サイト内検索|page:3

検索結果 合計:1046件 表示位置:41 - 60

41.

キャリア中断後に見つけた 総合診療能力で専門性を強化する新しい診療スタイル【ReGeneral インタビュー】第4回

キャリア中断後に見つけた 総合診療能力で専門性を強化する新しい診療スタイル「医師という仕事が好きです。総合診療の入り口を担いながら、専門的なことももっと学んで、糖尿病や内分泌疾患を中心にコモンディジーズや救急初期対応ができるようになりたい」そう語るのは、総合医育成プログラム修了生の帆秋 理笑子氏。糖尿病内科専攻後、家庭の事情で約7年間のブランクを経て、再び糖尿病を中心にした診療スタイルに戻るまでの道のりで出会ったのが、総合診療でした。専門性を高めることと総合診療がどのように関連するのかを聞きました。プライマリ・ケア認定医取得を機に、専門キャリアを再設計――現在どのような診療をされているか教えてください。流動的ですが、糖尿病内科7割、一般内科3割くらいで診療をしています。約1年前に今の勤務先に赴任した当時は、糖尿病診療よりも誤嚥性肺炎などを診ることが多かったのですが、だんだんと引継ぎと新患どちらも増えて、現在は糖尿病を中心に内科診療を行っています。前職は大分県内の同じような中核病院で働いていましたが、糖尿病専門医を取得したいという思いがあり、研修施設である今の職場に移りました。2023年にプライマリ・ケア認定医を取得したことが、このキャリアチェンジを実行する自信にも武器にもなりました。――2023年に認定医取得とのことですが、プログラムはいつ・どのような経緯で受講されたのですか。受講は2021年からです。きっかけは2016年に常勤で診療を再開したことです。卒後数年してから、糖尿病内科を専攻していましたが、9年目くらいから臨床から離れた期間が7年ほどあり、最初は老健施設から仕事を再開して徐々に体力面と治療のアップデートを行いました。前職の病院で糖尿病を診ながら一般内科診療も始め、地域医療でさまざまな役割を担ううちに、「ジェネラルに診られるようになりたい、総合診療のトレーニングを受けたい」と強く思うようになりました。そこで、2019年に勇気を出して大分大学総合診療科に研修希望で見学に伺い、このプログラムを教えていただきました。私の話に耳を傾けてくれた先生方に今でもとても感謝しています。当時は東京に行って受講する形式で費用も高くて諦めていましたが、2021年にオンライン化されて「ああ、これなら家でもできる。チャンスだ!」と思って参加を決めました。2023年に認定医を取得した後も受講を続けています。大人の学び直し 安心して飛び込める環境――印象的な講義はありましたか。診療実践コースでは、整形外科、循環器内科が印象的でした。整形外科では、脊髄からの神経支配域を身振り手振りや語呂合わせで教えてくれたのをよく覚えています。また骨折の写真や整形外科的診察の動画をたくさん使って説明してくださったのが面白くて理解しやすかったです。循環器では、日常診療で使える心電図の読み方や高血圧の診療、胸痛への対応などをざっくばらんに教えていただきました。循環器は興味があっても苦手に感じていた分野なので、動画を何度も見返して勉強した分、印象が強いですね。ノンテクニカルスキルコースでは、ミーティング・ファシリテーションの講義が記憶に残っています。ここで会議やグループ活動の舵取りの手法を学びました。板書の効果や、会議に応じた机や椅子の並べ方、アイデアを広げてからまとめる方法など、これまで無意識に行っていたことも、意識を向けると意味があると知りました。――受講中に苦労した点はありますか。糖尿病や、それに関連する腎臓や認知症の講義は安心して受けられましたが、あまり馴染みのない科、たとえばマイナーエマージェンシーや救急、耳鼻科の講義を受けるときは、自信がなく不安が大きかったです。実際に受講してみると、講師の先生方はとても優しく熱心でしたし、講義のやり方も工夫されていて新鮮でした。また、事務局が手厚くサポートして心理的安全性をしっかり担保してくれたのが大きな支えになりました。オンラインですので、受講中に画面がフリーズしてしまうことも何度かありましたが、講義によっては復習用動画を作って何度も視聴できるような環境を整えられていて、聴き取れなかった部分は後から補うことができました。――心理的安全が保たれた。それはどんなサポートだったのですか。たとえば、質問のときです。質問するのは意外と難しいんです。自分がよく知っている疾患なら「いい質問だね」と言ってもらいやすいですが、詳しくない分野だと的外れになりがちです。講師からしたらわけがわからない質問かも…と不安になることもありました。実際、一度スルーされたのかな?と思った瞬間もあります。ですが、運営の先生方が参加者全員の質問をリストアップして、どんな質問も漏れなくすべて扱ってもらえる仕組みになっていました。それから、最初の受講時に「ほかの人の発言を否定しないでください」というアナウンスもありました。この声掛けがあったので、自分の意見を批判されることはあっても、否定されない。これが安心感につながって、得意ではない診療科の授業にも思い切って飛び込むことができましたし、質問やグループ内での発言を行うことができました。――ご自身の診療にこのプログラムはどう役立っていますか。最近の出来事だと、糖尿病性の足壊疽を診るとき、皮膚科の褥瘡の講義で学んだ内容がとても役立っています。壊疽も褥瘡も血流障害が関係していることが多く、評価や薬の選択がリンクしていて、受けてよかったなと思う瞬間でした。それから、腎臓内科の講義を受けたことで、糖尿病診療の中で腎臓を診るときに、薬をいつまで継続すべきかといった、細かい判断がしやすくなりました。糖尿病の合併症で腎機能が悪化して透析になる方も多いですから、お互いの専門領域に関わる聞きづらい質問ができたのは、このプログラムならではかもしれません。専門医がその疾患をよく理解していることは確かですが、付随するさまざまな問題や合併症の管理に他科の医師の協力は必要不可欠です。その時に、こうして他科の医師の考え方を知ったおかげで、コミュニケーションを取りやすくなりました。糖尿病という疾患を診るときの視野が広がりましたし、自分の専門性を高める上でも、何をもっと勉強しなければならないのかが少しずつ見えてきた気がします。ほかにも一般内科の診療を行う上でリハビリテーションの必要性は年々高まっていると感じていたため、リハビリの講義で、リスク管理や障害の診断とADLの評価法などを学び、疾患と生活を結びつける上でとても役立っています。――他科の先生から刺激を受けたという点で、印象に残っていることはありますか。行動変容1)という診療実践コースの授業のグループワークが印象に残っています。行動変容というと、問診で情報を引き出して患者さんが生活習慣を修正できるように導くといった、糖尿病内科で日頃からやっていることがテーマになります。正直、自分は得意だと思っていました。でも、同じグループのある先生の問診に目を見張りました。外科出身で、今は開業して一般内科を診ているこの先生は、私よりずっと上手だったんです。本当に驚きました。糖尿病内科では診察に追われて、ついイエス・ノーで答えられるクローズドクエスチョンで聞いてしまうことが多いのですが、その先生はオープンクエスチョンをとても上手に使って、患者役の方から自然に話を引き出していました。その姿を見て、私ももっと頑張ろうとやる気になりましたし、負けられないという刺激にもなりました。他科の先生が自分より上手だと落ち込むこともできますけど、前向きに捉える方がいいですよね。いろんな先生のやり方を、自分が奮起する材料にできるといいなと思っています。総合診療能力を活かして専門性も磨く、新しい働き方――専門性を磨きたいと思う人にとっても、総合診療能力は必要でしょうか。わたしはそう思います。総合診療の必要性を感じて大分大学総合診療科を見学したとき、自分の進みたい方向をもう一度深く考えました。そこでクリアになったのは、私は専門の糖尿病と隣接する内分泌の診療の幅を広げながら、同時に一般内科の初期対応やマネジメントといった“総合診療の入り口”をマスターしたいという希望でした。さまざまな専門性・働き方の先生方を尊重し、そこから真摯に学び、力を借りながら、自分が決めた進路を進みたいと思ったんです。一方で専門だけでは対応しきれない現実も理解しています。患者さんの多くは高齢で、認知症や肺炎や骨折など複数の疾患があり、生活や家族の問題も絡んでいます。都会なら各診療科に回せるかもしれませんが、地方や個人病院では難しい。だから、専門的な治療だけでなく、専門と専門の間をつなぐマネジメントや初期対応は、どの科の専門医にも必要なのではないかと思います。総合診療的なアプローチを学ぶことは、専門診療の視野が広がる、地域のニーズに応えられることでキャリアの選択肢が増えるという2つの点で、専門性を高めたいと思う人にも価値があると思います。大人になってからの学習ですから、習ったことすべてをすぐに活用・実践できるというような大きな期待は持たずに、経験を積みながら少しずつできることを増やしていくくらいの気楽な気持ちで始めてもよいのではないでしょうか。――今後の展望は?総合診療の基本的なことを今以上にできるようになりながら、糖尿病と内分泌の専門的な診療を深めていくのが個人的な夢です。 人間は忘れる生き物だと痛感しているので、この先も反復学習と実臨床での実践を続けて、総合医育成プログラムの内容をしっかりできるようになりたい。そして専門以外でも得意な分野が生まれてくるといいなと思っています。私自身はプログラムを受けていてもできていないことが多々あります。でも全部を自分で賄えなくても、このプログラムで学んだエッセンスを活かしながら他の人の力を借りて、少しでもよい方向に診療を進めていき、自分の夢が実現するように頑張っていきたいと思っています。――同じように専門性を大切にしながら、総合診療にも興味を持たれた方にメッセージを。私は約7年のブランクを経て、再び臨床に戻る決断をしてからの一歩一歩が、このプログラムとの出会いにつながりました。時間はかかりましたが、希望していた糖尿病診療を増やすことができ、プログラムでの学びは一般内科や救急だけでなく、自分の専門にも新しい発見をもたらしています。努力しても診療がうまくいかず落ち込む日もあれば、うれしくて喜びを感じる瞬間もあります。一喜一憂の毎日ですが、やりがいがあり、この仕事が好きです。プログラムに参加して、恥をかくのは確かに嫌です。ただ自分のやりたいことに挑戦しないと失敗もないけれど進歩もありません。挑戦して、そこから学べることはありますし、次につなげていくこともできます。そして何より、医師になってある程度経験を積んでから、もう一度、大人の学び直しをできることがすごく楽しいです。このプログラムは、授業料を払い土日を費やしてでも学びたいと思っている、年齢も専攻科も異なるさまざまな背景を背負った全国のやる気に満ちた医師仲間と知りあうことができ、切磋琢磨しながら学べる貴重な場です。事務局のサポートも手厚く、先生方も熱心です。また私のように診療の第一線から離れた医師が復職する上でも大きな助けになってくれると思います。取り組み方次第で道は開けます。もし迷っているなら、ぜひ思い切ってチャレンジしてみてください。 引用 1) 行動変容:喫煙・食事・運動に関する患者の行動変容を支援する面接技法を学び、準備段階の評価や効果的な対話を通じて生活習慣改善を促す力を養うことを目的としたセッション

42.

巣状分節性糸球体硬化症、新規の選択的TRPC6阻害薬が有望/Lancet

 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)では、一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーCメンバー6(TRPC6)の過剰な活性が、腎糸球体のポドサイトの減少と進行性腎障害を引き起こす可能性が示唆されている。米国・ミシガン大学のHoward Trachtman氏らは、FSGSの治療薬として、新規の1日1回経口投与の選択的TRPC6阻害薬BI 764198の安全性と有効性を評価する探索的試験を行い、蛋白尿の低下が認められ、忍容性は良好であったことを報告した。Lancet誌オンライン版2026年1月27日号掲載の報告。BI 764198(3用量)の安全性と有効性をプラセボと比較、第II相試験 研究グループは、第II相の多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験により、BI 764198(20mg、40mg、80mg、1日1回)の安全性と有効性をプラセボと比較し評価した。投与期間は12週間。 対象は、18~75歳の生検で原発性FSGSが確認された患者(続発性である臨床的エビデンスがないことに基づく)または疾患を引き起こすTRPC6変異を伴うFSGS患者。安定した保存療法と免疫抑制療法を受けており、スクリーニング時の尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)は1.0g/g以上、推算糸球体濾過量(eGFR)は30mL/分/1.73m2以上であった。 被験者は中央ブロック法にて1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、コルチコステロイドの使用により層別化された。 主要エンドポイントは、12週時点の蛋白尿反応(24時間UPCRがベースラインから25%以上低下)とした。そのほかの重要なアウトカムとして、安全性と忍容性を評価した。12週時点の蛋白尿低下、BI 764198群35%、プラセボ群7% 試験は2022年3月10日~2024年9月3日に10ヵ国31施設で行われ、139例がスクリーニングされ、67例がBI 764198(20mg、40mg、80mg用量)群またはプラセボ群に無作為化された。うち5例は誤って無作為化され治療を受けなかった。 62例が治療を受けた(BI 764198群48例[20mg群18例、40mg群15例、80mg群15例]、プラセボ群14例)。うち2例(BI 764198 40mg群と80mg群の各1例)がベースラインまたはベースライン後のUPCRが欠測値であり、Full Analysis Set(FAS)には含まれなかった。 被験者(62例)は、37例(60%)が男性、25例(40%)が女性で、平均年齢は40.7歳(SD 12.6)。多くを白人が占めた(39/62例、63%)。 12週時点の蛋白尿反応は、BI 764198 20mg群8/18例(44%)、40mg群2/14例(14%)、80mg群6/14例(43%)で観察され(全用量統合群16/46例[35%])、プラセボ群は1/14例(7%)であった。対プラセボ群のオッズ比は、BI 764198 20mg群10.0(95%信頼区間[CI]:1.6~118.1)、40mg群1.5(95%CI:0.2~19.5)、80mg群6.0(95%CI:0.9~73.6)であり、全用量統合群4.9(95%CI:1.0~48.8)であった。 全体では56例(90%)が試験期間および治療期間を完遂した。 BI 764198の忍容性は良好で、治療群間で有害事象の発現頻度に意味のある差は認められなかった。治療中に発現した有害事象は、44/62例(71%)で報告され、発現頻度はプラセボ群(10/14例[71%])とBI 764198群(34/48例[71%])で同等であった。

43.

抗菌薬に耐性示すも、臨床上効いているのはなぜ?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第20回

Q20-1 尿路感染症の第1選択薬にアンピシリン・スルバクタムはOK?尿路感染症には基本的にアンピシリン・スルバクタムを第1選択薬として使っていますが、その選択は細菌学上も正しいのでしょうか?Q20-2 抗菌薬に耐性示すも、臨床上効いているのはなぜ?尿培養でESBL産生菌が検出され、現在使っている抗菌薬に耐性が示されても臨床上効いているのはなぜでしょうか?

44.

IgA腎症における蛋白尿0.3g/日未満達成は腎予後とどう関連するか?

 第III相PROTECT試験において、IgA腎症に対するエンドセリン受容体・アンジオテンシン受容体デュアル拮抗薬sparsentanは、イルベサルタンと比較して蛋白尿を有意に減少させ、腎機能の維持に有効であることが報告されている。今回、PROTECT試験の事後解析の結果、割り付けられた治療薬にかかわらず蛋白尿0.3g/日未満の達成が推定糸球体濾過量(eGFR)低下抑制および腎不全イベント減少と関連することを、オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J. L. Heerspink氏らによって報告された。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年12月22日号掲載の報告。 PROTECT試験は18ヵ国134施設が参加した二重盲検無作為化実薬対照第III相試験で、参加者はsparsentan群またはイルベサルタン群に1対1に割り付けられた。本事後解析では、当初の治療薬の割り当てにかかわらず、36週時または110週時までのいずれかの時点で蛋白尿0.3g/日未満を達成した患者(CR群)と、CRを達成しなかった患者(非CR群)の腎機能を比較した。CRステータス別に評価したエンドポイントは、蛋白尿、eGFR、血圧の変化、eGFR低下率、腎不全の複合エンドポイント(eGFRの40%の低下、末期腎不全、全死因死亡)、安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象404例のうち、43例(11%)が36週時までにCRを達成し、85例(21%)が110週時までにCRを達成した。・CR群は非CR群と比較して、蛋白尿の減少がより大きく、より急速であった。・CR群ではeGFRの絶対変化量が小さく、eGFRの低下速度も緩やかだった。・腎不全の複合エンドポイントが発生した割合は、CR群のほうが非CR群よりも低かった(1%vs.14%)。・CR群では低血圧(低血圧、起立性低血圧、収縮期血圧低下)に関連する試験治療下における有害事象(TEAE)の発現率が高く、高血圧に関連するTEAEの発現率は低かった。・治療の中止は非CR群のほうが多かった。 これらの結果より、研究グループは「PROTECT試験において36週時または110週時までにCRを達成した参加者は、CRを達成していない参加者と比較して、eGFRの維持率が高く、腎不全イベントが少なく、安全性プロファイルは同等であった。これらのデータは、蛋白尿を0.3g/日未満に維持するという推奨を裏付けるものであり、腎機能維持との関連性を強調している」とまとめた。

45.

コロナ禍で新規診断が増えた疾患・減った疾患/BMJ

 英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMark D. Russell氏らによる、OpenSAFELY-TPPを用いたコホート研究の結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、うつ病、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、骨粗鬆症の新規診断は予測値を下回ったのに対し、慢性腎臓病は2022年以降に診断数が急増し、サブグループ解析ではとくに認知症に関して民族および社会経済的状況により新規診断数の回復パターンに差があることが示された。著者は、「本研究は、日常診療で収集される医療データを用いた疾病疫学のほぼリアルタイムのモニタリングの可能性を示すとともに、症例発見の改善や医療の不平等を検討するための戦略立案に寄与する」とまとめている。BMJ誌2026年1月21日号掲載の報告。イングランドの約3千万例対象、COVID-19パンデミック前後の慢性疾患の新規診断と有病率を解析 研究グループは、2016年4月1日~2024年11月30日に、OpenSAFELY-TPPプラットフォームにデータを提供している一般診療所に登録され、かつ診療所に対して直接の医療に関与しない組織への個人データの共有を希望しない旨の登録をしていない患者2,999万5,025例を対象として、19の慢性疾患について年齢・性別標準化発症(新規診断)率および有病率の経時推移を検討した。 19の慢性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、冠動脈心疾患、慢性腎臓病(ステージ3~5)、セリアック病、COPD、クローン病、認知症、うつ病、2型糖尿病、てんかん、心不全、多発性硬化症、骨粗鬆症、リウマチ性多発筋痛症、乾癬、関節リウマチ、脳卒中/一過性脳虚血発作、潰瘍性大腸炎。 COVID-19パンデミックが、これら慢性疾患の診断に与えた影響を評価する目的で、パンデミック前のパターンから予測された期待診断率に基づく季節変動自己回帰和分移動平均(seasonal autoregressive integrated moving average:SARIMA)モデルを用い、パンデミック発生後の予測診断率と実際の観察診断率の差を比較した。パンデミック初年度に新規診断が急減、4年後もうつ病などは減少したまま パンデミック発生後の新規診断率はパンデミック前と比較し、初年度(2020年3月~2021年2月)に19疾患のすべてで急減した。ただし、その後の回復傾向は疾患ごとに異なった。 2024年11月時点でも、いくつかの疾患では新規診断数が予測値を下回っており、とくにうつ病(予測より-73万4,800件[-27.7%]、95%予測区間[PI]:-76万6,400~-70万3,100)で減少幅が最も大きく、喘息(-15万2,900件[-16.4%]、95%PI:-16万8,300~-13万7,500)、COPD(-9万100件[-15.8%]、-9万8,900~-8万1,400)、乾癬(-5万4,700件[-17.1%]、-5万9,200~-5万100)、骨粗鬆症(-5万4,100件[-11.5%]、-6万1,100~-4万7,100)も大きく減少した。 一方、慢性腎臓病の診断数は、パンデミック初期に減少したものの、2022年以降はパンデミック前の水準を上回る増加を示した(予測より35万9,000件[34.8%、95%PI:33万3,500~38万4,500]増加)。 人種および社会経済的状況で層別化したサブグループ解析の結果、パンデミック初期の減少後、白人および社会経済的困窮度が低い地域では、認知症の診断率がパンデミック前の水準を上回って増加したが、他の人種および困窮度が高い地域では増加しなかった。

46.

“血小板の大きさ”が知らせる腎臓の危険信号、糖尿病患者の追跡調査で判明

 病院で行う通常の血液検査では、白血球数や赤血球数、血小板数などとともに「平均血小板容積(MPV)」という指標も測定されることが多い。今回、日本の2型糖尿病患者を対象とした追跡研究で、このMPVが腎機能悪化のリスク把握に役立つ可能性が示された。MPVが高い人ほど腎臓の状態が悪化しやすい傾向が確認されたもので、身近な指標から早期のリスク評価につながる可能性が注目される。研究は、福島県立医科大学腎臓高血圧内科の渡辺秀平氏、田中健一氏、風間順一郎氏らによるもので、詳細は11月27日付で「Journal of Diabetes Investigation」に掲載された。 糖尿病は世界的に多くみられる疾患で、糖尿病性腎症をはじめとする合併症により予後が悪化する。2023年には、新規慢性透析導入患者の38.3%が糖尿病性腎症によるもので、糖尿病患者の腎機能悪化が透析につながる深刻な問題であることが示された。MPVは血小板の大きさを示す指標で、心血管疾患や糖尿病性微小血管合併症との関連が報告されているが、腎機能悪化との関係は十分に検討されていない。こうした背景を踏まえ、本研究では、福島コホート研究のデータを用い、MPVと腎イベント(腎機能低下や透析導入)の関連を後ろ向きに解析し、リスク予測への活用可能性を評価した。 本研究では、福島県立医科大学病院で実施された福島コホート研究より、2012年6月~2014年7月に登録された2型糖尿病患者1,076人を対象とした。患者はベースライン時のMPV値に基づき、Q1~Q4の四分位群に分類した。主要評価項目は腎イベントとし、推定糸球体濾過量(eGFR)がベースラインから50%以上低下するか、腎代替療法が必要となる末期腎不全への進行と定義した。副次評価項目は新規心血管イベントの発症とした。 連続変数の群間比較にはKruskal-Wallis検定を、割合の差はカイ二乗検定で評価した。MPV四分位ごとのイベント無再発生存率はKaplan-Meier法とlog-rank検定で比較した。MPVと腎イベントまたは心血管イベントとの関連は、潜在的交絡因子を調整したCox比例ハザード回帰モデルを用いて検討した。 コホートの平均年齢は66.0歳で男性は56.7%含まれた。中央値5.3年の追跡期間中、参加者1,076人のうち97人が腎イベントを発症した。Kaplan-Meier曲線では、MPVの四分位群間で無イベント生存率に有意な差が認められた(P=0.018)。 腎イベントの発生率は四分位群間でQ2が最も低かったため、Q2群を基準群とした。Q2群を基準とした場合、Q4群の参加者は単変量Coxモデルで有意に腎イベントリスクが高く、年齢・性別、既往歴、検査値、降圧薬使用などの交絡因子を調整した多変量解析でも有意性は維持された(調整HR 2.05、95%CI 1.13~3.72)。また、MPVを連続変数として解析すると、1 fL増加ごとに腎イベントリスクは32%上昇した(95%CI 1.04~1.68)。 心血管イベントは追跡期間中に124人で発症した。腎イベントと同様、心血管イベントの発生率もQ2群で最も低かった。Q2群を基準とした多変量解析では、MPVの上昇が心血管イベントリスクの上昇と有意に関連していた(調整HR 1.66、95%CI 1.01~2.72)。MPVが1 fL増加するごとに心血管イベントリスクは27%上昇した(95%CI 1.04~1.55)。 著者らは、「日本人の2型糖尿病患者において、MPVの上昇は腎イベントおよび心血管イベントの両方と独立して関連していた。MPVは、このリスクの高い集団における腎疾患進行を予測するための、簡便で有用なバイオマーカーとして役立つ可能性がある」と述べている。 なお、MPVと腎イベント発症リスクについて「J字型」の相関が示されたことについては、低MPVが造血能低下や骨髄機能障害を示している可能性を指摘し、「MPVが高い場合と低い場合では、それぞれ異なるメカニズムを介して腎疾患の進行に寄与する可能性があるのでは」と述べている。

47.

尿路感染症、肝代謝の抗菌薬で治る理由【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第19回

Q19 尿路感染症、肝代謝の抗菌薬で治る理由尿路感染において、セフトリアキソンのように肝代謝の薬でも完治するのが不思議です。血流があるからといっても、腎盂内や尿管、膀胱内には届きにくそうですが…。

48.

CKD高齢者への高用量インフルワクチン、肺炎などの入院を減少

 高齢者に対する高用量インフルエンザワクチンの入院予防効果を検証したDANFLU-2試験の結果、高用量インフルエンザワクチンは標準用量と比較してインフルエンザまたは肺炎による入院を有意に低下させなかったことが報告されている。今回、事前に規定された慢性腎臓病(CKD)の有無別のサブグループ解析において、CKD患者では高用量インフルエンザワクチンがインフルエンザまたは肺炎による入院リスクを有意に低下させたことを、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のKatja Vu Bartholdy氏らが明らかにした。Journal of the American College of Cardiology誌2025年12月23日号掲載の報告。 DANFLU-2試験は、デンマークの直近3回のインフルエンザ流行期(2022~23年、2023~24年、2024~25年)に、65歳以上の高齢者を高用量または標準用量の4価インフルエンザ不活化ワクチンの接種を受ける群に無作為に割り付けた非盲検ランダム化比較試験。主要エンドポイントはワクチン接種後14日目から翌年5月31日までに発生したインフルエンザまたは肺炎による入院の割合で、副次エンドポイントはインフルエンザによる入院・肺炎による入院・心肺系疾患による入院・あらゆる入院・全死因死亡であった。事前に規定されていたサブグループ解析として、CKDの有無による相対ワクチン有効率を評価した。 主な結果は以下のとおり。・DANFLU-2試験に参加した33万2,438例(平均年齢73.7±5.8歳、女性48.6%)のうち、4万6,788例(14.1%)がベースライン時にCKDを有していた。そのうち2万3,486例が高用量群、2万3,302例が標準用量群に無作為に割り付けられた。・主要エンドポイントである肺炎またはインフルエンザによる入院は、CKD集団では4万6,788例中708例(1.5%)、非CKD集団では28万5,641例中1,640例(0.6%)に発生した(リスク比:2.6、95%信頼区間[CI]:2.4~2.9)。CKD集団ではすべての副次エンドポイントのリスクも高かった。・CKD集団における肺炎またはインフルエンザによる入院に対する相対ワクチン有効率は16.9%(95%CI:3.4~28.5)だったのに対し、非CKD集団では0.6%(95%CI:-9.6~28.5)であった(相互作用のp=0.046)。・CKD集団におけるインフルエンザまたは肺炎による入院の絶対リスクは、高用量群で1.3%、標準用量群で1.7%であり、絶対リスク減少率は-0.29%(95%CI:-0.50~0.058、治療必要数[NNT]=359)であった。・インフルエンザによる入院に限ると、CKD集団における高用量インフルエンザワクチンの相対ワクチン有効率は68.6%(95%CI:46.7~82.3、NNT=561)で大きな効果が認められたのに対し、非CKD集団では30.6%(95%CI:7.2~48.3、NNT=3,953)であった(相互作用のp=0.0079)。・心肺系疾患、心血管疾患、心不全、検査で確認されたインフルエンザによる入院については、CKDの有無による効果の差は認められず、同様の効果が示された(すべての相互作用のp>0.05)。 これらの結果より、研究グループは「DANFLU-2試験のCKD患者を対象とした事前規定のサブグループ解析において、高用量インフルエンザワクチンは標準用量と比較してインフルエンザまたは肺炎による入院、およびインフルエンザによる入院を減少させた。これらの結果は、リスクの高い集団において、高用量インフルエンザワクチンが標準用量よりも臨床的に意義のあるベネフィットを有することを示唆している」とまとめた。

49.

SGLT2阻害薬のCKD進行抑制:糖尿病およびアルブミン尿の有無にかかわらず得られる絶対的ベネフィット/JAMA(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しいか? SMART-C(SGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium)は、SGLT2阻害薬のランダム化比較試験(RCT)における心・腎アウトカムをメタ解析する国際共同研究組織である。SMART-C研究の成果は、2024~25年にLancet誌などに4編の論文として主要誌に報告された。そのうち2編は主として腎保護効果に焦点を当てた解析であり、JAMA誌オンライン版(2025年11月7日号)に同時掲載された。 その第1報はNeuenらによる論文で、これは「腎アウトカム」のクラスエフェクトを解析した研究である。ここでは、SGLT2阻害薬の腎保護作用が、糖尿病の有無にかかわらず、eGFRが低下したステージ4の患者や尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が低い群においても相対的効果が認められることが示された(CLEAR!ジャーナル四天王「SGLT2阻害薬の腎保護作用:eGFR低下例・低アルブミン尿例でも新たな可能性/JAMA」)。 第2報は、Staplinらによる今回紹介するJAMA誌掲載論文である。本論文では、腎疾患イベントに加え、「死亡および入院」に関する絶対リスクの評価を中心としたメタ解析が行われた。その結果、糖尿病の有無やUACRの値にかかわらず、腎機能、入院、死亡といったアウトカムにおいて、SGLT2阻害薬の絶対的ベネフィットが確認された。これらの新知見は、SGLT2阻害薬の適応や治療選択肢の拡大の可能性を支持するものである。本SMART-C研究の主な成績 腎疾患を適応とするSGLT2阻害薬を使用したRCT8件を対象に解析を行った。解析対象は5万8,816例で、平均年齢は64±10歳、女性は35%であった。内訳は、糖尿病患者4万8,946例、非糖尿病患者9,870例である。主要評価項目は、腎・安全・全般アウトカムとして、腎疾患進行、急性腎障害(acute kidney injury:AKI)、全入院および全死亡とした。統計解析は逆分散重み付け法によるハザード比(hazard ratio:HR)の統合を行い、糖尿病の有無およびUACR<200mg/gと≧200mg/gで層別化して異質性を評価した。絶対効果は、各サブグループにおけるプラセボ群のイベント率に統合相対リスクを適用して推計した。 その結果、腎疾患進行に対するHRは、糖尿病ありで0.65(95%信頼区間[CI]:0.60~0.70)、糖尿病なしで0.74(95%CI:0.63~0.85)であった。推計イベント率は、糖尿病ありで33対48/1,000人年、糖尿病なしで32対46/1,000人年(いずれもSGLT2阻害薬群vs.プラセボ群)であった。AKIについては、糖尿病ありでHR:0.77(95%CI:0.69~0.87)、糖尿病なしでHR:0.72(95%CI:0.56~0.92)であり、糖尿病の有無にかかわらずAKIリスクの有意な低下が認められた。全入院は、糖尿病ありでHR:0.90(95%CI:0.87~0.92)、糖尿病なしでHR:0.89(95%CI:0.83~0.95)であった。全死亡は、糖尿病ありでHR:0.86(95%CI:0.80~0.91)、糖尿病なしでHR:0.91(95%CI:0.78~1.05)であり、非糖尿病群では統計学的に境界的であった。さらに、UACRによる層別サブグループ解析では、相対効果はUACR≧200mg/g群と<200mg/g群でおおむね同程度であったが、ベースラインの高いUACR≧200mg/g群では、腎疾患進行に対する絶対的ベネフィットがより大きかった。一方、全入院に対する絶対的ベネフィットは、UACR<200mg/g群においても明瞭に認められた。2つのSMART-C研究のインパクト KDIGOガイドライン(Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. Kidney Int. 2024;105:S117-S314.)では、糖尿病の有無やUACRの程度により推奨の強さが異なるため、臨床現場において「SGLT2阻害薬はどのような患者に、どれだけの絶対的利益が期待できるのか」という点には不確実性が残されていた。本論文で報告されたSMART-C研究第2報は、糖尿病の有無およびUACR200mg/gを閾値として層別化したサブグループごとに治療効果を統合し、入院や死亡といったアウトカムに対する「絶対評価」を行うことで、この不確実性を明らかにしようとした試みである。 SMART-C研究第1報が、SGLT2阻害薬の「腎アウトカム」におけるクラスエフェクトに焦点を当てたのに対し、第2報では、「入院・死亡」を含む臨床的に重要なアウトカムに対するSGLT2阻害薬の絶対的ベネフィットに焦点を当てたわけである。言い換えれば、第1報の解析が「どの程度まで進行した腎疾患に有効か」という相対的観点から検討したのに対し、第2報の解析は、「誰がどれだけ利益を得るのか」を糖尿病の有無やUACRによって具体的に層別化して検討した点に特徴がある。その結果、本研究により、SGLT2阻害薬がもたらす絶対的ベネフィットが明確に示された。本論文のインパクトは、現行ガイドラインにおける適応基準の再検討や、より多様な患者集団に対する個別化治療の拡大につながる可能性を示唆する。実臨床の視点からSMART-C研究を紐解く SMART-C研究の解析結果は、統計学的に妥当性はあるとしても、SGLT2阻害薬は決して「腎保護の万能薬」となるわけではない。実臨床において本結果をどのように活用するかの各論は、3大腎疾患である糖尿病性腎臓病(DKD)、慢性糸球体腎炎(CGN)、腎硬化症(NS)によりおのずと異なる。DKDおよびCGNにおいては、UACRの多寡にかかわらずSGLT2阻害薬を選択することに大きな異論はないが(ただし、大規模RCTの多くはRAS阻害薬併用が前提となっている点には留意が必要)、高齢者ではUACRが比較的少ないNSでは注意が必要である。DKDやCGNの病態の主体は糸球体過剰濾過である(Kanbay M, et al. Nephrol Dial Transplant. 2024;39:1228-1238.)。一方、NSの病態の基本は、これとは異なり糸球体虚血である。 SGLT2阻害薬は、DKDでは糖尿病により拡張した輸入細動脈を収縮させ、CGNではRAS活性化により収縮した輸出細動脈を拡張させることで、糸球体過剰濾過を改善し、腎保護作用を発揮する。一方、輸入細動脈の狭小化を特徴とするNSでは、糸球体はむしろ虚血腎の状態にあり、病態生理学的には、過剰濾過改善機序による腎保護効果は期待しにくい。また、SGLT2阻害薬導入時の安全面への配慮として、脱水や低血圧の確認、DKDにおけるシックデイ時の対応やケトアシドーシス予防、AKIリスクの管理、尿路感染症への注意なども決して軽視できない。確かにSMART-Cの本論文の結果は、UACRの多寡を問わずSGLT2阻害薬の絶対的ベネフィットを示した点で朗報である。しかしながら、高齢者に多い高血圧性腎硬化症においても同様のベネフィットが再現され、末期腎不全や透析導入の減少に結びつくのか、さらに長期安全性や副作用リスクをどこまで担保できるのかについては、今後の実臨床の積み重ねとリアルワールドデータによる検証が不可欠である。

50.

フィネレノン、慢性心不全の適応追加/バイエル

 バイエル薬品は、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノン(商品名:ケレンディア)への慢性心不全の適応追加を2025年12月22日に取得したことを発表した。 本適応追加は、日本人を含むLVEF40%以上の心不全患者約6,000例を対象とした国際共同第III相臨床試験FINEARTS-HF1)に基づき承認された。同試験でフィネレノンは、主要評価項目である心血管死およびすべて(初回および再発)の心不全イベント(心不全による入院または緊急受診)の相対リスクを統計学的有意に16%減少させた(rate ratio:0.84[95%信頼区間:0.74~0.95、p=0.0072])。また、フィネレノンの忍容性は良好で、既知の安全性プロファイルと一貫していた。<適応追加後の「効能又は効果」「用法及び用量」>●効能又は効果・2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。・慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。●用法・用量<2型糖尿病を合併する慢性腎臓病>通常、成人にはフィネレノンとして以下の用量を1日1回経口投与する。eGFRが60mL/min/1.73m2以上:20mgeGFRが60mL/min/1.73m2未満:10mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量する。<慢性心不全>通常、成人にはフィネレノンとして以下の用量を1日1回経口投与する。eGFRが60mL/min/1.73m2以上:20mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に40mgへ増量する。eGFRが25mL/min/1.73m2以上60mL/min/1.73m2未満:10mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量する。

51.

ロジスティック回帰分析 その1【「実践的」臨床研究入門】第60回

ロジスティック回帰モデルの基本的な考え方今回からは、ロジスティック回帰を用いた多変量解析について解説します。以前説明した線形回帰(重回帰)ではアウトカム指標は連続変数でしたが、ロジスティック回帰ではアウトカム指標が2値のカテゴリ変数の場合に適用されます(連載第50回参照)。それでは、下記に示したわれわれのResearch Ques-tion(RQ)を題材にして、ロジスティック回帰の実際について考えてみます(連載第49回参照)。P(対象):慢性腎臓病(CKD)患者E(要因):厳格低たんぱく食の遵守ありC(対照):厳格低たんぱく食の遵守なしO(アウトカム):1)末期腎不全(透析導入)、2)糸球体濾過量(GFR)低下速度交絡因子:年齢、性別、糖尿病の有無、血圧、eGFR、蛋白尿定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値これまで厳格低たんぱく食の遵守というEと、末期腎不全、GFR低下速度というOとの関連について、それぞれ生存時間分析、線形回帰(重回帰)分析を用いた多変量解析で交絡因子を調整して検討しました。今回は、Eである厳格低たんぱく食の遵守の有無(2値のカテゴリ変数)をアウトカム指標におき、ロジスティック回帰を用いて交絡因子として挙げた種々の患者背景要因を調整したうえで、Eという診療パターンが「起こりやすい」患者特性について検討します。ロジスティック回帰モデルの考え方として、まずオッズについて説明します。オッズとは「ある事象が起こる確率と起こらない確率の比」で表される指標です。今回の題材では、Aという事象、「厳格低たんぱく食の遵守あり」が起こる確率をp(A)とすると、Aという事象が起こらない、すなわち「厳格低たんぱく食の遵守なし」である確率は1-p(A)で表されます。したがって、事象Aのオッズはという数式で表されます。p(A)の取りうる範囲は確率ですので0から1までの値であり、1を超えたり負の値になったりすることはありません。ここでp(A)を目的変数として、複数の説明変数からこれを推測することを考えます。たとえば説明変数として連続変数xをおき、xの値が変動するとp(A)になる確率が大きくなったり小さくなったりする関係があるとします。たとえば、年齢という連続変数が大きくなる、高齢になるほど、p(A)、すなわち「厳格低たんぱく食の遵守あり」の確率が低くなる、というような関係です。ある目的変数を複数の説明変数によって推測する、ということを線形回帰(重回帰)分析ですでに説明しました(連載第52回参照)。上記の重回帰式yの取りうる範囲は-∞から∞です。しかし今回この左辺に置きたいのはAという事象が起こる確率p(A)であり、その取りうる範囲は0から1までの値であり、左辺と右辺の取りうる範囲が揃いません。そこで、先ほど説明したオッズの出番です。事象Aのオッズはであり、p(A)の取りうる範囲は0から1でしたので、数式から事象Aであるオッズの取りうる値は0から∞になります。しかし、重回帰式yの取りうる範囲は-∞から∞ですので、まだ左辺と右辺の取りうる範囲は一致しません。そこでさらに、オッズの自然対数をとるロジット変換を行い、事象Aのロジットを求めると下記の数式になります。ロジット変換を行うと、その取りうる範囲は-∞から∞となります。このロジットを目的変数として左辺に置き、右辺に重回帰式を当てはめることにより、下記の数式で示すように、ようやく左辺と右辺で取りうる範囲が揃います。この数式がロジスティック回帰モデルの基本形です。左辺は事象Aが起こる確率p(A)のロジット(対数オッズ)を示します。右辺は切片aと複数の説明変数xiのそれぞれの回帰係数biの項の総和と残差eで表されます。この数式を用いて、重回帰分析と同様に複数の独立変数と2値のカテゴリ変数である目的変数との関連を検討することが、ロジスティック回帰分析を用いた多変量解析の基本的な考え方です。

52.

IgA腎症は0.5~1.0g/日の低レベル蛋白尿でも腎予後不良~メタ解析/慈恵医大

 IgA腎症における蛋白尿の臨床的意義を検討した系統的レビューおよびメタ解析の結果、0.5~1.0g/日の低レベル蛋白尿であっても腎予後不良と関連していたことを、東京慈恵会医科大学の山口 裕也氏らが明らかにした。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年12月12日号掲載の報告。 IgA腎症では、1.0g/日を超える顕性蛋白尿が腎予後不良と関連することが広く知られている。しかし近年のエビデンスでは、0.5~1.0g/日の低レベルの蛋白尿でも腎予後不良と関連することが示唆されている。そこで研究グループは、IgA腎症における低レベル蛋白尿と腎予後不良との関連を評価することを目的として、系統的レビューおよびメタ解析を実施した。 本研究では、PubMedおよびWeb of Scienceを検索し、IgA腎症患者における低レベル蛋白尿と腎機能障害(eGFR低下、腎不全、eGFRスロープなど)との関連を評価した研究を選定した。データはランダム効果メタ解析で統合した。 主な結果は以下のとおり。・23研究(1万5,289例)が対象となり、15研究がメタ解析に含まれた。・ベースライン時の蛋白尿が0.5~1.0g/日だった集団では、0.5g/日未満だった集団と比べて腎予後不良リスクが1.73倍上昇した(ハザード比[HR]:1.73、95%信頼区間[CI]:1.36~2.20、9件の研究)。・経時的蛋白尿(Time-Averaged Proteinuria:観察期間中に複数回測定された蛋白尿の平均値)が0.5~1.0g/日だった集団では、腎予後不良リスクが2.87倍上昇した(HR:2.87、95%CI:1.48~5.56、7件の研究)。・経時的蛋白尿が0.5~1.0g/日だった集団では、年間eGFRの低下速度も有意に速かった(平均差:-1.02mL/分/1.73m2/年、95%CI:-1.60~-0.45、4件の研究)。・サブグループ解析およびleave-one-out感度解析は、全体の結果と一致していた。 研究グループは「これらの結果は、蛋白尿を0.5g/日未満にコントロールすることを推奨する近年のガイドラインを支持するものである。IgA腎症においては、蛋白尿の長期的な抑制が重要な治療目標として考慮されるべきである」とまとめた。

53.

IgA腎症へのsibeprenlimabの治療は完全寛解が期待できるか?(解説:浦信行氏)

 IgA腎症ではガラクトース欠損IgA1が産生され、これに対する自己抗体との複合体ができる。これが糸球体のメサンギウムに沈着し、炎症や補体の活性化、増殖反応の逸脱を引き起こし、腎障害を増悪させる。増殖誘導リガンド(a proliferation-inducing ligand:APRIL)はTNF-αのスーパーファミリーであり、これがIgA産生を含むB細胞由来の免疫反応を引き起こす。sibeprenlimabはAPRILの中和抗体であり、その活性を抑制する。sibeprenlimabを使用したIgA腎症の治療効果はすでに第II相のENVISION試験として報告されており、sibeprenlimab 8mg/kg 4週ごと静脈内投与12ヵ月で24時間尿蛋白/クレアチニン比は有効率62%と、プラセボ群の20%に比して有意に減少した。また、尿蛋白の臨床的寛解である300mg未満の割合も26.3%と良好な結果であった。しかし、ベースラインから12ヵ月後のeGFRの変化は良好な結果であったが、プラセボ群との有意差はなかった。 このたびのVISIONARY試験は第III相多施設共同二重盲検無作為化試験であり、対象が510例とIgA腎症の臨床試験としては最大級の規模である。その結果はNEJM誌のオンライン版2025年11月8日号に掲載され、12月11日配信のジャーナル四天王に詳しく解説されている。このたびも1次エンドポイントは24時間尿蛋白/クレアチニン比であり、2年間の試験だが9ヵ月時点での中間報告で320例の解析である。結果は、ENVISION試験と同様にプラセボ群に比較して52%の有意な低下を認めた。また、層別解析では性差や、アジア人が59%を占める参加者間の人種差は認めず、年代の差もなかった。さらに臨床像に関しても、尿蛋白の多寡、eGFRの程度、SGLT2阻害薬の使用の有無などでも効果に差異はなかった。2次エンドポイントはやはりベースラインから24ヵ月後のeGFRの変化であり、2026年初頭まで待たなければならないが、このハードエンドポイントの結果に完全寛解の期待が高まる。

54.

透析患者の緩和ケア【非専門医のための緩和ケアTips】第114回

透析患者の緩和ケア非がん疾患の緩和ケア、さまざまな疾患領域で語られるようになってきていますが、今後さらに重要になりそうな分野の1つが透析患者の緩和ケアです。私も十分な経験があるわけではなく、これから勉強していく分野ですが、読者の皆さんと一緒に考えたいと思います。今回の質問当院は透析施設があるのですが、通院する患者さんが高齢化しています。また、悪性疾患が併存している人もいて、将来のお看取りを支援することも求められそうです。透析患者にも緩和ケアが必要だと思うのですが、どのような注意点がありますか?透析導入からの生存期間が延び、末期腎不全と透析管理だけでなく、幅広い疾患への対応を求められるようになっています。併存症を抱え、人生の最終段階に差し掛かる透析患者においては、「いつまで透析をするか問題」に頭を悩ませます。今日は「いつまで透析を継続するか」という議論を中心に考えてみましょう。ご存知の方も多いと思いますが、さまざまな基礎疾患を背景に腎機能が低下し、末期腎不全に至ると透析を導入するかの議論がなされます。透析導入後は週に3回程度の通院が必要になり、腎臓が果たしている機能を透析で提供することになります。透析を継続できているあいだは良いのですが、お看取りの時期が近くなってくると血圧を維持できず、安全に透析を実施することが難しくなるケースがあります。一方、透析を中止すると尿毒症が悪化し、多くは1〜2週間で亡くなるため、透析を含む腎代替療法を中止する行為は倫理的な検討も含め、慎重に判断する必要があります。私自身の実感としては、近年では本人の意思として透析を導入しないことや、透析中止の希望を表明する患者さんを見ることが増えましたが、皆さんの経験ではいかがでしょうか?ここで、透析患者の緩和ケアが重要になってきます。妥当なプロセスを経て透析を導入しない、もしくは中止するという意思決定をした場合、適切な身体症状の緩和や心理サポートが重要になります。よくある身体症状としては、尿毒症の症状であるかゆみに対して、抗ヒスタミン薬や外用薬、ナルフラフィン(商品名:レミッチ)といった薬物療法を検討します。また、溢水症状による呼吸困難は非常に苦しい症状になるので、必要に応じて鎮静を検討する場合もあります。このように身体症状に対する介入は大切ですが、もう1つ、心理的サポートも忘れないでほしいポイントです。「サイコネフロロジー」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。これは腎不全に関連した心理的諸問題について扱う専門分野です。このように透析患者には多面的な支援が必要であり、透析患者の緩和ケアという分野の重要性が高まっています。今回のTips今回のTips透析患者の抱えるつらさを和らげるために、透析患者の緩和ケアにも注目してみましょう。

55.

英語で「尿閉」、患者さんはどう訴える?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第42回

医学用語紹介:尿閉(排尿困難) urinary retention今回は「尿閉(排尿困難)」について説明します。医療現場ではurinary retentionという専門用語が使われますが、患者さんとの会話ではどのような一般的な英語表現を使えばよいでしょうか?講師紹介

56.

SGLT2阻害薬の腎保護作用:eGFR低下例・低アルブミン尿例でも新たな可能性/JAMA(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しいか? SGLT2阻害薬は、2型糖尿病、糖尿病関連腎臓病(DKD)、慢性腎臓病(CKD)、心不全患者などにおいて心・腎アウトカムを改善する明確なエビデンスがある。しかし、腎保護作用に関し、従来、ステージ4 CKD(G4)や尿アルブミン排泄量の少ない患者での有効性は不明瞭であり、推奨度は低かった。この点に注目し、SGLT2阻害薬が腎アウトカムに与える「クラス効果(class effect)」を高精度に評価することを目的とし、オーストラリアのBrendon L. Neuen氏らは、SGLT2阻害薬の大規模臨床研究(ランダム化二重盲検プラセボ対照試験:RCT)を、SGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C:国際共同研究)として統合的にメタ解析した(JAMA誌オンライン版2025年11月7日号、ケアネット11月28日掲載)。本解析の結果、SGLT2阻害薬の腎保護作用は、ステージ4のeGFR低下群や低UACR群でも認められ、糖尿病の有無にかかわらず一貫した効果が確認された。この新たな知見は、腎機能の中等度以上低下群や低尿アルブミン群への適応拡大を示唆する。SMART-C研究の主な成績 解析対象は、SGLT2阻害薬のRCT10件、計7万361例(平均年齢64.8±8.7歳)。主要アウトカムはCKD進行(腎不全、eGFRの50%以上低下、腎死)とし、年間eGFR低下率、腎不全単独なども評価。治療効果は、逆分散加重メタ解析を用いて統合した。その主な結果は、CKD進行リスクを低下させた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.57~0.68)。この効果は、ベースラインの推定糸球体濾過量(eGFR)に関係なく一貫して認められた(eGFR≧60mL/分/1.73m2の場合HR:0.61、45~<60の場合HR:0.57、30~<45の場合HR:0.64、<30の場合HR:0.71、傾向p値=0.16)。また、尿中アルブミン排泄(尿アルブミン・クレアチニン比[UACR])別でも効果は一貫しており(UACR<30mg/gでHR:0.58、30~300でHR:0.74、>300でHR:0.57、傾向p値=0.49)、低UACR群でも有効性が確認された。さらに、糖尿病の有無にかかわらず、すべてのeGFRおよびUACRサブグループにおいて、eGFR年間低下率を改善し、また、腎不全単独のリスクも減少させた(HR:0.66、95%CI:0.58~0.75)。なお、RAS阻害薬の使用率は、各サブグループ間で81~93%であった。また、論文記載のイベント率(SGLT2群25.4 vs.プラセボ群40.3/1,000人年)を基に筆者が算出した治療必要数(NNT)は、中央値3年で約22、高リスク群では16程度と推定された。SMART-C研究のインパクト 従来、SGLT2阻害薬は2型糖尿病やDKDを中心に使用されてきた。本研究の大きな意義は、糖尿病の有無、eGFR、UACRにかかわらず腎保護作用が一貫して認められた点である。現在、日本腎臓学会の「SGLT2阻害薬適正使用の推奨案」では、DKDで第1選択薬としてSGLT2阻害薬が明記されている。開始基準として、DKDではeGFR≧20mL/分/1.73m2での開始を推奨するものの、G5(eGFR<15)での新規開始は不可としている。さらに、DKDでは蛋白尿の有無にかかわらずSGLT2阻害薬は推奨されるが、非糖尿病CKDで蛋白尿陰性の場合は、G2(eGFR≧60)以下では慎重投与となっている(日本腎臓学会誌. 2023;65:1-10.)。一方、SMART-CではG4 CKD(eGFR15~29)でも、低UACR群でも腎保護効果が確認された。この結果は、本邦のガイドラインでは積極的に推奨されないCKD進行例や尿蛋白陰性例でも、SGLT2阻害薬の適応が拡大する可能性を示唆しており、将来的にガイドライン改訂に影響を与えると考えられる。いずれにしても、SMART-Cの成果は、SGLT2阻害薬を「血糖降下薬」から、「心・腎保護の基盤治療薬(foundation therapy)」と位置付ける根拠を提供した。とくに、糖尿病・心不全・CKDなどが複数併存する高リスク患者にとっても有益性が高いことが示され、実臨床/ガイドラインでの採用を裏付けるデータとなった。医療経済の面から、CKD進行イベント率から算出したNNTは約22、高リスク群では16程度と推定され、絶対的ベネフィットは大きい。また、発売10年が経過し、ジェネリック医薬品の登場によりコスト面でのハードルも低下する見込みである。 SMART-C研究には課題もある。この解析研究では、対象の約85%でRAS阻害薬が併用されている。つまり、ここで観察された腎保護効果はRAS阻害薬存在下で得られたものであり、SGLT2阻害薬の単独効果は未検証である。このことから、現時点においてSGLT2阻害薬による腎保護の介入は、RAS阻害薬の併用を前提とすることが望ましい。今後の検討事項としては、初期治療でのSGLT2阻害薬単独の腎保護効果を検証する必要がある。なお、SGLT2阻害薬の腎保護機序は、DKDでは主に糸球体過剰濾過の改善とされるが、それ以外にも諸説が提唱されている(Vallon V. Am J Hypertens. 2024;37:841-852)。かかりつけ医と腎臓専門医の役割 本邦の実臨床においてSMART-Cの結果をどのように導入するか。病態早期(G1~G2、eGFR≧60)やステージG3b(eGFR30~44)の中等症までのDKD/CKD患者でのSGLT2阻害薬導入は、かかりつけ医で可能と考えられる。初期投与後、2~4週でeGFRが一過性に10~20%低下する「initial dip」が観察されるが、これは糸球体過剰濾過腎では病態生理学的に許容範囲と考えられており、中長期的には緩徐なeGFRスロープ低下に移行する。一方、ステージG4(eGFR15~29)のDKD/CKDや複雑な腎病態を呈する症例でのSGLT2阻害薬開始は、腎臓専門医との病診連携が好ましい。この際、かかりつけ医は定期的モニタリングを担うことが望ましい。SGLT2阻害薬導入時の具体的な安全管理として、脱水・低血圧・利尿状況の確認、糖尿病合併例でのシックデイ時の休薬指導・ケトアシドーシス予防、急性腎障害のリスク管理、尿路感染症などへの対応が重要である。高齢者に多い高血圧性腎硬化症では、UACRは低値でeGFRは中等度に低下した虚血腎が病態のベースにある。こうした症例でもSMART-Cのベネフィットが再現できるか、また長期安全性や副作用リスクをどこまで担保できるかは、今後のリアルワールドデータの構築と検証が課題である。

57.

IgA腎症、sibeprenlimabは蛋白尿を有意に減少/NEJM

 IgA腎症患者において、sibeprenlimabはプラセボと比較して蛋白尿を有意に減少させたことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のVlado Perkovic氏らVISIONARY Trial Investigators Groupが行った、第III相多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「VISIONARY試験」の中間解析の結果で示された。IgA腎症の病態形成には、a proliferation-inducing ligand(APRIL)というサイトカインが深く関わると考えられている。sibeprenlimabはヒト化IgG2モノクローナル抗体で、APRILに選択的に結合して阻害する。第II相のENVISION試験では、sibeprenlimabの4週ごと12ヵ月間の静脈内投与により、蛋白尿の減少と推算糸球体濾過量(eGFR)の安定がみられ血清APRIL値の抑制に伴いガラクトース欠損IgA1値が低下した。安全性プロファイルは許容範囲内であった。NEJM誌オンライン版2025年11月8日号掲載の報告。sibeprenlimab 400mg vs.プラセボ、4週ごと100週間皮下投与を評価 VISIONARY試験は31ヵ国240施設で行われ、IgA腎症患者における腎機能温存能の評価を目的に、支持療法との併用によるsibeprenlimab 400mgの4週ごと皮下投与の有効性と安全性を評価した。 生検でIgA腎症と確認された成人患者を、sibeprenlimab 400mgまたはプラセボを4週ごと100週間にわたり皮下投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 今回の中間解析における主要有効性エンドポイントは、ベースラインと比較した9ヵ月時点の24時間尿蛋白/クレアチニン比であった。 重要な副次エンドポイント(試験完了時に評価)は、24ヵ月にわたるeGFRスロープ(年率換算)であった。その他の副次エンドポイントは、血清免疫グロブリン値の変化、安全性などだった。また、探索的エンドポイントとして、ガラクトース欠損IgA1値および血清APRIL値の変化、随時尿の尿蛋白/クレアチニン比、血尿、および蛋白尿の寛解などが含まれた。24時間尿蛋白/クレアチニン比、sibeprenlimab群がプラセボ群より51.2%低下 計510例が無作為化された(sibeprenlimab群259例、プラセボ群251例)。事前に規定された中間解析(データカットオフ日:2024年9月4日)には、9ヵ月時点の24時間尿蛋白/クレアチニン比の評価を完了した試験登録当初の320例(sibeprenlimab群152例、プラセボ群168例)が包含された。 両群のベースライン特性は類似していた。320例のうち男性が62.5%、アジア人が59.1%を占め、97.5%がRA系阻害薬を、40.0%がSGLT2阻害薬をそれぞれ試験前に服用していた。年齢中央値は42歳、平均eGFRは63.4mL/分/1.73m2、24時間尿蛋白/クレアチニン比中央値は1.25であった。初回腎生検から無作為化までの期間中央値は1.5年で、おおむねIgA腎症と診断された患者を代表する試験集団であった。 9ヵ月時点で、24時間尿蛋白/クレアチニン比は、sibeprenlimab群では顕著な低下(-50.2%)が認められた一方、プラセボ群では上昇(2.1%)が認められた。24時間尿蛋白/クレアチニン比の補正後幾何最小二乗平均値は、sibeprenlimab群がプラセボ群と比較して51.2%(96.5%信頼区間:42.9~58.2)有意に低かった(p<0.001)。 またsibeprenlimab群では、血清APRIL値が95.8%、病原性ガラクトース欠損IgA1値が67.1%、それぞれベースラインから低下していた。 安全性プロファイルは両群で類似していた。死亡例の報告はなく、治療期間中に報告された重篤な有害事象の発現頻度は、sibeprenlimab群3.5%、プラセボ群4.4%であった。

58.

領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療

腎臓と泌尿器の専門医が得意分野を紹介「小児診療 Knowledge & Skill」第3巻腎・泌尿器疾患は、尿の生成・輸送を担う腎臓・尿管、蓄尿・排泄を担う膀胱・尿道の2つの領域にわたる。一連のしくみは密接に関わり、腎臓と泌尿器の専門医がともに得意分野を紹介。日本では3歳児検尿と学校検尿の普及により、小児科医が腎疾患の早期発見に寄与している。尿路感染症、夜尿症など身近な疾患から、専門的なネフローゼ症候群、糸球体疾患まで、臨床に活かすセレンディピティ。本書のポイント小児の腎臓病学と泌尿器科学の2つの領域を横断的にまとめたとらえ方が難解な腎・泌尿器疾患を14の章立てによりシステマティックに提示し、外来から専門医につなぐタイミングをコラムでガイド専門的な画像検査所見、病理所見、症例写真を多数紹介DOHaD、先天性腎尿路異常(CAKUT)が影響する小児の腎・泌尿器疾患、出生前から始まる慢性腎臓病(CKD)への予防を見据えた画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する領域横断的視点による腎・泌尿器疾患の診療定価9,350円(税込)判型B5判(並製)頁数376頁発行2025年11月総編集加藤元博(東京大学 教授)専門編集張田 豊(東京大学 准教授)ご購入はこちらご購入はこちら

59.

CKDへのSGLT2阻害薬、糖尿病・UACRを問わずアウトカム改善/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)患者におけるSGLT2阻害薬の効果については不確実性が存在し、欧米のガイドラインでは糖尿病の状態や尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に基づき推奨の強さが異なる。英国・オックスフォード大学のNatalie Staplin氏らSGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists’ Consortium(SMART-C)は、SGLT2阻害薬は糖尿病の有無やUACRの値にかかわらず、腎機能や入院、死亡のアウトカムに関して明確な絶対的便益(absolute benefit)を有するとメタ解析の結果を報告した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年11月7日号で発表された。8件の無作為化臨床試験のメタ解析 研究グループは、糖尿病の有無およびUACR(200mg/g以上、200mg/g未満)で層別化した臨床試験の参加者において、SGLT2阻害薬の使用が有効性や安全性のアウトカムに及ぼす相対的および絶対的な影響の評価を目的にメタ解析を行った。 対象は、腎疾患での使用の適応を有するSGLT2阻害薬について検討し、腎アウトカムの経過やベースラインのアルブミン尿のデータを記録した8件の無作為化臨床試験であった。 主要アウトカムとして、SGLT2阻害薬の使用が臨床的な有効性と安全性に及ぼす影響を評価した。糖尿病の有無にかかわらず、有効性のアウトカムが改善 SGLT2阻害薬とプラセボを比較した試験の参加者5万8,816例(平均年齢64[SD 10]歳、女性35%、糖尿病4万8,946例、非糖尿病9,870例)を解析の対象とした。 プラセボ群と比較してSGLT2阻害薬群では、次の4つの有効性のアウトカムが糖尿病の有無を問わず改善した(非糖尿病患者の総死亡を除く)。(1)腎疾患進行率が低下(糖尿病患者:SGLT2阻害薬群33件/1,000人年vs.プラセボ群48件/1,000人年、ハザード比[HR]:0.65[95%信頼区間[CI]:0.60~0.70]、非糖尿病患者:32件vs.46件、0.74[0.63~0.85])(2)急性腎障害(AKI)の発生率が低下(糖尿病患者:14件vs.18件、0.77[0.69~0.87]、非糖尿病患者:13件vs.18件、0.72[0.56~0.92])(3)総入院の発生率が低下(糖尿病患者:202件vs.231件、0.90[0.87~0.92]、非糖尿病患者:203件vs.237件、0.89[0.83~0.95])(4)総死亡の発生率が低下(糖尿病患者:42件vs.47件、0.86[0.80~0.91]、非糖尿病患者:42件vs.48件、0.91[0.78~1.05])アルブミン尿による層別化は不要 このようなSGLT2阻害薬の糖尿病の有無別のHRは、さらにUACR 200mg/g以上とUACR 200mg/g未満に分けて検討した場合も同様に良好であった。 たとえば、UACR 200mg/g以上で絶対リスクが高い場合でも、このサブグループでは腎疾患進行(糖尿病患者のHR:0.65[95%CI:0.59~0.71]、非糖尿病患者のHR:0.71[95%CI:0.60~0.84])に対するSGLT2阻害薬の絶対的便益が明らかに大きいと推定された。また、UACR 200mg/g未満の患者では、他の有効性のアウトカム、とくに入院(0.91[0.88~0.94]、0.89[0.82~0.98])に関して明らかな絶対的便益を認めた。 さらに、非心不全の患者集団や、推定糸球体濾過量が60mL/分/1.73m2未満の患者の解析でも、このSGLT2阻害薬の絶対的便益が保持されていた。 著者は、「これらのデータは、CKD患者におけるSGLT2阻害薬の使用に関するガイドラインの推奨から、アルブミン尿の値による患者の層別化を削除することを支持し、より広範な使用の根拠となるものである」としている。

60.

成人期発症の再発型ネフローゼ症候群に対する抗CD20抗体の治療効果(解説:浦信行氏)

 成人におけるネフローゼ症候群の頻度は膜性腎症(MN)が多いが、微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)や巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)も少なくない。これらはステロイド療法に効果を示す一方で、頻回再発型ネフローゼ症候群(FRNS)やステロイド減量で再燃するステロイド依存性ネフローゼ症候群(SDNS)を呈することが多い。その結果、ステロイド使用期間が長期化し、骨脆弱性や感染症などの合併症を来しやすい。 CD20はB細胞の表面に存在するタンパク質で、B細胞の活性化や増殖に関与する細胞表面マーカーである。この病態に対する治療的アプローチとして、タイプI抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブ(RTX)の治療効果が検討されるようになった。現在まで活動性ループス腎炎(LN)やMNで有効性が検討されている。活動性LNは全身性エリテマトーデス(SLE)の中でも重症病態の1つであり、LN患者の約20%が15年以内に末期腎不全に至る。しかし、LNの臨床試験においてその評価は無効・有効とする報告が相半ばする。MNに関してはシクロスポリンとの比較試験(MENTOR試験)が報告されており、RTXは有意に寛解率が高値であったが、それでも部分寛解も含めて60%にとどまる。 このたびは、成人におけるFRNSとSDNSを対象とした、わが国での多施設共同研究の結果がJAMA誌オンライン版として2025年11月5日号に掲載され、その概要が11月21日配信のジャーナル四天王に掲載された。RTX群36例と対照群36例の小規模試験で、投与のタイミングは1、2、25週の3回である。解析対象は66例にとどまり、組織診断では両群のMCNS+FSGSが各々93%と94%と多数を占めたが、49週での無再発率はRTX群で87.4%と良好な結果を示した。副作用は開始後30~120分の輸液反応が主体で、RTXによる直接の作用とは考え難いが、劇症肝炎や無顆粒球症などの重篤な副作用の報告があり、慎重な経過観察が望まれる。今後必要な検討はより多数例で長期の試験であるが、望ましい投与のタイミングや投与量の検討も治療効果を高めるため必須である。

検索結果 合計:1046件 表示位置:41 - 60