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1.

降圧薬による湿疹性皮膚炎リスクの上昇

 湿疹性皮膚炎(アトピー性皮膚炎)と診断される高齢者が増加しているが、多くの湿疹研究は小児および若年成人を対象としており、高齢者の湿疹の病態および治療法はよく知られていない。高齢者の湿疹の背景に薬物、とくに降圧薬が関与している可能性を示唆する研究結果が発表された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のMorgan Ye氏らによる本研究は、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年5月22日号に掲載された。 本研究は縦断コホート研究であり、英国The Health Improvement Networkに参加するプライマリケア診療所における60歳以上の患者を対象とした。1994年1月1日~2015年1月1日のデータを対象とし、解析は2020年1月6日~2024年2月6日に行われた。主要アウトカムは湿疹性皮膚炎の新規診断で、最も一般的な5つの湿疹コードのうち1つの初診日によって判断した。 主な結果は以下のとおり。・156万1,358例の高齢者(平均年齢67[SD 9]歳、女性54%)が対象となった。45%が高血圧の診断を受けたことがあり、追跡期間中央値6年(IQR:3~11年)における湿疹性皮膚炎の全有病率は6.7%だった。・湿疹性皮膚炎の罹患率は、降圧薬投与群のほうが非投与群よりも高かった(12例vs.9例/1,000人年)。・Cox比例ハザードモデル調整後、いずれかの降圧薬を投与された参加者は、いずれかの湿疹性皮膚炎のリスクが29%増加した(ハザード比[HR]:1.29、95%信頼区間[CI]:1.26~1.31)。・降圧薬を個別に評価したところ、皮膚炎リスクへの影響が大きいのは利尿薬(HR:1.21、95%CI:1.19~1.24)とカルシウム拮抗薬(HR:1.16、95%CI:1.14~1.18)で、小さいのはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(HR:1.02、95%CI:1.00~1.04)とβ遮断薬(HR:1.04、95%CI:1.02~1.06)であった。 研究者らは「このコホート研究により、降圧薬は湿疹性皮膚炎の増加と関連しており、その関連は利尿薬とカルシウム拮抗薬で大きく、ACE阻害薬とβ遮断薬で小さいことが明らかになった。この関連性の根底にある機序を理解するためにはさらなる研究が必要だが、これらのデータは、高齢患者の湿疹性皮膚炎の管理指針として臨床に役立つ可能性がある」としている。

2.

超急性期脳卒中、救急車内での降圧治療は有効か?/NEJM

 急性脳卒中が疑われる血圧高値の患者において、病院到着前に救急車内で降圧治療を行っても機能的アウトカムは改善しない。中国・同済大学のGang Li氏らが、同国51施設で実施した無作為化非盲検試験「INTERACT4試験」の結果を報告した。本試験では、病院到着後に対象患者の46.5%が脳出血と診断された。虚血性か出血性か病型判別前の急性脳卒中の治療は困難で、救急車内の超早期血圧コントロールが、未診断の急性脳卒中患者のアウトカムを改善するかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2024年5月16日号掲載の報告。発症後2時間以内、収縮期血圧150mmHg以上の脳卒中疑い患者を対象に試験 研究グループは、FASTスコア(顔[顔面下垂]、腕[上がらない]、言語[言葉が不明瞭]、時間[救急車を呼ぶまでの時間])が2以上(範囲:0~4、スコアが高いほど症状が強いことを示す)、収縮期血圧150mmHg以上、症状発現後2時間以内の急性脳卒中が疑われる成人患者を、救急車内でただちに降圧治療を行う群(介入群)と、病院到着後に血圧管理を開始する群(通常ケア群)に、地域(中国の東部vs.西部)、年齢(65歳以上vs.65歳未満)、FASTスコア(3点以上vs.2点)を層別因子として無作為に割り付けた。 介入群では、救急車内でウラピジル25mgを1分間でボーラス投与し、収縮期血圧が130~140mmHgに低下しない場合は、5分後に1回のみ同用量を再投与した。 有効性の主要アウトカムは、無作為化後90日時点の修正Rankinスケールスコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])の分布で評価した機能的アウトカムで、ITT集団を解析対象とした。安全性アウトカムは、重篤な有害事象であった。降圧治療の開始、救急車内と病院到着後で全体では機能的アウトカムに差はなし 2020年3月20日~2023年8月31日に計2,425例が無作為化され、同意撤回等を除く2,404例(介入群1,205例、通常ケア群1,199例)がITT集団となった。 患者背景は、平均年齢70歳、発症から無作為化までの時間の中央値は61分(四分位範囲[IQR]:41~93)、無作為化時の平均血圧は178/98mmHgであった。病院到着後に画像検査で脳卒中と確定診断されたのは2,240例で、そのうち1,041例(46.5%)が脳出血(脳内出血1,029例、くも膜下出血12例)、計1,199例(53.5%)が脳梗塞(頭蓋外または頭蓋内のアテローム性または心塞栓症による脳梗塞907例、一過性脳虚血発作53例)であった。また、病院到着時の平均収縮期血圧は、介入群158mmHg、通常ケア群170mmHgであった。 無作為化後90日時点の修正Rankinスケールスコアの分布について、両群間に有意差は認められなかった(機能的アウトカム不良の調整共通オッズ比[OR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.87~1.15)。 サブグループ解析の結果では、機能的アウトカム不良の調整共通ORは脳出血患者では低く(0.75、95%CI:0.60~0.92)、脳梗塞患者では高かった(1.30、1.06~1.60)。ただし同解析は階層的統計解析計画には含まれていなかったため、著者は「これらの関連について結論付けることはできない」としている。 重篤な有害事象の発現率は、介入群27.5%、通常ケア群28.7%であり、両群で同程度であった。

4.

少し高い血圧でも脳・心血管疾患のリスクは2倍/横浜市大

 わが国で心疾患は死因順位の第2位であるが、若年から中年における血圧分類と心血管疾患(CVD)イベントとの関連に関するエビデンスは乏しかった。そこで、桑原 恵介氏(横浜市立大学 医学部公衆衛生学・大学院データサイエンス研究科)らの研究グループは、関東・東海地方に本社のある企業など10数社による職域多施設共同研究“Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study”(J-ECOHスタディ)に参加した高血圧の治療中ではない就労者8万1,876人を9年間追跡調査した。その結果、「少し高い血圧」の段階から脳・心血管疾患の発症リスクが高まることが確認された。これらの結果は、Hypertension Research誌オンライン版2024年4月8日に掲載された。高値血圧が就労者の心血管リスクになり得る可能性 研究グループは、J-ECOHスタディの前向きコホートデザインによる縦断的データを用い検討を行った。参加者は、ベースライン時に降圧薬を服用していない20~64歳の就労者8万1,876人。血圧分類は、2010年度または2011年度の血圧値を『高血圧治療ガイドライン2019』に基づき、正常血圧、正常高値血圧、高値血圧、I度高血圧、II度高血圧、III度高血圧の6群に分類した。脳・心血管疾患発症の定義は、コホート内で脳・心血管疾患、疾病休業、死亡の3種類の登録制とした。追跡期間は2012~21年の最大9年間。統計解析はCox比例ハザードモデルを用いハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に334例の心血管イベント、75例の心血管死亡、322例の全死因死亡がみられた。・正常血圧を基準とした心血管イベントの多変量調整HRは、正常高値血圧が1.98(95%CI:1.49~2.65)、高値血圧が2.10(95%CI:1.58~2.77)、I度高血圧が3.48(95%CI:2.33~5.19)、II度高血圧が4.12(95%CI:2.22~7.64)、III度高血圧が7.81(95%CI:3.99~15.30)だった。・最も集団寄与危険度割合が高かったのは高値血圧で17.8%、次いでI度高血圧で14.1%、正常高値血圧で8.2%と続いた。・以上の結果から、少し高い血圧(正常高値血圧)の段階から脳・心血管疾患発症リスクに対する取り組みが必要であることが明らかとなった。 この結果を受け研究グループは「健康診断で血圧があまり高い値でなくとも、就労者本人が意識的に血圧管理に取り組んでいくことが期待される。とくに、企業や保健医療専門職は、そうした就労者の取り組みを後押ししていくことが求められる」とコメントしている。

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5月17日 高血圧の日【今日は何の日?】

【5月17日 高血圧の日】〔由来〕日常的な血圧測定や定期健診を促すことで、高血圧による疾病リスクを低減するために「世界高血圧デー」に準じ、2007年に日本高血圧学会と日本高血圧協会によって制定された。また、毎月17日は、高血圧の原因となる食塩の過剰摂取を防ぐために「減塩の日」として諸活動を行っている。関連コンテンツ体重増加は糖尿病や高血圧のリスク【患者説明用スライド】降圧薬治療による認知症リスク低下、超高齢やフレイルでも日本人の降圧薬アドヒアランス、低い患者とは?週3個以上の卵が脂肪性肝疾患と高血圧を予防?10項目の要点確認で災害高血圧を防ぐ/日本高血圧学会

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取り過ぎた塩分を出す「排塩コントロール」と具体的な指導方法

 10年ほど前に話題になったDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食。それが今、塩分を排出させる食事として再注目されているようだ。DASH食とは、飽和脂肪とコレステロールの少ない果物、野菜、ナッツ・豆類、低脂肪乳製品、全粒穀類を豊富に摂取することで降圧効果が期待される“塩分の排出に重点を置いた食事療法”で、米国・国立衛生研究所(NIH)などが考案したのを契機に、国内の高血圧治療ガイドライン2019年版1)でも推奨されている。また、この食事療法に減塩を組み合わせたものはDASH-sodium食と呼ばれ、これまでに十分なエビデンスが報告されている2,3)。 しかし、日本人の食事パターンの観点から、塩分の取り過ぎを抑える“減塩”に重点が置かれる傾向にあり、「排塩を意識した高血圧対策」が進んでいないのが現状である。そこで今回、有馬 久富氏(福岡大学医学部衛生・公衆衛生学 主任教授)が、日本特有の四季折々の食事「和食」(日本人の伝統的な食文化)4)を大切にしながら、旬の食材を用いた排塩コントロールの実践を促すために、塩分の排泄を促すカリウムや食物繊維、血圧調整を担うカルシウム、血圧上昇抑制に影響するマグネシウムなどが豊富に含まれている初夏~夏の食材を紹介した。●カリウム トマト、レタス、なす、ズッキーニ、きゅうり、オクラ、ししとう、新じゃが、ゴーヤ、枝豆、アボカド●カルシウム とうもろこし、オクラ、ししとう、つるむらさき、モロヘイヤ、アジ、アユ●マグネシウム とうもろこし、オクラ、ししとう、ゴーヤ、枝豆、アボカド、わかめ、冷ややっこ●食物繊維 とうもろこし、なす、オクラ、ゴーヤ、セロリ、枝豆、アボカド、くらげ●タンパク質 カツオ(戻りカツオ)、枝豆、そら豆<お薦めの調理方法>・トマト、ズッキーニ、なすなどの夏野菜をトマト缶+少量だしで煮込む(ピザ用チーズや鶏肉を追加してもおいしい)・刻んだきゅうりをもずくに入れて、冷ややっこにかける・オクラ、なす、ししとうをゆがき(電子レンジでチンでも)、めんつゆとおかかで和える・トマトとモッツァレラチーズにオリーブオイルとペッパー/バジルを少しかける・初夏であれば、新じゃがを牛乳で煮込む・生で食べられるトマト、きゅうり、とうもろこしにツナ缶を和える(豆腐を入れても) 調理時の注意点としては、「調味料(だしやしょうゆ、塩など)を入れ過ぎない。夏野菜カレーを作る場合は、ルーを入れ過ぎない。また、ゆでるより電子レンジでチンしたほうがカリウムをそのまま取りやすい。マグネシウムの観点から、きゅうりとわかめの酢の物などで海藻類を取るとよい」と同氏はコメントした。 なお、旬の食材を取り入れた食事について、医師が患者へ啓発する際には以下のように「患者の行動変容のステージングに応じて使い分けるのがよい」とも説明した。無関心期⇒情報提供(例)「食事を見直すことで血圧が下がりますよ。今の季節は○○(レシピ名)を使うと、旬の野菜をおいしく食べながら血圧を下げられますよ」関心期⇒動機付け(例)「どのような食事だと血圧が下がると思いますか? 今の季節は○○(レシピ名)を使うと、旬の野菜をおいしく食べながら血圧を下げられますよ」準備期⇒行動案・目標設定(例)「朝も昼も晩も野菜を取るようにしましょうか。今の季節は○○(レシピ名)を使うと、旬の野菜をおいしく食べながら血圧を下げられますよ」実行期⇒意欲強化(例)「食事に気を付けられているようで素晴らしいですね。今の季節は○○(レシピ名)がお薦めですよ」 また、この排塩による高血圧対策のプレスリリースを配信したCureApp5)は「高血圧患者さんがアプリの利用を開始すると、最初のステップとして、高血圧の知識を学ぶ。アプリ内のキャラクターが減塩や体重管理、運動などさまざまな項目の中のコンテンツを通じ、減塩のコツなどを教えてくれる。さらに、行動の実践と記録として、降圧に関わる具体的な行動をアプリで提示し、患者さんができそうなものを自ら選択・実践してアプリに記録することができ、その中で減塩や排塩に関する行動も提示される。患者さんがアプリで実践した行動は医師の端末で確認でき、指導に役立てることができる」とアプリの役割についてコメントした。

7.

患者負担増の長期収載品は1,095品目、注意点は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第131回

厚生労働省は2024年4月19日付で「長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養の対象医薬品について」という事務連絡を発出しました。この中には、後発医薬品のある先発医薬品(いわゆる長期収載品)を使用した場合に患者負担額を引き上げる品目のリストが掲載されています。今回リストに掲載されたのは全1,095品目で、10月からスタートします。対象や負担の割合などについては昨年から議論されていた内容とほとんど変わりありませんが、改めて確認していきましょう。後発医薬品が上市から5年以上経過したもの、または後発医薬品の置換率が50%以上となった薬剤が対象で、それが4月に事務連絡で発出された1,095品目です。また、患者さんが先発医薬品を選んだ場合、最も価格が高い後発医薬品との差額の25%を保険適用から外し、その分については自己負担になります。その「差額の25%」について、気を付けなればならないポイントが2点あります。1点目は、「最も価格が高い後発医薬品との差額」というのが薬剤によってさまざまなので、一概にどのくらい負担が増えますよと先に伝えるのが難しいという点です。10月以降に来局された患者さんに対してそれぞれ対応する必要があります。2点目は、その「差額の25%」については、1割負担の患者さんも3割負担の患者さんも同額の負担増になります。もっと言うと、0割負担の患者さんでも同額の自己負担が発生します。負担割合が少なく、いつも先発医薬品を好んで使用する患者さんではしっかりと説明する必要がありそうです。また、いくつか除外されるケースもあり、「医療上の必要があると認められる」「後発医薬品の提供が困難」な場合に加えて、「後発医薬品への置き換え率が1%未満」の薬剤も除外されます。「後発医薬品の提供が困難」というのは仕方ないとしても(むしろ設定してくれてよかった…)、「医療上の必要性」がどのような場合に認定されるか、というのは今後の様子見でしょう。10月以降も先発医薬品をローラー的に変更不可とする医師がいたとしたら、この大きな流れに背くことになりちょっと要注意かなと思います。一般向けにはヒルドイドの自己負担増がピンポイントで報じられているようですが、降圧薬や抗認知症薬などのその他の医薬品も対象になってるんだけどな…とちょっと不安になります。10月までに行政から働きかけをしてしっかり周知してほしいなと思います。

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ChatGPTは高齢患者のポリファーマシー対策に有用

 人工知能(AI)は、高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)対策に役立つ可能性のあることが、新たな研究で示唆された。OpenAI社の大規模言語モデル(LLM)であるChatGPTに高齢者の架空の投薬リストを評価させたところ、一貫して不必要な可能性のある薬の使用の中止を推奨したという。米ハーバード大学医学大学院のArya Rao氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Medical Systems」に4月18日掲載された。 Rao氏らによると、高齢者の40%以上が5種類以上の薬を処方されており、それが薬物相互作用のリスクを高めているという。このリスクは、不要な薬の処方をやめることで軽減されるが、そのための意思決定プロセスは複雑であり、時間もかかる。そのため、特に人手不足に直面していることの多いプライマリケア従事者をサポートする、効果的なポリファーマシー管理ツールが必要とされている。 今回の研究でRao氏らは、多剤を併用している同一の高齢患者に関する複数の臨床シナリオを作成し、ChatGPTの薬物削減を通じたポリファーマシー管理の性能についての評価を行った。それぞれのシナリオでは、心血管疾患の既往歴や日常生活動作(ADL)の障害の程度が異なっていた。薬の削減については、ChatGPTにイエス/ノーで回答させた。 その結果、患者に心血管疾患の既往歴がない場合には、ChatGPTは一貫して薬の削減を推奨することが明らかになった。一方、心血管疾患の既往歴がある場合には、ChatGPTはより慎重な姿勢を示し、患者の薬物療法の変更はしないと判断する傾向が認められた。いずれのケースでも、ADLの障害の重症度はChatGPTの意思決定に影響を与えていなかった。また、ChatGPTは、痛みについては考慮しない傾向や、スタチンや降圧薬などの種類の薬を削減するよりも痛み止めを削減することを推奨する傾向があることも示された。 このほか、同じシナリオを新しいチャットセッションで提示すると、ChatGPTの応答が異なることもあったという。研究グループはこの結果について、「モデルのトレーニングに使用された研究報告の中で、臨床上の減薬傾向が一貫していないことを反映している可能性がある」との見方を示している。 こうした結果を受けてRao氏は、「本研究結果は、高齢者に対する薬剤処方の安全性を確実なものにする上でAIベースのツールが重要な役割を果たし得ることを示唆している。ただし、医療上の意思決定の複雑さに対応できるよう、これらのツールを改良し続けることが不可欠だ」と述べている。 研究グループは、医師が患者の処方箋を管理するのはますます難しくなっていると指摘する。さまざまな専門医を受診するメディケア加入の高齢患者が増えている一方で、それらの患者の服薬管理はプライマリケア医に一任されているからだ。 論文の上席著者で、米Mass General Brigham放射線学部門のMarc Succi氏は、「このようなモデルの精度を高める上では注意が必要だが、AIによる服薬管理は、一般開業医の負担増を軽減するのに役立つ可能性がある」と話す。その上で同氏は、「服薬管理のために特別に訓練されたAIツールを使ってさらに研究を進めれば、高齢患者のケアを大幅に改善できるだろう」との見方を示している。

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降圧薬を開始・追加した高齢者は〇〇に注意?

 高齢者は転倒リスクの1つである起立性低血圧が生じやすい。そこで、米国・Rutgers UniversityのChintan V. Dave氏らの研究チームは、降圧薬が高齢者の骨折リスクへ及ぼす影響を検討した。その結果、降圧薬の開始・追加は骨折や転倒、失神のリスクを上昇させた。本研究結果は、JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年4月22日号で報告された。 研究チームは、2006~19年に長期介護施設へ入所した米国の退役軍人2万9,648人を対象に、target trial emulationの手法を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。50個以上の共変量について1:4の割合で傾向スコアマッチングを行い、降圧薬の開始・追加後30日以内の骨折の発生リスクを評価した。認知症の有無、収縮期血圧(140mmHg以上/未満)、拡張期血圧(80mmHg以上/未満)、降圧薬の使用歴、年齢(80歳以上/未満)別のサブグループ解析も実施した。さらに、入院または救急受診を要する重度の転倒、失神のリスクも評価した。なお、降圧薬の開始・追加は、過去4週間以内に降圧薬を使用していない患者の降圧薬の使用、または過去4週間に使用している降圧薬とは別のクラスの降圧薬の追加と定義した。 主な結果は以下のとおり。・100人年当たりの30日以内の骨折の発生率は、対照群が2.2であったのに対し、降圧薬開始・追加群は5.4であり、有意に骨折リスクが高かった(ハザード比[HR]:2.42、95%信頼区間[CI]:1.43~4.08)。・降圧薬開始・追加群は、対照群と比較して入院または救急受診を要する重度の転倒(HR:1.80、95%CI:1.53~2.13)、失神(同:1.69、1.30~2.19)のリスクが高かった。・サブグループ解析の結果、認知症あり、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧80mmHg以上、過去4週間以内の降圧薬の使用歴なしの集団において、降圧薬開始・追加による骨折リスクの数値的な上昇がみられた。一方、年齢による差はみられなかった。サブグループ別の対照群に対するHRおよび95%CIは以下のとおり。 -認知症あり:3.28、1.76~6.10 -認知症なし:1.61、0.63~4.11 -収縮期血圧140mmHg以上:3.12、1.71~5.69 -収縮期血圧140mmHg未満:1.89、1.01~3.53 -拡張期血圧80mmHg以上:4.41、1.67~11.68 -拡張期血圧80mmHg未満:1.89、1.01~3.53 -過去4週間以内の降圧薬の使用歴なし:4.77、1.49~15.32 -過去4週間以内の降圧薬の使用歴あり:1.27、0.76~2.12 -80歳以上:2.07、1.08~3.95 -80歳未満:2.29、1.10~4.79 本研究結果について、著者らは「降圧薬の開始・追加は、とくに介護施設に入所する高齢者において、骨折リスクを増加させる可能性がある。このことから、降圧薬開始後という骨折リスクの高い期間は、注意深く観察することが勧められる」とまとめた。

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1日30分座位時間を減らすと高齢者の血圧が低下

 高齢者に対し、座って過ごす時間を減らすためのシンプルな介入を6カ月間実施したところ、1日当たりの座位時間を30分以上減らすことに成功し、収縮期血圧も低下したとする研究結果が報告された。米カイザーパーマネンテ・ワシントン・ヘルスリサーチ研究所のDori Rosenberg氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に3月27日掲載された。 今回の研究の背景情報によると、高齢者は通常、起きている時間の65〜80%を座位で過ごしている。このような座位中心の生活は、心疾患や糖尿病を招きかねない。 Rosenberg氏らは今回、60〜89歳でBMIが30〜50の成人283人(試験開始時の平均年齢68.8歳、女性65.7%)を対象にランダム化比較試験を実施し、座位時間を減らし、血圧を改善することを目的にした介入の効果を検討した。対象者は、6カ月にわたってI-STANDと呼ばれる介入を受ける群(140人、介入群)と、そうした介入を受けない対照群(143人)にランダムに割り付けられた。I-STANDは座位行動を減らすために励ましや個別の目標設定を提供するもので、介入群に割り当てられた人は、健康的な生活に関する10回のコーチングセッションを受けたほか、ワークブックやスタンディングデスク、活動量計を提供された。また、試験開始時とその3カ月後には活動量計のデータに関するフィードバックも受けた。一方、対照群も健康的な生活に関するコーチングセッションを10回受けたが、その内容に立位や活動量を増やすことは含まれていなかった。 試験開始時には、147人(51.9%)が高血圧の診断を受けており、97人(69.3%)が1種類以上の降圧薬を服用していた。介入群での1日当たりの座位時間は、試験開始から3カ月後には平均31.44分、6カ月後には31.85分減少していた。また、介入群では6カ月後に収縮期血圧も平均3.48mmHg低下していた。 Rosenberg氏は、「これらの結果は非常に期待の持てるものだ。なぜなら、特に慢性的な痛みや身体能力の低下など、さまざまな制限を抱えて生活している可能性が高い高齢者にとって、座位時間を減らすことは身体活動を増やすよりも容易な変化だからだ」と話している。 研究グループは、今回の研究で得た知見をさらに進展させる可能性のあるいくつかのフォローアップ研究を検討しており、特に、この介入法を簡略化しても同様の効果が見込めるのかどうかに高い関心を抱いている。Rosenberg氏は、「どの要素が最も影響力があるのかは不明だ。座位時間を減らすために、スタンディングデスクや活動量計、10回のコーチングセッションの全てが必要なのか。それとも、そうした要素が一つか二つあれば間に合うのか。こうしたことを明らかにすることは、リソースの限られた医療現場でこの介入法を効果的に導入するための方法を検討する際に役立つだろう」と話している。研究グループはさらに、こうした介入が高齢者の転倒リスクや脳の健康に与える影響について調査することにも関心を示している。

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インスリン以外の血糖降下薬も先天奇形のリスクでない

 インスリン以外の血糖降下薬を妊娠中に使用しても、先天奇形リスクの有意な上昇は生じない可能性を示唆するデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のCarolyn E. Cesta氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に12月11日掲載された。 世界的に晩婚化が進み、妊娠時に2型糖尿病を発症している女性が増加している。2型糖尿病の血糖管理には一般的にまず非インスリン製剤が選択されるが、妊娠中は胎児の奇形リスクの懸念などのため、通常、催奇形性のないインスリン製剤が用いられる。しかし、計画妊娠によらずに妊娠が成立した場合には、妊娠に気付くまでの妊娠初期に、非インスリン製剤に曝露されることになる。このような場合に胎児の先天奇形リスクがどのように変化するのかは、これまで明らかにされていない。以上を背景としてCesta氏らは、妊娠成立時から妊娠初期の非インスリン製剤の使用が、先天性の大奇形(major congenital malformations;MCM)のリスク上昇と関連しているかどうかを検討した。 研究には、2009~2020年の北欧4カ国の医療データ、2012~2021年の米国の医療データ、2009~2020年のイスラエルの医療データが用いられた。それらのデータベースから2型糖尿病妊婦を抽出し、児の生後1年までの医療記録を追跡調査した。リスクを評価した薬剤は、スルホニル尿素(SU)薬、DPP-4阻害薬(DPP-4i)、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)、SGLT2阻害薬(SGLT2i)の4種。それらの薬剤が、妊娠の90日前から妊娠第1三半期に1回以上処方されていたケースを、曝露された症例とした。比較対照はインスリンのみによって治療されていたケースとした(アクティブコンパレータ)。主要評価項目は、MCMの相対リスクであり、年齢、併存疾患(肥満、高血圧、心血管疾患、糖尿病合併症、多嚢胞性卵巣症候群)、他の処方薬(降圧薬、脂質低下薬)などの交絡因子の影響は調整した。 MCMの標準化有病率は全体で3.7%であった。それに対して2型糖尿病妊婦の児では5.3%であり、SU薬に曝露された児では9.7%、DPP-4i曝露では6.1%、GLP-1RA曝露で8.3%、SGLT2i曝露で7.0%であって、インスリンのみで治療されていた群は7.8%だった。インスリンのみで治療されていた群を基準とした交絡因子調整後のMCM相対リスクは、SU薬曝露で1.18(95%信頼区間0.94~1.48)、DPP-4i曝露0.83(同0.64~1.06)、GLP-1RA曝露0.95(0.72~1.26)、SGLT2i曝露0.98(0.65~1.46)であり、いずれも非有意だった。 著者らは、「インスリン製剤によらない糖尿病治療の普及とともに、妊娠初期の非インスリン製剤への曝露が急速に増加している。われわれの研究結果は、そのような非インスリン製剤への曝露によるMCMリスクの有意な上昇を示しておらず、安心につながるデータが得られた。ただし、より正確なデータが必要であり、他の研究での検証が求められる」と述べている。 なお、数人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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PREVENT計算式で心血管疾患リスクを推定可能に

 「心血管疾患(CVD)イベントのリスク予測(Predicting Risk of CVD EVENTs;PREVENT)」方程式は、心不全を含むCVDのリスクを正確に推定できることが、「Circulation」に11月10日掲載のmethods paperおよび付随する科学的声明により報告された。この結果は、米国心臓協会の年次学術集会(AHA 2023、11月11~13日、米フィラデルフィア)でも同時発表された。 CVDの絶対リスクを評価する多変量リスク予測方程式の使用は、複数の一次予防ガイドラインにおいて現在推奨されているが、課題も多く存在する。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のSadiya S. Khan氏らは、心血管・腎臓・代謝の3つの軸に関連する予測因子や、健康の社会的決定因子も考慮した新たな方程式が必要と考え、CVDの既往のない30~79歳の米国成人を対象としたPREVENT方程式を開発した。 主要アウトカムはCVD〔アテローム動脈硬化性CVD(ASCVD)および心不全(HF)〕で、予測因子は従来のリスク因子である喫煙、収縮期血圧、コレステロール、降圧薬・スタチン使用、糖尿病に加え、推算糸球体濾過量(eGFR)を用いた。モデルの導出は、コホート25件から得た個人レベルの対象者データ328万1,919人を対象とし、外部検証は、追加コホート21件の対象者333万85人を対象とした。モデルの開発では、年齢を尺度として使用し、非CVD死亡を競合リスクとして考慮した上で、男女別に予測因子とCVDとの関連を推定した。モデルの予測能はC統計量で評価し、較正は十分位数による観察リスクと予測リスクの傾きとして算出した。 対象者全体の平均年齢は53歳、女性56%で、平均4.8年間の追跡期間中に21万1,515件のCVD発症が確認された。外部検証の結果、PREVENTモデルはCVDリスク予測において、C統計量の中央値が女性で0.794、男性で0.757を達成した。較正曲線は女性で1.03、男性で0.94だった。ASCVDとHFを個別に予測するモデルにおいても、予測能と較正は同程度だった。選択可能な予測因子として、尿中アルブミン・クレアチニン比、HbA1c、社会的剥奪指数を追加したところ、モデルのCVD予測能はわずかながら有意に向上した(C統計量の差は女性で0.004、男性で0.005)。 Khan氏らは科学的声明の中で、PREVENT方程式の臨床的意義を説明している。この方程式を使用すれば、10年間および30年間におけるCVD(ASCVDとHF の複合)リスクを推定可能になることが重要という。方程式は男女別であり、予測因子としてeGFRを含み、人種を含んでいないことも特徴である。 Khan氏らは「PREVENT方程式は、CVDのリスク予測に心血管・腎臓・代謝に関わる健康因子と社会的因子を含めるための重要な第一歩である」と結論付けている。 なお、複数人の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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CKDへの適応が追加されたエンパグリフロジンへの期待/ベーリンガーインゲルハイム・リリー

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)に、2024年2月、慢性腎臓病(CKD)の適応が追加された。この適応追加に関連して日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、3月29日に都内でプレスセミナーを共同開催した。セミナーでは、CKDの概要、エンパグリフロジンのCKDに対するEMPA-KIDNEY試験の結果などについて講演が行われた。CKDの早期発見、早期介入で透析を回避 はじめに「慢性腎臓病のアンメットニーズと最新治療」をテーマに岡田 浩一氏(埼玉医科大学医学部腎臓内科 教授)が講演を行った。 腎炎、糖尿病、高血圧、加齢など腎疾患の原因はさまざまあるが、終末期では末期腎不全となり透析へと進展する。この腎臓疾患の原因となる病気の発症から終末期までを含めてCKDとするが、CKDの診療には次の定義がある。(1)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか(とくに蛋白尿)(2)GFR<60mL/分/1.73m2(1)、(2)のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続した場合にCKDと診断 また、重症度分類として18区分でヒートマップ化したものがあり、個々の患者の病態に応じ早期に治療介入することが必要だという。 最近の研究では、心血管死へのCKDの影響も解明されつつあり、厚生労働省の調査班の研究では、喫煙、糖尿病、高血圧、CKDが心血管死の主要因子とされ、とくにCKDの頻度は高血圧44.3%に次いで高く20.4%、人口寄与危険割合も高血圧26.5%に次いで10.4%と2番目に高いリスクであると説明した。また、わが国のCKD患者は、2005年時に推定1,328万人から2015年には推定1,480万人に増加しており、そのうち2022年時点で透析患者は約35万人、年間で約1.63兆円の医療費が推計されている。この対策に厚生労働省は、腎疾患対策検討会などを設置し、「2028年までに新規透析導入患者数を3万5千人以下に減少させる(10年で10%以上減少)」などの目標を示し、さまざまな調査と対策を打ち出している。 CKDの治療では、減塩や蛋白質制限などの食事療法、禁煙などの生活習慣改善のほか、RA系阻害薬を中心とした降圧療法、スタチンを用いた脂質異常症の治療など個々の患者の病態に合わせた多彩な治療が行われている。先述の対策委員会の中間報告では、診療ガイドラインの推奨6項目以上を達成すると予後が良好となりCKDの進展抑制が可能との報告もあり、「個別治療を1つでも多く達成することが重要」と岡田氏は指摘する。また、CKD患者への集学的治療は、患者のeGFRの低下を有意に遅らせる可能性があり、初期段階を含めて原疾患に関係なく有効である可能性があると示唆され、とくにステージ3〜5の患者には集学的治療が推奨されるという研究結果も説明した1)。 今後の課題として、わが国の新規透析導入患者は、2020年をピークに減少傾向にあるが、高齢男性では依然として増加傾向にあること、主な透析導入の原因として、第1位に糖尿病、第2位に高血圧・加齢、第3位に慢性腎炎が報告されている(日本透析医学会「わが国の慢性透療法の現況」[2022年12月31日現在])ことに触れ、第3位の慢性腎炎の疾患の1つである腎硬化症に焦点を当て解説を行った。腎硬化症は、蛋白尿を伴わず、進行も遅いためになかなか治療対象として認知されておらず、また、現在は根治療法がなく、診療エビデンスも少ないと今後解決すべきアンメットニーズであると説明した。 岡田氏は最後に「CKDは早期発見と介入が何よりも重要であり、eGFR>30である間に、かかりつけ医から専門医への紹介を推進することが大切」と語り講演を終えた。糖尿病の有無にかかわらずCKD患者の心血管死リスクを低下させる 次に「慢性腎臓病に対する新しい治療選択肢としてジャディアンスが登場した意義」をテーマに門脇 孝氏(虎の門病院 院長)が、エンパグリフロジンのCKDへの適応追加の意義や臨床試験の内容について説明を行った。 糖尿病などの代謝性疾患、心血管疾患、CKDは相互に関連し、どこか1つのサイクルが壊れただけでも負のスパイラルとなり、身体にさまざまな障害を引き起こすことが知られている。 2014年に糖尿病治療薬として承認されたSGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、当初から心臓、腎臓への保護作用の可能性が期待され、2021年には慢性腎不全に追加承認が、本年にはCKDへ追加承認がされた。その追加承認のベースとなった臨床試験がEMPA-KIDNEY試験である。 EMPA-KIDNEY試験は、8ヵ国で行われた第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験で、目的は「CKD患者にエンパグリフロジンが腎疾患の進行または心血管死のリスクを減少させるかを検討すること」、対象範囲は糖尿病ではない患者、低蛋白尿を呈する患者を含む、腎疾患進行リスクを有する幅広いCKD患者である。 EMPA-KIDNEY試験の概要は以下の通り。〔試験デザインとアウトカムなど〕・腎疾患進行リスクのあるCKD患者6,609例(うち9%が日本人)を、エンパグリフロジン10mg/日+標準治療(3,304例)とプラセボ+標準治療(3,305例)に割り付けた。・主要評価項目:心血管死または腎疾患の進行・副次評価項目:心不全による初回入院または心血管死までの期間など・患者背景は糖尿病患者と非糖尿病患者が半々だった。・eGFR<30mL/分/1.73m2の低下例も組み入れたほか、微量アルブミン尿患者も組み入れた。〔主な結果〕・主要評価項目では2.5年の追跡期間で腎臓病進行または心血管死の初回発現について、エンパグリフロジン群で432例(13.1%)、プラセボ群で558例(16.9%)だった(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.64~0.82、p<0.001)ことから初回発現までの期間が有意に抑制された2)。・ベースラインから最終フォローアップ来院までの全期間のeGFRスロープ(年間変化率)は、プラセボ群の-2.92に対してエンパグリフロジン群が-2.16で、その差は0.75だった。・2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院までの慢性期のeGFRスロープは、プラセボ群の-2.75に対してエンパグリフロジン群が-1.37で、その差は1.37だった。・安全性については、有害事象発現率はエンパグリフロジン群で43.9%、プラセボ群で46.1%であり、エンパグリフロジン群では骨折、急性腎障害、高カリウム血症などが報告されたが重篤なものはなかった。 門脇氏は、本試験の特徴について、「蛋白尿が正常な患者を初めて組み入れたCKDを対象としたSGLT2阻害薬の臨床試験であること」、「幅広いeGFR値のCKD患者に対し、糖尿病罹患の有無にかかわらず、腎疾患の進行または心血管死の発現リスクの有意な低下を示したこと」、「有害事象発現率がプラセボよりも低かった」とまとめ、レクチャーを終えた。 今後、微量アルブミン尿患者などを含め、幅広く使用される可能性があり、CKDへの有効な治療手段となることが期待されている。

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日本人中年男性の飲酒量と糸球体過剰濾過の関係~関西ヘルスケアスタディ

 糸球体濾過量(GFR)は低値だけでなく、その数値が著しく高い糸球体過剰濾過についてもその後の腎機能低下や心血管疾患との関連が報告されている。大阪公立大学の柴田 幹子氏らは、健康な中年男性における飲酒パターンと糸球体過剰濾過リスクとの関連を評価した前向きコホート研究の結果を、Journal of Epidemiology誌2024年3月5日号に報告した。 本研究では、腎機能が正常で蛋白尿や糖尿病がなく、登録時に降圧薬使用のない日本人中年(40~55歳)男性8,640人を前向きに6年間追跡調査。飲酒量に関するデータはアンケートによって収集され、週当たりの飲酒頻度(1~3日、4~7日)および1日当たりの飲酒量(エタノール量0.1~23.0g、23.1~46.0g、46.1~69.0g、≧69.1g)で層別化された。糸球体過剰濾過は推定糸球体濾過量(eGFR)≧117mL/min/1.73m2と定義され、この値はコホート全体における上位2.5thパーセンタイル値に相当した。 主な結果は以下のとおり。・4万6,186人年の追跡期間中に、330人が糸球体過剰濾過に該当した。・多変量モデルにおける非飲酒者との比較で、週に1~3日飲酒する男性では、エタノール量≧69.1g/日(参考:アルコール度数5%のビール500mL缶のエタノール量が約20g)の摂取が糸球体過剰濾過のリスクと有意に関連していた(ハザード比[HR]:2.37、95%信頼区間[CI]:1.18~4.74、p=0.015)。・週に4~7日飲酒する男性では、飲酒日当たりの摂取エタノール量が多いほど、糸球体過剰濾過のリスクが高くなった(46.1~69.0g/日のHR:1.55[95%CI:1.01~2.38、p=0.046]、≧69.1g/日のHR:1.78[95%CI:1.02~3.12、p=0.042])。 著者らは、週に4~7日飲酒する中年男性においては1日当たりの飲酒量が多いほど糸球体過剰濾過のリスク増加と関連していたが、週に1~3日飲酒する中年男性では1日当たりの飲酒量が≧69.1gと非常に多い場合にのみ糸球体過剰濾過のリスク増加と関連していたと結論付けている。

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降圧薬治療による認知症リスク低下、超高齢やフレイルでも

 降圧薬治療で認知症リスクが低下するというエビデンスはあるが、これが一般集団の高齢者にも一般化できるかは不明である。今回、イタリア・University of Milano-BicoccaのFederico Rea氏らが、一般集団の高齢者において、新たに降圧薬の服用を開始した患者について検討したところ、降圧薬治療と認知症リスクの低下の関連が示唆された。また、この関連は超高齢(85歳以上)やフレイルの患者でも同様であったという。Journal of the American College of Cardiology誌2024年4月2日号に掲載。 本研究はネステッドケースコントロール研究で、2009~12年に降圧薬の服用を開始したイタリア・ロンバルディア州の65歳以上の21万5,547例のコホートで実施した。ケースは、追跡期間中(2019年まで)に認知症またはアルツハイマー病を発症した1万3,812例(年齢:77.5±6.6歳、男性:40%)で、各ケースに対して性、年齢、臨床状態をマッチさせたコントロールを5例ずつ選択した。降圧薬への曝露は、降圧薬服用が追跡期間に占める割合で評価した。また、条件付きロジスティック回帰を用いて降圧薬への曝露に関連する転帰リスクをモデル化した。 主な結果は以下のとおり。・降圧薬への曝露は認知症リスクと逆相関していた。・曝露が非常に少ない患者と比較して、曝露が少ない患者で2%(95%信頼区間:-4〜7%)、中間的な患者で12%(同:6〜17%)、多い患者で24%(同:19〜28%)のリスク低下がみられた。・これは、超高齢(85歳以上)やフレイル(「1年後の死亡リスクが高い」特徴を有する)の患者においても同様であった。

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日本人の降圧薬アドヒアランス、低い患者とは?

 日本では、血圧が140/90mmHg未満にコントロールされている患者はわずか30%程度で、降圧薬の服薬アドヒアランスが低いことがコントロール不良の原因であると考えられている。今回、九州大学の相良 空美氏らが日本人の大規模データベースを用いて降圧薬のアドヒアランスを調べたところ、降圧薬のアドヒアランス不良率は26.2%であり、若年、男性、単剤治療、利尿薬使用、がんの併存、病院での処方、中規模/地方都市居住が、アドヒアランス不良と関連することが示された。Journal of Hypertension誌2024年4月号に掲載。 本研究は、新規に高血圧症と診断された31~74歳の日本人11万2,506例を含むLIFE Study(自治体から地域住民の医療・介護・保健・行政データを収集・統合しコホート研究を実施)のデータベースを用いた。服薬アドヒアランスは、治療開始後1年間、PDC(proportion of days covered:処方日数カバー比率)法を用いて評価した(80%以下はアドヒアランス不良)。さらに服薬アドヒアランスの関連因子も評価した。 主な結果は以下のとおり。・高血圧症患者11万2,506例のうち、治療開始後1年間の降圧薬の服薬アドヒアランス不良率は26.2%であった。・アドヒアランス不良と関連する因子として、若年(71~74歳と比較した31~35歳のオッズ比[OR]:0.15、95%信頼区間[CI]:0.12~0.19]、男性、単剤治療、利尿薬使用(ARBと比較したOR:0.87、95%CI:0.82~0.91)、がんの併存(併存なしと比較したOR:0.84、95%CI:0.79~0.91)、病院での処方、中規模~地方都市居住が同定された。 著者らは「日本の保険請求データによる降圧薬のアドヒアランスの現状とその関連因子を示した今回の結果は、降圧薬のアドヒアランスと血圧コントロールの改善に役立つと思われる」とまとめた。

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禁煙後の体重増加は将来の高血圧発症と関連する可能性

 禁煙後の体重増加は血圧の上昇につながり、将来の高血圧発症と関連する可能性があることが、鹿児島大学大学院心臓血管・高血圧内科学の二宮雄一氏らの研究グループによる研究から明らかになった。日本人の一般集団を対象に分析した結果、禁煙した群では、喫煙を継続した群と比べて体重がより増加し、血圧値も上昇することが分かったという。詳細は「Hypertension Research」に1月5日掲載された。 禁煙は、慢性疾患リスクの低減や寿命の延伸、QOLの向上など健康面にさまざまなメリットをもたらす。一方で、禁煙後には体重や肥満度が増加することが知られており、禁煙意欲を低下させる要因の一つとなっている。また、禁煙後の体重増加が引き起こす健康への悪影響については、これまで心血管疾患や2型糖尿病に焦点を当てた研究が多く、高血圧との関連は明らかになっていない。そこで、二宮氏らは、禁煙後の体重増加とその後の高血圧発症の関連を検討するため、後ろ向き研究を実施した。 2005年から2019年の間に、鹿児島厚生連病院健康管理センターで年1回の健康診断を受診した成人男女23万4,596人のうち、禁煙6年後のデータを入手し得た856人を対象に分析した。禁煙後の体重増加と高血圧発症の関連以外にも、禁煙1年後および6年後の血圧値と降圧薬処方率の変化を評価。また、傾向スコアでマッチングした禁煙群(856人)と喫煙継続群(854人)の体重と血圧値を比較した。さらに、収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)に影響を与える因子を特定するため、重回帰分析を行った。 禁煙1年後の体重増加の中央値(1.8kg)を基に、体重増加が1.8kg以上だった群(high weight gain:HWG群、428人)と1.8kg未満だった群(low weight gain:LWG群、428人)に分けて分析した(平均年齢:HWG群46.5歳、LWG群45.2歳、男性の割合:それぞれ93%、90%)。その結果、HWG群とLWG群のベースライン時の体重は同程度だったが、LWG群に比べてHWG群では禁煙1年後および6年後の体重が有意に増加した(ベースライン→禁煙1年後→6年後の平均体重:HWG群64.9±10.5kg→68.9±10.6kg→69.2±10.9kg、LWG群66.3±10.7kg→66.1±10.5kg→66.8±10.9kg)。 また、禁煙から6年後の降圧薬の処方率にはHWG群とLWG群で有意な差はなかったが、ベースラインから6年後のSBP値およびDBP値の変化には有意差が認められた(SBP:HWG群10.3±13.8mmHg、LWG群6.2±12.8mmHg、P<0.001、DBP:HWG群6.0±9.3mmHg、LWG群3.1±9.7mmHg、P<0.001)。重回帰分析の結果、SBP値の変化は年齢と大幅な体重増加の影響を受けたのに対し、DBP値の変化は大幅な体重増加の影響のみを受けていた。さらに、禁煙群と喫煙継続群の比較では、禁煙群の方が体重の増加幅が有意に大きく、6年間のSBP値とDBP値の変化も大きかった。 以上から、同氏らは「禁煙後の体重増加は、その後の血圧上昇をもたらす可能性があり、禁煙を希望する人には減量指導を行うことが有効だ」と結論。その上で、「禁煙を勧める際には、禁煙による健康へのベネフィットは、禁煙後の体重増加による悪影響を上回ることを強調すべきだ。また、診療ガイドラインでは、禁煙後の体重管理療法の時期や期間について言及する必要があるだろう」と述べている。

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低リスク高血圧患者、「血圧の下げすぎ」による心血管リスクは

 高リスクの高血圧患者において、治療中の収縮期血圧(SBP)が120mmHg未満および拡張期血圧(DBP)が70mmHg未満の場合は心血管リスクが増加することが報告され、欧州心臓病学会/欧州高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2018年版では高血圧患者全般に対してSBPを120mmHg以上に維持することを提案している。しかし、低リスク患者におけるデータは十分ではない。京都大学の森 雄一郎氏らの研究グループは、全国健康保険協会のデータベースを用いたコホート研究を実施。結果をHypertension Research誌オンライン版2024年2月14日号に報告した。 本研究は、3,000万人の生産年齢人口をカバーする全国健康保険協会のレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて行われた。10年間の心血管リスクが10%未満で降圧薬を継続的に使用している患者が特定され、治療中のSBPとDBPによってカテゴリー分類された。主要アウトカムは心筋梗塞、脳卒中、心不全、末梢動脈疾患の新規発症の複合であった。 主な結果は以下のとおり。・92万533例の心血管低リスク患者が対象とされた(平均年齢:57.3歳、女性:48.3%、平均追跡期間:2.75年)。・SBPごとの主要アウトカムの調整後ハザード比(95%信頼区間)は、<110mmHg:1.05(0.99~1.12)110~119mmHg:0.97(0.93~1.02)120~129mmHg:1(参照)130~139mmHg:1.05(1.01~1.09)140~149mmHg:1.15(1.11~1.20)150~159mmHg:1.30(1.23~1.37)≧160mmHg:1.76(1.66~1.86)・DBPごとの主要アウトカムの調整後ハザード比は、<60mmHg:1.25(1.14~1.38)60~69mmHg:0.99(0.95~1.04)70~79mmHg:1(参照)80~89mmHg:1.00(0.96~1.03)90~99mmHg:1.13(1.09~1.18)≧100mmHg:1.66(1.58~1.76) 著者らは、「低リスクの高血圧患者において、治療中のDBPが60mmHg未満の場合に心血管イベント増加と関連していたが、治療中のSBPが110mmHg未満の場合には関連していなかった。高リスク患者を対象としたこれまでの研究結果と比較して、低リスク患者では、血圧を下げすぎることが有害となる可能性はそれほど顕著ではないことが明らかとなった」としている。

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肥満症治療薬のチルゼパチドで肥満者の血圧が低下

 肥満症治療薬のZepbound(ゼップバウンド、一般名チルゼパチド)の効果は、体重の減少や糖尿病コントロールの改善にとどまらないようだ。米テキサス大学サウスウェスタン医療センター心臓病学部長のJames de Lemos氏らによる研究で、チルゼパチドを使用した肥満患者では収縮期血圧(上の血圧)が有意に低下し、同薬が肥満者の血圧コントロールにも有効である可能性が示唆されたのだ。チルゼパチドの製造販売元であるEli Lilly社の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「Hypertension」に2月5日掲載された。 この研究の背景情報によると、収縮期血圧は拡張期血圧(下の血圧)よりも心疾患に関連した死亡リスクとの関連の強いことが判明しているという。De Lemos氏は、「これまでの研究では、チルゼパチドの肥満症治療薬としての効果が検討されてきたが、今回の研究の参加者で確認された同薬による血圧の低下は印象的なものだった」と話す。 チルゼパチドは、体内でインスリンの分泌を促し食後のインスリン感受性を高める作用を持つ2種類のホルモンと同じように働く。同薬には消化のスピードを緩やかにして食欲を低下させ、血糖値の調節を助ける作用がある。なお、日本では、現時点でのチルゼパチドの適応症は糖尿病のみである。 今回の研究では、肥満の成人600人(平均年齢45.5歳、平均BMI 37.4、女性66.8%)をプラセボ投与群(155人)、またはチルゼパチドを5mg(145人)、10mg(152人)、15mg(148人)のいずれかの用量で皮下注射する群にランダムに割り付けた。 その結果、チルゼパチド群ではプラセボ群に比べて試験開始時から36週間目までの間に収縮期血圧が、チルゼパチド5mg投与で平均7.4mmHg、10mg投与で平均10.6mmHg、15mg投与で平均8mmHg低下したことが明らかになった。また、チルゼパチドの降圧効果は日中だけでなく夜間にも認められた。De Lemos氏らによると、日中よりも夜間の収縮期血圧の方が心疾患に関連する死亡リスクのより強い予測因子であるという。 De Lemos氏は、「血圧降下がチルゼパチドによるものなのか、あるいは研究参加者の体重減少によるものなのかは不明だが、チルゼパチドを使用した参加者で認められた血圧の低下度は、多くの降圧薬の使用による低下度に匹敵するものであった」と米国心臓協会(AHA)のニュースリリースで説明している。 今回の研究には関与していない米ミシシッピ大学医療センターのMichael Hall氏は、「全体として、チルゼパチドのような新規の肥満症治療薬は、体重減少だけでなく肥満に伴う高血圧や2型糖尿病、脂質異常症などの心血管代謝系の合併症を大いに改善させることが示されており、励みになる結果だ」と話している。 Hall氏はまた、「これらの有益な効果はいずれも重要ではあるが、肥満に関連した合併症の多くは相乗的に心血管疾患リスクを高める。したがって、肥満に関連した複数の合併症を抑える戦略は、心血管イベントのリスク低下につながる可能性がある」との見方を示している。 ただしHall氏は、「心筋梗塞や心不全、その他の心臓に関連した健康上の問題に対するチルゼパチドの長期的な効果について明らかにするには、さらなる研究が必要だ」と指摘。また、「チルゼパチドのような薬剤を中止した場合に血圧がどのように変化するのか、例えば再び上昇するのか、あるいは低下が維持されるのかを明らかにするための研究も必要だ」と話している。

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非ウイルス性肝疾患による死亡リスクは女性の方が高い

 飲酒やメタボリックシンドローム(MetS)が関与して生じる肝臓の病気は、男性に比べて女性は少ないものの、それによる死亡率は男性よりも女性の方が高いことが報告された。青島大学医学院付属医院(中国)のHongwei Ji氏、米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のSusan Cheng氏が、米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを解析した結果であり、「Journal of Hepatology」2月号にレターとして掲載された。 肝臓の病気の原因のうち、C型肝炎などのウイルスによるものは治療が進歩して患者数が減少している一方で、MetSなどの代謝性疾患に伴う脂肪性肝疾患「MASLD」やアルコール関連の肝疾患「ALD」、および代謝性疾患とアルコール双方の影響による肝疾患「MetALD」と呼ばれる肝疾患が増加している。Cheng氏は、それらの肝疾患の有病率と死亡率の実態を性別に検討した。 1988~1994年のNHANES参加者から、20歳未満および解析に必要なデータのない人を除外し、1万7人(平均年齢42±15歳、女性50.3%)を解析対象とした。各疾患の定義は、MASLDについては心臓代謝疾患のリスク因子があること、ALDは飲酒量がアルコール換算で男性420g/週超、女性350g/週超、MetALDは同順に210~420g/週、140~350g/週であり、画像検査で脂肪肝が確認されたものとした。 各疾患の患者数は、MASLDが1,461人、ALDが105人、MetALDが225人だった。これらの有病率を性別に見ると大きな性差が認められ、3タイプの疾患の全て、男性の有病率の方が高かった。具体的には、男性ではMASLD、ALD、MetALDの順に18.5%、1.7%、3.2%であるのに対し、女性は10.3%、0.3%、1.2%だった(すべてP<0.001)。一方、死亡リスクについては以下のように、女性の方が高い傾向にあった。 中央値26.7年の追跡で、2,495人の死亡が記録されており、年齢やBMI、人種、喫煙習慣、収縮期血圧、脂質異常症、糖尿病、降圧薬・血糖降下薬・脂質低下薬の処方、世帯収入などを調整後の死亡ハザード比を性別に検討。すると、MetALDに関しては女性でのみ有意なリスク上昇が確認された〔男性1.00(95%信頼区間0.79~1.28)、女性1.83(同1.29~2.57)。ALDは男性・女性ともに有意なリスク上昇が確認されたが〔男性1.89(1.42~2.51)、女性3.49(1.86~6.52)〕、女性のリスクの方が高い傾向にあった(P=0.080)。MASLDは男性・女性ともに有意なリスク上昇は観察されなかった。 MetALDの「Met」とは「代謝性の」という意味の「metabolic」の略であり、肝臓への脂肪の蓄積を引き起こす可能性がある代謝性の問題、つまり肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症を指している。研究グループでは、「これらのリスク因子のいずれかが該当する女性は、飲酒には特に注意が必要」と述べ、その理由を「飲酒と代謝の問題が組み合わさると、肝臓に脂肪がより蓄積しやすくなるからだ」と解説している。 しかし、なぜ女性の肝臓がこれらの変化に対して、男性よりも脆弱であるのかはまだ明らかにされていない。Cheng氏らは現在、その理由の解明と、そのようなリスクの抑制につながる介入方法の確立に向けて、新たな研究を計画している。

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