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運動するなら、朝と夕方どちらが効果的?

 太り過ぎの男性が運動療法を行う場合、朝よりも夕方に行ったほうが代謝機能の回復効果が高いことが、ノルウェー科学技術大学のTrine Moholdt氏らによる研究の結果、わかった。Diabetologia誌オンライン版2021年5月19日号に掲載された。 研究者らは、高脂肪食の摂取が血糖コントロール、全身の健康マーカー、血清メタボロミスクに及ぼす影響が、運動トレーニングを行う時間帯(朝と夜)によって変化するかどうかを検討した。 オーストラリア・メルボルンの大学で実施されたこの3群並行群間無作為化試験では、過体重・肥満の男性が11日間連続で高脂肪食(エネルギーの65%を脂肪から摂取)を摂取した。参加者は、ソーシャルメディアやコミュニティ広告を通じて募集した。参加資格は、男性、30~45歳、BMI27.0~35.0kg/m2、座りがちな生活とされた。心血管疾患(CVD)または2型糖尿病患者、処方薬服用者、シフト型勤務者は除外された。 参加者は高脂肪食を5日摂取した後、朝(6:30)運動する群、夕方(18:30)運動する群、運動なし群のいずれかに割り当てられ、その後5日間活動した。血清代謝物、循環脂質、心肺機能、血圧、および血糖値の変化をグループ間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・25例(朝群:9、夕方群:8、運動なし群:8)が割り付けられ、24例が解析対象となった(各群8例ずつ)。・24時間後のグルコース値はいずれの群でも有意な変化は見られなかったが、夕方群は運動なし群と比較して夜間の血糖値が低かった(4.9±0.4 vs 5.3±0.3mmol/l、p=0.04)。・最大酸素摂取量は、運動なし群と比較して、朝群(推定効果1.3ml/kg/分、95%CI:0.5~2.0、p=0.003)と夕方群(推定効果1.4ml/kg/分、95%CI:0.6~2.2、p=0.001)の両方で改善した。・空腹時血糖値、インスリン、コレステロール、トリアシルグリセロール、LDL-コレステロール値は夕方群のみで低下した。意図しない効果や副作用はなかった。 著者らは、5日間の高脂肪食摂取により、脂質とアミノ酸の代謝に関連する血清代謝物に大きな変化が生じた。運動トレーニングが代謝物に与える変化は高脂肪食の影響よりも小さく、夕方に行った場合のみ高脂肪食による代謝物の変化の一部を回復させた、とまとめている。

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うつ病エピソードや抗うつ薬使用が小児双極性障害に及ぼす影響

 小児双極性障害は、重度の機能障害につながる重篤な再発性疾患である。そして、最初に発現する気分エピソードが、疾患の長期的な経過に影響を及ぼす可能性がある。トルコ・Dokuz EylulUniversityのNeslihan Inal氏らは、全国多施設自然主義的フォローアップ調査のサンプルより小児双極性障害の臨床的特徴を評価し、躁症状発症年齢に対する最初の気分エピソードおよび以前の抗うつ薬治療効果の影響について検討を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年6月2日号の報告。 双極I型障害の若年患者271例を対象に、トルコの代表的な6つの地域にある大学病院7施設と州立研究病院3施設の児童思春期精神科クリニックでフォローアップを行った。すべての診断は、構造化面接に従って実施した。すべてのデータは、臨床医が記録した診療データよりレトロスペクティブに収集した。 主な結果は以下のとおり。・最初に発現した気分エピソードがうつ病/混合エピソードの患者(IDE群)は129例、躁病エピソードの患者(IME群)は142例であった。・気分エピソードおよびラピッドサイクリングの総数は、IME群よりもIDE群で有意に多かった。・社会人口統計および疾患の特徴で調整したCox回帰分析では、抗うつ薬治療を受けたIDE群の思春期女性において、より早期に躁病を発症する可能性が高いことが示唆された(ハザード比:2.03、95%信頼区間:1.31~3.12、p=0.001)。 著者らは「本研究は、トルコで初めて実施された大規模フォローアップ調査であり、抗うつ薬治療経験のある若年者、とくに思春期の女性において、躁病の早期発症との関連が認められた。小児双極性障害の根底にある神経発達のプロセスを特定し、予防に対するアプローチを行うためには、より大規模なプロスペクティブ研究が必要である」としている。

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抗CGRP抗体治療中止後の片頭痛日数の変化

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体は、片頭痛予防におけるゲームチェンジャーとして期待される。しかし、治療費が高額となるため、治療期間を必要最低限に抑えることが求められる。スイス・チューリヒ大学病院のAndreas R. Gantenbein氏らは、12ヵ月間の抗CGRP抗体治療を中止した後、月間片頭痛日数がどの程度変化するかを検討した。Cephalalgia誌オンライン版2021年5月17日号の報告。 抗CGRP抗体で12ヵ月間治療を行った片頭痛患者のデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、52例であった。・月間片頭痛日数の平均値は、ベースライン時で16±7日、3ヵ月目で6±6日、12ヵ月目で5±4日であった。・治療中断後の月間片頭痛日数の平均値は、1ヵ月後で6±4日、2ヵ月後で9±4日、3ヵ月後で11±5日であった。・ほとんどの患者(88.9%)が治療を再開した。 著者らは「抗CGRP抗体の治療効果は、薬理学的作用よりも長期間持続することはほとんどない。治療中断後、ほとんどの患者で片頭痛頻度が上昇し、再度予防が必要となった。患者にとってベネフィットが得られる治療に限定し、定期的に予防の必要性を確認する必要があるものの、予定されていた12ヵ月後の治療中止や3ヵ月間の治療中断期間を設ける必要性を裏付けるものではない」としている。

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筋層浸潤性膀胱がんに対するGC+ニボルマブの有用性評価/ASCO2021

 筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)を対象に、シスプラチン+ゲムシタビン+ニボルマブ併用投与の有用性評価と、膀胱温存が可能な症例の予測に関する報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Icahn School of Medicine at Mount SainaiのMatthew D. Galsky氏よりなされた。 本試験(HCRN GU16-257)は米国で行われた多施設共同第II相試験である。MIBCでは、プラチナベースの術前化学療法により30~40%の症例が病理学的完全奏効(pCR)を得られることと、そのpCR症例は予後良好であることが知られているが、そのpCRが明らかになるのは膀胱摘除後である。また過去のレトロスペクティブ研究によると、その10年生存率は膀胱全摘65%、部分切除73%、切除なし75%と大きな差はなく、部分切除例では53%、切除なし例では61%が、膀胱温存したままで10年生存を得ていたという報告がある。・対象:シスプラチン(CDDP)の投与適格のcT2-4a/N0/M0のMIBC・介入:CDDP+ゲムシタビン+ニボルマブ 4サイクル(GC+Nivo)臨床的完全奏効(cCR)症例はニボルマブの追加投与(4ヵ月)、その後局所再発をきたした時点で膀胱摘除術実施。Non-cCR症例は膀胱摘除術を実施・評価項目[主要評価項目]cCRの割合、治療ベネフィット予測因子としてのcCRの可能性評価(2年間の無転移生存、または膀胱摘除時にpCRが確認された場合を治療ベネフィットとした)[その他評価項目]初診時のTURBT検体におけるDNA損傷修復関連遺伝子(ERCC2、FANCC、ATM、RB1)変異およびTMBとcCRの相関性 主な結果は以下のとおり。・2018年8月~2020年11月に76例が登録された。年齢中央値69歳、男性79%、臨床病期はcT2が57%、cT3が32%、cT4が12%であった。・4サイクルの薬物治療を完遂できたのは64例で、48%(31例)がcCRを達成した。・cCR達成31例中30例が膀胱温存。残りの1例とNon-cCR症例(33例)が膀胱摘除術を受けた。・cCR獲得後の膀胱温存症例では8例に局所再発が認められ、6例に膀胱摘除術が施行された。その際、50%は病理学的ステージがpT1N0以下であった。・Non-cCR症例で膀胱摘除術を受けた症例の36%がpT1N0以下で、32%がpN+であった。・有害事象プロファイルは、他のGC+Nivo試験での報告と同様であった。・TMB高値(≧10mut/Mb)と、ERCC2変異でcCRまたはpCRとの相関が認められた(いずれもp=0.02)。  最後に発表者は、MIBCに対するGC+Nivo療法は、cCRを達成できるレジメンであり、このcCRが膀胱を温存したままでの長期の無再発生存につながる可能性がある、と述べた。

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再発多発性骨髄腫、イサツキシマブ追加でPFS延長/Lancet

 既治療の再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブをカルフィルゾミブ+デキサメタゾンと併用すると、カルフィルゾミブ+デキサメタゾンと比較して、無増悪生存(PFS)期間が延長するとともに深い奏効の割合が改善し、新たな標準治療となる可能性があることが、フランス・University Hospital Hotel-DieuのPhilippe Moreau氏らが実施した「IKEMA試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年6月4日号で報告された。上乗せ効果を評価する非盲検無作為化第III相試験 本研究は、日本を含む16ヵ国69施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年11月~2019年3月の期間に患者登録が行われた(フランスSanofiの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、前治療ライン数が1~3の再発・難治性多発性骨髄腫で、血清または尿中のM蛋白(血清M蛋白≧0.5g/dL、尿中M蛋白≧200mg/24時間)の測定が可能な患者であった。 被験者は、イサツキシマブ+カルフィルゾミブ+デキサメタゾンの投与を受ける群(イサツキシマブ群)またはカルフィルゾミブ+デキサメタゾンの投与を受ける群(対照群)に、3対2の割合で無作為に割り付けられた。イサツキシマブは、10mg/kg/週を4週間静脈内投与し、その後は同用量が2週ごとに投与された。投与は、病勢進行または許容されない毒性が発現するまで継続された。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における無増悪生存期間であった。VGPR以上、MRD陰性、奏効期間も良好 302例(年齢中央値64歳、女性44%、前治療レジメン数中央値2)が登録され、イサツキシマブ群に179例、対照群に123例が割り付けられた。 追跡期間中央値20.7ヵ月の時点で、独立審査委員会の判定による無増悪生存期間中央値は、イサツキシマブ群が未到達、対照群は19.15ヵ月であり、有意な差が認められた(ハザード比[HR]:0.53、99%信頼区間[CI]:0.32~0.89、片側検定のp=0.0007)。また、2年時の推定無増悪生存率は、イサツキシマブ群が68.9%、対照群は45.7%であった。 全奏効割合(国際骨髄腫作業部会[IMWG]の基準で、厳格な完全奏効[sCR]、完全奏効[CR]、最良部分奏効[VGPR]、部分奏効[PR]を達成した患者の合計)は、イサツキシマブ群が87%(155/179例)、対照群は83%(102/123例)と、両群間に有意な差はみられなかった(片側検定のp=0.19)ものの、VGPR以上の達成割合(73% vs.56%、p=0.0011)はイサツキシマブ群で良好であった。また、CR達成割合(sCR+CR)は、それぞれ40%および28%であった。微小残存病変(MRD)陰性の達成割合は、イサツキシマブ群が対照群の2倍以上だった(30% vs.13%、p=0.0004)。 奏効期間(HR:0.43、95%CI:0.27~0.67)および次の治療法への移行までの期間(HR:0.57、95%CI:0.38~0.84)はイサツキシマブ群で長かった。 Grade3以上の試験薬投与後に発現した有害事象(TEAE)は、イサツキシマブ群が77%(136/177例)、対照群は67%(82/122例)で認められ、重篤なTEAEはそれぞれ59%(105例)および57%(70例)、投与中止の原因となったTEAEは8%(15例)、14%(17例)にみられた。試験期間中に、致死的なTEAEはイサツキシマブ群3%(6例)、対照群3%(4例)で発生した。 著者は、「カルフィルゾミブ+デキサメタゾンへのイサツキシマブの追加は、免疫調節薬を含む1次治療施行後に増悪した患者や、免疫調節薬に抵抗性の患者の新たな治療選択肢となるだろう」としている。

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尋常性乾癬治療剤ドボベットのフォームタイプ新発売/レオファーマ・協和キリン

 レオファーマと協和キリンは、2021年6月18日、尋常性乾癬治療剤ドボベットの新剤形「ドボベットフォーム」を新発売した。 本剤は、既存の軟膏の有効性を担保したうえで、簡易性と利便性の観点から治療の新たな選択肢を提供することを目的に開発が進められ、2015年に米国で初めて承認された。以来、すでに欧州諸国など世界40ヵ国以上で承認されている。 ドボベットは、尋常性乾癬の外用剤としてレオファーマの親会社LEO Pharma A/Sが開発し、本邦では2014年9月にドボベット軟膏が、2018年6月にドボベットゲルが発売されている。今回、軟膏及びゲルに加え、本剤をラインナップに追加することで、両社はより多くの患者QOL向上への貢献を目指す。製品名:ドボベットフォーム 一般名:カルシポトリオール水和物 / ベタメタゾンジプロピオン酸エステル 効能又は効果:尋常性乾癬 用法及び用量:通常1日1回、患部に適量塗布する。 包装:60g (1本) 承認取得日:2021年1月6日 薬価収載日:2021年6月18日 薬価:221.30円/g 販売:協和キリン株式会社 製造販売:レオ ファーマ株式会社

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F1 CDx、MSI-Hightがんのコンパニオン診断として承認/中外

 中外製薬は、2021年06月22日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」について、ニボルマブおよび、:ペムブロリズマブの高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有するがんに対するコンパニオン診断として厚生労厚生労働省より承認を取得したと発表。 今回の承認により、FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルにて、ニボルマブの「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸」、およびペムブロリズマブの「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形(標準的な治療が困難な場合に限る)」に対し各々の薬剤の適応判定補助として利用が可能となる。

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限界はあるが必要だった研究(解説:野間重孝氏)-1403

 アスピリンは世界で初めて人工合成された医薬品で、ドイツ・バイエル社がこの開発に成功したのは1897年にさかのぼる。ところが、低用量アスピリンに血小板凝集抑制作用があることが発見されたのは1967年のことだった。Gruentzigが経皮的冠動脈形成術(PTCA)を初めて行ったのが1977年であることを考えると、不思議な暗合を感じてしまうのは評者だけではないと思う。 PTCAは確かに画期的な技術ではあったが、バルーンによる拡張のみでは血管壁の解離、リコイルを防ぐことができず、高頻度に発生する急性冠動脈閉塞や慢性期再狭窄率の高さが問題となっていた。これに解決策を与えるべく開発されたのが冠動脈ステントだった。慢性期に対する効果はSTRESS、BENESTENT両試験により証明されたが、亜急性期ステント血栓症(SAT)にはなかなか解決策が見いだされなかった。当初アスピリンとワルファリンの併用による効果が期待されたが、十分な効果は得られなかった。90年代初めに開発されたチエノピリジン系薬剤であるチクロピジンとアスピリンの併用、つまり抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)が初めてこの問題に解決策を与えたのである。 ステント開発によって術成績は飛躍的に向上し、とくに急性期合併症は激減したのだが、慢性期再狭窄による再血行再建術が必要になる率はそれでも15~30%に上るとされた。これに対して開発されたのが薬物溶出ステント(DES)であった。しかしDESの登場は新たな問題を引き起こした。金属のみによるステントでは比較的早くストラットが内膜により覆われるのに対し、DESでは内膜による皮膜形成に時間がかかり、ストラットがむき出しになっている期間が長いため、別のメカニズムからSATが問題となってきたのである。この頃にはチエノピリジン系薬剤も第2世代となり、クロピドグレルが主役となっていた。現在チエノピリジン系薬剤は第3世代の開発も進み、また違った機序の新規血小板機能抑制剤も開発されているが、それでもクロピドグレルの市場占有率は高いまま推移しているのは本論文にあるとおりである。アスピリン、クロピドグレル併用によるDAPTは確かにSATの発生を抑えたが、今度はDAPTをいつやめればいいのか、またやめた後にどちらの薬剤を残すのかが新たな問題として浮上した。 一方、ステント開発メーカーも手をこまねいていたわけではない。ストラットの菲薄化、形状の工夫、ポリマーの生体適合性の改善などを通して機材面からSAT発生率の低下が図られた。この結果、現在米国心臓病学会(ACC)、米国心臓協会(AHA)、欧州心臓病学会(ESC)のガイドラインで、出血リスクの低い患者では6ヵ月以上のDAPTを推奨するものの、出血リスクのある患者では1~3ヵ月のクロピドグレルの併用を推奨するというところにまでなったのである。SATの予防と出血リスクは、いわばトレードオフの関係にあるのである。 本論文は残ったもうひとつの問題、つまりDAPTをやめた後にどちらの薬剤を残すのかという問題を中心に据えた初めての大規模臨床研究である。ただし、これには少しただし書きが必要である。というのは、DAPTの期間を検討する一連の研究の中で、この問題は併せて扱われてきたからである。とくに最近のGLOBAL LEADERS試験、SMART-CHOICE試験、STOPDAPT-2試験などで短期間のDAPTとチエノピリジン系薬剤による耐容性はすでに十分議論されており、理由はさまざまであるにせよ、持続する薬剤としてはチエノピリジン系薬剤が選択されているのである。そもそも出血傾向はアスピリンで強く、またアスピリンでは胃腸障害などの副作用も問題になるからである。しかし著者らの言うとおり、この問題のみを正面から扱い、さまざまなレベルの冠動脈疾患を対象とした大規模臨床研究は、確かにこの研究が最初といえるのである。そしてこの問題について明快な解答を与えたことは評価されなければならないだろう。 しかし指摘されなければならないのは、これはあくまでクロピドグレルの成績だ、ということである。つまり、本研究からはDAPTの相手がプラスグレルであったり、チカグレロルであったらどうなのか、という点には言及できないということである。とくに第3世代チエノピリジン系薬剤であるプラスグレルは、代謝による効果のバラツキがほとんどないこと、さらに効果発現が速やかであることから、急性期の処置が必要な症例ではこちらのほうが選択されるケースが多いのではないだろうか。評者の周囲では、プラスグレルの場合もそちらを残すことを選択する臨床医が増えている印象がある。なお本稿は論文評であって総説ではないため解説できないが、なぜプラスグレルやチカグレロルがクロピドグレルに替わって標準治療薬とならなかったのかについての歴史的経緯は、若い方々には調べてみると参考になる点が多いと思うのでお勧めする。 気になった点をもうひとつ挙げると、著者ら自身がdiscussionの中で第3番目のlimitationとして認めているように、プロドラッグであるクロピドグレルでは肝臓における代謝は個人差が大きく、とくに東洋人でこの代謝酵素であるCYP2C19の欠損が報告されるケースが目立つことに関する議論である。この論文が韓国から発表されていることを考えると、著者らがこうした代謝の個人差の検討が行われていないことに対して、少し強いコメントをせざるを得ないことは理解できる。しかし、著者らが“The clinical significance of clopidogrel resistance is still under debate”と書き、さらにaspirin resistanceの問題を持ち出すなどの論述姿勢は適当だったのだろうか。また同国からクロピドグレルの効果についてAsian paradoxなる報告があるというが、これは定説といえるのだろうか。臨床研究において明らかになった事実を、自分たちはただ淡々と発表したのだと言えばよかったのではないだろうか。 評者はこの論文評欄において、一見当たり前であるように思われていることや類推が可能である事柄であっても、しっかり証明することの重要性を強調してきた。そういう意味でこの論文は評価されなければならないのは当然であるが、上記のように結果解釈の応用に限界がある点は指摘されなければならない。

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第59回 コロナワクチン接種後の発熱・痛みにNSAIDsも使用可/厚労省

<先週の動き>1.コロナワクチン接種後の発熱・痛みにNSAIDsも使用可/厚労省2.ワクチン予診で、初・再診療、外来診療料の算定不可/厚労省3.職域接種診療所、管理者は常勤医でなくとも開設可/厚労省4.次の感染拡大に向け、都道府県の新たな病床確保計画を公表/厚労省5.9月からレセプト審査でAI稼働、ローカルルール廃止へ/支払基金6.こども庁創設、オンライン診療の恒久化を明記/骨太の方針1.コロナワクチン接種後の発熱・痛みにNSAIDsも使用可/厚労省厚生労働省は、特設サイト「新型コロナワクチンQ&A」で、新たな質問「Q.ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか」を更新した。回答の下に「市販されている解熱鎮痛薬の種類には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンやロキソプロフェン)などがあり、ワクチン接種後の発熱や痛みなどにご使用いただけます」と記載され、参考資料としてCDCのページが示されている。巷では、「ワクチン後の解熱鎮痛にNSAIDsは使えない」などと誤った認識が広まっている可能性があり、アセトアミノフェン単剤の市販薬が売り切れるなどの影響が出ているため、これを機に正確な情報発信に努めたい。(参考)ワクチン接種後に発熱や頭痛が…市販薬は飲んでいいの?<新型コロナ>(東京新聞)【新型コロナウイルス感染症】気になるワクチン接種後の発熱 解熱鎮痛剤の使用について(感染症・予防接種ナビ)ワクチン接種後に発熱…どうする? アセトアミノフェンが人気 市販薬“正しい使い方”〈宮城〉(仙台放送)2.ワクチン予診で、初・再診療、外来診療料の算定不可/厚労省新型コロナワクチン接種の予約に当たり、予診を事前に行ったとして診療報酬を請求する事例があったため、厚労省は17日に、「注射をする前の予診実施に対して初診料、再診料、外来診療料などの診療報酬を算定することは不可」とする通知を発出した。なお、接種後の救急対応を行ったなど、処置や検査、投薬などに対応する項目について、それぞれ算定要件を満たした場合には、その分の診療報酬を算定できる。(参考)ワクチン接種、病院で代金請求に疑問の声「無料のはず」でも再診料請求のなぜ?(京都新聞)コロナワクチン接種のための「予診」、初診料や再診料・外来診療料の算定は「不可」―厚労省(GemMed)3.職域接種診療所、管理者は常勤医でなくとも開設可/厚労省厚労省は、職場でのワクチン接種を推進するため、医療法上の臨時的な取り扱いをまとめ、14日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの迅速な接種のための体制確保に係る医療法上の臨時的な取扱いについて(その4)」を発出した。職域単位でのワクチン実施に当たっては、都道府県知事が、適正かつ安全なワクチン接種に係る医療を提供するための医療法に規定される義務を果たすことが可能か確認した上で、「職域接種診療所」の開設を許可する。また、管理者は必ずしも常勤医でなくても可能となっている。さらに厚労省は、来年2月までの特例措置として、接種会場での看護師不足に対して、看護師の人材派遣を解禁している。5月14日時点で、全国の自治体から5,095人の看護師を確保しており、ワクチン接種加速のためにさまざまな規制緩和がなされる。(参考)「職域でのコロナワクチン接種」促進に向け、診療所開設・変更など届け出を臨時特例的に柔軟化―厚労省(GemMed)特例解禁の看護師派遣、151自治体で計5095人確保(読売新聞)4.次の感染拡大に向け、都道府県の新たな病床確保計画を公表/厚労省17日、厚労省は、各都道府県が次の新型コロナウイルス感染拡大に備えて作成した「病床・宿泊療養施設確保計画」を発表した。今年1月第3波の患者数の2倍を上回る想定で、これまでより約4,800床多い3万5,000床を確保。また、看護師不足にも対応するために、広域派遣が可能な看護師73人を確保した。(参考)13.6万人の療養者想定 全国の病床確保計画―厚労省集計(時事ドットコム)コロナ病床、全国で4800積み上げ3万5千床を確保(朝日新聞)「第3波の2倍」想定 都道府県の新たな病床確保計画公表 厚労省(NHK)5.9月からレセプト審査でAI稼働、ローカルルール廃止へ/支払基金社会保険診療報酬支払基金による改革の一環で、今年9月審査分より、AI(人工知能)を用いた新しい審査システムが導入される。これにより、8割程度をAI、2割程度を人による審査に振り分け、2年以内にレセプト全体の9割程度をコンピューターチェックで完結することを目指す。また、9月の新システム稼働までに、支払基金の各支部にある独自のチェックルール(ローカルルール)が、原則すべて集約または廃止される。都道府県間における審査結果の不合理な差異の解消や、審査業務の効率化・高度化の推進を進める。(参考)支払基金、人による審査8割減目指し今年9月審査分からレセプト審査にAI導入(ワタキューメディカルニュース)資料 社会保険診療報酬支払基金の審査事務 集約化に向けた取組と今後の課題6.こども庁創設、オンライン診療の恒久化を明記/骨太の方針菅内閣は、18日に開催された臨時閣議において、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)」を閣議決定した。感染症の克服と経済の好循環を目指し、希望する高齢者へのワクチン接種を今年7月末に完了し、希望する全対象者への接種を本年10~11月にかけて終えることを目指す。効果的な治療法、国産治療薬の研究開発・実用化の支援および国産ワクチンの研究開発体制・生産体制の強化を行い、感染症有事に備える取り組みとして、より実効性のある対策を講じることができるよう、法的な整備を行う。また、少子化の克服、子供を産み育てやすい社会の実現のためにこども庁の創設や、行政手続のオンライン化によりデジタルガバメントの推進を図ること、さらにオンライン診療を幅広く活用するため、初診からの実施は原則かかりつけ医によるものと限定しつつ、事前に患者の状態が把握できる場合にも認める方向で、具体案を検討することが打ち出されている。(参考)骨太方針、成長戦略、規制改革実施計画を閣議決定 ワクチン接種「10~11月完了」(NHK)「経済財政運営と改革の基本方針2021」(内閣府)

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事例028 介護職員等喀痰吸引等指示料の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説1日複数回の喀痰吸引を必要とする在宅患者に介護施設の職員が対応するため、定期的に「介護職員等喀痰吸引等指示書」(以下「指示書」)を発行していました。3月に介護施設の職員からの状況報告を受けて、前回発行の指示書の内容変更を必要としたため、患者家族の了解を得て指示書を交付し、「C007-2 介護職員等喀痰吸引等指示料」(以下「指示料」)を算定したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。査定原因を調べるために点数表を確認すると、指示料の告示部分に「有効期間が6ヵ月以内の指示書を交付した場合に3月に1回算定する」とあります。算定担当者に話を聞くと、この告示をみて、前回算定月から翌々月であっても6月間に2回の算定が可能であると勘違いしており、次回は7月に指示料算定可能とメモを残して算定していました。ところが、診療録も見直したところ、前々回の指示料の算定月は昨年10月でした。算定月を含み3ヵ月経過後の今年1月に算定があるので、算定月を含み3ヵ月を経過した4月でないと算定ができないことがわかります。したがって、前段の勘違いもさることながら、3月の指示料の算定は告示の要件を満たさないとしてD事由が適用されたものと推定されます。定期的に指示書を交付している在宅患者を複数抱えているために、レセプト作成システム内における指示料の履歴管理を前々回まで参照して算定することを徹底し、レセプトチェックシステムで前回算定日から2ヵ月空いていないと警告が表示されるように登録し、今後の査定対策としました。

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COVID-19診断後、3割が半年以内に精神・神経症状発症

 COVID-19の神経学・精神医学的後遺症が報告されているが、英国・オックスフォード大学のMaxime Taquet氏ら研究グループが23万例超のCOVID-19患者のデータを分析したところ、診断後6ヵ月以内に約34%が虚血性脳卒中や不安障害、気分障害などを発症していたことがわかった。集中治療を要する重症例では、推定発生率は約47%にまで上昇していた。Lancet Psychiatry誌2021年5月号掲載の報告。 本研究は、米国の62医療機関の患者8,100万人の電子カルテから匿名データを収集するTriNetX電子健康記録ネットワークを使用し、2020年1月20日~12月13日の期間、COVID-19診断後6ヵ月間における14種の神経学・精神医学的症状の発生率を推定した(頭蓋内出血、虚血性脳卒中、パーキンソン病、ギランバレー症候群、神経・神経根・神経叢障害、神経筋接合部・筋疾患、脳炎、認知症、気分・不安・精神病性障害、精神病性障害、気分障害、不安障害、物質使用障害、不眠症)。対照群として、インフルエンザや呼吸器感染症の患者コホートを設定し、傾向スコアマッチングを用いて発症率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19と診断された23万6,379例のうち、6ヵ月間以内に神経学・精神医学的診断の推定発生率は33.62%(95%信頼区間[CI]:33.17~34.07)であり、12.84%(12.36~13.33)が初めての診断だった。・集中治療室に入院した患者の場合、診断の推定発生率は46.42%(95%CI:44.78~48.09)となり、初めての診断は25.7%(23.50~28.25)にのぼった。・診断カテゴリーのうち、推定発症率が高かったのは不安障害(17・39%、95%CI:17.04~17.74)、気分障害(13.66%、95%:13.35~13.99)、不眠症(5.42%、95%CI:5.20~5.64)など。・多くの診断カテゴリーにおいて、インフルエンザ患者よりもCOVID-19患者の発症率が高かった(HR:1.44、95%CI:1.40~1.47)。 著者らは、「神経・精神症状の後遺症リスクは、重症COVID-19患者で最も大きかったが、これらに限定されない。これらの知見を裏付け、説明するには、さらなる研究と発症メカニズムの特定が必要だ」と述べている。

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食道扁平上皮がん1次治療におけるNIVO+IPI、NIVO+ChemoのOS結果(CheckMate 648)/ASCO2021

 英国・Royal Marsden HospitalのIan Chau氏が、「CheckMate 648試験」の初となる解析結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表。進行食道扁平上皮がん(ESCC)の1次治療として、ニボルマブ(NIVO)+イピリムマブ(IPI)併用療法およびNIVO+化学療法(Chemo)の併用療法はいずれも、Chemo単独と比べて全生存期間(OS)を有意に延長することを報告した。 すでにニボルマブ単剤が化学療法と比べて全生存期間(OS)を有意に延長することは「ATTRACTION-3試験」で示されている。CheckMate 648試験は、進行ESCCにおけるNIVO併用療法の有効性と安全性を世界で最初に評価した第III相非盲検無作為化比較試験。・対象:切除不能の進行または転移を有するESCC、PS 0~1、970例・試験群:NIVO(240mg、2週ごと)+Chemo(フルオロウラシル+シスプラチン、4週ごと)(321例)、NIVO(3mg/kg、2週ごと)+IPI(1mg/kg、6週ごと)(325例)、・対照群:Chemo単独(324例)・評価項目:[主要評価項目]OSおよび無増悪生存(PFS)(腫瘍PD-L1≧1%患者)[副次評価項目]OSおよびPFS(全無作為化患者)、奏効率(ORR)(腫瘍PD-L1≧1%患者および全無作為化患者) 主な結果は以下のとおり。・PD-L1≧1%患者は、NIVO+Chemo群49%、NIVO+IPI群49%、Chemo群48%であった。・データカットオフ日(2021年1月18日、最短追跡期間12.9ヵ月)におけるOSは、Chemo群9.1ヵ月に対して、NIVO+Chemo群15.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.54、99.5%信頼区間[CI]:0.37~0.80、p<0.0001)、NIVO+IPI群13.7ヵ月(HR:0.64、p=0.0010)であり、Chemo群に対していずれの併用療法も有意に延長した。・主要評価項目のPFSは、Chemo群4.4ヵ月に対して、NIVO+Chemo群6.9ヵ月(HR:0.65、98.5%CI:0.46~0.92、p=0.0023)と有意な延長が認められたが、NIVO+IPI群は4.0ヵ月(HR:1.02、p=0.8958)と延長は認められなかった。・全無作為化患者におけるOSは、Chemo群10.7ヵ月に対して、NIVO+Chemo群13.2ヵ月(HR:0.74、99.1%CI:0.58~0.96、p=0.0021)、NIVO+IPI群12.8ヵ月(HR:0.78、p=0.0110)であった。・同様にPFSは、Chemo群5.6ヵ月に対して、NIVO+Chemo群5.8ヵ月(HR:0.81、98.5%CI:0.64~1.04、p=0.0355)、NIVO+IPI群は2.9ヵ月(HR:1.26)であった。・ORRは、PD-L1≧1%患者でNIVO+Chemo群53%、NIVO+IPI群35%、Chemo群20%であった。・奏効期間(DoR)中央値は、PD-L1≧1%患者でNIVO+Chemo群8.4ヵ月、NIVO+IPI群11.8ヵ月、Chemo群5.7ヵ月であった。・治療関連の有害事象は、NIVO+Chemo群5例(2%)、NIVO+IPI群5例(2%)、Chemo群4例(1%)であった。・安全性に関する新たな問題は認められなかった。 Chau氏は、「進行ESCC患者において、NIVO+Chemo併用療法およびNIVO+IPI併用療法はいずれも、1次治療の新たな標準治療となり得ることが示された」とまとめた。

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閉経後HR+早期乳がん、レトロゾール追加投与でベネフィットが得られる患者は?(NSABP B-42)/ASCO2021

 閉経後のホルモン(HR)陽性早期乳がん患者において、術後内分泌療法としてのレトロゾール5年間追加投与は、MammaPrintによるゲノムリスクが低リスクの患者では有意なベネフィットが確認されたが、高リスクの患者では有意差を得られなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で、米国・UPMC Hillman Cancer CenterのPriya Rastogi氏が、第III相NSABP B-42試験の追加解析結果を報告した。 本試験は、術後内分泌療法を受けた閉経後のHR陽性早期乳がん患者を対象に、レトロゾール5年間追加投与の有効性を検討する無作為化二重盲検プラセボ対照試験。2019年のサン・アントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で、主要評価項目の無病生存期間(DFS)は、レトロゾール追加投与群で有意に延長したことが報告された(ハザード比[HR]:0.85、p=0.01)。OSに有意差はみられなかったが、乳がん無発症期間(BCFI)のHRは0.75、p=0.003、無作為化から遠隔転移までの期間(DR)のHRは0.72、p=0.01とともに改善した。今回の解析では、レトロゾール5年間追加投与によるベネフィットを受ける患者の選択における、70遺伝子シグニチャー検査(MammaPrint)の有用性が検討された。・対象:術後内分泌療法としてアロマターゼ阻害薬(AI)を5年間、または3年以内のタモキシフェン投与後にAIを計5年間投与した閉経後のHR陽性早期乳がん患者・試験群:レトロゾールを5年間追加投与(ELT群)・対照群:プラセボを5年間投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]無作為化から遠隔転移までの期間(DR)[副次評価項目]無病生存期間(DFS)、乳がん無発症期間(BCFI) 主な結果は以下のとおり。・データカットオフは2020年4月30日、追跡期間中央値は 10.4年であった。・本試験の全適格患者は3,903例、うちMammaPrintの結果が得られ本解析の対象とされたのは1,866例(MPコホート、N0:56.4%、AIのみ:61.1%、HER2-:79.3%)。37.8%がMammaPrint 評価で高リスク(MP-H)、62.2%が低リスク(MP-L)、MP-Lのうち13.5%が超低リスク(MP-UL)、48.7%がMP-LNUL(MP-LだがMP-ULではない)だった。・レトロゾールの追加効果は、全体集団と比較してMPコホートでより顕著であった。・主要評価項目のDRは、MP-LでELT群の統計的に有意なベネフィットがみられたが(HR:0.43、95%信頼区間[CI]:0.25~0.74、p=0.002)、MP-Hではみられなかった(HR:0.65、95%CI:0.34~1.24、p=0.19、相互作用のp=0.38)。・副次評価項目のDFSにおいても、MP-L(HR:0.67、95%CI:0.52~0.85、p<0.001)でELT群の統計的に有意なベネフィットがみられたが、MP-Hではみられなかった(HR:1.10、95%CI:0.82~1.47、p=0.55、相互作用のp=0.015)。・BCFIでも同様の傾向が観察された。MP-L(HR:0.51、95%CI:0.35~0.74、p<0.001)、MP-H(HR:1.15、95%CI:0.74~1.79、p=0.53、相互作用のp=0.006)。・MP-Lのサブカテゴリ別にみると、MP-LNULではDR、DFS、BCFIすべてでELT群の統計的に有意なベネフィットがみられたが、MP-ULではみられなかった。ただし、症例数が少ないため検出力が不足している可能性がある。 演者のRastogi氏は、本結果は追加の内分泌療法を実施する患者選択におけるMammaPrintの臨床的有用性を示したと結論付け、臨床病理学的特徴と組み合わせた解析を行うことで、より最適な患者選択が可能になるのではないかと展望を示した。

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新型コロナ抗体薬bamlanivimab、単剤投与で発症予防効果/JAMA

 介護付き有料老人ホームの入居者と職員を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「BLAZE-2試験」において、bamlanivimab単剤療法は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生を低下させることが認められた。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のMyron S. Cohen氏らが報告した。介護福祉施設でCOVID-19が発生した場合、入居者および職員をCOVID-19から守るために予防的介入が必要である。モノクローナル抗体薬のbamlanivimabは、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19発症に対し速やかな予防効果を発揮することが期待されていた。JAMA誌オンライン版2021年6月3日号掲載の報告。bamlanivimab単剤のCOVID-19発症予防効果をプラセボと比較 研究グループは2020年8月2日~11月20日の期間に、SARS-CoV-2感染例が1例以上確認された米国の介護付き有料老人ホーム74施設の入居者および職員を登録し、計1,175例をbamlanivimab 4,200mg単剤静脈内投与群(588例)またはプラセボ群(587例)に無作為に割り付けた。全参加者が試験開始から57日目に達した2021年1月13日にデータベースがロックされた。 主要評価項目は、無作為化後8週間以内のCOVID-19累積発症率であった。COVID-19発症は、RT-PCR検査によるSARS-CoV-2検出、かつ検出後21日以内の疾患重症度が軽度以上と定義した。 有効性の解析対象は、ベースラインでRT-PCRおよび血清学的にSARS-CoV-2陰性の966例(職員666例、入所者300例)であった(平均年齢53.0歳[範囲:18~104]、女性722例[74.7%])。bamlanivimab群vs.プラセボ群でCOVID-19発症率は8.5% vs.15.2% bamlanivimab群はプラセボ群と比較して、COVID-19発症率が有意に低下した(8.5% vs.15.2%、オッズ比:0.43[95%信頼区間[CI]:0.28~0.68]、p<0.001、絶対リスク差:-6.6%[95%CI:-10.7~-2.6])。投与開始後57日間におけるCOVID-19による死亡は5例報告され、すべてプラセボ群であった。 安全性解析対象集団1,175例において、有害事象の発現率はbamlanivimab群20.1%、プラセボ群18.9%であった。主な有害事象は、尿路感染症(bamlanivimab群2%、プラセボ群2.4%)、高血圧症(bamlanivimab群1.2%、プラセボ群1.7%)であった。 著者は、「さらなる研究で、モノクローナル抗体薬の併用療法について、現在のウイルス株に対する予防効果を評価する必要がある」とまとめた。

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再発/難治性B-ALL、CAR-T細胞療法「KTE-X19」が有望/Lancet

 再発/難治性前駆B細胞急性リンパ性白血病(ALL)の患者に対する、自家抗CD19 CAR-T細胞療法「KTE-X19」の有効性と安全性を検討した第II相国際多施設共同非盲検単群試験「ZUMA-3試験」の結果を、米国・モーフィットがんセンターのBijal D. Shah氏らが報告した。完全寛解率または血液学的回復が不十分な完全寛解率は高率で、奏効した患者における全生存(OS)期間中央値は未到達であり、安全性プロファイルは管理可能であったという。新たな治療法や自家造血幹細胞移植(allo-SCT)の治療にもかかわらず、再発/難治性前駆B細胞ALL患者の転帰は依然として不良であり、より効果的な治療の開発が求められている。著者は、「今回の試験結果は、KTE-X19はそれらの患者に長期的な臨床的ベネフィットをもたらす可能性があることを示すものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年6月3日号掲載の報告。米国・カナダ・欧州25施設で行われたZUMA-3試験 ZUMA-3試験の被験者は、米国、カナダおよび欧州の25施設で登録され、18歳以上、ECOG 0/1、骨髄芽球5%超の再発/難治性前駆B細胞ALL患者が適格とされた。被験者は白血球除去療法および前処置化学療法を受けた後、KTE-X19の単回注入(1×106 CAR-T細胞/kg体重)を受けた。 主要評価項目は、中央評価による完全寛解(CR)率および血液学的回復が不十分な完全寛解(Cri)率であった。副次評価項目は、寛解期間(DOR)、無再発生存(RFS)期間、OS、微小残存病変(MRD)陰性率、allo-SCTを受けた患者の割合などであった。 有効性および安全性の解析は、治療を受けた患者集団を対象に行われた。主要評価項目達成は71%、奏効患者のOSは未到達 2018年10月1日~2019年10月9日の期間に、71例が登録され、白血球除去療法を受けた。KTE-X19の作製に成功したのは65例(92%)で、55例(77%)が投与を受けた。治療を受けた患者の年齢中央値は40歳(IQR:28~52)、追跡期間中央値は16.4ヵ月(13.8~19.6)であった。 CRまたは血液学的回復が不十分なCriを達成した患者は39例(71%、95%信頼区間[CI]:57~82、p<0.0001)であった。うちCR達成患者は31例(56%)であった。 DOR中央値は、12.8ヵ月(95%CI:8.7~評価不能[NE])であり、RFSは11.6ヵ月(2.7~15.5)、OS期間は18.2ヵ月(15.9~NE)であった。 奏効した患者において、OS中央値は未到達であり、38例(97%)がMRD陰性であった。KTE-X19投与後にallo-SCTを受けた患者は10例(18%)だった。 Grade3以上で最も頻度の高い有害事象は、貧血27例(49%)、発熱20例(36%)であった。Grade3以上の感染症を呈した患者は14例(25%)報告された。Grade5のKTE-X19関連事象は2例(脳ヘルニア、敗血性ショック)報告された。Grade3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)は13例(24%)、Grade3以上の神経学的イベントは14例(25%)報告された。

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精神症状の早期出現と治療抵抗性統合失調症との関係

 早期発症の統合失調症患者(EOS)では、臨床経過がより不良となることがこれまでの研究で報告されているが、研究結果には不均一性が存在する。イタリア・University School of Medicine Federico IIのFelice Iasevoli氏らは、治療抵抗性統合失調症(TRS)と発症年齢との関連について、調査を行った。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2021年5月16日号の報告。 非情動性精神疾患患者197例をスクリーニングした。そのうち、統合失調症に罹患していた99例はTRSの可能性があり、抗精神病薬の治療反応を評価するための4~8週間プロスペクティブ研究に登録された。発症年齢(18歳以下:EOS、18歳以上:AOS)と治療抵抗性の状態により、対象患者を4群(EOS-TRS、EOS-nonTRS、AOS-TRS、AOS-nonTRS)に分類した。複数の臨床変数を測定し、年齢を共変量として用いて共分散分析(ANCOVA)による比較を行った。統計学的に有意な差が、治療抵抗性の状態または発症年齢に起因するかを評価するため、二元配置分散分析(ANOVA)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・TRS患者の割合は、AOSよりもEOSで有意に高かった。・ANCOVAでは、EOS-TRS群はそれ以外の群と比較し、臨床アウトカム、認知機能アウトカム、心理社会的アウトカムが有意に不良であった。・全体として、EOS-TRS群では、EOS-nonTRS群よりも機能が損なわれていたが、AOS-TRS群との有意差は、かなりの程度で認められるものの、一貫性が低下した。・ANOVAでは、調査した変数の大部分において、群間の有意差は、発症年齢や複合的な作用ではなく、治療抵抗性の状態に起因していた。 著者らは「一般的な神経生理学のアウトカムとして、抗精神病薬に対する治療抵抗性は、精神疾患の早期発症と強く相関する可能性が示唆された」としている。

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EGFR変異陽性NSCLCにエルロチニブ術前/術後療法のOS結果(CTONG1103)/ASCO2021

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術前/術後療法としてのエルロチニブと化学療法の比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、中国・Guangdong Provincial People’s HospitalのYi-Long Wu氏から報告された。  本試験は中国国内で実施されたオープンラベル無作為化比較第II相試験であり、すでにエルロチニブによる無増悪生存期間(PFS)の有意な延長が報告されている。今回は、その全生存期間(OS)の解析を含めた最終報告である。 ・対象:Stage IIIA-N2 EGFR変異陽性の未治療症例72例・試験群:術前にエルロチニブ150㎎/日を42日間投与し、術後に同量のエルロチニブを1年間投与(E群:37例)・対照群:術前にゲムシタビン(1250mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)を3週ごと2サイクル投与、術後に同量のゲムシタビン+シスプラチンを3週ごと2サイクル投与(GC群:35例)・評価項目:[主要評価項目]全奏効率(ORR)[副次評価項目]病理的完全奏効(pCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、3年・5年時OS率、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値62.5ヵ月時点でのOS中央値はE群42.2ヵ月、GC群36.9ヵ月、ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.47~1.47)p=0.513であった。・3年OS率は、E群58.6%、GC群55.9%であり、5年時OS率は、それぞれ40.8%と27.6%であった。・アップデートされたPFSは、その中央値でE群21.5ヵ月、GC群11.4ヵ月、HR:0.36、95%CI:0.21~0.61)、p<0.001であった。・試験治療後の再発例には、両群ともそのほとんどに(87%~94%)TKI製剤が投与されており、その奏効率は、E群で53.3%、GC群で52.2%であった。(すべてPR)・Grade3/4の有害事象は、術前のE群では出現はなく、術後では皮膚障害、下痢、肝機能障害などが報告された。またGC群では、術前も術後も血液毒性の報告が主であった。  演者は「エルロチニブの術前/術後の投与はOS改善の可能性を示唆した。また、後治療としてのEGFR-TKI投与がE群だけでなくGC群の予後改善にも寄与しているものと考えられる。」と述べた。

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胃、食道腺がん1次治療のニボルマブ+化学療法、全無作為化患者集団の成績(CheckMate 649)/ASCO2021

 ニボルマブ+化学療法(NIVO+Chemo)による胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんの1次治療については、第III相CheckMate-649試験の結果が昨年の欧州臨床腫瘍学会年次総会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表され、PD-L1 CPS≧5患者における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)が統計学的に有意に延長することが報告された。この結果に基づき、1次治療として米国FDAの承認を取得した。今回の米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)では、ドイツ・Johannes-Gutenberg大学のMarkus Moehler氏が、全無作為化患者における有効性と安全性に関する解析結果を発表。OSの統計学的に有意な延長を認めたと報告した。CheckMate-649試験の全無作為化患者のOSとPFSを評価・対象:未治療のHER2陰性進行または転移を有する胃/胃食道接合部/食道腺がん、PS 0~1・試験群:NIVO+Chemo(NIVO 360mg+XELOX[3週ごと]、またはNIVO 240mg+FOLFOX[2週ごと])789例・対照群:上記の化学療法単独のいずれか(Chemo群)792例・評価項目:[主要評価項目]PD-L1 CPS≧5患者のPFSとOS[副次評価項目]PD-L1 CPS≧1、≧10、ならびに全無作為化患者のOSとPFS、全奏効率(ORR)[探索的評価項目]安全性、QOL CheckMate-649試験の全無作為化患者における有効性と安全性に関する主な結果は以下のとおり。・CheckMate-649試験の全無作為化患者(データカットオフ日2020年5月27日、最短追跡期間12.1ヵ月)のOS中央値は、NIVO+Chemo群13.8ヵ月、Chemo群11.6ヵ月であり、NIVO+Chemo群で有意なOSの延長を認めた(HR:0.80、99.3%CI:0.68~0.94、p=0.0002)。・12ヵ月OS率は、NIVO+Chemo群55%、Chemo群48%であった。・CheckMate-649試験の全無作為化患者のPFS中央値は、NIVO+Chemo群7.7ヵ月、Chemo群6.9ヵ月であり、NIVO+Chemo群で臨床的に意義のあるPFSの延長を認めた(HR:0.77、95%CI:0.68~0.87)。・12ヵ月PFS率は、NIVO+Chemo群33%、Chemo群23%であった。・事前に規定したすべてのサブグループの解析において、一貫してOSはNIVO+Chemo群が良好であった。・NIVO+Chemo群における免疫関連のGrade3/4治療関連有害事象(TRAE)は、すべての器官別で5%以下であり、非内分泌系の事象のほとんどは管理アルゴリズムにより回復した(回復までの期間中央値2~23週間)。・症状悪化までの期間中央値は、NIVO+Chemo群が未到達、Chemo群が21.0ヵ月であり、NIVO+Chemo群であった(HR:0.77、95%CI:0.63~0.95、p=0.0129)。 Moehler氏は、「データはHER2陰性の進行胃/胃食道接合部/食道腺がん患者の新たな標準1次治療として、NIVO+Chemoを支持するものであった」とまとめている。

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AZ製ワクチン、毛細血管漏出症候群を副反応に追加/欧州医薬品庁

 欧州医薬品庁(EMA)の安全委員会・ファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)はアストラゼネカ製のCOVID-19ワクチン「Vaxzevria:開発名ChAdOx1 nCoV-19(AZ製ワクチン)」に関するレビューをサイト上で発表し、過去に毛細血管漏出症候群を発症した人はAZ製ワクチンを接種すべきではない、と結論付けた。 毛細血管漏出症候群(capillary leak syndrome)は、毛細血管から液体が漏出し、手足のむくみ、低血圧、アルブミン血中濃度の低下などが生じ、全身の浮腫や腎不全などの症状を引き起こす希少疾患。 PRACは、AZ製ワクチンを接種した毛細血管漏出症候群の6例について詳細な検討を行った。症例の大半が女性で、ワクチン接種後4日以内に発生した。対象者のうち3例は毛細血管漏出症候群の既往歴があり、うち1例はその後死亡した。2021年5月27日時点で、AZ製ワクチンはEU/EEAおよび英国において7,800万回以上接種されている。 PRACは、毛細血管漏出症候群の兆候や症状、および過去に同症候群と診断されたことのある人の再発リスクに対する認識を高めるために、医療従事者とコミュニケーションをとることを検討しており、あわせて毛細血管漏出症候群をワクチンの新たな副反応として製品情報に追加し、このリスクについて医療従事者や患者の認識を高めるための警告を加えるべき、と結論付けている。

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「COVID-19ワクチンに関する提言」、変異株や安全性の最新情報追加/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:舘田一博氏[東邦大学医学部教授])は、6月16日に「COVID-19ワクチンに関する提言」(第3版)を同学会のホームぺージで発表、公開した。 第1版は2020年12月28日に、第2版は2021年2月26日に発表・公開され、ワクチンの有効性、安全性、国内での接種の状況、接種での注意点などが提言されていた。今回は、第2版以降の新しい知見に加え、新しく承認されたワクチンの効果、安全性について加筆された。 主に加筆・修正された箇所は下記の通り。【ワクチンの有効性について】・ファイザーのコミナティ筋注について、わが国の報告では、初回接種後57.1%(60/105)、2回接種後99.0%(104/105)の抗体陽転率がみられる。・モデルナのCOVID-19ワクチンモデルナ筋注について、2回接種後の中和抗体価(55歳未満でそれぞれ184と1,733、55歳以上で160と1,827)は、海外で行われた臨床試験とほぼ同等。また、抗体陽転率は100%であり、高い免疫原性が示されている。・アストラゼネカのバキスゼブリア筋注について、いずれの年齢層でも中和抗体価が初回接種後より2回目接種後で上昇。・ファイザーとモデルナのワクチンの実社会での有効性は、米国CDCの報告から2回接種14日以後で発症者が90%減少、65歳以上のCOVID-19による入院率が94%減少、医療従事者の発症率が2回接種7日以後で94%減少。・ファイザーのワクチンでは、イスラエルで接種群と対照群それぞれ59万人を対象とした大規模な比較研究が行われ、接種群では2回接種7日以後の発症が94%、入院率が87%、重症化率が92%減少した。また、1回接種後14~20日の期間でも、発症54%、入院率74%、重症化率62%の有効率。【変異株とワクチンの効果】・ファイザーやモデルナのワクチンで誘導される抗体による中和活性には若干の減少がみられるが、ワクチンの有効性に大きな影響はない。アストラゼネカのワクチンで誘導される抗体の中和活性は約9分の1に低下するが、実際の発症予防効果は従来株での81.5%に対して、B.1.1.7でも70.4%の有効率。また、インド型変異株(B.1.617、δ)などの3つの亜型のうちB.1.617.1とB.1.617.3には免疫回避をもたらすE484Q変異がみられ、ワクチン効果が低下することが懸念され、B.1.617.1では、ファイザーとモデルナのワクチンで誘導される抗体の中和活性が、いずれも7分の1に低下していることが報告されている。【ワクチンの安全性】・海外の臨床試験における有害事象では、アストラゼネカのワクチンで血栓塞栓イベントがまれながら発生したことから、再評価が行われた上で接種が進んでおり、ファイザーのワクチンでは、12~15歳における安全性が海外の臨床試験で評価され、副反応の種類・頻度は16~25歳と比較してほぼ同等であり、重篤な健康被害はみられなかった。・わが国での臨床試験における有害事象について、ファイザーのワクチンでは、医療従事者1万9千人を対象に先行接種者健康調査が行われたが、初回接種後の発熱(37.5℃以上)が3.3%と国内臨床試験に比べて低かった以外はほぼ同等の副反応の頻度だった。発熱は接種翌日(2日目)に多く、接種3日目にはほとんど消失。モデルナのワクチンでは、海外の臨床試験やファイザーのワクチンの国内臨床試験の結果と大きな違いはなかったが、2回目の発熱が40.1%と高い頻度(これは口腔内体温で測定している影響も考慮)。なお、モデルナのワクチンでは、接種1週間以後に遅発性の局所反応(疼痛、腫脹、紅斑など)が海外で報告され、国内臨床試験でも5.3%(8/150)にみられ、すべて初回接種後8~22日に発現し、持続期間は2~15日だった。・mRNAワクチン接種後の心筋炎について、ファイザーのワクチン接種後に心筋炎症例が報告され、年齢は14~56歳の範囲で、10代から20代の男性に多く、接種後1日から数日後に胸痛や胸部違和感などの症状で発症し、心電図異常やトロポニンの上昇が確認されている。軽症例がほとんどで、2回目の接種後に多く見られている。わが国では5月30日現在で8人のファイザーのワクチン接種後の心筋炎が報告されているが、6月9日時点においてワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められず、引き続き国内外の情報を収集しつつ接種を継続。・アストラゼネカのウイルスベクターワクチン接種後の血栓塞栓イベントについて、ワクチン接種後4~28日に発症、脳静脈血栓症や内臓静脈血栓症など通常とは異なる部位に生じる血栓症、中等度~重度の血小板減少、凝固線溶系マーカー異常(D-ダイマー著増など)、抗血小板第4因子抗体の陽性などが特徴。発症機序は不明だがアデノウイルスが血小板に結合して活性化することが報告されている。【国内での接種の方向性】・12~15歳へのmRNAワクチンの接種について、わが国でも6月1日から予防接種法の臨時接種として接種が認められたが、有効性とリスクの観点から接種する場合、個人への丁寧な説明が困難な集団接種ではなく、医療機関における個別接種が望ましい。・COVID-19罹患者への接種では、すでに罹患した人にファイザーやモデルナのmRNAワクチンを1回接種した場合、抗スパイクタンパク質抗体価が未罹患者より10~100倍程度上昇するという報告があり、罹患者への接種でさらに強い免疫が得られると考えられる。厚生労働省のQ&Aでは、「感染した方もワクチンを接種することができ、現時点では通常通り2回接種できる」とあり、回復後の適当な時期に接種することが奨められる。ワクチン接種後の感染対策も重要 最後に提言では、「ワクチン接種を受けることで安全が保証されるわけではない。接種しても一部の人は発症する。発症しなくても感染し、無症状病原体保有者として人に広げる可能性も一部にはある。また、ワクチンの効果がどのくらい続くかも不明。COVID-19の蔓延状況が改善するまでは、マスク、手洗いなどの基本的な感染対策は維持しなければならない」と注意を喚起するとともに、「最終的に接種するかどうかは個人の判断にゆだねられるべきであり、周囲から接種を強制されることがあってはならない。また、健康上の理由で接種できない人や個人としての信条で接種を受けない人が、そのことによって何らかの差別を受けることがないよう配慮が必要」とラベリングなどへの注意も示している。

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