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GLP-1/GCG作動薬mazdutideの減量効果は?/NEJM

 肥満または体重関連合併症を有する過体重の中国人成人において、GLP-1/グルカゴン受容体デュアルアゴニストのmazdutide 4mgまたは6mgの週1回32週間投与により、臨床的に意義のある体重減少が認められたことを、中国・Peking University People's HospitalのLinong Ji氏らGLORY-1 Investigatorsが同国23施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「GLORY-1試験」の結果で報告した。インクレチンベースのデュアルアゴニスト療法は肥満に対して有効であることが示されており、mazdutideは第II相試験において肥満または過体重の中国人成人の体重減少が示されていた。NEJM誌オンライン版2025年5月25日号掲載の報告。mazdutide 4mgまたは6mgの有効性と安全性をプラセボと比較 GLORY-1試験の対象は、肥満または少なくとも1つの体重関連合併症(前糖尿病、高血圧、脂質異常症、代謝異常関連脂肪性肝疾患[MAFLD]、荷重関節痛、肥満関連呼吸困難または閉塞性睡眠時無呼吸症候群)を伴う過体重の18~75歳の成人であった。肥満および過体重は、中国の基準に基づきそれぞれBMI値が28以上、および24以上28未満と定義された。 研究グループは、適格患者をmazdutide 4mg群、mazdutide 6mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、週1回皮下投与を48週間行った。 主要エンドポイントは、32週時におけるベースラインからの体重変化率ならびに体重が5%以上減少した患者割合の2つで、mazdutideの各群をプラセボ群と両側有意水準0.025で比較し、2つの主要エンドポイントのいずれも有意であった場合に優越性が示されることとした。 有効性の解析対象は無作為化されたすべての患者とし、treatment-policy estimand法で評価した(mazdutideまたはプラセボの早期中止や新たな抗肥満治療開始の有無にかかわらず評価)。32週時の体重変化率はmazdutide 4mg群-10.09%、6mg群-12.55%、プラセボ群0.45% 2022年11月~2023年1月に862例がスクリーニングされ、610例が無作為化された。患者背景は平均体重87.2kg、平均BMI値は31.1であった。 32週時におけるベースラインからの体重変化率の最小二乗平均値は、mazdutide 4mg群-10.09%(95%信頼区間[CI]:-11.15~-9.04)、mazdutide 6mg群-12.55%(-13.64~-11.45)、プラセボ群0.45%(-0.61~1.52)であった(両群とも対プラセボ群のp<0.001)。 また、32週時に5%以上の体重減少が認められた患者割合は、それぞれ73.9%、82.0%および10.5%であった(両群とも対プラセボ群のp<0.001)。 48週時では、ベースラインからの体重変化率の最小二乗平均値は、mazdutide 4mg群で-11.00%(95%CI:-12.27~-9.73)、mazdutide 6mg群で-14.01%(-15.36~-12.66)、プラセボ群で0.30%(-0.98~1.58)、15%以上の体重減少が認められた患者割合はそれぞれ35.7%、49.5%、2.0%であった(プラセボとの比較においてすべてのp<0.001)。 重要な副次エンドポイントである48週時における収縮期血圧、総コレステロール、中性脂肪、LDL-コレステロール、血清尿酸およびアラニンアミノトランスフェラーゼのベースラインからの変化(mazdutide両群の併合解析)についても、すべてmazdutide群で良好な効果が認められた(すべてのp<0.001)。 有害事象はmazdutide 4mg、6mg群およびプラセボ群でそれぞれ96.1%、97.0%、89.3%に認められた。主な有害事象は悪心(それぞれ32.5%、50.5%、5.9%)、下痢(35.0%、38.6%、6.3%)、嘔吐(26.1%、43.1%、2.9%)で、ほとんどが軽度または中等度であった。 有害事象により試験を中止した患者は、mazdutide 4mg群で3例(1.5%)、mazdutide 6mg群で1例(0.5%)、プラセボ群で2例(1.0%)であった。

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コントロール不良の高血圧、zilebesiran単回投与の上乗せが有効/JAMA

 インダパミド、アムロジピンまたはオルメサルタンによる治療下でコントロール不良の高血圧患者において、RNA干渉薬zilebesiran単回投与の追加により、プラセボと比較して3ヵ月時の収縮期血圧(SBP)の有意な低下が認められ、重篤な有害事象の発生は少なかったことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAkshay S. Desai氏らが北米、英国など8ヵ国の150施設で実施した第II相無作為化二重盲検比較試験「KARDIA-2試験」で示された。高血圧患者を対象とした先行の単剤投与試験では、zilebesiranの単回皮下投与により3ヵ月時および6ヵ月時の血清アンジオテンシノーゲン値およびSBPの低下が認められていた。JAMA誌オンライン版2025年5月28日号掲載の報告。インダパミド、アムロジピン、オルメサルタンへのzilebesiran追加の有効性と安全性をプラセボ追加と比較 研究グループは、2022年1月~2023年6月に、未治療の高血圧(診察室座位SBP:155~180mmHg)、または1~2種類の降圧薬を使用してもコントロール不良の高血圧(診察室座位SBP:145~180mmHg)で、18~75歳の患者を登録した。 二次性高血圧、症候性起立性低血圧、血清カリウム値>5.0mmol/L、eGFR<30mL/分/1.73m2(MDRD法)、症候性心不全、1型糖尿病、コントロール不良の2型糖尿病、または新たに診断された糖尿病の患者は除外された。 まず非盲検導入期として、適格患者をインダパミド2.5mg、アムロジピン5mgまたはオルメサルタン40mgの3つのコホートに4対7対10の割合で無作為に割り付け、それぞれ1日1回少なくとも4週間投与した。 導入期後に24時間自由行動下SBPが130~160mmHg、かつアドヒアランスが80%以上の患者を、二重盲検期として各コホートでzilebesiran 600mg群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ追加で単回皮下投与した。 主要エンドポイントは、3ヵ月時の24時間自由行動下SBPのベースラインからの変化におけるzilebesiran群とプラセボ群との差とした。 最終追跡調査日は2023年12月11日で、解析は2024年3月1日に実施した。24時間自由行動下SBPの変化、プラセボとの差は-4.5~-12.1mmHg 導入期に無作為化された1,491例のうち、663例(各コホート:インダパミド130例、アムロジピン240例、オルメサルタン293例)が二重盲検期にzilebesiran群(332例)またはプラセボ群(331例)に無作為に割り付けられた。 3ヵ月時の24時間自由行動下SBPのベースラインからの変化のzilebesiran群とプラセボ群の差(最小二乗平均値)は、インダパミドコホートで-12.1mmHg(95%信頼区間:-16.5~-7.6、p<0.001)、アムロジピンコホートで-9.7mmHg(-12.9~-6.6、p<0.001)、オルメサルタンコホートで-4.5mmHg(-8.2~-0.8、p=0.02)であった。 有害事象については、コホート全体においてzilebesiran群はプラセボ群と比較し、高カリウム血症(18例[5.5%]vs.6例[1.8%])、低血圧(14例[4.3%]vs.7例[2.1%])、急性腎不全(16例[4.9%]vs.5例[1.5%])の発現割合が高かったが、ほとんどの事象は軽度であり治療なしで回復した。

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コーヒーの1日摂取量と死亡率の関係、砂糖入りでは?

 コーヒー摂取がさまざまな健康上のベネフィットと関連することが示されているが、砂糖や飽和脂肪(saturated fat)の添加がどのような影響を及ぼすかは明確ではない。米国・タフツ大学のBingjie Zhou氏らによる大規模前向きコホート研究の結果、コーヒー摂取が全死亡リスクの低下と関連することが確認されたが、その関連はブラックコーヒーおよび添加された砂糖や飽和脂肪量が少ないコーヒーでのみ認められた。The Journal of Nutrition誌オンライン版2025年5月12日号掲載の報告。 本研究では、1999~2018年までの米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータと、国民死亡記録(National Death Index)の死亡データをリンクさせて解析が行われた。24時間思い出し法による有効な食事調査結果を有する20歳以上の4万6,332人が対象となった。 コーヒー摂取は、種類(カフェイン入りまたはデカフェ)、砂糖量(8オンス[約240mL=1杯と定義]当たり<2.5gまたは≧2.5g)および飽和脂肪量(1杯当たり<1gまたは≧1g)に基づいて分類。死亡アウトカムには、全死亡のほか、がんおよび心血管疾患(CVD)による死亡が含まれた。 Cox比例ハザードモデルを用いて、コーヒーの種類、摂取量(非摂取者、<1杯/日、1〜<2杯/日、2〜<3杯/日、≧3杯/日)、および添加された砂糖および飽和脂肪の量(ブラック、LSLF[1杯当たり砂糖<2.5g/飽和脂肪<1g]、LSHF[同<2.5g/同≧1g]、HSLF[同≧2.5g/同<1g]、HSHF[同≧2.5g/同≧1g])に基づく死亡リスクについて、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値9.3〜11.3年を通じて7,074人の死亡が確認され、がんによる死亡は1,176人、CVDによる死亡は1,089人であった。・非摂取者と比較して、コーヒー摂取量の多さは全死亡リスク低下と関連していた(<1杯/日でHR:0.89[95%CI:0.78~1.02]、1〜<2杯/日で0.84[0.77~0.92]、2〜<3杯/日で0.83[0.75~0.93]、≧3杯/日で0.85[0.77~0.95]、傾向のp=0.004)。・コーヒー摂取量と全死亡リスク(非線形のp<0.001)およびCVD死亡リスク(非線形のp=0.02)との間には、非線形の逆相関が認められた。一方、がん死亡リスクとの間には有意な関連は認められなかった。また、カフェイン入りコーヒー摂取量との間には同様の関連が認められたが、デカフェコーヒー摂取量との間には認められなかった。・コーヒーに添加された砂糖や飽和脂肪の量別にみると、全死因死亡に対するベネフィットは、ブラックコーヒー(HR:0.86[95%CI:0.77~0.97])およびLSLFコーヒー(HR:0.86[0.75~0.99])の摂取者に限定されていた。

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血栓溶解療法後の低リスク例、低頻度のモニタリングで十分か/Lancet

 急性期虚血性脳卒中に対する静脈内血栓溶解療法では、施行後の高強度のモニタリングが標準とされ、患者だけでなく看護師の負担がとくに大きく、果たして症候性脳出血のリスクが低い患者にも必要かとの疑問が生じている。中国・復旦大学のCraig S. Anderson氏らOPTIMISTmain Investigatorsは、「OPTIMISTmain試験」において、血栓溶解療法を受けた軽度または中等度の神経学的障害を有する患者では、モニタリングの頻度を低くした低強度モニタリングは高強度の標準モニタリングに対し、不良な機能的アウトカムの発生に関して非劣性であるとの弱いエビデンスを確認し、重篤な有害事象の発現にも差はないことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月21日号に掲載された。8ヵ国のstepped-wedgeクラスター無作為化非劣性試験 OPTIMISTmain試験は、低強度モニタリングのプロトコールの標準モニタリングのプロトコールに対する非劣性を検証する、実践的なstepped-wedgeクラスター無作為化対照比較非劣性試験であり、2021年4月~2024年9月に8ヵ国(高所得国4ヵ国、低・中所得国4ヵ国)の120病院(クラスター)で患者を登録した(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]などの助成を受けた)。  年齢18歳以上、急性期虚血性脳卒中と診断され、静脈内血栓溶解療法の開始から2時間以内の神経学的障害が軽度または中等度(NIHSSスコア[0~42点、高点数ほど重症度が高い]が10点未満)で、臨床的に安定した患者を対象とした。 参加病院はプロトコールの実施について、4つの期間の3つの実施順序に無作為に割り付けられ、各病院で標準モニタリング(対照)から低強度モニタリング(介入)へと段階的に切り換えを行った。 低強度モニタリングのプロトコールでは、血栓溶解療法後24時間までの神経学的評価とバイタルサインの評価の頻度を低くし、15分ごと2時間、2時間ごとに8時間(標準モニタリングでは30分ごとに6時間)、その後は4時間ごと(標準モニタリングでは1時間ごと)に行った。 主要アウトカムは、90日後の時点における不良な機能的アウトカムとし、修正Rankinスケールスコア(0[症状なし]~6[死亡]点)の2~6点と定義した。非劣性マージンは、ITT集団におけるリスク比(RR)1.15に設定した。不良な機能的アウトカム、低強度モニタリグング群31.7%vs.標準モニタリグング群30.9% 114病院で4,922例を登録し、低強度モニタリング群に2,789例、標準モニタリング群に2,133例を割り付けた。全体の平均年齢は65.9(SD 13.2)歳、性別を報告した4,916例中1,890例(38.4%)が女性であり、民族を報告した4,913例中2,523例(51.4%)がアジア系だった。ベースラインのグラスゴー・コーマ・スケールスコア中央値は15点(四分位範囲[IQR]:15~15)、NIHSSスコア中央値は4点(IQR:2~7)であり、頻度の高いリスク因子は高血圧(61.3%)と糖尿病(24.9%)であった。 90日の時点で修正Rankinスケールスコアが2~6点であった不良な機能的アウトカムの患者は、低強度モニタリング群が2,552例中809例(31.7%)、標準モニタリング群は1,963例中606例(30.9%)であり(RR:1.03[95%信頼区間[CI]:0.92~1.15]、非劣性のp=0.057)、低強度モニタリング群の非劣性を示唆する弱いエビデンスが得られた。  7日目または退院時のいずれか早い時点でのNIHSSスコアは、低強度モニタリング群が1.9点、標準モニタリング群は2.1点であった(平均群間差:-0.11点[95%CI:-0.36~0.13])。低強度モニタリングは導入の検討に値する 症候性頭蓋内出血は、低強度モニタリング群で2,783例中5例(0.2%)、標準モニタリング群で2,122例中8例(0.4%)に発現した(RR:0.57[95%CI:0.15~2.13])。また、重篤な有害事象の発現は、それぞれ2,789例中309例(11.1%)および2,133例中240例(11.3%)と両群で同程度だった。  著者は、「この介入は、多くの国で集中治療室(ICU)の外部で行うことが許容され、実行は可能であり、結果として看護業務の流れに柔軟性をもたらし、集中治療の医療資源を解放するという有益性を認めたことから、各国の病院は急性期脳卒中の治療体制を改善するために、このアプローチの導入を検討してよいだろう」としている。

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2025年版 心不全診療ガイドライン改訂のポイント(前編)【心不全診療Up to Date 2】第1回

2025年版 心不全診療ガイドライン改訂のポイント(前編)Key Point予防と早期介入の重視:心不全リスク段階(ステージA)に慢性腎臓病(CKD)を追加し、発症前の予防的アプローチを強化薬物療法の進展:SGLT2阻害薬が左室駆出率を問わず基盤治療薬となり、HFpEF/HFmrEFや肥満合併例への新薬(フィネレノン、インクレチン関連薬など)推奨を追加包括的・患者中心ケアへの転換:地域連携・多職種連携、急性期からのリハビリテーション、患者報告アウトカム評価、併存症管理を強化し、より統合的なケアモデルを推進はじめに心不全(Heart Failure:HF)は、本邦における高齢化の進展とともに患者数が増加し続け、医療経済的にも社会的にも大きな課題となっている1)。日本循環器学会(JCS)および日本心不全学会(JHFS)は、これまで2017年改訂版および2021年フォーカスアップデート版の「急性・慢性心不全診療ガイドライン」を策定してきたが、近年の国内外における新たなエビデンスの集積などを踏まえ、この度、2025年版としてガイドラインが7年ぶりに全面的に改訂された1)。本改訂では、治療アプローチの一貫性と包括性を重視し、患者の生活の質(Quality of Life:QOL)の向上を目指すとともに、本邦の診療実態、とくに高齢化社会における心不全診療の課題や特異性にも配慮がなされている。実臨床において質の高い心不全診療を提供するための指針となることを目的としており、本稿では、その主要な改訂点について概説する。主な改訂領域は、ガイドライン名称の変更、心不全の定義・分類の更新、左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)別心不全に対する薬物療法、原疾患治療、特殊病態、診断・評価法、社会的側面への対応(地域連携・包括ケア)、急性非代償性心不全の管理、急性期リハビリテーション、併存症管理の強化など多岐にわたる。主な改訂点1. ガイドライン名称の変更とその背景今回の改訂における最も象徴的な変更点の1つは、ガイドラインの名称が従来の「急性・慢性心不全診療ガイドライン」から「心不全診療ガイドライン」へと変更されたことである。この変更の背景には、2つの重要な臨床的観点が存在する。第一に、心不全診療においては、急性増悪期から安定期、さらには終末期に至るまで、切れ目のない継続的な治療・管理が極めて重要であるという認識の高まりがある。第2に、臨床現場では心不全の急性期と慢性期を明確に区別することが困難な場合が多く、両者を一体のものとして捉えるほうが実態に即しているという判断がある。この名称変更は、単なる表題の変更に留まらず、心不全を急性期と慢性期という二分法で捉えるのではなく、患者の生涯にわたる連続的な病態(スペクトラム)として認識し、その各段階に応じたシームレスな管理戦略を志向する、より統合的なアプローチへの転換を示唆している。臨床医には、入院加療から外来管理、在宅ケアまでを見据えた、より長期的かつ包括的な視点での患者管理が求められる。2. 心不全の定義・分類の更新心不全の定義と分類に関して、国際的な整合性を図るため、2021年に発表された「心不全の普遍的定義と分類(Universal Definition and Classification of Heart Failure)」が全面的に採用された2)(図1)。図1. 心不全ステージの治療目標と病の軌跡画像を拡大するステージA(心不全リスク At Risk for HF)心不全のリスク因子(高血圧、糖尿病、肥満、心毒性物質曝露、心筋症の家族歴など)を有するが、器質的心疾患や心筋バイオマーカー異常、心不全症状・徴候を認めない段階。ステージB(前心不全 Pre-HF)器質的心疾患(心筋梗塞後、弁膜症、左室肥大など)、心機能異常(LVEF低下、拡張機能障害など)、または心筋バイオマーカー(Na利尿ペプチド、心筋トロポニン)上昇のいずれかを認めるが、現在および過去に心不全症状・徴候がない段階。ステージC(心不全 HF)器質的心疾患を有し、現在または過去に心不全症状・徴候を有する段階。ステージD(進行性心不全 Advanced HF)安静時にも重度の心不全症状があり、ガイドラインに基づいた治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)にもかかわらず再入院を繰り返す、治療抵抗性または不耐容であり、心臓移植、機械的補助循環、緩和ケアなどの高度治療を要する段階。今回の改訂では、心不全への進展予防や早期介入の重要性が強調され、ステージAおよびステージBに関する記載が大幅に充実した。とくに注目すべきは、慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)がステージAを定義する独立したリスク因子として明確に追加された点である。具体的には、推算糸球体濾過量(eGFR)が 60mL/min/1.73m2未満、またはアルブミン尿(尿中アルブミン/クレアチニン比[UACR]30mg/g以上)がCKDの基準として挙げられている。これは、心不全発症前の段階からCKDを重要なリスクとして認識し、早期介入を促す意図がある。ステージA/Bへの注力とCKDの明確な位置付けは、心不全管理における戦略的な重点が、発症後の治療のみならず、発症前の予防へと大きくシフトしていることを示している(図2)。心血管リスク因子、とくにCKDを早期に特定し、心臓への構造的・機能的ダメージが生じる前、あるいは症状が出現する前に介入することの重要性が強調されている。CKDの追加は、心腎連関の重要性を再認識させ、腎臓専門医との連携や、心腎双方に有益な治療法(例:SGLT2阻害薬)の早期導入を促進する可能性がある。これにより、臨床現場ではリスク因子の系統的なスクリーニングと、より早期からの予防的治療介入(血圧管理、CKD/糖尿病合併例でのSGLT2阻害薬など)が求められることになる。図2. 心不全予防アルゴリズム画像を拡大する3. LVEF別心不全に対する薬物療法のアップデートLVEFに基づいた薬物療法アルゴリズムは、2021年のフォーカスアップデート以降に発表された大規模臨床試験の結果を反映し、大幅に更新された(図3)。とくに、HFmrEF/HFpEFにおけるSGLT2阻害薬、MRAの推奨を追加、肥満合併心不全に対するインクレチン関連薬の推奨が追加された。図3 心不全治療のアルゴリズム画像を拡大するこれらの改訂の中で特筆すべきは、SGLT2阻害薬がHFrEFのみならず、HFmrEF、HFpEFにおいてもClass I推奨となった点である。これは、SGLT2阻害薬がLVEFや糖尿病の有無によらず、心不全の予後を改善する可能性を示唆しており、心不全薬物療法の基盤となる薬剤として位置付けられたことを意味する。一方で、HFpEFにおいては、SGLT2阻害薬Class I推奨に加え、特定の表現型(フェノタイプ)に基づいた治療戦略の重要性も示唆されている。とくに、肥満合併例に対するインクレチン関連薬(GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬)のClass IIa推奨は、HFpEFの多様性を考慮し、個々の患者の背景にある病態生理や併存疾患に応じた個別化治療へと向かう流れを示している。表1:肥満合併心不全に対するインクレチン関連薬(GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬)の推奨画像を拡大する次回は、本ガイドライン改訂における特殊病態や新規疾患概念とその治療や評価法、社会的側面への対応、急性非代償性心不全の管理などのポイントについて解説する。 1) Kitai T, et al. Circ J. 2025 Mar 28. [Epub ahead of print] 2) Bozkurt B, et al. J Card Fail. 2021;27:387-413. 3) Kosiborod Mikhail N, et al. N Engl J Med. 2023;389:1069-1084. 4) Packer M, et al. N Engl J Med. 2025;392:427-437.

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医学的に説明困難な身体症状【日常診療アップグレード】第31回

医学的に説明困難な身体症状問題72歳男性。3ヵ月前から始まった夜間の息苦しさを主訴に来院した。高血圧、糖尿病、逆流性食道炎で近くのクリニックに通院中である。バルサルタン(ARB)、シタグリプチン(DPP-4阻害薬)、ランソプラゾール(PPI)を内服中である。血液検査、尿検査、心電図、心エコー検査、上部内視鏡検査で異常を認めない。説明が非常に難しい苦しみで、ある時にスッとよくなるという。バイタルサインは正常で、身体診察でも異常はない。患者は心疾患を心配している。冠動脈CT検査をオーダーした。

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第269回 糖尿病黄斑浮腫患者の視力が経口薬ラミブジンで改善

糖尿病黄斑浮腫患者の視力が経口薬ラミブジンで改善専門家の手を必要とする目への注射ではなく経口投与で事足りる抗ウイルス薬のラミブジンが、小規模ながら歴としたプラセボ対照無作為化試験で糖尿病黄斑浮腫(DME)患者の視力を改善しました1,2)。網膜に水が溜まることで生じるDMEは糖尿病患者の失明の主な原因であり、糖尿病患者の14例に1例ほどが被ると推定されています。DMEの鉄板の治療といえば目への血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬の定期的な注射ですが、高価であり、世界的には多くの患者がしばしば手にすることができていません。DMEをラミブジンのような経口薬で治療できるなら、たいてい毎月1回の投与が必要な注射薬に比べて格段に便利であり、DME治療を飛躍的に進歩させることができそうです。月20ドルかもっと安価なラミブジンは核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)の類いの1つで、ウイルスのポリメラーゼ(逆転写酵素)を抑制するもともとの効果に加えて、免疫系の一員のインフラマソームを阻止する作用があります。インフラマソームは感染の感知に携わりますが、悪くするとどうやらDMEの発現に手を貸してしまうようです。ゆえにインフラマソーム阻害作用を有するラミブジンはDMEに効くかもしれないと米国のバージニア大学の研究者Jayakrishna Ambati氏らは考えました。Ambati氏はブラジルの大学と協力して無作為化試験にDME成人患者24例を組み入れ、10例にはラミブジン、あとの14例にはプラセボを8週にわたって1日2回服用してもらいました。また、4週目にはVEGF阻害薬ベバシズマブが眼内に注射されました(わが国では眼病変に対する投与は適応外)。ベバシズマブの効果が及ぶ前の4週時点で、ラミブジン投与群の視力検査の成績はもとに比べて約10文字(9.8文字)改善していました。一方プラセボ群は逆に2文字ほど(1.8文字)悪化していました。ラミブジンはベバシズマブの効果をも高めうるようで、ベバシズマブ眼内注射後4週時点での視力検査成績は17文字ほど(16.9文字)改善していました。プラセボ群のベバシズマブ眼内注射後4週時点の視力改善はわずか5文字ほど(5.3文字)でした。より大規模な試験でのさらなる裏付けが必要ですが、今回の試験結果によるとラミブジンは単独投与とベバシズマブ眼内注射との組み合わせのどちらでも効果があるようです。専門医に診てもらうことがままならない、定期的な診療を受ける余裕や交通手段がない世界の多くの患者をラミブジンが劇的に生きやすくしうる可能性があるとAmbati氏は言っています。NRTIを作り変えて逆転写酵素には手出ししないようにしたKamuvudineと銘打つインフラマソーム阻害薬も生み出されており3)、その1つのKamuvudine-9(K9)がDME患者相手の第I相試験段階に至っています4)。Ambati氏を共同設立者の1人とするInflammasome Therapeutics社が試験に協力しています。 参考 1) Pereira F, et al. Med. 2025 May 23. [Epub ahead of print] 2) HIV drug can improve vision in patients with common diabetes complication, clinical trial suggests / Eurekalert 3) Narendran S, et al. Signal Transduct Target Ther. 2021;6:149. 4) ClinicalTrials.gov / Evaluation of K9 in Subjects With Diabetic Macular Edema (DME)

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食生活の質は初潮を迎える年齢に影響する

 何を食べるかが、女児の初潮を迎える年齢に影響を与えるようだ。新たな研究で、食生活の炎症レベルが最も高かった女児では最も低かった女児に比べて、翌月に初潮を迎える可能性が約15%高いことが示された。この結果は、身長やBMIで調整後も変わらなかったという。米フレッド・ハッチンソンがんセンターのHolly Harris氏らによるこの研究の詳細は、「Human Reproduction」に5月6日掲載された。 この研究は、9〜14歳の米国の小児を対象にした追跡調査研究であるGrowing Up Today Study(GUTS)に1996年と2004年に参加した女児のうち、ベースライン時に初潮を迎えておらず、食生活の評価など必要なデータの完備した7,530人を対象にしたもの。参加者は初潮を迎える前に、9〜18歳の若者向けの食品摂取頻度調査(youth/adolescent food frequency questionnaire;YAQ)に回答しており、追跡期間中(2001〜2008年)に初潮を迎えた場合には、その年齢を報告していた。 研究グループは、YAQのデータを用いて代替健康食指数(Alternate Healthy Eating Index 2010;AHEI-2010)と経験的炎症性食事パターン(Empirical Dietary Inflammatory Pattern;EDIP)のスコアを算出し、食生活の質を評価した。AHEI-2010は、野菜、豆類、全粒穀物などの健康的な食品に高い点数を、赤肉や加工肉などの食品やトランス脂肪酸、塩分などを含む食品といった不健康な食品には低い点数を付与する。一方EDIPは、食生活が体内で炎症を引き起こす可能性を総合的に評価する。参加者を、スコアごとに最も高い群から最も低い群の5群に分類した上で、AHEI-2010スコアおよびEDIPスコアと初潮を迎える年齢との関連を検討した。 参加者の93%が追跡期間中に初潮を迎えていた。BMIや身長を考慮して解析した結果、AHEI-2010スコアが最も高い群、つまり、食生活が最も健康的な群は最も低い群に比べて、翌月に初潮を迎える可能性が8%低いことが示された(ハザード比0.92、95%信頼区間0.85〜0.99、P=0.03)。また、EDIPが最も高い群、つまり、食事の炎症性レベルが最も高い群では最も低い群に比べて、翌月に初潮を迎える可能性が15%高いことも示された(同1.15、1.06〜1.25、P=0.0004)。 Harris氏は、「AHEI-2010とEDIPの2つの食生活パターンは初潮年齢と関連しており、食生活がより健康的な女児では初潮年齢の高いことが示唆された。重要なのは、これらの結果がBMIや身長とは無関係である点だ。これは、体格に関わりなく健康的な食生活が重要であることを示している。初潮年齢の早期化は、糖尿病、肥満、心血管疾患、乳がんのリスク上昇など、その後の人生におけるさまざまな転帰と関連していることを考えると、これらの慢性疾患のリスク低減に取り組む上で、初潮を迎える前の時期は重要な可能性がある」と述べている。 Harris氏はまた、「われわれの調査結果は、全ての小児期および思春期の子どもが健康的な食事へのアクセスと選択肢を持つべきこと、また、学校で提供される朝食や昼食は、エビデンスに基づくガイドラインに準拠したものであるべきことを浮き彫りにしている」と話している。

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抗ANGPTL4抗体、新たな脂質低下療法の可能性/Lancet

 完全ヒト化抗アンジオポエチン関連タンパク質4(ANGPTL4)抗体MAR001は、循環血中のトリグリセライドおよびレムナントコレステロールを安全かつ効果的に低下させ、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクを低減する有望な脂質低下療法となる可能性があることが、米国・Marea TherapeuticsのBeryl B. Cummings氏らが実施した「MAR001試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月15日号で報告された。単回と複数回投与の安全性を評価する2つの試験 研究グループは、MAR001によるANGPTL4の阻害の包括的な安全性の評価を目的に、ヒトで初めての無作為化プラセボ対照単回増量投与第I相試験(2017年11月~2019年9月)および二重盲検無作為化プラセボ対照第Ib/IIa相試験(2013年11月~2024年7月)を行った(Marea Therapeuticsの助成を受けた)。 第I相試験(全56人)は3つのパートから成り、パート1A(健康な成人)では年齢18~65歳、体重50kg以上、BMI値18~30の32人を登録し、MAR001 15mg、50mg、150mg、450mgを単回皮下注射する群に各6人およびプラセボ群に8人、パート1B(高BMI)では体重70kg以上、BMI値30~40の12人をMAR001 450mg群に9人およびプラセボ群に3人、パート1C(高トリグリセライド)では体重59kg以上、空腹時トリグリセライド値200~500mg/dLの12人をMAR001 450mg群に8人およびプラセボ群に4人をそれぞれ割り付けた。 主要目的は、MAR001単回皮下注射から141日後までの安全性と忍容性の評価と、健康な試験参加者における薬物動態の評価とした。 第Ib/IIa相試験は、高トリグリセライド血症で2型糖尿病の既往のある成人、またはスクリーニング時のHOMA-IR値が2.2以上で腹部肥満(ウエスト周囲長が女性88cm以上[アジア系は80cm以上]、男性102cm以上[同90cm以上]と定義)のある成人を対象とし、オーストラリアの2施設で55人を登録し、MAR001 150mg群に10人、同300mg群に9人、同450mgに17人、プラセボ群に19人を割り付け、2週ごとに7回投与した。 主要目的は、代謝機能障害を有する参加者におけるMAR001複数回投与の安全性と忍容性の評価であった。投与終了から12週間の追跡調査を行った。有害事象の多くはGrade1/2、重篤なものはない 2つの試験の結果、MAR001は安全で、全般に良好な忍容性を示した。第Ib/IIa相試験の全体で、有害事象は85%に発現し、このうちGrade1が40%、Grade2が44%であった。とくに注目すべき有害事象は27%、投与中止に至った有害事象は2%、試験薬関連の可能性がある有害事象は38%に認めた。一方、重篤な有害事象および死亡に関連した有害事象はみられなかった。 また、試験薬関連の全身性の炎症バイオマーカー値の上昇や、MRIで評価した腸間膜リンパ節の大きさや炎症の変化は観察されなかった。 MAR001 450mgの投与による、プラセボで補正した12週目におけるトリグリセライド値の平均減少率は52.7%(90%信頼区間[CI]:-77.0~-28.3)であり、レムナントコレステロールの平均減少率は52.5%(-76.1~-28.9)であった。 著者は、「これらの臨床所見は、ANGPTL4の阻害により安全かつ効果的にトリグリセライドとレムナントコレステロールが減少し、ASCVDリスクが大幅に低下するというヒトの遺伝的予測と一致する」「これらの結果は、ASCVDリスクを低下させる新たな脂質低下療法として、また心血管リスクが残存する高リスク者に対する標的治療として、MAR001の研究開発の継続を支持するものである」としている。

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疫学・自然経過―その2【脂肪肝のミカタ】第3回

疫学・自然経過―その2Q. 肝臓だけではない、イベント数の実態は?代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は肝臓だけの病気と考えるべきではない。肝硬変や肝がんを含む肝疾患イベントよりも、心血管系イベントや肝臓以外の悪性疾患患者のほうが多いとされる(図2)。(図2) 虎の門病院で組織学的にMASLDと診断された552例における各種イベント発生頻度画像を拡大する肝外悪性疾患では、男性で大腸がん、女性で乳がんのリスクが増加することが示されており、健康診断や人間ドック等による、年齢に応じた悪性疾患のスクリーニングの重要性も啓発していく必要がある1-4)。また、心血管系リスク症例の絞り込みも重要な課題である。動脈硬化性疾患予防ガイドラインで、動脈硬化性心血管疾患の発症予測モデルとして採用されているスコアなどの活用も検討されるべきである5)。MASLDは背景にメタボリックシンドロームが存在するため、肝臓の線維化の状態に寄らず、常に心血管系イベントや肝臓以外の悪性疾患にも注意を払う必要がある。とくに、肝臓の線維化が進行していない症例では、心血管や肝臓以外の悪性疾患のイベントのほうが目立ち、肝臓の線維化進行例では肝硬変や肝がんを含む肝疾患イベントのほうが目立つ6)。すなわち、イベントの頻度は相対的に考えるべきといえる(図3)。(図3)MASLDからの各種イベントの実態画像を拡大する1)Rinella ME, et al. Hepatology. 2023;77:1797-1835.2)European Association for the Study of the Liver (EASL) ・ European Association for the Study of Diabetes (EASD) ・ European Association for the Study of Obesity (EASO). J Hepatol. 2024;81:492-542.3)日本消化器病学会・日本肝臓学会編. NAFLD/NASH診療ガイドライン2020. 南江堂.4)Akuta N, et al. BMC Gastroenterol. 2021;21:434.5)日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022.6)Vuppalanchi R,et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021;18:373-392.

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世界の主要な20の疾病負担要因、男性の健康損失が女性を上回る

 2021年の世界疾病負担研究(GBD 2021)のデータを用いた新たな研究で、女性と男性の間には、疾病負担の主要な20の要因において依然として格差が存在し、過去30年の間にその是正があまり進んでいないことが示された。全体的に、男性は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や交通事故など早期死亡につながる要因の影響を受けやすいのに対し、女性は筋骨格系の疾患や精神障害など致命的ではないが長期にわたり健康損失をもたらす要因の影響を受けやすいことが示されたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のVedavati Patwardhan氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Public Health」5月号に掲載された。 Patwardhan氏らは、GBD 2021のデータを用いて、1990年から2021年における10歳以上の人を対象に、世界および7つの地域における上位20の疾病負担要因の障害調整生存年(DALY)率について、男女別に比較した。DALYとは、障害や疾患などによる健康損失を考慮して調整した指標であり、1DALYとは1年間の健康な生活の損失を意味する。20の疾病負担要因は、COVID-19、心筋梗塞、交通事故、脳卒中、呼吸器がん、肝硬変およびその他の慢性肝臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腰痛、うつ病、結核、頭痛、不安症(不安障害)、筋骨格系疾患、転倒、下気道感染症、慢性腎臓病、アルツハイマー病およびその他の認知症、糖尿病、HIV/エイズ、加齢性難聴およびその他の難聴であった。 その結果、2021年では、検討した20要因のうちCOVID-19や肝臓病など13要因で男性のDALYは女性よりも高いことが推定された。男女差が最も顕著だったのはCOVID-19で、年齢調整DALY(10万人当たり)は男性で3,978、女性で2,211であり、男性の健康負担は女性に比べて44.5%高かった。COVID-19の負担は地域を問わず男性の方が高かったが、特に差が大きかったのはサハラ以南のアフリカ、ラテンアメリカ諸国、カリブ海諸国だった。 DALYの男女差の絶対値が2番目に大きかった要因は心筋梗塞で、10万人当たりのDALYは男性で3,599、女性で1,987であり、男性の健康負担は女性より44.7%高かった。地域別に見ると、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中央アジアでは男女差が大きかった。 また、女性に比べて男性に多い要因は、年齢が低いほどリスク増加が小さい傾向が認められたが、交通事故による負傷は例外であり、世界中で10〜24歳の若い男性で不釣り合いに多く発生していた。 一方、女性は長期的な健康損失をもたらす疾患において男性よりもDALYが高い傾向が見られた。特にDALYの男女差が顕著だったのは、腰痛(絶対差478.5)、うつ病(同348.3)、頭痛(332.9)であった。また、女性には、人生の早い段階からより深刻な症状に悩まされ、その症状は年齢とともに悪化する傾向も認められた。 論文の共著者である米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)のGabriela Gil氏は、「女性の健康損失の大きな要因、特に筋骨格系疾患と精神疾患は十分に注目されているとは言えない。女性のヘルスケアに対しては、性や生殖に関する懸念などこれまで医療制度や研究資金が優先してきた領域を超えた、より広範な取り組みが必要なことは明らかだ」と述べている。 論文の上席著者であるIHMEのLuisa Sorio Flor氏は、「これらの結果は、女性と男性では経時的に変動したり蓄積されたりする多くの生物学的要因と社会的要因が異なっており、その結果、人生の各段階や世界の地域ごとに経験する健康状態や疾患が異なることを明示している」との見方を示す。その上で、「今後の課題は、性別やジェンダーを考慮した上で、さまざまな集団において、早期から罹患率や早期死亡の主な原因を予防・治療する方法を設計して実施し、評価することだ」と述べている。

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糖尿病関連腎臓病、日本人の病的バリアントが明らかに

 糖尿病関連腎臓病(DKD)は2型糖尿病の長期合併症であり、心血管系合併症や死亡率の高さに関連している。今回、日本国内におけるDKD患者の病原性変異について明らかにした研究結果が報告された。研究は東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科の羽柴豊大氏らによるもので、詳細は「Journal of Diabetes Investigation」に4月8日掲載された。 DKDは、長期の糖尿病罹病期間と糖尿病網膜症の合併に基づき、腎生検を必要とせずに臨床的に診断される。糖尿病患者の中には、同様に血糖コントロールを行っているにもかかわらず、腎機能障害を発症する患者としない患者がいることから、遺伝的要因が糖尿病およびDKD発症の根底にある可能性がある。実際、2021年には米国の1型および2型糖尿病を患うDKD患者370名を対象とした研究から、白人患者の22%で病原性変異が特定されている。しかし、この割合は民族やデータベースの更新状況によって異なっている可能性も否定できない。このような背景を踏まえ、著者らは最新のデータベースを用いて、日本の2型糖尿病を伴うDKD患者のサンプルから全ゲノム配列解析(WGS)を実施し、病原性変異を持つ患者の割合を決定することとした。 本研究には、東京大学糖尿病性腎疾患コホートよりWGSの検体提供に同意した79人(平均年齢72歳)のDKD患者が組み入れられた。全体の25名(31.6%)に糖尿病網膜症が認められ、9名(11.4%)に腎臓病の家族歴があった。 WGSの結果、27人(34.1%)の患者で、24の遺伝子(29の部位)に位置する病原性変異が同定された。すべての変異はヘテロ接合型であり、ホモ接合型は検出されなかった。同定されたヘテロ接合型病原性変異は、大きく、糸球体症関連(23.7%)、尿細管間質性腎炎関連(36.8%)、嚢胞性腎疾患/繊毛病関連(10.5%)、その他疾患関連(28.9%)に分類された。 27人の患者で同定された変異のうち、常染色体顕性(優性)遺伝パターンに関連し、疾患の発症に潜在的に影響を及ぼすものを「診断的変異」と定義した。診断的変異は7つの遺伝子(ABCC6、ALPL、ASXL1、BMPR2、GCM2、PAX2、WT1)において10人(12.7%)の患者で認められた。これらの遺伝子はすべて常染色体顕性遺伝性疾患と関連していた。 本研究の結果について著者らは、「日本では、相当数のDKD患者において腎臓関連のヘテロ接合型病原性変異が特定された。これらの知見は、この変異に民族間の差異が存在する可能性を示唆しており、データベースの更新が変異検出に与える影響を浮き彫りにしている」と述べている。今回、DKD患者で認められた変異の臨床的意義については、「依然として不明であり、その意義をさらに検討するためにはより大規模なコホート研究が必要」と付け加えた。 本研究の限界点として、サンプル数が少なく、日本国内の単一施設のコホート研究であったことから、一般化に制約があることが挙げられる。また、WGS解析はDKD集団のみを対象としており、健常者や腎障害のない糖尿病患者との比較が行われなかったため、本研究は記述的研究にとどまるものとされている。

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肥満体型の若い女性の健康状態は良好か

 体型と健康状態に相関はあるのだろうか。このテーマについて、オーストラリア・クイーンズランド大学公衆衛生学部オーストラリア女性少女健康研究センターのAnnette J. Dobson氏らの研究グループは、若年女性に多くみられる健康状態の年齢別有病率とBMIカテゴリーとの関連性が世代間で異なるかどうかを検討するため、18~30歳の女性の体重と身長を解析した。その結果、低体重・過体重の女性では、健康状態が良好ではないことが判明した。この結果は、Obesity誌オンライン版2025年5月13日号に掲載された。低体重でも過体重でも健康状態に影響 研究グループは、1973~78年と1989~95年生まれの参加者で、それぞれ1996年と2013年に募集された“Australian Longitudinal Study on Women's Health”からのデータを基に、18~23、22~27、25~30歳の各年齢で体重と身長を報告した女性を対象とした。評価項目は、自己評価による健康状態、一般的な疾患の有病率、月経症状、妊娠合併症。オッズ比(OR)は、反復測定を考慮した一般化推定方程式を用いたロジスティック回帰モデルを用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・自己評価による健康状態が「普通」または「不良」の場合、低体重域の女性(OR:1.51、95%信頼区間[CI]:1.30~1.74)または過体重域の女性(OR:1.47、95%CI:1.34~1.60)でORが高かった。 ・標準体重の女性と比較して、肥満の女性(OR:3.04、95%CI:2.76~3.35)で最もORが高く、より最近のコホートでもORが高かった(OR:1.50、95%CI:1.38~1.63)。 ・上記と同じパターンがすべての評価項目でみられた。 以上の結果から研究グループは、「BMIの増加による健康への影響は、近年においても軽減されていない。この結果は、若い女性に正常なBMIの利点を広めるために利用できる」と結論付けている。

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高リスク前立腺がんにおいてテストステロン濃度回復は全生存率と関連

 放射線治療と長期アンドロゲン除去療法(ADT)を受けている高リスク前立腺がん患者において、血清テストステロン(T)濃度が正常レベルまで回復することは、全生存率の有意な改善と関連するという研究結果が、米国臨床腫瘍学会年次泌尿生殖器がんシンポジウム(ASCO GU25、2月13〜15日、米サンフランシスコ/オンライン開催)で報告された。 シェルブルック大学病院センター(カナダ)のAbdenour Nabid氏らは、高リスク前立腺がん患者630人を、骨盤放射線治療に加えて36カ月間のADTを行う群と18カ月間のADTを行う群にランダムに割り付けた(それぞれ310人、320人)。血清T濃度は、ベースライン時とその後も定期的に測定された。T濃度の回復は、各試験実施医療機関で正常範囲とされる範囲内に対象者のT濃度が戻ることと定義した。解析対象として、22年間(追跡期間中央値17.4年間)に測定された、515人の患者の6,587のT濃度データが利用可能であった。 解析の結果、患者の52.4%でT濃度が正常レベルまで回復した。18カ月間のADTコホートでは57.0%、36カ月間のADTコホートでは44.3%であった。T濃度が正常レベルまで回復しなかった患者は、年齢が高く、ステージが進行しており、糖尿病を有していた。T濃度が正常レベルまで戻った患者において、T濃度回復までの時間の中央値は、3.6年であった。10年および15年の全生存率は、T濃度が回復した患者でそれぞれ76%、44%、回復しなかった患者で55%、30%であった。全体的なハザード比を考慮すると、T濃度が回復した患者では死亡リスクが有意に低下した(ハザード比0.54)。 著者らは、「T濃度が回復しない患者での死亡率上昇は、前立腺がんとは無関係な原因によるものである可能性が高い」と述べている。 なお複数人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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飲酒は膵がんに関連するのか~WHOの大規模プール解析

 アルコール摂取と膵がんリスクとの関連を示すエビデンスは国際的専門家パネルによって限定的、あるいは決定的ではないと考えられている。今回、世界保健機関(WHO)のInternational Agency for Research on Cancer(IARC)のSabine Naudin氏らは、30コホートの前向き研究の大規模コンソーシアムにおいて、アルコール摂取と膵がんリスクとの関連を検討した。その結果、性別および喫煙状況にかかわらず、アルコール摂取と膵がんリスクにわずかな正の関連が認められた。PLOS Medicine誌2025年5月20日号に掲載。 本研究における集団ベースの個人レベルのデータは、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の4大陸にわたる30のコホートからプールした。1980~2013年に、がんを発症していない249万4,432人(女性62%、ヨーロッパ系84%、飲酒者70%、喫煙歴なし47%)を登録(年齢中央値57歳)、1万67例が膵がんを発症した。喫煙歴、糖尿病の有無、BMI、身長、教育、人種・民族、身体活動で調整した年齢・性別による層別Cox比例ハザードモデルにおいて、アルコール摂取量のカテゴリーと10g/日増加による膵がんのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・アルコール摂取量は膵がんリスクと正の相関を示し、1日0.1~5g未満と比べた1日30g以上60g未満および1日60g以上でのHR(95%CI)はそれぞれ1.12(1.03~1.21)および1.32(1.18~1.47)であった。・男女別では、女性で1日15g以上、男性で1日30g以上の場合に関連が明らかになった。・アルコール摂取量が10g/日増加すると、膵がんリスクは全体で3%増加し(HR:1.03、95%CI:1.02~1.04、p<0.001)、喫煙経験者では3%増加した(HR:1.03、95%CI:1.01~1.06、p=0.006)が、性別(異質性:0.274)または喫煙状況(異質性:0.624)による異質性は示されなかった。・地域別では、ヨーロッパ/オーストラリア(10g/日増加によるHR:1.03、95%CI:1.00~1.05、p=0.042)および北米(HR:1.03、95%CI:1.02~1.05、p<0.001)では関連が認められたが、アジア(HR:1.00、95%CI:0.96~1.03、p=0.800、異質性:0.003)では関連は認められなかった。・アルコールの種類別では、ビール(10g/日増加によるHR:1.02、95%CI:1.00~1.04、p=0.015)とスピリッツ/リキュール(95%CI:1.03~1.06、p<0.001)は膵がんリスクとの正の関連が認められたが、ワイン(HR:1.00、95%CI:0.98~1.03、p=0.827)については認められなかった。 著者らは、「地域やアルコールの種類による関連性の違いは、飲酒習慣の違いを反映している可能性があり、さらなる調査が必要」と考察している。

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フィブラート系薬でCKDリスクは増加、死亡リスクは低下

 フィブラート系薬の服用が腎機能や死亡に及ぼす影響を検討した結果、フィブラート系薬は慢性腎臓病(CKD)発症リスクの増加と関連する一方で、末期腎不全(ESKD)発症および死亡リスクの低下と関連していたことを、米国・Harbor-UCLA Medical Centerの高橋 利奈氏らが明らかにした。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年4月7日号掲載の報告。 フィブラート系薬は血清クレアチニンの急激な上昇を引き起こす可能性があるが、腎アウトカムの評価は追跡期間の短い研究では困難である。さらに、特定の腎アウトカムに関する研究は限られており、それらの結果も一貫していない。 そこで研究グループは、フィブラート系薬の新規処方とCKDやESKDの発症、死亡との関連を調べるため、米国退役軍人省の研究データベース(68万8,382例)を用いた後ろ向きコホート研究で、最大14年間にわたり追跡・分析を行った。人口統計学的因子、主な併存疾患、eGFRを含む臨床検査値、アルブミン尿、服用薬で調整し、Cox比例ハザードモデルおよびFine-Grayモデルを用いて関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・5万8,773例がフィブラート系薬を新規で服用開始した。全体の平均年齢は59(SD 13)歳で、フィブラート系薬服用患者は男性や喫煙者が多く、併存疾患を有する頻度も高かった。・完全調整モデルでは、フィブラート系薬の服用は、非服用と比較してCKDリスクの上昇と関連していた(ハザード比[HR]:1.21、95%信頼区間[CI]:1.19~1.24)。・フィブラート系薬の服用は、死亡リスク(HR:0.91、95%CI:0.89~0.93)およびESKDリスク(0.80、0.71~0.92)の低下と関連していた。 これらの結果より、研究グループは「フィブラート系薬が腎アウトカムと生存に及ぼす潜在的な利点を裏付けるにはさらなる研究が必要である」とまとめた。

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肥満者の体重減少、チルゼパチドvs.セマグルチド/NEJM

 非糖尿病の肥満成人において、チルゼパチドはセマグルチドと比較して72週時の体重および胴囲の減少に関して優れていることが、米国・Weill Cornell MedicineのLouis J. Aronne氏らSURMOUNT-5 Trial Investigatorsによる第IIIb相無作為化非盲検並行群間比較試験「SURMOUNT-5試験」の結果で示された。チルゼパチドおよびセマグルチドは、肥満の管理に非常に有効な薬剤である。肥満であるが2型糖尿病は有していない成人において、チルゼパチドとセマグルチドの有効性および安全性を直接比較した臨床試験はこれまでなかった。NEJM誌オンライン版2025年5月11日号掲載の報告。ベースラインから72週時までの体重の変化率を比較 SURMOUNT-5試験は、米国およびプエルトリコの32施設で実施された。対象は、BMI値30以上、またはBMI値27以上かつ肥満関連合併症(高血圧症、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患)を1つ以上有する18歳以上の成人で、糖尿病と診断されている患者、肥満に対する外科手術の既往または予定のある患者などは除外した。 適格患者をチルゼパチド(10mgまたは15mg)群またはセマグルチド(1.7mgまたは2.4mg)群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ週1回72週間皮下投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから72週時までの体重の変化率とした。重要な副次エンドポイントは、ベースラインから72週時までの体重減少が少なくとも10%、15%、20%および25%以上の患者の割合、および胴囲の変化量などとした。体重減少率20.2%vs.13.7%、体重減少25%以上の患者割合31.6%vs.16.1% 2023年4月21日~2024年11月13日に、適格性を評価した948例のうち751例が無作為化され、そのうち750例が少なくとも1回の治験薬投与を受けた。 72週時の体重変化率の最小二乗平均値は、チルゼパチド群-20.2%(95%信頼区間[CI]:-21.4~-19.1)、セマグルチド群-13.7%(-14.9~-12.6)であり、体重に関してチルゼパチドのセマグルチドに対する優越性が示された(推定治療差:-6.5%ポイント、95%CI:-8.1~-4.9、p<0.001)。 72週時の体重がベースラインから少なくとも10%、15%、20%および25%以上減少した患者の割合は、チルゼパチド群がそれぞれ81.6%、64.6%、48.4%、31.6%、セマグルチド群が60.5%、40.1%、27.3%、16.1%であった。 72週時の胴囲の変化量の最小二乗平均値は、チルゼパチド群で-18.4cm(95%CI:-19.6~-17.2)、セマグルチド群で-13.0cm(-14.3~-11.7)であった(p<0.001)。 有害事象は、チルゼパチド群で76.7%、セマグルチド群で79.0%の患者で報告され、両群における主な有害事象は胃腸障害(悪心、便秘、下痢など)であった。重篤な有害事象はそれぞれ4.8%、3.5%に認められた。

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超加工食品の摂取は早期死亡リスクを高める

 超加工食品の摂取量が多いほど早期死亡リスクも高まるようだ。新たな研究で、超加工食品の摂取に起因する早期死亡は、総エネルギー摂取量に占める超加工食品の割合が高いほど増加することが明らかになった。オスワルド・クルス財団(ブラジル)のEduardo Nilson氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Preventive Medicine」に4月28日掲載された。 超加工食品は、飽和脂肪酸、でんぷん、添加糖など、主に自然食品から抽出された物質で作られており、風味や見た目を良くし、保存性を高めるために、着色料、乳化剤、香料、安定剤などさまざまな添加物が加えられている。具体例は、パッケージ済みの焼き菓子、砂糖が添加されたシリアル、すぐに食べられる、または温めるだけで食べられる製品などが挙げられる。研究の背景情報によると、超加工食品の摂取は心臓病、肥満、糖尿病、一部のがん、うつ病など32種類の健康問題と関連付けられているという。 今回の研究では、まず、過去の研究で用いた超加工食品の摂取とあらゆる原因による死亡(全死亡)との関連に関する10件の研究のうち、基準を満たした7件を選出し、量反応関係メタアナリシスを実施した。対象国は、オーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、メキシコ、英国、米国の8カ国で、対象者の総計は23万9,982人であった。国ごとの超加工食品の摂取量は、コロンビア(15.0%)とブラジル(17.4%)では少なめ、チリ(22.8%)とメキシコ(24.9%)では中程度であり、オーストラリア(37.5%)、カナダ(43.7%)、英国(53.4%)、米国(54.5%)では多かった。 解析の結果、総エネルギー摂取量に占める超加工食品の摂取量が10%増加するごとに全死亡リスクが2.7%上昇することが明らかになった(相対リスク1.027、95%信頼区間1.017〜1.037、P<0.0001)。次に、この相対リスクを用いて、早期死亡のうちどの程度が超加工食品の摂取に起因すると推定されるかを評価するために人口寄与割合(PAF)を計算した。その結果、超加工食品が原因と推定される早期死亡の割合は約4%から約14%に及ぶことが明らかになった。具体的には、最も低かったのがコロンビアの3.9%(7万2,940件)、最も高かったのは英国の13.8%(12万8,743件)、米国の13.7%(90万6,795件)であった。 Nilson氏は、「高所得国では超加工食品の摂取量はすでに高レベルだが、10年以上にわたって高止まりしたままだ。一方、低・中所得国では摂取量が増加し続けていることは懸念される。これは、現時点では高所得国での超加工食品摂取がもたらす健康への負担は他の国より高い一方で、その負担が他の国々でも増加しつつあるということだ」と述べている。 Nilson氏はさらに、「これは、世界的に超加工食品の摂取量を抑制し、地元の新鮮で最小限の加工食品に基づいた伝統的な食生活を促進する政策が喫緊で必要なことを示している」と「American Journal of Preventive Medicine」の発行元であるElsevier社のニュースリリースで強調している。

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