進むがん遺伝子パネル検査普及と見える課題/日本癌治療学会

1万8,329例中607例、8.1%。C-CATに登録されたわが国のがん遺伝子パネル累積検査数と、そこから治療に結び付いた症例数および割合である。
2021年10月21~23日に開催された第59回日本癌治療学会学術集会のワークショップにおいて、わが国のがん遺伝子パネル検査の現状が発表された。大幅な検査の増加とともに、いくつかの課題が示されている。
検査数も治療に結びついた症例割合も増加
東北大学の小峰 啓吾氏は、がんゲノム医療中核拠点病院における、がん遺伝子パネル検査の経時的な解析結果を発表した。調査は、がんゲノム医療中核拠点病でのがん遺伝子パネル検査を対象に行われ、2019年6月~2020年1月の第1期と、2020年2月~2021年1月の第2期に分けて分析された。
がん遺伝子パネル検査数は、第1期754例、第2期では2,295例、と第2期で大きく増加した。また、検査から治療に結び付いた症例の割合も、第1期3.7%、第2期7.7%、と第2期で有意に増加した(p<0.001)。
治療に結び付いた症例の治療内訳では治験がもっとも多く、割合は第1期で2.1%、第2期では4.7%と増加していた。また、治験登録数は治療に結びつく症例数と相関していた(R=0.72)。
遺伝カウンセリングが推奨された割合についても、第1期2.4%、第2期では11.1%、と第2期で増加した(p<0.001)。
エキスパートパネルの課題はエビデンスレベルの低いケース
東京大学の鹿毛 秀宣氏は、エキスパートパネルによる推奨治療の一致率に関する前向き調査の結果を発表した。調査では、模擬症例50例に対する、がんゲノム医療中核拠点病院から選出された中央委員会の推奨治療と、同病院のエキスパートパネルの推奨治療との一致率が比較された。模擬症例は中央委員会が作成したもの。
結果、中央委員会とエキスパートパネルの推奨治療の一致率は全体で62%だった。施設ごとの一致率は48~86%で、施設差は大きかった。
がん種ごとの一致率を見ると、一致率の高いがんは大腸がんの100%、低いがんは子宮頸がんの11%であった。
遺伝子異常との一致率の関係を見ると、一致率の高いものはROS1融合遺伝子の100%、低いものはTP53の16%であった。
エビデンスレベルの高さと一致率の見解を見ると、エビデンスレベルが高いほど一致率が高かった(A/R対C/D/E、オッズ比4.4)。上記の子宮頸がん、TP53遺伝子異常もエビデンスレベルは低い。
急がれる課題解決と下支えする医療者への対策
検査数および治療到達率は経時的に向上している。わが国のがん患者数を考えると、今後さらに拡大していくと予想される。検査数の増加以上に重要なのは、治療に結びつく症例を増やすことである。それには、治験の情報共有と登録増加を促す必要がある。また、エビデンスレベルの低いケースに関する情報共有などエキスパートパネルのレベル均てん化も重要だ。
ただ、こういった順調な経過のもとには、医療者の尽力があるようだ。今後のがん遺伝子パネル検査の増加を考えると、その点も十分な対策を打っていく必要があるだろう。
(ケアネット 細田 雅之)
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