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新型コロナウイルスあれこれ(8)【Dr. 中島の 新・徒然草】(322)

三百二十二の段 新型コロナウイルスあれこれ(8)読者の皆様、今回もコロナの話です。パンデミックにより、医療機関の仕事もすっかり変わってしまいました。私自身も、心理的にずいぶん影響されているように思います。「いつもよりイライラしていますよ」「ため息が多いです」などと周囲から指摘されます。防護服を着て診療する立場ではありませんが、コロナ関連の事が色々あります。これまでに経験のない判断を迫られることがストレスなのでしょうか。「応需すべきか否か」「PCR検査を行うべきか否か」「隔離するのか否か。隔離するならどのレベルか」などなど。さらに疑心が暗鬼を呼びます。「ただの誤嚥性肺炎のはずだけど、ひょっとしたら……」「本人は1歩も家から出ていないというけど、出入りする人はいるしな」「無症候でも感染することはあるし」「2回連続でPCRが陰性だったからといって、可能性がゼロではないし」色々疑い始めるとキリがありません。さて、こういうネガティブな気分をどう扱うべきか?1つ考えたのは、映画を観て感動し、喜怒哀楽の感情を洗い流すというもの。うまく自分がリセットされるのではないかと期待します。ということで、アマゾンでDVDのリストを眺めてみました。買った人の評価が星1つから星5つまでで表示されているので参考になります。映画のジャンルも歴史、戦争、SF、スポーツ、西部劇、政治、邦画など色々あり。今回選んだのは「ビリーブ 未来への大逆転」というタイトル。DVDの評価は平均で星4.8個、なんと200人以上の90%が星5つをつけています。2018年の米国映画で、1950年代の女性弁護士の活躍を描いたもの。ルース・ベイダー・ギンズバーグ、通称RBGの実話に基づいたお話です。これだ、これしかない!そう思い、例によってオンライン・レンタル400円で借りました。内容は……ようやく女性にも入学が認められるようになったハーバード・ロー・スクール。でも、1学年500人の学生のうち女性はたったの9人。当時は女性用トイレすらありませんでした。優秀な成績で卒業したのに、どの法律事務所にも採用されず。そこで大学教授をしながら、性差別撤廃の活動を行います。最初の訴訟は、介護費用の控除が性別で左右されるという法律が憲法に違反している、と裁判で争うものでした……。で、私の評価は星3.5かな。良かったところ。巡回区控訴裁判所での3人の裁判官とルースとのやりとり。その前段として、自宅で模擬裁判を行って練習するところ。法律家がプロとして、お互いにロジックを戦わせるところは新鮮です。イマイチのところ。登場人物のステレオタイプさ。頑固なオヤジ連中と、若くて激しい女性活動家。皆が言いそうなことを言うのであれば、ストーリーが読めてしまいます。ニコニコしながら隙のないロジックを展開する、そういうギャップのほうが視聴者をひきつけるのでは?知らんけど。でもほとんどのアマゾン視聴者が絶賛しているので、観る価値はあると思います。自分の気分をリセットしたいときにどうぞ。ちなみに私自身は映画を観た夜はよく眠れ、次の日は元気になっていました。イチャモンをつけつつ感動していたのかも。復活したところで最後に1句映画見て バーチャルトリップ 効果あり

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NYのCOVID-19入院患者、高血圧57%、糖尿病34%/JAMA

 米国ニューヨーク州の12病院に入院した、新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019、COVID-19)患者5,700例について症例研究(case series)を行ったところ、年齢中央値は63歳、約57%が高血圧症を、また約34%が糖尿病を有していたことなどが明らかにされた。米国・Northwell HealthのSafiya Richardson氏らが報告した。試験期間中(2020年3月1日~4月4日)に退院・死亡した患者は、約半数近くの2,634例で、うち死亡は21%だった。また、侵襲的機械的人工換気を要した患者は320例で、その死亡率は88.1%だったという。米国におけるCOVID-19入院患者の特徴とアウトカムの情報は限定的であったが、著者は、「今回の症例研究により、ニューヨーク市周辺におけるCOVID-19入院患者の特徴と早期アウトカムが明らかになった」と述べている。JAMA誌オンライン版2020年4月22日号掲載の報告。3月1日~4月4日の入院患者の臨床アウトカムや併存疾患を調査 研究グループは、ニューヨーク市、ロングアイランド、ウェストチェスター郡のNorthwell Healthが運営する12病院で、2020年3月1日~4月4日に入院したCOVID-19の連続症例5,700例について症例研究を行った。被験者は、鼻咽頭検体によるPCR検査でSARS-CoV-2の感染が確認されていた。 入院中の臨床アウトカム(侵襲的機械的人工換気、腎代替療法、死亡など)、患者の人口統計学的情報、ベースラインでの併存疾患、バイタルサイン、検査結果なども収集して評価した。女性患者は39.7%、トリアージ時の発熱患者は30.7% 被験者5,700例の年齢中央値は63歳(四分位範囲[IQR]:52~75、範囲:0~107)で、女性は39.7%だった。最も多くみられた併存疾患は、高血圧症(56.6%、3,026例)、肥満(41.7%、1,737例)、糖尿病(33.8%、1,808例)だった。トリアージ時点で発熱が認められた患者は30.7%、呼吸数24回/分超だった患者は17.3%、酸素補充療法を要した患者は27.8%だった。呼吸器ウイルス重複感染率は2.1%だった。 試験期間中に退院または死亡した患者2,634例のうち、ICUでの治療を受けた患者は373例(14.2%)で、年齢中央値は68歳、女性は33.5%だった。侵襲的機械的人工換気を受けたのは320例(12.2%)、腎代替療法を受けたのは81例(3.2%)で、死亡は553例(21%)だった。機械的換気を必要とした患者の死亡率は88.1%だった。 退院後のフォローアップ中央値は4.4日(IQR:2.2~9.3)で、試験期間中の再入院率は2.2%(45例)。再入院までの日数中央値は3日(IQR:1.0~4.5)だった。 フォローアップ最終日時点での入院者は3,066例(年齢中央値65歳[IQR:54~75])で、観察打ち切りまでのフォローアップ期間中央値は4.5日(IQR:2.4~8.1)だった。

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COVID-19に対応する医療者のためのメンタルケアガイドを公開

 日本赤十字社は、感染が拡大する新型コロナウイルスによる感染症に対応する医療者に向けて、心の健康を保つために知っておくべきこと、やるべきことをまとめたガイドを作成し、サイトで公開している。 この「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応する職員のためのサポートガイド」では、冒頭に感染症の影響を「ウイルスによって引き起こされる疾病そのもの」(生物学的感染症)、「見えないこと、治療法が確立されていないことで生じる強い不安や恐れ」(心理的感染症)、「不安や恐怖が生み出す嫌悪・差別・偏見」(社会的感染症)に分類し、とくに医療従事者に関連する心理的感染症と社会的感染症に対するケアが重要とする。 さらに「COVID-19対応者のメンタルヘルスの特殊性」を「避けられない不安」「得られにくい承認」「孤独感や孤立感」「立たない見通し」とし、こうした困難な状況で働く職員がこころの健康を維持するために必要な4要素として「職務遂行基盤(スキル、知識、安全)」「個人のセルフケア」「家族や同僚からのサポート」「組織からのサポート」を挙げている。そして、4要素と本人・家族・上司・管理者の立場を掛け合わせたうえで、具体的にすべきことを紹介している。  添付資料として、ストレス度の把握に使う「COVID-19対応者のためのストレスチェックリスト」や、自宅待機や隔離中の一般患者に向けた「感染症流行期にこころの健康を保つために」というハンドブックも用意され、ダウンロード可能となっている。日本赤十字社/新型コロナウイルス感染症対応に従事されている方のこころの健康を維持するために

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COVID-19流行下で不安募らせるがん患者、医師は受け身から能動へ?

 がん患者の自分が感染したら致命的なのではないか、治療を延期しても大丈夫なのか、この発熱は副作用かそれとも感染か―。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染が拡大する中、がん患者の不安は大きくなってしまっている。エビデンスが十分とはいえない中、また医師自身にも感染リスクがある中で、治療においてどのような判断をし、コミュニケーションを図っていけばよいのか。4月21日、「新型コロナ感染症の拡大を受け、がん患者・家族が知りたいこと」(主催:一般社団法人CancerX)と題したオンラインセッションが開催され、腫瘍科や感染症科など各科の専門医らが、患者および患者家族からの質問に答える形で議論を行った。がんの既往があると重症化リスクが高いのか?と聞かれたら 大須賀 覚氏(アラバマ大学バーミンハム校脳神経外科)は、現状のデータだけでは十分とは言えないとしたうえで、「すべてのがん患者さんが同じように重症化リスクが高いとはかぎらない」と説明。英国・NHSによるClinical guideから、とくに脆弱とされる状況を挙げた:• 化学療法を現在受けている• 肺がんで、放射線治療を受けている• 血液または骨髄のがん(白血病、リンパ腫、骨髄腫)に罹患している• がんに対する免疫療法または他の継続的な抗体治療を受けている• その他、免疫系に影響するタンパク質キナーゼ阻害薬やPARP阻害薬などの分子標的療法を受けている• 6ヵ月以内に骨髄移植や幹細胞移植を受けた人、または現在、免疫抑制剤の投与を受けている• 60歳以上の高齢• がん以外の持病がある(心・血管系疾患、糖尿病、高血圧、呼吸器疾患など) 市中に感染が蔓延している状況下では、病院へ行く頻度が高い人はやはり感染リスクが高くなるとして、治療によるベネフィットを考慮したうえで、受診の機会をどうコントロールしていくかが重要になると話した。感染のリスクと治療のベネフィットを、どう考えるか 大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター病院国際感染症センター)は今後の流行の状況について、「いま来ている波が落ち着いたとしても、また次の波に警戒しなければならない」とし、ある程度長い期間、寄せては返しを繰り返すのではないかと話した。先がみえない状況の中で、治療延期の判断、延期期間をどう考えていけばよいのか。 勝俣 範之氏(日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科)は、「がん治療の延期・中止は非常に慎重に行うべき」として、病状が安定していて、半年に一度などのフォローアップの患者さんで、たとえば1ヵ月後に延期する、といったところから始めていると話した。 大須賀氏は、医療資源が確保できず安全な治療自体が行えない場合、いま治療を実施することによって感染リスクが高まると判断される場合は延期・治療法の変更が検討されるとし、治療自体の緊急性や効果といった個別の状況のほか、地域での感染状況などから総合的に判断されるというのが現状の世界での基本的見解だろうと話した。 そして、もし治療の延期や変更を決めた場合には、「なぜ延期/変更されたのかを患者さんが理解しないといけないし、医師は理解できるように説明できないといけない」と上野 直人氏(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター乳腺腫瘍内科)。会場の参加医師からは、貴重な受診機会を効率的なものにするために、平時以上に、患者さんに事前に質問事項をメモして来院するよう伝えるべきではという声も聞かれた。続く緊張と感染への不安で食事がとれなくなっている患者も 秋山 正子氏(認定NPO法人マギーズ東京)は、感染を心配しすぎて過敏になり、食事や水分をまともにとれていないような状況もある、と指摘。電話相談などを受けていると、家にずっと閉じこもる状況下で緊張状態になり、身体をうまく休めることができなくなっている人もいるという。 天野 慎介氏(一般社団法人 全国がん患者連合会)は、「まず自分がストレスを感じていることを認めて受け入れる」ことが重要と話した。そのうえで、日本心理学会によるアウトブレイク下での精神的ストレスを軽減させるための考え方(もしも「距離を保つ」ことを求められたなら:あなた自身の安全のために)について、その一部を紹介した:• 信頼できる情報を獲得する• 日々のルーティンを作り,それを守る• 他者とのヴァーチャルなつながりをもつ• 健康的なライフスタイルを維持するつながらない代表電話、医師ができる積極的アプローチとは がん治療中に発熱した場合、それが化学療法による副作用なのか、あるいは感染の疑いがあるのか、患者自身が判断するのは不可能で、味覚障害や下痢なども、鑑別が難しい。佐々木 治一郎氏(北里大学病院 集学的がん診療センター)は、「がん治療中の患者さんに関しては、発熱などの何らかの症状があった場合、保健所ではなく、まず主治医に連絡してもらうようにしている」と話した。 しかし現在、多くの病院で代表電話は非常につながりにくい状況になっている。会場からは、各病院でもがん相談支援センターの直通電話は比較的かかりやすいといった情報が提供された。佐々木氏は、「自粛して1人あるいは家族だけと自宅にいる患者さんに、何らかの支援を提供できるよう動いていくときなのではないか」とし、医師は普段は受け身で相談を受けているが、今はこちらから電話をするなど、積極的なアプローチが必要なのではないかと話した。正しい情報にアクセスし、適切なサポートにたどり着いてもらうために 「10秒息を止められれば大丈夫」「水を飲めば予防できる」など、驚くようなデマが拡散し、そして思った以上に患者さんたちはそういった情報に翻弄されてしまっていると勝俣氏。信頼できる情報にアクセスできるように、医療者がサポートしていく必要性を呼び掛けた。また秋山氏は、「直接ではなくても、電話やネットなどのツールを活用し、誰かとつながって話すことで、かなり不安が軽減する」とし、電話相談の窓口などを活用してほしいと話した。本セッション中に登壇者や参加者から提供された情報源や相談窓口について、下記に紹介する。■新型コロナウイルスに関する情報臨床腫瘍学会「がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A」チームオンコロジー「新型コロナウイルス(COVID-19)関連リンク集」日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT)「新型コロナウイルス情報リンク集」大須賀 覚先生のnote■相談窓口などマギーズ東京「メールやお電話などのご案内」日本臨床心理士会「新型コロナこころの健康相談電話のご案内」厚生労働省「新型コロナウイルス感染症関連SNS心の相談」

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「外出自粛で太ってしまった」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第31回

■外来NGワード「抵抗力をつけるためにしっかり食べなさい!」(食べ過ぎてしまう)「体重が増えないようにしなさい!」(あいまいな減量指導)「お菓子を食べないようにしなさい!」(あいまいな食事指導)■解説 不要不急の外出自粛が呼び掛けられる中、家にいる時間が長くなり、「普段はそんなに食べないのに、家にいるとついお菓子などに手が伸びてしまう」と言う患者さんがいます。中には、「抵抗力をつけるためには食べたほうがよい」と誤解している人もいるようです。緊急事態宣言を受け、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療と予防に関する栄養学的提言」を出しました。「生体の免疫力は栄養状態によって支えられている」として、栄養評価や低栄養患者の栄養状態改善などの指針が示されています。とくに、高齢者では微量栄養素(各種ビタミンや微量元素)の欠乏を予防することが大切です。最近の知見では、微量栄養素の欠乏が感染症の発症や重症化に関わっているとの報告もあり、食事の量だけでなく内容にも配慮する必要があります。しかし、肥満を伴う糖尿病患者さんは、体重の変動が血糖変動と深く関連しているので、食べ過ぎには注意が必要です。“やめようと思っているのにやめられない”タイプの患者さんには、「刺激統制法(先行刺激を変えることで行動の頻度を調整する方法)」を用いてみましょう。この新型コロナ対策をきっかけに、患者さんの栄養状態に合わせた“作戦”を一緒に立てることができるとよいですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師最近はどうお過ごしですか?患者ずっと家にいるので、体重が増えています…。医師そうですか。体重が増えた原因は何だと思いますか?患者運動できていないせいもありますが、家にいるとついつい食べちゃうんです。医師動いていないからエネルギーは余っているのに、3食きちんと食べて、おやつもついついね…。わかります。(患者の行動パターンを振り返る)患者そうなんですよ。テレビで「抵抗力をつけるために食べなさい」と言っていたので、気にせずに食べていたら、案の定です。何とかしないといけないとは思っているのですが…。医師それなら、いい方法がありますよ!患者えっ、何ですか?(興味津々)医師「余分なものを食べない作戦」を考えればいいんです。患者余分なものを食べない作戦?医師そうです。目の前にあると食べたくなるので、美味しそうなものは隠しておくことです。患者確かに、なければ食べませんものね。でも、隠した場所は覚えていますよね?医師そうなんです。だから、隠し方も大切ですね。「非常用」や「来客用」と貼っておいて、取りにくい場所に置いたりするのも一案ですよ。患者なるほど。隠し方を工夫すればいいんですね。やってみます。(うれしそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「この機会に、余分なものを食べない“作戦”を立ててみませんか?」

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COVID-19、軽症患者の64%が嗅覚・味覚に異常/JAMA

 新型コロナウイルス感染時の症状としては発熱、倦怠感、筋肉痛、呼吸困難などに加え、嗅覚・味覚の異常についても報告されている。これまで、COVID-19感染者の嗅覚と味覚障害の有病率を評価した研究は1件のみ1)で全体の有病率は34%であったが、ほかの症状との関連における発症タイミングに関するデータはなかった。イタリアTreviso Regional Hospital を2020年3月19~22日に受診し、鼻咽頭および咽頭スワブの RT-PCR 検査でSARS-CoV-2陽性と診断され、自宅待機可能な18歳以上の軽症患者202例を対象に嗅覚・味覚障害の発現状況を評価した。JAMA誌オンライン版2020年4月22日号のリサーチレターに報告された。 主な結果は以下のとおり。・202例の年齢中央値(四分位範囲)は56(20~89)歳、女性が52.0%だった。・嗅覚あるいは味覚異常を訴えたのは130例(64.4%:95%CI:57.3~71.0)だった。・Sino-nasal Outcome Test 22(SNOT-22)の中央値は4(四分位範囲:3~5)、最も重症のスコア5も48例(23.8%)いた。・嗅覚あるいは味覚異常を訴えた130例中、鼻閉も訴えたのは45例(34.6%)だった。・嗅覚あるいは味覚異常の発現時期は、初発症状のものが24例(11.9%)、その他症状と同時に発現したものが46例(22.8%)、その他の症状の後に発現したものが54例(26.7%)だった。・嗅覚あるいは味覚異常が唯一の症状だったものは6例(3.0%)だった。・嗅覚あるいは味覚異常があったのは、女性の72.4%(95%CI:62.8~80.7)、男性の55.7%(45.2~65.8)で、女性の頻度が高かった(p=0.02)。

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慢性特発性偽性腸閉塞症〔CIPO:Chronic Idiopathic Intestinal Pseudo-obstruction〕

1 疾患概要■ 定義・疾患概念慢性特発性偽性腸閉塞症(Chronic Idiopathic Intestinal Pseudo-obstruction:CIPO)は腸管の輸送能が障害されることにより、機械的な閉塞機転がないにもかかわらず腹部膨満、腹痛、嘔吐などの消化管閉塞症状を引き起こす消化管運動異常疾患1)。■ 疫学わが国では約1,300人(推定)、平均年齢58歳、男女比1:1.4、症状発現から診断確定まで平均2年もかかる2,3)。■ 病因と病態病因は依然不明であるが家族内発症が報告されており、何らかの遺伝的要因が関与すると考えられている。本疾患は原因不明の腸管運動の低下・廃絶により、腸管内容の輸送能が低下して腹部膨満、嘔気・腹痛などの消化管閉塞症状、画像で鏡面像を特徴とする腸管拡張像を呈し、小腸の消化吸収機能の低下による栄養障害を呈していくものと考えられている(図1)。図1 CIPO臨床症状と病態画像を拡大する■ 分類病理学的検索により以下の分類が用いられている1)筋性Myopathy(非家族性先天性,非家族性後天性,家族性遺伝性)2)神経性Neuropathy(非家族性先天性、非家族性後天性、家族性遺伝性)3)間葉系細胞の異常Mesenchymopathy(カハールの介在細胞の異常、炎症性など)かつては障害消化管が大腸にのみ限局する大腸限局型偽性腸閉塞症(Chronic Colonic Pseudo-obstruction)が提唱されていたが、現在は巨大結腸症の範疇に入ると考えられている。■ 予後特発性は著しいQOLの低下を認めるが生命予後は悪くない。しかし、極端な体重減少では死亡することがあるので体重減少には注意が必要である(40kg以下になったら注意が必要で、入院により積極的栄養療法を行う)。続発性の予後は原疾患いよることが多く予後不良である。2 診断2,5)  (検査・鑑別診断も含む)【診断基準】(厚労省研究班診断基準)以下の7項目をすべて満たすもの(1)腹部膨満、嘔気・嘔吐、腹痛などの入院を要するような重篤な腸閉塞症状を長期に持続的または反復的に認める(2)新生児期発症では2ヵ月以上、乳児期以降の発症では6ヵ月以上の病悩期間を有する(3)画像診断では消化管の拡張と鏡面像を呈する*1)(4)消化管を閉塞する器質的な病変を認めない(5)腸管全層生検のHE染色で神経叢に形態異常を認めない(6)小児ではMegacystis microcolon intestinal hypoperistalsis syndrome(MMIHS)とSegmental Dilatation of intestineを除外する(7)続発性Chronic Intestinal Pseudo-Obstruction(CIPO)を除外する*2)*1)新生児期には,立位での腹部単純X線写真による鏡面像は,必ずしも必要としない。*2)除外すべき続発性CIPOを別表1に示す。別表1 続発性CIPO画像を拡大する〔重症度分類〕腹痛、腹部膨満、嘔気・嘔吐などの腸閉塞症状により、日常生活が著しく障害されており、かつ以下の3項目のうち、少なくとも1項目以上を満たすものを、重症例とする。(1)経静脈栄養を必要とする(2)経管栄養管理を必要とする(3)継続的な消化管減圧を必要とする*1)*1)消化管減圧とは、腸瘻、胃瘻、経鼻胃管、イレウス管、経肛門管などによる腸内容のドレナージをさす小腸運動異常の診断には小腸シネMRIが非常に有効である4)。3 治療 (治験中・研究中のものも含む) 治療は大きく分けて「栄養療法」と「消化管減圧療法」が行われる(図2)。別表1 続発性CIPO画像を拡大する■ 栄養療法腹部症状による食事量の減少、腸管の消化吸収能の低下による栄養障害の是正が治療では重要となる。まずは1回に食べる食事の量を極力減らした低残差食を1日多数回に分けて腸管の負担を減らすことからはじめ、体重減少などの程度に応じて成分栄養を用いた経管栄養や中心静脈療法が行われる。長期の在宅中心静脈療法になることがある。■ 腸管減圧療法腸管内圧亢進による直管壁の菲薄化とそれによる消化吸収能力の廃絶の進展防止のために早期から腸管減圧を積極的に行う。腹部膨満に対して非吸収性抗菌薬の投与を一定期間に限定して行う。減圧のタイミングを逸すると絞扼性イレウスを起こし、絶対的手術適応になることがある。減圧は急性期にはイレウス管や胃管を用いることが行われる。長期的にはこれまで小腸瘻が増設されたが、増設場所によっては1日3Lを超える排液がありその水電解質管理に難渋する。最近は早期から胃瘻経由の減圧チューブ(Jejunum tube)であるPEG-Jを入れて減圧ポイントをチューブ先端位置の変更できる侵襲性が低い内視鏡治療が行われる(チューブ長は60cmから120cmまで各種発売されている)。PEG-Jの登場で本疾患の入院期間が劇的に短縮され、腸管減圧による腹部症状の改善に加え、栄養状態の改善、社会復帰の促進がはかれるようになった6)。(図3)図3 3DCTによるPEG-J治療前後の比較画像を拡大する4 今後の展望厚生労働省研究班の研究および啓発で不要な外科手術例が減るようになってきた。今後は、いかに早く診断し、早期の減圧療法の介入が疾患による栄養障害やQOLの低下を阻止できるかが重要なポイントと思われる。わが国ではシネMRIで非侵襲的な診断ができるメリットを生かすべきであろう。小腸内細菌異常増殖(SIBO)に関しては、非吸収性の抗菌薬は保険適用がなかったが現在国内で治験中であり、保険適用で認められれば使うべき患者にタイムリーに使えるようになると期待される。本疾患の原因は以前不詳であるので、原因遺伝子の同定が原因療法のためには喫緊の課題であろう。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)慢性偽性腸閉塞症のインフォメーションサイト難病情報センター1)Stanghellini V, et al. Neurogastroenterol Motil. 2007;19:440-452.2)中島 淳. 慢性偽性腸閉塞症の診療ガイドChronicIntestinalPseudo-obstruction(CIPO) 平成23年厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 慢性特発性偽性腸閉塞症の我が国における疫学・診断・治療の実態調査研究班編 第1版.2012.3)Iida H,et al. J Epidemiol. 2013;23:288-294.4)Ohkubo H,et al. Am J Gastroenterol. 2013;108:1130-1139.5)田口智章. ヒルシュスプルング病類縁疾患診療ガイドライン・実用版:平成26年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業))「小児期からの希少難治性消化管疾患の移行期を包含するガイドラインの確立に関する研究」.2017.6)Ohkubo H,et al. Neurogastroenterol Motil. 2017;29.doi:10.1111/nmo.13127.公開履歴初回2020年04月14日

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第6回 ARDS合併COVID-19患者、間葉系幹細胞治療で8割が生存

JCRファーマ社の急性移植片対宿主病(急性GvHD)治療薬・テムセルHS注の技術を提供したオーストラリア拠点のMesoblast社が開発している間葉系幹細胞(MSC)治療薬remestemcel-Lが、米国・ニューヨーク市の緊急事態を斟酌して新型コロナウイルス感染(COVID-19)患者に使用され、有望なことに急性呼吸窮迫症候群(ARDS)合併患者12例中10例(83%)が生存し続けました1)。肺に水が溜まって重度の酸素欠乏をもたらすARDSに陥ると人工呼吸器が必要ですが、12例中9例(75%)はおよそ10日(中央値)ほどで人工呼吸器を無事外すことができました。4月初め、米国FDAはCOVID-19によるARDS患者へのremestemcel-Lの試験実施や試験に参加できない患者に同剤を広く使うことを許可しています2)。その認可を受け、Mesoblast社はニューヨーク市での治療成績を参考にして準備を進め、中等~重度ARDSを患う人工呼吸器使用COVID-19患者を対象にしたプラセボ対照第II/III相試験を早速始めています3)。免疫調節作用があると考えられている多能性細胞・間葉系幹細胞(MSC)のCOVID-19患者への投与は中国でも試みられており、3月中旬にAging and Disease誌に掲載されたプラセボ対照試験では、重度COVID-19患者7例全員がMSC投与で回復したと報告されています4,5)。一方、プラセボ群の3例のうち1例は安定状態を維持したものの1例は死亡し、1例は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に陥りました。ただし、悪化したそれら2例はMSC投与群の最高齢の患者よりおよそ10歳歳上でした。年齢とCOVID-19患者の死亡率はおそらく密接に関連することが知られており、年齢差が結果に影響したとするアイルランド大学Daniel O’Toole氏の指摘を、科学ニュースThe Scientistは紹介しています6)。65歳の重症COVID-19女性患者1例に臍帯MSCを投与した症例報告もあります7)。査読前論文登録サイトChinaXivに2月末に掲載されたその報告によると、女性の状態は改善しましたが、女性の臨床検査値の多くはMSC開始前に改善していて説得力に欠ける、とアラバマ大学のサイトカインストーム(cytokine storm)研究家のRandy Cron氏は言っています。ニューヨーク市でMesoblast社開発品が使われた患者数は以前のそれらの報告に比べて多く、有望そうですが、治療効果の確立には何はともあれ無作為化試験が必要です。Mesoblast社もそれは十分承知のようで、先月末に早速始まったプラセボ対照無作為化試験でremestemcel-LがARDS合併COVID-19患者の生存を延長するかどうかの白黒をきっちりつける(rigorously confirm)つもりです1)。試験は米国立衛生研究所(NIH)が助成するCardiothoracic Surgical Trials Network(CTSN)と協力して進められ、ARDS合併のCOVID-19患者最大300例が参加します。ARDSの引き金となるサイトカインストームを鎮めることを目指すMSCのCOVID-19試験は20以上もClinicalTrials.govに登録されており、remestemcel-LをはじめとするMSC治療がCOVID-19に有効かどうかはそう時を待たず判明しそうです。また、本連載第1回で紹介した、ARDS合併のCOVID-19患者へのt-PA投与試験は米国で予定通り患者組み入れがスタートしています8)。参考1)83% Survival in COVID-19 Patients with Moderate/Severe Acute Respiratory Distress Syndrome Treated in New York with Mesoblast’s Cell Therapy Remestemcel-L / GlobeNewswire2)FDA CLEARS INVESTIGATIONAL NEW DRUG APPLICATION FOR MESOBLAST TO USE REMESTEMCEL-L IN PATIENTS WITH ACUTE RESPIRATORY DISTRESS SYNDROME CAUSED BY COVID-193)Phase 2/3 Randomized Controlled Trial of Remestemcel-L in 300 Patients With COVID-19 Acute Respiratory Distress Syndrome Begins Enrollment4)Leng Z ,et al. Aging Dis. 2020 Mar 9;11:216-228.5)Can cell therapies halt cytokine storm in severe COVID-19 patients? / Science6)Are Mesenchymal Stem Cells a Promising Treatment for COVID-19? / TheScientist7)Clinical remission of a critically ill COVID-19 patient treated by human umbilical cord. ChinaXiv. 2020-02-278)Old Drug, New Treatment? /Harvard Medical School

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COVID-19転帰予測、入院時のDダイマー測定が有用

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の管理を改善するために、臨床転帰の早期かつ効果的な予測因子が求められている。中国・武漢亜洲心臓病医院のLitao Zhang氏らは、COVID-19患者の入院時のDダイマーが2.0μg/mL超(fourfold increase)という指標が院内死亡率の予測に効果的であり、患者管理の改善における早期かつ有用なマーカーとなる可能性を示した。Journal of Thrombosis and Haemostasis誌オンライン版4月19日号掲載の報告。 研究者らはCOVID-19患者の死亡率をDダイマーの上昇で予測できるかどうかを評価するため、2020年1月12日~ 3月15日に武漢亜洲心臓病医院へ入院していた患者の情報を用いて解析を行った。最適なカットオフ値をROC曲線で設定するため入院時のDダイマーと死亡イベントを収集し、カットオフ値から被験者を2グループに分類した。次に、Dダイマーの予測値を評価するため2グループ間の院内死亡率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・研究には334例が登録された。・院内死亡率を予測するDダイマーの最適カットオフ値は2.0μg/mL、感度は92.3%、特異度は83.3%だった。・入院時、Dダイマーが2.0μg/mL以上の患者は67例、2.0μg/mL未満の患者は267例だった。・入院中に13例が死亡し、Dダイマーが2.0μg/mL以上の患者は、2μg/mL未満の患者より死亡率が高かった(12例/67例vs.1例/267例、p

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VICTORIA試験を読み解く(解説:安斉俊久氏)-1223

 第69回米国心臓病学会年次学術集会は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け開催は見送られたが、心不全増悪の既往を有する心不全患者5,050例を対象として、可溶型グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬の効果をプラセボ群と比較したVICTORIA試験の結果は2020年3月28日にWEB上で公開され、同日、New Engl J Med誌に掲載となった1)。結論として、左室駆出率(LVEF)が45%未満の症候性慢性心不全において、ガイドラインに準じた治療にsGC刺激薬であるvericiguat(1日1回、10mgまで増量)を追加投与することで、心血管死ならびに心不全入院からなる複合エンドポイントを10%有意に減少させることが明らかになった(35.5% vs.38.5%、ハザード比[HR]0.90、95%信頼区間[CI]0.82~0.98、p=0.02)。ただし、心血管死単独、心不全入院単独では2群間に有意差を認めなかった。全死亡と心不全入院を合わせた複合エンドポイントは、1次エンドポイントと同様にvericiguat群でプラセボ群に比較し、有意に低率であった(HR:0.90、95%CI:0.83~0.98、p=0.02)。また、同薬剤の治療効果は、併用する心不全治療薬に関係なく、一貫して認められ、治験開始時のN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値が比較的低値の患者集団においてより有効であった。症候性低血圧や失神などの有害事象に有意差は認めず、従来の治療を行いつつも入院加療あるいは心不全増悪を来した症例に対して、良好な予後改善効果をもたらす新規治療薬として着目されるに至った。また、1件の主要アウトカムイベントを予防するために1年間の治療が必要な症例数(NNT:number needed to treat)は約24例であった。 心不全治療薬の中でも、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)であるsacubitril-バルサルタンは、sGC刺激薬と同様に膜結合型グアニル酸シクラーゼ(pGC)の活性化を介して細胞内のcGMPを増加させる薬剤であるが、同薬剤を併用している群においても有効性が示された意義は大きい。LVEFの低下した心不全(HFrEF)における一酸化窒素(NO)の利用能障害の存在は古くからいわれているが2-4)、あらためてNO-sGC-sGMP経路の重要性が示唆されたといえる。 心不全におけるNO利用能障害には、酸化ストレスなどによる血管内皮機能障害が関与しており、HFrEFの併存症として頻度の高い冠動脈疾患、高血圧、慢性腎臓病などでも血管内皮機能障害を認めることから5)、結果として血管拡張反応を減弱させ、前・後負荷を増大させることにより心不全を悪化させる要因となる。また、肺高血圧を合併した心不全においては、肺動脈における血管内皮機能障害も生じ6)、心不全の増悪因子になるほか、骨格筋における血管内皮機能障害は運動耐容能低下にも関与する7)。sGC刺激薬によるcGMP増加は、こうした全身における内皮機能障害を代償するとともに、心筋においては虚血の改善と同時に心筋細胞内のcGMP産生を増加させることで、プロテインキナーゼG(PKG)の活性化を介して心筋の拡張能を改善し、左室充満圧の上昇を抑制する可能性も考えられる。 VICTORIA試験では、治験開始時のNT-proBNP値が2,816pg/mlであり、最近行われたARNIを用いたPARADIGM-HF試験やSGLT2阻害薬を用いたDAPA-HF試験9)におけるNT-proBNP値の1,608pg/ml、1,437pg/mlに比べ高値であったが、sGC刺激薬の効果は、NT-proBNP値が低値であった全体の4分の3の患者集団で認められていた。したがって、1次エンドポイントの抑制効果がこれらの試験よりも低かった原因として、より重症の症例がエントリーされていた可能性があり、sGC刺激薬の効果を得るには、NT-proBNP値が著明に上昇し重症心不全に至る前の段階で追加投与すべきと考えられる。VICTORIA試験では、アジア人の登録が全体の22.4%を占めており、10mgに対するアドヒアランスも89%と良好であったことより、いずれ本邦においても入退院を繰り返す心不全症例に対して積極的な使用が推奨されるものと考えられる。引用文献1)Armstrong PW, et al. N Engl J Med. 2020 Mar 28. [Epub ahead of print]2)Kubo SH, et al. Circulation. 1991;84:1589-1596.3)Ramsey MW, et al. Circulation. 1995;92:3212-3219.4)Katz SD, et al. Circulation. 2005;111:310-314.5)Zuchi C, et al. Heart Fail Rev. 2020;25:21-30.6)Elkayam U, et al. J Card Fail. 2002;8:15-20.7)Carbone S, et al. Current Prob Cardiol. 2019:100417.8)McMurray JJV, et al. N Engl J Med. 2014;371:993-1004.9)McMurray JJV, et al. N Engl J Med. 2019;381:1995-2008.

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第40回 コロナ禍を吹っ飛ばせ!腕試し心電図クイズvol.1【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第40回:コロナ禍を吹っ飛ばせ!腕試し心電図クイズvol.1皆さん、いかがお過ごしでしょうか。せっかくのゴールデンウイークだけでなく、医療情勢まで逼迫させる新型コロナウイルスを本当に憎らしく思います。診療の場ではいつも以上に緊張を強いられる毎日かと思いますが、そんな時こそ息抜きで心電図クイズにチャレンジしてみませんか? 2019年も好評を博したこの企画。連載も気づけば40回目に突入し、レクチャーも進み扱える内容も増えました。おもしろくもためになる―そんな問題をDr.ヒロが厳選いたしました。さぁ、チャレンジしてみましょう!症例提示60歳、男性。就寝時の息苦しさ、咳嗽、両下腿の圧痕性浮腫を主訴に来院。うっ血性心不全の診断で入院となった。体温36.6℃、血圧143/104mmHg、脈拍84/分・不整、酸素飽和度95%(室内気)。来院時の心電図を以下に示す(図1)。(図1)来院時の心電図画像を拡大する【問題1】QRS電気軸に関して正しいものを選べ。また、電気軸の推定値はいくらか。1)不定軸2)正常軸3)右軸偏位4)左軸偏位5)高度の軸偏位(北西軸)解答はこちら2)QRS電気軸:+30°(トントン法で算出)解説はこちら電気軸の定性的な判定はQRS波の「向き」に注目します。IとII、そしてaVFのいずれの誘導でも上向きですから、立派な「正常軸」と判定できます。“ドキ心”読者なら、定量的な評価もしたくなるはず(笑)。そういう時には“トントン法”の出番ですね。肢誘導を上から見渡し、IIIでR波(高さ)≒S波(深さ)、つまりここが“トントン・ポイント”だとわかったらあと一息。肢誘導界の円座標を思い浮かべ、III(+120°)に直交し、Iが上向きとなる方角を選べば「+30°」が正解です(ちなみに自動診断では「+27°」となっていました)。参考レクチャー:第8回、第9回【問題2】心電図所見に関して正しいものをすべて選べ。1)心房期外収縮2)心室期外収縮3)高電位(差)4)低電位(差)5)右房拡大6)左房拡大7)完全右脚ブロック8)完全左脚ブロック9)盆状ST低下10)ストレイン型ST-T変化解答はこちら 1)、3)、6)、10)※6)は選択しなくても正解とする。解説はこちらこれはDr.ヒロ推しの系統的判読そのものです。R-R間隔はおおむね整ですが、肢誘導も胸部誘導も5拍目で崩れています。これはタイミング的に「期外収縮」でいいですね。先行P波があり(図2)、QRS波形もそれ以外の洞収縮とほぼ同じですから、シンプルに「心房期外収縮」(PAC)と考えましょう。(図2)II誘導を抜粋画像を拡大する「低電位(差)」は該当しません。「高電位(差)」については、レクチャーで紹介した語呂合わせ“そこのライオン”(Sokolow-Lyon)などを参考にしてもいいですし(S-L index:76mm)、ボク流の“(ブイ)シゴロ密集法”でもバッチリ陽性となるはずです。「心房拡大」に関しては、右房はありません。左房に関しては、V1誘導のP波を見て、後半の陰性成分が幅、深さともに1mm以上あるので、疑っても結構です。ただ、個人的にはII誘導で幅広く“2コブ”のP波でない場合には「左房拡大」とは診断しないことにしています。ST変化に関しては、これぞ“ザ・ストレイン”です。“寝そべった2の字”でイメージするDr.ヒロ's Tips、全国の皆さんに普及するといいなぁ。参考レクチャー:第1回、第38回【問題3】V6誘導のみの拡大波形の一部を示す(図3)。VAT(ventricular activation time)、R(-wave)peak timeとして正しいものを1つ選べ。1)40ms2)70ms3)100ms4)180ms5)1040ms(図3)V6誘導の拡大波形画像を拡大する解答はこちら2)解説はこちら今回の例は「(左室)高電位(差)」と典型的な「ST-T変化」(ストレイン型)があるので、「左室肥大」(LVH)の診断でほぼ間違いないでしょう。肥大した左室興奮の“もたつき”を表現したものが“(delayed) intrinsicoid deflection”でしたが、これよりも“VAT”ないし“R(-wave)peak time”のほうがわかりやすい表現だと思います。これはQRS波の「はじまり」からピーク(頂点)までの時間を測れば良く、「VAT(R[-wave]peak time)≧50ms(0.05秒)」はLVH診断の参考になるのでした。(図3)では、ソフトの都合で“頂上”(ピーク)がうまく確認できませんが、QRS波の「はじまり」が太線上に載っている3拍目に着目し、1mm(40ms)以上は確実でQRS幅が100msですから、選択肢2の「70ms」を選べば正解です(ボクの計測では68msとなりました)。ちなみに、4)はPR時間、5)はR-R間隔の数値です。参考レクチャー:第38回、第39回症例提示284歳、女性。アルツハイマー型認知症。転倒により受傷、右寛骨臼骨折の診断で入院となった。入院時心電図を以下に示す(図4)。(図4)入院時の心電図画像を拡大する【問題4】次の(ア)~(カ)の適切なものを選べ。ただし、(イ)と(ウ)は適切な数字を答えよ。R-R間隔は( ア:整・不整 )で、肢誘導の( イ )拍目と胸部誘導の( ウ )拍目は期外収縮である。期外収縮のQRS波は洞収縮と( エ:同じ、異なる )形状で、先行P波を( オ:認める、認めない )。休止期[回復周期]は( カ:代償性、非代償性 )である。解答はこちら(ア)不整、(イ)4、(ウ)5、(エ)同じ、(オ)認める、(カ)代償性解説はこちら本問は「期外収縮」の理解度を確認するための問題です。見慣れてくると、R-R間隔が整な部分“以外”がむしろpop-outして見えてくるのではないでしょうか? その気で眺めると、肢誘導なら4拍目、胸部誘導は5拍目が「期外収縮」です。「期外収縮」と言えば、“線香とカタチと法被(はっぴ)が大事よね”でしたね。“カタチ”はほかの洞収縮とのQRS波形との比較(相同性)ですし、“法被”部分は幅と(先行)P波です。今回、QRS波は洞収縮に似て幅も正常(narrow)、先行P波はQRS波からかなり近い部分にあるようです。最後に回復周期(休止期)が代償性か否かに関してですが、簡易には期外収縮を挟むR-R間隔、より正確にはP-P間隔を調べ、洞調律のP-P間隔(洞周期)のピッタリ2倍なら代償性で(ニバイニバーイの法則)、それより短ければ非代償性と考えましょう。以下の図5はII誘導だけを抽出し、期外収縮前後のP-P間隔を洞周期(P-P)と比べてみました。(図5)入院時の心電図画像を拡大する期外収縮のP波を「P'(P4)」としますと、次拍までの「P'-P5」(X:休止期)は洞周期(S)よりも長く、連結期「P3-P'」(Y)との和である期外収縮前後のP-P間隔(P3-P5)は洞周期のほぼ2倍となっていることがわかります。(図5)に示したようにキャリパーを登場させましょう。この休止期は「代償性」のようです。参考レクチャー:第21回【問題5】心電図診断として正しいものはどれか。1)心房細動2)心房期外収縮3)(房室)接合部期外収縮4)心室期外収縮5)心室副収縮解答はこちら 3)解説はこちら前問の検討事項を参考にします。1)は論外ですし、QRS波形と洞収縮の類似性から「上室性」と呼ばれる2)か3)の二択になります。P波が先行しているので、あまり深いことを考えなければ「心房期外収縮」(PAC)の2)を選ぶでしょう。ただ、ここは慎重に考えてください。前問の最後に注目すると、“上品な”心室期外収縮(PVC)とは違って、PACは洞結節をリセットするため、休止期は「非代償性」になることが多いのでした。ただ、今回は「代償性」の休止期、レクチャーでは正式には扱いませんでしたが、こういう期外収縮は「(房室)接合部」を起源とする“ premature (AV-)junctional contraction”、略して「PJC/JPC」と呼ばれます。今回はP波が先行していましたが、JPCの場合、P波が「ある」場合もQRS波との位置関係はさまざまで、「手前」「内部(埋もれて見えない)」「後方」の3パターンがあります。常に休止期の代償性に注意を払っておくことも重要ですが、P波が先行していても、(とくにPR(Q)間隔が短めの場合)JPCの可能性を考慮するようにしましょう。5)は特殊な心室期外収縮ですが、ひとまず忘れて良いでしょう。参考レクチャー:第21回、第23回【問題6】心電図(図3)の肢誘導のラダーグラムを描け。解答はこちら図6を参照。解説はこちらついに出ました、ラダーグラムの問題。これも期外収縮をサカナに熱く語りました。前問で「接合部期外収縮」(PJC)であることがわかったので、それを描くだけです。洞収縮での描き方は正式版、簡易版ともにレクチャーしました。JPCは中段の「A-V」エリアから出現し(図6)の★マーク、これはP'(P4)波、そして4拍目のQRS波より先行するはずであり、左方に描きましょう。そこから心房側には逆行してP'波を形成し(ピンク線+赤線)、心室側には順行性に進んでQRS波を作ります(緑線+青線)。これで見事にPJCラダーグラムの完成です!(図6)肢誘導のラダーグラム画像を拡大する参考レクチャー:第22回、第23回、第26回症例提示389歳、男性。COPD以外に複数の心疾患の既往あり。数日前から微熱あり、食事摂取量と会話量が減少していた。呼吸苦に加えて幻覚症状も出現し始めたため家族に連れられ受診。肺炎の診断で入院となった。体温37.3℃、血圧94/42mmHg、脈拍75/分・不整、酸素飽和度は酸素3L/分(鼻カニューレ)吸入により74%から93%に上昇した。入院時心電図を示す(図7)。(図7)入院時の心電図画像を拡大する【問題7】調律診断として正しいものを選べ。また、心拍数はいくらか。1)洞不整脈2)洞頻脈3)心房粗動4)心房細動5)発作性上室性頻拍解答はこちら4)105/分(新・検脈法)解説はこちら調律と言ったら、まず“レーサー・チェック”ですね。R-R間隔の絶対不整、明らかな洞性P波は確認できず、速迫傾向もありますから、「心房細動」(AF)と診断できるでしょう。本例では、“テッパン”のV1誘導も含めて「f(細動)波」が確認しづらい心電図だと思います。心拍数に関しては、Dr.ヒロの独壇場でございます(笑)。連載の初期に登場させた“検脈法”でもいいですが(QRS波19個なので19×6=114/分となる)、両端の“ちぎれた”QRS波を「0.5個」とカウントする“新・検脈法”を用いると自動診断の数値に近づくことが多いです。肢誘導の右端、胸部誘導には両端に“ちぎれQRS波”があるので、8+0.5(肢誘導)+8+0.5✕2(胸部誘導)と数えれば「105/分」と求まるでしょう。ちなみに、隠した自動診断値は「101/分」でした。いずれにしても「頻脈性」あるいは「速い心室応答を伴う」AFと言えますね。参考レクチャー:第3回、第4回、第7回、第29回【問題8】心電図診断として正しいものをすべて選べ。1)不完全右脚ブロック2)完全右脚ブロック3)左脚前枝ブロック4)左脚後枝ブロック5)完全左脚ブロック解答はこちら2)、3)解説はこちらQRS幅はワイド(120ms以上)ですから「心室内伝導障害」として、普通は左右の「脚ブロック」を思い浮かべてください。V1波形はやや非典型ですが、V6の幅広く目立つS波(スラー)に注目すれば「完全右脚ブロック」と診断することができます。さらにもう一つ。右脚ブロックと診断したら、続いてQRS電気軸も必ず見るクセをつけることが大切です。肢誘導でQRS波はI:上向き、aVF(かつII):下向きですから、バリバリの「左軸偏位」です。具体的な数値で言うと“トントン・ポイント”が、「I」と「-aVR」の中間ないし後者寄りになりますから、「-75°」前後と「高度の左軸偏位」です。II・III・aVFで「rS型」、aVLで「qR型」とくれば、そう「左脚前枝ブロック」(LAFB)です。このように右脚に加えて、左脚分枝の一方(大半が前枝)がブロックされたものを「2枝ブロック」(bifascicular block)と呼びます。【参考レクチャー】:第8回、第9回、第32回、第37回【問題9】心電図からは心筋梗塞の既往が疑われるが、傷害部位として正しいものをすべて選べ。1)右室2)心室中隔3)左室下壁4)左室後壁5)左室前壁解答はこちら2)、5)解説はこちら「陳旧性心筋梗塞」は「異常Q波」を“名残り”として部位推定するのが心電図の世界の基本です。「異常Q波」の存在を気づきにくくする「(完全)右脚ブロック」の“魔力”についてはレクチャーで述べましたが、これもそんな一例です。V1~V3では“any Q”で常に異常でしたね。一つお隣に目をやればV4も陰性波からはじまっています。V1~V4を「前壁誘導」と言いますが、V1には前側の「心室中隔」(前壁中隔)の意味を持つので、2)と5)を正解とします。勘の鋭い人は『aVLにもQ波があるじゃん』と思うかもしれませんね。たしかにその通り。前壁中隔梗塞の責任結果はほぼ左前下行枝(LAD)ですが、その分枝である対角枝の灌流域である「高位側壁」をaVLが担当誘導と考えるとそうかもしれません。ただ、「左脚前枝ブロック」の場合には必ずしもそうとは言えず、あえて選択肢から「左室側壁」を除きました。参考レクチャー:第17回、第32回【古都のこと~清水寺の舞台】京都を代表する寺院と言ったら、やっぱりキヨミズさんだなぁ…そう思います。清水寺(東山区)、山号は音羽山。「古都のこと」40回目でようやく“真打ち”を取り上げるのは、そう、今年(2020年)の2月末に約3年にもおよぶ本堂の檜皮屋根葺き替え工事*1が完了したからです。ほぼ1年半ぶり、本堂への入口*2がオープンする早朝6時に“一番乗り”を目指しました。高校の修学旅行で来たはずだったのですが、京都に住み始めた頃、本堂を通り過ぎ、阿弥陀堂*3に隣接する奥の院が「舞台」なのだと誤解していたかつての自分を恥ずかしく思います(笑)。長らく紫がかったこげ茶色のシートに覆われていましたが、今は何も隠すところのない本堂、そして前面に張り出す新緑に浮かぶ「舞台」*4からは京都の街を一望できます。早朝に清水にお参りすることのメリットは、非常に多くの人が溢れる日中とは異なり、静かでそして深い新鮮な空気をたくさん吸うことができる点だと思います。突然に現れ、人々の何気ない日常を奪った新型コロナウイルスという“目に見えぬ敵”は医療現場でも猛威を振るっています。これに打ち勝つためには、“清水の舞台から飛び降りる”くらいの強い決意で日々の診療に臨むことが必要なのだと思います。*1:『平成の大修理』*2:轟門(中門)。重要文化財。*3:「日本最初常行念仏道場」とされる。*4:1633年(寛永10年)に再建された“檜舞台”は崖下の礎石から13mの高さである。音羽山の急峻な崖の上に木材を格子状に組むことでお互いが支え合う「懸造り(かけづくり)」と呼ばれる日本古来の伝統工法で耐震構造を実現している。実は“下からの眺め”もまた絶景な寺である。この「舞台」は、御本尊(千手観音菩薩)に芸能を奉納する場所としての意義がある。

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第6回 COVID-19パンデミックと“テレリハ”?【今さら聞けない心リハ】

第6回 COVID-19パンデミックと“テレリハ”?今回のポイント新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐため、全国の病院では外来の心リハを休止せざるを得ない状況となっている心リハは運動療法だけではなく疾患管理プログラムとしての役割を担っているため、外来の心リハ休止により心疾患の再発悪化の増加が懸念される外来の心リハ休止の悪影響を最小限に抑えるためには、どのような対応が求められるか、外来再開時には何に注意すべきか現在、新型コロナウイルス感染拡大は全世界に及んでおり、その収束の見通しは立っていません。日本では都市部を中心として感染者が急増しており、政府は4月7日に東京など7都府県を対象に緊急事態宣言を発出しました。4月17日には全国都道府県に緊急事態宣言の対象が拡大。それとともに、これまでの宣言の対象であった7都府県に京都を含む6つの道府県を加えた13都道府県については、とくに重点的に感染拡大防止の取り組みを進めていくべき「特定警戒都道府県」と位置付けられました。筆者の勤務する京都大学医学部附属病院(京大病院)でも、新型コロナウイルス感染症対策として外来の心リハを4月9日より中止しています。心リハは心筋梗塞や心不全などの心疾患患者にとってとても大切な治療であることをこれまでの連載で語ってきました。今回は、『緊急事態とは言っても、心疾患患者にとって重要な心リハを中止しても大丈夫?』という疑問を持つ読者の皆様とともに、国内外の心リハの状況と対策について考えてみたいと思います。心リハ学会の指針は?4月20日に日本心臓リハビリテーション学会より、“COVID19 に対する心臓リハビリテーション指針”が公開されました。要点は以下の3つです。1)入院中の心リハは自粛せず、適切に導入・継続する2)外来の心リハは中止し、自宅での在宅リハを推奨する3)運動処方目的の心肺運動負荷試験(CPX)は実施しない補足事項として、入院患者に心リハを行う場合も、手指消毒・マスク装着・密集を避ける(患者間は2mの距離を設ける)などの感染対策を徹底する、感染患者の新規発生がみられない地域では外来の心リハ実施も許容される、と書かれています。ただし、こちらの指針が作成されたのは緊急事態宣言の対象が全国に拡大されるより前の4月13日のことであり、現時点では全国の施設での外来心リハ実施は中止することが妥当と考えられます。ヨーロッパ・アメリカでは?世界保健機構(WHO)の発表によると、4月22日時点の新型コロナウイルスの感染者数は日本では1万1,118例です。一方、ヨーロッパでは118万7,184例、アメリカでは89万3,119例と桁違いに多く、まさに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにあることがわかります。心リハの先進国でもあるヨーロッパ・アメリカですが、COVID-19パンデミックで心リハはどうなっているのでしょうか。ヨーロッパ心臓病学会(ESC)の推奨ヨーロッパ心臓病学会(ESC)は4月8日に‘Recommendations on how to provide cardiac rehabilitation activities during the COVID-19 pandemic’を公開しています。ここでは、COVID-19パンデミックにより各国での心リハの実施に障害が生じていることを述べたうえで、以下、10の推奨が示されています。1)COVID-19パンデミックの状況を定期的に確認する2)COVID-19患者を扱える準備をする3)COVID-19パンデミックが心疾患患者に与える結果について系統的に検討する4)現状で提供できる最大限の心リハを実施する5)患者の要望に対して個別の病状に配慮したうえで応じられるよう準備する6)なんらかの症状がでた際には、必要な医療を後回しにせず適切な支援を受けられるように患者に指導する7)偽情報に惑わされない8)包括的心リハのすべての要素を含む電話での遠隔リハ(telerehabilitation programmes:テレリハプログラム)を実施する9)医療および地域連携による患者の心理サポートを行う10)施設における心リハ再開の準備をする施設の状況によっては、通常通りの心リハ運営が難しくなっている場合もあります。COVID-19患者対応でスタッフが配置転換となり、心リハを完全に閉じている施設もあります。ESCは施設の状況に応じた推奨を示しています。心リハを閉じている施設に対しては、残っているスタッフまたは配置転換となったスタッフ間で連携し、COVID-19が心疾患に与える影響についての情報共有や遠隔リハの開始について検討することが推奨されています。心リハの運営ができている施設には、入院患者と回復期の外来患者は、手指消毒・マスク装着・密集を避けるなどの感染対策を実施したうえで行うこと、ただし回復期または維持期の外来患者については可能であれば対面ではなく、電話やメール、アプリなどを活用した遠隔リハ(患者評価と指導)を行うことが推奨されています。米国のほうはCOVID-19パンデミック下の心リハについてESCほどまとまったものはありませんが、AACVPR(American Association of Cardiovascular and Pulmonary Rehabilitation)が3月13日に公表した‘AACVPR Statement on COVID-19’には、各施設の方針に従って心リハを実施すること、外来の心リハが実施できない患者には有効な在宅運動指導を検討することが書かれています。米国ではCOVID-19パンデミック以前の昨年7月に“在宅心リハについてのステートメント”が公表されています。テレリハ、具体的にどうする?では、テレリハ、“電話やメール、アプリなどを活用した遠隔リハ”は、どのように実践すればいいでしょうか。言うは易し、行うは難し、ですね。患者さんに心リハスタッフが電話して、『運動しましょうね』と言えばそれだけでいいのでしょうか。心疾患患者さんには、運動をするにあたってメディカルチェックが必要です。テレリハであっても、そのプロセスは省けません。さらに、テレリハを行うにあたって、スタッフ間での対応も統一する必要があります。電話での患者情報聴取は何を聞けばよいか、もし患者が症状の悪化を訴えたら、どの程度で受診を促すべきなのか…。当院では、複数のメディカルスタッフが心リハに携わっています。そこで今回、心リハのメディカルスタッフで協働して「テレリハプログラム」を作成し、4月9日より運用を開始しました。(表)京大病院で活用している、テレリハ問診チェックリストPDFで拡大するこれはESCの‘Recommendations on how to provide cardiac rehabilitation activities during the COVID-19 pandemic’の公開を知る前に作成したものでしたが、ESCの推奨8)の“包括的心リハの全ての要素を含む電話でのテレリハプログラム(telerehabilitation programmes)”にほぼ相当する内容になっているようです。心リハを専門にする医療者の考えることは、日本もヨーロッパも同じようなレベルにあるということでしょうか。運動の内容についても、具体的な指導が必要です。「一人で運動してください」と言われても、どうしたらいいのか、患者の立場だったら困りますよね。単に歩けばそれでいいのでしょうか。外出を控えることが一人一人の国民に求められている現状で、どこを歩けばいいのか、街中に住んでいる患者さんには難しい問題です。具体的な運動内容を患者さんに提供するために、当科のホームページに当院の心リハで実施している体操プログラムを公開しました。外来の心リハ患者さんでインターネットアクセスが可能な方には活用していただくようお伝えしています。COVID-19パンデミックは心リハイノベーションをもたらすか?緊急事態宣言により、さまざまな企業・病院で、テレワークなどの新しい働き方が整備されました。大学での会議や授業もWebが導入されるなど、教育にも新しい仕組みが導入されています。これまで、1~2時間の会議のために京都から東京まで出張することが多かった私も、往復の交通に要する時間や費用など、無駄を省けたことにはメリットを感じています。通常の外来でも電話診療が本格的に始まりました。遠方から検査がない日に薬の処方目的に来院されていた患者さんにとっては、かなりメリットが大きいようです。心リハでも、今回を機に遠隔リハ体制が整えば、外来の心リハの一部はテレリハに移行できる可能性があります。しかし、現在のテレリハは医療者の無償奉仕に依存しており、テレリハの普及には診療報酬制度の見直しなども必要そうです。<Dr.小笹の心リハこぼれ話>今回はDr.小笹とともに当科で活躍する、鷲田 幸一氏(京大病院 慢性心不全看護認定看護師)のこぼれ話を紹介します。「テレリハを開始して」私が実際に患者さんにお電話をして感じたのは、「多くの患者さん・ご家族は先の見えない現状に不安を抱いていること」、また外出自粛などにより、身体活動度が減少するだけでなく「social distance(社会的距離)を超えて、social isolation(社会的孤立)に陥っていること」でした。これらは、とくに独居の高齢者には大きな問題のように思います。ESCの推奨9)にあるように、心理面での支援も医療者として非常に重要だと感じています。疾患管理をするための形式的な問診だけではなく、患者さん・ご家族を気遣いながらコミュニケーションを取り、不安を増大させることなく日常の生活(食事・睡眠)を続けているかを確認する。そして、その中で、疾患管理としてのモニタリングや、適切な食事・活動についてのアドバイスを行う必要があるのだと思っています。今後、多くの病院で同様の取り組みが拡がり、自宅で孤立している患者さんの疾患・生活・心理面で支援拡大を願います。

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CMV抗体陰性肝移植のCMV感染症予防、先制治療は有効か/JAMA

 サイトメガロウイルス(CMV)抗体陽性ドナーから肝臓の移植を受けるCMV抗体陰性レシピエントでは、先制治療は抗ウイルス薬予防投与に比べ、1年後のCMV感染症(CMV disease)の予防効果が優れることが、米国・ピッツバーグ大学のNina Singh氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年4月14日号に掲載された。CMV抗体陽性ドナーから肝臓の移植を受ける高リスクのCMV抗体陰性レシピエントにおいては、抗ウイルス薬の予防投与によるCMV予防戦略は、予防投与後の遅発CMV感染症の発生率が高いとされる。代替アプローチとして先制治療(サーベイランス検査で検出された無症候性のCMV血症への抗ウイルス薬治療の開始)が行われているが、これらを直接比較した研究はないという。米国の6施設が参加した無作為化試験 本研究は、CMV感染症の予防において、バルガンシクロビルを用いた先制治療と予防治療の効果を比較する無作為化臨床試験であり、2012年10月~2017年6月の期間に、米国の6つの移植施設で患者登録が行われた(米国国立アレルギー・感染症研究所[NIAID]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、初回の同所性肝移植(死体肝または生体肝)が予定され、ドナーがCMV抗体陽性のCMV抗体陰性レシピエントであった。被験者は、先制治療または抗ウイルス薬予防投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 先制治療群では、高感度リアルタイム血漿CMVポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いて、100日間に週1回のCMV血症の検査を行い、CMV血症が検出された場合にバルガンシクロビル900mgの1日2回経口投与を開始し、1週間間隔での2回の検査が連続で陰性となるまで継続した。一方、予防投与群では、バルガンシクロビル900mgの1日1回経口投与が、100日間行われた。 主要アウトカムは、12ヵ月後のCMV感染症(CMV症候群[CMV血症、臨床所見・検査所見]または標的器官CMV感染症)の発生とした。副次アウトカムには、遅発CMV感染症(移植後100日~12ヵ月に発生)、急性同種移植片拒絶反応(生検で確定)、日和見感染、移植片機能喪失、12ヵ月時の全死因死亡、好中球減少(末梢血好中球絶対数<500/μL)などが含まれた。CMV感染症:9% vs.19%、遅発CMV感染症:6% vs.17% 205例(平均年齢55歳、女性62例[30%])が無作為化の対象となり、全例が試験を完遂した。先制治療群が100例、抗ウイルス薬予防投与群は105例だった。 CMV感染症の発生率は、先制治療群が予防投与群に比べ有意に低かった(9%[9/100例]vs.19%[20/105例]、群間差:10%、95%信頼区間[CI]:0.5~19.6、p=0.04)。また、遅発CMV感染症も先制治療群で有意に少なかった(6%[6/100例]vs.17%[18/105例]、11%、2.4~19.9、p=0.01)。 一方、同種移植片拒絶反応(先制治療群28% vs.予防投与群25%、群間差:3%、95%CI:-9~15)、日和見感染(25% vs.27%、2%、-14~10)、移植片機能喪失(2% vs.2%、<1%、-4~4)、好中球減少(13% vs.10%、3%、-5~12)には、有意な差は認められなかった。 また、全死因死亡にも、両群間に有意な差はなかった(先制治療群15% vs.予防投与群19%、群間差:4%、95%CI:-14~6)。 プロトコールで規定された有害事象は、先制治療群が2例(2%)で発現したが(心膜液貯留1例、腎臓結石1例)、予防投与群ではみられなかった。 著者は、「これらの知見の再現性を確認し、長期アウトカムを評価するための研究が必要である」としている。

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「8週間以上の自粛は耐えられる」約4割/アイスタット

 新型コロナウイルス感染症の拡大について、一般市民の意識の実態を知る目的に、株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀保夫)は、4月20日に2回目の「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」を行った(1回目は3月20日に実施)。 アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員で20~79歳の300人を対象に調査を実施したもの。 同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。●調査概要 形式:WEBアンケート方式 期日:2020年4月20日 対象:セルフ型アンケートツール“freeasy”の登録者300人(20歳以上)■アンケート結果の概要・新型コロナウイルス拡大について、約9割の人が「怖い」と思っている(前回より約22%増加)・新型コロナウイルス予防対策の実施は84.7%で、前回より約26%増加・新型コロナウィルスに感染しない自信はあるかは、「ない」38.0%が「ある」14.3%を上回った・新型コロナウィルスの正しい情報を取得できているは56.3%で、約4割は取得できていない・新型コロナウィルス情報の入手経路は、「TVなどのニュース」が89.7%で最も多い結果・新型コロナウィルスの拡大は、収入面に不安を与えているが57%(前回より約14%増加)・予防対策の1位は「手洗い」、2位は「マスク着用」、3位は「不要な外出を控える」(前回より20%以上増加した予防対策は3密に関する内容)・この状態にどの程度耐えられるかは、「あと8週間以上」が33.7%で最多■アンケート結果の詳細  質問1の「新型コロナウイルス拡大について、どう思いますか」では、「怖い」(92.0%)、「それ以外」(8.0%)の回答結果であり、前回よりも約22%も「怖い」が増加した。 質問2の「新型コロナウイルス予防対策を実施してますか」では、「実施している」(84.7%)、「どちらでもない」(8.3%)、「実施していない」(7.0%)の回答結果だった。前回よりも「実施している」が約26%増加したが、20・30代の約25%が「どちらでもない/実施していない」と回答するなど予防への意識の低さがうかがわれた。 質問3の「新型コロナウイルス感染症予防策として行っていることはなんですか(複数回答)」では、「手洗い」(91.3%)、「マスク着用」(76.7%)、「不要な外出を控える」(69.7%)、「人混みを避ける・時差通勤」、「集会・イベントなどに参加しない」、「うがい」などの順で多かった。とくに「不要な外出を控える」に関しては、70・80代の7割以上が控えている一方で、60代以下では約6割台と自粛浸透の低さが目立った。 質問4の「新型コロナウイルス感染症に感染しない自信はありますか」では、「自信がある」(14.3%)、「どちらでもない」(47.0%)、「自信がない」(38.0%)の回答だった。また、わずかながら「すでに陽性と診断」が0.7%存在していた。 質問5の「新型コロナウイルス感染症の正しい情報を取得できているか」では、「取得できている」(56.3%)、「どちらともいえない」(36.0%)、「取得できていない」(7.7%)だった。とくに40・50代で情報の取得がうまくできていない結果だった。 質問6の「新型コロナウイルス感染症の情報をどのような経路で入手していますか(複数回答)」では、「TVなどのニュース」(89.7%)、「ネットのニュース」(57.3%)、「TVなどのワイドショー」(48.7%)の順で多く、かかりつけのクリニックなどの医療者からは3.0%、保健所からは2.0%と医療機関からの情報取得は前回同様に少なかった。 質問7の「新型コロナウイルス感染症の拡大は、あなた自身の収入面に不安を与えていますか」では、「不安である」(57.0%)、「どちらとも言えない」(26.0%)、「不安でない」(17.0%)の回答で、半数近くは不安を抱えているという回答だった。前回と比較して「不安である」の回答が約14%増加した。 質問8の「あなたは、あとどの程度、この状態に耐えられることができますか」では、「もう限界」(8.7%)、「あと1週間」(6.7%)、「あと2~3週間」(27.3%)、「あと4~5週間」(18.7%)、「あと6~7週間」(5.0%)、「あと8週間以上」(33.7%)という回答だった。「あと8週間以上」という回答が1番多く、長期的な自粛への対応ができていることをうかがわせた。

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RA系阻害薬、COVID-19の重症度に関連みられず/JAMA Cardiol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院中、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を服用している高血圧患者が、COVID-19の重症度や死亡リスクを上昇したかどうかを中国・武漢市の華中科技大学のJuyi Li氏らが検討した。その結果、これらのRA系阻害薬の服用はCOVID-19の重症度や死亡率と関連しないことが示唆された。JAMA Cardiology誌オンライン版2020年4月23日号に掲載。 本研究では、2020年1月15日~3月15日に武漢中央病院に入院したCOVID-19患者1,178例を後ろ向きに調査した。COVID-19はRT-PCR検査で確認し、すべての患者の疫学、臨床、放射線、検査、薬物療法のデータを分析した。ACEI/ARBを服用している高血圧患者の割合を、COVID-19重症者と非重症者、および生存者と死亡者の間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・1,178例の平均年齢は55.5歳(四分位範囲:38~67歳)で、男性が545例(46.3%)だった。・入院中の全死亡率は11.0%だった。・高血圧患者は362例(30.7%)、平均年歳は66.0歳(四分位範囲:59~73歳)、男性が189例(52.2%)で、115例(31.8%)がACEI/ARBを服用していた。・高血圧患者の入院中の死亡率は 21.3%だった。・ACEI/ARBを服用していた高血圧患者の割合は、COVID-19重症者と非重症者の間で差はなく(32.9% vs.30.7%、p=0.65)、死亡者と生存者の間でも差はなかった(27.3% vs.33.0%、p=0.34)。・ACEI服用患者とARB服用患者のデータの分析でも同様の結果が観察された。

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新型コロナウイルスあれこれ(7)【Dr. 中島の 新・徒然草】(321)

三百二十一の段 新型コロナウイルスあれこれ(7)読者の皆様、いかがお過ごしでしょうか?パンデミックであっても在宅勤務のできない我々医療従事者は、いつも通りの出勤ですね。私は、患者数、手術件数、会議、何もかも減ったので自分の時間が増えました。でも、物事が手につかないというか落ち着かないというか。経験のない疲れ方を毎日感じています。海外では、睡眠中に変な夢を見る人が増えたというニュースがありました。ツイッターでも#lockdowndreamというハシュタグで、人々が自分の見た夢を語り合っています。皆さん、色々な形でストレスを抱えているのでしょう。さて、4月9日に紹介したYouTubeの動画「ほんまに聞いてほしい マジでコロナを舐めたらアカン」のその後がアップされました。今度は「みなさんおはようございます」というタイトルです。ニューヨークのハーレムに住む日本人女性、ちずさんは、皆で協力しながら何とか生きているとのこと。でも、エクアドル出身ニューヨーク在住のマリアからは、親戚や友達合わせて17人が新型コロナで亡くなったと聞かされたそうです。人にもよるのでしょうが、やはり彼の地では大変な状況が続いています。最近のニュースとしては、パチンコ店関連のものが目を引きました。休業要請に応じない店舗の名前を大阪府が公表したところ、かえってそれらの店に客が殺到したという話。確かに、私の患者さんの中にもパチンコ依存やゲーム中毒の人がおられるので、なるほどと思います。ただ、ゲーム中毒の患者さんは部屋に引きこもっているので、コロナに関しては人畜無害。でもパチンコは、典型的な3密状態なので、コロナの流行に拍車をかける可能性があります。パチンコ騒ぎが今後どうなっていくのか、成り行きを見守りましょう。ということで最後に1句夜寝たら コロナが悪夢を 連れてくる

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第5回 コロナ対応で見えてきた政治家の実力

新型コロナウイルスへの対応が、政治家の実力や真価を浮き彫りにしている。北海道の鈴木 直道知事(39歳)や大阪府の吉村 洋文知事(44歳)、千葉市の熊谷 俊人市長(42歳)ら若手首長の行動力や情報発信力は際立っている。一方、ベテラン首長の行動力や知恵のなさ、国会議員に至っては金銭欲と自己顕示欲が露呈した。混沌としている状況下、今こそ政治力が必要なのに、若手首長のリーダーシップに頼らざるを得ないのが日本の現状だ。国会議員は、給与に当たる歳費を5月から1年間、2割削減されることになった。“年収”に相当する約1,552万円が、削減後は約1,240万円となるが、市民感覚からすれば十分高給だ。その上、領収書不要で「第2の給与」と呼ばれる文書通信交通滞在費約1,200万円、期末手当約640万円、立法事務費約780万円を合わせると、年トータルの支給額は約3,860万円となる。歳費の2割削減など痛くも痒くもないだろう。普段、安倍政権を批判することで存在感を発揮している野党から、文書通信交通滞在費返上の声でも聞きたいものだ。自治体に目を向けると、東京・神奈川・埼玉が事業者に休業を要請する中、千葉県は一貫して慎重な姿勢を示していたが、都内から茨城県のパチンコ店などに人が移動する状況が指摘されると、森田 健作知事(70歳)は、遅まきながら休業要請に一転。幕張メッセ(千葉市)を中等症の患者1,000人を受け入れる臨時医療施設として整備することを決めたのも、自民党県連の申し入れに押されてのことだった。また、新型コロナに感染、軽症ということで自宅待機していた男性2人が死亡した埼玉県では、大野 元裕知事(56歳)が「病床不足のため自宅待機もやむを得なかった」と釈明、今後は、軽症者・無症状者については原則ホテルでの療養に切り替える方針を明らかにした。埼玉県は長年、医師不足に悩んでいる。10万人当たりの医師数が全国で最も少ない中で、新型コロナに対する効率的な医療対応をするための策が必要だ。県はさいたまスーパーアリーナの施設管理者で運営会社の筆頭株主として、幕張メッセのように同アリーナを臨時医療施設として活用することを検討してはどうか。スーパーや商店街の「3密」状態が問題化している東京都では、小池 百合子知事(67歳)は混雑緩和策として当初、「名前のイニシャルや生まれ月などで時間帯を分ける」など非現実的な案を検討していた。例えばロンドンのスーパーのように、1人が出たら1人を入れる入店制限をしたり、店内各所に2m間隔のラインを引いて、客にソーシャルディスタンスを意識してもらったり、植木鉢を置くなどして脇道を塞ぎ店内を一方通行にして客同士の接触を防いだりするなど、具体的な行動を店と都民に要請したほうが実効性を持つのではないか。休業要請にもかかわらず、パチンコ店の営業続行が話題になっている。見せしめ的に店名公表をするのではなく、理由を聞き取りするなど対話の機会をつくったり、休業の見返りに駐車場に検査テントを設置させてもらい、利用料を払ったりするなどメリットを与えてはどうだろう。ただただ「3密を守れ」「外出自粛」「休業しろ」と指示するだけでは、人は簡単に行動変容できない。自治体の首長は、せめて防災行政無線放送などで住民や事業者のこれまでの努力を慰労してみてはどうか。リーダーシップをとっている若手首長は、市民目線でのコミュニケーションが上手だ。また、増産しても不足しているマスクは、薬局やドラッグストアにはほとんどなく、なぜか宝石店やCDショップ、洋服店など、普段はマスクなど扱うことがないような店先に並んでいる。本当に必要としている医療現場では、マスクをはじめあらゆる衛生資材が払底し、使いまわしや代替品を余儀なくされている状況下であるのに、政治家は何をしているのか。このいびつな状況に対して直ちに手を打つべきだ。それができないなら、無駄にマスクを消費せず、口を噤んでstay homeでよろしい。

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始まった感染症予防連携プロジェクト/日本感染症学会・日本環境感染学会

 新型コロナウイルス感染症の流行により、麻疹や風疹の被害が置き去りにされている中で、日本感染症学会(理事長:舘田 一博氏)と日本環境感染学会(理事長:吉田 正樹氏)は、国際的な同一目的で集合した多人数の集団(マスギャザリング)に向けて注意すべき感染症について理解を広げるWEBサイト「FUSEGU ふせぐ2020」をオープンした。 これは感染症対策に取り組む医学会、企業・団体が連携し、マスギャザリングでリスクが高まる感染症の理解向上と、必要な予防手段の普及を目標に感染症予防連携プロジェクトとして推進しているものである。 同サイトでは、マスギャザリングと感染症をテーマに、「学ぶ」「触れる」「防ぐ」の3 つの視点から情報をまとめている。理解を深めたい感染症として、第1弾は「麻疹」「風疹」「侵襲性髄膜炎菌感染症」を取り上げ、感染経路や予防手段などを紹介している。 具体的には「学ぶ」では対象感染症の症状や特徴、感染拡大の歴史などを紹介し、「触れる」ではアンケート調査、感染症カレッジ、市民公開講座などの情報発信を予定している。「防ぐ」では手指衛生、マスク、ワクチンなどの予防方法が記載されている。とくにワクチンでは、“what(ワクチンの目的)、who(接種すべき人)、when(いつ接種するか)、where(接種できる場所)”と分類されイラストとともにわかりやすく説明されている。 今後は市民を対象とした意識調査やイベントなど、感染症予防啓発のため実施するプログラムの詳細についても順次公開予定としている。

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医師500人の本音、新型コロナのリスク対価はいくらが妥当?

 先日、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の重症化や、ほかの患者及び医療従事者への感染拡大を防ぐための管理評価を診療報酬に盛り込み、医療者の処遇改善に切り込んだ。しかし、直接的な処遇改善ではないため、現時点で医療者の士気向上や離職食い止め策には至っていない。 そんな中、大阪府や埼玉県などでは新型コロナ業務に従事した医療従事者には1日あたり4,000円の手当支給を検討している。また、勤務医の労働組合である全国医師ユニオンは、2020年4月16日、医師及び医療従事者の命と健康を守る支援を徹底すること求め、厚生労働省に対しCOVID-19への対応に関する要望書を提出。これにはCOVID-19患者に対応する医師への危険手当の支払いに関する内容が盛り込まれている。 しかし、現金給付である手当については医療者の中でも賛否両論があり、手当支給よりも防護服などの医療材料の調達に国や自治体予算を活用して欲しいという声もある。そこで、ケアネットでは医師の本音を探るべく、新型コロナ対応における現金給付の必要性とその理由について、会員医師約500名にアンケートを実施した。その結果、約9割の医師が現金給付を希望していることが明らかになった。また、1ヵ月あたりの支給希望額についても回答を得た。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。 新型コロナの「危険手当」、医師の本音は?/緊急アンケート

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