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多枝病変を伴う冠動脈疾患で、薬剤溶出性ステント留置後に抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を12ヵ月間受けた時点で安定状態にある患者において、アスピリン単独療法をさらに12ヵ月間受ける場合と比較して、クロピドグレルとアスピリンによるDAPTの12ヵ月間の延長は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合のリスクを低下させ、かつ出血リスクの増加を認めないことが、中国・ハルビン医科大学のJinwei Tian氏らが実施した「DAPT-MVD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2026年7月16日号で報告された。中国97施設で実施した無作為化試験 DAPT-MVD試験は、中国の97施設で実施した非盲検(評価者盲検)無作為化試験(中国国家自然科学基金委員会[NSFC]などの助成を受けた)。2020年10月~2024年3月に、年齢18~75歳、多枝冠動脈病変を有し、薬剤溶出性ステント留置後に12ヵ月間のDAPTを受け、この間に重度の虚血イベントや出血イベントの発生を認めなかった患者を登録した。 被験者8,250例(平均年齢61歳、女性2,497例[30.3%])を、DAPT(クロピドグレル+アスピリン)を受ける群(4,125例)またはアスピリン単独療法を受ける群(4,125例)に無作為に割り付け、12ヵ月間投与した。 有効性の主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合とした。安全性の主要評価項目は、臨床的に意義のある出血または大出血(BARC出血基準[タイプ:0~5、数値が大きいほど出血の重症度が高度]のタイプ2以上)であった。有効性の主要評価項目、DAPT群5.8%vs.アスピリン単独群6.8% 初回PCI前の診断名は、ほぼ全例(8,109例[98.3%])が急性冠症候群(心筋梗塞2,806例[34.0%]を含む)であった。初回PCIから無作為化までの平均(±SD)日数は378.6(±19.8)日だった。 無作為化前のDAPTの内訳は、5,534例(67.1%)がクロピドグレル+アスピリン、2,716例(32.9%)がチカグレロル+アスピリンであった。ベースラインで2,323例(28.2%)が糖尿病を有していた。追跡期間中央値は34.3ヵ月(四分位範囲[IQR]:24.3~42.2)。 有効性の主要評価項目の発生(無作為化から36ヵ月後の累積発生率のKaplan-Meier推定値)は、DAPT群5.8%(222例)、アスピリン単独群6.8%(266例)であり、DAPT群が有意に優れた(ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.69~0.98、p=0.03)。 また、全死因死亡はDAPT群3.1%、アスピリン単独群3.0%(HR:1.02、95%CI:0.79~1.32)、心血管死はそれぞれ2.0%、1.9%(HR:0.96、95%CI:0.70~1.33)、非致死的心筋梗塞は1.8%、2.5%(HR:0.68、95%CI:0.50~0.93)、非致死的脳卒中は2.5%、3.1%(HR:0.80、95%CI:0.61~1.04)に認められた。 ステント血栓症は、DAPT群では発現せず、アスピリン単独群で2例(0.1%)にみられた。安全性の主要評価項目は1.4%vs.1.5%で同等 安全性の主要評価項目(BARCタイプ2以上)の発生(無作為化から36ヵ月後の累積発生率のKaplan-Meier推定値)は、DAPT群で1.4%(51例)、アスピリン単独群で1.5%(57例)に認められ、両群間に有意な差はなかった(HR:0.89、95%CI:0.61~1.30、p=0.54)。 大出血(BARCタイプ3以上)は、DAPT群で0.8%(29例)、アスピリン単独群で0.9%(33例)にみられ、両群間に有意な差はなかった(HR:0.87、95%CI:0.53~1.43、p=0.59)。 また、重篤な有害事象は、DAPT群で1,143例(27.7%)に1,750件、アスピリン単独群で1,156例(28.0%)に1,701件発現した(p=0.77)。 著者は、「これらの結果は、急性冠症候群を呈し多枝病変を有する患者において、その時点までに虚血イベントや出血イベントを認めていない患者であっても、標準的な12ヵ月間のDAPTでは不十分である可能性を示唆する」としている。 また、「DAPT延長による有効性の主要評価項目の改善は、主に心筋梗塞のリスクが大きく低下したことによるものであった。注目すべきは、この虚血イベントのリスク低減が、臨床的に意義のある出血や大出血のリスク、あるいは死亡リスクの増加を伴っていない点である」と指摘している。