新型コロナへのイベルメクチン使用、中毒症状の報告が急増

提供元:ケアネット

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公開日:2021/10/27

 

 腸管糞線虫症または疥癬の経口治療薬のイベルメクチン(商品名:ストロメクトール)を新型コロナウイルス治療薬として使用することに対し、製薬メーカーや米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)などから、安全性と有効性を支持するデータはなく使用を推奨しない旨の声明が重ねて出されている。さらに、イベルメクチン服用後の中毒症状を訴えて医療機関を受診する人が急増しているとの報告が、NEJM誌オンライン版2021年10月20日号「CORRESPONDENCE」に掲載された。

イベルメクチンの不適切使用は重篤な副作用を引き起こす可能性

 この報告は米国・ポートランドのオレゴン健康科学大学のCourtney Temple氏らによるもの。米国では獣医によるイベルメクチン使用が増加しており、人に対する処方数もパンデミック前の24倍になっており、2021年8月の処方数は前月比4倍と急増している。

 オレゴン州のOregon Poison Centerは、専門的な訓練を受けた看護師、薬剤師、医師が常駐する電話相談センターであり、オレゴン・アラスカ・グアム州において、一般市民への治療アドバイスや患者をケアする医療従事者への包括的な治療相談を行っている。同センターには、最近、COVID-19に関連したイベルメクチン暴露に関する問い合わせが増えている。

 イベルメクチンに関する通報の全通報に対する割合は、2020年には月0.25件だったが、2021年1月~7月までは月0.86件に増加し、2021年8月にセンターは21件の通報を受けた(毒物曝露に関する全通報数は2020年と2021年で大きな差はなかった)。

 8月のイベルメクチンに関する通報21例のうち11例が男性で、大半が60歳以上だった(年齢中央値64、範囲20~81)。約半数(11例)はCOVID-19の予防目的で、残り10例は治療目的でイベルメクチンを使用していた。3例は医師または獣医師から処方を受け、17例は獣医師用の製剤を購入して使用していた(残り1例の入手先は未確認)。

 大半の人は初回の大量かつ単回の投与後2時間以内に症状が発現した。6例では、1日おきまたは週2回の服用を数日から数週間繰り返した後、症状が徐々に現れた。1例は治療または予防目的でビタミンDも併せて摂取していた。

 動物用医薬品の使用者は、1.87%ペーストで6.8mg~125mg、1%溶液で20~50mgのイベルメクチンを使用していた。人用錠剤の使用者は、予防目的で1回21mgを週2回使用していた。

 通報した21例中6例がイベルメクチン使用による中毒症状で入院したが、処方により入手した 3例を含め、6例全員が予防目的の使用だった。4例は集中治療室で治療を受けたが、死亡例はなかった。症状は、胃腸障害が4例、錯乱が3例、運動失調と脱力が2例、低血圧が2例、痙攣が1例だった。入院しなかった人の多くは、胃腸障害、めまい、錯乱、視覚症状、発疹などの症状を報告した。

 著者らは、これらの症例は、錯乱、運動失調、痙攣、低血圧などの重篤なエピソードを含むイベルメクチンの潜在的な毒性作用と不適切な使用が増加していることを表しており、COVID-19の治療や予防を目的としてイベルメクチンを使用することを支持する十分な証拠はなく、不適切な使用や薬物相互作用の発生は、入院を必要とする重篤な副作用を引き起こす可能性がある、と警告している。

(ケアネット 杉崎 真名)