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第2回 因果関係:不作為と患者の死亡

■今回のテーマのポイント1.因果関係とは、「経験則に照らして総合的に検討した結果、8、9割以上の確率で特定の事実が特定の結果発生を招来したといえること」である2.このことは、過失の態様が作為であれ、不作為であれ同じである3.不作為の過失における因果関係の有無は、当該過失がなければ「その時点」で死亡していないといえれば足る事件の概要アルコール性肝硬変と診断され、肝臓病を専門とする医師Yが開設するA消化器科医院を紹介されたXに対し、医師Yは、3年弱に渡り、肝庇護剤を投与していました。しかし、その間一度も腫瘍マーカーの測定や腹部超音波検査を行わなかったところ、Xが多発性肝細胞癌、肝細胞癌破裂により死亡したという事案です。死亡後Xの妻と子らが、Yに対し、適切な検査を行わなかった結果、Xが肝細胞癌の治療を受けられず死亡したとして損害賠償を請求して争われました。原審(高裁)では、Y側(医師)の注意義務違反を認めたものの、どの程度延命できたか不明であるとして、死亡との因果関係を認めませんでした。これに対し、最高裁は、原審を破棄し、死亡との因果関係を認めた上で、高裁に差し戻しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過原告の父(X)は、昭和58年10月にB病院にてアルコール性肝硬変と診断され、肝臓病を専門とする医師Yが開設するA消化器科医院を紹介されました。Yは、Xに対し週3回程度肝庇護剤の投与を行い、1カ月から2カ月に一度触診等診察を行っていましたが、紹介受診した昭和58年11月から昭和61年7月までの間に一度も腫瘍マーカーの測定や腹部超音波検査を行っていませんでした。Yが、昭和61年7月5日にAFP(腫瘍マーカー)の検査をしたところ、110ng/ml(正常値20ng/ml以下)と高値を示しましたが、Xに対し「肝細胞癌の検査は陰性であった」と伝えました。同年7月17日夜、Xは、腹部膨隆、右季肋部痛等が出現したため、翌18日朝にA消化器科医院を受診しました。Yより筋肉痛と診断され鎮痛剤の注射を受けましたが、翌19日には全身状態が悪化。C病院を受診したところ、多発性肝細胞癌、肝細胞癌破裂と診断されました。なお、肝細胞癌は大きいものが3つ(7×7cm、5cm大、2.6×2.5cm)ある他、転移巣と考えられる小病変が複数あり、門脈腫瘍塞栓も認められました。その後、Xは、同年同月27日に肝細胞癌及び肝不全により死亡しました。事件の判決訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである(最判昭和50年10月24日民集29巻9号1417頁)。右は、医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の死亡との間の因果関係の存否の判断においても異なるところはなく、経験則に照らして統計資料その他の医学的知見に関するものを含む全証拠を総合的に検討し、医師の右不作為が患者の当該時点における死亡を招来したこと、換言すると、医師が注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されれば、医師の右不作為と患者の死亡との間の因果関係は肯定されるものと解すべきである。患者が右時点の後いかほどの期間生存し得たかは、主に得べかりし利益その他の損害の額の算定に当たって考慮されるべき事由であり、前記因果関係の存否に関する判断を直ちに左右するものではない(最判平成11年2月25日民集53巻2号235頁)。ポイント解説民法709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。すなわち、不法行為が成立するためには、生じた損害が故意又は過失行為によって生じたこと(因果関係)が必要なのです。どんなに悪意をもった行為を行ったとしても、それによって何も損害が発生していなければ、因果関係がないため賠償する義務はないのです。当たり前の事だと思われるでしょうが、これを医療過誤に当てはめると途端に問題が複雑になります。なぜならば、患者は疾病を抱えているからこそ病院に来ているのであり、結果として死亡した場合であっても、当該死亡の原因が、医療過誤によるものなのか、疾病そのものによるものなのか判断がつかない場合が、しばしば生じるからです。特に、本件のように不作為(適切な医療行為をしなかった)を問題としている場合には、現実として、疾病(本件では肝細胞癌)により死亡しているのであり、さらに癌のような重篤な疾患の場合、たとえ適切な治療を行っていたとしても転帰に変わりがない可能性が高いことから、因果関係の立証は一層難しくなります。医療過誤事件における因果関係の立証についての判例は、「東大ルンバール事件※」(最判昭和50年10月24日民集29巻9号1417頁)が先例であり、本判決でも引用している通り、「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挾まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである」とされています。具体的には、「十中八、九」が目安といわれ、経験則に照らして8、9割以上の確率で結果が生じたと立証できれば足りるとされています。この判例の意義は、「確かに医療過誤があったかもしれないが、診療経過とはまったく脈絡もなく心室細動が発症した可能性がある」とか「くも膜下出血が生じた可能性がある」等の主張が病院側弁護士よりなされた場合において、原告側が心室細動やくも膜下出血が起きた可能性がないことなどあらゆる可能性を排斥しない限り、因果関係が認められないということではないということにあります。それを踏まえたうえで、本判例が示した重要な点は次の2点ということとなります。(1)作為の場合であっても、因果関係の立証の程度は変わらないということ(2)因果関係の有無を考えるにあたっては、不作為による過失がなければ「その時点」で死亡することがなかったことが立証されれば足りるのであり、癌により早晩死亡したであろうということは、因果関係(すなわち不法行為が成立するか否か)において検討することではなく、(不法行為が成立した上で)生じた損害の額を検討するにあたって考慮すべきことである※東大ルンバール事件概要:泣き叫ぶ3歳の化膿性髄膜炎の患児に腰椎穿刺を施行した約15分後に、嘔吐・けいれん発作等が出現し、結果として右半身麻痺等の後遺症が残った症例において、これらの症状が、化膿性髄膜炎によるものか、腰椎穿刺の結果脳出血となったものかが争われた事案裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます(出現順)。最判昭和50年10月24日民集29巻9号1417頁最判平成11年2月25日民集53巻2号235頁

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わが子が受けたポリオ生ワクチンから感染

入院中の便検査でエンテロウイルスが陽性だった弛緩性麻痺例の調査結果について、米国ミネソタ州保健局Aaron S. DeVries氏らによるレポートが、NEJM誌2011年6月16日号で発表された。患者は、長期にわたり後天性免疫グロブリン血症で免疫グロブリン静注療法を受けていた44歳の女性で、突然、四肢および呼吸麻痺を来し入院、その後死亡に至ったというもので、症例経過、ウイルス検査結果、家族を含めた周辺調査および二次感染の結果などから、推定感染時期が、女性の2人の子どものうちの1人がポリオ生ワクチンの接種を受けた時期と一致したという。免疫グロブリン静注療法を受けていた44歳の女性に突然の麻痺女性に症状が現れたのは2008年12月で、咳、化膿性鼻汁、軽度の呼吸困難、倦怠感、微熱が認められたが、患者自身、慢性副鼻腔炎の増悪ではないかと考え、事実4日後にその症状は消失した。しかし2日後に、左ふくらはぎに締め付けられるような感覚を覚え、その後5日間で下肢虚弱、入院となった。入院2日後に症状は上肢にも進行、さらに8~38日にかけて自発呼吸が困難となり気管挿管、61~73日には肝機能障害悪化、肺炎、呼吸不全を来し、その後も問題改善が認められず、92日目に家族がサポート中止を選択、その後死亡に至った。患者は、1991年に後天性免疫グロブリン血症と診断され、その後、慢性リンパ様間質性肺炎、食道静脈瘤を伴う肝硬変、一連の入院前2ヵ月の間に悪化した慢性下痢症を伴う腸疾患を患っており、2006年には脾摘を受けていた。B細胞欠損、Bruton型チロシンキナーゼの発現は正常なども報告されている。当局が調査に乗り出すことになったのは、初期には陰性だったが、入院74日目の便検査でエンテロウイルスが検出され報告されたことがきっかけだった。ポリオウイルス同定、感染は11.9年より以前であると推定ゲノム塩基配列決定法の結果、ポリオウイルスtype 2が同定されたが、以前に発表されていた経口ポリオウイルスワクチンのヌクレオチド配列とは12.3%の相違が認められ、2つの弱毒化した野生型ウイルスが認められた。患者はおそらく11.9年(95%信頼区間:10.9~13.2)より以前に感染したと推定された。家族への聞き取り調査から、2人の子ども(13歳と6歳)のうちの1人がその当時、3回接種のポリオ生ワクチンを受けていることが明らかになった。一方で、同室患者3人や2,038人に上る医療従事者へのスクリーニングが行われたが、二次感染は確認されなかった。DeVries氏は、「後天性免疫グロブリン血症患者は、ポリオウイルスに慢性感染している可能性がある。そして、ポリオは免疫グロブリン静注療法を受けているにもかかわらず発症する可能性がある」と報告。米国では2000年にポリオ生ワクチンから不活化ワクチンに切り換えられた。本症例は、それ以後初の麻痺性ポリオの症例だったという。最後に、不活化ワクチン切り替え後も、ポリオ根絶のための監視と、特に慢性感染の可能性がある患者へのメンテナンスが必要だとまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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教授 鈴木康夫先生の答え

気分転換方法について潰瘍性大腸炎やクローン病などは、ある意味患者さんと一生の付き合いかと思います。私も慢性疾患を診ていますが、患者、家族とのコミュニケーション疲れから、医局を去る後輩もいます。先生のところでは、息抜きといいますか、コミュニケーション疲れを取り除くような気分転換について、何か取り組まれているでしょうか?もし極秘のノウハウ等あれば是非ご教示ください!残念ながら特別なノウハウはありませんし、特別な息抜き法もありません。確かに慢性疾患患者さん特有の気質があり、外来診療時間は長く神経を使う度合いも多いのはそれぞれ担当医の辛いところかもしれません。しかし、教科書や論文では判らない知識を個々の患者さんとの直接的対話や診療で初めて会得できることが未だ多くあるのも炎症性腸疾患の特徴ではないかと感じています。患者さんは日々の辛い思いを主治医に吐き出した時に初めて救われるのだ、と自分を納得させ、目の前の患者さんこそが生きた教材と知識の源だ、と思い日々の診療を楽しんでください。幸い、炎症性腸疾患は治療法が適切であれば患者さんは明らかに改善し満足いたします。患者さんが寛解し喜ぶ瞬間こそが我々主治医にとっての本当の息抜きを与えてくれる瞬間なのです。講演会の予定について是非先生の講演会に参加させていただきたいのですが、どこかに講演会のスケジュールなど掲載されているのでしょうか?ホームページなどがあれば教えていただきたく思います。宜しくお願いします。残念ながら、私個人の講演会のスケジュールをまとめてホームページでは掲載してはおりません。ただし、各市町村保健所が主催する講演会に関しては、各市町村の難病ホームページで開示している筈ですので参考にしてください。また、炎症性腸疾患に関するサイトがいくつか設立運営されており、そのようなサイト上に講演会の日程などが開示される場合もあるかもしれませんので、チェックして参考にしてください。患者・家族対応慢性疾患、特に難病だと、診断結果を患者・家族へ伝える瞬間が特に重要かと思います。先生が診断結果を伝えるときに気をつけていることや工夫していることをご教示ください。突然、難病と言い出すのは大変な誤りです。炎症性腸疾患患者さんに対して、いきなり難病ですと切り出すことは絶対にしてはならないことです。まずは病気の特徴や一般的な長期経過、そして治療法の説明をすること、個々の患者さんによって病状は様々であることを告げることも必要です。そして最終的には、現状では病因が不明であり完治が難しいという意味で、俗にいう難病に指定されている、ということを説明するべきです。難病といえども、以前に比べ格段に治療法は進歩し完治に近い治癒も可能であることも教えてあげる必要があります。後期研修について後期研修医は募集しておりますでしょうか?卒後4年目、肛門科にいますが、炎症性腸疾患の患者を多くみるようになり、興味を持っています。できれば専門としたいと考えております。情報あれば教えていただきたく存じます。当科では後期研修医制度を設け、積極的な受け入れ態勢を十分に準備しております。詳細は佐倉病院内科のホームページを参考にしてください。判りにくい場合には、ご連絡いただければいつでも対応いたしますし、参考のために来院され見学することや体験学習も可能です。 研究について現在行われている研究について教えてください。ホームページには、C型慢性肝疾患の発表資料は掲載されていますが、それ以外の情報がありません。他に何の研究を行っているのか教えてください。(医学部5年)炎症性腸疾患に関しては、基礎研究・臨床研究を含め多くの様々な研究を行なっています。その主な研究は:遺伝子工学技術を応用した細菌分析法により潰瘍性大腸炎・クローン病患者における腸内細菌叢変動の分析、その研究法を応用したprobioticsとsynbioticsの治療効果の解析、顆粒球吸着除去療法における有効性発現機序の解明、潰瘍性大腸炎病態形成と顆粒球機能異常の関連性、抗TNF-α抗体測定キットの開発、炎症性腸疾患患者抗TNF-α抗体製剤二次無効発現機序の解明、クローン病におけるre-set therapyの開発、免疫抑制剤至適投与法の開発、サイトメガロウイルス腸炎の診断と治療、新規内視鏡画像診断法の開発などを実施しています。その他、肝臓癌・膵臓癌に対する多剤併用カクテル療法の開発、肝炎・肝硬変に対するインターフェロン療法の開発なども行なっています。小児潰瘍性大腸炎記事拝見しました。毎日100人ほどの診察、恐れ入ります。外来患者のうち、小児潰瘍性大腸炎の患者さんはどの位いるのでしょうか?最近は小児潰瘍性大腸炎が増えてきたと聞くのですが、やはり増加傾向にあるのでしょうか?実際に診療されている先生の感覚値をお聞きしたく思います。私自身は内科医で小児科が専門ではありませんので、特段に潰瘍性大腸炎小児患者を多く診ているわけではありません。しかし、近隣の病院から小学生高学年以上の中学生・高校生で潰瘍性大腸炎・クローン病と診断された場合に私のところへ紹介されてくる場合が多いようです。最近では、以前に比べそのような若年者潰瘍性大腸炎患者さんの紹介率が増加傾向にあると感じています。以前には詳細な統計が存在していなかったようですが、最近炎症性腸疾患を専門にしている小児科の先生達が集計した全国統計では、小児潰瘍性大腸炎患者数は近年増加傾向にあり、重症化・難治化しやすい特徴があると報告されています。潰瘍性大腸炎罹患後の瘢痕症例は24歳男性。12年前潰瘍性大腸炎に罹患し、ステロイドパルスなどの治療を受け、現在は緩解。内服薬も必要としない。2年前のCFで、罹患時の影響か(?)5cmくらいの線状の瘢痕を認めた。この部分は将来、悪性化の可能性が他の部分に較べて高くなるのでしょうか。よろしくお願い致します。重症の潰瘍性大腸炎では、治癒寛解後も強い炎症部位に一致して瘢痕が残る場合があります。そのような部位が完全に瘢痕化したままで再燃を生じない限り、癌化の心配は通常はありません。潰瘍性大腸炎に関連した大腸癌の発生は、慢性的炎症が持続する結果として癌化を生じることが推測されています。従って、瘢痕化した部位は通常炎症が全く消失していますので特段に癌化の恐れはありません。潰瘍性大腸炎と他の腸炎との鑑別、治療方針について30代女性が粘血便で外来受診し、大腸内視鏡検査実施、所見としては盲腸と直腸にやや易出血性の発赤した粘膜があり、数か所を生検しました。病理診断は潰瘍性大腸炎の寛解期に矛盾しないがUCとの確定診断はできずとのことでした。ペンタサの投与で患者さんの症状は一旦軽減しましたが、ペンタサを中止して半年後くらいから、時に粘血便があり、なんとなく腹がすっきりしないとの訴えです。下痢はなく著名な下血はありません。再度CF生検でもUCの寛解期に矛盾せずとの診断です。現在、ペンタサを再度処方して様子を見ております。特に悪化するわけではありませんが、すっきりと良くなるわけでもなく、診断もはっきりせず、対応に苦慮しております。今後どのような方針あるいは検査、治療で臨めばよいのかご教示いただけるとありがたくよろしくお願いいします。実際の大腸内視鏡写真がないので明確なお答えは困難ですが、文面から推測すると直腸炎型潰瘍性大腸炎と診断されます。直腸炎型では盲腸にも同時に炎症所見を伴うことがよく観察されますので、潰瘍性大腸炎としては矛盾がありません。潰瘍性大腸炎では多くの患者さんが寛解後も再燃を繰り返しますので、症状が改善しても直ぐに服用は中止せずそのまま継続することが望まれます。直腸炎型でペンタサ服用によっても改善を認めない場合には、ペンタサ注腸剤の併用をお勧めいたします。ペンタサ剤の特性として病変部位に直接到達作用する必要があり、直腸炎型では注腸剤によるペンタサあるいはステロイド剤の直接的注入法が内服に比べ副作用が少なく有効性をさらに発揮してくれる可能性があります。潰瘍性大腸炎の食事私は管理栄養士です。先日潰瘍性大腸炎の患者さんから「生寿司を食べたい」の質問を受けました。潰瘍性大腸炎の症状にもよると思いますが時節がらノロウィルスの流行している時期であり、ノロウィルスに感染し下痢をすることは潰瘍性大腸炎にとって好ましくないと考えます。果物、大根おろし等は生で食べてもおかずになるものは原則加熱して食べることが必要と考えますがいかがでしょうか。アドバイスを頂きたく投稿しました。潰瘍性大腸炎の患者さんが、ウイルス・細菌感染による各種感染性腸炎や抗生剤・消炎鎮痛剤服用に伴う薬剤性腸炎の発症に注意することは、病状の再燃予防には重要であります。しかし、通常の感染予防・衛生管理を怠らなければ必要以上に過剰な食事管理をすることが医学的な意味を持つとは思えません。本来生で食することが可能である、新鮮で衛生的な食材であれば、加熱など必要ないと考えます。個々の患者・個々の病状に応じて適切な食事指導を実施すべきであり、科学的根拠のない画一的食事指導は人生の大事な要素である食の楽しみを奪いストレスを誘引してむしろマイナスになることを肝に銘じるべきです。潰瘍性大腸炎の合併症について潰瘍性大腸炎を発症3ヶ月で大腸の全摘出を受けた患者さん術後、膵炎を発症されたとのこと医師からは潰瘍性大腸炎の合併症で免疫性の膵炎だろうと診断されたとのことです現在は症状も治まっており、ときおりある自覚症状にフオイパンの服用をしているとのことでしたただ、膵炎が悪化した場合はステロイドを再開する必要がでてくるかもしれないと医師より言われているそうですせっかく大腸を全摘出しステロイドを中止することができたのにまた服用しなければならないのかと心配されています大腸を全摘出しても合併症は軽減されないのでしょうかまた、膵炎が悪化した場合の治療方法について伺えれば幸いですよろしくお願いいたします通常は膵炎を含めた様々な潰瘍性大腸炎の腸管外合併症は大腸全摘術によって改善するものですが、稀に大腸全摘術後に発症する場合もあります。その様な場合は、発現している症状・臓器に応じ限定した治療法も考慮されますが一般的にはステロイド剤を中心にした全身的治療薬の投与が必要となってきます。そして、ステロイド剤投与を避けたい場合には代わりに免疫抑制剤・免疫調節薬投与が有効性を発揮します。今回の場合、仮にフォイパンを服用しているにも関わらず自己免疫性膵炎が悪化しステロイド剤投与を避けたいとお考えであれば、主治医と相談し免疫抑制剤治療をご考慮してはいかがでしょうか。総括炎症性腸疾患は多彩な病像を形成する複雑な疾患群です。画一的にならず個々の患者さんの病状・病態を的確に判断し、適切な判断に基づいたきめ細かな医療の実践が望まれます。最近、炎症性腸疾患に関する情報が氾濫し一部には不適切な情報も含まれて患者さんに誤解を生んでいます。炎症性腸疾患における診療レベルは近年、著しいスピードで進化しています。我々主治医は勿論、薬剤師・看護師や栄養士といった患者さんに関わる全ての医療人は、科学的根拠に基づいた正確な情報を患者さんに対して迅速に適切に開示する努力を怠ってはなりません。教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

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【お知らせ】5病院合同で「がんに関する市民公開講座」を開催

がん征圧月間に向けて、国立がん研究センター中央病院、東京医科大学病院、東邦大学医療センター大森病院、同大橋病院、同佐倉病院の5病院合同で「がんに関する市民公開講座」を開催する。一定期間内に、多様な講師による講演を市民に提供することで、がんの早期発見、早期治療に関する社会的な関心の喚起することが目的。  開催期間:平成22年8月14日(土)~9月25日(土)入場料はいずれも無料開催一覧 平成22年8月14日(土) 14:00~16:00(開場 13:30)国立がん研究センター中央病院<講演内容>「忘れられたがんに挑む -肉腫診療は医師と患者が手を取り合って-」国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科 科長 牧本 敦氏「日本でのがん治療向上の課題」国立がん研究センター理事長、国立がん研究センター中央病院 院長 嘉山 孝正氏<募集方法>往復はがき、またはFAXで申し込み(往復はがきには返送先の住所・氏名・電話番号を、FAXには返送先の住所・氏名 ・FAX番号を明記のこと)申し込み宛先:国立がん研究センター中央病院 がん医療サポートチーム 角美奈子氏〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1 FAX:03-3248-5267<定員>900人 先着順で締め切り<問い合わせ先>国立がん研究センター中央病院 総務部 03-3542-2511 平成22年9月9日(木)18:30~20:00(開場 18:00)東京医科大学病院<講演内容>「肺がんといわれたら」東京医科大学 呼吸器外科・甲状腺外科 主任教授 池田 徳彦氏<募集方法>事前の申し込み不要<定員>300人<問い合わせ先>東京医科大学病院 企画広報室 03-3342-6111 平成22年9月4日(土) 13:00~ (開場 12:30)東邦大学医療センター大森病院(5号館地下1階 臨床講堂)<講演内容>「乳がん-早期発見の大切さ-」東邦大学医療センター大森病院 乳腺・内分泌外科 講師 緒方 秀昭氏 <募集方法>事前の申し込み不要<定員>130人<問い合わせ先>大森病院 事務部総務課 03-3762-4151(代表) 平成22年9月25日(土) 13:30~ (開場 13:00)東邦大学医療センター大橋病院(教育棟1階 臨床講堂)<講演内容>「消化管のがんについて」東邦大学医療センター大橋病院 消化器内科 助教 掛村 忠義氏<募集方法>事前の申し込み不要<定員>120人<問い合わせ先>大橋病院 事務部総務課 03-3468-1251(代表) 平成22年9月25日(土) 14:00~ (開場 13:30)東邦大学医療センター佐倉病院(7階講堂)<講演内容>「当院における慢性肝疾患の診断」I 慢性肝炎(B型・C型)と肝硬変の治療東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 助教 高田伸夫氏II 肝細胞癌の画像診断と治療東邦大学医療センター佐倉病院 放射線科 講師 森田英夫氏<募集方法>事前の申し込み不要<定員>200人<問い合わせ先>佐倉病院 事務部総務課 043-462-8811(代表)

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静脈瘤出血の中等度以上肝硬変、早期TIPSが治療失敗と死亡率を低下

急性静脈瘤出血で入院した治療失敗の可能性が高いChild-Pugh分類C(重度)、B(中等度)の肝硬変患者に対し、経頸静脈性肝内門脈大循環短絡術(TIPS)を早期に行うことで、治療の失敗または死亡率を有意に低下することが明らかになった。スペイン・バルセロナ大学病院のJuan Carlos Garcia-Pagan氏ら研究グループによる報告で、NEJM誌2010年6月24日号に掲載された。early-TIPS群と薬物療法-EBL群に無作為化し追跡研究グループは、急性静脈瘤出血の肝硬変患者で血管作用薬+内視鏡治療を受けた63例を、入院後24時間以内に2群に無作為化した。一方は、ポリテトラフルオロエチレン被膜ステントを用いた処置を、無作為化後72時間以内に行う群(early-TIPS群、32例)、もう一方は、血管作用薬を投与しながら3~5日後にプロプラノロール(商品名:インデラル)またはナドロール(同:ナディック)投与と、長期内視鏡的結紮術(EBL)を施行し、レスキュー療法が必要な時にTIPSを行う群(薬物療法-EBL群、31例)に割り付け追跡された。主要エンドポイントは、割り付け1年以内の急性出血コントロール失敗または臨床的に有意な静脈瘤の再出血予防の失敗からなる複合アウトカムとした。治療失敗の未発生、薬物療法-EBL群50%に対しearly-TIPS群97%追跡期間中央値16ヵ月の間に、再出血または出血コントロールの失敗は、薬物療法-EBL群では14例起きていたが、early-TIPS群は1例だった(P=0.001)。1年間主要エンドポイントが起きない確率は、薬物療法-EBL群は50%だったが、early-TIPS群は97%だった(P

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抗菌薬rifaximin、肝性脳症の治療効果だけでなく予防効果も

肝硬変の合併症である肝性脳症は重篤な意識障害により、患者・家族およびヘルスケアシステムに多大な負担を課すが、吸収率が最小の抗菌薬rifaximinには、肝性脳症の予防効果もあるようだ。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNathan M. Bass氏らが行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果による。同薬についてはこれまで、急性肝性脳症に対する治療効果は、十分実証されていた。NEJM誌2010年3月25日号掲載より。反復性肝性脳症寛解期の患者299例を、rifaximin投与群とプラセボに無作為化試験は、慢性肝疾患による反復性肝性脳症が寛解期の患者299例を対象に行われた。被験者は6ヵ月間にわたり、rifaximin(550mgを1日2回)投与群(140例)と、プラセボ投与群(159例)に無作為に割り付けられ追跡された。有効性の主要エンドポイントは、肝性脳症と診断された初回発症までの期間とし、主要な副次エンドポイントは、肝性脳症に関連する初回入院までの期間とされた。rifaximin投与群の方が、エピソード、入院リスクとも半減6ヵ月超期間中、rifaximin投与群はプラセボと比較して、肝性脳症エピソードのリスクが有意に低かった。rifaximin投与群のハザード比は0.42(95%信頼区間:0.28~0.64、P

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肥満者は肝硬変リスクが高い

肥満は、肝硬変の発生率を増すようだ。英国オックスフォード大学がん疫学部門のBette Liu氏らが、英国中年女性を対象に行った前向き試験「Million Women Study」からの結果で、致死性肝硬変のうち約17%は、肥満に由来するもので、アルコール由来の約42%に匹敵するものだという。BMJ誌2010年3月20日号(オンライン版2010年3月11日号)掲載より。平均56歳の女性123万を6.2年追跡「Million Women Study」は、1996~2001年に英国とスコットランドの公的医療機関であるNHS乳がんスクリーニングセンターで参加者を集め、その入院や死亡情報をルーチンに集約している情報センターの記録を追跡調査し行われた。参加者は計123万662人で、平均年齢(募集登録時点)は56歳、平均6.2年追跡された。主要評価項目は、肝硬変による初回入院または死亡の相対リスクおよび絶対リスク。年齢、試験への募集期間、アルコール消費量、喫煙、社会経済学的状態、身体活動で補正が行われた。肥満で飲酒習慣のある女性は特に注意追跡期間中、肝硬変による初回入院または死亡は1,811例だった。BMIが22.5超の女性は、その値が増すほど肝硬変の発生率が高まった。BMIが5単位増すごとに補正後肝硬変リスクは28%増大(相対リスク:1.28、P

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天然型インターフェロン ベータ製剤「フエロン」にC型慢性肝炎に対するリバビリンとの併用の効能追加

東レ株式会社は16日、第一三共株式会社と共同開発し販売している天然型インターフェロン ベータ製剤「フエロン」(製品名:フエロン注射用100万・注射用300万・注射用600万)について、「リバビリンとの併用によるC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」を新たな効能・効果として国内で承認を取得したと発表した。これにより、フエロンはインターフェロン ベータ製剤としては初めて、リバビリンとの併用が可能になる。フエロンは、膠芽腫(脳腫瘍)、および皮膚悪性黒色腫(皮膚癌)の治療薬として1985年より販売を開始した国内初のインターフェロン製剤。その後、B型慢性活動性肝炎、C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変等の効能を追加してきた。フエロンの販売は、第一三共株式会社および東レ・メディカル株式会社が行うとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.toray.co.jp/news/medical/nr091016.html

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米国で初めての経口選択的バソプレシンV2受容体拮抗剤SAMSCA FDAより承認取得

大塚製薬株式会社は22日、米国で初めての経口選択的バソプレシンV2受容体拮抗剤「SAMSCA」(日本語表記:サムスカ、一般名/一般名英語表記:トルバプタン/tolvaptan)について、低ナトリウム血症(心不全、肝硬変、および抗利尿ホルモン不適合分泌症候群:SIADH)の適応症で、FDA(米国食品医薬品局) より5月19日(米国東部時間)に承認を取得したと発表した。SAMSCAは、腎臓の集合管において、バソプレシン(抗利尿ホルモン)のV2受容体への結合を選択的に阻害する、独自の作用機序をもった治療薬。バソプレシンは、その作用のひとつとして、V2受容体に結合することで、体液を保持することが知られている。SAMSCAは、V2受容体において、バソプレシンの働きを抑制することで、ナトリウムなどの電解質の排出に直接の影響を与えずに、尿中から血中への水再吸収を減少させ、水を体外へ排出するメカニズムを持つ。SAMSCAの米国での販売は、同社の米国現地法人である大塚アメリカファーマシューティカルInc.が行うという。詳細はプレスリリースへhttp://www.otsuka.co.jp/company/release/2009/0522_01.html

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FDAがC型慢性肝炎患者へのペグインターフェロン併用療法の適用拡大を承認

シェリング・プラウ株式会社は16日、米国本社が3月11日に米国食品医薬品局(FDA)より代償性肝疾患を持つ3歳以上のC型慢性肝炎患者の治療としてペグイントロン(ペグインターフェロンα-2b)とレベトール(リバビリン-USP)との併用療法の適用拡大を新たに承認したことを発表した。今回、適用拡大が承認されたことで、ペグイントロンとレベトールは、米国内で承認された唯一の未治療の患者に限定せずに使用できるペグ化インターフェロン併用療法となったという。一連の治療で効果が得られなかった後、再治療の効果が現れにくい患者は、過去の治療で無効であった患者、ペグ化インターフェロンによる治療経験がある患者、高度な線維性架橋形成または肝硬変がある患者、あるいはHCVジェノタイプ1感染の患者。詳細はプレスリリースへhttp://www.schering-plough.co.jp/press/2009/0416_1.html

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肝硬変における栄養障害を改善 「リーバクト顆粒」のアジア諸国での販売等に関する基本契約が締結

味の素株式会社とエーザイ株式会社は10日、分岐鎖アミノ酸製剤「リーバクト顆粒」に関して、アジア諸国を対象とした基本契約を締結したと発表した。リーバクト顆粒は、味の素が開発した分岐鎖アミノ酸製剤であり、日本では「食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善」を効能・効果とし、1996年より販売されている。非代償性肝硬変の患者では、黄疸や全身倦怠感、腹水、浮腫、肝性脳症などの症状が見られ、QOLが低下している。その原因として挙げられるのが、肝硬変が進行すると発現する低アルブミン血症による低栄養状態や代謝障害であり、リーバクト顆粒は、肝硬変における栄養障害を改善して血清アルブミン値を上昇させることにより、これらの症状を改善するという。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news200902.html

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天然型インターフェロン-α製剤スミフェロンに効能・効果の追加取得

大日本住友製薬株式会社は10月16日、天然型インターフェロン-α製剤「スミフェロン」について、新たな効能・効果「C型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善(セログループ1ノ血中HCV RNA量が高い場合を除く)」の追加承認を取得したと発表した。スミフェロンは、1987年に腎癌・多発性骨髄腫の効能・効果で発売され、その後、肝疾患領域においては、「HBe抗原陽性でかつDNAポリメラーゼ陽性のB型慢性活動性肝炎のウイルス血症の改善」「C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善(血中HCV RNA量が高い場合を除く)」の効能・効果を取得し、B型・C型慢性肝炎の治療薬として広く使われている。スミフェロンは、C型代償性肝硬変患者を対象とした臨床試験において、原因ウイルスであるHCV RNAの陰性化および肝機能の改善が確認され、また、皮下または筋肉内投与が可能であることから、C型代償性肝硬変の新たな治療薬選択肢として、医療に貢献できる薬剤であると期待されているという。詳細はプレスリリースへhttp://www.ds-pharma.co.jp/news/pdf/ne20081016.pdf

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抗ウイルス化学療法剤「ヘプセラ」、他剤との併用可能に

グラクソ・スミスクライン株式会社は、9月24日付で、B型慢性肝疾患(B型慢性肝炎およびB型肝硬変)に対する抗ウイルス化学療法剤「ヘプセラ」(アデホビル ピボキシル)について新しい「効能・効果」、「用法・用量」の承認を取得したと発表した。この承認により、「ヘプセラ」は、B型肝炎ウイルスの増殖を伴い肝機能の異常が確認されたB型慢性肝疾患患者への単独療法および他の抗ウイルス剤との併用療法が可能となった。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2008_07/P1000500.html

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肝移植のための緊急性の指標に血清ナトリウム濃度も

現行の肝臓移植ガイドラインでは、移植用臓器は死亡リスクが最も高い患者に提供されることになっている。米国では肝移植のための移植片は医学的な緊急性に基づいて配分されるが、その緊急性は2002年からModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアを基に判定されている。MELDスコアは短期間の予後予測に使われるもので、血清ビリルビン濃度、プロトロンビン時間、血清クレアチニン濃度の3つを指標とし、スコア40以上で3ヵ月後の死亡率80%以上と判定するが、さらに最近、肝硬変患者にとって血清ナトリウム濃度が重要な予後因子であることが認められつつあり、MELDスコアとの関係が議論されている。本論は、メイヨー・クリニック医科大学のW. Ray Kim氏らの研究グループによる、血清ナトリウム濃度の指標としての有用性についての報告。NEJM誌2008年9月4日号より。MELDスコアに血清ナトリウム濃度を死亡予測変数に追加Kim氏らの研究グループは、2005年と2006年に米国のOPTN(the Organ Procurement and Transplantation Network:臓器提供ネットワーク)に登録され、初めて肝臓移植を受けた全成人のデータを用いて、登録後90日の死亡率を予測する多変量生存者モデルを開発・検証した。予測因子変数は、MELDスコアに対する血清ナトリウム濃度の追加の有無。MELDスコア(6~40のスケールで、値が高いほど重篤)は血清ビリルビン濃度、クレアチニン濃度、それと国際標準比に基づくプロトロンビン時間で算出した。2005年、OPTNのウェイティングリスト登録者は6,769人だった(肝移植を受けた1,781人と、登録後90日以内に死亡した422人を含む)。MELDNaスコアはMELDスコア単独より高率で死亡を予測解析結果から、MELDスコアと血清ナトリウム濃度はいずれも死亡率と有意に関連していることが明らかになった(死亡危険率はMELDポイントにつき1.21、血清ナトリウム濃度125~140mmol/Lの範囲内で1単位減少につき1.05、いずれの変数もP

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バクロフェンはアルコール性肝硬変患者の断酒推進に有効だ

アルコール性肝硬変患者の最も効果的な治療は「断酒」である。ここ数十年の間に、断酒や飲酒再発予防への作用効果が期待される薬がいくつか登場しているが、薬剤性肝障害などを引き起こす可能性が高いことから、薬理学的試験でアルコール性肝硬変患者の飲酒に関しては決まって対象外とされている。ローマ・カトリック大学内科のGiovanni Addolorato氏らは、γアミノ酪酸(GABA:脳や脊髄に存在するアミノ酸の一種で主要な神経伝達物質)受容体作用薬で、日本では抗痙縮薬として保険収載されているバクロフェンの、アルコール性肝硬変患者の断酒効果と安全性について臨床試験を行った。LANCET誌12月8日号より。低肝代謝に着目、プラセボ対照無作為化試験バクロフェンに着目した背景としてAddolorato氏らは、肝代謝が15%と低く大半が腎から排出される点、またアルコール依存症患者あるいは中枢神経疾患患者でいずれも副作用としての肝障害が報告されていないことを挙げている。治験は2003年10月~2006年11月の間にローマ・カトリック大学内科に紹介されてきたアルコール性肝硬変患者148例を対象に行われた。このうち84例を、経口バクロフェン投与群またはプラセボ投与群に無作為に割り付け、12週間投与が行われた。主要評価項目は、断酒を成し遂げ維持できている患者の比率。断酒できた患者総数と断酒継続期間の結果を、外来来診時に評価する方法で行われた。飲酒再発とは、最低1ヵ月の間に、1日4杯以上飲酒もしくは週に14杯以上飲酒した場合と定義された。断酒率71% vs 29%、継続期間は62.8日 vs 30.8日断酒を成し遂げ維持できていた患者は、バクロフェン投与群71%(30/42例)、プラセボ投与群は29%(12/42例)で、オッズ比は6.3(95%信頼区間:2.4-16.1、p=0.0001)。脱落者(治療打ち切り)数は、バクロフェン投与群14%(6/42例)に対しプラセボ投与群は31%(13/42例)だった(p=0.12)。断酒継続期間は、バクロフェン投与群の平均値は62.8日(SE 5.4)で、プラセボ投与群の30.8日(SE 5.5)に比べ約2倍だった(p=0.001)。肝性の副作用は記録されていない。以上からAddolorato氏らは、「バクロフェンは、アルコール性肝硬変患者の断酒推進に有効だ。薬剤として十分通用し、治療において重大な効果を発揮するだろう」と結論づけている。

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C型肝炎肝硬変の血小板減少症に対するeltrombopagの寄与を確認

血小板新生を促進する新しい経口活性型トロンボポエチン受容体作用薬であるeltrombopagは、がん化学療法やC型肝炎ウイルスに関連した血小板減少症の治療薬として期待され、臨床試験が進められている。本論はデューク大学(イギリス)のJohn G. McHutchison氏ら研究グループによるもので、同剤の、HCV関連肝硬変に伴う血小板減少症患者の抗ウイルス治療に対する寄与を評価したもの。NEJM誌2007年11月29日号より。eltrombopag投与群は用量依存的に血小板が増加血小板数が20,000以上70,000未満(単位:立方ミリメートル;/mm3)のHCV関連肝硬変患者74例を、eltrombopag(1日30、50または75mg)投与群とプラセボ群にランダムに割り付け4週間にわたって連日投与された。主要評価項目は、4週目の血小板数が100,000/mm3以上であることとした。試験ではさらにその後12週間、eltrombopagあるいはプラセボを継続投与しながら、ペグインターフェロンとリバビリンによる抗ウイルス治療を開始した。4週目にデータが有効だった例では、血小板数は用量依存的に100,000/mm3以上に増加した。内訳は、プラセボ投与群が18例中0例、30mg投与群12例中9例(75%)、50mg投与群19例中15例(79%)、75mg投与群21例中20例(95%)だった(P

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