持続性AF、PVI+左房後壁乖離術で不整脈の再発率は改善せず/JAMA

持続性心房細動(AF)患者に対する初回カテーテルアブレーションでは、肺静脈隔離術(PVI)に左房後壁隔離術(PWI)を追加しても、PVI単独と比較して12ヵ月の時点での心房性不整脈の再発回避の割合は改善されず、複数回の手技後の再発回避にも差はないことが、オーストラリア・アルフレッド病院のPeter M. Kistler氏らが実施した「CAPLA試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年1月10日号に掲載された。
PWI追加の意義を評価する3ヵ国の無作為化臨床試験
CAPLA試験は、3ヵ国(オーストラリア、カナダ、英国)の11施設が参加した医師主導の無作為化臨床試験であり、2018年7月~2021年3月の期間に患者の登録が行われた(メルボルン大学Baker Department of Cardiometabolic Healthの助成を受けた)。年齢18歳以上、症候性の持続性AFで、初回カテーテルアブレーションを受ける患者が、PVI+PWIを行う群またはPVI単独群に無作為に割り付けられた。PVIでは、左右の肺静脈の周囲を広範に焼灼し、PVI+PWIでは、これに天蓋部(roof ablation line)と底部(floor ablation line)の焼灼が追加された。
主要アウトカムは、1回のアブレーション施行から12ヵ月の時点において、抗不整脈薬非使用下で30秒以上の心房性不整脈が記録されないこととされた。
心房細動負担にも差はない
338例(年齢中央値65.6歳[四分位範囲[IQR]:13.1]、男性76.9%)が登録され、330例(97.6%)が試験を完遂した。PVI+PWI群に170例、PVI単独群に168例が割り付けられた。12ヵ月の時点で、抗不整脈薬非使用下での心房性不整脈再発の回避が達成されたのは、PVI+PWI群が89例(52.4%)、PVI単独群は90例(53.6%)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:-1.2%、ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.73~1.36、p=0.98)。
複数回のアブレーション後の、抗不整脈薬使用の有無を問わない心房性不整脈再発の回避(PVI+PWI群58.2% vs.PVI単独群60.1%、HR:1.10、95%CI:0.79~1.55、p=0.57)、複数回のアブレーション後の、抗不整脈薬使用の有無を問わない症候性AFの回避(68.2% vs.72.0%、HR:1.20、95%CI:0.80~1.78、p=0.36)、心房細動負担(AF burden、1年の追跡期間中における心房細動累積時間の割合)(0%[IQR:0~2.3]vs.0%[0~2.8]、p=0.47)にも、両群間に有意な差はなかった。
一方、平均手技時間(142分[SD 69]vs.121分[57]、p<0.001)とアブレーション時間(34分[SD 21]vs.28分[12]、p<0.001)は、PVI単独群で短かった。
合併症は、PVI+PWI群が6件、PVI単独群は4件発現した。手技関連死はなく、脳血管イベントや食道瘻の報告もなかった。
著者は、「PVIにPWIを追加することで、治療時間と焼灼時間が延長されるが、合併症の発生率は増加しないことが示された。この研究では、初回心房細動カテーテルアブレーションにPWIを経験的に導入する方法は支持されなかったが、PVI+PWIで利益が得られる可能性のあるサブグループを特定するために、さらなる研究が求められる」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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