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再発/難治性多発性骨髄腫でCAR-T療法が有望/NEJM

 再発または難治性多発性骨髄腫患者において、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるbb2121の、安全性と抗腫瘍効果が確認された。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのNoopur Raje氏らが、bb2121の第I相臨床試験(CRB-401試験)の結果を報告した。bb2121は、前臨床試験において、多発性骨髄腫の治療薬として有望であることが示されていた。NEJM誌2019年5月2日号掲載の報告。bb2121の安全性を33例で評価 研究グループは、2016年1月31日~2018年4月30日の期間に、プロテアソーム阻害薬および免疫調整薬を含む3レジメン以上の治療歴がある、または両方の薬剤に治療抵抗性の再発/難治性多発性骨髄腫患者を登録した。 患者の末梢血単核細胞を採取してCAR-T細胞bb2121を作製し、用量漸増期にはbb2121をCAR-T細胞数として50×106個、150×106個、450×106個または800×106個を、用量拡大期には150×106個、450×106個を単回注入した。主要評価項目は、安全性である。 36例が登録された。全例でbb2121の作製に成功したが、3例はbb2121注入前に疾患進行のため試験中止となり、33例がbb2121の注入を受けた。データカットオフ日は、最後の注入日から6.2ヵ月後であった。bb2121のGrade3以上の有害事象の発現率は97%、ORRは85%、CRは45% bb2121の注入を受けた33例中32例(97%)にGrade3以上の有害事象が発現した。Grade3以上の有害事象で最も頻度が高かったのは血液毒性で、発現率は好中球減少症85%、白血球減少症58%、貧血45%、血小板減少症45%などであった。25例(76%)にサイトカイン放出症候群が認められ、Grade1/2が23例(70%)、Grade3が2例(6%)であった。神経毒性は14例(42%)に発現し、うち13例(39%)はGrade1/2で、1例(3%)は可逆的なGrade4であった。 bb2121の奏効率(ORR)は85%で、完全奏効(CR/sCR)は15例(45%)で認められた。完全奏効が得られた15例のうち6例は再発した。無増悪生存期間中央値は、11.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.2~17.8)であった。 奏効(部分奏効以上)が得られ微小残存腫瘍(MRD)を評価しえた16例全例が、MRD陰性(有核細胞≦10-4個)であった。CAR-T細胞の増加は、奏効と関連しており、注入1年後まで持続していることが確認された。■「CAR-T療法」関連記事CAR-T療法が臨床へ、まずは2~3施設でスタート

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がん患者のVTE、抗凝固薬投与は3ヵ月以上?

 静脈血栓塞栓症(VTE)は、がん患者における上位の疾患・死亡要因である。がん患者のVTE治療は、現在のところ3~6ヵ月以上の抗凝固療法が推奨されているが、至適期間は不明であった。米国・クリーブランドクリニックのAlok A. Khorana氏らは、新たに診断されたVTEを有するがん患者について、後ろ向きコホート研究を行い、抗凝固療法は3ヵ月以上でVTE再発リスクを約50%低下させることを明らかにした。Supportive Care in Cancer誌オンライン版2019年2月8日号掲載の報告。 研究グループは、がん患者における抗凝固療法の実施期間とVTE再発との関連を調査する目的で、The Humana claimsデータベースを用い、2013年1月1日~2015年5月31日に初回VTEの診断を受け、注射または経口の抗凝固療法を開始した新規がん患者を特定し、治療開始から追跡(2015年6月まで)。Cox比例ハザードモデルを用いて治療を中止した患者における治療期間別のVTE再発リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は1,158例であった。・VTE治療期間が0~3ヵ月の患者と比較し、3~6ヵ月の患者および6ヵ月以上の患者は、VTE再発率が有意に低かった。・患者背景を補正後もVTE治療期間が0~3ヵ月の患者と比較し、3~6ヵ月の患者(HR:0.53、95%CI:0.37~0.76)、および6ヵ月以上の患者(HR:0.48、95%CI:0.34~0.68)は、VTE再発リスクが有意に低かった(いずれもp<0.01)。・VTEイベントの定義に外来患者を含んだ場合も、類似の結果が得られた。

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芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍にtagraxofuspが効果/NEJM

 未治療または再発の芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)成人患者において、tagraxofusp(SL-401)の投与が臨床的奏効をもたらしたことが示された。発現頻度が高かった有害事象は肝機能異常および血小板減少症であり、重篤な有害事象は毛細血管漏出症候群であった。tagraxofuspは、短縮ジフテリア毒素と遺伝子組み換えヒトインターロイキン-3(IL-3)が融合したCD123標的細胞毒素である。米国・テキサス州立大学M.D.アンダーソンがんセンターのNaveen Pemmaraju氏らが、BPDCN患者11例を対象としたパイロット試験の良好な結果を受けて、tagraxofusp単独療法の安全性および有効性を検証する多施設共同非盲検第II相臨床試験を実施し、結果を報告した。BPDCNは、IL-3受容体サブユニットα(IL3RAまたはCD123)を過剰発現する形質細胞様樹状細胞の形質転換によって引き起こされる予後不良の進行性血液がん(造血器腫瘍)であり、白血病やリンパ腫に対する従来の治療法では効果がない。NEJM誌2019年4月25日号掲載の報告。tagraxofusp 7μg/kgまたは12μg/kg投与の有効性と安全性を評価 研究グループは、2014~17年に、未治療/再発BPDCNの患者47例をtagraxofusp 7μg/kg投与群および12μg/kg投与群(いずれも、1サイクル21日として1日目~5日目に静脈内投与)に割り付け、病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで投与を継続した。 主要評価項目は、未治療患者における完全奏効および臨床的完全奏効を合わせた割合、副次評価項目は奏効持続期間であった。 47例中、未治療群(初回治療としてtagraxofuspの投与を受けた)は32例、既治療群は15例、患者の年齢は中央値(範囲)で70歳(22~84)であった。奏効率は、未治療患者の高用量群で90%、既治療患者でも全体で67% 未治療群の12μg/kg投与を受けた29例において、完全奏効および臨床的完全奏効は21例(72%)で確認され、部分奏効も合わせた全奏効率は90%であった。29例中13例(45%)は、tagraxofusp治療後の寛解期に幹細胞移植を受けた。18ヵ月生存率は59%、24ヵ月生存率は52%であった。また、既治療群の15例において、全奏効率は67%、全生存期間中央値は8.5ヵ月であった。 とくに発現頻度の高かった有害事象はALT値上昇(64%)、およびAST値上昇(60%)で、次いで低アルブミン血症(55%)、末梢性浮腫(51%)、血小板減少症(49%)であった。毛細血管漏出症候群は19%の患者で報告され、各投与量群1例の死亡と関連した。 なお、本試験の結果に基づき、tagraxofuspは成人および2歳以上の小児のBPDCNに対する治療薬として2018年12月に米国で承認された。

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CAR-T療法が臨床へ、まずは2~3施設でスタート

 CAR-T療法が、白血病や悪性リンパ腫に対する治療として実臨床で使用される日が近づいてきた。2019年3月、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法として国内で初めて、チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)が製造販売承認を取得した。これを受けて4月18日、都内でメディアセミナー(主催:ノバルティス ファーマ)が開催された。 セミナーでは、豊嶋 崇徳氏(北海道大学大学院医学研究院血液内科 教授)、平松 英文氏(京都大学医学部附属病院小児科 講師)が登壇。CAR-T療法(キムリア)の適応症である再発・難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)について、それぞれ実臨床での展望を示した。CAR-T細胞の製造と、実際のCAR-T療法の流れとは CAR-T療法の実施には、まずはじめに患者の末梢血から白血球が採取される。これは成分献血装置を用いた白血球アフェレーシスによって1~2時間かけて、T細胞を含む白血球成分が採取される。凍結保存処理後、米国の製造施設に輸送される。 製造過程では、T細胞の遺伝子改変→細胞増殖→品質チェックというプロセスを経て、病院に製造されたCAR-T細胞(キムリア)が届けられる(最短で5~6週間程度)。患者には、体内のリンパ球を減らしてCAR-T細胞を増殖しやすくするために、リンパ球除去化学療法と呼ばれる前治療が施され(3~4日間)、その後、キムリアが点滴により輸注される(単回投与)。輸注後は通常1~2ヵ月の入院を経て、その後は外来で経過観察が行われる。CAR-T療法(キムリア)のDLBCLへの有効性を確認、ただし慎重な適応判断が必要 DLBCLは悪性リンパ腫の中で最も頻度が高く、約30~40%を占める。本邦における総患者数は約2万1,000人。あらゆる年齢で発症するが、とくに高齢になるにつれ増加する。ただし、小児では他のがんの発症が少ないため高い割合を示す。 標準治療としてR-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)療法が確立されている。しかし、約50%の患者では無効か、再発する。これらの患者の次なる治療法は自家造血幹細胞移植だが、適応があるのはその半数以下で、さらに奏効した患者でも再発がありうる。 こうした再発・難治性DLBCL患者に対するこれまでの救援化学療法の生存期間中央値は、6.3ヵ月1)。対するCAR-T療法であるキムリアの生存期間中央値は、日本人を含む第II相JULIET試験の結果12ヵ月で、奏効率は52%(うち完全奏効:40%)であった2)。 豊嶋氏はこの結果について、「12ヵ月時点の生存率という観点でみると、25%→50%に改善したという結果。すべての患者さんにとって“夢の治療法”とはいえないだろう。奏効する場合は1回の治療で効果が得られ、QOLも高い可能性がある。しかし、状態や進行速度によって、そもそもこの治療に進める患者さんは限られる。さらに製造の待ち時間、製造不良のリスクもある」として、患者やその家族に過度の期待を持たせることに対しては強い懸念を示した。 臨床試験で多く発現したCAR-T療法(キムリア)の有害事象は、サイトカイン放出症候群(58%で発現、中等症以上は22%)、脳症(21%で発現、中等症以上は12%)など。低ガンマグロブリン血症に伴う免疫グロブリン補充療法は30%で実施された。有害事象による死亡事例はなかったが、「身体に対する治療負担の重さという観点でいえば、自家ではなく、同種造血幹細胞移植と近い。実臨床ではかなり慎重な有害事象のコントロールが必要になるだろう」と述べた。CAR-T療法(キムリア)はB-ALLでも奏効例では高い効果、しかし輸注に至らない例も 本邦におけるALLの総患者数は約5,000人。診断時の年齢中央値は15歳で、好発年齢は2~3歳。そして小児ALLの8割以上がB細胞性(B-ALL)と報告されている。1次治療は寛解導入療法・地固め療法・維持療法からなる多剤併用療法である。80~90%が2~3年にわたるこの強力な1次治療によって完全寛解に到達するが、小児患者の約20%で再発する。再発・難治患者の生存可能性は、小児で16~30%に留まる。 平松氏は、承認の根拠となった第II相ELIANA試験3)の日本人成績について詳細を紹介した。日本人患者は、8例(5~24歳、前治療歴3~7回)が登録された。うち、製品不適格(製造されたが、うまく増殖しなかった)1例、製造を待機するうちに原病が悪化した1例を除く6例に、実際にCAR-T療法のキムリアが投与された。 結果は、3例で完全寛解、1例で血球数回復が不十分な完全寛解が得られた。他2例では効果なしであった。同氏は、「寛解が得られた4例ではすべて微小残存病変も陰性。これは非常に高い効果」と話した。 一方で、6例中5例が重症サイトカイン放出症候群を発症。集中治療室での濃厚な治療が必要となった。「全例が治療に反応しコントロールできたが、院内連携を強化し、新たな有害事象の発現を関連部門の医師が迅速に共有する必要がある」とした。CAR-T療法(キムリア)はまず国内2~3施設で開始、ピーク時で年間250人の患者を想定 最後に登壇したノバルティスファーマ オンコロジージャパン プレジデントのブライアン グラッツデン氏は、発売後の見通しについて説明。CAR-T療法のキムリアによる治療を行う医療機関は、細胞採取の品質確保や副作用管理について同社がトレーニングを実施し、認定した施設に限定するとした。発売初期、国内では2~3施設を予定しており、ピーク時の患者数はCAR-T細胞の製造におけるキャパシティもあり年間250人を想定しているという。また、薬価はまだ決定されていないが、米国で導入された「成功報酬型」の支払い方式は日本では採用されない見通しであることも示された。

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がん患者の深部静脈血栓症、再発率は2倍以上/日本循環器学会

 がんは深部静脈血栓症(VTE)の強力なリスク因子である。がん患者のVTE発症頻度は非がん患者に比べ高く、その発症率は近年増加している。しかし、がん関連VTEに関する研究は十分ではなく、適切な管理については明らかになっていない。天理よろづ相談所病院 循環器内科 坂本二郎氏らは、がん関連VTEの臨床的な特徴、管理、臨床的転帰をリアルワールドで評価する多施設後ろ向きコホート研究COMMAND-VTEレジストリを行い、その結果を第83回日本循環器学会学術集会で発表した。 COMMAND-VTEレジストリは、2010年1月~2014年8月、わが国の29施設において行われた。VTE疑い患者1万9,634例のうち、分析対象となった急性症候性VTE患者は3,027例であった。 全コホートをActive cancer群(がん治療中患者、手術施行予定患者、転移患者、終末期患者)695例、がん既往歴あり群243例、がん既往歴なし群2,089例の3つに分けて比較した。 主な結果は以下のとおり。・Active cancer群は他の2群に比べ、年齢が低く66.5歳であった。また重篤な出血(10%)、貧血の既往(76%)が他の2群に比べ高かった。・抗凝固薬累積中止率(1年間)はActive cancer群で最も高く44%、がん既往歴あり群、がん既往歴なし群はともに27.0%であった。・症候性VTE累積再発率(1年間)はActive cancer群で最も高く12%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ5%/3%であった。・重篤な出血累積発生率(1年間)はActive cancer群で最も高く15%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ6%/5%であった。・ワルファリンのコントロール指標である至適範囲内時間(TTR)はActive cancer群で最も低く61%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ67%/76%であった。・総死亡はActive cancer群で最も高く50%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ12%/6%であった。 Active cancer(がん治療中患者、手術施行予定患者、転移患者、終末期患者)はVTEの再発、重篤な出血、総死亡に関する予後不良因子であった。また、Active cancer群では抗凝固薬の投与中止が頻繁で、ワルファリンのコントロールも不良であった。

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国内初のCAR-T「キムリア」が承認/ノバルティス

 ノバルティス ファーマ株式会社は、2019年3月26日、「再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)および再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」を対象として、国内で初となるキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)の製造販売承認を取得した。 チサゲンレクルユーセルは、患者自身のT細胞を遺伝子導入により改変し、体内に戻すことで、CD19発現B細胞性の腫瘍(B-ALLとDLBCL)を認識して攻撃する新しいがん免疫細胞療法。チサゲンレクルユーセルによる治療は、継続的な投与を必要とせず、投与は一度のみとなる(単回投与)。 今回の承認は、再発または難治性のCD19陽性のB-ALLとDLBCLを対象とした、CAR-T細胞療法の国際多施設共同第II相試験(ELIANA試験、JULIET試験)の結果に基づいている。 再発または難治性のCD19陽性B-ALLの小児及び若年成人患者を対象としたELIANA試験では、主解析時点までに92例が登録され、75例がチサゲンレクルユーセルの投与を受けた。主要評価項目とされた全寛解率(完全寛解[CR]または血球数回復が不十分な完全寛解[Cri])は、中間解析時点で82.0%(41/50例)であった。また主解析時点で、寛解を達成した患者における寛解持続期間の中央値は未到達(追跡期間中央値9.92ヵ月)であり、持続した寛解が得られている。チサゲンレクルユーセルが投与された患者で高頻度に認められた副作用はサイトカイン放出症候群(CRS)(77%、58/75例)であり、重篤なCRSは63%(47/75例)に発現したが、死亡に至ったCRSはなかった。高頻度に認められたその他の副作用(承認時までの集計)は、低γグロブリン血症(39%)、発熱性好中球減少症(27%)、発熱、低血圧(各25%)、頻脈(24%)、脳症(21%)、食欲減退(20%)等であった。 それまでの治療に難治性あるいは、再発を繰り返して治療選択肢が限られた、再発または難治性のCD19陽性DLBCLの成人患者を対象としたJULIET試験では、追加解析時点までに165例が登録され、111例がチサゲンレクルユーセルの投与を受けた。主要評価項目とされた奏効率(完全奏効[CR]または部分奏効[PR])は、中間解析時点で58.8%(30/51例)であった。また、奏効が得られた患者における奏効持続期間の中央値は未到達(追跡期間中央値13.9ヵ月)であり、持続した奏効が得られている。チサゲンレクルユーセルが投与された患者で高頻度に認められた副作用は、CRS(58%、57/99例)であり、重篤な事象のCRSは29%(29/99例)に発現したが、死亡に至ったものはなかった。高頻度に認められたその他の副作用(承認時までの集計)は、発熱(25%)、低血圧(21%)等であった。 チサゲンレクルユーセルの治療を行う医療機関は、白血球アフェレーシスによる患者の細胞の採取、細胞の調製・凍結、同薬投与後に起こるサイトカイン放出症候群(CRS)や神経系事象といった副作用の管理などを綿密に行うことができる医療機関に限られる。また、今回の承認にあたって、厚生労働省より「緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍及び造血幹細胞移植に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで、サイトカイン放出症候群の管理等の適切な対応がなされる体制下で本品を使用すること」との承認条件が付与されており、今後、より具体的な要件が示される。 チサゲンレクルユーセルは、2017年8月、米国において、小児および若年成人の再発・難治性B-ALLを適応症として、初めて承認を取得したCAR-T細胞療法であり、2018年5月に2つ目の適応症である成人のDLBCLに対する承認を取得した。また、2018年8月、欧州において、小児・若年成人のALLおよび成人のDLBCLに対する販売承認を取得した。その後、カナダ、スイス、オーストラリアでも同様の適応で承認を取得している。

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サービス残業はどのくらい? 医師1,000人に聞きました

働き方改革が推進されることで、労働時間管理が行われるようになり、時間外割増賃金もきちんと支払われるようになる―。厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」では、改革による勤務医の働き方の変化の1つとして上記を提示しています。現状、先生方が「サービス残業だ」と感じている時間はどのくらいあるのでしょうか。ケアネットでは、CareNet.com会員医師約1,000人に、その実情をお聞きしました。時間外労働規制への意見についてまとめた結果は前編にて公開中です。結果概要約20%の医師が“サービス残業”週20時間以上と回答「週何時間程度が“サービス残業になっている”と感じているか」という問いに対し、最も多い20時間以上と回答したのは19.5%。1日の法定労働時間が8時間であることを考えると、週に2日分以上がサービス残業だと感じているという過酷な現状がうかがえる。画像を拡大するさらに、現在の時間外労働時間数別にその結果をみると、年1,860時間を超える医師の71.2%が、週20時間以上がサービス残業になっていると回答している。画像を拡大する年代、勤務先の病床数や診療科別にみると…?年代別にみると、やはり20~30代の若い世代でより長い傾向がみられ、20代では「サービス残業はない」と回答した医師は4.5%に留まっている。病床数別では、200床以上で長く、逆に「ない」と答えた割合は0床が最も多かった(43.2%)。しかしどの規模の病院でも、それぞれ一定数サービス残業が「ない」医師も、「長時間ある」医師もいる状況がうかがえる結果となった。画像を拡大する画像を拡大する診療科別では、サービス残業が「ない」と答えた医師は、眼科(52.9%)、精神科(38.3%)、産婦人科(37.5%)などで多かった。一方で、「週20時間以上」と答えた医師は、脳神経外科(33.3%)で最も多く、総合診療科(30.8%)、糖尿病・代謝・内分泌科(28.6%)と続いている。サービス残業になっている時間が週5時間以下(49.3%)と、6時間以上(50.7%)で区切ると、眼科、精神科、皮膚科などでサービス残業がない・あるいは少ないと答えた医師が多く、臨床研修医、血液内科、糖尿病・代謝・内分泌内科などでサービス残業が多いと答えた医師が多かった(図は週5時間以下/6時間以上で区切り、降順)。画像を拡大する最も多い理由は“慣例・雰囲気”「サービス残業となっている理由」については、50.8%が「慣例的に申告しない、あるいは申告しづらい雰囲気があるため」と回答。27.5%は「裁量労働制、あるいは年棒制のため」と回答し、「申告したが、認められなかったため」と答えた医師も7.8%であった。「その他」の自由記述では、「管理職のため」という回答のほか、「大学病院のため勉強とみなされる」「研究・教育のため(臨床業務でないから)」といった自己研鑽との線引きの問題が散見された。また、そもそも「勤務時間が決められていない。時間外は手術以外支払いがない」「申告の仕方を聞いたことがなく、申告する制度があるかどうかもわからない」といった労働時間管理そのものが機能していないと考えられる回答や、「時間外勤務の申告に上限がある」「申告しても圧縮される」「研修医には時間外が付かない仕組みになっている」など、理不尽に申告を制限されてしまうような状況がうかがわれる回答もみられた。画像を拡大する設問詳細※Q1~Q5の結果については、前編に掲載中。Q1.勤務先の病院についてお教えください一次救急医療機関(軽症・帰宅可能患者対応、休日夜間急患センター)二次救急医療機関(中等症~重症・一般病棟入院患者対応、当番制)三次救急医療機関(重症~危篤・ICU入院患者対応、救命救急センター)それ以外Q2.時間外労働時間について、検討会で示されている下記枠組みのうち、先生はどちらにあてはまりますか※1日8時間・週40時間(=5日)勤務を基準として、当直を含む時間外労働時間の合計としてあてはまるものを選択ください月45時間未満・年360時間以下(≒週7時間)月100時間未満・年960時間以下(≒週20時間)月100時間未満・年1,860時間以下(≒週40時間)上記を超えるQ3.時間外上限規制について現状提案されている、原則「月45時間・年360時間」、臨時的な必要がある場合に「月100時間未満・年960時間以下」、特例として指定された医療機関(および一定期間集中的な技能習得が必要な医師)では「月100時間未満・年1,860時間以下」に、賛成ですか?反対ですか?賛成どちらかといえば賛成どちらかといえば反対反対Q4.Q3の回答について理由をお教えください(自由記述)Q5.上記には「アルバイトの勤務時間も含まれる」ことを知っていましたか?知っていた知らなかったQ6.現状、週何時間程度が“サービス残業になっている”と感じていますか?なし1~5時間6~10時間11~20時間20時間以上Q7.Q6でサービス残業となっている理由をお教えください申告したが、認められなかったため慣例的に申告しない、あるいは申告しづらい雰囲気があるため裁量労働制、あるいは年棒制のためその他(自由記述)画像を拡大する

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血友病〔Hemophilia〕

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疾患概要■概要血友病は、凝固第VIII因子(FVIII)あるいは第IX因子(FIX)の先天的な遺伝子異常により、それぞれのタンパクが量的あるいは質的な欠損・異常を来すことで出血傾向(症状)を示す疾患である1)。血友病は、古代バビロニア時代から割礼で出血死した子供が知られており、19世紀英国のヴィクトリア女王に端を発し、欧州王室へ広がった遺伝性疾患としても有名である1)。女王のひ孫にあたるロシア帝国皇帝ニコライ二世の第1皇子であり、最後の皇太子であるアレクセイ皇子は、世界で一番有名な血友病患者と言われ、その後の調査で血友病Bであったことが確認されている2)。しかし、血友病にAとBが存在することなど疾患概念が確立し、治療法も普及・進歩してきたのは20世紀になってからである。■疫学と病因血友病は、X連鎖劣性遺伝(伴性劣性遺伝)による遺伝形式を示す先天性の凝固異常症の代表的疾患である。基本的には男子にのみ発症し、血友病Aは出生男児約5,000人に1人、血友病Bは約2万5,000人に1人の発症率とされる1)。一方、約30%の患者は、家族歴が認められない突然変異による孤発例とされている1)。■分類血友病には、FVIII活性(FVIII:C)が欠乏する血友病Aと、FIX活性(FIX:C)が欠乏する血友病Bがある1)。血友病は、欠乏する凝固因子活性の程度によって重症度が分類される1)。因子活性が正常の1%未満を重症型(血友病A全体の約60%、血友病Bの約40%)、1~5%を中等症型(血友病Aの約20%、血友病Bの約30%)、5%以上40%未満を軽症型(血友病Aの約20%、血友病Bの約30%)と分類する1)。■症状血友病患者は、凝固因子が欠乏するために血液が固まりにくい。そのため、ひとたび出血すると止まりにくい。出産時に脳出血が多いのは、健常児では軽度の脳出血で済んでも、血友病児では止血が十分でないため重症化してしまうからである。乳児期は、ハイハイなどで皮下出血が生じる場合が多々あり、皮膚科や小児科を経由して診断されることもある。皮下出血程度ならば治療を必要としないことも多い。しかし、1歳以降、体重が増加し、運動量も活発になってくると下肢の関節を中心に関節内出血を来すようになる。擦り傷でかさぶたになった箇所をかきむしって再び出血を来すように、ひとたび関節出血が生じると同じ関節での出血を繰り返しやすくなる。国際血栓止血学会(ISTH)の新しい定義では、1年間に同じ関節の出血を3回以上繰り返すと「標的関節」と呼ばれるが、3回未満であれば標的関節でなくなるともされる3)。従来、重症型の血友病患者ではこの標的関節が多くなり、足首、膝、肘、股、肩などの関節障害が多く、歩行障害もかなりみられた。しかし、現在では1回目あるいは2回~数回目の出血後から血液製剤を定期的に投与し、平素から出血をさせないようにする定期補充療法が一般化されており、一昔前にみられた関節症を有する患者は少なくなってきている。中等症型~軽症型では出血回数は激減し、出血の程度も比較的軽く、成人になってからの手術の際や大けがをして初めて診断されることもある1)。■治療の歴史1960年代まで血友病の治療は輸血療法しかなく、十分な凝固因子の補充は不可能であった。1970年代になり、血漿から凝固因子成分を取り出したクリオ分画製剤が開発されたものの、溶解操作や液量も多く十分な因子の補充ができなかった1)。1970年代後半には血漿中の当該凝固因子を濃縮した製剤が開発され、使い勝手は一気に高まった。その陰で原料血漿中に含まれていたウイルスにより、C型肝炎(HCV)やHIV感染症などのいわゆる薬害を生む結果となった。当時、国内の血友病患者の約40%がHIVに感染し、約90%がHCVに感染した。クリオ製剤などの国内製剤は、HIV感染を免れたが、HCVは免れなかった1)。1983年にHIVが発見・同定された結果、1985年には製剤に加熱処理が施されるようになり、以後、製剤を経由してのHIV感染は皆無となった1)。HCVは1989年になってから同定され、1992年に信頼できる抗体検査が献血に導入されるようになり、以後、製剤由来のHCVの発生もなくなった1)。このように血友病治療の歴史は、輸血感染症との戦いの歴史でもあった。遺伝子組換え型製剤が主流となった現在でも、想定される感染症への対応がなされている1)。■予後血友病が発見された当時は治療法がなく、10歳までの死亡率も高かった。1970年代まで、重症型血友病患者の平均死亡年齢は18歳前後であった1,4)。その後、出血時の輸血療法、血漿投与などが行われるようになったが、十分な治療からは程遠い状態であった。続いて当該凝固因子成分を濃縮した製剤が開発されたが、非加熱ゆえに薬害を招くきっかけとなってしまった。このことは血友病患者の予後をさらに悪化させた。わが国におけるHIV感染血友病患者の死亡率は49%(平成28年時点のデータ)だが、欧米ではさらに多くの感染者が存在し、死亡率も60%を超えるところもある5)。罹患血友病患者においては、感染から30年を経過した現在、肝硬変の増加とともに肝臓がんが死亡原因の第1位となっている5)。1987年以後は、輸血感染症への対策が進んだほか、遺伝子組換え製剤の普及も進み、若い世代の血友病患者の予後は飛躍的に改善した。現在では、安全で有効な凝固因子製剤の供給が高まり、出血を予防する定期補充療法も普及し、血友病患者の予後は健常者と変わらなくなりつつある1)。2 診断乳児期に皮下出血が多いことで親が気付く場合も多いが、1~2歳前後に関節出血や筋肉出血を生じることから診断される場合が多い1)。皮膚科や小児科、時に整形外科が窓口となり出血傾向のスクリーニングが行われることが多い。臨床検査でAPTTの延長をみた場合には、男児であれば血友病の可能性も考え、確定診断については専門医に紹介して差し支えない。乳児期の紫斑は、母親が小児科で虐待を疑われるなど、いやな思いをすることも時にあるようだ。■検査と鑑別診断血友病の診断には、血液凝固時間のPTとAPTTがスクリーニングとして行われる。PT値が正常でAPTT値が延長している場合は、クロスミキシングテストとともにFVIII:CまたはFIX:Cを含む内因系凝固因子活性の測定を行う1)。FVIII:Cが単独で著明に低い場合は、血友病Aを強く疑うが、やはりFVIII:Cが低くなるフォン・ヴィレブランド病(VWD)を除外すべく、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)活性を測定しておく必要がある1)。軽症型の場合には、血友病AかVWDか鑑別が難しい場合がある。FIX:Cが単独で著明に低ければ、血友病Bと診断してよい1)。新生児期では、ビタミンK欠乏症(VKD)に注意が必要である。VKDでは第II、第VII、第IX、第X因子活性が低下しており、PTとAPTTの両者がともに延長するが、ビタミンKシロップの投与により正常化することで鑑別可能である。それでも血友病が疑われる場合にはFVIII:CやFIX:Cを測定する6)。まれではあるが、とくに家族歴や基礎疾患もなく、それまで健康に生活していた高齢者や分娩後の女性などで、突然の出血症状とともにAPTTの著明な延長と著明なFVIII:Cの低下を認める「後天性血友病A」という疾患が存在する7)。後天的にFVIIIに対する自己抗体が産生されることにより活性が阻害され、出血症状を招く。100万人に1~4人のまれな疾患であるがゆえに、しばしば診断や治療に難渋することがある7)。ベセスダ法によるFVIII:Cに対するインヒビターの存在の確認が確定診断となる。■保因者への注意事項保因者には、血友病の父親をもつ「確定保因者」と、家系内に患者がいて可能性を否定できない「推定保因者」がいる。確定保因者の場合、その女性が妊娠・出産を希望する場合には、前もって十分な対応が可能であろう。推定保因者の場合にもしかるべき時期がきたら検査をすべきであろう。保因者であっても因子活性がかなり低いことがあり、幼小児期から出血傾向を示す場合もあり、製剤の投与が必要になることもあるので注意を要する。血友病児が生まれるときに、頭蓋内出血などを来す場合がある。保因者の可能性のある女性を前もって把握しておくためにも、あらためて家族歴を患者に確認しておくことが肝要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)従来は、出血したら治療するというオンデマンド、出血時補充療法が主体であった1)。欧米では1990年代後半から、安全な凝固因子製剤の使用が可能となり、出血症状を少なくすることができる定期的な製剤の投与、定期補充療法が普及してきた1)。また、先立って1980年代には自己注射による家庭内治療が一般化されてきたこともあり、わが国でも1990年代後半から定期補充療法が幅広く普及し、その実施率は年々増加してきており、現在では約70%の患者がこれを実践している5)。定期補充療法の普及によって、出血回数は減少し、健康な関節の維持が可能となって、それまでは消極的にならざるを得なかったスポーツなども行えるようになり、血友病の疾患・治療概念は大きく変わってきた。定期補充療法の進歩によって、年間出血回数を2回程度に抑制できるようになってきたが、それぞれの因子活性の半減期(FVIIIは10~12時間、FIXは20~24時間)から血友病Aでは週3回、血友病Bでは週2回の投与が推奨され、かつ必要であった1)。凝固因子製剤は、静脈注射で供給されるため、実施が困難な場合もあり、患者は常に大きな負担を強いられてきたともいえる。そこで、少しでも患者の負担を減らすべく、半減期を延長させた製剤(半減期延長型製剤:EHL製剤)の開発がなされ、FVIII製剤、FIX製剤ともにそれぞれ数社から製品化された6,8)。従来の凝固因子に免疫グロブリンのFc領域ではエフラロクトコグ アルファ(商品名:イロクテイト)、エフトレノナコグ アルファ(同:オルプロリクス)、ポリエチレングリコール(PEG)ではルリオクトコグ アルファ ペゴル(同:アディノベイト)、ダモクトコグ アルファ ペゴル(同:ジビイ)、ノナコグ ベータペゴル(同:レフィキシア)、アルブミン(Alb)ではアルブトレペノナコグ アルファ(同:イデルビオン)などを修飾・融合させることで半減期の延長を可能にした6,8)。PEGについては、凝固因子タンパクに部位特異的に付加したものやランダムに付加したものがある。付加したPEGの分子そのもののサイズも20~60kDaと各社さまざまである。また、通常はヘテロダイマーとして存在するFVIIIタンパクを1本鎖として安定化をさせたロノクトコグ アルファ(同:エイフスチラ)も使用可能となった。これらにより血友病AではFVIIIの半減期が約1.5倍に延長され、週3回が週2回へ、血友病BではFIXの半減期が4~5倍延長できたことから従来の週2回から週1回あるいは2週に1回にまで注射回数を減らすことが可能となり、かつ出血なく過ごせるようになってきた6,8)。上手に製剤を使うことで標的関節の出血回避、進展予防が可能になってきたとともに年間出血回数ゼロを目指すことも可能となってきた。■個別化治療以前は<1%の重症型からそれ以上(1~2%以上の中等症型)に維持すれば、それだけでも出血回数を減らすことが可能ということで、定期補充療法のメニューが組まれてきた。しかし、製剤の利便性も向上し、EHL製剤の登場により最低レベル(トラフ値)もより高く維持することが可能となってきた6,8)。必要なトラフ値を日常生活において維持するのみならず、必要なとき、必要な時間に、患者の活動に合わせて因子活性のピークを作ることも可能になった。個々の患者のさまざまなライフスタイルや活動性に合わせて、いわゆるテーラーメイドの個別化治療が可能になりつつある。また、合併症としてのHIV感染症やHCVのみならず、高齢化に伴う高血圧、腎疾患や糖尿病などの生活習慣病など、個々の合併症によって出血リスクだけではなく血栓リスクも考えなければならない時代になってきている。ひとえに定期補充療法が浸透してきたためである。ただし、凝固因子製剤の半減期やクリアランスは、小児と成人では大きく異なり、個人差が大きいことも判明している1)。しっかりと見極めるためには個々の薬物動態(PK)試験が必要である。現在ではPopulation PKを用いて投与後2ポイントの採血と体重、年齢などをコンピュータに入力するだけで、個々の患者・患児のPKがシミュレートできる9)。これにより、個々の患者・患児の生活や出血状況に応じた、より適切な投与量や投与回数に負担をかけずに検討できるようになった。もちろん医療費という面でも費用対効果を高めた治療を個別に検討することも可能となってきている。■製剤の選択基本的には現在、市場に出ているすべての凝固因子製剤は、その効性や安全性において優劣はない。現在、製剤は従来型、EHL含めてFVIIIが9種類、FIXは7種類が使用可能である。遺伝子組換え製剤のシェアが大きくなってきているが、国内献血由来の血漿由来製剤もFVIII、FIXそれぞれにある。血漿由来製剤は、未知の感染症に対する危険性が理論的にゼロではないため、先進国では若い世代には遺伝子組換え製剤を推奨している国が多い。血漿由来製剤の中にあって、VWF含有FVIII製剤は、遺伝子組換え製剤よりインヒビター発生リスクが低かったとの報告もなされている10)。米国の専門家で構成される科学諮問委員会(MASAC)は、最初の50EDs(実投与日数)はVWF含有FVIII製剤を使用してインヒビターの発生を抑制し、その後、遺伝子組換え製剤にすることも1つの方法とした11)。ただ、初めて凝固因子製剤を使用する患児に対しては、従来の、あるいは新しい遺伝子組換え製剤を使用してもよいとした11)。どれを選択して治療を開始するかはリスクとベネフィットを比較して、患者と医療者が十分に相談したうえで選択すべきであろう。4 今後の展望■個々の治療薬の開発状況1)凝固因子製剤現在、凝固因子にFc、PEG、Albなどを修飾・融合させたEHL製剤の開発が進んでいることは既述した。同様に、さまざまな方法で半減期を延長すべく新規薬剤が開発途上である。シアル酸などを結合させて半減期を延長させる製剤、FVIIIがVWFの半減期に影響されることを利用し、Fc融合FVIIIタンパクにVWFのDドメインとXTENを融合させた製剤などの開発が行われている12)。rFVIIIFc-VWF(D’D3)-XTENのフェーズ1における臨床試験では、その半減期は37時間と報告され、血友病Aも1回/週の定期補充療法による出血抑制の可能性がみえてきている13)。2)抗体医薬これまでの血液製剤はいずれも静脈注射であることには変わりない。インスリンのように簡単に注射ができないかという期待に応えられそうな製剤も開発中である。ヒト化抗第IXa・第X因子バイスペシフィック抗体は、活性型第IX因子(FIXa)と第X因子(FX)を結合させることによりFX以下を活性化させ、FVIIIあるいはFVIIIに対するインヒビターが存在しても、それによらない出血抑制効果が期待できるヒト型モノクローナル抗体製剤(エミシズマブ)として開発されてきた。週1回の皮下注射で血友病Aのみならず血友病Aインヒビター患者においても、安全性と良好な出血抑制効果が報告された14,15)。臨床試験においても年間出血回数ゼロを示した患者の割合も数多く、皮下注射でありながら従来の静脈注射による製剤の定期補充療法と同等の出血抑制効果が示された。エミシズマブはへムライブラという商品名で、2018年5月にインヒビター保有血友病A患者に対して認可・承認され、続いて12月にはインヒビターを保有しない血友病A患者においてもその適応が拡大された。皮下注射で供給される本剤は1回/週、1回/2週さらには1回/4週の投与方法が選択可能であり、利便性は高いものと考えられる。いずれにおいても血中濃度を高めていくための導入期となる最初の4回は1回/週での投与が必要となる。この期間はまだ十分に出血抑制効果が得られる濃度まで達していない状況であるため、出血に注意が必要である。導入時には定期補充を併用しておくことも推奨されている。しかし、けっして年間出血回数がすべての患者においてゼロになるわけではないため、出血時にはFVIIIの補充は免れない。インヒビター保有血友病A患者におけるバイパス製剤の使用においても同様であるが、出血時の対応については、主治医や専門医とあらかじめ十分に相談しておくことが肝要であろう。血友病Bではその長い半減期を有するEHLの登場により1回/2週の定期補充により出血抑制が可能となってきた。製剤によっては、通常の使用量で週の半分以上をFIXが40%以上(もはや血友病でない状態「非血友病状態」)を維持可能になってきた。血友病Bにおいても皮下注射によるアプローチが期待され、開発されてきている。やはりヒト型モノクローナル抗体製剤である抗TFPI(Tissue Factor Pathway Inhibitor)抗体はTFPIを阻害し、TF(組織因子)によるトロンビン生成を誘導することで出血抑制効果が得られると考えられ、現在数社により日本を含む国際共同試験が行われている12)。抗TFPI抗体の対象は血友病AあるいはB、さらにはインヒビターあるなしを問わないのが特徴であり、皮下注射で供給される12)。また、同様に出血抑制効果が期待できるものに、肝細胞におけるAT(antithrombin:アンチトロンビン)の合成を、RNA干渉で阻害することで出血抑制を図るFitusiran(ALN-AT3)なども研究開発中である12)。3)遺伝子治療1999年に米国で、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた血友病Bの遺伝子治療のヒトへの臨床試験が初めて行われた15)。以来、ex vivo、in vivoを問わずさまざまなベクターを用いての研究が行われてきた15)。近年、AAVベクターによる遺伝子治療による長期にわたっての安全性と有効性が改めて確認されてきている。FVIII遺伝子(F8)はFIX遺伝子(F9)に比較して大きいため、ベクターの選択もその難しさと扱いにくさから血友病Bに比べ、遅れていた感があった。血友病BではPadua変異を挿入したF9を用いることで、より少ないベクターの量でより副作用少なく安全かつ高効率にFIXタンパクを発現するベクターを開発し、10例ほどの患者において1年経た後も30%前後のFIX:Cを維持している16-18)。1回の静脈注射で1年にわたり、出血予防に十分以上のレベルを維持していることになる。血友病AでもAAVベクターを用いてヒトにおいて良好な結果が得られており、血友病Bの臨床開発に追い着いてきている16-18)。両者ともに海外においてフェーズ 1が終了し、フェーズ 3として国際臨床試験が準備されつつあり、2019年に国内でも導入される可能性がある。5 主たる診療科血友病の診療経験が豊富な診療施設(診療科)が近くにあれば、それに越したことはない。しかし、専門施設は大都市を除くと各県に1つあるかないかである。ネットで検索をすると血友病製剤を扱う多くのメーカーが、それぞれのホームページで全国の血友病診療を行っている医療機関を紹介している。たとえ施設が遠方であっても病診連携、病病連携により専門医の意見を聞きながら診療を進めていくことも十分可能である。日本血栓止血学会では現在、血友病診療連携委員会を立ち上げ、ネットワーク化に向けて準備中である。国内においてその拠点となる施設ならびに地域の中核となる施設が決定され、これらの施設と血友病患者を診ている小規模施設とが交流を持ち、スムーズな診療と情報共有ができるようにするのが目的である。また、血友病には患者が主体となって各地域や病院単位で患者会が設けられている。入会することで大きな安心を得ることが可能であろう。困ったときに、先輩会員に相談でき、患児の場合は同世代の親に気軽に相談することができるメリットも大きい。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報一般社団法人ヘモフィリア友の会全国ネットワーク(National Hemophilia Network of Japan)(血友病患者と家族の会)1)Lee CA, et al. Textbook of Hemophilia.2nd ed.USA: Wiley-Blackwell; 2010.2)Rogaev EI, et al. Science. 2009;326:817.3)Blanchette VS, et al. J Thromb Haemost. 2014;12:1935-1939.4)Franchini M, et al. J Haematol. 2010;148:522-533.5)瀧正志(監修). 血液凝固異常症全国調査 平成28年度報告書.公益財団法人エイズ予防財団;2017. 6)Nazeef M, et al. J Blood Med. 2016;7:27-38.7)Kessler CM, et al. Eur J Haematol. 2015;95:36-44.8)Collins P, et al. Haemophilia. 2016;22:487-498.9)Iorio A, et al. JMIR Res Protoc. 2016;5:e239.10)Cannavo A, et al. Blood. 2017;129:1245-1250.11)MASAC Recommendation on SIPPET. Results and Recommendations for Treatment Products for Previously Untreated Patients with Hemophilia A. MASAC Document #243. 2016.12)Lane DA. Blood. 2017;129:10-11.13)Konkle BA, et al. Blood 2018,San Diego. 2018;132(suppl 1):636(abstract).14)Shima M, et al. N Engl J Med. 2016;374:2044-2053.15)Oldenburg J, et al. N Engl J Med. 2017;377:809-818.16)Swystun LL, et al. Circ Res. 2016;118:1443-1452.17)Doshi BS, et al. Ther Adv Hematol. 2018;9:273-293.18)Monahan PE. J Thromb Haemost. 2015;1:S151-160.公開履歴初回2017年9月12日更新2019年2月12日

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同種移植、鎌状赤血球貧血児の脳卒中リスクを軽減/JAMA

 経頭蓋超音波ドプラ(TCD)で血流速度の持続的な上昇がみられるため、継続的な輸血を要する鎌状赤血球貧血(SCA)の患児では、適合同胞ドナー造血幹細胞移植(MSD-HSCT)により、標準治療に比べて1年後のTCD血流速度が有意に低下し、脳卒中リスクが軽減するとの研究結果が、フランス・Centre Hospitalier Intercommunal de CreteilのFrancoise Bernaudin氏らが実施したDREPAGREFFE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年1月22日号に掲載された。SCA児では、TCD血流速度の上昇が脳卒中リスクと関連し、継続的な輸血によってリスクは軽減することが知られている。MSD-HSCTは多くのSCA児に治癒をもたらすとともに脳血流量を低下させるが、輸血と比較する前向き対照比較試験は行われていなかった。脳血流速度を比較する非無作為化試験 本研究は、SCA児において、MSD-HSCTと、虚血性脳卒中発症の代替指標としてのTCD血流速度との関連の評価を目的とする非盲検非無作為化対照比較介入試験(フランスAssistance Publique-Hopitaux de Parisの助成による)。 対象は、年齢15歳未満、TCDで血流速度の持続的な上昇がみられるため継続的な輸血を要し、同じ両親を持つ1人以上の非SCAのきょうだいがいるSCAの子供であった。家族は、ヒト白血球抗原(HLA)の抗体検査の実施に同意し、適合同胞ドナーが見つかった場合は移植を、適合同胞ドナーがいない場合は標準治療を施行することに同意することとした。 標準治療は、1年以上の輸血を行い、その後はhydroxyureaへの切り換えも可とした。傾向スコアマッチング法を用いて、MSD-HSCT群と標準治療群を比較した。 主要アウトカムは、1年後の、TCDで測定した8つの脳動脈における時間平均最大血流速度(time-averaged mean of maximum velocities:TAMV)とした。4項目の副次アウトカムでも有意差 患者登録は、2010年12月~2013年6月の期間にフランスの9施設で行われ、2017年1月まで3年間のフォローアップが実施された。67例(年齢中央値7.6歳、女児35例[52%])が登録され、MSD-HSCT群に32例、標準治療群には35例が割り付けられた。傾向スコアでマッチさせた、それぞれ25例ずつの患者の解析を行った。 1年時のTAMVは、MSD-HSCT群が129.6cm/sと、標準治療群の170.4cm/sに比べ有意に低下した(差:-40.8cm/s、95%信頼区間[CI]:-62.9~-18.6、p<0.001)。 29項目の副次アウトカムのうち25項目の解析が行われた。以下の4項目で有意差が認められ、いずれもMSD-HSCT群で良好だった。 3年時のTAMV(MSD-HSCT群112.4cm/s vs.標準治療群156.7cm/s、差:-44.3cm/s、95%CI:-71.9~-21.1、p=0.001)、1年時の血流速度の正常化(TAMV<170cm/s)(80.0% vs.48.0%、32.0%、0.2~58.6%、p=0.045)、1年時のフェリチン値(905ng/mL vs.2,529ng/mL、-1,624ng/mL、-2,370~-879、p<0.001)、3年時のフェリチン値(382 ng/mL vs.2,170ng/mL、-1,788ng/mL、-2,570~-1,006、p<0.001)。 MSD-HSCT群の5例で、皮膚症状のみを伴う急性の移植片対宿主病(GVHD)が観察された(Grade I:2例、Grade II:2例、Grade III:1例)。Grade II以上の急性GVHDの累積発症率は9.4%であった。静脈閉塞性疾患は認めなかった。 その他の有害事象として、痙攣を伴う可逆性後頭葉白質脳症(2例)、無症候性のサイトメガロウイルス再活性化(11例)、EBウイルス感染症(6例)、出血性膀胱炎(4例)などがみられた。 著者は、「MSD-HSCTが臨床アウトカムに及ぼす影響を評価するために、さらなる検討を要すると考えられる」としている。

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ビタミンB12値、がんの早期発見に利用できるか

 ビタミンB12(以下、B12)値の上昇は短期のがんリスク増加と関連しているが、プライマリケアにおけるがんの早期発見における意義は検討されていない。今回、デンマーク・Aarhus University HospitalのJohan F. Arendt氏らが、英国のプライマリケアデータベースを用いたコホート研究で検討したところ、血漿B12値が上昇していると正常値より1年がんリスクが高く、数種のがんがB12代謝に影響を及ぼす可能性が示唆された。著者らは「B12値上昇は、不顕性がんがあることを示すかもしれない」としている。Cancer epidemiology, biomarkers & prevention誌オンライン版2019年1月14日号に掲載。 本研究では、英国のThe Health Improvement Network(THIN)プライマリケアデータベースにおいて、血漿B12値が測定されている患者をサンプリングした。B12値が低い患者、B12値測定日より前にがんを罹患していた患者やB12の治療を受けた患者は除外した。がん発症はReadコードにより識別した。対象患者を血漿B12値(単位:pmol/L)で4群(150~600:基準、601~800、801~1,000、1,000超)に分けて検討した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした75万7,185例のうち、追跡期間中、3万3,367例にがんが発症した。・B12値正常者と比べ、B12値が上昇していた2万5,783例(3.4%)において、1年がんリスクが高かった。・ライフスタイル因子および社会的隔離に関する多変量調整後、B12値が1,000pmol/L超の患者の1年罹患率比は4.72であった(95%信頼区間:3.99~5.58)。この関連は非線形の用量反応パターンを示し、層別解析においても変わらなかった。・B12値が上昇していた患者において、とくに肝がん、膵臓がん、骨髄性悪性腫瘍のリスクが高かった。■関連記事患者説明用スライド「ビタミンB12ってなあに?」

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ヘモクロマトーシスの遺伝子変異、一般的な疾患とも関連/BMJ

 HFE遺伝子p.C282Y変異のホモ接合体は、性別を問わず、臨床的に診断された一般的な疾患(肝疾患、糖尿病、関節リウマチ、変形性関節症など)の有病率や発生率と関連があり、鉄過剰に関連するp.C282Y変異は、早期に介入を開始すれば予防および治療の可能性があることが、英国・エクセター大学のLuke C. Pilling氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年1月16日号に掲載された。欧州人家系では、HFE遺伝子p.C282Y変異ホモ接合体は、鉄過剰症である遺伝性ヘモクロマトーシス(1型)の主因とされる。鉄過剰症は瀉血療法により予防可能であり、治療が可能な場合もあるが、見逃しや診断の遅延が多いという。約45万人で変異の有無別の罹患状況を検討 研究グループは、英国の欧州人家系の地域住民サンプルにおいて、HFE遺伝子p.C282Yの遺伝的バリアントを有する集団(ほとんどが遺伝性ヘモクロマトーシス1型)と、p.C282Y変異のない集団で、罹患および死亡の状況を比較するコホート研究を行った(英国医学研究協議会[MRC]の助成による)。 解析には、UK Biobankに登録されたイングランド、ウェールズ、スコットランドの22施設の2006~10年のデータを用いた。外来診断および死亡証明に基づき、40~70歳の欧州人家系の45万1,243例(平均追跡期間7年、最長9.4年)が抽出された。 ヘモクロマトーシス変異の有無別に有病率のオッズ比(OR)およびハザード比(HR)を算出した(年齢、遺伝子配列型、遺伝的主成分で補正)。女性は鉄過剰に起因する罹患が遅れるため、男女別に解析を行った。男性の5例に1例、女性の10例に1例以上が罹患 p.C282Y変異ホモ接合体を有する2,890例(0.6%、156例に1例の割合)のうち、追跡終了までに男性の21.7%(95%信頼区間[CI]:19.5~24.1、281/1,294例)、女性の9.8%(8.4~11.2、156/1,596例)がヘモクロマトーシスと診断された。 40~70歳のp.C282Y変異ホモ接合体の男性(1,294例)はp.C282Y変異のない男性(17万5,539例)に比べ、ヘモクロマトーシス(OR:411.1、95%CI:299.0~565.3、p<0.001)、肝疾患(4.30、2.97~6.18、p<0.001)、骨粗鬆症(2.30、1.49~3.57、p<0.001)、関節リウマチ(2.23、1.51~3.31、p<0.001)、変形性関節症(2.01、1.71~2.36、p<0.001)、肺炎(1.62、1.20~2.19、p=0.002)、糖尿病(1.53、1.16~1.98、p=0.002)の有病率が有意に高かった。 40~70歳のp.C282Y変異ホモ接合体女性(1,596例)で有意に有病率が高い疾患は、ヘモクロマトーシス(OR:438.0、95%CI:247.9~773.9、p<0.001)のほかは、変形性関節症(1.33、1.15~1.53、p<0.001)のみであった。 7年の追跡期間中に、ホモ接合体の男性の15.7%が、1つ以上の関連疾患を発症したのに対し、p.C282Y変異なしの男性は5.0%であり、有意な差が認められた(p<0.001)。同様に、女性でもそれぞれ10.1%、3.4%と、有意差がみられた(p<0.001)。 ヘモクロマトーシスの頻度は、p.C282Y/p.H63Dヘテロ接合体の参加者のほうが高かったが、この集団では関連疾患の罹患は多くなかった。 著者は、「p.H63Dを考慮しなければ、ベースラインとその後の診断を合わせ、p.C282Y変異ホモ接合体を有する男性の5例に1例以上、女性の10例に1例以上が、ヘモクロマトーシス、肝疾患、糖尿病、関節リウマチ、変形性関節症のうち1つ以上の診断を受けることになる」とまとめ、「これらの知見は、早期の診断確定やスクリーニングの拡大の推奨に関わる多くの問題の見直しを正当化する」としている。

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バベシア症に気を付けろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。さて、これまで「次はバベシア症です」と言ってもう1年半くらい引っ張ってきましたが(まあ私の原稿が遅いからというのもありますが)、今回ようやくバベシア症についてご紹介するときが来ましたッ! たぶん誰も興味ないと思いますが、バベシア症についてご紹介したいと思います!次回あらためてお話しいたしますが、日本国内ではまったく関係ない感染症、というわけではありませんので、少しでも知っておくと将来役立つ可能性が無きにしもあらずですッ!バベシア症の原因は“マダニ”まずバベシア症とは何か、ということですが赤血球内に寄生するバベシア原虫によるマダニ媒介感染症です。「赤血球内に寄生する」というと、マラリア原虫が思い浮かびますが、実際臨床像もマラリアによく似ています。名前の由来は、1888年に畜牛のヘモグロビン尿症の原因を診断したハンガリー人の病理学者・微生物学者であるVictor Babesの名をとって「バベシア症」と名付けられたとのことです。「ふーん」って感じですよね。初のヒト感染症はバベシア症発見から半世紀後に、クロアチア人で脾摘された牛飼いがB. divergensに感染した事例が報告されています。その後、アメリカ合衆国のナンタケット島で健康な成人のバベシア症患者が続き、バベシア症は「ナンタケット熱」と呼ばれたということで「ナンタケット島でアウトブレイクとはなんてこっとだ(ダジャレ)!」って感じですよね。うんうん。バベシア症の流行地域と感染経路さて、バベシア症を引き起こすバベシア原虫は100種類以上いますが、ヒトに感染するのは数種類のみであるとされています。アメリカで流行しているバベシア症の原因はBabesia microtiという種類であり、ヨーロッパではB. divergensという原虫によるバベシア症が報告されています。ちなみに媒介するマダニは、アメリカではシカダニ(Ixodes scapularis)、ヨーロッパではリシヌスマダニ(Ixodes ricinus)が知られています。また、バベシア症の流行地域、原虫種類および媒介するマダニの状況はこのサイトの図の通りです。マダニを介したヒトへの感染経路は図1のように、まず、1年目の春に成虫が卵を産み、夏になると幼虫となります。幼虫がバベシア原虫に感染したげっ歯類などを吸血すると、この際に幼虫はバベシア原虫を保有するようになります。翌年の春に幼虫は若虫となり、ヒトを吸血することでヒトがバベシア症になります。あるいは秋以降に成虫となったマダニがヒトを吸血してもヒトに感染します。画像を拡大するマラリアとの鑑別方法と診療バベシア症の臨床像ですが、非常にスペクトラムが広く、無症候性寄生虫血症から超重症まで広い臨床像を呈します。重症度は主に宿主の免疫により、「脾摘や脾臓低形成が最大の重症化リスクファクター」と言われていますが、その他にも新生児、高齢者、免疫抑制薬投与患者、臓器移植患者などもリスクとなるとされます。入院が必要な重症例では、死亡率6~9%、免疫不全患者では21%と報告されています。結構怖い病気ですね。潜伏期は感染したダニに噛まれてから1~4週で、発熱、頭痛、悪寒、咽頭痛、嘔吐、眼球結膜充血、体重減少などの臨床症状がみられ、身体所見では脾腫、黄疸、肝腫大、血液検査所見では軽度~中等度の溶血性貧血、血小板減少などが認められるそうです。この辺はガチでマラリアに似ていますね。診断もマラリアと同様に末梢血のギムザ染色で診断できます。他にも抗体検査やPCR検査でも診断できるようです。図2はバベシア症患者の血液のギムザ染色像です。画像を拡大する赤血球の中に輪っかのようなものがいるのが、おわかりでしょうか。これがバベシア原虫です。1つの赤血球内に複数の原虫がいるものもあります。これまたマラリアにおけるギムザ染色像と非常によく似ていますが、(1)バベシア原虫は赤血球外にもいることがある、(2)バベシア原虫はリングフォームの大きさがバラバラで多形性である、(3)バベシア原虫にはガメトサイトがない、(4)バベシア原虫にはhemozoinがない、という点がマラリア原虫との鑑別ポイントになります。いや~マニアックですねえ。治療では、「2つあるレジメンのうちいずれかで7~10日治療する」ということになっています。1つは、ニューモシスチス肺炎の治療や予防で使用することのあるアトバコンにアジスロマイシンを加えたレジメン、2つ目はマラリアの治療薬であるキニーネにクリンダマイシンを加えたレジメンです。一般的には1つ目のレジメンの方が、副作用での中断が少ないと言われています。また、重症(寄生率10%以上、重度の貧血、多臓器不全)では血漿交換療法をすることがあります。免疫不全患者では、持続寄生虫血症や再燃が起こりうるとされ、その場合は6週間(塗抹陰性化して2週間以上)の治療が必要となります。ということで、ここまでバベシア症の一般的な知識についてご紹介してきました。「日本で診療しているぶんには、まったく関係ないな!」と思われたかもしれませんが…実は日本国内でもバベシア症に感染するリスクがあるのですッ!次回は「日本におけるバベシア症」という、個人的に激アツ、沸騰中のお話をさせていただきますッ!1)Vannier E,et al. N Engl J Med. 2012;366:2397-2407.

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ビーリンサイトは急性リンパ性白血病の再発・難治例に有効か

 世界初の二重特異性T細胞誘導抗体による免疫療法が、移植を待ち望んでいる急性リンパ性白血病患者に救いの手を差し伸べる。12月10日、「急性リンパ性白血病の治療戦略と新たな免疫療法の役割」と題して、小林 幸夫氏(国際医療福祉大学三田病院悪性リンパ腫・血液腫瘍センター副センター長)、堀部 敬三氏(名古屋医療センター臨床研究センター長小児科部長)による講演が開催された(主催:アステラス・アムジェン・バイオファーマ)。ブリナツモマブ(商品名:ビーリンサイト)の初回寛解導入療法 日本における成人急性リンパ性白血病(ALL)の発症率は10万人に1人程度であり、年間約1,000人が発症していると推測される。長期生存率は、小児での約80%に対し、15~35%と言われており、圧倒的に低く、再発患者は多い。 ALLの再発時の治療法の1つに同種移植があり、移植可能な年齢の患者では、なんらかの抗がん剤治療で寛解導入に成功、ドナーが見つかり、移植(血縁一致、非血縁いずれも含む)ができさえすれば、ある程度の長期生存が得られる。しかし、現在は「再発後の確立した抗がん剤治療がなく、再寛解状態を維持して移植可能な状態まで確実に導ける薬剤はない」と、小林氏は再発時の現況についてコメント。新たに登場したブリナツモマブ(商品名:ビーリンサイト)は、このような現況を打破し、移植の橋渡しを担う薬剤となるのか。同氏は国内外の臨床試験の結果を提示した。 海外第III相比較対照臨床試験(TOWER study)は、成人の再発または難治性のPh陰性B細胞性ALL患者を対象に、ブリナツモマブ単剤群と標準化学療法群(FLAG、大量Ara-C療法など)を2:1に割り付けて行われた。その結果、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、ブリナツモマブ群(7.7ヵ月)が標準化学療法(4.0ヵ月)に比べて、有意に延長した。また、移植を「打ち切り」とした場合でも、OS中央値は6.9ヵ月vs.3.9ヵ月と有意差が得られた。主な有害事象(AE)として発熱、頭痛、貧血があったが、これまでの治療法との差はみられず、むしろ標準療法より少なかった。 類似の国内臨床試験として、ブリナツモマブの推奨用量、有効性、安全性を評価した第Ib/II相臨床試験(Horai study)がある。対象者を成人および小児の再発または難治性のB細胞性ALL)患者とし、参加者5例中4例において2サイクル以内でのCR/CRhが得られているという。 以上を踏まえ、同氏は「初回寛解導入療法への使用」についても、ブリナツモマブに対する期待を示した。ビーリンサイト発売は小児の急性リンパ性白血病治療に有用 ALLは小児がんのなかで最も多い疾患であり、小児期新規診断例は年間約500例である。最新の全生存率データによると、3年生存率は91.9%、10年生存率は87%に達しており、最も多く発症するB前駆細胞性ALLの治療成績も非常に良好であるという。ところが、現在、小児で行われている治療は1970年代に以前に開発された薬剤などを組み合わせたレジメンであり、治療期間(Burkitt型を除く)は平均2~3年を要し、成長期特有の副作用や成長・発達障害や臓器機能へ影響するAEが懸念される。このような状況下においてビーリンサイトが発売されたことを受け、堀部氏は「これは副作用やAEが回避できる治療薬。難治例に対する治療の開発が急務であるなか、有用である」とコメントした。 小児の再発・難治性急性リンパ性白血病患者を対象にブリナツモマブ投与による完全寛解率や微小残存病変(MRD)奏効率、AEをみた海外の第I/II相臨床試験によると、推奨用量で投与された患者群において、CRが得られた患者のPFS中央値は4.4ヵ月と短かった。しかし、投与中止に至るようなAEの発現率は5.7%で、ほとんどはサイクル1の最初の数日に発生していたことが明らかになった。 予後因子として重要な所見となるPCR法によるMRD量は、寛解導入療法後のTime Point1と地固め療法後のTime Point2に測定するときれいに予後が分かれることから、欧米ではこの検査で層別化を図っているという。同氏によると、この骨髄微小残存病変量測定 (PCR-MRD検査)は2018年4月から日本でも保険承認され、間もなく全国で検査が可能となる。 最後に同氏は「ブリナツモマブは造血幹細胞移植などによる根治を目指した橋渡し治療としての有用性、MRD陽性CRにおける有用性への検討が課題」と締めくくった。■参考アステラスメディカルネット■関連記事BiTE抗体ブリナツモマブ、B細胞性ALLに国内申請

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後天性血栓性血小板減少性紫斑病の治療にcaplacizumabが有望/NEJM

 後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)の治療において、caplacizumabはプラセボに比べ、迅速に血小板数を正常化し、再発率を抑制することが、英国・University College London HospitalsのMarie Scully氏らが行ったHERCULES試験で示された。aTTPでは、von Willebrand因子の切断酵素であるADAMTS13の免疫介在性の欠損により、von Willebrand因子マルチマーが血小板や微小血栓に無制限に粘着可能となり、その結果として血小板減少、溶血性貧血、組織虚血が引き起こされる。caplacizumabは、抗von Willebrand因子ヒト化二価単一可変領域免疫グロブリンフラグメントであり、von Willebrand因子マルチマーと血小板の相互作用を阻害するという。NEJM誌オンライン版2018年1月9日号掲載の報告。血漿交換中止を伴う血小板数の正常化を検討 本研究は、aTTP患者の治療におけるcaplacizumabの有用性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2015年11月~2017年4月の期間に、世界92施設で145例が登録された(Ablynx社の助成による)。 被験者は、標準治療(血漿交換療法、グルココルチコイド)に加え、血漿交換療法中とその後30日間にcaplacizumab(初回は10mgを静脈内投与、その後は毎日1回皮下投与)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、血小板数の正常化(15万/mm3以上)までの期間(その後5日以内に血漿交換療法を中止できた場合)とした。副次アウトカムには、試験治療期間中のTTP関連死、TTP再発、血栓塞栓イベントの複合、フォローアップ期間を含む試験期間中のTTP再発、難治性TTP(治療開始4日目以降も血小板数が倍加せず、乳酸脱水素酵素が正常上限値を超えた状態)、臓器障害マーカー(乳酸脱水素酵素、心筋トロポニンI、血清クレアチニン)の正常化が含まれた。血小板数正常化の可能性が1.55倍に caplacizumab群に72例、プラセボ群には73例が割り付けられ、caplacizumab群の1例を除き1回以上の投与を受けた。全体で108例が試験を完遂した。平均年齢は46歳(範囲:18~79歳)で、69%が女性であった。 血小板数正常化までの期間中央値は、caplacizumab群が2.69日(95%信頼区間[CI]:1.89~2.83)と、プラセボ群の2.88日(2.68~3.56)に比べ有意に短く(p=0.01)、血小板数正常化の可能性はcaplacizumab群がプラセボ群の1.55倍(率比:1.55、1.09~2.19、p=0.01)であった。 試験治療期間中のTTP関連死、TTP再発、血栓塞栓イベントの複合の発生率は、caplacizumab群が12%(9例)であり、プラセボ群の49%(36例)よりも74%低下した(p<0.001)。試験期間中のTTP再発率は、caplacizumab群が12%(9例)と、プラセボ群の38%(28例)に比し67%低かった(p<0.001)。 難治性病変は、caplacizumab群では発現しなかったが、プラセボ群では4%(3例)に認められた(p=0.06)。臓器障害マーカーの正常化までの期間は、caplacizumab群がわずかに早かった(中央値、2.86日vs.3.36日)。また、caplacizumab群の患者は、プラセボ群に比べ血漿交換療法を要する日数(中央値、5.0日vs.7.0日)が短く、血漿量(中央値、18.1L vs.26.9L)が少なく、入院期間(中央値、9.0日vs.12.0日)が短かった。 最も頻度が高い有害事象は皮膚粘膜出血であり、caplacizumab群の65%、プラセボ群の48%にみられた。試験治療期間中にプラセボ群の3例が、治療期間終了後にcaplacizumab群の1例(脳虚血)が死亡し、いずれもTTPと関連した。 著者は、「caplacizumabによる血小板数の正常化は、おそらく本薬が微小血栓における血小板の消費を抑制するためと考えられる」としている。

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高齢者未治療CLLに対するイブルチニブの有用性~化学免疫療法との比較~(解説:大田雅嗣 氏)-992

 イブルチニブ(ibrutinib:以下IBR)はブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬である。BTKは非受容体型チロシンキナーゼTecファミリーの1つで、B細胞のアポトーシス制御、B細胞の成熟・分化、活性化、細胞接着や遊走などB細胞の生存に関与し1)、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞の細胞表面から核内遺伝子へ増殖シグナルを伝達する。BTK阻害薬はこの増殖シグナルをブロックすることで抗腫瘍効果を発揮する2)。 オハイオ州立大学からの報告(米国、カナダ219施設による共同研究)で、イブルチニブが未治療高齢者CLLに有用であることを従来の化学免疫療法と比較した第III相試験の結果としてNEJM誌に12月1日発表した3)。イブルチニブは2016年、未治療CLLの治療薬として米国FDAが認可したが、わが国では2016年5月、再発・難治性CLLに対する薬剤として薬価収載、その後2018年7月に未治療CLLに対しても保険適用となった。 従来欧米では65歳以上の高齢者CLLの治療として、chlorambucilとオビヌツズマブとの併用療法、あるいはベンダムスチン(B)とリツキシマブ(R)との併用が有用であるとされてきた。一方IBRに関しては治療抵抗性CLLでの有効性(無増悪生存期間PFSの中央値52ヵ月)4)、CLL初期治療で奏効例での2年PFSの割合が89%であったこと5)、初発CLLでchlorambucilとの比較試験での有用性6)が明らかになっているものの、これまでIBR単剤と化学免疫療法との比較はなされていなかった。またIBRにリツキシマブを加えた場合の上乗せ効果も議論となっており7)、今回の比較試験が組まれた。 2013年12月~2016年5月に新たに診断された65歳以上の未治療CLL 547例をB+R、IBR単独、IBR+Rの3群にランダムに1:1:1に割り付け、エンドポイントとして無増悪生存期間PFS、全生存期間OSを評価、また血液毒性、非血液毒性につき解析した。PFSはB+R群のみ中央値38ヵ月に達し、IRB、IBR+R群は中央値に達せず、2年推定PFSはB+R群で79%、IBR 87%、IBR+R 88%で、B+R群で有意に劣ったものの、IBR単独群とIBR+R群では有意差を認めなかった。2年OSでは3群間に有意差を認めなかった。Grade3以上の血液毒性はB+R群で高率であったものの、Grade3以上の非血液毒性はIBRあるいはIBR+R群で多かった。とくに発熱性好中球減少症、高血圧が有意に高率であった。30日以内の早期死亡もIBRあるいはIBR+R群で多かった。結論は治療効果の有用性でIBRあるいはIBR+R群が優っていたが、リツキシマブの上乗せ効果はみられなかったとされた。さらに予後不良因子とされているdel(17p)、del(11q)症例でのサブ解析でも、IBRあるいはIBR+R群でのPFSの優位性が示された。しかしながら観察期間がまだ短く、治療研究全体の評価のためには長期のフォローが必要と考えられた。 わが国では初発CLLに対してはフルダラビン(F)単独、F+エンドキサン、B単独、IBR単独療法が保険適用となっている。Rの併用はSLLでは可能である。欧米で通常用いられているchlorambucilはわが国では長らく未承認薬であり、分子標的薬である抗CD20抗体オファツムマブ、抗CD25抗体アレムツズマブも再発・難治例に使用が制限されている。日本におけるいわゆる“drug lag”の問題は解決していくべきだが、わが国では発症頻度が低く高齢者に多いCLLにおいて、いかに手持ちの治療薬を効果的に使っていくか検討すべき課題は多い。 余談だがIBRがマウス虚血脳モデルで、好中球のカスパーゼ-1活性化を媒介するインフラマソームの活性化を阻害することがわかり、虚血性脳梗塞の分子標的治療薬となりうることが示されており8)、BTK阻害薬のターゲットの多様性について注目していきたい。■参考文献1)Maas A, et al. Dev Immunol. 2001;8:171-181.2)Woyach JA, et al. Blood 2014;123:1207-1213.3)Woyach JA, et al. N Engl J Med. 2018;379:2517-2528.4)O'Brien S, et al. Blood 2018;131:1910-1919.5)Barr PM, et al. Haematologica 2018;103:1502-1510.6)Burger JA, et al. N Engl J Med. 2015;373:2425-2437.7)Burger JA, et al. Blood. 2018 Dec 7. [Epub ahead of print]8)Ito M, et al. Nat Commun. 2015;6:7360.

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がんの静脈血栓予防は必要かな?(解説:後藤信哉氏)-982

 日本では静脈血栓症が欧米に比較して圧倒的に少ない。遺伝子型として活性化プロテインC抵抗性を示す血液凝固因子のLeiden型変異がいないことが理由の1つと想定されるが、その他の生活習慣も寄与しているかもしれない。静脈血栓症の圧倒的多数には血栓性素因がある。日本の高齢者に初発の静脈血栓症を認めた場合には、悪性腫瘍が隠れている可能性が高い。静脈血栓症例に対する悪性腫瘍スクリーニングは重要である。 悪性腫瘍一般に予防的抗凝固療法を考える必要はない。本研究ではKhorana scoreを用いて血栓リスクの高いがん、血小板数、白血球数、BMIなどから静脈血栓リスクの高い症例を選別してランダム化比較試験を行った。ランダム化比較試験による「標準治療転換」の前には「標準治療」が確立されている必要がある。がんの症例の静脈血栓予防における標準治療は確立されていない。そこでプラセボとの比較試験になった。アピキサバンはXa阻害薬なので当然重篤な出血イベントを増加させた。血栓イベントも低下した。科学的には「アピキサバンは血栓リスクのある悪性腫瘍の症例にて重篤な出血イベントを減少させ、血栓イベントを低減させた」との結果を得た。もともと確立されていなかった「標準治療」が本研究により確立されたわけではない。ランダム化比較試験を計画するのであれば「標準治療を確立する」、ないし「標準治療を転換」すべくデザインを考えるべきである。

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がん患者の静脈血栓塞栓症予防、アピキサバンが有望/NEJM

 がん患者は静脈血栓塞栓症のリスクが高いとされる。カナダ・オタワ大学のMarc Carrier氏らAVERT試験の研究グループは、中等度~高度の静脈血栓塞栓症リスク(Khoranaスコア≧2)を有し、化学療法を開始した外来がん患者では、アピキサバンにより静脈血栓塞栓症の発生が抑制されることを示し、NEJM誌オンライン版2018年12月4日号で報告した。Khoranaスコアは静脈血栓塞栓症のリスクが高いがん患者を同定し、予防治療により便益を得ると考えられる患者の選定に役立つ可能性がある。また、直接経口抗凝固薬は、がん患者の血栓予防薬として、利便性や費用も含め、非経口薬よりも優れる可能性が示唆されている。静脈血栓塞栓症の予防におけるアピキサバンの有用性を評価 本研究は、化学療法を開始した外来がん患者の静脈血栓塞栓症の予防におけるアピキサバンの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験である(カナダ保健研究機構およびBristol-Myers SquibbとPfizerの提携組織の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、新規に診断されたがんまたは完全/部分寛解後に進行した既知のがんを有し、治療期間が最短でも3ヵ月の化学療法を新たに開始する患者であった。Khoranaスコア(0~6点、点数が高いほど静脈血栓塞栓症のリスクが高い)は、≧2(中等度~高度のリスク)とした。 被験者は、アピキサバン(2.5mg×2回/日)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要な有効性評価項目は180日後の静脈血栓塞栓症(近位深部静脈血栓症、肺塞栓症)の発現であり、主な安全性評価項目は大出血エピソードとした。 2014年2月~2018年4月の期間に、カナダの13施設で574例(アピキサバン群291例、プラセボ群283例)が無作為割り付けの対象となり、563例(288例、275例)が修正intention-to-treat解析に含まれた。静脈血栓塞栓症の発生率はアピキサバン群が有意に低い 全体の平均年齢は61歳、女性が58.2%であった。がん種は多い順に、婦人科がん(25.8%)、リンパ腫(25.3%)、膵がん(13.6%)であった。転移病変を有する固形がんの患者が、アピキサバン群に73例、プラセボ群には67例含まれた。治療期間中央値はそれぞれ157日、155日、追跡期間中央値は両群とも183日だった。 追跡期間中の静脈血栓塞栓症の発生率は、アピキサバン群が4.2%(12/288例)と、プラセボ群の10.2%(28/275例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.26~0.65、p<0.001)。治療期間中の静脈血栓塞栓症の発生率は、それぞれ1.0%(3例)、7.3%(20例)であり、アピキサバン群で有意に低かった(0.14、0.05~0.42)。 一方、大出血エピソードの発生率は、アピキサバン群は3.5%(10/288例)であり、プラセボ群の1.8%(5/275例)に比し有意に高かった(HR:2.00、95%CI:1.01~3.95、p=0.046)。治療期間中の大出血の発生率は、それぞれ2.1%(6例)、1.1%(3例)であり、有意差は認めなかった(1.89、0.39~9.24)。 死亡率はアピキサバン群が12.2%(35例)、プラセボ群は9.8%(27例)であった(HR:1.29、95%CI:0.98~1.71)。死亡した62例中54例(87%)の死因は、がんまたはがんの進行に関連していた。 著者は、「全生存に差がないのは、最も一般的な死因である進行がんの患者が多かったという事実を反映している可能性がある。静脈血栓塞栓症の予防が死亡率の低減に結びつくのが理想だが、この課題に取り組むには、異なるデザインの、より大規模な試験を要するだろう」としている。

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高齢の未治療CLL、イブルチニブでPFS延長/NEJM

 高齢の未治療慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、イブルチニブの単剤またはリツキシマブとの併用は、ベンダムスチン+リツキシマブ併用療法と比較し、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが認められた。イブルチニブ単剤投与とイブルチニブ+リツキシマブ併用投与との間で、PFSに差はなかった。米国・オハイオ州立大学総合がんセンターのJennifer A. Woyach氏らが、イブルチニブの第III相試験「A041202試験」の結果を報告した。イブルチニブは、未治療CLLの1次治療として米国では2016年に承認されているが、化学免疫療法との比較はされていなかった。NEJM誌オンライン版2018年12月1日号掲載の報告。イブルチニブ単剤、リツキシマブと併用、ベンダムスチン+リツキシマブを比較 イブルチニブの有効性を評価する試験は、2013年12月~2016年5月に米国およびカナダの219施設にて行われた。研究グループは、65歳以上の未治療CLL患者547例を、ベンダムスチン+リツキシマブ(ベンダムスチン併用)群(183例)、イブルチニブ単剤群(182例)、イブルチニブ+リツキシマブ(イブルチニブ併用)群(182例)に1対1対1の割合に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)。 本試験は、第2回中間解析の結果、プロトコールで定義された有効性閾値を満たしたことから(有意水準:片側p=0.025、log-rank検定)、データ安全性モニタリング委員会が結果の公表を決定した。2年PFS率は、イブルチニブ単剤・併用群が87~88% PFSは、ベンダムスチン併用群のみ中央値に到達した。2年推定PFS率は、ベンダムスチン併用群74%、イブルチニブ単剤群87%(ハザード比[HR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.26~0.58、p<0.001)、イブルチニブ併用群88%(HR:0.38、95%CI:0.25~0.59、p<0.001)であり、ベンダムスチン併用群と比べてイブルチニブ両群が有意に高率であった。 イブルチニブ併用群とイブルチニブ単剤群との間で、PFSに有意差は確認されなかった(HR:1.00、95%CI:0.62~1.62、p=0.49)。 追跡期間中央値38ヵ月において、全生存期間は3群間で有意差はなかった。 Grade3以上の血液学的有害事象の発現率は、イブルチニブ単剤群41%、イブルチニブ併用群39%に対し、ベンダムスチン群で61%と高率であった。一方、Grade3以上の非血液学的有害事象の発現率は、イブルチニブ単剤群およびイブルチニブ併用群(それぞれ74%)よりベンダムスチン群(63%)が低かった。 なお著者は、追跡期間が短くサブグループ間の有意差は検出力不足などの点で研究には限界があったと述べている。

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医師が選んだ"2018年の漢字"TOP5! 【CareNet.com会員アンケート結果発表】

毎年恒例、12月の発表に向けて日本漢字能力検定協会が募集している「今年の漢字」。CareNet.comでは、一足早く会員の先生方に今年の漢字を選んでいただきました。「今年1年の世相を漢字1文字で表すとしたら、何を思い浮かべますか?」という質問に対し、ダントツで選ばれたのは、自然災害を連想させる「災」でした。それでは、「2018年の漢字」トップ5を発表します。発表にあたって、今年はケアネットの新入社員が筆を執りました。書を持つ5人も新入社員です。1位災第1位は群を抜いて多かった「災」2018年は、豪雪に始まり、各地での地震、西日本豪雨、酷暑、台風被害など、さまざまな自然災害が記憶に残る1年でした。なかには、被災した方からのコメントもあり、これを機に、医療現場や家庭での対応策を見直すべきなのかもしれません。 「災」を選んだ理由(コメント抜粋)今年は、地震、台風、土砂崩れなど自然災害が多かった。(60代 内科医/兵庫県)西日本豪雨災害にショックを受けたのと、他にも日本各地で地震、台風など多くの災害があった年だと思うから。(50代 内科医/広島県)今年1年、西日本豪雨、北海道地震、台風など自然災害続きで多くの方が被害に遭われた。そのことを忘れたくはないので。(50代 血液内科/福岡県)まさか自分も被災者になるとは思わなかった。(40代 内科/広島県)2位変昨年初登場し、今年は第2位にランクアップ。年号が変わることを筆頭にした国内の変化、トランプ大統領の動向など世界の変化、そして異常気象やプライベートの環境変化など、さまざまな「変」に対するコメントが寄せられました。平成が終わり、次の年号は何に決まるのでしょうか。 「変」を選んだ理由(コメント抜粋)いろいろと変化が大きかった。世界も安定しておらず、紛争、米国のトランプ大統領など、変化が大きかった。(60代 内科/新潟県)豪雪、猛暑などの気候等も含め「今までの常識だけでは対応できない」ことによく遭遇したという意味で。自身が臨機応変に対応できればという願いも込めて選びました。(50代 内科/福井県)初の米朝首脳会談、築地市場移転、平成最後の年など、変化する世の中であったから。(40代 消化器内科/福岡県)3位嘘第3位は4年ぶりに再登場の「嘘」。政治、マスコミ、教育、メーカーにおける虚偽に関するコメントが多く寄せられました。とくに、東京医大の入試減点問題は印象に残る先生も多かったのではないでしょうか。 「嘘」を選んだ理由(コメント抜粋)政治家の虚偽発言や、フェイクニュースの話題が多かった。(60代 神経内科/東京都)入試不正が印象に残ったから。(30代 精神科/福島県)日本をはじめ各国の指導者が平気で嘘をつき過ぎる。官僚や一流企業・大学も改竄、隠蔽、不正のオンパレード。(50代 皮膚科/東京都)4位乱第4位の「乱」は4年連続のランクイン。国内だけでなく、世界情勢も含めて「乱れている」「混乱している」という印象が強いようです。なかには、渋谷でのハロウィン騒ぎを連想させるコメントもありました。 「乱」を選んだ理由(コメント抜粋)今の世の中あらゆるものが乱れている。(60代 外科/大分県)天災や不祥事などいろいろな騒動が目に付いたから。(30代 循環器内科/福岡県)天候、気象、災害、犯罪、秩序、政治などすべての分野で常識から外れた、乱れた出来事が多過ぎたから。(50代 総合診療科/青森県)5位暑第5位は、初登場の「暑」。7月半ばから8月にかけては気温40度超えの観測地点数が過去最多となり、各地で熱中症患者が多発しました。東京オリンピックに向けた暑さ対策も検討されており、納得のランクインです。 「暑」を選んだ理由(コメント抜粋)今年の夏が非常に暑かったから。(50代 泌尿器科/岐阜県)とにかく猛暑だった。(60代 リハビリテーション科/熊本県)猛暑で大変だった。(40代 小児科/静岡県)アンケート概要アンケート名 :『2018年を総まとめ!今年の漢字と印象に残ったニュースをお聞かせください』実施日    :2018年11月8日~15日調査方法   :インターネット対象     :CareNet.com会員医師有効回答数  :526件

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新たな免疫CP阻害薬《私を食べて》-さまざまながん腫に対する有用性を示唆(解説:大田雅嗣 氏)-961

 NEJM誌11月1日号に「CD47 Blockade by Hu5F9-G4 and Rituximab in Non-Hodgkin’s Lymphoma.」のタイトルで論文が掲載された1)。スタンフォード大学のWeissmanらのグループの長年にわたる基礎研究が実を結び治療薬として脚光を浴びることとなった。 CD47(インテグリン関連蛋白)はマクロファージ、樹状細胞などが介するphagocytosisの調節機能を担う蛋白で種々の細胞表面に発現している。CD47は免疫担当細胞の細胞表面膜の受容体の1つであるSIRPα(signal regulating protein α)のリガンドでもあり、双方の結合によりphagocytosisを抑制する“do not eat me”シグナルを伝達することが判明しており2)、腫瘍細胞は免疫担当細胞による捕食から身を守るシステムを有している。 この“do not eat me”シグナルをCD47に対する抗体で抑制することによりマクロファージを活性化し腫瘍細胞のphagocytosisを促進し、またT細胞を介した抗腫瘍効果が期待された。これまでリンパ腫を含む種々のがん細胞でCD47の高発現が観察されており、予後不良因子とされた。in vivoでCD47に対する抗体が急性骨髄性白血病(AML)細胞のphagocytosisを促進させることが判明 3)。さらに、AML、非ホジキンリンパ腫(NHL)や種々の固形がんの担がん免疫不全マウスモデルで、CD47抗体ががん細胞に対して殺細胞的に働くことが示された4)。また急性リンパ芽球性白血病細胞担がんマウスモデル5)、固形腫瘍担がんマウスモデル6)でも同様の抗腫瘍効果が示された。 今回の論文で用いられたヒト化抗CD47単クローン抗体はHu5F9-G4 (IgG4 isotype)と命名され、抗CD20抗体であるリツキシマブと相乗的に、リンパ腫担がんマウスモデルでリンパ腫細胞に対して殺細胞的に作用し、リンパ腫の治癒を可能にすることが示された7)。 本論文では再発または難治性B細胞性非ホジキンリンパ腫22症例を対象にHu5F9-G4とリツキシマブを投与し、全奏効率50%(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で40%、濾胞性リンパ腫で71%)、奏効例での91%が解析時点でも奏効を保ったという優れた成績が示された。有害事象としては、頭痛、疲労感、貧血、下痢、infusion reactionが多かった。とくに貧血はGrade3が半分を占めたが、これはCD47を発現している赤血球がマクロファージによって捕食されたことによる当然のon-target effectと考えられる8)。 現在NIH主導で米国内では、本論文に掲載されている再発・難治性B細胞非ホジキンリンパ腫に対するHu5F9-G4と抗CD20抗体リツキシマブとの併用療法、固形がん、進行大腸がんに対する抗EGFR抗体セツキシマブとの併用療法、再発・難治性AML、高リスクMDS(骨髄異形成症候群)に対するアザシチジンとの併用療法のトライアルが進行中である。日本では再発・難治性乳がんに対する抗HER2抗体トラスツズマブとの併用療法が臨床研究中である。 マクロファージを活性化する新たな免疫チェックポイント阻害薬の登場で、がん免疫療法はまた新たな段階を迎えることになる。今後の臨床試験の成果に注目していきたい。■参考文献1)Advani R, et al. N Engl J Med. 2018;379:1711-1721.2)Jaiswal S, et al. Cell. 2009;138:271-285.3)Majeti R, et al. Cell. 2009;138:286-299.4)Liu J, et al. PLoS One. 2015;10:e0137345.5)Chao MP, et al. Cancer Res. 2011;71:1374-1384.6)Willingham SB, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2012;109;6662-66677)Chao MP, et al. Cell. 2010;142:699-713.8)Oldenborg PA, et al. Science. 2000;288:2051-2054.

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