となる。なお、日本人高血圧患者のRDN嗜好/希望について同氏が調査3)を行った結果、約3割の患者が「希望する」と回答していた。 現在、3学会合同で1例ごとに実施可否の判断がなされ、全国で約10例に実施されている(2026年5月時点)。将来的な適応について同氏は、「脳卒中、急性心筋梗塞、心不全、大動脈解離など、重篤な循環器イベントの抑制を目指していく」と述べ、「現時点での最大の課題は、最も恩恵を受ける対象者を探すこと」だという。 そこで、同氏が会長を務め10月10~12日に開催される第48回日本高血圧学会総会において、実施症例の患者背景やベースライン時の血圧情報(診察室血圧・家庭血圧・ABPMなど)、併存疾患、服薬状況に関する報告がなされる予定だ。これまでに例をみない学会の試みにより、「専門医に向けて、患者発掘や実施可能例の理解につなげていく」と締めくくった。

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降圧薬の有害事象による中止、薬剤クラスで差/JAMA

 降圧薬に関する短期の二重盲検無作為化試験における有害事象や治療中止の発現は、薬剤クラスやレジメンによってばらつきがあり、一部の併用療法では単剤療法と比べて忍容性が優れることが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のNelson Wang氏らによるネットワークメタ解析の結果で示された。レジメンの中には、プラセボよりも有害事象による治療中止率が低く、症状の改善が示されたものもあった。得られた知見について著者は、「試験レベルに基づく結果であり、またネットワークメタ解析の前提条件に依存しているため、すべての患者に適用されるものではない」と述べている。JAMA誌オンライン版2026年5月28日号掲載の報告。4~26週のRCTデータをネットワークメタ解析で評価 研究グループは、短期臨床試験における主要5クラスの降圧薬(ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬)とそれらの併用療法について、有害事象と治療中止について評価した。 創刊日~2024年12月31日のCochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、Epistemonikosを検索し、主要5クラスの降圧薬またはそれらの併用療法に関する二重盲検無作為化試験(追跡期間は4~26週)を特定した。 2人のレビュワーがそれぞれデータを抽出し、固定効果ネットワークメタ解析にて薬剤クラスごとにデータを統合し、オッズ比(OR)と95%信用区間(CrI)および累積順位曲線下面積(SUCRA)を用いて要約を行った。 最終統計学的解析は、2026年4月に実施された。主要アウトカムは、有害事象による治療中止(無作為化された治療の中止と定義)。副次アウトカムは、頭痛、めまい、浮腫、咳の発現などであった。5つの併用療法、2つの単剤療法がプラセボよりも忍容性が優れ、症状を改善 計716試験が解析対象に含まれた。平均追跡期間は8.6(SD 5)週間、被験者は計15万9,362例であり、平均年齢は54.6(SD 7)歳、女性44%、ベースラインの平均血圧値は158/100mmHgであった。12試験に日本人が含まれた。 プラセボとの比較において、有害事象による治療中止率が有意に増加したのはCa拮抗薬(OR:1.43[95%CrI:1.23~1.67]、リスク群間差[RD]:1.2%[95%CrI:0.6~2.0])、ACE阻害薬+Ca拮抗薬(OR:1.46[1.13~1.87]、RD:1.1%[0.2~2.4])、β遮断薬+サイアザイド系利尿薬(OR:1.58[1.04~2.47]、RD:1.7%[0.1~4.3])であった。 ARBを含むすべてのレジメンは、プラセボとの比較において、有害事象による治療中止例が少なかった。統計学的に有意差が認められたのは、ARB単剤(OR:0.73[95%CrI:0.61~0.86]、RD:-0.8%[95%CrI:-1.3~-0.4])、ARB+Ca拮抗薬(OR:0.61[0.47~0.79]、RD:-1.2%[-1.8~-0.6])であった。 ネットワークメタ解析により、5つの併用療法と2つの単剤療法が、有害事象による治療中止に関してプラセボよりもSUCRA値が高く(上位からARB+Ca拮抗薬、ARB+β遮断薬、ARB単剤、Ca拮抗薬+サイアザイド系利尿薬、ARB+サイアザイド系利尿薬、サイアザイド系利尿薬、ARB+Ca拮抗薬+サイアザイド系利尿薬)、プラセボと比較して全般的な症状改善が示唆された。 プラセボと比較して、すべてのレジメンでめまいが有意に増加したが、頭痛はCa拮抗薬を含む3レジメン(Ca拮抗薬、ACE阻害薬+Ca拮抗薬、β遮断薬+Ca拮抗薬)を除いて、すべてのレジメンで有意に減少した。

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75歳以上の降圧薬、ARB vs.Ca拮抗薬~日本人大規模データ

 75歳以上の高齢者では高血圧が多くみられ、心血管疾患や死亡のリスク因子となる。降圧治療の第1選択薬として、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)やカルシウム拮抗薬(CCB)が多く用いられるが、高齢者におけるエビデンスは限られている。そこで、野間 久史氏(統計数理研究所/総合研究大学院大学)、福田 治久氏(九州大学大学院医学研究院)らの研究グループは、本邦の全国規模の医療ビッグデータを用いて、target trial emulationの手法により75歳以上の高齢者におけるARBを含む治療とCCBを含む治療を比較した。その結果、ARBを用いた群はCCBを用いた群と比較して、全死亡、心不全入院、心筋梗塞、脳卒中、主要心血管イベント(MACE)のリスク低下と関連することが示された。本研究結果は、Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2026年4月26日号に掲載された。 研究グループは、全国の医療情報を統合した500万例以上の大規模データベース(LIFE Study)を用いて、後ろ向き観察研究を実施した。対象は、2014年4月~2024年9月のデータに含まれる75歳以上のうち、過去12ヵ月間にARBまたはCCBの処方がなく、新たにARBまたはCCBを開始した2万9,822例とした(ARB群1万37例、CCB群1万9,785例)。主要評価項目は全死亡、副次評価項目は心不全入院、心筋梗塞、脳卒中、MACE、腎アウトカムなどとした。治療開始時点を起点とする新規使用者デザインを用いて、target trial emulationの手法により両群を比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は、ARB群81.7歳、CCB群81.8歳で、女性の割合はそれぞれ57.2%、57.1%であった。追跡期間中央値は4.0年。・追跡期間中に3,487例が死亡した。死亡はARB群1,141例、CCB群2,346例に発生し、ARB群はCCB群と比較して全死亡リスクが有意に低かった(ハザード比[HR]:0.885、95%信頼区間[CI]:0.823~0.951)。5年死亡率はARB群12.7%、CCB群14.8%で、絶対リスク差は-2.1%ポイント(95%CI:-3.1~-1.0)であった。・副次評価項目の心不全入院、心筋梗塞、MACEについてもARB群がCCB群と比較してリスクが低く、脳卒中についてもわずかながらARB群でリスク低下がみられた。一方で、腎アウトカム(持続的なeGFR 40%以上低下、末期腎不全または透析導入)については、両群間で有意差はみられなかった。各評価項目のHR(95%CI)は以下のとおり。 心不全入院:0.843(0.774~0.918) 心筋梗塞:0.867(0.795~0.945) 脳卒中:0.931(0.869~0.998) MACE:0.889(0.848~0.931) eGFR 40%以上低下:1.110(0.773~1.593) 末期腎不全/透析導入:0.611(0.354~1.056) 本研究結果について著者らは、「75歳以上の成人において、ARBを用いた降圧治療はCCBを用いた降圧治療と比較して、全死亡および心不全入院のリスク低下と関連し、心筋梗塞および脳卒中のリスクについても、小さいながら有意な低下が認められた。これらの知見は、75歳以上の高齢者に対して降圧治療を開始する際の薬剤選択に直接関わるエビデンスであり、この集団においてARBを優先的な選択肢として考慮する根拠となる可能性がある」とまとめた。一方で、本研究はtarget trial emulationの手法を用いることでバイアスの低減を図っているものの、観察研究であり、生活習慣や服薬遵守、医師の処方判断などの未測定要因の影響を完全には排除できないことも指摘している。

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