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小児のコロナ後遺症は成人と異なる特徴~約66万人の解析

 小児における新型コロナウイルス感染症の罹患後症状には、成人とは異なる特徴があることを、米国・コロラド大学医学部/コロラド小児病院のSuchitra Rao氏らが明らかにした。同氏らは、新型コロナウイルスの感染から1~6ヵ月時点の症状・全身病態・投与された薬剤を調べ、罹患後症状の発生率を明らかにするとともに、リスク因子の特定を目的に、抗原検査またはPCR検査を受けた約66万人の小児を抽出して後ろ向きコホート研究を行った。これまでに成人における罹患後症状のデータは蓄積されつつあるが、小児では多系統炎症性症候群(MIS-C)を除くとデータは限られていた。JAMA pediatrics誌オンライン版2022年8月22日号掲載の報告。 解析対象となったのは、米国の小児病院9施設の電子カルテに登録があり、2020年3月1日~2021年10月31日の間に新型コロナウイルスの抗原検査またはPCR検査を受けた21歳未満の小児で、かつ過去3年間に1回以上受診(電話、遠隔診療を含む)したことのある65万9,286例。男性が52.8%で、平均年齢は8.1歳(±5.7歳)であった。 初回の抗原検査またはPCR検査の日から28~179日時点の、罹患後症状に関連する121項目の症状や全身病態、30項目の投与薬の計151項目を調べた。症状には発熱、咳、疲労、息切れ、胸痛、動悸、胸の圧迫感、頭痛、味覚・嗅覚の変化などが含まれており、全身病態には多系統炎症性症候群、心筋炎、糖尿病、その他の自己免疫疾患などが含まれていた。施設、年齢、性別、検査場所、人種・民族、調査への参加時期を調整したCox比例ハザードモデルを用いて、検査陰性群に対する陽性群の調整ハザード比(aHR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・新型コロナウイルスの陽性者は5万9,893例(9.1%)で、陰性者は59万9,393例(90.9%)であった。 ・1つ以上の症状や全身病態、投薬があったのは、陽性群で41.9%(95%信頼区間[CI]:41.4~42.4)、陰性群で38.2%(95%CI:38.1~38.4)で、差は3.7%(3.2~4.2)、調整後の標準化罹患率比は1.15(1.14~1.17)であった。・陰性群と比べて陽性群で多かった症状は、味覚・嗅覚の変化(aHR:1.96、95%CI:1.16~3.32)、味覚消失(1.85、1.20~2.86)、脱毛(1.58、1.24~2.01)、胸痛 (1.52、1.38~1.68)、肝酵素値異常(1.50、1.27~1.77)、発疹(1.29、1.17~1.43)、疲労・倦怠感(1.24、1.13~1.35)、発熱・悪寒(1.22、1.16~1.28)、心肺疾患の徴候・症状(1.20、1.15~1.26)、下痢(1.18、1.09~1.29)、筋炎(2.59、1.37~4.89)であった。・全身の病態は、心筋炎(aHR:3.10、95%CI:1.94~4.96)、急性呼吸促迫症候群(2.96、1.54~5.67)、歯・歯肉障害(1.48、1.36~1.60)、原因不明の心臓病(1.47、1.17~1.84)、電解質異常(1.45、1.32~1.58)であった。精神的な関連としては、精神疾患の治療(aHR:1.62、aHR:1.46~1.80) 、不安症状(1.29、1.08~1.55)があった。・多く用いられていた治療薬は、鎮咳薬・感冒薬のほか、全身投与の鼻粘膜充血除去薬、ステロイドと消毒薬の併用、オピオイド、充血除去薬であった。・多系統炎症性症候群以外で罹患後症状と強く関連していたのは、5歳未満、急性期のICU利用、複数または進行性の慢性疾患の罹患であった。 著者らは、「小児の新型コロナウイルス感染症の罹患後症状の発症率は少なかったが、急性期の重症、低年齢、慢性疾患の合併は罹患後症状リスクを高める」とともに「小児の罹患後症状では、成人でよく報告されている味覚・嗅覚の変化、胸痛、疲労・倦怠感、心肺の徴候や症状、発熱・悪寒など以外にも、肝酵素値異常、脱毛、発疹、下痢などが多いことに注意が必要である。とくに心筋炎は新型コロナウイルス感染症と最も強く関連する症状であり、小児では重要な合併症である」とまとめている。

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NSTE-ACS患者の死亡リスク評価、GRACE 2.0には限界が/Lancet

 非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)の患者における、Global Registry of Acute Coronary Events(GRACE)2.0スコアによる死亡リスクの評価では、女性患者の院内死亡を過小評価するという限界があるが、新たに開発されたGRACE 3.0スコアの性能は性別を問わず良好で、リスク層別化における男女間の差を削減することが、スイス・チューリヒ大学のFlorian A. Wenzl氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年9月3日号で報告された。英国とスイスの外的妥当性の検証を含む研究 研究グループは、NSTE-ACS患者におけるGRACE 2.0スコアの性特異的な性能を評価し、疾患特性における性別を考慮した新たなスコア(GRACE 3.0と呼ぶ)の開発を目的に検討を行った(スイス国立科学財団などの助成を受けた)。 2005年1月~2020年8月の英国とスイスの全国的なコホートにおいて、NSTE-ACS患者42万781例(英国40万54例、スイス2万727例)を対象にGRACE 2.0スコアの評価が実施された。 イングランド、ウェールズ、北アイルランドの38万6,591例(訓練コホート30万9,083例[80.0%]、検証コホート7万7,508例[20.0%])の性別データを用いて、GRACEの変数から院内死亡を予測する機械学習モデルが作成された。 GRACE 3.0の外的妥当性の検証には、スイスの2万727例のデータが使用された。GRACE 3.0により、男女ともAUCが向上 GRACE 2.0スコアによる院内死亡の判別は、男性患者では良好であった(受信者動作特性曲線[AUC]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.86~0.86)のに対し、女性患者では著しく低かった(AUC:0.82、95%CI:0.81~0.82)(p<0.0001)。 GRACE 2.0スコアは女性患者の院内死亡を過小評価しており、その結果として、早期の侵襲的治療を示唆しない低~中リスク群へと、正しくない層別化を助長していた。 これに対し、性差を考慮したGRACE 3.0スコアは、外的妥当性の検証コホートにおいて優れた判別(discrimination)と良好な較正(calibration)を示し、AUCは男性患者が0.91(95%CI:0.89~0.92)、女性患者は0.87(0.84~0.89)と、いずれも改善された。また、GRACE 3.0は、女性患者を高リスク群に適切に再分類するという、臨床的に意義のある結果をもたらした。 著者は、「新たに開発された機械学習に基づくGRACE 3.0スコアにより、男女ともに予測性能が向上し、リスク層別化において性差を考慮することで、NSTE-ACS患者の個別化治療の最適化と、管理における構造的不公平の克服を実現できることが示された。この研究結果は、NSTE-ACS患者を対象とした将来の試験のデザインに役立つと考えられる」としている。

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抗体薬物複合体SG、HR+/HER2-転移乳がんのOSを改善(TROPiCS-02)/ESMO2022

 複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)と医師選択治療(TPC)を比較した第III相TROPiCS-02試験において、SGが無増悪生存期間(PFS)を有意に改善(HR:0.66、95%CI:0.53~0.83)したことはASCO2022で報告されている。今回、事前に予定されていた全生存期間(OS)の第2回中間解析の結果について、米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で報告した。 本試験におけるOSの第1回中間解析(293イベント発生時点)では、SGによる改善傾向がみられたもののデータがmatureしていなかった。今回発表された第2回中間解析(データカットオフ:2022年7月1日)は、390イベントの発生後に行われ、追跡期間中央値は12.5ヵ月だった。・対象:転移または局所再発した切除不能のHR+/HER2-乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者 543例・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注 272例・対照群:TPC(カペシタビン、エリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビンから選択)271例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS[副次評価項目]OS、客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、患者報告アウトカム(PRO)、安全性 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、SG群(14.4ヵ月)がTPC群(11.2ヵ月)より3.2ヵ月長く、死亡リスクが21%低かった(HR:0.79、95%CI:0.65~0.96、p=0.020)。・TPCに対するSGのベネフィットは、化学療法3ライン以上の症例、内臓転移症例を含む事前に規定されたサブグループで同様だった。・SG群はTPC群と比較して、ORR(オッズ比:1.63、95%CI:1.03~2.56、p=0.035)、CBR(オッズ比:1.80、95%CI:1.23~2.63、p=0.003)が有意に高かった。・DOR中央値は、SG群(8.1ヵ月)がTPC群(5.6ヵ月)より延長した。・SG群では健康関連QOLが有意に良好で、疲労およびglobal health status/QOLスケールの悪化までの時間(TTD)をTPCより有意に延長した。・本解析におけるSGの安全性プロファイルは、これまでの試験と同様であり、新たな安全性シグナルは確認されなかった。 Rugo氏は、「本試験におけるTPCに対するSGの統計学的に有意で臨床的に意味のあるベネフィットは、前治療歴のあるHR+/HER2-転移乳がん患者に対する新たな治療としてSGを支持する」とした。

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統合失調症や双極性障害の興奮症状に対するデクスメデトミジン舌下投与の有用性

 米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏らは、統合失調症または双極性障害に関連する興奮症状を伴う成人患者において、デクスメデトミジンの臨床的有効性および忍容性を評価するため、治療必要数(NNT)、有害必要数(NNH)、likelihood to be helped or harmed(LHH)を用いた評価を行った。その結果、統合失調症または双極性障害に関連する急性興奮症状に対し、デクスメデトミジン舌下投与は良好なベネフィット-リスクプロファイルを有する治療であることが確認された。Advances in Therapy誌オンライン版2022年8月24日号の報告。 統合失調症または双極性障害の成人患者を対象にデクスメデトミジン舌下投与を評価した、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のデータの事後分析を行った。治療反応は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)-Excited Component(PANSS-EC)のベースラインからの変化量40%以上と定義した。忍容性の評価は、有害事象の発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症または双極性障害患者に対するデクスメデトミジン舌下投与後2時間において、プラセボと比較したPANSS-ECによる治療反応のためのNNTは、それぞれ以下のとおりであった。【統合失調症】 ●デクスメデトミジン120μg(NNT:3、95%CI:3~4、129例) ●デクスメデトミジン180μg(NNT:3、95%CI:2~3、125例)【双極性障害】 ●デクスメデトミジン120μg(NNT:4、95%CI:3~6、126例) ●デクスメデトミジン180μg(NNT:3、95%CI:2~3、126例)・プラセボと比較したNNHは、眠気を除くすべての有害事象において10を超えていた。・統合失調症および双極性障害におけるいずれの用量においても、NNHは7(95%CI:5~10)であった。・有効性と忍容性のアウトカムについて、すべてのケースにおいてLHHは1を超えていた。

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ファイザーとモデルナのBA.1対応追加接種用2価ワクチンを承認/厚生労働省

 厚生労働省は9月12日、ファイザーおよびモデルナのオミクロン株BA.1に対応した新型コロナウイルス2価ワクチンを承認(特例承認医薬品における効能・効果、用法・用量の一部変更承認)したことを発表した。2価ワクチンの販売名は、ファイザーが「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」、モデルナが「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」となる。両ワクチンともに追加接種用で、ファイザー製は12歳以上、モデルナ製は18歳以上が対象となる。 両2価ワクチンの用法・用量は、ファイザー製は「追加免疫として、1回0.3mLを筋肉内に接種する」とし、モデルナ製は「追加免疫として、1回0.5mLを筋肉内に接種する」としている。現時点では、両剤ともに前回の接種から少なくとも5ヵ月経過した後に接種することができるとされているが、同日に開かれた薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において、接種間隔を短縮すべきとの指摘があったため、今後、海外の動向、有効性、安全性等の情報を踏まえ、短縮する方向で検討し、10月下旬までに結論を得ることとされた。 両2価ワクチンの有効性と安全性については以下のとおり。ファイザー製「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」・海外第III相試験によると、追加接種後1ヵ月時点でのオミクロン株BA.1に対する血清中和抗体価について、幾何平均抗体価(GMT)は、本剤接種群(178例)では711.0(両側95%信頼区間[CI]:588.3~859.2)、従来の1価ワクチン接種群(163例)では455.8(両側95%CI:365.9~567.6)となり、幾何平均比(GMR)は1.56(両側95%CI:1.17~2.08)であった。・接種後7日間に報告された主な副反応として、注射部位疼痛、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、発熱があった。モデルナ製「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」・海外第II/III相試験によると、追加接種後28日時点でのオミクロン株に対する血清中和抗体価について、幾何最小二乗平均(GLSM)は、本剤接種群(334例)では2,479.890(両側95%CI:2,264.472~2,715.801)、従来の1価ワクチン接種群(260例)では1,421.243(両側95%CI:1,282.975~1,574.412)となり、幾何平均比(GMR)は1.745(両側97.5%CI:1.493~2.040)であった。・接種後7日間に報告された主な副反応として、注射部位疼痛、疲労、頭痛、筋肉痛、関節痛、悪寒があった。 両ワクチンともに忍容性はおおむね良好で、反応原性および安全性プロファイルは従来の1価ワクチンの追加接種と一致していたという。 なお、現在米国で緊急使用許可されている両社のBA.4/BA.5対応2価ワクチンについて、ファイザーは9月13日付のプレスリリースにて、厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。また、モデルナも準備が整い次第申請を行う予定だとしている。※記事の一部を修正いたしました。(9月20日) 

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乳がん周術期に新しい選択肢/リムパーザ錠適応追加

HER2陰性乳がんの周術期に新しい選択肢 2022年9月5日、アストラゼネカは、都内にて「早期乳がん治療におけるリムパーザの役割」をテーマにメディアセミナーを開催した。BRCA遺伝子変異陽性がんで使用されるリムパーザ リムパーザはBRCA1および/またはBRCA2遺伝子の変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する腫瘍細胞において、PARPを阻害し、DNAの修復を阻止することでがん細胞死を誘導する。 日本では2018年1月に「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣における維持療法」を効能・効果として承認され、同年7月に「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳」を適応として乳がん治療での使用が承認された。そのほかにもBRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんにおける初回化学療法後の維持療法などさまざまながんで使用されている薬剤である。 そして、2022年8月24日、リムパーザは「BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術後薬物療法」で追加承認を取得した。早期乳がん患者を対象としたOlympiA試験 セミナーでは国際共同第III相試験、OlympiA試験について、愛知県がんセンター副院長・乳腺科部長、岩田 広治氏が詳しく説明した。 OlympiA試験は国際共同第III相試験であり、日本人140名を含む生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異陽性HER2陰性の早期乳がん患者1,836名が対象。 主な選択基準はStageII~IIIのHER2陰性(HR+ or トリプルネガティブ)でありBRCA1/2遺伝子変異陽性、そして標準的な化学療法を受けた患者であり、リムパーザ投与群とプラセボ投与群に1:1で割り付けられた。 主要評価項目である無浸潤疾患生存期間(iDFS)は12ヵ月、24ヵ月、36ヵ月時点でそれぞれリムパーザ投与群で93.3%、89.2%、85.9%、プラセボ投与群で88.4%、81.5%、77.1%であった。観察期間中央値はリムパーザ投与群で2.3年、プラセボ投与群で2.5年であった。ハザード比は0.58(95%信頼区間[CI]:0.490~0.816)、p=0.0000073であり、リムパーザ投与群でIDFSの有意な延長が検証された。 安全性に関して、リムパーザ投与群で10%以上の頻度で認められた有害事象は悪心、疲労、貧血、嘔吐、頭痛などであった。特徴的な有害事象としては貧血が挙げられる。リムパーザ投与群で貧血は全Gradeで23.6%、≧Grade3で8.7%認められた。周術期に使用しても貧血には注意する必要がある。また、嘔吐などの消化器毒性にも同じく注意が必要である、と岩田氏は指摘した。周術期の新たな選択肢 リムパーザの効能追加により、乳がん周術期の治療選択はどう変わっていくのか。「これまではエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2発現などを見て治療を組み立てていたが、今後はBRCA遺伝子変異の有無を確認する必要が出てきた。初回の乳がん診断確定時、つまり周術期のBRCA検査の意義は遺伝性乳がん卵巣がん症候群の確定診断のみであった。しかし、リムパーザの効能追加によってコンパニオン診断としての意義が加わることになる。今後はBRCA検査を実施し、陽性であれば術式選択と同時にリスク低減手術を考慮する。そして、再発高リスクならリムパーザを投与する、という流れで乳がん治療を組み立てていく必要があると考えている」と岩田氏は強く訴え、セミナーを終了した。

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スタチンによる筋肉痛・筋肉障害は本当?(解説:後藤信哉氏)

 循環器医として、しばしばスタチンを処方している。心筋梗塞発症予防効果は臨床エビデンスから明確だが頭蓋内出血などの重篤な出血イベントが起こることも事実であるアスピリンと比較して、スタチンは心筋梗塞予防効果が確実でありながら、薬効と直結する重篤な副作用は明確ではない。すなわち、心筋梗塞の再発予防にも、多分初発予防にもスタチンは有用と思われる(筆者もLDLは高くないが時々飲んでいる)。 スタチンの使用を始めたころ、「横紋筋融解症」のリスクが徹底教育された。幸いにして長年循環器医をしてスタチンを多用している筆者は、本物の「横紋筋融解症」を経験したことはない。スタチン開始直後に筋肉痛の症状を訴える症例に出合うことはまれではない。副作用の説明が重視される時代に、「筋痛があればすぐ受診してください」と教育されるために筋痛が多いのか、本当に薬の副作用として筋痛が多いのか、本当のところはわからなかった。 オックスフォード大学のグループは超大規模仮説検証研究を重視する。また、ランダム化比較試験のメタ解析も積極的に行っている。アスピリンの有効性と出血リスクの按分にもオックスフォードが施行したAntithrombotic Trialists’ Collaborationの価値が大であった。今回はオックスフォードによるCholesterol Treatment Trialists’ Collaborationの個別患者レベルのメタ解析の結果である。筆者は脂質が専門というわけではないが、ひょんなことからCholesterol Treatment Trialists’ Collaborationに加わることになった。 筋痛がスタチンによるか否か、スタチンの用量依存か否かを大規模二重盲検臨床試験の徹底的メタ解析にて検証した。非スタチン群(6万1,912例)と比較するとスタチン群(6万2,028例)のほうが、筋痛・脱力が1.03(95%CI:1.01~1.06)倍多かった。ランダム化二重盲検試験の結果である。スタチン群では本当に筋痛・脱力が多いのであろう。スタチン群を強いスタチンと弱いスタチンに分けると、強いスタチンでの筋痛・脱力のリスクは1.05(1.01~1.09)倍であった。筋痛・脱力の発症時期は服薬開始後3ヵ月以内に集中している。臨床的実感にもマッチしている。 筋痛の重症度の指標として筋痛の症例の6.2%にてCKが計測されている。重症例にて計測される可能性が高いと想定されるが、CKの上昇度は正常値の0.02倍分にすぎなかった。 ランダム化二重盲検試験の個別症例レベルのメタ解析の結果である。事実として信じざるを得ない。スタチン服用例では服用初期に筋痛・脱力がプラセボより多く、スタチンの中では強力なスタチンで症状が多い。しかし、スタチンによる筋痛・脱力は一過性で軽い。これらの所見は信じざるを得ない。私のオックスフォードの友人たちは、ランダム化比較試験のサイズを大きくすると「虫眼鏡で拡大するように」薬効の差を拡大できると言っていた。本研究結果をみると彼らの意見に同意せざるを得ない。オックスフォードと共同研究すると、著者はCholesterol Treatment Trialists’ Collaborationのようなgroupになる。臨床研究は1人ではできない。多数の共同研究なのでgroupでauthorになるのがreasonableかもしれない。日本は米国追従でやってきたが、英国のオックスフォードから学ぶことは多い。

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065)久しぶりの患者さんが来て思うこと【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第65回 久しぶりの患者さんが来て思うことゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆普段、外来をやっていると、1年ぶり2年ぶりという患者さんも、たまにお見かけします。「どこか他へ通っていましたか?」と聞くと、そういったわけでもなく。受診そのものが、お久しぶりである様子。だいたい足爪の水虫など、本人にとってはあまり自覚症状のない(困っていない)もののことが多いのですが…。患者さんにとってみれば、薬が欲しくて来る、薬をもらっていれば大丈夫(=治る)ということになるのかもしれません。ただ、こちら(医療側)からしてみれば、経過を診せに来てもらうことも治療の一部。こと皮膚科に関しては、塗ってもらってなんぼ、塗らせてなんぼの世界なので、「いかに外用の動機付けをするかが腕の見せ所!」のようなところがあります。そういった意味でも定期通院を促すのは大事なことだな、と日々感じております。お久しぶりで威勢のいい(?)患者さんが来て、あらためて思ったことなどでした~。治す気は(ほんとに)あるのかもしれないけれど、通う気はさらさらなさそうでした…!それでは、また〜!

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コロナ抗原検査キットがOTC化、ネット通販も可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第96回

新型コロナウイルスの抗原検査キットの取り扱いについては、薬局はいろいろと振り回されましたね。研究用・医療用の抗原検査キットの混乱や不足の一方、行政や薬局による無料配布などもあり、問い合わせは多かったのではないでしょうか。今回、その抗原検査キットはOTC化が承認され、すでに発売が開始されました。スイス製薬大手ロシュ傘下で検査薬事業を手がけるロシュ・ダイアグノスティックス(東京・港)は24日、新型コロナウイルスの感染を検査する抗原検査キットについて一般用医薬品(OTC)としての承認を得たと発表した。国内でOTCとして承認されたコロナ検査キットは初めて。これまで薬局や医療機関でしか扱えなかったキットをドラッグストアやネットで販売できるようになる。(2022年8月24日付 日本経済新聞)今回、OTCとして抗原検査キットが初めて承認を得ました。現時点で4製品が承認され、すでに発売されている製品もあります。と言っても、まったく新しい製品が発売されるわけではなく、これまで「医療用」として承認されていた抗原検査キットが「一般用」の抗原検査キットとして再承認され、第1類医薬品として販売されることになります。従来の薬局での対面販売に加え、ドラッグストアやインターネットでの販売が可能になるため、患者さんにとっては手に取りやすくなるでしょう。皆さんご存じのとおり、検査キットの中には「研究用」と称し、一般の方にはむしろきちんとしているように見えて、実は承認を得ていない製品が巷にあふれていることが問題になっています。昨年から何度も事務連絡が出され、「研究用とされている検査キットは未承認であり、その質が保証されていないので販売しないこと」「研究用検査キットと医療用検査キットの違いや購入希望者は薬剤師に相談すること」などの注意喚起がなされてきました。しかし、検査キットが不足して多くの人が検査できないという混乱の中で、やむなく販売した薬局もあったのではないでしょうか。一方、抗原検査キットが実は不足していないのか、薬局で無料配布を行っている地域もあります。都道府県から配給される際に「配布するだけでよい」と言われているそうですが、だったら薬局じゃなくても駅とか空港とか、はたまたティッシュを配るように街中で配布してもよかったのでは…なんて思ってしまいます。これに対しても、問い合わせやクレームなどで手を焼いた薬局は多かったのではないでしょうか。8月末に開催された内閣府の規制改革推進会議医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ(WG)では、依然として研究用が流通していて、薬剤師による説明を受ける手間を煩わしく思ってあえて研究用を購入する人がいる可能性があることなどから、第2類医薬品としてはどうか、などの議論が交わされました。実際、厚生労働省が2022年6月に行った調査では、医療用と研究用の2種類があることを知らない人が60%いたという調査報告もあり、課題が大きいこともわかります。え?また変わる可能性があるの?というイヤな予感がしますね。承認前にこの問題を解決してほしかったのですが、残念ながら抗原検査キットを巡る混乱はまだ続きそうです。

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英語で「足がしびれています」は?【1分★医療英語】第45回

第45回 英語で「足がしびれています」は?What brought you to see us today?(今日はどうされましたか?)I’ve got pins and needles in my feet.(足がしびれています)《例文1》I felt pins and needles in my arm when I woke up this morning.(今朝、目が覚めると腕がしびれていました)《例文2》I have a tingling sensation in my feet.(足がしびれています)《解説》日本語の「しびれる」という表現、英語ではニュアンスによって複数の言い方がありますが、“pins and needles”は、糖尿病の末梢神経症による感覚障害や神経痛などのピリピリしたような、まさに「針で突かれるようなしびれ」を表現するときに使われます。また、正座した後のようなビリビリした感覚にも“pins and needles”を使うことができます。似た表現としては、“tingling sensation”や“numbness”がありますが、“tingling sensation”は「チクチクする感覚」を表現することが多い一方で、“numbness”は「感覚が麻痺している状態」を示します。たとえば“my arm became numb.”(腕の感覚がなくなった)という具合です。処置の際に用いる局所麻酔のジェルは正式には“anaesthetic gel”ですが、患者さん向けにわかりやすく“numbing jelly”と呼ぶこともあります。講師紹介

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第129回 ワクチン接種でlong COVID 4大症状が大幅減少/ long COVIDの国際的な取り組みが発足

英国での試験と同様に、イスラエルの試験でもワクチン接種が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)をどうやら防ぐことが示されました。昨年9月にLancet Infectious Diseases誌に掲載された英国での試験ではワクチン2回接種済みだとSARS-CoV-2感染後28日過ぎの症状全般が生じ難いという結果が得られています1)。SARS-CoV-2感染成人およそ千人(951人)の経過を調べた今回のイスラエルでの試験ではlong COVIDの10の主症状それぞれの生じやすさとワクチン接種の関連が調べられました。951人のうち340人(36%)はPfizer/BioNTechのワクチンBNT162b2を1回接種済み、294人(31%)は少なくとも2回接種済みでした。SARS-CoV-2感染後に特に多かった症状は疲労、頭痛、四肢の虚弱、筋痛の持続で、それぞれ22%、20%、13%、10%に認められました。それら4大症状の他に6つの症状―集中力欠如、脱毛、睡眠障害、めまい、咳、息切れも多く認められました。年齢やもとの症状などを考慮した解析の結果、ワクチン2回接種済みの人の4大症状―疲労、頭痛、四肢の虚弱、筋痛の持続の割合は非接種の人よりそれぞれ62%、50%、62%、66%低いことが示されました2,3)。2回のBNT162b2接種は脱毛、めまい、呼吸困難が生じ難くなることとも関連し、long COVIDを防ぐ効果があるようだと著者は結論しています。COVID-19後遺症を調べて治療候補の臨床試験を仕切る国際的な取り組みが発足すでに1億5,000万人を数え、増え続けているlong COVIDを調べて候補の治療の臨床試験を仕切る国際的な取り組みLong Covid Research Initiative(LCRI)が発足しました4)。科学投資事業BalviがLCRIに1,500万ドルを寄付しています。また、抗剤アブラキサンの発明者として知られるPatrick Soon-Shiong氏が率いる基金もLCRIを支援します。LCRIがまず目指すのはLong COVID患者にSARS-CoV-2が存続しているかどうかや、もしそうなら居座るSARS-CoV-2が症状の要因かどうかを明らかにすることです5)。SARS-CoV-2が体内を巡り続けているなら抗ウイルス薬で症状を減らせそうであり、LCRIを主導する非営利事業PolyBio首脳陣の1人Amy Proal氏はそういう治療の臨床試験が早く始まることを望んでいます。上述のSoon-Shiong 氏やProal氏を含む20人を超える屈指の研究者がLCRIの取り組みを担います。エール大学の岩崎明子(Akiko Iwasaki)氏も名を連ねます。LCRIは1億ドルを集めることを目指しており、その半分は臨床試験に使われます。参考1)Antonelli M,et al. Lancet Infect Dis. 2022 Jan;22:43-55.2)Kuodi P, et al. NPJ Vaccines. 2022 Aug 26;7:101.3)Vaccines dramatically reduce the risk of long-term effects of COVID-19 / Eurekalert4)Introducing a Global Initiative to Address Long Covid / Long Covid Research Initiative5)New private venture tackles the riddle of Long Covid―and aims to test treatments quickly /Science

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新型コロナの重症度と予後を予測するバイオマーカーを発見/横浜市大、神奈川県立がんセンター

 血清ヘムオキシゲナーゼ-1(Heme oxygenase-1:HO-1)濃度が、COVID-19の重症度と生命予後予測の指標となることを、横浜市立大学大学院医学研究科の原 悠氏らと神奈川県立がんセンターの築地 淳氏らの研究グループが発見した。PLOS ONE誌オンライン版2022年8月24日掲載の報告。 HO-1は、M2マクロファージによって産生されるストレス誘導タンパク質で、可溶性CD163(sCD163)を産生する。sCD163は、COVID-19の生命予後の予測性能において有用性が期待されている。研究グループは、血清HO-1がCOVID-19患者の重症度と生命予後予測の両方を評価するバイオマーカーになりうると考え、M2マクロファージマーカーとされる血清HO-1とsCD163の有用性を検証した。 解析対象は、入院治療を必要としたCOVID-19患者64例(軽症11例、中等症38例、重症15例)であった。入院時に血清HO-1とsCD163の血清濃度を測定し、臨床パラメーターおよび治療経過との関連性を解析した。 主な結果は以下のとおり。・血清HO-1は重症度が上がるほど高値を示し(軽症:11.0ng/mL[7.3~33.4]、中等症:24.3ng/mL[13.5~35.1]、重症59.6ng/mL[41.1~100])、血清LDH(R=0.422)、CRP(R=0.463)、高分解能CTにおけるground glass opacity(すりガラス陰影)+consolidation(浸潤影)score(R=0.625)と相関した。・重症度(血清HO-1:0.857、sCD163:0.733)、ICU入室(同:0.816、同:0.743)、人工呼吸器装着(同:0.827、同:0.696)における予測性能(AUC)は、血清HO-1がsCD163を上回った。 研究グループは、M2マクロファージの活性を反映する血清HO-1濃度は、COVID-19患者の重症度を評価し、予後を予測するための有用な血清バイオマーカーとなることを示唆するとともに、M2マクロファージを制御することは、COVID-19の予防的な治療標的になる可能性があるとまとめた。

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薬剤誘発性QT延長とトルサードドポアント~日本のリアルワールドデータ分析

 新規作用機序を有する薬剤が次々と開発されているが、前臨床および承認前の臨床試験において、該当医薬品がQT延長やトルサードドポアント(TdP)を誘発するかどうかを把握することは困難である。東京慈恵会医科大学のMayu Uchikawa氏らは、日本のリアルワールドデータベースを用いて、各薬剤の薬剤誘発性QT延長/TdPを評価した。その結果、抗不整脈薬、カルシウム感知受容体アゴニスト、低分子標的薬、中枢神経系用薬が、QT延長やTdPと関連する薬剤群であることが示唆された。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2022年8月22日号の報告。 医薬品副作用データベース(JADER)を用いて、QT延長およびTdPを検索した。報告オッズ比(ROR)を算出し、潜在的な薬剤誘発性QT延長/TdPの特定を試みた。 主な結果は以下のとおり。・432万6,484件のデータのうち、薬剤と共に報告されたQT延長/TdPは3,410例であった(QT延長:2,707件、TdP:703件)。・これらの患者における女性の割合は、53.9%であった。・年齢層別に最も発生率が高かったのは、70代の高齢者(24.7%)であった。・QT延長/TdPに最も関連する薬剤群は、心血管薬、中枢神経系用薬、抗がん剤、抗感染症薬であった。なお、過量投与の割合は、1.6%と非常に低かった。・調整済みRORが高かった薬剤は、以下のとおりであった。 ●ニフェカラント(ROR:351.41、95%CI:235.85~523.59) ●バンデタニブ(ROR:182.55、95%CI:108.11~308.24) ●エボカルセト(ROR:181.59、95%CI:132.96~248.01) ●ベプリジル(ROR:160.37、95%CI:138.17~186.13) ●三酸化二ヒ素(ROR:79.43、95%CI:63.98~98.62) ●グアンファシン(ROR:78.29、95%CI:58.51~104.74)・過去10年間に日本で上市された薬剤の中では、バンデタニブの調整済みRORが最も高かった。

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血管外ICD、誘発された心室性不整脈で高い除細動成功率/NEJM

 血管外植込み型除細動器(ICD)は、主に従来の経静脈ICDの血管リスクを回避するために開発が進められている。米国・メイヨークリニックのPaul Friedman氏らは、Extravascular ICD Pivotal Studyにおいて、血管外ICD(Medtronic製)は安全に植込みが可能で、植込み時に誘発された心室性不整脈を検出してこれを高率に停止でき、重大な合併症の頻度は高くないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月28日号に掲載された。17ヵ国46施設の非無作為化単群市販前試験 本研究は、血管外ICDの長期的な安全性と有効性の評価を目的とする前向きの非無作為化単群市販前試験であり、2019年9月~2021年10月の期間に、17ヵ国46施設で参加者の登録が行われた(Medtronicの助成による)。 対象は、国際的なガイドラインに基づき、1次または2次予防としてのICDに関して、クラスIまたはIIaの適応がある患者とされた。徐脈時ペーシングまたは心臓再同期療法を要する患者や、胸骨切開を受けた患者は除外された。被験者は、胸骨下に1本のリードを植え込む血管外ICDシステムの留置を受けた。 有効性の主要エンドポイントは、血管外ICD植込み時の除細動の成功とされた。除細動が成功した患者の割合の片側97.5%信頼区間(CI)の下限が88%を超えた場合に、有効性の目標を達成したと判定された。 安全性の主要エンドポイントは、6ヵ月時に、血管外ICDのシステムまたは手技に関連する重大な合併症がない場合とされた。このような合併症がない患者の割合の片側97.5%CIの下限が79%を超えた場合に、安全性の目標を達成したと判定された。抗頻拍ペーシング成功率は50.8% 356例が登録され、316例(平均[±SD]年齢53.8±13.1歳、女性25.3%)が血管外ICDの対象となり、このうち40例が血管外ICDの施行前に脱落した。ベースラインの平均BMIは28.0±5.6、平均左室駆出率は38.9±15.4だった。 植込み時に心室性不整脈が誘発され、除細動テストプロトコルを完了した302例のうち、除細動が成功した患者の割合は98.7%(片側97.5%CIの下限は96.6%、達成目標である88%との比較でp<0.001)であり、有効性の目標が達成された。316例中299例(94.6%)はICDシステムが作動した状態で退院した。 6ヵ月時に、Kaplan-Meier法によるシステム・手技関連の重大な合併症がなかった患者の割合は92.6%(片側97.5%CIの下限は89.0%、達成目標である79%との比較でp<0.001)であり、安全性の目標が達成された。植込み手技中の重大な合併症は報告がなかった。6ヵ月時に、316例中23例(7.3%)で25件の重大な合併症が観察された。 一般化推定方程式で評価された抗頻拍ペーシングの成功率は50.8%(95%CI:23.3~77.8)であった。一方、合計で29例が、81件の不整脈エピソードに対し118回の不適切なショックの作動を受けていた。また、10.6ヵ月の平均追跡期間中に、8件で血管外ICDを交換せずにシステムの摘出が行われた。 著者は、「本研究の結果は、血管外ICDでは胸骨下に電極を留置することで、血管外留置の利点を保持しつつ、pause-preventionペーシングや抗頻拍ペーシングが可能となり、低エネルギーでの除細動がもたらされるとの仮説を支持するものである」としている。

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アベマシクリブ+アロマターゼ阻害薬、進行乳がんのOS改善傾向(MONARCH 3)/ESMO2022

 HR+/HER2-進行乳がん1次治療での非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)へのアベマシクリブの上乗せ効果を検討した国際共同第III相MONARCH 3試験では、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)はアベマシクリブ併用群が有意に延長したことがすでに報告されている。今回、副次評価項目の全生存期間(OS)の第2回中間解析を行った結果、アベマシクリブ上乗せによりITT集団、内臓転移患者ともにOS中央値が12ヵ月以上延長したことが報告された。ただし、どちらも事前に規定された統計学的有意性は示されなかった。米国・Mayo ClinicのMatthew P. Goetz氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。・対象:転移/局所再発のHR+HER2-乳がんの閉経後女性で、転移/局所再発後に全身療法を受けたことのない患者 493例・試験群(アベマシクリブ群):アベマシクリブ150mg1日2回+NSAI(アナスロトゾール1mgまたはレトロゾール2.5mg)1日1回を病勢進行するまで投与 328例・対照群(プラセボ群):プラセボ+NSAI 165例・評価項目:[主要評価項目]主治医判定によるPFS[副次評価項目]OS、奏効率、安全性 本試験の第2回中間解析は、ITT集団において約252イベント(最終OS解析予定イベントの80%)の発生後に実施することが事前に規定されていた。なお、OSの有意性の評価には、層別log-rank検定および事前に定義したエラー消費手法を用いている。 主な結果は以下のとおり。・第2回中間解析(データカットオフ:2021年7月2日、追跡期間中央値:5.8年)において、ITT集団のOS中央値はアベマシクリブ群67.1ヵ月、プラセボ群54.5ヵ月(HR:0.754、95%CI:0.584~0.974)と12.6ヵ月の差が認められたが、α消費手法による有意差を示す閾値に到達しなかった(p=0.0301)。また、OS改善傾向はどのサブグループでも同様にみられた。なお、病勢進行後にCKD4/6阻害薬を投与した患者の割合はアベマシクリブ群10.1%、プラセボ群31.5%だった。・内臓転移患者のOS中央値はアベマシクリブ群65.1ヵ月、プラセボ群48.8ヵ月(HR:0.708、95%CI:0.508~0.985)と16.3ヵ月の差が認められたが、有意差は示されなかった(p=0.0392)。・ITT集団のPFS中央値はアベマシクリブ群29.0ヵ月、プラセボ群14.8ヵ月(HR:0.518、95%CI:0.415~0.648、p<0.0001)であった。・ITT集団の無化学療法生存期間(CFS)中央値は、アベマシクリブ群46.7ヵ月、プラセボ群30.6ヵ月(HR:0.636、95%CI:0.505~0.801)であった。・アベマシクリブの長期投与による新たな安全性シグナルはみられなかった。 本試験はフォローアップ継続中で、最終OS解析は2023年に予定されている。

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ケレンディア、2型糖尿病を合併するCKD患者に関する最新データ発表/バイエル

 バイエル薬品の2022年8月30日付のプレスリリースによると、欧州心臓病学会(ESC)学術集会2022において、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者(CKD)の死亡率にケレンディア(一般名:フィネレノン)が及ぼす影響を示した最新データが発表された。ケレンディアで2型糖尿病を合併するCKD患者の全死因死亡の発現率減少 2型糖尿病を合併するCKD患者を対象としたフィネレノン第III相臨床試験プログラムは、FIDELIO-DKDとFIGARO-DKDの2つの試験で構成されている。この2つの試験を含むFIDELITYは2型糖尿病を合併するCKD患者1万3,000名以上を対象に、心腎アウトカムを検討した最大規模の第III相臨床試験プログラムである。FIDELITYの全体集団では、全死因死亡および心血管死に対するフィネレノンの効果は統計学的有意差にわずかに至らなかったものの、FIDELITYの事前規定した探索的on-treatment解析から得られた最新データによると、本集団ではフィネレノン群がプラセボ群と比べ、全死因死亡の発現率(ハザード比[HR]:0.82[95%信頼区間[CI]:0.70~0.96]、p=0.014)および心血管死の発現率(HR:0.82[95%CI:0.67~0.99]、p=0.040)を有意に減少させることが示された。追跡期間4年時点での心血管死までの時間に関するイベント確率解析では、ベースライン時点の推算糸球体濾過率(eGFR)および尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に関係なくフィネレノンの有用性は一貫しており、eGFRが60mL/min/1.73m2以上の場合、プラセボと比べフィネレノンのより顕著な効果が示された。 Bayer(ドイツ)医療用医薬品部門の経営委員会メンバーで、研究開発責任者であるクリスチャン・ロンメル氏は、「最適な血糖値や血圧に管理しているにもかかわらず、2型糖尿病を合併するCKD患者さんの多くは腎不全に移行し、心血管死のリスクが著しく高くなっている。本日発表された探索的解析は、このような脆弱な患者さんの死亡リスクを低下させ、より長く健康な状態を維持するフィネレノンの可能性を示している」と述べた。 ケレンディアは2021年7月に米国食品医薬品局(FDA)、2022年2月に欧州委員会(EC)、2022年6月に中国国家薬品監督管理局(NMPA)よりそれぞれ販売承認を取得している。また、日本では2022年3月に厚生労働省より承認取得した。さらに他複数の国で審査当局の承認が得られたほか、現在販売認可の承認申請中である。

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第116回 他院の受診歴や診療内容がマイナポータルで閲覧可能に/厚労省

<先週の動き>1.他院の受診歴や診療内容がマイナポータルで閲覧可能に/厚労省2.インフルエンザ予防接種、コロナワクチンと同時接種容認へ/厚労省3.女性差別の医学部不正入試の東京医科大に1,800万円賠償判決/東京地裁4.特定健診、医療費抑制効果なし/京都大学5.高齢者のオーラルフレイル(口腔機能低下)で死亡リスクが2倍以上に/東京都健康長寿医療センター6.刑務所の受刑者のワクチン接種に遅れ、コロナウイルス感染者が急増1.他院の受診歴や診療内容がマイナポータルで閲覧可能に/厚労省厚労省は9月5日マイナンバーカード取得者向けサイト「マイナポータル」で閲覧できる情報の拡充を発表した。これまでは、特定健診等情報・薬剤情報だけだったものが、9月11日からは過去3年分の「診療情報」を閲覧できるようになり、医療機関名、受診歴、診療行為内容などの閲覧が可能となる。ただし、診療レセプトベースのため、画像診断や病理診断などの結果の閲覧はできない。この他、医療機関同士で情報共有も可能になるが、まだ対応している医療機関が少ないため、医療機関間での対応が課題となっている。(参考)「全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大」の運用開始について(厚労省)マイナポータルで診療情報閲覧 11日から(産経新聞)医療機関で受診歴を共有可に マイナポータルで閲覧も 11日から(朝日新聞)診療情報の閲覧11月から可能に、画像診断など 過去3年分のデータを共有(CB news)2.インフルエンザ予防接種、コロナワクチンと同時接種容認へ/厚労省松野博一官房長官は9月9日の記者会見において、今年の冬には新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行が懸念されるため、ワクチンの同時接種が可能になったことを踏まえ、感染防止目的で接種を推進することを明らかにした。厚生労働省はこれに先立ち、9月5日に開催された厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会で、10月から65歳以上のインフルワクチン定期接種が始まることを積極的に呼びかけることを決定した。今冬のインフルエンザワクチンは、平成27年以降で最大の供給量となる約3,521万本(成人量では7,042万回分に相当)を確保できる見込み。(参考)今シーズン(2022/23)のインフルエンザワクチンについて(厚労省)インフルワクチン、高齢者らへ開始時期など周知 コロナ同時流行懸念(朝日新聞)コロナ・インフルのワクチン同時接種容認 厚労省、安全性問題なし(産経新聞)3.女性差別の医学部不正入試の東京医科大に1,800万円賠償判決/東京地裁東京医科大学が、医学部入試において、女性や浪人生が不利になるように得点を調整していた問題で、同大に受験して不合格となった女性28人が慰謝料を含め、合計1億5,000万円余りの損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は9月9日に同大に対して、合計1,800万円を賠償するよう命じる判決を下した。平城恭子裁判長は「性別という自らの努力や意思で変えることのできない属性を理由に女性を一律に不利益に扱った」と批判した。同大は「判決内容を精査して、対応を検討する」とコメントした。(参考)女性差別の不正入試 東京医科大に賠償命じる判決 東京地裁(朝日新聞)医学部不正入試 東京医科大に1,800万円賠償命令 東京地裁(毎日新聞)4.特定健診、医療費抑制効果なし/京都大学京都大学の人間健康科学科准教授の福間 真悟氏らは、2014年1~12月に特定健診を受けた11万3,302例を対象に特定保健指導の介入3年後の効果を調べた。その結果、特定保健指導は、外来患者の訪問日数の減少(1.3日減少)と関連していたが、医療費、投薬回数、入院回数とは関連していなかったことが明らかとなった。政府や厚生労働省は、これまで糖尿病などの生活習慣病の発症や重症化を予防する目的で特定健康診査の特定保健指導を推奨していたが、2020年には心血管リスク低減効果が認められなかったことも明らかになっていた。厚生労働省の「特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会」でも、アウトカム評価を入れるなど2024年度からはじまる第4期に向け、特定健診・特定保健指導について議論が先月まとめており、今後さらに見直しを迫られると考えられている。(参考)メタボ健診に医療費抑制効果なし(時事通信 2022/9/5)特定健診(メタボ健診)における特定保健指導に医療費抑制効果なし(京都大学)特定健診・特定保健指導の効率的・効果的な実施方法等について(議論のまとめ)(厚生労働省)Impact of the national health guidance intervention for obesity and cardiovascular risks on healthcare utilisation and healthcare spending in working-age Japanese cohort: regression discontinuity design(BMJ Open)5.高齢者のオーラルフレイル(口腔機能低下)で死亡リスクが2倍以上/東京都健康長寿医療センター高齢者の2割は口腔状態に問題があり、問題がない高齢者に比べて要介護リスクや死亡リスクが2倍超となることが、東京都健康長寿医療センター研究所の研究で明らかとなった。報告によれば、歯の数、咀嚼や嚥下の困難感、舌の力、舌口唇運動機能、咀嚼力の6項目で評価し、3項目以上該当した場合はオーラルフレイルと定義したところ、高齢者のうち19.3~20.4%がオーラルフレイルであり、そうでない人と比べて低栄養状態である割合が2.17倍高く、4年間の追跡調査により、オーラルフレイルの人は、死亡リスクが2.1倍、要介護認定が2.4倍になることが明らかとなった。以前から、口腔機能低下が、全身状態や生活にも大きく影響を与えることがわかっており、歯科医師が入院患者の口腔の管理を行うことによって、在院日数が削減できたり、肺炎発症を抑制することが判明しており、今後、医科歯科連携の強化が求められる。(参考)高齢期における口腔機能の重要性-オーラフレイルの観点から-(健康長寿医療センター)口腔状態に問題ある高齢者は要介護や死亡リスクが2倍超、地域で「オーラルフレイル改善」の取り組み強化を-都健康長寿医療センター(GemMed)医師以外の医療従事者の確保について(厚労省)6.刑務所の受刑者のワクチン接種に遅れ、コロナウイルス感染者が急増新型コロナウイルスワクチンの受刑者への接種が遅れていることが読売新聞などの報道で明らかになった。接種には住所のある自治体の発行した接種券が必要だが、受刑者の多くは服役先に住民票がないため、新型コロナウイルスのワクチン接種に遅れが発生した。このため、刑務所内で受刑者の感染者は急増しており、実際に熊本刑務所では、全収容者の約半数の159人が感染したことが判明しており、自治体側が接種券の二重発行を懸念したため、受刑者は後回しになってしまったために生じている。今後、自治体による柔軟な対応が求められる。(参考)服役先に住民票なし・家族が接種券送ってくれない…感染者急増の受刑者、接種に遅れ(読売新聞)刑務所で受刑者159人感染、全収容者の約半数「ずっと部屋の中にいる…防ぐのは難しい」(読売新聞)

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第53回 相関比の計算方法は?【統計のそこが知りたい!】

第53回 相関比の計算方法は?今回は、カテゴリーデータと数量データの相関関係を示す「相関比(Correlation ratio)」の計算方法について説明します。第52回の具体例のサプリメントごとの年齢幅をみると、サプリメントAを志向するグループは29~36歳、サプリメントBを志向するグループは38~48歳、サプリメントCを志向するグループは20~38歳と年齢幅に違いがみられます。これをグラフ(図1)にすると年齢幅の違いがより明確になります。図1 サプリメント別年齢データのグラフ図1のように年齢幅に違いがあるとき、サプリメントと年齢は関連があると考えます。年齢幅がどのようなときに最も関連が「ある」か「ない」かの見分け方は図2、図3の通りです。図2 関連が強い図3 関連が弱い■群内変動、群間変動とはグループ内の変動を「群内変動(Within-group variation)」と言います。では、表のサプリメント年齢別データについて、グループ内の変動を計算してみましょう。変動は偏差平方和で計算します。サプリメント年齢別データと偏差平方和画像を拡大する3つの偏差平方和を合計した値のことを「群内変動」と言い、「Sw」で表します。Sw=S1+S2+S3=30+58+266=354年齢幅が重複しないということは、年齢幅という3個のグループの変動が大きいことを意味します。逆に、年齢幅が重複するということは、3個のグループの変動が小さいことを意味します(図4)。図4 グループの変動の大小年齢幅の変動、すなわちグループ間の変動は、各グループの平均と全体平均との差から求められ、これを「群間変動(Between the groups change)」といい、Sbで表します(図5)。図5 群間変動のイメージ3個のグループの平均を全体平均をとします。また、3個のグループの回答人数をn1、n2、n3とします。このとき群間変動は、次に示すように個々の平均と全体平均の差の平方に各グループの人数を乗じて求められます。■相関比の計算方法グループ内の年齢のばらつきが小さく年齢幅が重ならない、すなわち「群内変動が小さく、群間変動が大きいとき、関連がある」と言えます。そこで、2つの変動合計に対する群間変動の割合を求めます。これを「相関比(Correlation ratio)」と言い、η2 (イータ2乗と読む)で表します。サプリメント年齢別データ数値をこの計算式に代入すると、相関比は下記の通り求められます。相関比の式をみると、最も関連が強いとき、群内変動Swは0、すなわちグループ内に属するデータがすべて同じになり、η2は1になります。逆に、最も関連が弱いとき、群間変動Sbは0、すなわちグループ平均がすべて同じになり、η2は0になります。〔相関比の目安〕0.1より大きい場合、関連性がある■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第27回 ANOVA(Analysis of Variance)とは? その1第28回 ANOVA(Analysis of Variance)とは? その2「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問25 F検定とは?

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事例007 高齢者への不眠症治療薬投与時の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、強度の不眠を訴える68歳の患者に不眠症治療薬2種を投与したところ、告示・通知の要件に合致していないものとしてD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)が適用され、スボレキサント(商品名:ベルソムラ錠)が15mg 1錠へ、エスゾピクロン(同:ルネスタ錠)が0.7錠へ査定となりました。D事由査定の理由を調べるため、それぞれの添付文書を参照しました。スボレキサントの添付文書には、「成人には1回20mg、高齢者には15mgを就寝直前に投与する」、エスゾピクロンの添付文書には、「成人では1回3mg、高齢者では1回2mgを超えないこととする」と記載がありました。査定内容からみると高齢者の用量に減量されたことが推測できます。添付文書の「高齢者」については年齢では区切られていません。「一般に高齢者では生理機能が低下していることも考慮し、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること」とされています。事例では医師の裁量による投与ではありましたが、レセプトからは慎重投与が読み取れずに、健康保険法の高齢者の基準である65歳以上が適用されたものとも推測できます。エスゾピクロンが0.7錠に査定となった理由は、3mgから2mgへ力価のみ変更すると、0.6666…となるために小数第2位で四捨五入されています。2.1mgが認められたものではないと考えられます。2mg錠よりも安価になるために、このような査定となったものでしょう。査定防止のために、処方システムに制限をかけ、制限を超えるようであれば医師に注記をお願いすることにしています。

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