サイト内検索|page:10

検索結果 合計:1182件 表示位置:181 - 200

181.

成人CAR-T療法を最大限生かすために【Oncologyインタビュー】第47回

出演:京都大学医学部付属病院 血液内科 北脇 年雄氏CAR-T療法は今や造血器腫瘍治療に欠かせないものとなった。その一方、複雑な治療工程や有害事象の管理など紹介元施設にとって押さえておくべき情報は多い。成人CAR-T療法の治療準備、有害事象管理、紹介・逆紹介のポイントなどを京都大学附属病院の北脇年雄氏に解説いただいた。参考CAR-T細胞療法のトリセツ(中外医学社)血液内科治療のトリセツ(中外医学社)

182.

多発性骨髄腫、ASCT後維持療法の中止から3年後のMRD陽性転換率/Blood

 多発性骨髄腫患者に自家造血幹細胞移植(ASCT)後、レナリドミド維持療法を実施し、微小残存病変(MRD)陰性を3年間維持した後、レナリドミド療法を中止したときのMRD陽性への転換、無治療生存期間(TFS)、無増悪生存期間(PFS)を、ギリシャ・National and Kapodistrian University of AthensのEvangelos Terpos氏らが評価した。その結果、レナリドミド維持療法中止後3年時点のTFS率は75.8%であった。また、MRD陽性に転換し維持療法を再開した12例のうち4人が進行したが全員生存しているという。Blood誌オンライン版2025年2月26日号に掲載。 この前向き研究では、骨髄および画像MRD陰性を3年間維持した後、レナリドミド維持療法を中止した多発性骨髄腫患者52例について追跡した。レナリドミド投与中止後にMRD陽性となった患者は、同用量でレナリドミド維持療法を再開した。 主な結果は以下のとおり。・レナリドミド維持療法中止時点からの追跡調査期間中央値は3年であった。・12例(23%)がMRD陽性に転換し、レナリドミド維持療法を再開した。4例(7.6%)が進行し、3 例は生化学的進行、1 例は臨床的進行であった。・PFS中央値は未到達であったが、診断時からの7年PFS率は90.2%であった。・TFS率は1年、2年、3年の順に93.9%、91.6%、75.8%であり、維持療法中止(試験開始)からのランドマークPFS率は順に96.0%、96.0%、92.9%であった。・年齢、性別、R2-ISS、導入療法の種類、強化療法使用と、PFS、TFSとの間に統計学的に有意な関連は認められなかった。 著者らは「骨髄および画像MRD陰性を3年間維持した後の維持療法の中止は、MRD転換および進行の割合が低いことと関連した。現代の多発性骨髄腫治療においては、一部の患者は奏効を台無しにすることなく、完全寛解のまま治療を受けずにいられる可能性がある」とした。

184.

第253回 石破首相・高額療養費に対する答弁大炎上で、制度見直しの“見直し”検討へ……。いよいよ始まる医療費大削減に向けたロシアン・ルーレット

高額療養費制度の負担限度額引き上げ問題ひとまず決着こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本経済新聞朝刊の名物コラム、「私の履歴書」の3月は政府の新型コロナ対策分科会の会長を務めた尾身 茂氏(現結核予防会理事長)です。まだ4回ほど終わったところですが、感染拡大が始まった2020年2月、政府が国民に感染状況の説明をすることを嫌がる中、専門家会議が独自の視点で見解を表明する場面など、当時の緊迫した状況が赤裸々に描かれています。「私の履歴書」と言えば、だいたい前半は企業人のルーツ(父親や母親のこと)について書かれることが多く、退屈なのですが、今回はなかなか読ませる構成になっています。わずか5年前、パンデミックの最中に国の中枢で何が起こっていたのかをおさらいする意味でも、尾身氏の「私の履歴書」は医療関係者必読と言えます。さて、国会で侃々諤々の議論が続いていた高額療養費制度の負担限度額引き上げ問題が2月28日、ひとまず決着しました。2025年8月の引き上げは予定通り実施、2026年8月以降の制度について、石破茂首相は「再検討する」と表明しました。また2月25日には、自民、公明両党は2025年度予算修正案の成立に向け、日本維新の会の賛成を取り付けました。教育無償化の具体策や社会保険料の負担軽減策などについて正式に合意し、3党の党首らが文書に署名しました。高額療養費制度見直しの“見直し”など医療の給付削減(自己負担増)に対する強い抵抗感がある中、一方で「社会保険料を引き下げろ」という声も高まっています。保険給付のレベルは現状そのままに、保険料は引き下げるなんてことが本当にできるのでしょうか。少数与党となった自民党は非常に難しい状況に追い込まれています。今後、医療費削減、医療の効率化に向けて本格的な議論が始まります。選挙もそうですが、今や政治状況はSNSなど、世論の動きによって瞬時に風向きが変わります。それはまさにロシアン・ルーレットのようなもので、標的が誰(あるいは何)になるかは予測しづらく、医療費大削減を迫る“弾丸”も最終的にどこに向かって発せられることになるのか、予断を許しません。石破首相、キムリア、オプジーボを名指しで批判して炎上「瞬時に風向きが変わる」ことでは、高額療養費制度の負担限度額引き上げがまさにそうでした。そもそも限度額引き上げは、1年以上前、2024年1月26日の社会保障審議会で示された「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」の中に、経済情勢に対応した患者負担などの見直しの一つとして明記されていました。昨年12月の社会保障審議会医療保険部会ではさまざまな意見を踏まえた見直し案が提示され、年末には高額療養費制度の負担限度額引き上げを含めた2025年度当初予算案を閣議決定しています。つまり、この1年余りのあいだ、負担限度額引き上げに対する大きな反対運動は起こっていなかったのです。政治状況がそれを許していたのか、野党の政治家たちが不勉強だったのか理由はわかりません。それが、年が明けて1月31日に立憲民主党の酒井 菜摘議員が予算委員会において、高額療養費制度の上限額引き上げに反対する質問を患者たちの反対意見を紹介しながら行うと、一気に社会問題化しました。石破首相は2月21日の衆院予算委員会で、酒井議員の再度の質問に対して「せっかくだから申し上げておくが、キムリアという薬は1回で3,000万円。有名なオプジーボが年間に1,000万円。ひと月で1,000万以上の医療費がかかるケースが10年間で7倍になっているということは、これは保険の財政から考えて何とかしないと制度そのものがもちません」と説明すると世の中が一気に騒ぎ始めました。同日、東京新聞がウェブサイトで「石破首相、がんや白血病の治療薬を『名指し』して医療費逼迫を強調 患者側から『薬を使う患者を傷つけた』の声」の記事を配信するとSNS上でも大炎上しました。石破首相としては、厚労省の用意した説明資料を参考に答弁を行ったに過ぎないと思われます。しかし、「超高額だがよく効く」薬である点など費用対効果については触れず、ただただ「高いからダメ」といった論調だったことは、その後の高額療養費制度の見直し議論に少なからぬ影響を及ぼしたようです。実際、「超高額だがよく効く」薬より、「安いが効果は今ひとつ(あるいはOTCで十分)」な薬を保険給付から外したりするほうがはるかに大きな医療費削減につながる、といった意見も出てきたからです。自民、公明、日本維新の3党合意で社会保険料の負担軽減へこうした議論とも関連するのが、自民、公明、日本維新の3党合意です。自民、公明両党は2025年度予算修正案の成立に向け日本維新の会の賛成を取り付けました。その条件として、教育無償化の具体策や社会保険料の負担軽減策などについて検討を進めることを正式に合意しました。合意文書には具体的検討事項として、「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」「現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底 」「医療 DXを通じた効率的で質の高い医療の実現 」「医療介護産業の成長産業化」が盛り込まれました。それぞれの具体策についてはこれから詰めるとされています。党幹部が参加する3党の協議体が設置される予定で、年末までに論点を検討し、早期に可能な施策については2026年度から実行に移すとしています。「2026年度から」ということは次期診療報酬改定に施策を盛り込むということです。上記の検討事項の中で診療報酬に直接関係するのは「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」です。「昔から言われてきたことで、本当に実現するのか?」といった声もあるようですが、これを機に大きな改革につながっていく可能性もあります。なぜならば、合意文書にはこれらの具体策検討にあたって、政府与党の「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」等で「歳出改革等によって実質的な社会保険負担軽減の効果を1.0兆円程度生じさせる」とされていることや、公明党「公明党 2040 ビジョン(中間とりまとめ)」で「多剤重複投薬対策や重複検査対策などを進めることで医療費適正化の効果も得られる」と記されていること、さらには、日本維新の会の「社会保険料を下げる改革案(たたき台)」で「国民医療費の総額を、年間で最低4兆円削減することによって、現役世代一人当たりの社会保険料負担を年間6万円引き下げる」とされていることなどを「念頭に置く」と明記されたからです。OTC類似薬の保険外しが実現しなければ別の診療報酬にメスが入る可能性も「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」などの改革は、直接、日本医師会などと利害がバッティングすることになります。しかし、「国民医療費を削減し社会保険料負担を引き下げる」という大方針が掲げられた以上、OTC類似薬の保険外しが実現しなければ、数点のマイナスで大きな医療削減効果がある別の診療報酬にメスが入る可能性もあるでしょう。高額医療費制度の見直しの議論の最中や3党合意に至る過程で、日本医師会は世の中に向かってあまり意見をアピールしていません(OTC類似薬の保険外しについては宮川政昭常任理事が記者会見でコメントしていましたが)。今、下手に意見を言うと、“弾丸”が弾倉から自分たちに向かって飛び出してくることを恐れているのかもしれません。2012年の3党合意はその後の社会保障制度改革の道筋を作った「3党合意」で思い出すのは、2012年の民主党政権下、野田 佳彦首相が主導して民主党、自民党、公明党の3党間において取り決められた社会保障と税の一体改革に関する合意です。この3党合意を経て同年8月に社会保障制度改革推進法を含む関連8法案が国会で可決成立しました。この推進法に基づいて「社会保障制度改革国民会議」が設置され、2013年5月に報告書がまとめられました。この報告書を踏まえて「社会保障制度改革プログラム法案」が国会に提出され、同年12月に成立しています。この間、政権は民主党から自民党に戻っていますが3党合意は堅持され、2018年頃までの社会保障制度改革の多くはこのプログラム法に沿って進められてきました。その意味でこの時の3党合意は大きな意味があったと言えるでしょう。今回の3党合意についても3党の協議体が設置される予定とのことです。2012年の時のように、突っ込んだ議論が行われ、プログラム法のような大胆なロードマップが描かれて実行に移されることになるのか。今後に注目したいと思います。

185.

抗CD3/CD20二重特異性抗体エプコリタマブ、再発難治性濾胞性リンパ腫に適応拡大の承認を取得/ジェンマブ

 ジェンマブは、2025年2月20日 、抗CD3/CD20二重特異性抗体エプコリタマブ(商品名:エプキンリ)について、2つ以上の前治療歴を有する再発又は難治性の濾胞性リンパ腫(Grade1~3A)に対する用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認を厚生労働省より取得した。 今回の承認はRR FLを含む成熟B細胞性非ホジキンリンパ腫を対象に、エプコリタマブ単剤の安全性および有効性を評価した海外非盲検多施設共同第I/II相臨床試験(EPCORE NHL-1/GCT3013-01試験)と国内第I/II相臨床試験(EPCORE NHL-3/GCT3013-04試験)等の結果に基づいている。 海外第I/II相臨床試験(EPCORE NHL-1/GCT3013-01試験、第II相パート インドレントB細胞性非ホジキンリンパ腫コホート)において、治療歴が2回以上のRR FL(Grade1~3A)患者128例を対象に行われ、全奏効率(ORR)は82.0%、完全奏効(CR)率は62.5%であった。同試験で別途設定されたFL最適化コホートでは、86例のFL(Grade1~3A)を対象に、サイトカイン放出症候群(CRS)を低減させるために推奨された3ステップ漸増について評価を行った。その結果、2ステップ漸減では66.4%であったCRS発現割合が48.8%となった。 国内第I/II相臨床試験(EPCORE NHL-3/GCT3013-04試験、第II相パートFLコホート)は治療歴が2回以上のRR FL(Grade1~3A)を対象に行われ、ORRは95.2%、CR率は76.2%であった。両試験での主な副作用は、CRS、注射部位反応、発疹、好中球数減少等であった。追加された用法用量・再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫/高悪性度B細胞リンパ腫/原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫)、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫(Grade3B):2ステップ漸増・再発又は難治性の濾胞性リンパ腫(Grade1~3A):3ステップ漸増

186.

新たな慢性血栓症、VITT様血栓性モノクローナル免疫グロブリン血症の特徴/NEJM

 ワクチン起因性免疫性血小板減少症/血栓症(またはワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症、VITT)は、血小板第4因子(PF4)を標的とする抗体と関連し、ヘパリン非依存性であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルスベクターワクチンまたはアデノウイルス感染によって誘発される急性の血栓症を特徴とする。オーストラリア・Flinders UniversityのJing Jing Wang氏らの研究チームは、VITT様抗体と関連する慢性的な血栓形成促進性の病態を呈する患者5例(新規症例4例、インデックス症例1例)について解析し、新たな疾患概念として「VITT様血栓性モノクローナル免疫グロブリン血症(VITT-like monoclonal gammopathy of thrombotic significance:VITT-like MGTS)」を提唱するとともに、本症の治療では抗凝固療法だけでなく他の治療戦略が必要であることを示した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年2月12日号に短報として掲載された。本研究は、カナダ保健研究機構(CIHR)などの助成を受けた。従来のVITTとは異なる病態の血栓症の病因か 対象となった5例すべてが慢性の抗凝固療法不応性血栓症を呈し、間欠性の血小板減少症を伴っていた。これらの患者はM蛋白の濃度が低く(中央値0.14g/dL)、各患者でM蛋白がVITT様抗体であることが確認された。 また、PF4上の抗体のクローン型プロファイルと結合エピトープは、ワクチン接種やウイルス感染後に発症する急性疾患で観察されるものとは異なっており、これは別個の免疫病因を反映した特徴であった。さらに、VITT様抗体は、一般的なヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の抗体とは異なり、ヘパリン非依存性に血小板を活性化することが示された。 VITT様MGTSという新たな疾患概念は、このような従来のVITTとは異なる病態を示す慢性的な抗PF4抗体による血栓症の病因として、ほとんどの抗PF4障害、および明確な原因のない異常や再発性の血栓症を説明可能であることが示唆された。抗PF4抗体、M蛋白が新たな治療標的となる可能性 新規の4例の中には、VITT様の特性を有する血小板活性化抗PF4抗体が検出されたため、MGTSを疑い、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬イブルチニブによる治療を行ったところ、血栓症が抑制された症例を認めた。 また、従来の抗凝固療法を含むさまざまな治療を行っても、血栓症と血小板減少症が再発したため、MGTSを疑ってボルテゾミブ+シクロホスファミド+ダラツムマブ療法を施行したところ、血小板数が正常化し、M蛋白および抗PF4抗体が検出されなくなり、血栓症が改善した症例もみられた。 著者は、「慢性血栓症患者の診断に抗PF4抗体およびM蛋白の検査を追加することで、VITT様MGTSの早期発見が可能になると考えられる」「既存のVITT治療に加え、経静脈的免疫グロブリン療法(IVIG)やイブルチニブ、ボルテゾミブ+ダラツムマブなどを適用することで、より効果的な治療戦略を構築できるだろう」「これらの知見は、他の自己免疫性血小板減少症や血栓症における新たな治療標的としての抗PF4抗体およびM蛋白の役割を研究する基盤となる」としている。

187.

CAR-T細胞療法後、T細胞リンパ腫に対するモニタリング必要/NEJM

 オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのSimon J. Harrison氏らは、1~3レジメンの前治療歴のあるレナリドミド抵抗性多発性骨髄腫患者を対象に、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T細胞療法ciltacabtagene autoleucel(cilta-cel)と標準治療を比較した第III相無作為化試験「CARTITUDE-4試験」において、cilta-cel投与後に末梢性T細胞リンパ腫(CAR導入遺伝子発現と組み込みを伴う悪性単クローン性T細胞リンパ増殖症)を発症した2例について報告した。著者は、この病態を「CAR導入遺伝子T細胞リンパ増殖性腫瘍(CTTLN)」と呼んでいるが、「T細胞リンパ腫の発症に対する挿入突然変異の関与は、直接的な証拠がないため現在のところ不明である」と述べている。NEJM誌2025年2月13日号掲載の報告。2例ともCAR導入遺伝子発現と組み込みを認める 症例1は、細胞遺伝学的高リスク(del[17p]およびgain[1q])の50代男性で、cilta-cel単回投与により完全奏効が得られ微小残存病変(MRD)陰性(閾値10-6)が確認された。本症例では、投与5ヵ月後に急速に増大する紅斑性鼻顔面斑が出現し、皮膚生検で異型T細胞浸潤が認められ、FDG-PETで確認された頸部リンパ節腫脹の組織でも顔面病変と同じT細胞浸潤が認められた。病変組織にはレンチウイルスDNA(0.8コピー/cell)が含まれており、その90~100%がCAR+であることが明らかになった。皮膚およびリンパ節生検組織からはTET-2変異(H1416R)が検出された。 症例2は、IgG-κ型多発性骨髄腫と診断された細胞遺伝学的高リスク(t[4;14]およびgain[1q])の50代の女性で、治療後1年で完全奏効が得られMRD陰性となった。本症例では、投与16ヵ月後に顔面や体幹、乳房などに皮膚腫瘤が出現し、自然退縮したが再発した。FDG-PETで皮膚、リンパ節、乳房、肺、骨に病変が確認され、病変細胞は主にCAR+であることが明らかになった。遺伝子解析で、CARのARID1A遺伝子への組み込みが確認され、TET2変異(Y1902H)も検出された。 両患者とも、治療によりT細胞リンパ腫は完全奏効が得られた。直接的な証拠はなし 両患者の単クローン性T細胞は、検出可能なCAR導入遺伝子発現と組み込みが認められた。これらのCTTLNの臨床遺伝学的特徴から、その発症には既存のTET2変異T細胞への遺伝子組み込みに続き、さらなるがん原性ゲノム変異の獲得など、複数の内在性または外在性の因子が寄与している可能性が示唆された。また、生殖細胞系列のゲノム変異、ウイルス感染、多発性骨髄腫の治療歴などの寄与も考えられた。しかし、T細胞性リンパ腫の発症に挿入突然変異が関与している直接的な証拠は現在のところない。 これらの結果を踏まえて著者は「多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法のベネフィットは依然としてリスクよりまさっているが、T細胞リンパ腫に対する警戒、モニタリングを行う必要がある」とまとめている。

188.

第231回 高額療養費制度の行方、医療現場はどう変わる?

今年2月になって突然、飛び込んできた「高額療養制度の見直し」について多くの方はなぜそんなに急に? と疑念を抱かれたと思います。わが国はバブル景気の後の「失われた30年」の間、経済が停滞していた間も少子化と高齢人口の増加が続いてきました。リーマンショック後の安倍政権をきっかけに、日本経済も回復したとはいえ、2040年まで高齢化が続く中、増大する医療費や介護費のため、社会保障制度の持続可能性について検討が続いています。社会保障改革の経過の振り返り令和元(2019)年から開かれていた全世代型社会保障検討会議の最終報告からまとめられた「全世代型社会保障改革の方針」(令和2年)でも、少子化対策の子育て支援とともに、医療提供体制の改革や後期高齢者の自己負担割合の在り方について検討をすることが盛り込まれていました。これらについて政策の実際の発動は、新型コロナウイルス感染症の拡大で延期され、令和4年1月から開催された「全世代型社会保障構築会議」で、すべての世代が安心できる「全世代型社会保障制度」を目指し、働き方の変化を中心に据えながら、社会保障全般にわたる改革を検討しました。この会議の中で「給付と負担のバランス・現役世代の負担上昇の抑制」について、「高額療養費制度の見直しも併せてしっかり取り組んでいただきたい。厚生労働省からはそれを検討するという報告があったわけで、これはぜひ1つでも2つでもできるものをどんどん実現してほしい」という発言がなされていました(【第20回全世代型社会保障構築会議議事録】)。このような発言を反映してか、令和6年1月26日の社会保障審議会で「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」の中で、経済情勢に対応した患者負担などの見直し(高額療養費自己負担限度額の見直し/入院時の食費の基準の見直し)が入っていました。2月に入り厚労省の社会保障審議会医療保険部会の「令和7年8月~令和9年8月にかけて段階的に実施高額療養費制度の見直し」を行うという資料【高額療養費制度の見直しについて】をもとに国会の予算審議で大きく取り上げられたのをきっかけに大きな話題となりました。画像を拡大する当然ながら、高額療養費の対象となるがんや難病の患者さんの団体から反対の声が上がり、2月7日に厚労省で鹿沼 均保険局長と患者団体が面会を行い、いったん凍結を求められました。厚労省側から改革案を部分修正する意向を示されたものの、患者団体はこれを反対するなどしばらく予算審議を進めていく中、予定通り令和7年8月からの引き上げは難しくなっています。Financial toxicityがクローズアップされている高額療養費制度はわが国の保険診療のセーフティネットとして必要なもので、これが十分に機能しているため患者さんは安心して高額な抗がん剤や先進的な治療を受けることができますが、一方で、諸外国ではこのようなシステムがないため、すでに2000年代になって画期的な新薬の承認とともに問題となっていました。高額療養費制度の見直しが必要になったのは高額な新薬の登場です。近年登場する抗がん剤は非常に高額なため、公的な保険で十分にカバーできない問題が諸外国で話題になっていました。筆者も以前、製薬企業で勤務していたときに有害事象として報告された用語に“financial toxicity”という言葉を目にしたことがあります。Financial Toxicity(ファイナンシャル・トキシシティ:経済毒性)とは、国際医薬用語集にも掲載されている用語で、医療費による経済的負担が患者さんや家族に与える悪影響を指します。高額な新薬によって医療費が増大するのを抑制するため、欧米諸国では保険制度で新薬については、適応とする患者さんの症状によっては処方制限するなどしてアクセス制限をしています。新薬が使えない場合は、患者団体がメーカー側に働きかけて医薬品価格を引き下げさせたり、欧州では医療経済学者を中心に費用対効果を審査して、薬価と効果の面で医薬品を経済評価するようになっており、新薬として承認されても保険償還について別個で審査してアクセス制限をしています。実際にイギリスでは2009年から、新規の抗がん剤への患者アクセスを改善するためにNICE(国立保健医療研究所)によって「非推奨」とされた抗がん剤を中心に対象とする薬剤を評価後にリスト収載し、それらに対する費用をCDF(Cancer Drugs Fund:英国抗がん剤基金)から拠出してきましたが、財政負担の著しい増加に対して、2016年からは新CDFを含むNICEの抗がん剤評価に関する新スキームの運用が開始され、新薬として承認を取得するすべての新規抗がん剤は、NICEにより評価され、「推奨」とされた場合には、英国国民保健サービス(NHS)から償還を受けることができますが、「非推奨」の場合には、Individual Funding Request(IFR)による1件ごとの審議となり、使用は大きく制限されています。わが国でも2014年に承認されたニボルマブ(商品名:オプジーボ)をきっかけに、主に高額な薬価をめぐって国内で大きく取り上げられました。ニボルマブの承認時の償還薬価は100mg1瓶72万8,029円と高額でしたが、その後、適応症の拡大と処方患者の増加で急速に売り上げが伸びたため、厚労省が新たに設けた特例拡大再算定などの薬価引き下げ策で、新薬承認からわずか4年で75%も安くなり【「オプジーボ」続く受難 用量変更でまたも大幅引き下げ…薬価収載時から76%安く】、その後も薬価は低下し、現在は当初の価格から13万1,811円(2024年4月以降)と18.1%の価格になっています。過剰な薬価抑制策にはネガティブな側面もわが国では承認された新薬の保険償還の価格を引き下げることはよくありますが、国際的にみて、新薬の価格は特許がある間は開発費を回収して、さらに画期的な新薬開発への投資を行う原資を得るために保証されているのが通常で、わが国のように日本発の新薬ですら大きく価格を抑制することは、新薬を開発する製薬会社からみて市場としては魅力的には映りません。さらに日本では薬価制度で対応しつつ、同時に新薬の承認・審査するPMDA(医薬品医療機器総合機構)は「新規作用機序を有する革新的な医薬品については、最新の科学的見地に基づく最適な使用を推進する観点から、承認に係る審査と並行して最適使用推進ガイドラインを作成し、当該医薬品の使用に係る患者及び医療機関等の要件、考え方及び留意事項を示すこととしています」とあり、また、「症例ごとに適切な処方を求めるようになっています」として、処方する専門医に対して、学会や製薬企業から情報提供がなされるようになっています。現実問題として、わが国では以前、ドラッグラグ(承認の遅れ)が目立っていましたが、薬事審査に当たってのさまざまな障壁(日本人データの要求など)が業界側や患者側からの働きかけで短縮していました。一方、最近問題となっているのはドラッグロスと言って、そもそも日本市場に参入がないことです。これについては企業側の努力不足もあるとは思いますが、大手製薬企業としては日本の薬価制度がハードルになっている以外にも、近年ベンチャー創薬によって開発されているオーファンドラッグ(希少薬品)のようにニーズはあるが売り上げが大きくない医薬品の場合、企業側の体力がないため日本での薬事承認申請まで辿り着けないなどの問題も発生しています。わが国もこのままでは新規医薬品の開発力が低下してしまうのを避けるため、日本人データを必ずしも必須としないなど条件緩和を進めていますが、医療分野でのイノベーションに見合うだけの収益が得られないため、日本の製薬企業でも海外での開発や販売を優先するケースが近年目立っています。国民の生活にかかわる政策決定には透明化も必要わが国の製薬市場が欧州やアメリカより小さいながらも、中小の製薬企業がそれぞれ得意分野で活躍して開発競争を行ってきましたが、21世紀に入った今、低分子薬を中心とした生活習慣病の開発競争から、抗がん剤など中分子~高分子の医薬品に競争分野が変化し、より高い薬価の医薬品を開発する必要があります。薬価引き下げで多くの製薬企業は特許切れの長期収載品による安定した収益を失い、より新薬開発競争を国際的に進めねばならず厳しい状態が続いています。今回の見直しのように薬価は高いけれど、効果の高い新薬を使用して治療を受けたいという国民の声に政府は応える必要があり、薬価引き下げではなく、患者自己負担を増やすことで一定のバランスを得ようとしたことはある意味正しいと考えます。しかし、高薬価の新薬の開発は続いており、続々と新薬が承認されています。ニボルマブのような強制的な薬価引き下げを続けることは、国際的にみても日本の製薬市場の縮小、ひいてはわが国の制約産業の衰退を招く可能性もあり、薬価引き下げだけでは持続可能性は乏しいと考えます。医療費用の増加は高齢化もあり、やむを得ない事情があり、経済成長に見合った形であれば社会保障費の経済的な負担増大にはつながらないのですが、今回のように患者数の増加や治療費の増加をどう抑えるかは国の中でも結論がでておらず、2024年の国政選挙でもこの話題はまったく討論されず、話の持って行き方にかなり問題があったと感じています。高額療養費の引き上げについて、厚労省の審議会では「既定路線」であったものの、患者さんやその家族にとって貧困を理由に治療が中断することは、国民のコンセンサスを得ていたとは考えにくいです。今後も増え続けるキャンサーサバイバーの患者さんのニーズに応えるためには、財源を用意する必要があります。政府の中できちんと討論した上で、患者自己負担をなるべく広く薄くなるのか、それとも患者自己負担を一定の割合で求めるか、すでに問題となっている多重受診の患者さんの自己負担や軽症疾患のビタミン剤や湿布をOTC化の促進で医療費を抑制した分を回すか、あるいは別のタバコ税や酒税のような形で財源を調達するか、何らかの形で国民に問う必要があったと考えています。すでに津川 友介氏のような一部のオピニオンリーダーからは解決策を提示する意見【「国民の健康を犠牲にすることなく、2.3~7.3兆円の医療費削減が実現可能な『5つの医療改革』」】も出ていますが、他にもさまざまな方策を考えるには絶好のタイミングだと思います。今回のように国民に知らされないまま、審議会という密室で大事な政策が決められるようなやり方を日本人は好みません。わが国は民主主義国家ですから、今年の夏から患者さんの高額療養費を引き上げるのであれば、参議院議員選挙で各政党から意見を出してもらい、どういう形をとるかを決めるべき時期かと考えています。参考1)高額療養費制度の見直しについて(厚労省)2)全世代型社会保障改革の方針[令和2年](同)3)社会保障審議会(同)4)「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」、「こども未来戦略」について(同)5)Financial Toxicityおよびがん治療[PDQ](がん情報サイト)6)「オプジーボ」続く受難 用量変更でまたも大幅引き下げ…薬価 収載時から76%安く(Answers News)7)最適使用推進ガイドライン(PMDA)8)レカネマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドラインについて(日本精神神経学会)

189.

イサツキシマブ、未治療の多発性骨髄腫に適応追加/サノフィ

 サノフィは、イサツキシマブ(商品名:サークリサ点滴静注)について、未治療の多発性骨髄腫患者を対象としてボルテゾミブ・レナリドミド・デキサメタゾン併用療法(BLd)に本剤を追加する新たな併用療法(IsaBLd)の承認を2025年2月20日に取得したと発表した。今回の承認により、再発/難治性の多発性骨髄腫に加え、未治療の多発性骨髄腫に対する新たな選択肢となる。 本剤は、CD38受容体の特異的エピトープを標的とするモノクローナル抗体製剤で、日本では2020年8月に発売され、現在4種類の治療レジメンで承認されている(再発又は難治性の多発性骨髄腫における、ポマリドミド・デキサメタゾン併用療法と、単剤療法、カルフィルゾミブ・デキサメタゾン併用療法、デキサメタゾン併用療法)。 今回の承認は、ランダム化非盲検国際共同第III相試験であるIMROZ試験の結果に基づいている。本試験は移植非適応の未治療の多発性骨髄腫446例(うち日本人25例)を対象に、BLd療法とBLd療法にイサツキシマブを上乗せしたIsaBLd療法を2:3の割合で割り付け、比較した。主要評価項目である無増悪生存期間の中央値はIsaBLd群では未達、BLd群では54.34ヵ月(95%信頼区間[CI]:45.207~推定不能)で、IsaBLd群で有意な延長が示された(ハザード比:0.596、98.5154%CI:0.406~0.876、p=0.0005、層別log-rank検定)。新たな安全性の懸念は認められなかった。<適応追加後の「効能又は効果」「用法及び用量」>●効能又は効果:多発性骨髄腫●用法及び用量:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはイサツキシマブ(遺伝子組換え)として1回10mg/kgを、併用する抗悪性腫瘍剤の投与サイクルを考慮して、以下のA法又はB法の投与間隔で点滴静注する。デキサメタゾンのみとの併用投与又は単独投与の場合(再発又は難治性の場合に限る)、通常、成人にはイサツキシマブ(遺伝子組換え)として1回20mg/kgを、以下のA法の投与間隔で点滴静注する。 A法:1週間間隔、2週間間隔の順で投与する。 B法:1週間間隔、2週間間隔及び4週間間隔の順で投与する。

190.

成人CAR-T療法の実際【Oncologyインタビュー】第46回

出演:京都大学医学部付属病院 血液内科 北脇 年雄氏CAR-T療法は今や造血器腫瘍治療に欠かせないものとなった。その一方、複雑な治療工程や有害事象の管理など照会元施設にとって押さえておくべき情報は多い。成人のCAR-T療法の基本について、京都大学附属病院の北脇年雄氏に解説いただいた。参考CAR-T細胞療法のトリセツ(中外医学社)血液内科治療のトリセツ(中外医学社)

191.

多発性骨髄腫の新規治療開発を加速するMRDに基づくエンドポイント/JCO

 多発性骨髄腫(MM)の新たな治療の早期承認を実現するためには、臨床試験を迅速化するための早期エンドポイントが必要である。今回、米国・メイヨークリニックのQian Shiらは、新規診断の移植適格患者・移植不適格患者、再発/難治性(RR)の多発性骨髄腫患者において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の中間エンドポイントとして微小残存病変(MRD)陰性完全奏効(CR)の可能性を検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年2月12日号に掲載。 本解析では、20の多施設無作為化試験から個々の患者データを収集した。十分なデータを有する11試験(4,773 例)を解析し、9 ヵ月または 12 ヵ月における10-5を閾値としたMRD陰性CRがPFSとOSに関する臨床的有用性を予測できるかどうかを評価した。全体的なオッズ比(OR)は二変量Plackett Copulaモデルを用いて推定した。さらに、MRD陰性CRとPFS/OSにおける治療効果の相関を、線形回帰(R2加重最小二乗)モデルおよびCopula(R2Copula)モデルで評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析の結果、新規診断の移植適格患者、新規診断の移植不適格患者、再発/難治性MM患者において、9 ヵ月および 12 ヵ月におけるMRD陰性CRが、患者レベルでPFSと強い相関を示した。 ・全体的なORは3.06~16.24の範囲であり、95%CIはすべて1.0を含まなかった。・3つの集団の統合により、有望な試験レベルの相関(R2:0.61~0.70)がみられ、新規診断集団ではより強い相関(R2:0.67~0.78)がみられた。・OSについても同様の結果がみられた。 著者らは、「今回の結果は、新規診断の移植適格患者および移植不適格患者、再発/難治性MM患者を対象とした今後の臨床試験において、早期承認のための中間エンドポイントとして、治療開始後9ヵ月または12ヵ月に10-5を閾値としたMRD陰性CRを使用することを支持するもの」とした。

192.

第251回 “タカる”厚生労働省(前編) 「課税のような形で製薬企業に拠出義務」の創薬支援基金(仮称)構想、最終的に財源は国費と「任意」の寄付で決着

創薬と医師偏在の2つの施策で民間に資金拠出を求めるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、神奈川県の丹沢山塊にある鍋割山に足慣らしに行ってきました。鍋割山と言えば、山頂にある小屋で出す「鍋」にちなんだ鍋焼きうどんが有名です。我々も売り切れ前に食そうと、午前9時前には麓の大倉に着いて歩き始めたのですが、登山道前の林道歩きが結構長く、登り始める前に少々飽きてしまいました。それでも、昼前には山頂に到着、名物の鍋焼きうどんと富士山の眺望を楽しむことができました。それにしてもこの山、鍋焼きうどんがなかったらその魅力は半減というか3分の1かもしれません。夏季はヤマビルがうようよいますし……。というわけで、登るのは春か晩秋がお薦めですが、春の週末は大混雑で鍋焼きうどんの売り切れ時間も早まるようです。登られる方はご注意を。さて今回は、厚生労働省の“タカり”とも取れる最近のいくつかの動きについて書いてみたいと思います。一つは、厚生労働省が創薬スタートアップ育成に向けて「創薬支援基金(仮称)」を作ろうと画策し、製薬企業に強制的に資金拠出を求めようとした”事件”です。そしてもう一つは、昨年末に厚労省が決定した「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」の中の「経済的インセンティブ」の対策で、「重点医師偏在対策支援区域における支援のうち、当該区域の医師への手当増額の支援については、全ての被保険者に広く協力いただくよう保険者からの負担を求める」と、保険者(健保組合等)からの資金拠出を求める決定をしたことです。どちらも厚生労働省の医政局マターです。どうしてこんなタカり(ある経済誌は「国家的な”カツアゲ”」と表現)まがいの施策が続くのでしょうか?武見 敬三前厚生労働相が突然明かした「創薬力強化機構」構想「創薬支援基金(仮称)」の構想が表沙汰になったのは昨年末でした。2024年12月11日付の日刊薬業は、「創薬力強化機構、日本橋に設置へ 武見前厚労相、来年1〜2月にも」という記事を掲載、武見 敬三前厚生労働相が12月10日に都内で開かれたイベントで「創薬力強化機構」の構想を明かしたと報じました。同記事によれば武見氏はこの機構について「創薬に特化して、シーズに関わる研究開発力を強化するためのファイナンスの仕組み」と語ったとのことです。この機構の構想については、12月17日付の「日経バイオテク」が配信した「武見前厚生労働相、『創薬基盤の強化に向け、2025年1月下旬から2月に『創薬力強化機構』を設立する』」と題するインタビュー記事がもう少し詳しく報じています。同記事によれば、武見氏は、「官民が連携して、創薬の基盤を我が国に再構築することを目的」として「創薬力強化機構」を創設すると語り、「そのために必要な基金を設立することを目指して、2025年の通常国会に法案を提出するべく、現在検討の最終段階」で、「比較的自由度の高い組織体にするため、一般社団法人として設立する予定」と語っています。そして、「機構への出資企業は既に決まっているのか」という記者の質問に対して、「これからのことなのでまだ分からないが、日本の製薬企業はそれほど積極的に乗ってきているわけではないだろう。日本の製薬企業は、基本的に個社で対応しようとする傾向があるのと、1社当たりの資本が大きくはないからだ」と話していました。米国研究製薬工業協会と欧州製薬団体連合会が資金拠出を半ば強制的に求められていると明かすこの時点での武見氏の一見余裕ありそうな発言からは、厚労省担当者(医政局医薬産業振輿・医療情報企画課)が関係企業や関係団体を回って、機構設立に向けての資金集めを着々と進めていたと想像できます。しかし、世の中はそうは甘くなかったようです。12月25日に米国研究製薬工業協会(PhRMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)が突然共同声明を出し、厚生労働省から「創薬支援基金(仮称)」への資金拠出を半ば強制的に求められていることに対し、強い反対を表明したのです。「2025年度(令和7年度)薬価中間年改定、費用対効果評価 及び義務的な創薬支援基金に関する共同声明」1)と題されたこの声明は、その前半で「岸田政権は、日本のエコシステムを回復し、ドラッグ・ロスを防止するための重要な第一歩を踏み出した」ものの、石破政権になってからの方針転換で2025年度中間年改定において革新的医薬品の薬価引下げのルールが拡大、「予期せぬ決定により、企業の中には、10年以上前から長らく策定してきた綿密な投資回収計画の見直しを迫られ、数百億円もの損失を被る可能性がある」と中間年改定の政策を強く批判しています。そして後半で、「私たちは、最近になって、政府が『創薬支援基金(仮称)』を創設」しようとしていることを知ったが、その仕組みが「新薬創出等加算品目(日本において臨床的に革新的な医薬品として厚生労働省が加算を付与したもの)を有する企業の収益に応じ、課税のような形で強制的に拠出義務を課すことで、開発初期段階のパイプラインを有するスタートアップ企業を支援する意向」であることから、「市場の魅力を更に低下させることになる当該『創薬支援基金(仮称)』への投資を企業に義務付けることに反対します。活力のある投資環境の創出は、義務・命令によって達成できるものではありません。今回の決定は、日本が創薬力の低下とドラッグ・ロスを生じさせた道に再び後退させるものです。(中略)私たちは、厚生労働省がこの度決定した誤った政策を撤回するまでの間、これらの取組みへの参加を留保することと致しました」と、この基金への参加の留保を表明したのです。AMEDだけでは不十分というのが武見氏、そして厚労省の考え「企業の収益に応じ、課税のような形で強制的に拠出義務を課す」というのは、どう考えても筋の悪い政策で、確かにいただけません。製薬会社から批判が出るのも頷けます。ところが、12月の時点で表立った批判がPhRMAとEFPIAからしか出てこなかったというのも、なかなか興味深いものがあります。日本の製薬企業も厚労省から同様の説明、要請を受けていたはずだからです。「お上(厚労省)の言うことには逆らえない」と考えていたのかもしれません。あるいは、この構想のそもそもの発案者の一人が中外製薬の永山 治名誉会長であることも、無碍に反対できないという忖度を招いたのかもしれません。ちなみに、1月7日付の日刊薬業は、日本製薬団体連合会の岡田 安史会長(エーザイ代表執行役)が同紙のインタビューで、「日本製薬工業協会が昨年11月末ごろに厚生労働省から『創薬支援基金(仮称)』に関する説明を受けたことを明らかにした」と報じています。同記事によれば、「岡田会長は、政府が日本の創薬エコシステム強化に向けた姿勢を示していることは評価しつつも、基金の具体的な運営方法や組織体制、拠出の在り方などについては、製薬業界と十分に議論し、合意を形成しながら進めてほしいと訴えた」と書いています。外資系企業とはまったく異なる厚労省寄りの発言と言えます。「創薬支援基金(仮称)」はスタートアップやベンチャーへの支援を目的としていますが、同様の役割を担う機関として内閣府所管の国立研究開発法人・日本医療研究開発機構(AMED)があります。AMEDだけでは不十分というのが武見氏、そして厚労省の考えだったようです。当初の「創薬力強化機構」構想は潰え、「革新的医薬品等実用化支援基金」で決着結局、この「創薬支援基金(仮称)」構想、最終的に「革新的医薬品等実用化支援基金」という名称で、10年間の基金を設立することになりました。同基金はスタートアップ向けのインキュベーションラボや動物実験施設などに資金を出すとのことです。財源は国費のほか、製薬会社からの「任意」の寄付を募るということで決着、当初検討していた製薬会社に強制的に拠出義務を課す案は見送られました。革新的医薬品等実用化支援基金は国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所に2026年度に設置予定で、関連法案(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案)が2月12日閣議決定され、今国会に提出されています。2月12日付の日経バイオテクは「白紙に戻った『創薬力強化機構』構想」と題する記事を配信、厚労省が義務的な拠出金は諦めたことや、2月4日の国民民主党の衆議院議員の質問主意書に対する政府答弁で創薬力強化機構構想について「『政府によって設立』することは検討していない」と否定的な見解が示されたことなどで、この構想は「事実上、白紙に戻ったと業界では受け止められています」と書くとともに、「インキュベーション施設や動物実験施設の整備に活用するといった計画が聞こえていますが、基金でないとできない事業なのかどうか、判然としない印象です。(中略)業界関係者は、『厚労省は、日本の創薬力強化に向けて機運を高めてきたのに、突然出てきた基金と機構の構想で全部ぶち壊しになった感じだ」と嘆いていました。今回の騒動は、今後の創薬力強化の取り組みに長く傷痕を残す可能性もあります』と今回の一連の流れを総括しています。創薬について疎い私などは、AMEDを単純にテコ入れするという施策ではダメだったのかと思うのですが、そうはならなかった(あるいはしたくなかった)ところに、本来の「創薬力アップ」という目的とは別の政治家、政党、省庁間の微妙な力関係が垣間見えます。次回は、厚労省のもう一つの”タカリ”政策とも言われている、医師偏在是正のための「経済的インセンティブ」の対策における、保険者からの資金拠出を求める決定について書いてみたいと思います。(この項続く)参考1)2025年度(令和7年度)薬価中間年改定、費用対効果評価 及び義務的な創薬支援基金に関する共同声明/米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)

193.

有給休暇取得率の高い診療科は?/医師1,000人アンケート

 有給休暇は一定の条件を満たしたすべての労働者に付与されるもので、医師も例外ではない。しかし、緊急性の高い患者のケアや医師不足などにより、医師の労働環境は有給休暇が取得しやすい状況ではないケースも多いと考えられる。今回CareNet.comでは会員医師約1,000人を対象に、有給休暇の取得状況や2024年4月の働き方改革の影響などについてアンケートを実施した(2025年1月23~24日実施)。2024年度の平均有給休暇取得日数は7.6日 2024年度の有給休暇の取得日数(予定含む)は、平均で7.6日、最も多かったのは5~9日(40.7%)との回答で、7.5%の医師は0日と回答した。厚生労働省による「令和6年就労条件総合調査」1)では、調査対象の全産業における平均取得日数は11.0日と報告されており、医師の取得日数は全体平均と比較して少ないことがうかがえる。 平均取得日数を年代別にみると、20代(7.0日)と30代(6.9日)でやや少ない傾向がみられたものの、40~60代では8.0~8.2日で、年代による大きな差はみられなかった。診療科別にみると、10日以上と回答した医師がリハビリテーション科、精神科で50%以上を占めた一方、呼吸器外科、血液内科では20%以下に留まった。平均有給休暇取得率が最も高かったのは皮膚科で71.8% 全体の平均有給休暇取得率(取得日数/付与日数)は59.3%で、上述の厚生労働省調査では65.3%であり、医師の取得率は6%低い結果となった。年代別にみると40代が最も高く(61.3%)、60代が最も低かった(56.6%)。診療科別にみると、皮膚科(71.8%)、リハビリテーション科、精神科(ともに67.2%)などで高かった一方、総合診療科、救急科、呼吸器外科、血液内科では50%を下回った。 有給休暇の最長連続取得日数について聞いた結果、2~4日との回答が39.9%と最も多く、連続取得なしとの回答も36.0%を占めた。自由記述欄では、「土日に絡めて取得したがる者が増え、争奪戦になっている」「内科管理があるため、なかなか長期間とりにくい」「いまだに長期休暇を取得できない体制だし、雰囲気もある」などの声が寄せられた。医師の働き方改革による影響、半数が「変化なし」3割は「取得しやすくなった」 2024年4月の医師の働き方改革施行以降、有給休暇取得状況に変化はあったかどうかを聞いた結果(複数回答)、54.9%が「変化なし」と回答した一方、29.1%は「有給休暇が取得しやすくなった」と回答した。また、「勤務間インターバル確保や代償休息のための有給休暇消化が発生するようになった」(8.9%)、「有給休暇取得者が増加し希望日に取れない/取りにくくなった」(4.6%)、「実働のある有給休暇消化が発生するようになった」(3.9%)などの回答もみられた。 自由記述欄では、「気兼ねなく取得できる環境になってきた」など状況の改善を示唆するコメントがあった一方、「宿日直許可制度が始まってから、休めない当直なのに休んでいる扱いとなり、有給も取りづらい」「働き方改革の影響で給料が減るため、それを補うため有給休暇を利用して他院にパートに行かなければならなくなった」といった声も聞かれている。 このほか、地方別にみた平均有給休暇取得率、有給休暇の主な過ごし方などのアンケート結果の詳細を以下のページにて公開している。『医師の有給休暇取得事情』

194.

胃酸分泌抑制薬との併用が可能になった慢性リンパ性白血病治療薬「カルケンス錠100mg」【最新!DI情報】第33回

胃酸分泌抑制薬との併用が可能になった慢性リンパ性白血病治療薬「カルケンス錠100mg」今回は、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬「アカラブルチニブマレイン酸塩水和物(商品名:カルケンス錠100mg、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。本剤は、慢性リンパ性白血病治療薬としてすでに発売されているカプセル製剤とは異なり、胃酸分泌抑制薬を服用している患者にも使用しやすいフィルムコーティング錠です。<効能・効果>慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)を適応として、2024年12月27日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはアカラブルチニブとして1回100mgを1日2回経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。<安全性>重大な副作用として、出血(頭蓋内血腫[頻度不明]、胃腸出血、網膜出血[いずれも0.2%]など)、感染症(肺炎[3.2%]、アスペルギルス症[0.2%]など)、骨髄抑制(貧血[5.5%]、好中球減少症[17.5%]、白血球減少症[17.5%]、血小板減少症[7.7%]など)、不整脈(心房細動[1.5%]、心房粗動[頻度不明]など)、虚血性心疾患(急性冠動脈症候群[0.2%]など)、腫瘍崩壊症候群、間質性肺疾患(いずれも0.4%)が報告されています。その他の副作用は、頭痛、下痢、挫傷(いずれも10%以上)、悪心、発疹、筋骨格痛、関節痛、疲労(いずれも5~10%未満)、浮動性めまい、鼻出血、便秘、腹痛、嘔吐、無力症(いずれも5%未満)、皮膚有棘細胞がん、基底細胞がん(いずれも頻度不明)があります。本剤は主にCYP3Aにより代謝されるので、強~中程度のCYP3A阻害薬(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、ボリコナゾールなど)、強~中程度のCYP3A誘導薬(フェニトイン、リファンピシン、カルバマゼピンなど)との併用は可能な限り避け、代替の治療薬を考慮します。また、セイヨウオトギリソウ含有食品は摂取しないように指導する必要があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は慢性リンパ性白血病に用いられます。2.この薬は、自己判断して使用を中止したり、量を加減したりすると病気が悪化することがあります。指示どおりに飲み続けることが重要です。3.セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む食品は摂取しないでください。4.この薬を服用中に発熱、寒気、喉の痛み、鼻血、歯ぐきからの出血、青あざができるなどの症状が現れたら、速やかに主治医に相談してください。5.他の医師を受診する場合や薬局などで他の薬を購入する場合は、必ずこの薬を使用していることを医師または薬剤師に伝えてください。<ここがポイント!>慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)は、Bリンパ球ががん化することで発症し、多くの場合は緩徐に進行します。CLLは初期段階では無症状であることが多いですが、進行すると脱力感、疲労感、体重減少、悪寒、発熱、寝汗、リンパ節の腫れ、腹痛などの症状が現れます。CLLの初回治療にはイブルニチブもしくはアカラブルニチブ±オビヌツズマブが推奨されています。アカラブルニチブは、経口投与可能なブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害薬であり、BTKの酵素活性を選択的かつ不可逆的に阻害します。アカラブルチニブはBTKの活性部位のシステイン(Cys-481)残基と共有結合することで、B細胞性腫瘍の増殖および生存シグナルを阻害します。アカラブルニチブはカプセル製剤(商品名:カルケンスカプセル)として2021年に承認され、CLL治療薬として販売されていますが、胃内pHが4を超える条件下では溶解度が低下します。そのため、プロトンポンプ阻害薬との併用は可能な限り避け、制酸薬およびH2受容体拮抗薬と併用するときは投与間隔を2時間以上空けるなどの注意が必要です。しかし、血液がん患者の20~40%は、胃内pHを変化させる薬剤の投与を受けていると推定されているため、胃内pHの条件に左右されずに溶出する新しい薬剤の開発が望まれていました。今回承認されたカルケンス錠は、アカラブルチニブをマレイン酸水和物にすることでpH依存的溶解プロファイルを改善し、生理学的pHの範囲内で十分な溶解性を有することが確認されています。健康被験者を対象とした生物学的同等性試験(海外第I相試験であるD8223C00013試験)において、本剤およびカプセル剤を空腹時投与した結果、カプセル剤投与に対する本剤投与におけるアカラブルチニブのCmaxおよびAUC(0-last)の最小二乗幾何平均値の比は、それぞれ1.00(90%信頼区間:0.91~1.11)および0.99(0.94~1.04)であり、いずれも生物学的同等性の判定基準範囲内(0.8~1.25)でした。これにより、生物学的同等性の基準を満たすことが確認できました。

195.

ダラツムマブ配合皮下注、高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫に申請/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年2月14 日、ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)(商品名:ダラキューロ配合皮下注)について、「高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫」を効能又は効果として、製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。 今回の申請は、高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)を対象にダラツムマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ配合皮下注単剤療法の有効性と安全性を検証した国際共同第III相AQUILA試験に基づくもの。 AQUILA試験では上記患者390例を対象に、本剤群と経過観察群が比較された。結果、観察期間中央値 65.2ヵ月で、経過観察群に比べ本剤群は主要評価項目である無増悪生存期間を有意に改善した(ハザード比:0.49、95%信頼区間:0.36〜0.67、p<0.0001)。この解析結果は第66回米国血液学会年次総会(ASH2024)で発表され、NEJM誌オンライン版にも掲載されている。 SMMは多発性骨髄腫の前駆状態であり、異常な形質細胞が骨髄内で検出されるものの無症状である。SMMに対する標準的アプローチでは、病勢進行または臓器障害発現まで経過観察するが、最近は多発性骨髄腫への進行リスクが高い患者には早期治療介入の可能性が示唆されている。

196.

第230回 高額療養費制度見直し、長期患者の負担据え置き/政府

<先週の動き>1.高額療養費制度見直し、長期患者の負担据え置き/政府2.がん患者の10年生存率54.0% 進行がんでも長期生存の可能性/国立がん研究センター3.コンビニでの市販薬販売が可能に、薬機法改正案を閣議決定/政府4.診療所の後継者不足深刻化、診療所の承継・開業を支援/厚労省5.医療機関のセキュリティ対策に警鐘、サイバー攻撃で4万人の情報流出/岡山県6.八戸市の病院で発覚した殺人隠蔽事件、死亡診断書偽造で理事長・主治医逮捕/青森県1.高額療養費制度見直し、長期患者の負担据え置き/政府政府は、高額な医療費の自己負担を軽減する「高額療養費制度」の見直しを進めていたが、長期療養者の負担増を懸念する声を受け、一部の修正を決定した。具体的には、直近12ヵ月で3回以上制度を利用した場合、4回目以降の自己負担を軽減する「多数回該当」の負担上限額を据え置くこととした。これは、がん患者団体などからの反対意見や、少数与党となった政府が野党の批判を考慮した結果とみられる。政府は2024年末に、制度の持続性確保のため、患者負担の上限額を段階的に引き上げる案を発表。しかし、当事者の声を十分に聞かずに決定したことで批判を招き、修正を迫られた。修正案は、患者団体から一定の評価を得たものの、団体側は負担増を全面的に凍結するよう引き続き求めている。一方、政府は高齢化や医療技術の進展による医療費増大への対応として、負担増は不可避との立場を示している。社会保障費の抑制が少子化対策の財源確保にもかかわるため、今回の修正により他の分野での財源確保が求められる。今後、制度全体の見直しを巡り、さらなる議論が必要となる。参考1)高額療養費引き上げ案 長期患者の負担額を据え置き 厚労相提示(毎日新聞)2)高額療養費、患者・野党に配慮 歳出抑制は一部先送り(日経新聞)3)高額療養費 政府 長期療養の負担据え置き“修正で理解得たい”(NHK)2.がん患者の10年生存率54.0% 進行がんでも長期生存の可能性/国立がん研究センター国立がん研究センターは、2012年にがんと診断された約39~54万人の患者データを分析し、5年および10年の生存率を初めて集計した。全体の10年生存率は54.0%で、前回調査(2011年診断)とほぼ同じ水準だった。とくに進行がん(ステージ3、4)では、診断から1年を乗り切った患者の5年生存率が上昇する傾向が確認された。たとえば、ステージ4の胃がん患者の5年生存率は、診断時点では12.5%だったが、5年生存した場合には61.2%に向上した。一方、早期がん(ステージ1、2)は5年生存率がほぼ横ばいだった。乳がんについては、進行度や経過年数にかかわらず生存率に大きな変化はみられなかった。研究を主導した同センターの石井 太祐研究員は、「進行がんの患者にとって治療が奏功するケースが多いことや、合併症が少ない場合に生存率が高まる可能性を指摘。がん患者やその家族にとって希望となるデータだ」と述べている。この調査結果は、がん診療の向上や患者への前向きなメッセージとなることが期待される。参考1)院内がん登録2012年10年生存率集計 公表 サバイバー5年生存率を初集計(国立がん研究センター)2)進行期のがん、診断早期乗り切ると生存率上昇 39万人データを集計(朝日新聞)3)進行がんの5年生存率、診断から年数経つほど上昇「院内がん登録」のデータ基に初めて調査 国がん(CB news)3.コンビニでの市販薬販売が可能に、薬機法改正案を閣議決定/政府政府は2月12日、医薬品医療機器法(薬機法)の改正案を閣議決定した。この改正により、薬剤師や登録販売者がいないコンビニなどの店舗でも、市販薬(一般用医薬品)が購入できるようになる。ただし、薬剤師からオンラインで説明を受けることが条件。患者はスマートフォンなどで確認証を取得し、店舗で提示することで購入可能となる。薬局やドラッグストアと連携し、自動販売機での販売も検討されている。また、改正案では、新薬開発を支援するための基金創設や、医薬品の安定供給対策も盛り込まれた。わが国の創薬力低下が課題とされる中、スタートアップ企業の支援や研究施設の整備に国と製薬企業の資金を充てる。さらに、医薬品供給不足への対応として、製薬会社に供給管理責任者の設置を義務付け、電子処方箋を活用した需給モニタリングを進める。一方、日本医師会は、市販薬の販売拡大に伴う医療機関の受診控えや健康被害の懸念を表明。とくに「OTC類似薬の保険適用除外」には反対の立場を示し、医療費削減のみを目的としたセルフメディケーションの推進は、患者の負担増や重篤な疾患の見逃しにつながると指摘するとともに、経済的弱者や小児医療への影響が懸念されている。政府は、薬剤アクセスの利便性向上と医療費削減を狙うが、医療界からの慎重な対応を求める声も強く、今後の国会審議の行方が注目されている。参考1)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案(厚労省)2)コンビニで薬剤師不在でも薬購入可能に…厚労省方針、オンライン説明が条件(読売新聞)3)コンビニで市販薬購入、薬機法改正案を閣議決定(日経新聞)4)市販薬購入、コンビニでも可能に 医薬品医療機器法などの改正案を閣議決定(産経新聞)5)日医 「社会保険料削減」目的のOTC類似薬の保険外し、OTC化に反対姿勢露わ 「重大な危険性伴う」(ミクスオンライン)4.診療所の後継者不足深刻化、診療所の承継・開業を支援/厚労省厚生労働省は、医師が不足する地域の医療提供体制を維持するため、診療所の承継や開業を支援する事業を開始する。2024年度の補正予算で102億円が計上され、施設・設備の整備や一定期間の定着支援が行われる予定。とくに、高齢医師の引退による診療所の閉鎖が進行しており、2040年には全国の自治体の約2割で診療所が消滅する可能性があるとの試算が示されている。この事業では、都道府県が「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」を指定し、全国の医師に対して地域診療所の承継や新規開業を呼びかける。応じた医師には、建物改修や医療機器更新費用の一部補助、診療が軌道に乗るまでの一定期間、医師・看護師の人件費や消耗品の購入費の支援が提供される。また、中堅・シニア世代の医師を対象に、医師不足地域への広域マッチング支援も行われる。これは、キャリアコンサルティングや教育を提供し、医療機関とのマッチングや定着を支援する取り組みであり、1.6億円の予算が割り当てられている。厚労省の試算によると、2022年時点で診療所がない市区町村は77にのぼり、2040年には342へと増加する見込み。また、診療所が1ヵ所しかない自治体も175から249へと増えるとされる。高齢化に伴い、2024年の診療所の休廃業・解散件数は587件と過去最多を記録し、日本医師会の調査では全国の診療所の半数が「後継者不在」と回答している。現場の医師からは、「地域住民を診る医師が不足する恐れがある」との声が上がっており、経済的支援による後継者確保への期待が寄せられている。厚労省は、補助事業とともに、重点区域で働く医師の手当増額や都市部の医師が地方に赴任しやすい環境の整備も進める方針だ。参考1)令和6年度補正予算について[報告](厚労省)2)診療所の半数「後継者いない」…医師不足地域の承継や開業に補助金、偏在対策で厚労省が補正予算(読売新聞)3)令和6年度補正予算/押さえておきたい施策 医療編(医療福祉業界ピックアップニュース)5.医療機関のセキュリティ対策に警鐘、サイバー攻撃で4万人の情報流出/岡山県岡山県精神科医療センター(岡山市)が、昨年5月に受けたサイバー攻撃による患者情報流出問題で、専門家委員会は「適切な対策を講じていれば防げた人災だった」との報告書を公表した。最大約4万人分の個人情報が流出し、原因は脆弱なパスワード管理やセキュリティ対策の不備にあったと報告書では指摘している。報告書によると、病院ではID・パスワードの使い回しが常態化し、管理者権限が一般ユーザーにも付与されていた。さらに、VPN装置の脆弱性が放置され、接続元IPの制限がなかったため、外部から容易に攻撃が可能だった。これらの不備が重なり、ランサムウェア感染によるシステム障害とデータの暗号化が発生した。また、厚生労働省の医療情報セキュリティガイドラインに従っていれば、適切なパスワード設定やアクセス管理の強化により被害は防げたと指摘している。病院側は、現時点で個人情報の悪用は確認されていないとし、今後、専門家の指導の下セキュリティ強化を進める方針を示している。報告書では「このようなサイバー攻撃は他の医療機関でも発生し得る」と警鐘を鳴らし、VPNの強化、多要素認証の導入、パスワードの適正化を推奨している。参考1)患者情報等の流出について(岡山県精神科医療センター)2)岡山県精神科医療センター患者情報流出は「人災」専門家委員会(NHK)3)ID・PW使い回しなどで個人情報最大4万人分流出 岡山県精神科医療センターがサイバー攻撃報告書(CB news)6.八戸市の病院で発覚した殺人隠蔽事件、死亡診断書偽造で理事長・主治医逮捕/青森県青森県八戸市の「みちのく記念病院」において、2023年3月に発生した患者間殺人事件を巡る隠蔽工作が明らかとなり、元院長の石山 隆(61)と被害者の主治医で弟の石山 哲(60)が犯人隠避の容疑で逮捕された。病院側は、遺族に虚偽の死亡診断書を渡し、死因を「肺炎」と偽装して事件を隠蔽しようとしたとされる。事件は、同病院の入院患者であった59歳の男が、相部屋の73歳男性の目を歯ブラシの柄で複数回突き刺し、翌日に死亡が確認されたもの。逮捕された2人は、この殺人を把握しながら、県警に通報せず、死因を偽った診断書を作成した疑いが持たれている。とくに問題視されているのは、死亡診断書の署名欄に、高齢で認知症の疑いがある医師の名前が記入されていたことだ。この医師は当時入院患者であり、病院側が死亡診断を任せる形で関与させたとみられる。病院内では死因を「肺炎」とする不自然な死亡診断書が多く発行されており、県警では虚偽の診断書作成が常態化していた可能性があるとみて捜査を進めている。さらに、看護師の証言によれば、元院長の石山 隆容疑者が死亡診断書の作成を指示していたことも判明。複数の看護師を介して、認知症の疑いがある入院患者の医師に診断を担わせるよう指示が出されていた。事件当時、夜間に医師が不在であったことも問題視されており、看護師が独断で医療行為を行う状況が常態化していたとの証言もある。この事件を受けて、専門家からは行政の監視体制の強化を求める声が上がっている。現在、医療機関に対する立ち入り検査は原則として事前通告の上で行われており、強制力がないため、不正の発覚が難しいという課題がある。抜き打ち検査の実施や医療機関の監査体制の見直しが求められている。青森県は医師不足が深刻な地域であり、とくに長期入院が必要な患者を受け入れる病院が限られている。その中で、みちのく記念病院は地域医療の重要な役割を担っていたが、今回の事件を受けて病院運営の在り方が厳しく問われている。県警は今後、虚偽の死亡診断書の作成が他にも行われていた可能性を含め、詳細な捜査を進める方針である。参考1)院内殺人事件 診断書の名義人の医師は入院中で認知症の疑い(NHK)2)院内殺人事件 隠蔽疑い 元院長ら うその診断書作成指示か(同)3)「転倒した」殺人被害者遺族に看護師うその説明 偽造死亡診断書事件(朝日新聞)4)患者間の殺人、犯人隠避容疑で逮捕状…みちのく記念病院の当時の院長と主治医(読売新聞)

197.

英語で「腋窩」、医療者or患者向けの2つの表現を解説【患者と医療者で!使い分け★英単語】第5回

医学用語紹介:腋窩 axilla「腋窩(えきか)」は医療の専門用語ではaxillaといいますが、腋窩について説明する際、患者さんにaxillaと言って通じなかった場合、何と言い換えればいいでしょうか?講師紹介

198.

sepsis(敗血症)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第20回

言葉の由来「敗血症」は英語で“sepsis”といいます。日本の臨床現場でもよく用いられるため、なじみのある人も多いかもしれません。この言葉は「腐敗、物質の分解」を意味する古代ギリシャ語の“sepsis(「e」はeにサーカムフレックス)”に由来するという説が一般的です。紀元前4世紀という大昔に、すでにヒポクラテスが“sepsis”を医学的な概念として用いていたことが記録に残っているといいます。ほかの医学用語と比べても、殊に歴史の深い言葉であることがわかります。それほどまでに歴史のある病名ですが、長年統一された定義があったわけではなく、地域や医師それぞれが思い思いの定義で使っている、という状況でした。ようやく1991年にロジャー・ボーンらがSCCM-ACCP(米国集中治療医学会-米国臨床薬学会)会議にて敗血症の統一的な定義をつくることを提唱し、「Sepsis」という国際的なガイドラインが策定されました。以降も改訂が繰り返されていますが、厳密な疾患の定義や診断基準が規定されています。併せて覚えよう! 周辺単語全身性炎症反応症候群systemic inflammatory response syndrome(SIRS)多臓器不全multiple organ failure抗菌薬antibiotics感染源管理source control敗血症性ショックseptic shockこの病気、英語で説明できますか?Sepsis is a life-threatening condition caused by the body's extreme immune response to an infection. It leads to systemic inflammation, organ dysfunction, and can progress to septic shock if not treated promptly.講師紹介

199.

未治療CLLへの固定期間のアカラブルチニブ併用療法、PFSを改善/NEJM

 未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、BTK阻害薬アカラブルチニブとBCL-2阻害薬ベネトクラクスの併用療法は、抗CD20抗体オビヌツズマブの追加有無にかかわらず、化学免疫療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJennifer R. Brown氏らAMPLIFY investigatorsが27ヵ国133施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「AMPLIFY試験」で示された。未治療CLL患者において、アカラブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用投与が、化学免疫療法と比べてPFSが優れるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2025年2月5日号掲載の報告。アカラブルチニブ+ベネトクラクス併用療法と医師選択化学免疫療法を比較 研究グループは、18歳以上、ECOG PS 0~2で、17p欠失またはTP53変異のない未治療CLL患者(>65歳はCumulative Illness Rating Scale for Geriatrics[CIRS-G]スコアが>6の場合は除外)を、アカラブルチニブ+ベネトクラクス(AV)群、アカラブルチニブ+ベネトクラクス+オビヌツズマブ(AVO)群、または化学免疫療法群に1対1対1の割合で、無作為に割り付けた。 AV群では、1サイクル28日として、アカラブルチニブ(100mgを1日2回)をサイクル1~14に、ベネトクラクス(20mgを1日1回から開始し5週間をかけて400mgを1日1回に増量)をサイクル3~14に投与した。 AVO群では、上記のAVに加えてオビヌツズマブ(1,000mg)をサイクル2~7の1日目に静脈内投与した。 化学免疫療法群では、医師選択によるフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブまたはベンダムスチン+リツキシマブを標準投与プロトコールに従い、サイクル1~6に投与した。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定によるPFSで、AV群と化学免疫療法群を比較した(ITT解析)。アカラブルチニブ+ベネトクラクスのPFSが有意に延長 2019年2月25日~2021年4月5日に、1,141例がスクリーニングを受け、867例が無作為化された(AV群291例、AVO群286例、化学免疫療法群290例[フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ群143例、ベンダムスチン+リツキシマブ群147例])。患者背景は、年齢中央値61歳(範囲:26~86)、男性64.5%、IGHV(免疫グロブリン重鎖可変領域遺伝子)変異なし58.6%であった。 追跡期間中央値40.8ヵ月において、36ヵ月PFS率推定値はAV群76.5%(95%信頼区間[CI]:71.0~81.1)、AVO群83.1%(78.1~87.1)、化学免疫療法群66.5%(59.8~72.3)であり、化学免疫療法群に対するAV群の疾患進行または死亡のハザード比は0.65(95%CI:0.49~0.87、p=0.004)であった(AVO群と化学免疫療法群の比較のp<0.001)。 重要な副次評価項目である全生存期間(OS)については、36ヵ月OS率推定値がAV群94.1%、AVO群87.7%、化学免疫療法群85.9%であった。 主な臨床的に関心のある有害事象のうち、Grade3以上の好中球減少症はAV群、AVO群および化学免疫療法群でそれぞれ32.3%、46.1%、43.2%に報告された。また、新型コロナウイルス感染症による死亡はそれぞれ10例、25例、21例報告された。

200.

移植不適応/移植延期の新規診断多発性骨髄腫、D-VRdがVRdより深い持続的なMRD反応(CEPHEUS)

 移植不適応の新規診断多発性骨髄腫(NDMM)患者または初期治療として移植予定のない(移植延期)患者を対象に、ダラツムマブ皮下投与+ボルテゾミブ+レナリドミド+ デキサメタゾン(D-VRd)をボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(VRd)と比較した無作為化第III相CEPHEUS試験において、D-VRdがより深い持続的な微小残存病変(MRD)反応をもたらすことが示された。米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのSaad Z. Usmani氏らがNature Medicine誌オンライン版2025年2月5日号に報告した。 本試験では、移植不適応または移植延期となったNDMM患者395例を、D-VRdを 8サイクル投与後D-Rdを進行するまで投与する群(D-VRd群)とVRdを8サイクル投与後Rdを進行するまで投与する群(VRd群)に無作為に割り付けた。主要評価項目は、次世代シークエンシングによる全MRD陰性率(閾値10-5)、主な副次的評価項目は、完全奏効(CR)以上の割合、無増悪生存期間、MRD陰性持続率(閾値10-5)であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値58.7ヵ月で、MRD陰性率はD-VRd群が60.9%、VRd群が39.4%であった(オッズ比:2.37、95%信頼区間[CI]:1.58~3.55、p<0.0001)。・CR以上の割合(81.2% vs.61.6%、p<0.0001)およびMRD陰性持続率(12ヵ月以上、48.7% vs.26.3%、p<0.0001)は、D-VRd群がVRd群より有意に高かった。・進行または死亡のリスクは、D-VRd群がVRd群より43%低かった(ハザード比:0.57、95%CI:0.41~0.79、p=0.0005)。・有害事象はダラツムマブおよびVRdの既知の安全性プロファイルと同様であった。 著者らは「本研究は、移植不適応または移植延期NDMMに対する新たな標準治療として4剤併用D-VRd療法を支持するもの」としている。

検索結果 合計:1182件 表示位置:181 - 200