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ASCO2019レポート 肺がん

レポーター紹介2019年のASCO、とくに肺がん領域は、このところ続いた免疫チェックポイント阻害薬による新境地の開拓の連続とは異なり、比較的おとなしいエビデンスの報告が主体であった。その中でも、RELAY試験の中川先生、JIPANG試験の劔持先生、COMPASS試験の瀬戸先生、そして大規模な外科切除データに基づく発表が注目された津谷先生といった日本人演者のOral presentationが多数報告され、活況を呈した。今回はその中から、とくに注目すべき演題について概観したい。RELAY試験EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの患者を対象に、試験治療としてのエルロチニブとラムシルマブの併用療法を標準治療としてのエルロチニブと比較したRELAY試験の結果が報告された。本試験には、Exon19欠失変異、Exon21 L858R変異があり、PS 0-1、血管新生阻害薬の一般的な適格規準を満たし、脳転移のない患者が合計449例登録された。主要評価項目はPFS、副次評価項目は安全性、OS、奏効割合などが設定されている。本試験はこれまでのEGFR-TKIと血管新生阻害薬の試験に比べ多数の症例が登録されており、また、アジア例が77%、そのうち日本人が多数を占めるという点も特徴的である。主要評価項目であるPFS中央値は、試験治療群で19.4ヵ月、標準治療群で12.4ヵ月、ハザード比は0.591(95%信頼区間0.461~0.760)であり、有意にエルロチニブ+ラムシルマブ併用群が良好な成績であった。探索的に実施されたPFS2の解析でも、ハザード比0.690(95%信頼区間0490~0.972)であった。安全性に関しては、Grade 3以上の有害事象が試験治療群で72%、標準治療群で54%報告されており、両者の違いは多くは高血圧であり、皮膚障害などの有害事象はCTCAE Gradeでは大きな違いを認めなかった。脳転移のない患者集団であることは考慮する必要があるものの、PFSの中央値でオシメルチニブのFLAURA試験と同等の結果が得られたことは、今後明らかになる全生存期間の解析に期待が持たれる結果であった。ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの患者を対象に、試験治療としてゲフィチニブとカルボプラチン+ペメトレキセド療法を併用する治療と、標準治療としてのゲフィチニブを比較するPhase III試験の結果が、インドから報告された。本試験には、Exon 19欠失変異、Exon 21 L858R変異があり、PS 0~2の患者が350例登録された。主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、安全性、奏効割合などであった。本試験に登録された患者の年齢中央値は50代半ばであり、PSに関しては2の患者が21~22%登録されており、わが国で実施されたNEJ009試験とは患者集団が異なる可能性が高い試験である。PFS中央値は試験治療群で16ヵ月、標準治療群で8ヵ月であり、ハザード比0.51(95%信頼区間0.39~0.66)と、良好な成績であった。OSについては試験治療群の中央値は到達しておらず、ハザード比は0.45(95%信頼区間0.31~0.65)であり、副次評価項目ながら併用療法群が良好な結果であった。NEJ009試験で話題となったゲフィチニブ、カルボプラチン+ペメトレキセド療法がPDとなった後のPSや腫瘍量などについての情報は開示されなかったものの、同様にOSを延長する結果が得られたことは評価に値する。ただ、FLAURA試験の結果でオシメルチニブが初回治療で注目されており、オシメルチニブを基本として今回と同様のデザインでどのような結果が得られるか、注目がさらに集まっている。JCOG1210/WJOG7813L試験75歳以上の高齢者を対象として、試験治療としてのカルボプラチン+ペメトレキセド療法と標準治療ドセタキセルと比較したPhase III試験である、JCOG1210/WJOG7813L試験の結果も報告されている。本試験には未治療、PS 0~1の75歳以上の非扁平上皮非小細胞肺がん患者433例が登録され、試験治療としてカルボプラチン+ペメトレキセド併用療法とその後の維持療法が、標準治療としてドセタキセル単剤療法が実施された。主要評価項目はOSの非劣性であり、非劣性マージンはハザード比で1.154に設定された。登録された患者の年齢中央値は78歳、試験治療群では最高87歳、標準治療群では最高88歳の高齢患者が登録されている。OSは中央値で試験治療群が18.7ヵ月、標準治療群が15.5ヵ月、ハザード比は0.850(95%信頼区間は0.684~1.056)であり、カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法のドセタキセルに対する非劣性が証明された。安全性については、試験治療群で貧血が多い傾向にあり、標準治療群で白血球減少、好中球減少が多い傾向を認め、治療関連死はそれぞれ2例ずつ報告されている。FACT-LCを用いたQOL評価では、試験治療群が良いことが示されている。非劣性が証明され、かつ有害事象やQOLでも試験治療群が想定されたとおり良好な結果であったことを受け、カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法とそれに続くペメトレキセド維持療法が、75歳以上の高齢者における標準治療と考えて問題ない結果であった。サブセット、フォローアップ今回、肺がん領域では、主たる結果が発表済みの試験においても盛んにサブセット解析、フォローアップ解析の結果が報告された。IMpower150試験は、進行期非小細胞肺がんにおいて、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブにアテゾリズマブを上乗せすることの優越性を示したPhase III試験である。本試験ではこれまでのベバシズマブを用いた試験の結果を受け、肝転移の有無が層別化因子に加えられていた。今回報告された肝転移の有無で分けられたサブセット解析では、肝転移を有する症例で、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法に対し、アテゾリズマブを加えることで、PFS、OSのハザード比がそれぞれ0.41(95%信頼区間0.26~0.62)、0.52(95%信頼区間0.33~0.82)と、いずれも明らかに改善していることが認められた。AACRでは、KEYNOTE189試験において、層別化因子には含まれていなかったものの肝転移の有無でのサブセット解析結果が報告されており、同様に肝転移症例でも有効であることが示されている。肝転移症例が予後不良であることはすでに報告されており、この患者集団においてもプラチナ併用療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法の意義を示すエビデンスが積み重ねられている。一方、フォローアップデータとしては、KEYNOTE189試験のアップデート、PACIFIC試験のアップデート等が報告され、いずれも良好な傾向が維持されていることが示されている。なかでも注目を集めたのはLate breakingで報告されたKEYNOTE001試験の5年生存のデータである。KEYNOTE001試験は、ペムブロリズマブのPhase I試験であり、この中から同薬の安全性や至適投与量のデータだけでなく、PD-L1のTPSカットオフについての知見も得られている。今回報告された5年生存のデータでは、未治療患者、治療歴のある患者それぞれについて、PD-L1発現別のサブセットを含め長期生存のデータが評価された。5年生存割合は、未治療患者では23.2%、治療歴あるセカンドライン以降の患者では15.5%であった。すでにニボルマブの長期生存のデータが報告されており、既治療の患者集団での成績は大きく異ならない印象であった。一方、未治療の患者における23.2%の5年生存割合はこれまで報告されていなかった情報であり、初回治療から免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合の5年生存割合の新たな指標として受け止められる結果であった。PD-L1 TPS別の解析結果でも、PD-L1 50%以上の集団では、未治療、既治療問わず、5年生存割合が25%を超えるという驚くべき結果であった。ただし、Phase I試験のデータであるなど、対象となった患者集団は日常臨床の患者集団とは異なる、具体的にはより状態が良い可能性もあり、この結果が一般臨床でも再現されるかは、今後の追加情報を待つ必要がある。周術期治療NEOSTAR:術前のニボルマブ+イピリムマブ併用療法の有効性と安全性を評価するPhase II試験である。本試験には、切除可能Stage I~IIIA(Single N2)症例44例が登録され、ニボルマブ単剤療法とニボルマブ+イピリムマブ併用療法にランダム化された。主要評価項目はMajor Pathologic Response(<10% viable tumor)とされた。両群併せて手術検体が得られた41例中10例(29%)、ニボルマブ単剤では20%、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法では43%でMPRが達成されていた。有害事象に関しては、ニボルマブ群1例でbronchopleural fistulaとそれに伴う肺臓炎による死亡例が報告されており、それ以外にも、肺臓炎、低酸素血症、低マグネシウム血症、下痢などがGrade 3の有害事象として報告されている。免疫チェックポイント阻害薬による術前導入療法については、本試験以外にも複数実施されており、注目が高まっている。評価手法として用いられたMPRについて、従来からあるpCRを含めた病理学的効果判定の意義や、長期生存のデータとの関連性等について今後さらなる解析が必要と考えられる。JIPANG:Stage II~IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がんの術後化学療法として、試験治療としてシスプラチン+ペメトレキセド併用療法を、標準治療であるシスプラチン+ビノレルビン併用療法と比較したPhase III試験である。本試験には、完全切除後のpStage II-IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がん患者804例が登録され、性別、年齢、pStage、EGFR遺伝子変異の有無、施設を層別化因子としてランダム化された。主要評価項目は無再発生存期間、副次評価項目はOS、安全性等とされ、優越性試験のデザインで実施された。無再発生存期間の中央値は、試験治療群で38.9ヵ月、標準治療群で37.3ヵ月、ハザード比は0.98(95%信頼区間0.81~1.20)であり、試験治療の優越性は証明されなかった。安全性に関しては、Grade 3以上の有害事象の発生頻度は、試験治療群で47.4%、標準治療群で89.4%であり、試験治療群がより良好な結果であった。確かに優越性は証明されなかったものの、有効性は大まかには同等といえ、かつ安全性においてもシスプラチン+ペメトレキセドが良好な傾向を示したことが、会場でも話題になっていた。分子標的薬今回のASCOではMET阻害薬のデータが複数報告された。capmatinibとtepotinibは従来からMET exon14 skipping変異に対する有効性が報告されており、今回もそのフォローアップならびに追加データが示された。capmatinibに関しては、MET amplificationに対しても開発が進められている。MET阻害薬の発表と同時に、クリゾチニブを中心としたMETに対するTKIの耐性機序についても小数例ながら報告が行われており、EGFR等と並んで耐性機序の克服についても将来的には課題となってくることが示唆された。EGFRについては、通常のEGFR-TKIでは効果が限定されるExon 20 insに対する治療薬である、TAK788のPhase I試験の有効性と安全性が報告された。一方、EGFR等Driver oncogeneに対する治療の耐性因子としてMETに対する治療開発も盛んであり、今回ADCであるTeliso-V、EGFRとc-METのbispecific抗体であるJNJ-61186372についても発表があった。EGFR遺伝子変異陽性患者におけるADCであるTeliso-Vとエルロチニブの併用療法、EGFRとc-METを標的とする抗体療法によって、EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおける新たな治療戦略が開拓されることが期待されている。最初に記載したとおり、今回のASCO肺がん領域では、いくつかの重要なPhase III試験の結果発表とともに、免疫チェックポイント阻害薬による術前治療、新たな分子標的薬等、近い将来の標準治療の変革を示唆する情報が多数報告された。今後の各学会、来年のASCOに期待したい。

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世の中を丁寧に眺めると病気に気付ける

 バイオジェン・ジャパン株式会社は、6月13日に都内において希少疾病である脊髄性筋萎縮症(以下「SMA」と略す)の啓発を目的に同社が製作した短編映画『Bon Voyage ボン・ボヤージ ~SMAの勇者、ここに誕生~』の完成記念メディアセミナーを開催した。 SMAは、運動神経に変化が起こり、次第に筋肉の力が弱くなり、生活に影響を及ぼす疾病である。そして、同社は、SMAの治療薬ヌシネルセンナトリウム(商品名:スピンラザ髄注)を製造・販売しているが、SMAの存在がまだ社会へ浸透していないことから、同社が短編映画を制作したものである。 作品は、SMAIII型の患者さんが抱える病識から診断に至るまでの課題をリアルに再現。そして、正確な診断をきっかけに自身と向き合い、夢に向かってさらに力強く生きていく姿を描いている。気付きにくい成人発症のSMAIII型 映画の試写のあと、疾患の概要について齋藤 加代子氏(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター 所長・特任教授)が「脊髄性筋萎縮症(SMA)について」をテーマに講演を行った。 SMAは、SMN1遺伝子の欠失により、運動神経に変化が起こり、次第に筋力が低下し、生活に影響を及ぼす疾患であり、わが国では指定難病となっている。罹患率は、10万例に1~2例と考えられ、約1,400例の患者が推定されている。 本症では、発症年齢や運動機能によって、次のI~IVの4つの型に分類される。・I型:生後6ヵ月までに発症。成長後の最高到達運動機能では座位ができない。・II型:生後1歳6ヵ月までに発症。成長後の最高到達運動機能では立位ができない(座位はできる)。・III型:生後1歳6ヵ月以降で発症。成長後の最高到達運動機能は支えなしで歩ける。(a型:生後18ヵ月~3歳までに発症/b型:3歳以降に発症)・IV型(成人型):20歳以降で発症。運動発達は正常範囲。 とくにIII型のSMAについて、IIIa型では10歳までに患者の約半数が、IIIb型では30歳までに患者の約半数が歩行機能を失うこともあり、学校診断や健康診断でいかに早期に発見し、治療介入できるかが重要だという。 同氏は、成人のIII型の症例(52歳・女性)を示し、13歳で発症し、当初「神経原性筋萎縮症」と診断され、47歳の確定診断まで34年を要したという例を紹介した。なかなか社会に浸透していないIII型の特徴として、「運動機能障害がゆっくりと進行すること」「下肢から上肢に徐々に筋力の低下がみられること」「手の震え、筋肉のぴくつきがあること」がある。また、よく間違われる疾患として、「肢帯型筋ジストロフィー」「筋萎縮側索硬化症」「球脊髄性筋萎縮症」があり、確定診断には、血液による遺伝学的検査が必要になる。 最後に齋藤氏は、「治療薬の進歩もあり、治療の選択肢も多くなった。できる限り早期介入が求められる。医療者も患者もさまざまなWEBサイトをみて学び、本症を理解してもらいたい」と希望を語り、レクチャーを終えた。病気に周りが気付く、患者は自分から診療へ飛び込むことが大事 続いて、本作の完成にあたりトークセッションが行われ、三ッ橋 勇二監督、主演の中島 広稀氏、出演者でSMA患者の上田 菜々氏、演技指導で同じく患者の下島 直宏氏、そして、医学監修の齋藤氏が登壇し、作品の意図、制作の裏話や作品への思いなどが語られた。 中島氏は「患者の発症から診断まで1年分を15分に詰め込んだ作品で、演技ではSMAIII型特有の歩き方が難しかった。演じていて心の問題を感じた。患者さんはひとりで悩みを抱えないことが大事」と感想を述べた。 下島氏は、「完成した作品をみて『人生を走馬灯のように感じた』」と述べ、発症から診断確定までの自身の軌跡を振り返った。「診断では医師との出会いが大事で、自分で診療へ飛び込んでいかないと診断につながらない」と助言を寄せた。 上田氏は、「撮影は、仲良く、楽しくできた。小学生のときにSMAと診断され、引きこもるようになったが、美容に興味を持ち、すこしずつ社会に出られるようになった。作品では、患者さんの悩みや家族の葛藤も描かれていて、最後のシーンでは鳥肌が立った」と作品への賛辞を送った。 齋藤氏は、「SMAは社会に出て活躍できる疾患なので、患者さんは前向きに良い人生を送ることが重要。患者さんは自分を責めず、精神的に良い状態を保つことが大切。また、SMAの症状を見かけたら周りが気付いて、診療を勧めるなど声がけをすることが大事」と語った。 三ッ橋氏は、「作品を通じて、社会に気付きを与えることができたらと思う」と述べ、SMAについては「世の中を丁寧に眺めることで、周りの人の病気に気付くことが大事だと思う」と作品への思いを語った。 なお、本作は、国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」で上映されるほか、下記のサイトから視聴ができる。

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がん専門病院が取り組む、漢方療法の最前線

 漢方薬は、エビデンスの少なさや体質や症状に応じた選択の難しさなどから処方を敬遠する医師も少なくない。神奈川県立がんセンターは、重粒子線治療施設を備えた都道府県がん診療連携拠点病院であり、なおかつ漢方サポートセンターを持つという、全国でも珍しい存在だ。2019年6月6日に行われた「漢方医学フォーラム」(漢方医学フォーラム主催)では、同院の東洋医学科部長の板倉 英俊氏が、がん治療における漢方に関する取り組みと症例を紹介した。がん患者に漢方薬を投与し、心身全体の改善を評価 板倉氏は「がん治療における漢方の役割~西洋医学と漢方医学の融合によるがん支持療法の現状と今後の展望」をテーマに講演した。同院の漢方サポートセンターは2015年に出された厚生労働省の「がん対策加速化プラン」を契機に創設された。がん治療が進化し、長くがんと共生する患者が増えたことを背景に、漢方を使い、患者のQOLを向上させることを命題とする。 がんと漢方のエビデンスとしては、胃がんの補助化学療法が食欲不振や吐き気などの副作用を理由とした中断が多いことを踏まえ、補中益気湯を併用して効果を見た京都大学などの研究がある1)。この研究では、ステージ2~3のがん患者に対し術後の補助化学療法としてS-1もしくはS-1+補中益気湯を投与した群を比較したところ、3年生存率・3年無再発生存率ともに向上は期待しにくい、という結果が出た。 このがんと漢方のエビデンスに対し、板倉氏は「研究データを詳細に見ると、ステージ3、65歳以上という悪い状態にあることが予想される患者には効果が出ている。さらに、漢方では全身を診る漢方医学的診断とそれに基づく生活指導を踏まえた服薬が重要で、この研究結果だけで漢方ががんに効果がないとは言い切れない」と主張した。 神奈川県立がんセンターでは、東洋医学専属の看護師を配置し、がん患者への生活指導をしつつ、容態に適した漢方を処方。心身全体の改善を評価するため、がん患者のQOL評価に用いられる自記式調査票の「EORTC QLQ-C30」を用い、初診時と3ヵ月後を比較した。対象は全がん患者とし、1年間調査した結果、8.4%の改善が見られた(n=34、p<0.02)。化学療法を受け、下痢・食欲不振・関節痛などを主訴とするがん患者に対して漢方薬を処方し、改善に向かった症例も紹介された。 板倉氏は、「西洋医学と東洋医学では身体や病気に対する捉え方が異なる。その違いを知った上で漢方薬をうまく治療に取り入れてほしい」と述べた。具体的には、同じ病気でも患者の身体所見や体質の違いに応じて異なった薬を使う「同病異治(どうびょういち)」の考え方、五臓は物質的な部分だけでなく精神的な部分の機能もコントロールしている「心身一如(しんしんいちにょ)」の考え方が鍵となる、とした。「漢方薬だけでがんが治る」はあり得ない 「一般患者には漢方薬だけでがんが治る、といった誤解が広まっているが、それはあり得ない。東洋医学で心身の回復を図った上で、抗がん剤や手術の西洋医学の療法を施すという、両者の融合が大切」と板倉氏は強調する。今回のがん患者への漢方による改善効果の調査は同院のみ、期間も1年と限られ参考値としての位置付けだ。一方、2007年から国内の全医学部で漢方の講義が行われ、2019年からWHOのICD-11(国際疾病分類第11版)に伝統医学が追加されるなど東洋医学への関心は高まっており、今後はがん患者への漢方による改善効果の臨床データの増加が期待される。

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低リスク患者へのTAVR vs.SAVR、5年フォローアップの結果【Dr.河田pick up】

 NOTION(Nordic Aortic Valve Intervention:北欧大動脈弁インターベンション)trialは、70歳以上で孤立性の重症大動脈弁狭窄を持つ患者を対象に経皮カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)と外科的大動脈弁置換術(SAVR)を比較する目的で行われた試験である。このたび、5年間のフォローアップ後における臨床経過および心エコーの結果が示された。Hans Thyregod氏らの研究グループがCirculation誌6月号に発表(オンライン発表は2月)。北欧3施設の低リスク患者をTAVR:SAVRに無作為化 患者は北欧の3つの施設からリクルートされ、自己拡張型コアバルブ人工弁(145例)もしくは外科的ステント付き生体弁の植込み(135例)に、1:1の割合で無作為に割り付けられた。1次複合エンドポイントは、1年目における、Valve Academic Research Consortium-2(VARC-2)基準に基づく全死亡率、脳卒中および心筋梗塞。TAVR:圧較差は低いものの、中等度以上の大動脈弁閉鎖不全が多い 2群間のベースラインにおける患者の特徴は似ていた。平均年齢は79.1±4.8歳で平均のSociety of Thoracic Surgery-Predicted Risk Of Mortality(STS-PROM)スコアは3.0%±1.7%であった。5年後において、TAVRとSAVRで複合アウトカムやその要素において有意差は認められなかった(カプランマイヤー推定:38.0% vs.36.3%、ログランク検定のp=0.86)。TAVR群は、人工弁の面積が大きく(同:1.7 cm2 vs.1.2cm2、p<0.001)、生体弁の圧較差の平均値も低く(同:8.2mmHg vs.13.7mmHg、p<0.001)、それらの値はフォローアップ中で変化がなかった。ただし、TAVR群は中等度もしくは重症の大動脈弁閉鎖不全を来す頻度が高く(同:8.2% vs.0.0%、p<0.001)、新たにペースメーカーが植込まれる頻度が高かった(同:43.7% vs.8.7%、p<0.001)。また、全症例中4例において、人工弁の不具合による再手術が必要となった。 今回は、低リスク患者におけるTAVRとSAVRの比較で最も長くフォローアップしたスタディーで、自己拡張型生体弁を用いたTAVRとSAVR後における主要な臨床アウトカムにおいては、統計学的な有意差が認められなかった。ただし、生体弁植込み後の弁逆流とペースメーカーの植込みがTAVR群で顕著に認められた。TAVR:低侵襲だが、ペースメーカーの植込みが必要となる可能性がある SAVRと比べて低侵襲であるTAVRの適用は、より低リスクな患者や比較的若い患者に広がりつつある。しかしながら、TAVR後の中等度以上の弁逆流の発生やペースメーカー植え込みの頻度は高い。これまでの研究でも、30日以内の急性期のマルチセンタースタディーで20%の患者にペースメーカーが植込まれている。この研究では、ペースメーカーの植込みが必要となる可能性が高いと言われる自己拡張型大動脈弁を使用しており、ペースメーカーの植込み頻度は40%と高い。実際には症例に応じて、房室ブロックを起こしにくいバルーン拡張型と自己拡張型を使い分けられているため、頻度はもう少し低いと考えられる。TAVRかSAVRどちらが良いかは患者の年齢、併存疾患、希望を考慮した上で慎重に術式を決めるべきと考える。Clinical Trial Registration:URL: https://clinicaltrials.gov. Unique identifier: NCT01057173.(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)

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人工呼吸器離脱の成功率が高いのは?圧制御vs.Tピース/JAMA

 人工呼吸器で24時間以上管理された患者に対し、抜管のために自発呼吸トライアル(SBT)を行う際、圧制御換気SBTを30分実施するほうが、Tピース換気SBTの2時間実施に比べ、抜管成功率が有意に高いことが示された。スペイン・マンレザ大学のCarles Subira氏らが、1,153例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2019年6月11日号で発表した。人工呼吸器の離脱の適切性を見極めるには、SBTが最も良い方法だと考えられているが、その際の換気モードや実施時間については明確にはなっていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「より短時間で負荷の少ない換気戦略をSBTに用いることを支持する所見が示された」とまとめている。初回SBT 72時間後の人工呼吸器からの離脱を比較 研究グループは2016年1月~2017年4月にかけて、スペインにある18ヵ所のICUで24時間以上の人工呼吸器管理を受けた患者1,153例を対象に試験を開始し、2017年7月まで追跡した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはTピース換気SBTを2時間(578例)、もう一方には圧制御(8cm・H2O)換気SBTを30分(557例)行った。 主要アウトカムは抜管成功で、初回SBTから72時間後の人工呼吸器からの離脱と定義した。副次アウトカムは、SBT後に抜管した患者のうち再挿管した患者の割合、ICU入室日数・入院日数、入院・90日死亡率だった。抜管成功率、圧制御換気群が約82%、Tピース換気群が74% 被験者の平均年齢は62.2歳(SD 15.7)、女性は428例(37.1%)で、試験を完遂したのは1,018例(88.3%)だった。 人工呼吸器からの離脱と定義された抜管成功率は、圧制御換気群が82.3%(473例)、Tピース換気群が74.0%(428例)だった(群間差:8.2%、95%信頼区間[CI]:3.4~13.0、p=0.001)。 副次アウトカムについては、再挿管率は圧制御換気群11.1% vs.Tピース換気群11.9%(群間差:-0.8%、95%CI:-4.8~3.1、p=0.63)、ICU入室日数の中央値は9日vs.10日(平均差:-0.3日、95%CI:-1.7~1.1、p=0.69)、入院日数の中央値はともに24日(平均差:1.3日、95%CI:-2.2~4.9、p=0.45)で、いずれも有意差はなかった。 一方で入院死亡率は、圧制御換気群10.4% vs.Tピース換気群14.9%であり(群間差:-4.4%、95%CI:-8.3~-0.6、p=0.02)、90日死亡率は13.2% vs.17.3%(群間差:-4.1%、95%CI:-8.2~0.01、p=0.04、ハザード比:0.74[95%CI:0.55~0.99])だった。

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脳脊髄液のメタゲノムNGSで中枢神経系感染症の診断精度向上/NEJM

 特発性髄膜炎や脳炎、脊髄炎の患者において、脳脊髄液(CSF)のメタゲノム次世代シークエンシング(NGS)を行うことで、他の検査では診断されなかった中枢神経系感染症を検出でき、診断精度が上がることが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校の Michael R. Wilson氏らが、204例の患者を対象に行った多施設共同前向き試験の結果で、NEJM誌2019年6月13日号で発表した。CSFのメタゲノムNGSは、単回テストでさまざまな種類の病原体を特定できるとされている。メタゲノムNGS陽性の患者について、別の検査で確認 研究グループは2016年6月1日~2017年7月1日にかけて前向き試験を行い、入院患者の感染性髄膜炎・脳炎の診断において、CSFのメタゲノムNGSの実用性を検証した。メタゲノムNGSで病原体陽性だったすべての患者について、独立した臨床分析やPCR検査により確認を行った。 医師からのフィードバックについては、臨床シークエンシング委員会との遠隔会議を毎週行い、アンケート調査も実施した。臨床的実用性については、後ろ向き診療録レビューで評価された。メタゲノムNGSのみで診断された中枢神経系感染症は22% 8ヵ所の医療機関を通じて、204例の小児・成人患者が試験に参加した。患者は重症で、48.5%が集中治療室(ICU)に入院しており、被験者全体の30日死亡率は11.3%だった。 中枢神経系感染症と診断されたのは、57例(27.9%)・58件だった。これら58件の感染症のうち、入院先の臨床検査では検出されなかったものの、メタゲノムNGSにより同定された症例が13件(22%)あった。残りの45件(78%)のうち、メタゲノムNGSで診断が一致したものは19件だった。 メタゲノムNGSで同定されなかった26件中、11件は血清学的検査でのみ診断、7件はCSF以外の組織検体で診断されたものだった。さらに残る8件は、CSF中の病原体の力価が低く、メタゲノムNGSでは陰性となった。 メタゲノムNGSのみで診断された13件のうち、臨床効果が得られたと考えられたのは8件で、治療方針が提示されたのは7件だった。

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強迫症患者の統合失調症リスク~コホート研究

 統合失調症患者では、強迫症(OCD)を併発する頻度が高いことが報告されている。OCDと統合失調症発症のシークエンスにより、両疾患の根底にある病態生理学的関係が明らかとなる可能性があるが、利用可能なエビデンスは限られている。台湾・嘉義長庚紀念病院のYu-Fang Cheng氏らは、新規でOCDと診断された患者における統合失調症リスクについて、集団ベースのコホートを用いて調査を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2019年5月24日号の報告。 2000~13年に新たにOCDと診断された患者を、縦断的健康保険研究データベースより抽出した。非OCD群はランダムに抽出し、OCD群と性別、年齢、都市レベル、所得でマッチングした。潜在的な交絡因子で調整し、Cox比例ハザードモデルおよび競合リスクモデルを用いて、統合失調症リスクを推定した。 主な結果は以下のとおり。・OCD群2,009例、非OCD群8,036例が抽出された。・統合失調症発症リスクは、OCD群で876.2/10万人年、非OCD群で28.7/10万人年であった。・調整後、OCD群では、統合失調症リスクが大いに高かった(ハザード比[HR]:30.29、95%信頼区間[CI]:17.91~51.21)。・男性、20年前のOCD発症、抗精神病薬投与が、統合失調症と関連していた。・自閉症を併発していた患者では、統合失調症リスクがより高かった(HR:4.63、95%CI:1.58~13.56)。 著者らは「OCDの診断、男性、20年前のOCD発症、自閉症の併発、抗精神病薬の使用は、統合失調症リスクの高さと関連が認められた。精神科医は、OCDが統合失調症の初期症状である可能性に注意する必要がある」としている。

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人種は、リスクか?- CREOLE試験の挑戦(解説:石上友章氏)-1065

 米国は、人種のるつぼといわれる、移民の国である。17世紀、メイフラワー号に乗船したピルグリム・ファーザーズによるプリマス植民地への入植は、その当初友好的であったといわれている。しかし、米国建国に至る歴史は、対立抜きに語ることはできない。対立は、民族であったり、皮膚の色であったり、宗教の対立であった。高血圧の領域には、半ば伝説的な“学説”が信じられており、驚くべきことに、今に至るも受け入れられている。筆者も学生時代の当時、講義中に語られたと記憶している。すなわち、アフリカ系米国人は、奴隷交易にその祖があり、奴隷船の過酷な環境に適応した者が生存して、今に至っている。その結果、アフリカ系米国人は食塩感受性を特徴としており、RA系阻害薬の効果が高い(こうした環境負荷による表現型・遺伝子の選択を、ボトル・ネック効果と呼び、遺伝学で用いられている)。驚くべきことに米国では、こうした人種による薬剤応答性の違いが信じられており、黒人だけに適応がある、心不全治療薬が処方されている。 ナイジェリア・アブジャ大学のDike B. Ojji氏らが、サハラ以南のアフリカ6ヵ国で実施した無作為化単盲検3群比較試験「Comparison of Three Combination Therapies in Lowering Blood Pressure in Black Africans:CREOLE試験」は、標準的・代表的な降圧薬である、カルシウム拮抗薬、サイアザイド系利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬の3種類から、2剤による3通りの組み合わせの処方の効果を、24時間携帯型自動血圧計による血圧値により評価した臨床研究である。本研究は、組織的に良好に遂行されたばかりでなく、その結果の質の高さにおいても、疑義なく受け入れることができる、質の高い研究である。本研究の結果、アフリカ系黒人の高血圧患者に対して、カルシウム拮抗薬(アムロジピン)と他の2剤の組み合わせが、サイアザイド系利尿薬・アンジオテンシン変換酵素阻害薬と比較して、有意に優れた降圧効果を示すことができた。この結果は、米国黒人の高血圧患者に、通説として受け入れられている説に反する結果といえる。非科学的で、偏見に満ちた通説と比較すると、科学的かつ、実証的な反論であるともいえる。試験のタイトルになったCREOLEとは、宗主国に対して植民地を意味する言葉であり、研究者らの思いをくみ取ることができるのではないか。

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第13回 頭部外傷 その原因は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)発症様式を必ずチェック!突然発症は要注意!2)失神は突然発症だ!心血管性失神を見逃すな!3)外傷の背景に失神あり。必ず前後の痛みの有無をチェック!【症例】65歳女性。来院当日、娘さんとスーパーへ出掛けた。レジで並んでいる最中に倒れ、後頭部を打撲した。目撃した娘さんが声を掛けると数十秒以内に反応があったが、頭をぶつけており、出血も認めたため救急車を要請した。●搬送時のバイタルサイン意識清明血圧152/88mmHg脈拍100回/分(整)呼吸18回/分SpO296%(RA)体温36.5℃瞳孔3/3mm+/+既往歴高血圧(61歳~)、脂質異常症(61歳~)内服薬アムロジピン(Ca拮抗薬)、アトルバスタチン(スタチン)外傷患者に出会ったら高齢者が外傷を理由に来院することは非常に多く、軽症頭部外傷、胸腰椎圧迫骨折、大腿骨頸部骨折などは、しばしば経験します。「段差につまずき転倒した」「滑って転倒した」など、受傷原因が明確であれば問題ないのですが、受傷前の状況がはっきりしない場合には注意して対応する必要があります。大切なのは「なぜけがを負ったのか」、すなわち受傷機転です。結果として引き起こされた外傷の対応も重要ですが、受傷原因のほうが予後に直結することが少なくありません。失神の定義突然ですが、失神とは何でしょうか?意識消失、一過性全健忘、痙攣、一過性脳虚血発作などと明確に区別する必要があります。失神は一般的に、(1)瞬間的な意識消失発作、(2)姿勢保持筋緊張の消失、(3)数秒~数分以内の症状の改善を特徴とします。(1)~(3)を言い換えれば、それぞれ(1)突然発症、(2)外傷を伴うことが多い、(3)意識障害は認めないということです。失神は表1のように分類され、この中でも心血管性失神は見逃し厳禁です1)。決して忘れてはいけない具体的な疾患の覚え方は“HEARTS”(表2)です2)。これらは必ず頭に入れておきましょう。画像を拡大する画像を拡大する外傷の原因が失神であることは珍しくありません。Bhatらのデータによると、外傷患者の3.3%が失神が契機となったとされています3)。姿勢保持筋緊張が消失するために、立っていられなくなり倒れるわけです。完全に気を失わなければ手が出るかもしれませんが、失神した場合には、そのまま頭部や下顎をぶつけるようにして受傷します。頭部打撲、頬部打撲、下顎骨骨折などに代表される外傷を診たら、なぜ手が出なかったのか、失神したのかもしれない、と考える癖を持つとよいでしょう。痛みの有無を必ず確認外傷患者を診たら、誰もが疼痛部位を確認すると思います。Japan Advanced Trauma Evaluation and Care(JATEC)にのっとり、身体診察をとりながら、疼痛部位を評価しますが、その際、今現在の痛みの有無だけでなく、受傷時前後の疼痛の有無も確認しましょう。クモ膜下出血、大動脈解離のそれぞれ10%は失神を主訴に来院します。発症時に頭痛や後頸部痛の訴えがあればクモ膜下出血を、胸痛や腹痛、背部痛を認める場合には大動脈解離を一度は鑑別診断に入れ、疑って病歴や身体所見、バイタルサインを解釈しましょう。検査前確率を意識して適切な検査のオーダーを失神患者にとって、最も大切な検査は心電図です。各国のガイドラインでも心電図は必須の検査とされています。しかし、その場で診断がつくことはまれです。症状が現時点ではないのが失神ですから、検査を施行しても捕まらない、当たり前といえば当たり前です。房室ブロックに代表される不整脈が、その場でキャッチできればもうけものといった感じでしょう。また、心電図に異常を認めるからといって、心臓が原因とは限らないことにも注意しましょう。たとえばクモ膜下出血では90%以上に心電図変化(Big U wave、Prolonged QTc、ST depression など)が出るといわれます。ST低下を認めたからといって、心原性のみを考えていては困るわけです。本症例では、来院時の心電図でST低下が認められ、心原性の要素を考えて初療医は対応していました。しかし、受傷時に頭痛を訴えていたことが娘さんから確認できたため、クモ膜下出血を疑い頭部CT検査を施行し、診断に至りました。外傷患者を診たら受傷機転を考えること、はっきりしない場合には失神/前失神を鑑別に入れて病歴を聴取しましょう。“HEARTS”に代表される心血管性失神の可能性を考慮し、所見(収縮期雑音、血圧左右差、深部静脈血栓症の有無など)をとるのです。鑑別に挙げなければ、頭部外傷患者の下腿を診ることさえないでしょう。1)坂本 壮.救急外来 ただいま診断中!.中外医学社;2015.2)Brignole M,et al. Eur Heart J. 2018;39:1883-1948.3)Bhat PK,et al. J Emerg Med. 2014;46:1-8.

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第9回 腰部の痛み【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第9回 腰部の痛み腰痛を訴える患者さんの外来受診は、よく見られます。誰もが一度や二度は経験する、なじみの痛みでもあります。「腰痛診療ガイドライン2019」によりますと、腰痛の定義は、痛みが体部後面の第12肋骨と臀部下端の間にあり、少なくとも1日以上継続する痛み、となっております。片側または両側の下肢に放散する痛みを伴う、あるいは伴わない場合も含まれます。中には生命を脅かす症例もあるため、迅速な診断と処置が必要となることもあります。今回は、この腰部の痛みを取り上げたいと思います。腰部の痛みは、大きく分けて急性腰痛・亜急性腰痛と慢性腰痛に分類されます。1)急性腰痛・亜急性腰痛発症から4週間未満の痛みを急性腰痛、4週間以上3ヵ月未満の場合は亜急性腰痛と言います。急性腰痛においては、感染性脊椎炎などの感染症も含まれますので気をつけなければなりません。また、高齢者に多い圧迫骨折には多発性骨髄腫や、悪性腫瘍の骨転移なども原因になることもありますので注意が必要です。通常の腰痛の原因としては、椎間板、椎間関節、腰椎を含むその周囲組織のさまざまな部位や腰背部の筋・筋膜に由来すると考えられ、そのものの局在性は不明確です。そのために、特異的な理学所見や画像所見も乏しいのが現状です。多くの腰痛は、3ヵ月経過する前に自然消失していきます。a)腰椎椎間関節性腰痛腰椎椎間関節性腰痛が全腰痛に占める頻度は、若年者で15%、高齢者で40%を占めております。高齢者に多いということは、椎間板が狭小になって前方部分が破綻し、椎間関節に過剰負担がかかり、変性することによって痛みが生じると考えられます。診断には、罹患関節に一致した傍脊柱部に限局した圧痛が認められます。腰椎を進展、捻転、後屈すると、痛みが増強することが多いと言われております。b)腰椎椎間板性腰痛腰椎椎間板性腰痛は、若年者から50歳までの若い年齢層で多くみられます。椎間板内に神経は存在しませんが、線維輪の断裂や椎間板の変性が生じると、椎間板内部のみならず、線維輪外層にまで神経線維が侵入してきます。線維輪に荷重がかかると、神経線維が刺激され、また、炎症症状などにより生じたサイトカインなどの関与によって痛みを感じると考えられております。この確定診断は、椎間板造影診断時に少量の造影剤を注入すると、疼痛が再現されることで得られます。座位や軽度の前屈によって椎間板内圧が増加すると、痛みが増強します。したがって、長時間の座位が取れないことが特徴です。2)慢性腰痛発症からの期間が3ヵ月以上に渡る場合、慢性腰痛と定義します。慢性腰痛の85%は、原因を明確にできない「非特異的腰痛」と言われるほど所見が乏しいと考えられます。椎間板性腰痛は、スポーツ選手や若年者では慢性腰痛の40%程度に関与しているとも言われております。慢性疼痛においては、筋肉への負荷のバランスが悪くなってきますし、筋肉の攣縮などによって、筋・筋膜性疼痛も生じてきます。長期間の疼痛によって精神的にも参ってきますと、身体を動かせないにことよって余計に痛みが増してきます。急性腰痛時に十分な治療を施し、疼痛が遷延しないようにすることが大切です。疼痛が長く持続すると慢性疼痛に移行し、その治療はますます難しくなって難治性慢性疼痛となります。そうなりますと、患者さんのみならず、医療者側も苦しむことになります。次回は下肢痛について述べます。1)腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版 日本整形外科学会/日本腰痛学会監修 p7 20192)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S144-145

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第3回 格安SIMに替えたら、いくら携帯料金が浮くのか?【外科医けいゆうの気になる話題】

第3回 格安SIMに替えたら、いくら携帯料金が浮くのか?突然ですが、私は格安SIMを使っています。先月の電話代は約2,000円でした。安いと思いませんか?ところが、大手キャリアを利用している友人にこの話をしても、驚くほど関心を持たれません。「数千円の差でしょ、大したことないじゃん」という反応です。そうでしょうか?格安SIMに替えたところ、1ヵ月の携帯代が4,000円ほど減ったため、年間4.8万円の固定費削減です。私の場合は、妻とあわせて1ヵ月当たり8,000円、年間9.6万円浮いています。ここまで話しても、友人の反応は「へぇ。でもバイト1回増やせばいいだけだよね」という感じですね。しかし、自分と同年代なら定年まであと約30年ですから、この節約で老後の資金が約300万円増えます。そもそも給与収入は所得税や住民税、社会保険料などで3~4割ほど減るのですから、この「300万円」というのは、400~500万円くらい稼いでようやく手元に残る額です。400~500万円稼ぐのはそれなりに大変ですが、固定費の削減は労働を伴いません。簡単な手続きをするだけで、あとは放置です。ここまで話すと、友人はようやく少し興味を持ちはじめます。しかし、「そうはいっても、最初の手続きが面倒くさいんじゃないか?」と、まだ懐疑的です。自宅からネット経由で申し込んで、手元のスマホのSIMカードを入れ替えるだけです。キャリアに電話をかける必要があるケースもありますが、それほど手間ではありません。使っていたスマホをそのまま使い続けることができます。「機種変更のときが面倒なんじゃないか?」いいえ。先日iPhone XRに替えましたが、アップルのオンラインストアで購入し、SIMカードを入れ替えるだけでした。すべての手続きが自宅で終わります。拍子抜けするほど簡単です。機種変更の際、日常診療の忙しい中、休みを利用して実店舗に赴き、順番待ちをして手数料を払ってスマホを預けて手続きをしていた、あのコストはいったい何だったんだろう、と思ってしまいます。格安SIMのメリットはほかにもたくさんあります。まず、料金体系がシンプルです。私も以前は大手キャリアを使っていましたが、オプションが多かったり、キャンペーンで少額の割引がいくつか付いていたりと、何が何だかよくわからない複雑な明細でした。格安SIMに替えてからは、「データ通信量。通話料。以上」という感じで、「何にお金を払っているのか」が見えやすくなりました。もちろん格安SIMの種類による違いはあると思いますが。速度も気にならず、通信に不便さは感じません。地域によっては、あるいはメーカーによっては、お昼休みと夜は少し速度が落ちる、という話もあるようですが、日中の多くをWi-Fi環境で過ごす医師にとっては、デメリットは小さいように思います。ここまで話すとようやく友人は、「それは便利そうだなぁ、格安SIMに替えようかな!」と言ってくれますが、しばらくしてから会っても替えている様子はありません。良さそうだと思っても、これまで長年使ってきた仕組みを変えることは不安が大きいものなのですね。格安SIMは圧倒的な低コストにもかかわらず、普及率は20%に満たないといわれています。依然として3大キャリアのユーザーが80%以上を占めています。私は何の利益相反もありませんが、将来のために「ぜひ早いうちから格安SIMに替えたほうがいい」と周囲に勧め続けています。ぜひ皆さんもご検討ください。

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境界性パーソナリティ障害への精神薬理学的治療におけるガイドラインとの比較

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、生命を脅かす精神障害である。BPD患者に対する薬理学的治療に関するガイドラインの推奨事項は、非常に広範囲に及ぶ。オーストリア・Psychosomatische Zentrum Waldviertel-Klinik EggenburgのFriedrich Riffer氏らは、日常臨床におけるBPD患者の薬物療法について調査を行った。International Journal of Psychiatry in Clinical Practice誌オンライン版2019年5月29日号の報告。 オーストリアの精神科・心療内科クリニックで治療されたBPD(ICD-10:F-60.3)の患者110例(女性の割合:90%)の薬理学的治療に関するデータを評価した。 主な結果は以下のとおり。・臨床医は、BPD患者に向精神薬を処方する頻度が高く、多くの場合で複数の薬剤を処方することが示唆された。・最も一般的に用いられていた薬剤群は、抗精神病薬、気分安定薬、抗うつ薬であった。・最も一般的に用いられていた薬剤は、クエチアピン、ラモトリギン、セルトラリンであった。・併存疾患の有無による薬物療法の種類や数量に、有意な差は認められなかった。・薬物療法と合併症との関連は認められなかった。 著者らは「日常臨床では、BPD患者に対し向精神薬が処方されることが多く、多剤併用になることが多いと示唆された。薬剤数と入院治療プログラムの有効性との間に認められる正の相関、薬剤数と併存疾患との間の関連性の欠如は、多剤併用の医原性効果を示唆していることと矛盾している。これらのことは、ガイドラインのコンセンサスを欠いているにもかかわらず、臨床医はBPD患者に向精神薬を処方しており、処方された薬剤の種類や数量が多いほど、より大きな治療効果が観察されている」としている。

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StageII大腸がんの予後予測因子としての簇出(SACURA試験)/JCO

 Stage II大腸がんにおける術後補助化学療法の有効性を検討したSACURA試験(主任研究者:東京医科歯科大学 杉原 健一氏)の付随研究として、簇出(budding)の予後予測因子、補助化学療法の効果予測因子としての有用性を評価した解析結果を、防衛医科大学校の上野 秀樹氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年6月10日号に掲載。簇出は、国際対がん連合(UICC)が腫瘍関連の予後因子として挙げている因子であり、2016年のInternational Tumor Budding Consensus Conference(ITBCC2016)において国際的評価基準が定義された。簇出の評価によって術後補助化学療法の適応となる対象を適切に選別 SACURA試験は、Stage II大腸がんを対象として、経口テガフール-ウラシル(UFT)1年間投与による術後補助化学療法群と手術単独群とを比較した大規模な無作為化試験である。今回の付随研究では、2006~10年の間に123施設からSACURA試験に登録されたStage II大腸がん1,982例のうち、991例の病理標本を収集した。簇出は、後にITBCC2016に採用された評価基準に基づいた中央判定によって3つのグレード(BD1/BD2/BD3)に診断され、前向きに記録された。5年間の患者登録完了後に主研究で収集した臨床病理学的データおよび予後データと統合し、解析を行った。 簇出の予測因子としての有用性を評価した主な解析結果は以下のとおり。・991例のうち、BD1(簇出が0~4個)が376例、BD2(同5~9個)が331例、BD3(同10個以上)が284例であった。5年無再発生存率(RFS)はそれぞれ90.9%、85.1%、74.4%(p<0.001)で、深達度T4の部分集団解析では、RFSの分かれ方が顕著であった(86.6~53.3%)。・簇出のグレードは、肝臓、肺、リンパ節、腹膜における再発と有意に相関した(p<0.01~0.001)。・多変量解析において、簇出と壁深達度は、独立した予後不良因子であった。Harrellのc統計量(c-index)に基づくと、これらの2因子はRFSの予測モデルの分別能を有意に改善した。・BD2、BD3の部分集団いずれにおいても、統計学的に有意差は無いものの、手術単独群に比べて術後補助化学療法群で5年累積再発率が約5%良好であった。 これらの結果から、研究グループは「Stage II大腸においては、ITBCC2016基準による簇出をルーチンに評価すべきであり、これにより術後補助化学療法の適応となる対象の適切な選別と予後向上が期待される」としている。

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日本の高齢者、痩せと糖尿病が認知症リスクに

 わが国の高齢者において、痩せていること(BMI 18.5kg/m2未満)と糖尿病が認知症発症のリスク因子であり、BMIが低いほど認知症発症率が高いことが、JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study:日本老年学的評価研究)のコホートデータを用いた山梨大学の横道 洋司氏らの研究で示された。また、本研究において認知症発症率が最も高かったのは高血圧症を持つ痩せた高齢者で、次いで脂質異常症を持つ痩せた高齢者であった。Journal of Diabetes Investigation誌オンライン版2019年6月17日号に掲載。 本研究では、高齢者における糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満(BMI 25kg/m2以上)、痩せ(BMI 18.5kg/m2未満)に関連する認知症リスクを比較し、さらにこれらの代謝性疾患とBMIの組み合わせに関連する認知症リスクも調査した。対象は、2010年に健康診断を受けた高齢者(平均年齢73.4歳)で、平均5.8年間追跡した。認知症は介護保険登録を用いて調べ、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満、痩せは、服薬もしくは健康診断結果で評価し、認知症発症率と調整ハザード比(HR)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・参加した高齢者3,696人のうち、338人が認知症を発症した。・標準体重で該当する疾患がない人を基準とすると、男女それぞれの調整HR(95%信頼区間)は、糖尿病では2.22(1.26~3.90)および2.00(1.07~3.74)、高血圧症では0.56(0.29~1.10)および1.05(0.64~1.71)、脂質異常症では1.30(0.87~1.94)および0.73(0.49~1.08)、BMI 25~29.9kg/m2では0.73(0.42~1.28)および0.82(0.49~1.37)、痩せでは1.04(0.51~2.10)および1.72(1.05~2.81)であった。・脂質異常症を持たない標準体重の男性と比較して、脂質異常症を持つ痩せた男性のHRが4.15(1.79~9.63)、高血圧症を持たない標準体重の女性と比較して高血圧症を持つ痩せた女性のHRが3.79(1.55~9.28)と、認知症リスクが有意に高かった。・認知症発症率が最も高かったのは高血圧症を持つ痩せた高齢者で、次いで脂質異常症を持つ痩せた高齢者であった。

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早期乳がんへの術後トラスツズマブ投与、PHERE試験の最終解析/Lancet

 早期乳がんの術後トラスツズマブ治療において、6ヵ月投与は12ヵ月投与に対し非劣性ではないことが、フランス・Centre Paul StraussのXavier Pivot氏らが行った「PHARE試験」の最終解析で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年6月6日号に掲載された。本試験の2013年の中間解析では非劣性が確認できず、今回は、事前に規定されたイベント発生数に基づき、予定された最終解析の結果が報告された。無病生存を評価するフランスの無作為化非劣性試験 PHAREは、フランスの156施設が参加した非盲検無作為化第III相非劣性試験であり、2006年5月~2010年7月の期間に患者登録が行われた(フランス国立がん研究所の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、転移がなく、HER2陽性の切除可能な腺がんで、腋窩リンパ節転移の有無は問わず、腫瘍径が10mm以上であり、化学療法を4サイクル以上受け、術後トラスツズマブ治療を開始した患者であった。 被験者は、術後トラスツズマブ治療開始後3~6ヵ月の治療期間中に、6ヵ月または12ヵ月投与の群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)集団における無病生存の、6ヵ月投与群の12ヵ月投与群に対する非劣性とした。事前に規定されたハザード比(HR)のマージンは1.15であった。標準投与期間は12ヵ月のままに 3,380例(ITT集団)が登録され、6ヵ月投与群に1,690例(年齢中央値55歳[範囲23~85]、リンパ節転移陰性54.7%、ホルモン受容体陰性38.5%)、12ヵ月投与群にも1,690例(54歳[21~86]、55.4%、39.6%)が割り付けられた。化学療法は、タキサン系薬+アンスラサイクリン系薬剤が、それぞれ72.7%、73.9%で施行された。 フォローアップ期間中央値7.5年(IQR:5.3~8.8)の時点で、無病生存関連イベントが704件認められた(6ヵ月投与群359件[21.2%]、12ヵ月投与群(345件[20.4%])。層別因子で補正したHRは1.08(95%信頼区間[CI]:0.93~1.25、p=0.39)であった。事前に規定された非劣性マージン(1.15)が95%CI内に含まれたため、非劣性仮説は証明されなかった。 サブグループ解析(年齢、リンパ節転移、腫瘍サイズ、ホルモン受容体など)では、トラスツズマブの投与期間の違いで無病生存率に差はみられなかった。 6ヵ月投与群の186例(11.0%)、12ヵ月投与群の170例(10.1%)が死亡した(HR:1.13、95%CI:0.92~1.39、p=0.26)。3年生存率は、6ヵ月投与群が89.3%、12ヵ月投与群は92.2%であり、5年生存率はそれぞれ84.2%、86.2%、7年生存率は80.6%、82.3%であった。 また、遠隔再発は6ヵ月投与群が249例(14.7%)、12ヵ月投与群は224例(13.3%)に認められ、無転移生存率のHRは1.15(95%CI:0.96~1.37、p=0.14)であった。 トラスツズマブ投与終了後に、安全性関連のイベントはほとんど発現しなかった。前回の報告以降、心不全は発現せず、12ヵ月投与群で新たに3例に左室駆出率50%未満を認めたのみだった。 著者は、「治療曝露の削減には疑問が残るため、術後トラスツズマブ治療の標準投与期間は12ヵ月のままとすべきと考えられる」としている。

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「傾向が認められた」を巡る最近の議論(解説:香坂俊氏)-1064

今回取り上げるPRINCESS研究(JAMA誌に2019年5月に発表)の大枠の結果は以下のとおりであった。・鼻カヌラ冷却装置による早期低体温療法の効果を検討・671人の院外心肺停止患者(witnessed:目撃者あり)を対象・90日目後予後に「改善の傾向」は認められたが、有意差なしこのうえさらに電気ショック可能であった患者での層別化解析も行われているが、こちらも「改善の傾向」を認めるのみで、統計学的な有意差は認められなかった。心肺停止症例に対する介入に関しては、低体温療法のみならずさまざまな早期介入手段に関してあまり芳しくない結果が続いている。・アミオダロン投与:「アミオダロンは効く?効かない?よくわからない?」・到着前からの低体温療法:Kim F, et al. JAMA. 2014;311:45-52.・24時間ではなく48時間の低体温療法:Kirkegaard H, et al. JAMA. 2017;318:341-350.ただ、この領域では統計的な有意差はなかったが、「改善の傾向」は認められたということが多い。このあたり、最近議論を呼んでおり、p値だけを見ることに対して2016年に米国統計学会が警鐘を鳴らしており、ドラスティックに「p値の値そのものは何も意味しない」という声明を出している(ASA P-Value Statement Viewed > 150,000 Times)。0.05あるいは0.01を絶対的なものと見なすのではなく、むしろp値を連続値として扱い、その解釈は当事者たちに任せるべきであるとする考え方である。心肺停止のような極限状況ではランダム化の実施はかなり困難であり、十分な統計的なパワーを持った研究を行うことが年々難しくなってきている。このような状況下でこそ、上記のような考え方は大事になってくるように筆者には思われる。低体温療法についての細かいノウハウに関しても、今回のPRINCESS試験単独ではなく、さまざまな角度からの知見の集積が必要なものと考えられる。

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027)いくつになってもきれいな肌でいたい【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第27回 いくつになってもきれいな肌でいたいしがない皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚の加齢変化のひとつである、脂漏性角化症(イボ)。老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)とも呼ばれるこのイボは、中高年の顔面によく見られ、主な原因は加齢や紫外線といわれています。とある外来で、「もう見た目を気にする歳でもないんだけど…」と診察室を訪れたのは、60代の男性患者さん。顔には多数のイボがありますが、こめかみにある一番大きなイボが気になるようで、そこだけ焼いて取りたいという希望。指定のイボを液体窒素による凍結療法で処置したところ、イボがあった部位は数週間でつるつるの平坦な肌になりました。後日、すっきりとした様子の患者さんは、別のイボも気になってきたようで、「今度はこっちのイボも焼いてほしい」と言い始めました。皮膚科では、「ここだけ治療をしたい」と始めたはずが、だんだんと「こっちも、あっちも」と気になる部位が増えるのは、実はよくあるパターンです。「見た目を気にする年齢じゃない」と言いつつも、やはり肌がきれいになるのはいくつになっても嬉しいものです。どちらにせよ、一度の受診で多数のイボを処置することは、診察の都合上難しいこともあるので、あまりに多数のイボがある患者さんは、左右片方ずつなど、部位ごとに対応していくようにしています。ちなみに、脂漏性角化症に対する液体窒素による凍結療法は、健康保険が適応されます。今回は、皮膚科でよくあるイボ除去についての話でした。それでは、また~!

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家族性良性慢性天疱瘡〔familial benign chronic pemphigus〕

1 疾患概要■ 概念・定義家族性良性慢性天疱瘡(ヘイリー・ヘイリー病[Hailey-Hailey disease])は、厚生労働省の指定難病(161)に指定されている皮膚の難病である。常染色体優性遺伝を示す先天性の水疱性皮膚疾患で、皮膚病変は生下時には存在せず、主として青壮年期以降に発症する。臨床的に、腋窩・鼠径部・頸部・肛囲などの間擦部に小水疱、びらん、痂皮などによる浸軟局面を生じる。通常、予後は良好である。しかし、広範囲に重篤な皮膚病変を形成し、極度のQOL低下を示す症例もある。また、一般的に夏季に増悪、冬季に軽快し、紫外線曝露・機械的刺激・2次感染により急激に増悪することがある。病理組織学的に、皮膚病変は、表皮下層を中心に棘融解性の表皮内水疱を示す。責任遺伝子はヒトsecretory pathway calcium-ATPase 1(hSPCA1)というゴルジ体のカルシウムポンプをコードするATP2C1であり、3番染色体q22.1に存在する。類似の疾患として、小胞体のカルシウムポンプ、sarco/endoplasmic reticulum Ca2+ ATPase type 2 isoformをコードするATP2A2を責任遺伝子とするダリエ病があり、この疾患は皮膚角化症に分類されている。■ 疫学わが国の患者数は300例程度と考えられている。現在、本疾患は、指定難病として厚生労働省難治性疾患政策研究事業の「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班」(研究代表者:大阪公立大学大学院医学研究科皮膚病態学 橋本 隆)において、アンケートを中心とした疫学調査が進められている。その結果から、より正確なわが国における本疾患の疫学的情報が得られることが期待される。■ 病因本症の責任遺伝子であるATP2C1遺伝子がコードするヒトSPCA1はゴルジ体に存在し、カルシウムやマグネシウムをゴルジ体へ輸送することにより、細胞質およびゴルジ体のホメオスタシスを維持している。ダリエ病と同様に、常染色体優性遺伝する機序として、カルシウムポンプタンパクの遺伝子異常によってハプロ不全が起こり、正常遺伝子産物の発現が低下することによって本疾患の臨床症状が生じると考えられる。しかし、細胞内カルシウムの上昇がどのように表皮細胞内に水疱を形成するか、その機序は明らかとなっていない。■ 症状生下時には皮膚病変はなく、青壮年期以降に、腋窩・鼠径部・頸部・肛門周囲などの間擦部を中心に、小水疱、びらん、痂皮よりなる浸軟局面を示す(図1)。皮膚症状は慢性に経過するが、温熱・紫外線・機械的刺激・感染などの因子により増悪する。時に、胸部・腹部・背部などに広範囲に皮膚病変が拡大することがあり、極度に患者のQOLが低下する。とくに夏季は発汗に伴って増悪し、冬季には軽快する傾向がある。皮膚病変上に、しばしば細菌・真菌・ヘルペスウイルスなどの感染症を併発する。皮膚病変のがん化は認められない。高度の湿潤状態の皮膚病変では悪臭を生じる。表皮以外にも、全身の細胞の細胞内カルシウムが上昇すると考えられるが、皮膚病変以外の症状は生じない。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は主として、厚生労働省指定難病の診断基準に従って行う。すなわち、臨床的に、腋窩・鼠径部・頸部・肛囲などの間擦部位に、小水疱、びらんを伴う浸軟性紅斑局面を形成し、皮疹部のそう痒や、肥厚した局面に生じた亀裂部の痛みを伴うこともある。青壮年期に発症後、症状を反復し慢性に経過する。20~50歳代の発症がほとんどである。皮疹は数ヵ月~数年の周期で増悪、寛解を繰り返す。常染色体優性遺伝を示すが、わが国の約3割は孤発例である。参考項目としては、増悪因子として高温・多湿・多汗(夏季)・機械的刺激、合併症として細菌・真菌・ウイルスによる2次感染、その他のまれな症状として爪甲の白色縦線条、掌蹠の点状小陥凹や角化性小結節、口腔内および食道病変を考慮する。皮膚病変の生検サンプルの病理所見として、表皮基底層直上を中心に棘融解による表皮内裂隙を形成する(図2)。裂隙中の棘融解した角化細胞は少数のデスモソームで緩やかに結合しており、崩れかけたレンガ壁(dilapidated brick wall)と表現される。画像を拡大するダリエ病でみられる異常角化細胞(顆粒体[grains])がまれに出現する。棘融解はダリエ病に比べて、表皮中上層まで広く認められることが多い。生検組織サンプルを用いた直接蛍光抗体法で自己抗体が検出されない。最終的には、ATP2C1の遺伝子検査により遺伝子変異を同定することによって診断確定する(図3)。変異には多様性があり、遺伝子変異の部位・種類と臨床的重症度との相関は明らかにされていない。別に定められた重症度分類により、一定の重症度以上を示す場合、医療費補助の対象となる。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ステロイド軟膏や活性型ビタミンD3軟膏などの外用療法やレチノイド、免疫抑制薬などの全身療法が使用されているが、対症療法が主体であり、根治療法はない。2次的な感染症が生じたときには、抗真菌薬・抗菌薬・抗ウイルス薬を使用する。予後としては、長期にわたり皮膚症状の寛解・再燃を繰り返すことが多い。比較的長期間の寛解状態を示すことや、加齢に伴い軽快傾向がみられることもある。4 今後の展望前述のように、本疾患は、指定難病として厚生労働省難治性疾患政策研究事業の「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班」において、各種の臨床研究が進んでいる。詳細な疫学調査によりわが国での本疾患の現状が明らかとなること、最終的な診療ガイドラインが作成されることなどが期待される。最近、新しい治療として、遺伝子上の異常部位を消失させるmutation read throughを起こさせる治療として、suppressor tRNAによる遺伝子治療やゲンタマイシンなどの薬剤投与が試みられている。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省の難治性疾患克服事業(難治性疾患政策研究事業)皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班(研究代表者:橋本 隆 大阪公立大学・大学院医学研究科 皮膚病態学 特任教授)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 家族性良性慢性天疱瘡(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Hamada T, et al. J Dermatol Sci. 2008;51:31-36.2)Matsuda M, et al. Exp Dermatol. 2014;23:514-516.公開履歴初回2019年6月25日

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薬剤師飽和時代がいよいよ到来 厚労省の研究報告【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第27回

薬剤師不足が叫ばれて久しいですが、皆さんの薬局では必要な人員が確保できていますでしょうか? このたび、薬剤師の需要に関する見通しについて、研究結果が発表されました。厚生労働科学研究の一環として行われた薬剤師の需要予測によると、ほぼ均衡状態にある2018年度から、43年度には需要総数40.0万人に達して、供給総数は40.8万人と8,000人程度の過剰になることが分かった。(中略)報告書では「今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くことになるが、長期的に見ると供給が上回ることが見込まれている」と指摘した。(2019年6月6日付 日刊薬業)私が薬剤師になってからはや10数年経ちますが、私が学生の頃から「この先、薬剤師は供給過多になるぞ!」と言われていました。その頃から増え続ける薬局軒数、とくに門前薬局の多さが指摘されたり、調剤だけを行っている薬剤師が医薬分業の観点から批判の的となったりしていたので、若かったということもあり結構ビビったものです。実際には、後発医薬品の使用促進や在宅訪問など、さまざまな新しい取り組みもあったことから、薬局が立ち行かなくなるほどの大幅な調剤報酬の削減は免れ、薬局数は右肩上がりに増え続け、薬剤師の求人倍率は5.22(2018年)と売り手市場となっています。今後もこの動向が続くのかどうかは全薬剤師が気になるところでしょう。今回の厚生労働省の研究の一環として行われた予測では、どのような見通しとなっているのでしょうか。【薬剤師の供給予測】直近3年間の薬剤師国家試験の傾向から1年間で約9,800人が毎年合格するとして、25年後の2043年の薬剤師の供給予測は40.8万人と推計されています。なお、6年制薬剤師の割合は、71.3%に達するとされています。【薬剤師の需要予測】2018年の薬局薬剤師数は17.7万人、病院・診療所薬剤師数は5.9万人、処方箋受取率(医薬分業率)は75%を上限として推移すると考えると、2043年の全薬剤師の必要人数は40万人で、そのうち薬局薬剤師数は21.1万人に増加し、病院・診療所薬剤師は5.8万人に減少すると推計されています。今回の研究では、いわゆる対人業務による薬剤師の業務の変化は考慮されていないので、単純に薬局やドラッグストアの店舗数の増加が見込まれていると考えられます。2043年時点では薬剤師の需要よりも供給が8,000人多くなっており、「今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くことになるが、長期的に見ると供給が上回ることが見込まれている」と結論付けられています。もっとも、算出プロセスとして現在および過去の環境や薬剤師業務をもとにしていることから、今後求められる対人業務やAIの活用、もっといえば調剤報酬の変化によって、大きく動向が変わる可能性があります。最も“ゆるく”考えてこの結果なのだという程度に捉えたほうがいいかもしれません。実は、今回報道された研究結果は、とある研究の一部という位置付けでした。それは、「かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究」(研究代表者:安原 眞人氏)という研究で、変わりゆく医療環境の中で、薬剤師が多機関・多職種と連携したPBPM(プロトコールに基づく薬物治療管理)に基づく高度薬学管理機能を患者に提供するための方策を検討し、評価したものです。研究者の中には、がん専門薬剤師など各種分野で活躍されている薬剤師の名前があり、具体的な分野に関して連携やフォロー方法なども記載されています。とても興味深く、勉強になる研究報告書ですので、ぜひ皆さんにも読んでほしいと思います。

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光免疫療法、局所再発頭頸部がんで良好な成績/ASCO2019

 BRCA1/2やATM遺伝子(相同組換え修復遺伝子:HRR遺伝子)に変異があり、かつ転移も有する 去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対する、PARP阻害薬のオラパリブと標準的なホルモン剤との比較試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Northwestern University Feinberg School of MedicineのMaha Hussain氏により発表された。 本試験は国際共同オープンラベル第III相試験である。・対象:1次治療のホルモン剤(エンザルタミドまたはアビラテロン)投与後に病勢進行となったmCRPC患者で、HRR遺伝子のBRCA1/2、ATM、CDK12、CHEK2など15遺伝子のうち1つでも変異の有る患者387例。・試験群:[コホートA]HRR遺伝子のうちBRCA1、BRCA2、ATMに変異を有する患者、[コホートB]他のHRR遺伝子の変異を有する患者にオラパリブ300mgx2/日投与。(Ola群)・対照群:[コホートA、Bとも]、主治医選択によるホルモン剤(エンザルタミドまたはアビラテロン)を投与。(EA群)・評価項目:[主要評価項目]コホートAの画像評価による無増悪生存期間(rPFS)判定。[副次評価項目]コホートA+BのrPFS、コホートAにおける奏効率、疼痛が増悪するまでの期間(TPP)、全生存期間(OS)であった。EA群からOla群へのクロスオーバーが認められていた。各遺伝子の変異は、NGSによる中央測定で決定した。 主な結果は以下のとおり。・2017年4月~2018年11月までの登録期間で、コホートAとコホートBに2対1の割合(245例と142例)で割り付けられた。・コホートAのrPFS中央値はOla群で7.39ヵ月、EA群で3.55ヵ月(ハザード比[HR):0.34(95%信頼区間[CI):0.25~0.47、p<0.0001]と有意にOla群が良好であった。・コホートAの奏効率は、Ola群が33.3%、EA群が2.3%でHR20.86(95%CI:4.18~379.18)、p<0.0001と有意にOla群が高かった。・同様にコホートAのTPP中央値は、Ola群が未到達、EA群が9.92ヵ月で、HR0.44(95%CI:0.22~0.91)、p=0.0192とOla群で有意に延長していた。・さらにコホートAのOS中央値は、中間解析でOla群が18.50ヵ月、EA群が15.11ヵ月、HR0.64(95%CI:0.43~0.97)、p=0.0173だった。中間解析用の事前設定のp値の閾値は0.01であったたため、この時点では有意性は検証できなかった。・コホートAで病勢進行の見られた患者の80.6%でオラパリブへのクロスオーバーが行われていた。・コホートA+BのrPFS中央値は、Ola群で5.82ヵ月、EA群で3.52ヵ月、HR0.49(95%CI:0.38~0.63)、p<0.0001とOla群で有意に延長していた。・Ola群の安全性プロファイルは、他がん種の報告と同様で、新たなる予見はみられなかった。

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