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日本人における砂糖と大腸がんリスクの関連は?

 日本の中年成人における砂糖摂取量と大腸がんリスクとの関連を大規模コホート研究のJPHC研究で検討した結果、明らかな関連はみられないものの、総摂取量が多い女性で直腸がんリスクが増加する可能性が否定できなかった。国立がん研究センターの金原 理恵子氏らの報告がCancer Science誌オンライン版2023年2月27日号に掲載された。 砂糖の摂取量が大腸がんリスクに及ぼす影響は定まっていない。アジア人が摂取する砂糖の原料は欧米人とは異なり、アジア人集団における砂糖の総摂取量および特定の種類の摂取量における前向きコホート研究はほとんどない。本研究では、1995~99年に質問票に回答した45~74歳の参加者(男性4万2,405人、女性4万8,600人)を対象に、2013年12月まで追跡調査を行った。147項目の食物摂取頻度調査票を用いて砂糖の総摂取量、果糖の総摂取量、特定の種類の糖類摂取量を推定し、五分位(Q1~Q5)に分けた。潜在的交絡因子で補正したCox比例ハザード回帰モデルを用いて、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、9万1,005人中2,118人(男性1,226人、女性892人)に大腸がんが確認された。・すべてのタイプの砂糖の摂取量と大腸がんリスク増加との間に明確な関連はみられなかった。・腫瘍の部位別に解析したところ、女性では砂糖の総摂取量と直腸がんとの間に正の相関が認められたが(Q5に対するQ1のHR:1.75、95%CI:1.07~2.87、線形傾向のp=0.03)、男性では有意な傾向は認められなかった。

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英語で「因果関係があるとは言えない」は?【1分★医療英語】第70回

第70回 英語で「因果関係があるとは言えない」は?More patients got better blood pressures with this drug in the new study.(この新しい研究によると、この薬剤で、より多くの患者さんの血圧が改善すると示されています)Well, correlation is not causation. This result might have been confounded by other factors.(薬剤による相関関係が示されても、因果関係があるとはいえないね。その研究では交絡因子があるかもしれないから)《例文1》A significant correlation does not mean significant causation.(有意な相関関係があることは、有意な因果関係があることを意味しない)《例文2》I know there is correlation between A and B, but causation is not established yet.(AとBとの間には相関があることは知っているけれど、因果関係はまだ確立されていない)《解説》“correlation is not causation”は、よく引用される有名なフレーズです。“correlation”(コリレーション)は「相関関係」を意味します。同じ意味で使われる、“association”の方が医学文献などでは、より一般的かもしれませんが、このフレーズでは語呂を合わせるために、“correlation”を使います。一方で“causation”(コーゼイション)は「因果関係」を意味し、「原因」という意味でよく目にする“cause”に関連する名詞です。専門家同士での議論で頻用される表現ですが、コロナ禍で臨床試験の結果が広く議論される機会が増えたので、一般人向けのニュースでも耳にするようになりました。このフレーズとセットで、“confound”(交絡する)、“confounder”(交絡因子)という単語も覚えておくと便利です。講師紹介

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第153回 安価な心疾患薬がプラセボ対照試験で糖尿病に有効

わが国では1965年に承認されて心血管疾患治療薬として世界で普及している安価なCaチャネル遮断薬ベラパミルの服用でインスリン生成細胞の損失を遅らせうることが成人患者の試験に続いて小児患者の試験でも示されました1,2,3,4)。インスリン生成を担うβ細胞に特有の経路のいくつかと1型糖尿病(T1D)の関連が最近明らかになりつつあります。チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)が絡む経路がその1つで、TXNIPは活性酸素を除去する酸化還元タンパク質であるチオレドキシンに結合してその働きを阻害し、酸化ストレスを助長します。糖に応じて発現するTXNIPはどうやらインスリンを作る膵臓β細胞には好ましくないようで、糖尿病のマウスのβ細胞ではその発現が増え、過剰発現させるとβ細胞が死ぬことが確認されています。であるならその抑制はβ細胞にとって好ましいと容易に予想され、TXNIPを省くとやはりβ細胞がより生き残り、マウスの糖尿病を予防することができました。ベラパミルはTXNIPのβ細胞での発現を抑制します。その効果は同剤のよく知られた作用であるL型Caチャネルの阻害とそれに伴う細胞内Caの減少によると示唆されています。とするとインスリンを作るβ細胞や心臓などのL型Caチャネルの発現が豊富な組織ではベラパミルのようなTXNIP阻害薬の恩恵が最も期待できそうです。ベラパミルにどうやら糖尿病抑制効果がありそうなことは細胞や動物の実験のみならず臨床データの解析でも早くから観察されています。2006年にAmerican Heart Journal誌に掲載された2つの報告では冠動脈疾患患者の降圧薬治療2種を比較した試験INVESTのデータが解析され、ヒスパニック患者の同剤使用と糖尿病発症リスク低下の関連が認められています5,6)。より最近の2017年の報告ではベラパミル使用患者の2型糖尿病発現リスクが他のCaチャネル阻害薬に比べて低いことが確認されています7)。台湾の4万例超を調べた結果です。その翌年2018年には小規模とはいえ歴としたプラセボ対照二重盲検試験の結果が報告されるに至ります8,9)。試験には1型糖尿病と診断されてから3ヵ月以内の成人24例が参加し、ベラパミル投与に割り振られた11例の1年時点でのインスリン投与量はプラセボ投与群の13例に比べて少なくて済んでいました。また、β細胞機能がどれだけ残っているかを示すCペプチド分泌はベラパミル投与群がプラセボ群を35%上回りました。そして今回、小児患者を募ったプラセボ対照試験でもベラパミルの有益な効果が認められました1)。試験では1型糖尿病と診断されて1ヵ月以内の小児患者88例がベラパミルかプラセボに割り振られ、同剤使用群の1年時点でのCペプチド分泌は成人患者の試験結果と同じようにプラセボ群を30%上回りました。ただし、血糖値の推移を示すHbA1c、血糖値が目安の水準であった期間の割合、インスリン用量に有意差は認められませんでした。今後の課題としてベラパミルの効果の持続の程や最適な投与期間をさらなる試験で調べる必要があると著者は言っています。去年2022年11月に米国FDAは1型糖尿病の進展を遅らせる抗体薬teplizumabを承認しました。少なくとも30分間かけての1日1回の静注を14日間繰り返す同剤の費用は約20万ドル(19万3,900ドル)です3)。Cペプチドへの効果の程はというと、ベラパミルのプラセボ対照試験2つと同様に小規模の被験者58例の無作為化試験のteplizumab投与群のCペプチド分泌は1年時点でプラセボを20%ほど上回りました10)。Cペプチドへの効果がそこそこあって安くて忍容性良好なベラパミルのような経口薬は実用的であり11)、teplizumabのような他の薬剤との併用での活用がやがて実現するかもしれません4)。参考1)Forlenza GP, et al. JAMA. 2023 Feb 24. [Epub ahead of print]2)Verapamil shows beneficial effect on the pancreas in children with newly-diagnosed type 1 diabetes / Eurekalert3)Blood pressure drug helps pancreas function in type 1 diabetes. / Reuters4)Old Drug Verapamil May Have New Use in Type 1 Diabetes / MedScape5)Cooper-DeHoff RM, et al. Am Heart J. 2006;151:1072-1079.6)Cooper-DeHoff R, et al. Am J Cardiol. 2006;98:890-894.7)Yin T, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2017;102:2604-2610.8)Ovalle F, et al. 2018;24:1108-1112.9)Human clinical trial reveals verapamil as an effective type 1 diabetes therapy. / Eurekalert10)Herold KC, et al. Diabetologia. 2014;56:391-400.11)Couper J. JAMA. 2023 Feb 24. [Epub ahead of print]

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生活習慣の改善(8)食事療法5【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q56

生活習慣の改善(8)食事療法5Q56本邦の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版で推奨されている日本食パターン「The Japan Diet」のほかにも、動脈硬化性疾患予防に期待されている食形態がある。一般でも有名なその食形態、2つの名称は?

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第149回 今の日本の医療IoT、東日本大震災のイスラエル軍支援より劣る?(後編)

2月6日に発生したトルコ・シリア大地震のニュースを見て村上氏は東日本大震災時のイスラエル軍の救援活動を思い出します。後編の今回は、現在の日本が顔負けのIoTを駆使したイスラエル軍の具体的な支援内容についてお伝えします。前編はこちら 仮設診療所エリアには内科、小児科、眼科、耳鼻科、泌尿器科、整形外科、産婦人科があり、このほかに冠状動脈疾患管理室(CCU)、薬局、X線撮影室、臨床検査室を併設。臨床検査室では血液や尿の生化学的検査も実施できるという状態だった。ちなみにこうした診察室や検査室などはそれぞれプレハブで運営されていた。一般に私たちが災害時の避難所で見かける仮設診療所は避難所の一室を借用し、医師は1人のケースが多い。例えて言うならば、市中の一般内科クリニックの災害版のような雰囲気だが、それとは明らかに規模が違いすぎた。当時、仮設診療所で働いていたイスラエル人の男性看護師によると、これでも規模としては小さいものらしく、彼が参加した中米・ハイチの地震(2010年1月発生)での救援活動では「全診療科がそろった野外病院を設置し、スタッフは総勢200人ほどだった」と説明してくれた。この仮設診療所での画像診断は単純X線のみ。プレハブで専用の撮影室を設置していたが、完全なフィルムレス化が実行され、医師らはそれぞれの診療科にあるノートPCで患者のX線画像を参照することができた。ビューワーはフリーのDICOMビューアソフト「K-PACS」を使用。検査技師は「フリーウェアの利用でも診療上のセキュリティーもとくに問題はない」と淡々と語っていた。実際、仮設診療所内の診療科で配置医師数が4人と最も多かった内科診療所では「K-PACS」の画面で患者の胸部X線写真を表示して医師が説明してくれた。彼が表示していたのは肺野に黒い影のようなものが映っている画像。この内科医曰く「通常の肺疾患では経験したことのない、何らかの塊のようなものがここに見えますよね。率直に言って、この診療所での処置は難しいと判断し、栗原市の病院に後送しましたよ」と語った。ちなみに東日本大震災では、津波に巻き込まれながらも生還した人の中でヘドロや重油の混じった海水を飲んでしまい、これが原因となった肺炎などが実際に報告されている。内科医が画像を見せてくれた症例は、そうした類のものだった可能性がある。診療所内の薬局を訪問すると、イスラエル人の薬剤師が案内してくれたが、持参した医薬品は約400品目にも上ると最初に説明された。薬剤師曰く「持参した薬剤は錠剤だけで約2,000錠、2ヵ月分の診療を想定しました。抗菌薬は第2世代ペニシリンやセフェム系、ニューキノロン系も含めてほぼ全種類を持ってきたのはもちろんのこと、経口糖尿病治療薬、降圧薬などの慢性疾患治療薬、モルヒネなども有しています」と説明してくれ、「見てみます?」と壁にかけられた黒いスーツカバーのようなものを指さしてくれた。もっとも通常のスーツカバーの3周りくらいは大きいものだ。彼はそれを床に置くなり、慣れた手つきで広げ始めた。すると、内部はちょうど在宅医療を受けている高齢者宅にありそうなお薬カレンダーのようにたくさんのポケットがあり、それぞれに違う経口薬が入っていた。最終的に広げられたカバー様のものは、当初ぶら下げてあった時に目視で見ていた大きさの4倍くらいになった。この薬剤師によると、イスラエル軍衛生部隊では海外派遣を想定し、国外の気候帯や地域ブロックに応じて最適な薬剤をセットしたこのような医薬品バッグのセットが複数種類、常時用意されているという。海外派遣が決まれば、気候×地域性でどのバッグを持っていくかが決まり、さらに派遣期間と現地情報から想定される診療患者数を割り出し、それぞれのバッグを何個用意するかが即時決められる仕組みになっているとのこと。ちなみに同部隊による医療用医薬品の処方は南三陸町医療統轄本部の指示で、活動開始から1週間後には中止されたという。この時、最も多く処方された薬剤を聞いたところ、答えは意外なことにペン型インスリン。この薬剤師から「処方理由は、糖尿病患者が被災で持っていたインスリン製剤を失くしたため」と聞き、合点がいった。ちなみにイスラエルと言えば、世界トップのジェネリックメーカー・テバの本拠地だが、この時に持参した医薬品でのジェネリック採用状況について尋ねると、「インスリンなどの生物製剤、イスラエルではまだ特許が有効な高脂血症治療薬のロスバスタチンなどを除けば、基本的にほとんどがジェネック医薬品ですよ。とくに問題はないですね」とのことだった。この取材で仮設診療所エリア内をウロウロしていた際に、偶然ゴミ集積所を見かけたが、ここもある意味わかりやすい工夫がされていた。感染性廃棄物に関しては、「BIO-HAZARD」と大書されているピンクのビニール袋でほかの廃棄物とは一見して区別がつくようになっていたからだ。大規模な医療部隊を運営しながら、フリーウェアやジェネリック医薬品を使用するなど合理性を追求し、なおかつ患者情報はリアルタイムで電子的に一元管理。ちなみにこれは今から11年前のことだ。2020年時点で日常診療を行う医療機関の電子カルテ導入率が50~60%という日本の状況を考えると、今振り返ってもそのレベルの高さに改めて言葉を失ってしまうほどだ。

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平均血糖値とHbA1c値の乖離の理由が明らかに/京都医療センターほか

 平均血糖値が同じ180mg/dLであってもHbA1c値が7.0%台の人もいれば、9.0%近くの人もいると、A1c-Derived Average Glucose(ADAG)研究で報告されている。これらの平均血糖値とHbA1c値の乖離現象はヘモグロビン糖化に個人差があるのではないかと推察されている。2型糖尿病ではヘモグロビン糖化インデックス(Hemoglobin glycation index:HGI)が高い人は、糖尿病合併症、心血管疾患、死亡リスクが増大すると報告されている。しかし、日本人1型糖尿病での報告はなかった。 そこで、坂根 直樹氏(京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長)らのFGM-Japan研究グループ(9施設)は日本人1型糖尿病を対象に、HGIに及ぼす要因を検討したところ、性別(女性)、HbA1c値、腎機能(eGFR)、血糖変動(%CV)が関連していることが明らかとなった。Journal of Diabetes Investigation誌2023年2月14日号の報告。 1型糖尿病211例の過去90日間の連続血糖測定(CGM)データを用いて、平均血糖や血糖変動指標などを算出した。HGIは「実測されたHbA1cから平均血糖から予測されたHbA1cを引き算」して求められ、高HGI・中HGI・低HGIの3群に分類された。平均血糖値とHbA1c値の乖離の要因を多変量解析した結果 平均血糖値とHbA1c値の乖離の要因を検討した主な結果は以下のとおり。低HGI、中HGI、高HGIの順に、・女性の割合が多くなった(45.1%、58.6%、74.3%、p=0.002)・HbA1c値が高くなった(7.0±0.8%、7.4±0.7%、8.2±0.8%、p=0.029)・Hb値は低くなった(13.9±1.7g/dL、13.7±1.3g/dL、13.2±1.4g/dL、p=0.024)・推定腎機能は低くなった(83.4±21.3、75.6±20.1、75.1±19.4、p=0.029)・血糖変動指標の中でADRR(38.7±9.8、41.4±11.1、43.5±10.9、p=0.031)と%CV(32.6±5.1、34.8±6.7、35.0±5.9、p=0.029)が高くなった しかし、その一方で・年齢、糖尿病歴、BMI、糖尿病合併症、糖尿病治療、食事・運動習慣、生活習慣では3群間に差を認めなかった・平均血糖、GMI、TAR、TIR、TBRでは3群間に差を認めなかった その他・多変量解析の結果、性別(女性)とHbA1c値と独立して、%CVとeGFRがHGIと有意に関連していた(R2=0.44) 共同研究者の三浦 順之助氏(東京女子医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝内科分野)は、本研究について「ヘモグロビン糖化の個人差の一部が解明されたことは、糖尿病診療の上で大きな意義がある。遺伝的要因や炎症などがヘモグロビンの糖化に関係している可能性も考えられ今後も検討が必要である」と述べている。

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HFpEF診療はどうすれば…?(前編)【心不全診療Up to Date】第6回

第6回 HFpEF診療はどうすれば…?(前編)Key Points原因不明の息切れ、実はHFpEFかもしれないですよ!BNP値が上昇していないのにHFpEF?HFpEFの病態生理、今どこまでわかっている? 最新の情報をUpDateはじめに今回は、発症率、有病率ともに上昇の一途をたどっている左室駆出率の保たれた心不全HFpEF (Heart Failure with preserved Ejection Fraction)を取り上げる1,2)。 近年のHFpEFの病態生理の理解、診断アプローチ、効果的な新しい治療法の進歩にもかかわらず、日常診療においてHFpEFはまだ十分に認識されていないのが現状である。『原因不明の息切れ、それはHFpEFかも』をキャッチフレーズに、まずはぜひ疑っていただきたい。そのために、本稿では、HFpEFの病態生理、診断、治療に関する最新情報を皆さまと共有したい。HFpEFの“いまどき”の定義HFpEFとは、呼吸苦や倦怠感、浮腫などの心不全徴候を認め、左室駆出率(EF, Ejection Fraction)が50%以上で、安静時もしくは労作時のうっ血(左房圧上昇)を示唆する客観的証拠※を認めるものと定義される(※:Na利尿ペプチド[NP, Natriuretic Peptide]値上昇、左房機能障害・左房拡大、安静時/労作時の肺動脈楔入圧[PAWP, Pulmonary Artery Wedge Pressure]上昇など)3-5)。つまり、BNP/NT-proBNP値正常範囲内であっても、労作時息切れがあり、何らかのうっ血を示唆する所見があれば、それはHFpEFの早期段階をみている可能性があるということである6)。とくにHFpEFでは、労作時にのみ左房圧が上昇し、肺うっ血を来すという症例が約30%と決してまれではなく、“NP値が正常範囲内のHFpEF”があるということをぜひご理解いただきたい7)。しかも、この“NP値正常のHFpEF”群(息切れあり)は、非HFpEF群(息切れの原因がHFpEFではない集団)と比較して、死亡または心不全入院のリスクが約2.7倍高かったという報告もあり、この表現型(フェノタイプ)の重要性が最近とくに注目されている8)。つまり、『息切れを主訴に来院された患者、実はその原因がHFpEFかも』と考えていただき、必要あれば循環器専門施設へご紹介いただくことが、HFpEFを早期の段階(心不全Stage C早期)で診断することにつながり、その患者の予後やQOLを改善するうえでも大切といえるわけである。では、なぜそのようなことが起きるのか。キーワードは“予備能低下”である。HFpEFの病態生理、今どこまでわかっている?HFpEFを一言で説明すると、心臓だけではない多臓器の予備能が低下したヘテロな全身性の症候群といえよう9)。そして、HFpEFすべてに共通しているのは、“まずは労作時に左房圧が上昇し、その後病期が進行すると安静時まで左房圧が上昇してしまう”ということである(これ重要!)。では、それを引き起こす機序はどこまでわかっているのか、少し歴史を紐解きつつ解説していきたい。遡ること約35年前、HFpEFの初期の記述の1つとして、Topolらが高齢者の高血圧性肥大型心筋症についてNEJMへ報告したが10)、これはMモード、ドップラー心エコー図検査が急速に普及し、広く使われるようになっていた当時、拡張機能障害の概念にうまく合致するものであった。つまり、左室腔が小さく、左室壁が肥厚し、左室拡張末期圧容積関係が上方および左方にシフトし、拡張機能障害と左室充満圧の上昇を来すというものであった11)。2000年代初頭、拡張期心不全の古典的な説明が多くの患者に当てはまらないことが明らかになった12,13)。多くの患者で左室腔の大きさは正常で、明らかな左室肥大を有しておらず、拡張機能障害以外の異常が次第に確認され始めた(図1)14-16)。このような経緯で、HFpEFという用語が生まれ、その定義と特徴をより明確にすることに焦点が当てられるようになったわけである。画像を拡大する時は2023年、HFpEFは拡張機能障害だけではなく、糖尿病、肥満、高血圧、心房細動、腎機能障害、冠動脈疾患、COPD、貧血、睡眠時無呼吸症候群といった併存疾患、そして加齢が複雑に絡み合って生じる全身性炎症、内皮機能障害、心筋エネルギー代謝や骨格筋の異常などによる左室収縮・拡張予備能低下、肺血管障害、末梢での酸素利用能低下、動脈スティフネス、心室-血管カップリング異常、自律神経機能障害によって引き起こされる症候群であるという認識に至った(図2)17-19)。なお、このHFpEFの病期進行がどのような時間経過で進展していくのか、まだ結論は出ていないが、図3のような仮説が提唱されている20)。もちろん順序などには個人差があり、まだ議論の余地はあるが、病態生理を理解するうえではわかりやすく、参考にされたい。画像を拡大する画像を拡大するこのように、多臓器にわたる予備能低下を特徴とするHFpEFであるが、まずは一番重要な心臓、そして肺における異常について考えていきたい。心臓における構造的・機能的異常は、病期が進行すれば、両心房両心室に及ぶとされている4)。HFpEFでは、左室弛緩障害、スティフネス増大などにより、持続的または断続的に左室充満圧が上昇しており、それが左房のリモデリング、機能障害(左房コンプライアンスの低下)を引き起こす9-12)。HFpEFでは心房細動の合併がしばしば認められるが、これは左房機能障害がより進んだHFpEFの指標と考えられる21-23)。また、心エコー図検査(スペックルトラッキング法)で評価する左房リザーバーストレインの低下によって診断される左房機能障害が、左室機能障害よりも予後の強い予測因子とされているし22)、左房ストレインの低下が、息切れの原因精査(HFpEFが原因かどうかの区別)に最も有用であったという報告もあり24-26)、HFpEFの病態生理を理解するうえで、左房の機能評価がかなり重要な役割を担っているといえる。なお、HFpEFの多くは、左室機能障害が左房機能障害に先行するが、左室機能障害よりも左房機能障害が全面に出る(左房圧上昇があるも左室機能は保持されている)サブタイプ(primary LA myopathy)も存在するので、この点からも左室だけをみていてはいけないといえる27)。そして、左房圧の持続的な上昇は、全肺血管(肺静脈、肺毛細血管、肺小動脈)に負担をかけ、肺高血圧(PH, Pulmonary Hypertension)、右室機能障害を来し、さらには右房にまで負荷が及ぶことになる28)。実際HFpEF患者の約80%にPHが合併しており、PHのないHFpEFと比べて予後は悪く、また右室機能障害も約30%に合併し、死亡率上昇に寄与することが報告されている29-31)。つまり、HFpEFをみれば、必ず“左房さん、肺血管さん、そして右心系さん、大丈夫?”と早めから気にかけてあげることがきわめて重要なのである32-35)。早めに誰も気が付けず、この肺血管への負担が持続すると、全肺血管のリモデリング、血管収縮が生じ始め、最終的には肺血管抵抗(PVR, Pulmonary Vascular Resistance)が上昇し、肺血管疾患(PVD, Pulmonary Vascular Disease)を引き起こすことになる36,37)。PVDを伴うことで、右室-肺動脈カップリングが損なわれ、肺動脈コンプライアンスは低下し、右心機能がさらに増悪し、軽労作でも容易に右室充満圧が上昇するようになる38)。それにより、心室中隔が左室側へ押され、左室充満圧も血流のわずかな増加で容易に上昇するようになり、さらに肺うっ血が増悪するという負のサイクルがより回るようになり、”Stage D” HFpEFへと移行してしまう39)。このように、決して甘く見てはいけないのが、PVDの合併である。そうならないための糸口として、最近の研究で、HFpEFにおけるPVD進行の初期段階でこの病態を捉える重要性が認識されるようになってきた。それは、労作時にのみPVRが上昇する“Latent PVD”という概念で、左房障害の時間経過と同じように、PVDも初期段階では労作時にのみPVRが上昇、病期が進行すると、安静時でもPVRが上昇するようになる。Latent PVDの段階であっても、PVDのない群と比較して予後は不良で40)、心房間シャントデバイスのような新たな治療法への反応もlatent PVDの有無で異なることもわかってきている(HFpEF最新治療の詳細は次回説明予定)41)。ここまでHFpEFにおける心臓、肺の病態生理について述べてきたが、HFpEFでの多臓器にわたる異常を理解するうえでもう一つ重要になってくるのが、肥満や代謝ストレスなどによって誘導される全身性の炎症、内皮機能障害である42-45)。これは、心臓、肺、肝臓、腎臓、骨格筋などに対して悪影響を及ぼすが、たとえば、心臓においてはこの影響で冠微小循環障害を来すとされており、HFpEFの約75%に冠微小循環障害が合併しているという報告もある46)。この炎症反応において重要な役割を担っているE-selectinやICAM-1などの細胞接着分子(炎症細胞の炎症組織への接着に関与)の心筋発現レベルが、HFpEF患者において上昇しているという報告もあり47)、ICAM-1などをターゲットとした薬剤が今後出てくるかもしれない。また、欧米諸国では、肥満が関連したHFpEFが大きな問題となっており、字数足りず詳細は省くが、肥満とHFpEFに関してもかなり多くの研究が行われており、ご興味ある方はぜひ参考文献をご確認いただきたい17,48-52)。 画像を拡大するそのほか、自律神経機能に関する異常(脈拍応答不全、圧受容器反射感受性低下、血液分布異常)もHFpEFでは一般的であり53)、これらに対する治療として、最近いくつかのデバイス治療に関する臨床試験が進行している。たとえば、脈拍応答不全(chronotropic incompetence)に対するペーシング治療や血液分布異常(impaired systemic venous capacitance)に着目した右大内臓神経アブレーション治療(unilateral greater splanchnic nerve ablation)がそれにあたり、私自身も現在この分野の研究に携わっており、今後出てくる結果に注目いただきたい。このように多臓器にわたるさまざまな病態が複雑に絡み合うHFpEFであるが、最近報告されたゲノムワイド関連解析(GWAS, Genome Wide Association Study)の結果で、HFrEFとHFpEFの遺伝的構造には大きな違いがあり、HFpEFのgenetic discoveryは非常に限られていることが報告された54)。このことからも、HFpEF患者それぞれにおいて、異なる病態がいくつか融合する形で存在している可能性が高い。しかしながら、「HFpEF患者それぞれにおいて、どの病態の異常が、どれくらいの割合で融合しているのか、そしてそれぞれの病態の異常がどの程度進行した状態となっているのか」という点についてはまだわかっておらず、これは今後の大きな課題の1つである。最近の研究で、臨床データ、画像・バイオマーカー・オミックスデータを人工知能/機械学習技術を用いて解析することで、より適切なサブフェノタイピングが確立できるかどうかが検討されているが、これが確立すれば、上記の問題に加え、HFpEF患者それぞれの根底にある遺伝的シグナルとその要因の解明も可能となるかもしれない。この“治療に結びつくより一歩進んだフェノタイピング戦略”の開発は私自身も米国で関わっているNHLBI HeartShare Studyの主な目的の1つでもあり55)、必ず明るいHFpEF診療の未来がやってくると信じてやまないし、自分もそれに貢献できるよう、努力を続けたい。そして、次回は、いよいよHFpEFの診断、そして治療について深堀りしてきたい。1)Dunlay SM, et al. Nat Rev Cardiol. 2017;14:591-602.2)Steinberg BA, et al. Circulation. 2012;126:65-75.3)Bozkurt B, et al. Eur J Heart Fail. 2021;23:352-380.4)Pfeffer MA, et al. Circ Res. 2019;124:1598-1617.5)Borlaug BA. Nat Rev Cardiol. 2020;17:559-573.6)Sorimachi H, et al. Circulation. 2022;146:500-502.7)Borlaug BA, et al. Circ Heart Fail. 2010;3:588-595.8)Verbrugge FH, et al. Eur Heart J. 2022;43:1941-1951.9)Shah SJ, et al. Circulation. 2016;134:73-90.10)Topol EJ, et al. N Engl J Med. 1985;312:277-283.11)Aurigemma GP, et al. N Engl J Med. 2004;351:1097-1105.12)Burkhoff D, et al. Circulation. 2003;107:656-658.13)Kawaguchi M, et al. Circulation. 2003;107:714-720.14)Maurer MS, et al. J Card Fail. 2005;11:177-187.15)Maurer MS, et al. J Am Coll Cardiol. 2007;49:972-981.16)Petrie MC, et al. Heart. 2002;87:29-31.17)Shah SJ, et al. Circulation. 2020;141:1001-1026.18)Shah AM, et al. Nat Rev Cardiol. 2012;9:555-556.19)Burrage MK, et al. Circulation. 2021;144:1664-1678.20)Lourenco AP, et al. Eur J Heart Fail. 2018;20:216-227.21)Melenovsky V, et al. Circ Heart Fail. 2015:295-303.22)Freed BH, et al. Circ Cardiovasc Imaging. 2016;9.23)Reddy YNV, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;76:1051-1064.24)Telles F, et al. Eur J Heart Fail. 2019;21:495-505.25)Reddy YNV, et al. Eur J Heart Fail. 2019;21:891-900.26)Backhaus SJ, et al. Circulation. 2021;143:1484-1498.27)Patel RB, et al. Sci Rep. 2021;11:4885.28)Verbrugge FH, et al. Circulation. 2020;142:998-1012.29)Melenovsky V, et al. Eur Heart J. 2014;35:3452-3462.30)Mohammed SF, et al. Circulation. 2014;130:2310-2320.31)Obokata M, et al. Eur Heart J. 2019;40:689-697.32)Lam CS, et al. J Am Coll Cardiol. 2009;53:1119-1126.33)Iorio A, et al. Eur J Heart Fail. 2018;20:1257-1266.34)Miller WL, et al. JACC Heart Fail. 2013;1:290-299.35)Vanderpool RR, et al. JAMA Cardiol. 2018;3:298-306.36)Fayyaz AU, et al. Circulation. 2018;13:1796-1810.37)Huston JH, et al. Circ Res. 2022;130:1382-1403.38)Melenovsky V, et al. Eur Heart J 2014;35:3452-3462.39)Borlaug BA, et al. JACC: Heart Fail. 2019;7:574-585.40)Ho JE, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;75:17-26.41)Berry N, et al. Am Heart J. 2020;226:222-231.42)Schiattarella GG, et al. Cardiovasc Res. 2021;117:423-434.43)Schiattarella GG, et al. Nature. 2019;568:351-356.44)Borlaug BA, et al. J Am Coll Cardiol. 2010;56:845-854.45)Shah SJ, et al. Circulation. 2016;134:73-90.46)Shah SJ, et al. Eur Heart J. 2018;39:3439-3450.47)Franssen C, et al. JACC Heart Fail.2016;4:312-324.48)Borlaug BA. Nat Rev Cardiol. 2014;11:507-515.49)Rao VN, et al. Eur J Heart Fail. 2020;22:1540-1550.50)Koepp KE, et al. JACC Heart Fail. 2020;8:657-666.51)Obokata M, et al. Circulation. 2017;136:6-19.52)Borlaug BA, et al. Cardiovasc Res. 2022;118:3434-3450.53)Maurer MS, et al. Eur J Heart Fail. 2020;22:173-176.54)Joseph J, et al. Nat Commun. 2022;13:7753.55)Shah SJ, et al. Nat Rev Drug Discov. 2022;21:781-782.

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紹介先への情報欠落を防ぐ―安全な医療のために【紹介状の傾向と対策】第4回

<あるある傾向>患者を紹介されたとき、重要情報の欠落がある<対策>プロブレムや既往歴の取捨選択はご用心!紹介先が誰であれ、持っている情報は漏れなく伝える多忙な臨床業務の中で紹介状(診療情報提供書)の作成は負担の大きな業務の1つです。しかし、紹介状の不備は、依頼先(紹介先)の医師やスタッフに迷惑をかけるだけではなく、患者さんの不利益やトラブルにつながります。このため、できる限り依頼先が困らない紹介状の作成を心がけたいものです。以下は筆者自身が紹介状の記載において留意していることを箇条書きにしたものです。今回は(3)の「プロブレムと既往歴は漏れなく記載」についてお話ししましょう。【紹介状全般に共通する留意点】(1)相手の読みやすさが基本(2)冒頭に紹介する目的を明示する(3)プロブレムと既往歴は漏れなく記載(4)入院経過は過不足なく、かつ簡潔に記載(5)診断根拠・診断経緯は適宜詳述(6)処方薬は継続の要否、中止の可否を明記(7)検査データ、画像データもきちんと引き継ぐ他院に患者さんを紹介する場合も、院内で他科コンサルテーションする際も同様ですが、筆者はプロブレムや既往歴を漏れなく記載することが非常に大切だと考えています。これは、紹介(依頼)する側が把握・認識しているプロブレムを漏れなく伝えることが、紹介先(依頼先)の把握漏れを回避する上で重要だと考えるからです。この際に留意しているのは、“書き手自身の判断でプロブレムとして記載する内容を取捨選択しないこと”です。これは、依頼内容とは関係ないだろうと思った情報が、依頼された側の医師にとって、重要な情報だったことを何度も経験してきたからです。たとえば、緑内障の持病のある高齢者が、肺炎で内科に入院したときを想像してください。ご存じの通り、緑内障は使用できない薬剤が多い疾患の1つです。そんな患者さんが過活動膀胱症状のため内科の担当医が泌尿器科に紹介したとします。紹介された泌尿器科医が緑内障の有無を知らなければ(本来は処方前に泌尿器科医自身が患者さんに確認する必要がありますが)、緑内障に禁忌である薬剤を処方してしまうことが起きうると考えます。依頼側の医師がプロブレムや既往情報として把握している情報をきちんと記載し伝えることは、情報欠落によるトラブルを回避するために重要です。筆者が情報欠落を回避すべく心掛けているのは、日頃からカルテにプロブレムリストを作成することです。他科への受診歴があれば、その情報も確認し、プロブレムリストを作成しています。入院早期のうちに、一旦、しっかりとプロブレムリストやショートサマリーを作成するようにしています。大切なのは、既往疾患や手術歴も1つのプロブレムとして捉えることです。疾患は少なからず過去の既往歴や手術歴と関連があることが多々あります。たとえば胃の部分切除1つを挙げても、手術歴の情報は、謎の貧血データを見た時、それが過去の胃切除に由来するビタミンB12欠乏性貧血の可能性を示唆してくれます。患者が同一の医療機関内を受診しているのであれば、カルテ内を探すことで過去の情報を見つけることも可能です。しかし、患者が異なる医療機関に転院する場合は、それができません。転院の際に情報が引き継がれなければ、転院先も情報不足で困るかもしれません。とくに受け入れる側は、急性期医療機関からの詳細な情報を必要としています。急性期医療機関から回復期リハビリ病院、あるいは療養型病院、かかりつけ医へと、患者の移動に伴い情報も欠落せずにしっかり付いてくることが、その患者にきちんとした医療を提供する上で、とても重要だと考えています。今、患者の医療データは個々の病院の電子カルテに記載されていますが、これではどうしても医療機関ごとに患者情報や検査データが分散することになり、筆者は非常に効率が悪いと考えています。できることなら、患者自身が自らのカルテを保有し、各医療機関がそこにアクセスし、情報や検査結果を追記していくような形が取れれば、患者情報が一元管理できるのではないか…とも考えてしまいます。

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糖尿病対策で外来指導強化など中間とりまとめ公表/厚労省

 「厚生労働省の腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会」は、2月13日に「糖尿病対策に係る中間とりまとめ」を発表した。 中間とりまとめによると、診療提供について「外来療養指導や外来栄養食事指導の強化」が謳われ、高齢者の糖尿病患者の低血糖予防や在宅看護など地域ケアの取り組みが追記された。また、糖尿病対策に係る指標の見直しでは、「糖尿病の予防」「糖尿病の治療・重症化予防」「糖尿病合併症の発症予防・治療・重症化予防」の3項目を軸とすることが記述された。 主な中間とりまとめの概要は下記の通り。【1 糖尿病対策に係る他計画との連携等を含めた診療提供体制について】1)見直しの方向性(1)健康日本21や医療費適正化計画の見直しにかかる検討状況、重症化予防や治療と仕事の両立支援に係る取組状況などを踏まえる。(2)厚生労働科学研究の内容などを踏まえる。2)具体的な内容(1)引き続いての推進事項として・地域の保健師・管理栄養士などと連携した糖尿病発症予防の取組や、保健師・管理栄養士などと医療機関の連携、健診後の受診勧奨・医療機関受診状況などに係るフォローアップなど予防と医療の連携。・研究班や関係学会で整理された、かかりつけ医から糖尿病専門医への紹介基準、その他関係する専門領域への紹介基準なども踏まえ、合併症の発症予防・重症化予防に係る医療機関間連携や関連機関などとの連携。・糖尿病対策推進会議や糖尿病性腎症重症化予防プログラムなど、保険者と医療機関などの連携。・「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」に基づく治療と仕事の両立支援を含め、産業医などと連携した職域における糖尿病対策。・周術期や感染症入院中の血糖コントロールなど、糖尿病を併存している他疾患を主たる病名として治療中の患者の血糖管理体制。・患者およびその家族などに対する教育や、国民に対する正しい知識の普及啓発。・糖尿病の動向や治療実態を把握するための取組や、取組評価の適切な指標の検討。(2)追記事項として・治療などに係る記載について、更新された糖尿病に係るガイドラインにおける記載内容や調査・研究の結果などを踏まえ、内容を更新する。また、外来療養指導、外来栄養食事指導の強化、運動指導の重要性について。・高齢者糖尿病に関しては、高齢者糖尿病におけるコントロール目標などが設定されたことにも留意し、低血糖予防、フレイル対策、併存症としての心不全に関する実態把握、在宅医療・在宅訪問看護や介護・地域包括ケアとの連携などの要素も含め、糖尿病の治療や合併症の発症予防・重症化予防につながる取組について。【2 新型コロナウイルス感染症拡大時の経験を踏まえた今後の糖尿病医療体制について】1)見直しの方向性(1)今回の新型コロナウイルス感染症拡大時の経験も踏まえ、地域の実情に応じ、多施設・多職種による重症化予防を含む予防的介入、治療中断対策などを含む、より継続的な疾病管理に向けた診療提供体制の整備などを進める観点から必要な見直しを行う。2)具体的な内容(1)感染症流行下などの非常時においても、切れ目なく糖尿病患者が適切な医療を受けられるような体制整備を進める。(2)ICTの活用やPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の利活用、在宅医療との連携を含めた継続的・効果的な疾病管理に係る検討を進めるとともに、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」にそって、オンライン診療による対応が可能な糖尿病患者の病態像についても整理を進める。【3 糖尿病対策に係る指標の見直しについて】1)見直しの方向性(1)第8次医療計画における糖尿病対策に係る指標については見直しを行う。(2)具体的な方向性は、以下の通りとする。・「糖尿病の予防」「糖尿病の治療・重症化予防」「糖尿病合併症の発症予防・治療・重症化予防」の3項目を軸として整理。・「専門家数」または「専門医療機関数」のいずれも用いうる指標については、医療提供体制の整備という観点から「専門医療機関数」を採用。【4 今後検討が必要な事項について】(1)高齢者の糖尿病の実態把握や、ICTなどを活用した糖尿病対策のあり方。(2)糖尿病対策の取組の評価に係る適切な指標。

1470.

生活習慣の改善(6)食事療法3【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q54

生活習慣の改善(6)食事療法3Q54従来、減塩した「日本食パターン」が動脈硬化性疾患予防に推奨されている。動物性食品を控え、魚や野菜、果物、未精製穀物を中心とした食事を指すが、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版で控えるべき動物性食品に追加された食材は?

1471.

ペグIFN-λ、高リスクCOVID-19の重症化を半減/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種者を含むCOVID-19外来患者において、ペグインターフェロンラムダ(IFN-λ)単回皮下投与は、COVID-19進行による入院または救急外来受診の発生率をプラセボ投与よりも有意に減少させた。ブラジル・ミナスジェライスカトリック大学のGilmar Reis氏らTOGETHER試験グループが報告した。NEJM誌2023年2月9日号掲載の報告。ブラジルとカナダで、入院/救急外来受診の発生を比較 TOGETHER試験は、ブラジルとカナダで実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照アダプティブプラットフォーム試験である。研究グループは、ブラジルの12施設およびカナダの5施設において、SARS-CoV-2迅速抗原検査が陽性でCOVID-19の症状発現後7日以内の18歳以上の外来患者のうち、50歳以上、糖尿病、降圧療法を要する高血圧、心血管疾患、肺疾患、喫煙、BMI>30などのリスク因子のうち少なくとも1つを有する患者を、ペグIFN-λ(180μg/kgを単回皮下投与)群、プラセボ群(単回皮下投与または経口投与)または他の介入群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、無作為化後28日以内のCOVID-19による入院(または三次病院への転院)または救急外来受診(救急外来での>6時間の経過観察と定義)の複合とした。主要評価のイベント発生率、ペグIFN-λ群2.7% vs.プラセボ群5.6%、有意に半減 2021年6月24日~2022年2月7日の期間に、計2,617例がペグIFN-λ群、プラセボ群および他の介入群に割り付けられ、ペグIFN-λ群のプロトコール逸脱2例を除外したペグIFN-λ群931例およびプラセボ群1,018例が今回のintention-to-treat集団に含まれた。患者の83%はワクチンを接種していた。 主要アウトカムのイベントは、ペグIFN-λ群で931例中25例(2.7%)に、プラセボ群で1,018例中57例(5.6%)に発生した。相対リスクは0.49(95%ベイズ信用区間[CrI]:0.30~0.76、プラセボに対する優越性の事後確率>99.9%)であり、プラセボ群と比較してペグIFN-λ群で、主要アウトカムのイベントが51%減少した。 副次アウトカムの解析結果も概して一貫していた。COVID-19による入院までの期間はプラセボ群と比較しペグIFN-λ群で短く(ハザード比[HR]:0.57、95%ベイズCrI:0.33~0.95)、COVID-19による入院または死亡までの期間もペグIFN-λ群で短い(0.59、0.35~0.97)など、ほとんどの項目でペグIFN-λの有効性が示された。また、主な変異株の間で、およびワクチン接種の有無で有効性に差はなかった。 ベースラインのウイルス量が多かった患者では、ペグIFN-λ群のほうがプラセボ群より、7日目までのウイルス量減少が大きかった。 有害事象の発現率は、全GradeでペグIFN-λ群15.1%、プラセボ群16.9%であり、両群で同程度であった。

1472.

糖尿病網膜症、アフリベルセプトの早期投与で長期の視力改善は?/JAMA

 中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)を伴わない非増殖糖尿病網膜症(NPDR)患者において、アフリベルセプトを予防投与し視力を脅かす合併症が生じた場合にアフリベルセプトによる治療を開始しても、予防投与なし(シャム投与)で同合併症発生時に治療を開始した場合と比較し、4年後に増殖糖尿病網膜症(PDR)またはCI-DMEの発生率は有意に低下したが視力の改善は認められなかった。米国・インディアナ大学のRaj K. Maturi氏らが、米国およびカナダの64施設で実施した無作為化比較試験「DRCR Retina Network Protocol W試験」の結果を報告した。本試験では、少なくとも2年間は糖尿病による視力を脅かす合併症の発生を抑制できることが示されていたが、早期投与が長期的な視力改善につながるかどうかは不明であった。著者は、「本試験で用いられた予防戦略としてのアフリベルセプトは、CI-DMEを伴わないNPDR患者には通常不要だろう」とまとめている。JAMA誌2023年2月7日号掲載の報告。中等度~重度の増殖糖尿病網膜症399眼、アフリベルセプト予防投与vs.シャム 研究グループは、1型または2型糖尿病を有する成人で、CI-DMEを伴わない中等度~重度のNPDR(糖尿病網膜症重症度尺度[DRSS]レベル43~53)を少なくとも1眼有し、最高矯正視力が79文字以上(スネレン換算20/25以上)の患者を対象に試験を実施した。 患者をアフリベルセプト(2.0mg硝子体内投与)群またはシャム群に1対1の割合に無作為に割り付け、ベースライン、1、2および4ヵ月目、その後2年目までは4ヵ月ごとに投与。3~4年目は、軽度以下のNPDR(DRSSレベル≦35)と判定された場合に4ヵ月ごとの予防投与を延期できることとし、視力低下(1回の診察で10文字以上、または連続した2回の診察で5文字以上)を伴う高リスクPDR(DRSSレベル≧71)またはCI-DMEが生じた場合には、両群ともDRCR Retina Networkのアルゴリズムに従ってアフリベルセプトによる治療を開始することとした(PDRはプロトコルS、CI-DMEはプロトコルT)。 主要アウトカムは、視力低下を伴うPDRまたはCI-DMEの発生、およびベースラインから4年後までの最高矯正視力(ETDRS文字数)の平均変化量とした。 2016年1月~2018年3月に計399眼(328例)が登録され、最終追跡調査日は2022年5月11日であった。患者背景は、平均年齢56歳、女性が42.4%、アジア人5%、黒人15%、ヒスパニック系32%、白人45%であった。PDR/CI-DMEの4年累積発生率は有意に低下も、4年後の視力は両群で差はなし 視力低下を伴うPDRまたはCI-DMEの4年累積発生率(Kaplan-Meier法による推定)は、アフリベルセプト群33.9%、シャム群56.9%であった(補正後ハザード比[HR]:0.40、97.5%信頼区間[CI]:0.28~0.57、p<0.001)。 ベースラインから4年後までの最高矯正視力の平均変化量(±SD)は、アフリベルセプト群-2.7±6.5文字、シャム群-2.4±5.8文字であった(補正後群間平均差:-0.5文字、97.5%CI:-2.3~1.3、p=0.52)。 Antiplatelet Trialists' Collaborationによる心血管/脳血管イベントの発生率は、アフリベルセプト群の両眼被験者で9.9%(71例中7例)、片眼被験者で10.9%(129例中14例)、シャム群の片眼被験者で7.8%(128例中10例)であった。

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リブレの使用パターンと臨床的特徴が明らかに/京都医療センターほか

 先進糖尿病デバイスの進歩により、血糖変動を点から線で計測できる時代となった。おかげで糖尿病を持つ人は自分では気付かない低血糖への対応ができるようになった。では、血糖自己測定(SMBG)のアドヒアランスについて何らかの傾向はあるのだろうか。 坂根 直樹氏(京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長)らのFGM-Japan研究グループ(9施設)は、日本人の1型糖尿病(T1D)を持つ人を対象に、間歇スキャン式持続血糖測定器(isCGM)を用いたSMBGのアドヒアランスと、FreeStyleリブレシステム(以下「リブレ」)とSMBGの使用パターンと臨床的特徴がクラスター分析で明らかとなった。Internal Medicine誌オンライン版2023年1月12日号の報告。 わが国でリブレを使用しているT1Dを持つ成人209例を登録。登録基準は、T1D、リブレ使用期間3ヵ月以上、年齢20歳以上、研究協力施設に定期的に通院。3つの変数(1日当たりのSMBG回数、高血糖または低血糖時にリブレデータを参考にする割合)を用いて階層型クラスター分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・医師が推奨するSMBGの良好なアドヒアランス率は85.0%だった。・次の3つのクラスターが確認された。(1)クラスター1(SMBGの頻度は低いがリブレのデータを参照している割合が高い)は17.7%。(2)クラスター2(SMBGの頻度は高いがリブレのデータを参照している割合は低い)は34.0%。(3)クラスター3(SMBGの頻度は高く、かつリブレのデータを参照している割合も高い)は48.3%。・他のクラスターと比較し、クラスター1は若年で、クラスター2はリブレの使用期間が短く、クラスター3は血糖値が70~180mg/dLの治療閾にあるTime in Range(TIR)が少なく、スナック菓子や甘い飲料を飲む者の割合が多く、重度の糖尿病ストレスを感じている者の割合が多かった。・糖尿病合併症の発症率およびリブレ装着率にはクラスター間で顕著な差はなかった。 本研究について、共同研究者の廣田 勇士氏(神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学部門)は、「大半の患者が医師の推奨するSMBGを実践していた。リブレの使用パターンにより臨床的特徴が異なっており、リブレを用いた糖尿病治療支援を行う際に大いに役立つと考えられる」と述べている。

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ペマフィブラートの非アルコール性脂肪性肝疾患への有効性、よく効く患者の特徴

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に対するペマフィブラート※の投与は、BMI に関係なく肝炎症および線維化のマーカーを改善し、なかでもBMI 25未満の患者のほうがBMI 30以上の患者と比較して効果が高いことが、篠崎内科クリニックの篠崎 聡氏らの研究で明らかになった。Clinical and experimental hepatology誌2022年12月8日号の報告。※ペマフィブラート(商品名:パルモディア)の効能・効果は「高脂血症(家族性を含む)」(2023年2月3日現在)。ペマフィブラート投与6ヵ月後の非アルコール性脂肪性肝疾患患者のALT値非アルコール性脂肪性肝疾患は、世界で最も一般的な慢性肝疾患であり、近年発症率が増加している。日本では2018年に登場した選択的ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-αモジュレーター(SPPARMα)であるペマフィブラートは、非アルコール性脂肪性肝疾患の改善が期待されている薬剤の1つである。本研究は、非アルコール性脂肪性肝疾患患者におけるペマフィブラート投与後の炎症および線維化改善の予測因子を特定する目的で行われた。 対象は、ペマフィブラートで6ヵ月以上治療された非糖尿病の非アルコール性脂肪性肝疾患患者71例。肝臓の炎症と線維化に関しては、それぞれアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値とMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)値によって評価を行った。 非アルコール性脂肪性肝疾患患者におけるペマフィブラート投与後の炎症および線維化改善の予測因子を特定する研究の主な結果は以下のとおり。・ペマフィブラート投与6ヵ月後の非アルコール性脂肪性肝疾患患者のALT値およびM2BPGi値は、ベースラインと比較して、BMIに関係なく、有意な改善が認められた。・BMI 25未満であることは、肝炎症患者のALTを50%以上減少させる有意な正の予測因子であることが認められた。・BMI 25未満の群におけるALT値は、BMI 30以上の群と比較して有意な減少が認められた (p=0.034)。・BMI 25未満であること、および50歳以上であることは、肝線維化の減少を示すM2BPGiを20%以上減少させる有意な正の予測因子であることが認められた。・BMI 25未満の群におけるM2BPGi値は、BMI 30以上の群と比較して有意な減少が認められた(p=0.022)。

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GLP-1受容体作動薬・TAZ/PIPC、重大な副作用追加で添文改訂/厚労省

 厚生労働省は2023年2月14日、GLP-1受容体作動薬含有製剤およびGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの添付文書について、改訂を指示した。改訂内容は、『重要な基本的注意』の項への「胆石症、胆嚢炎、胆管炎または胆汁うっ滞性黄疸に関する注意」の追記(チルゼパチドは「急性胆道系疾患に関する注意」からの変更)、『重大な副作用』の項への「胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸」の追加である。本改訂は、GLP-1受容体作動薬含有製剤投与後に発生した「胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸」の国内症例の評価、GLP-1受容体作動薬と急性胆道系疾患との関連性を論じた公表文献の評価に基づくもの。なお、チルゼパチドについては関連する症例集積はないものの、GLP-1受容体に対するアゴニスト作用を有しており、GLP-1受容体作動薬と同様の副作用が生じる可能性が否定できないことから、使用上の注意の改訂が適切と判断された。『重要な基本的注意』が新設・変更<新設>リラグルチド(遺伝子組換え)、エキセナチド、リキシセナチド、デュラグルチド(遺伝子組換え)、セマグルチド(遺伝子組換え)、インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え)、インスリン グラルギン(遺伝子組換え)/リキシセナチド<変更>チルゼパチド 改訂後の添付文書において追加された記載、変更後の記載は以下のとおり。8. 重要な基本的注意 胆石症、胆嚢炎、胆管炎又は胆汁うっ滞性黄疸が発現するおそれがあるので、腹痛等の腹部症状がみられた場合には、必要に応じて画像検査等による原因精査を考慮するなど、適切に対応すること。『重大な副作用』が新設 該当医薬品は、リラグルチド(遺伝子組換え)、エキセナチド、リキシセナチド、デュラグルチド(遺伝子組換え)、セマグルチド(遺伝子組換え)、インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え)、インスリン グラルギン(遺伝子組換え)/リキシセナチド、チルゼパチド。 改訂後の添付文書において追加された記載は以下のとおり。11. 副作用11.1 重大な副作用胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸「急性胆道系疾患関連症例」*の国内症例の集積状況(1)13例[うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例8例](2)、(5)3例[うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例1例](3)4例[うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例1例](4)23例[うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例6例](6)、(7)1例[うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例0例](8)0例いずれも死亡例はなかった。(1)リラグルチド(遺伝子組換え)[販売名:ビクトーザ皮下注18mg](2)エキセナチド[販売名:バイエッタ皮下注5/10μgペン300、ビデュリオン皮下注用 2mgペン](3)リキシセナチド[販売名:リキスミア皮下注300μg](4)デュラグルチド(遺伝子組換え)[販売名:トルリシティ皮下注0.75mgアテオス](5)セマグルチド(遺伝子組換え)[販売名:オゼンピック皮下注0.25/0.5/1.0mgSD、同皮下注2mg、リベルサス錠3/7/14mg](6)インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え)[販売名:ゾルトファイ配合注フレックスタッチ](7)インスリン グラルギン(遺伝子組換え)/リキシセナチド[販売名:ソリクア配合注ソロスター](8)チルゼパチド[販売名:マンジャロ皮下注2.5/5/7.5/10/12.5/15mgアテオス]*:医薬品医療機器総合機構における副作用等報告データベースに登録された症例タゾバクタム・ピペラシリン水和物にも『重大な副作用』が新設 同日、タゾバクタム・ピペラシリン水和物の添付文書についても改訂が指示され、『重大な副作用』の項へ「血球貪食性リンパ組織球症(血球貪食症候群)」が追加された。改訂後の添付文書に追加された記載は以下のとおり。<旧記載要領>4. 副作用(1)重大な副作用(頻度不明)11)血球貪食性リンパ組織球症(血球貪食症候群)血球貪食性リンパ組織球症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、発熱、発疹、神経症状、脾腫、リンパ節腫脹、血球減少、LDH上昇、高フェリチン血症、高トリグリセリド血症、肝機能障害、血液凝固障害等の異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。<新記載要領>11. 副作用11.1 重大な副作用11.1.11 血球貪食性リンパ組織球症(血球貪食症候群)(頻度不明)発熱、発疹、神経症状、脾腫、リンパ節腫脹、血球減少、LDH上昇、高フェリチン血症、高トリグリセリド血症、肝機能障害、血液凝固障害等の異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

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有害な妊娠アウトカム、母親の虚血性心疾患リスクが長期的に上昇/BMJ

 5つの有害な妊娠アウトカム(早産、在胎不当過小、妊娠高血圧腎症、妊娠高血圧腎症以外の妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病)のいずれかを経験した女性は、出産後の虚血性心疾患のリスクが高く、このリスク上昇は最長で46年持続していることが、米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のCasey Crump氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年2月1日号で報告された。スウェーデンの全国的なコホート研究 研究グループは、5つの有害な妊娠アウトカムと母親の虚血性心疾患の長期的なリスクとの関連の評価を目的に、スウェーデンにおいて全国的なコホート研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。 対象は、1973~2015年にスウェーデンで、単胎分娩による初回の出産をした女性219万5,266人であった。主要アウトカムは、全国の入院・外来診断で確認された出産から2018年までに発生した虚血性心疾患とされた。 Cox回帰を用いて、他の有害な妊娠アウトカムおよび母性因子を調整し、早産、在胎不当過小、妊娠高血圧腎症、他の妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病と関連した虚血性心疾患のハザード比(HR)を算出した。有害な妊娠アウトカムの数が増えるとリスクも上昇 5,360万人年の追跡期間中に、8万3,881人(3.8%)の女性が虚血性心疾患(急性心筋梗塞55.3%、狭心症38.7%)と診断された。初回出産時の年齢中央値は27.3歳、虚血性心疾患診断時の年齢中央値は58.6歳であった。 5つの有害な妊娠アウトカムはいずれも独立に、虚血性心疾患のリスク上昇と関連していた。出産後10年以内に特定の有害な妊娠アウトカムと関連した虚血性心疾患の補正HRは、他の妊娠高血圧症候群が2.09(95%信頼区間[CI]:1.77~2.46)と最も高く、次いで早産1.72(1.55~1.90)、妊娠高血圧腎症1.54(1.37~1.72)、妊娠糖尿病1.30(1.09~1.56)、在胎不当過小1.10(1.00~1.21)であった。 また、出産後30~46年が経過しても、補正後HRは有意に上昇したままであり、他の妊娠高血圧症候群が1.47(95%CI:1.30~1.66)、妊娠糖尿病が1.40(1.29~1.51)、妊娠高血圧腎症1.32(1.28~1.36)、早産1.23(1.19~1.27)、在胎不当過小は1.16(1.13~1.19)だった。 複数の有害な妊娠アウトカムを経験した女性は、さらにリスクが上昇していた。たとえば、出産後10年以内に、有害な妊娠アウトカムを1回経験した女性の虚血性心疾患の補正後HRは1.29(95%CI:1.19~1.39)であったのに対し、2回経験した女性は1.80(1.59~2.03)、3回経験した女性は2.26(1.89~2.70)であった。 著者は、「有害な妊娠アウトカムを経験した女性では、虚血性心疾患の発症を防ぐために、予防に関する早期の評価と、長期的なリスク軽減を考慮する必要がある」としている。

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2月10日 フットケアの日【今日は何の日?】

【2月10日 フットケアの日】〔由来〕糖尿病や末梢動脈疾患による足病変の患者が増加していることから、足病変の予防・早期発見・早期治療の啓発を目的に、「フ(2)ット(10)=足」と読む日付の語呂合わせから日本フットケア学会、日本下肢救済・足病学会、日本メドトロニックが共同で制定した。関連コンテンツフットケアを怠ると? 足裏に潜む魔物【Dr.デルぽんの診察室観察日記】糖尿病の方はフットケアが大切です。しびれがある場合は特に注意!【使える!服薬指導箋】皮膚潰瘍と角質のケアに乾燥対策!【患者指導スライド】末梢動脈疾患(PAD)ガイドライン、7年ぶりの改訂/日本循環器学会末梢動脈疾患の在宅での歩行運動導入、歩行距離を改善/JAMA

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triple agonist LY3437943はdual agonist チルゼパチドを凌駕する薬剤となりうるか?(解説:住谷哲氏)

 GLP-1受容体およびGIP受容体のdual agonistであるチルゼパチドは昨年製造承認されたばかりであるが、すでにその次の薬剤としてのGLP-1受容体、GIP受容体およびグルカゴン受容体に対するtriple agonistであるLY3437943(triple Gと呼ばれている)の第Ib相試験の結果が報告された。その結果は、血糖降下作用および体重減少作用の点でGLP-1受容体作動薬デュラグルチドより優れており、有害事象の点でも問題はなく、第II相試験への移行を支持する結果であった。 DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬などのインクレチン関連薬の血糖降下作用を説明する際には、これまでインスリン分泌促進作用だけではなくグルカゴン作用の抑制も強調されてきた。グルカゴンはその名称が示すように肝臓での糖新生を促進するホルモンである。2型糖尿病患者の高血糖にはグルカゴン作用が影響しており、グルカゴン作用を抑制することが血糖降下につながると説明されてきた。つまり単純に考えるとグルカゴン作用を増強すれば血糖は上昇すると考えるのが普通だろう。そこが生命の神秘というか、グルカゴン作用を増強するtriple agonist LY3437943はGLP-1受容体作動薬単剤よりも血糖および体重をより低下させることが示された。グルカゴン作用を増強することで血糖および体重が低下したメカニズムは本試験の結果からは明らかではないが、グルカゴンの持つエネルギー消費量energy expenditureの増大、肝細胞での脂肪酸β酸化の増大などが関与しているのかもしれない。 タイトルにあるチルゼパチドとの直接比較ではないので現時点ではどちらの血糖降下作用、体重減少作用が勝っているかは明らかではない。しかしtriple Gがすべての点でチルゼパチドを凌駕していればチルゼパチドを処方する必要はなくなるので、Lillyとしては難しい経営判断が必要になりそうである。

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