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NeuroSAFEを用いた前立腺がん手術が勃起機能温存に有効か

 画期的な技術の導入により、前立腺がんの外科的手術後に勃起機能を温存できる男性の数が2倍近く増える可能性のあることが明らかになった。ロボット支援根治的前立腺全摘除術(RARP)にNeuroSAFEと呼ばれる術中診断技術を導入することで、勃起をコントロールすると考えられている前立腺の外層を通る神経を温存させることができるという。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)病院の泌尿器科顧問であるGreg Shaw氏らによるこの研究結果は、欧州泌尿器科学会年次総会(EAU25、3月21〜24日、スペイン・マドリード)で発表されるとともに、「The Lancet Oncology」4月号に掲載された。 近年のロボット手術技術の進歩は、前立腺周囲の神経の精密な温存を可能にしたと研究グループは指摘する。しかし、神経を残すことでがん細胞も残る可能性があるのかを判断するのは難しいという。そのため、特に進行した前立腺がんの手術では、外科医は慎重を期し、確実にがんを取り除くために神経温存を行わない選択をすることが多い。 NeuroSAFEとは、前立腺全摘除術中に、前立腺周囲の神経血管束に接する組織の切片を迅速凍結してがんの浸潤を評価する検査のこと。勃起機能や尿禁制(排尿を意図した通りにコントロールできること)に関わる神経血管束の温存の可否をリアルタイムで判定できることから、神経血管束温存の成功率向上が期待されている。しかし、NeuroSAFEを用いたRARPが、患者の術後の勃起機能や尿禁制の回復に与える影響については明らかになっていない。 今回、Shaw氏らは、英国の5カ所の病院で非転移性前立腺がんの診断を受け、RARPを受けた男性381人を対象にランダム化比較試験を実施し、NeuroSAFEの効果を標準的なRARPとの比較で評価した。対象者は、NeuroSAFEを用いたRARPを受ける群(NeuroSAFE群、190人)と標準的なRARPを受ける群(RARP群、191人)にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、手術から12カ月後に国際勃起機能スコアであるIIEF-5スコアで評価した勃起機能とした。IIEF-5は25点満点で、21点以上を勃起機能が回復している状態と見なした。 追跡期間の中央値は12.3カ月だった。主要評価項目に関するデータが完備したのは344人で(NeuroSAFE群173人、RARP群171人)、IIEF-5スコアの平均点は、NeuroSAFE群で12.7点、RARP群では9.7点だった。調整平均差は3.18点(95%信頼区間1.62〜4.75)であり、両群間には統計学的に有意な差のあることが確認された(P<0.0001)。また、術後12カ月後の時点で勃起機能回復の閾値とされたIIEF-5スコアが21点以上だった者の割合は、NeuroSAFE群で20%、RARP群で14%であり、勃起障害がないか(IIEF-5スコア22〜25点)、軽度の勃起障害(IIEF-5スコア17〜21点)と判定された割合は、それぞれ39%と23%(障害なし:19%と11%、軽度:20%と12%)、重度の勃起障害(IIEF-5スコア1〜7点)と判定された割合はそれぞれ38%と56%だった。さらに、NeuroSAFE群ではRARP群に比べて尿禁制の回復が早いことも確認された。 Shaw氏は、「われわれの研究結果は、NeuroSAFEを使用することで、RARP後に人生を変えかねない勃起障害に直面する必要のない男性が2倍近く増えることを示している」とEAUのニュースリリースで述べている。同氏は、「NeuroSAFEは専門知識を要する複雑な手順だが、患者にもたらすメリットを考えると特に高価とは言えない。何より重要なことは、がんコントロールに悪影響を及ぼさないことだ」と付言している。 一方でShaw氏は、「ただし、NeuroSAFEは全ての患者に適しているわけではない。多くの患者は、標準的な手術支援ロボットを使って安全に神経温存手術を受けることができるからだ。しかし、若い患者や、通常は神経温存手術の対象と見なされない患者にとっては、NeuroSAFE導入により生活の質(QOL)を維持できる可能性が高まる」と述べている。 研究グループは、NeuroSAFEを用いた治療を受けた患者の長期的ながんの転帰を追跡するにはさらなる研究が必要だとしている。

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円形脱毛症の予後に慢性炎症性疾患の併存が影響

 慢性炎症性疾患(CID)の併存が円形脱毛症(AA)の予後に影響を与えるとするリサーチレターが、「Allergy」に1月8日掲載された。 ボン大学(ドイツ)のAnnika Friedrich氏らは、CIDの併存とAAの予後に関する臨床的特徴との関連性について検討するために、主に中央ヨーロッパ系のAA患者2,657人から取得した自己申告データを使用し、包括的な分析を実施した。全体として、AAコホートの患者のうち53.7%が1つ以上のなんらかのCID併存を報告しており、そのうち44.5%がアトピー性CID、17.4%が非アトピー性CIDであった。 解析の結果、アトピー性皮膚炎(AD)、気管支喘息、慢性甲状腺炎(橋本病)のいずれかを併発している患者では、併存CIDを有さない患者と比較して、AAの早期発症、重症化、長期化の報告率が有意に高いことが分かった。鼻炎または白斑を併発している患者では、AAの長期化リスクが有意に上昇した。気管支喘息を併発している患者では、ADまたは鼻炎を併発している患者と比べて、AAの早期発症、重症化、長期化リスクがより高かった。CIDの併存は、AAの発症年齢や重症度よりも、有病期間との関連が顕著であった。早期発症、重症、長期化したAA患者の方が、遅発性、軽症、長期化しないAA患者より、アトピー性併存疾患の報告数が有意に多かった。アトピー性併存疾患が1つ増えるごとに、早期発症、重症化、長期化するオッズがそれぞれ1.179、1.130、1.202上昇した。AAの平均発症年齢は、AD、気管支喘息、鼻炎の全てを有する患者の方が、AAのみを有する患者と比べてほぼ10年早かった。 著者らは、「われわれの研究結果は、異なる併存疾患の組み合わせが、予後の異なるAAのサブタイプを示唆している可能性を示した」と述べている。

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ソーシャルメディアは若者のうつ病の症状を重くする?

 周囲に、InstagramやTikTokなどに感情的に依存しているかのように、ソーシャルメディアのスクロールを止められない人はいないだろうか。このようなソーシャルメディアの依存的な使用は、うつ病や不安、自殺念慮に対するケアを受けている若者のメンタルヘルス症状の悪化と関係している可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。メンタルヘルス問題でケアを受けている若者のうち、ソーシャルメディアの使い方に問題のある人では、使い方に問題がない人と比べて、うつ病の症状や不安、自殺念慮の重症度が高いことが示されたという。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのBetsy Kennard氏らによるこの研究結果は、「Journal of Affective Disorders」4月1日号に掲載された。 Kennard氏は、「これまで長い間、若者のソーシャルメディアの過度の使用が自殺念慮や自殺行動の増加の要因になっているのではないかと疑われてきた。しかし現時点では、両者の関係性は、完全には解明されていない」と話す。 この研究は、米テキサス州青少年うつ病・自殺リサーチネットワーク(TX-YDSRN)レジストリに登録されている489人の患者を対象にしたもの。これらの患者は、年齢が8歳から20歳で、州内の12カ所の大学病院でうつ病、自殺念慮、自殺行動に対するケアを受けていた。Kennard氏らは、これらの患者の中で、ソーシャルメディアの使い方に問題がある者がどの程度いるのかを調べ、さまざまな尺度で評価したメンタルヘルスおよび身体的健康の指標について、ソーシャルメディアの使い方に問題がない患者と比較した。「ソーシャルメディアの使い方に問題がある」の定義は、「ソーシャルメディアにログインしていないと友人とのつながりが断たれているように感じる」「ソーシャルメディアを使えないとがっかりする」「ソーシャルメディアにログインできないと腹が立つ」という設問に対する評価(0〜6点)で、4点以上の回答が2つ以上あった場合とした。 調査の結果、対象患者の40.3%が、ソーシャルメディアの使い方に問題のあることが明らかになった。これらの患者では、使い方に問題のない患者と比べて、スクリーンタイムも長い傾向が認められた。また、ソーシャルメディアの使い方に問題がある患者では、問題のない患者に比べて、うつ病の症状、不安、自殺念慮を有する頻度とその重症度が高く、身体機能、レジリエンス、痛みの干渉や重症度などの心身のウェルネスの指標も低い傾向にあった。 Kennard氏は、「この研究結果は、うつ病、自殺念慮、自殺行動に対するケアを受けている子どもや若者の間で問題のあるソーシャルメディアの使い方がどれほど広まっているかを明らかにしており、ソーシャルメディアの使用とメンタルヘルスとの関係を考える上で、有益な手がかりとなる」との見方を示す。同氏はさらに、「ソーシャルメディアの使用がどの程度までなら適切なのかは人によって異なり、『万人に当てはまる』適切な時間や頻度など存在しない。ただし、問題のあるソーシャルメディアの使い方をしている人の特徴は、依存症の人で見られる特徴と似ていることが多い。例えば、やめたいと思っていても使用をやめられない状態、使いたいという強い欲求、日常生活や活動への支障、隠れた使用、対人関係の問題などだ」と語る。 研究グループは、ソーシャルメディアの問題のある使い方がなぜ若者にこのような悪影響を及ぼすのかを正確に理解するには、さらなる研究が必要だとしている。Kennard氏は、「われわれは、この研究結果と今後の研究データを活用して、ソーシャルメディアの問題のある使い方に早期に対処するためのより優れたスクリーニング方法を開発したいと考えている」と述べている。

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心房細動アブレーションはパルスフィールドアブレーション一択となるか(解説:高月誠司氏)

 SINGLE SHOT CHAMPION Trialでは、有症状発作性心房細動患者を対象として、パルスフィールドアブレーションのFarapulseとクライオバルーンのArctic Frontを比較した。アブレーション後植込み型ループ式レコーダーで心房性不整脈の再発を評価した。 結果は、非再発率がパルスフィールドアブレーション群で62.9%、クライオバルーン群で49.3%であり、パルスフィールドアブレーションのクライオバルーンに対する非劣性(p<0.001)と優越性(p=0.046)が証明された。 パルスフィールドアブレーションは細胞膜に高電圧をかけ、小さなpore(孔)を作りapotosisを誘導する。これまでのアブレーションよりも炎症が起きにくく、従来のようなアブレーション直後の再発が少ないと考えられている。そして、心筋に特異的なlesion作成が可能であり、食道や神経に対する合併症がない、より安全なアブレーション法として期待されている。日本においても心房細動に対するパルスフィールドアブレーションは2024年の導入以降急速に浸透しており、本試験はますますその流れを加速するものと考える。

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第240回 百日咳感染者、過去最多を更新 10代と乳幼児中心に拡大/厚労省

<先週の動き> 1.百日咳感染者、過去最多を更新 10代と乳幼児中心に拡大/厚労省 2.2週間以上咳なら早期受診を、マンガ喫茶で結核集団感染の注意喚起/千葉県 3.肺がん検診指針19年ぶり改訂、重喫煙者には低線量CTを推奨/国立がん研究センター 4.無床診療所の高利益にメス、2026年度報酬改定に向けて提言/財政審 5.病床削減支援、民間優先へ方針転換 自治体病院は対象外に/厚労省 6.大学病院への財政支援強化へ、医師養成・研究支援策を整理/文科省 1.百日咳感染者、過去最多を更新 10代と乳幼児中心に拡大/厚労省百日咳の流行が全国で急拡大している。国立健康危機管理研究機構(JIHS)と厚生労働省によると、4月7~13日の1週間で全国の感染者数は1,222人に達し、現在の統計(2018年~)開始以降で最多を記録している。10代が694人、0~9歳が350人と、若年層中心に広がっている。今シーズンの累積患者数は7,084人となり、すでに昨年(4,054人)を大幅に上回った。百日咳は、激しいけいれん性の咳が特徴。とくに生後6ヵ月未満の乳児では無呼吸や肺炎、脳症を併発し、致死率は0.6%と高い。3月以降感染者数は急増し続け、全国で耐性菌(MRBP株)の報告も増加。中国、韓国などで流行中の株と類似しており、コロナ後の国際往来再開が一因とみられる。地域別では新潟県(99人)、東京都(89人)、兵庫県(86人)などで多発。新潟や大阪、福岡でも過去最多水準を更新している。新潟県ではすでに年間最多だった2019年(499人)を超え、今年550人を報告。大阪府では1週間で110人、福岡県でも102人と、感染拡大が止まらない。対策としては、生後2ヵ月からの定期ワクチン接種の徹底に加え、11~12歳での追加接種が推奨される。日本小児科学会は、乳児への感染を防ぐため、兄姉や家族、とくに妊婦のワクチン接種も勧めている。妊婦が接種すれば胎児に抗体が移行し、生後数ヵ月間は防御効果が期待できる。感染対策はワクチンに加え、手洗いやマスク着用、咳エチケットの徹底が基本となる。長引く咳症状があれば、早期受診を促し、適切な診断と対応が求められる。耐性株による感染拡大にも注意が必要であり、今後も動向を注視した上で地域の流行状況に応じた柔軟な対応が望まれる。 参考 1)百日せき 感染状況MAP(NHK) 2)百日せき患者数 4月13日までの1週間1,222人 3週連続で過去最多(同) 3)「百日ぜき」急増 乳児死亡例も 妊婦や家族はワクチン接種も選択肢(毎日新聞) 4)「百日せき」の感染者数、3週連続で過去最多 直近は1,222人 中国からの流入か(産経新聞) 2.2週間以上咳なら早期受診を、マンガ喫茶で結核集団感染の注意喚起/千葉県千葉県は4月25日、習志野保健所管内の漫画喫茶において、利用者と従業員計6人が結核に感染し、うち4人が発病した集団感染事例を確認、厚生労働省に報告した。発端は昨年7月、長期利用していた40代男性が肺結核と診断されたことに始まる。その後、接触者15人を対象に健康診断を実施したところ、今年1月以降に感染者5人、発病者3人が確認された。さらに調査を拡大し、新たに感染者1人、発病者1人がみつかり、合計6人の感染、4人の発病に至った。発病者のうち1人は救急搬送され、現在も入院中であるが、全員適切な治療を受け、快方に向かっている。結核は、同一感染源により2家族以上、または20人以上に感染が広がった場合、発病者1人を感染者6人分と換算して集団感染と認定される。今回の事例はこの基準に該当した。千葉県内では令和6年に493人が新規に結核登録されており、集団感染は昨年に続き2年連続となる。県では、結核の初期症状が風邪に似ているため、2週間以上咳が続く場合には速やかな医療機関受診を呼びかけている。 参考 1)漫画喫茶で結核の集団感染、長期利用の40代男性ら5人確認…千葉・習志野保健所管内(読売新聞) 2)千葉で結核集団感染 昨年に漫画喫茶で広がり6人感染 2週間以上続く咳は医療機関へ(産経新聞) 3)漫画喫茶で結核集団感染 習志野保健所管内、利用者と従業員の計6人(千葉日報) 3.肺がん検診指針19年ぶり改訂、重喫煙者には低線量CTを推奨/国立がん研究センター国立がん研究センターは2025年4月25日、19年ぶりに改訂した「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン 2025年度版」を公表した。改訂では、喫煙指数600以上(1日平均喫煙本数×喫煙年数)の50~74歳の重喫煙者を対象に、年1回の低線量CT検査を推奨、従来の胸部X線検査と喀痰細胞診の併用は、任意型検診も含め非推奨とされた。改訂の背景には、欧米でのランダム化比較試験(RCT)やメタ解析により、低線量CT検査が肺がんによる死亡リスクを約16%低下させる効果が確認されたことがある。一方、被曝によるがんリスク増加は否定され、標準体型の被験者に対しては線量2.5mGy以下と定義された。胸部X線検査は引き続き、40~79歳の非喫煙者、および40~49歳・75~79歳の重喫煙者に推奨される。なお、喀痰細胞診については、標的である肺門部扁平上皮がんの罹患率が国内で低下していることや、死亡率減少への寄与が証明できなかったため、検診としての併用は推奨されない。ただし診療行為としての喀痰細胞診は否定されていない。加熱式たばこについても、カートリッジ1本を紙巻きたばこ1本と換算して喫煙指数に加算される。禁煙して15年以内の者も対象とする。なお、非重喫煙者に対する低線量CT検診は、死亡率低減効果が不明確なため対策型検診では推奨されず、個人の判断による任意型検診に委ねることとされた。国立がん研究センターは、今後、低線量CT検診の導入にはマニュアル整備、検診体制(読影医や機器確保)、過剰診断・過剰治療への対応策が必要と指摘している。厚生労働省はこのガイドラインを踏まえ、市町村が行う住民検診への反映を検討する予定。肺がんは国内で年間約12万人が診断され、約7万5千人が死亡しており、がんによる死因の中では最多。 参考 1)有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン(2025年度版)(国立がん研究センター) 2)「重喫煙者」は年1回低線量CT検査を…国立がん研究センター、肺がん検診の指針改訂(読売新聞) 3)喫煙者は低線量CT推奨 肺がん検診指針を改定 死亡率減、06年度版以来(共同通信) 4)国がん「肺がん検診ガイドライン 2025年度版」を公開、50~74歳の重喫煙者に低線量CT検査を推奨(日経メディカル) 4.無床診療所の高利益にメス、2026年度報酬改定に向けて提言/財政審財政制度等審議会は4月23日、2026年度の診療報酬改定に向けた議論を行い、医師の都市部集中を是正するための報酬体系見直しを提言した。診療所が過剰な地域では、診療報酬を減額する一方、医療機関が不足する地域では加算措置を講じる「メリハリある改定」を求めた。とくに、無床診療所の利益率が8.6%と高水準にある点を指摘し、病院との経営状況の違いを踏まえた適正化を強調した。また、慢性疾患患者を継続的に診療する「かかりつけ医」機能を持つ医療機関への報酬体系も見直し、より質の高い医療提供を評価する仕組みを構築するよう求めた。現在一律に算定できる機能強化加算についても、廃止を含めた見直しを検討すべきと提言している。さらに、外来診療医師が過剰な地域で新規開業を希望する医師に対し、都道府県が要件を課す仕組みの強化や、要請に従わない場合の診療報酬減額措置も視野に入れる。医薬分業についても、医療機関内で薬を受け取る方が薬局より高くなる現行制度の見直しや、薬剤師による減薬提案など対人業務の評価拡充を求めた。人材紹介会社については、医療機関が高額手数料を負担している実態に懸念を示し、紹介会社の選別・規制強化も提言。持続可能な社会保障制度構築のため、限られた財源下で医療・介護費用の効率化と適正化を強く求めた。 参考 1) 財政制度等審議会財政制度分科会(財務省) 2) 財政制度等審議会 来年度の診療報酬改定に向けて議論(NHK) 3) 医師偏在「診療報酬改定で対応を」 財制審、都市部は報酬減も(日経新聞) 4) 診療所に照準、財務省「無床の利益率8.6%」めりはりある診療報酬改定求める(CB news) 5) 不適正な人材紹介会社の「排除を徹底」財務省提言 同一建物減算の強化も(同) 5.病床削減支援、民間優先へ方針転換 自治体病院は対象外に/厚労省厚生労働省は、病床削減を行う医療機関に対する医療施設等経営強化緊急支援事業(病床数適正化支援事業)において、申請数が想定(約7,000床)の7.7倍に当たる5万4,000床に達したことを受け、支援対象の条件を急遽厳格化する内示を通知した。1床当たり410万4,000円が支給されるこの制度は、地域医療の効率化を目指して病床削減を促すもので、当初は広範な適用を予定していたが、財源不足を背景に民間医療機関を優先する方針に転換し、公立病院など一般会計から繰り入れを受ける医療機関は対象外とされた。厚労省は第1次内示として7,170床分(約294億円)の配分を決定。1医療機関当たり50床を上限とし、経常赤字が続く民間医療機関を支援対象とした。公立病院などの自治体病院は大半が対象外となり、北海道では143医療機関・4,862床の申請のうち、採択は352床に止まった。留萌市立病院や室蘭総合病院など、補助金を前提に病床削減を計画していた自治体病院では、財源確保に向けた再検討が迫られている。自治体側からは「はしごを外された」「地域医療軽視だ」との反発が相次ぎ、支援対象からの排除が地域医療体制に深刻な影響を及ぼす懸念が広がっている。厚労省は6月中旬を目処に第2次内示を予定しているが、補助対象の拡大は不透明な状況だ。医療経済に詳しい識者からは「制度設計の甘さ」と「自治体病院の補助金依存体質」の両方に問題があると指摘され、地域医療のあり方を再考する契機とするべきとの声も上がっている。 参考 1) 令和7年度医療施設等経営強化緊急支援事業(病床数適正化支援事業)の内示について(厚労省) 2) 5万床超の返上申請に対して病床削減の支援対象は7,170床(日経メディカル) 3) 病床削減の申請5.4万床、想定の7.7倍に 福岡厚生労働相(日経新聞) 4) 病床減への補助 支給条件を厳格化 全国から応募殺到で厚労省 自治体病院、実質対象外に(北海道新聞) 5) 「はしごを外された」 国の唐突な補助金方針転換 憤る北海道の自治体病院(同) 6.大学病院への財政支援強化へ、医師養成・研究支援策を整理/文科省文部科学省は、4月23日に「今後の医学教育の在り方に関する検討会」を開き、大学病院の位置付けを明確化し、財政的支援を検討する整理案を示した。物価高騰による経営悪化や建設費増大に対応するため、大学病院の診療・教育・研究機能の重要性を改めて位置付け、これに応じた財政措置を求めた。また、特定機能病院の承認要件見直しに関し、地域医療を支える医師の養成・派遣体制の整備が重要と提言した。さらに、総合的な診療能力を持つ医師養成を推進するため、モデル・コア・カリキュラムの改訂により「総合的に患者・生活者をみる姿勢」を新たに資質・能力項目に追加した。一方、日本医学会連合は、大学病院教員の研究時間減少に危機感を示し、研究支援制度の拡充を求める要望書を文科省に提出した。医師の働き方改革により診療や教育の負担が増え、研究時間がさらに削減されていると指摘。バイアウト制度活用による研究時間確保や、研究補助員の充実などの支援策強化を求めた。加えて、医学生や若手医師が研究に取り組みやすくするため、早期大学院進学促進と給与保障、海外留学制度の柔軟化・拡充も提案された。これらの議論を受け、文科省は、大学病院を中心とした医師養成・地域医療強化、医学研究基盤の再構築に向けた支援策の具体化を進める方針。持続可能な医療提供体制と国際競争力ある医学研究体制の構築が急務となっている。 参考 1)第13回 今後の医学教育の在り方に関する検討会 配布資料(文科省) 2)大学病院、「位置付け明確化し財政支援」文科省が整理案(MEDIFAX) 3)大学病院での研究時間大幅減少 支援制度の整備を要望「働き方改革で拍車」医学会連合が指摘(CB news) 4)わが国の医学研究力の向上へ向けての要望書(日本医学会連合)

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緩和ケアTipsを医師とナースが語り合う連載100回記念対談【視聴者に抽選でポイントプレゼント!】

緩和ケアTipsを医師とナースが語り合う連載100回記念対談本連載「非専門医のための緩和ケアTips」が、次回で100回を迎えます。連載100回を記念して執筆者である飯塚病院の柏木 秀行氏と、同院で一緒にケアに当たる緩和ケア認定看護師の宮崎 万友子氏の対談形式で、ライブを開催します。過去の記事から、反響の大きかったテーマをピックアップし、さらに深掘りします。取り上げるのは、以下の3テーマです。第15回 誰に?いつから?緩和ケアのニーズを見極める「この問い」第44回 痛みの評価が難しい患者さん第56回 希望を持ち続けることの意義緩和ケアの現場を熟知するエキスパート2人が、それぞれの視点から一般外来や病棟でも日々直面する悩みに切り込みます。緩和ケアに携わる医師・看護師の方はもちろん、臨床判断力や患者対応の質を高めたいすべての医療者必見の対談です。<ライブ基本情報>祝!CareNet.com連載100回記念対談 日常診療と看護に活かせる緩和ケアTIPS日時:2025年4月30日(水)20:00~21:00柏木 秀行氏(飯塚病院 連携医療・緩和ケア科)宮崎 万友子氏(飯塚病院 看護部 緩和ケア認定看護師)再配信日時:2025年5月3日(土祝)20:00~21:00視聴いただいた方に、抽選で100名様・1000ポイントが当たるキャンペーン!視聴後、アンケートで感想をお寄せいただいた方から抽選で100名様に1,000ポイントが当たるキャンペーンを実施します。

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事例022 モビコール配合内用剤の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説処方箋にて投与したマクロゴール4000、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム(商品名:モビコール)配合内用剤HD(以下「同剤」と略す)が、「突合点検結果連絡書」にてB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)が適用されて査定になりました。審査結果の理由などには、過剰と判断されたのは調剤薬局のコメントに基づくものと記載されていました。同剤は年齢に応じて投与量が異なるため、年齢区分に気を付けて添付文書を調べてみると投与量は添付文書の範囲内でした。審査結果の理由などをよく確認すると、調剤薬局コメントに「夕食後1回」と記載されていたことが確認できました。医師に確認すると、服用方法を1日3回に変更したが、処方箋入力時の誤りに気付かなかったとのことでした。同剤の1日量としては添付文書の範囲内ですが、1回量としては過剰になっていたのです。調剤薬局のコメントという思わぬところから過剰であると判断されて査定となったものと推測します。既存の処方入力システムでは、添付文書の用法用量を超える場合にはアラートが表示される仕様になっていましたが、服用方法までチェックできていませんでした。処方入力システムには服用量と方法の組み合わせにより過剰処方になりかねない院内採用薬剤に対して、警告を表示させるよう改修しました。医師には、医学的に必要がある場合には、その旨のコメント入力をいただくことをお願いして査定対策としました。

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「急性腹症診療ガイドライン2025」、ポイント学習動画など新たな試みも

 2025年3月「急性腹症診療ガイドライン2025 第2版」が刊行された。2015年の初版から10年ぶりの改訂となる。Minds作成マニュアル(以下、マニュアル)に則って作成され、初版の全CQに対して再度のシステマティックレビューを行い、BQ81個、FRQ6個、CQ14個の構成となっている。8学会の合同制作で広範な疾患、検査を網羅する。診療のポイントをシナリオで確認できる動画を作成、システマティックレビューの検索式や結果をWeb上で公開するなど、新たな試みも行われた。改訂出版委員会の主要委員である札幌医科大学・三原 弘氏に、改訂版のポイントや特徴を聞いた。 ガイドライン自体の評価はMindsなどが行っているが、私たちはさらにマニュアルに従ってガイドラインが実臨床や社会に与えた影響を評価しようと考えた。具体的には、初版刊行の前後、2014年と2022年に日本腹部救急医学会と日本プライマリ・ケア連合学会の会員を対象にアンケート調査を行った。ガイドラインの認知度と実臨床の変化を調べ、改訂につなげることが目的だ。 そこでわかった課題は2つ。1つめは、初版では急性腹症の初回のスクリーニング検査として超音波検査(エコー)を推奨していたにもかかわらず、発刊後にはエコーの実施率が下がり、CT検査の実施率が上がっていた。コロナ禍の影響が大きいだろうが、初版における超音波の推奨を十分伝え切れていなかった可能性がある。2つめは、初版の認知度が6割だったことだ。学会員であり、かつアンケートに回答してくれるような熱心な医師であっても4割はガイドラインの存在自体を知らない、という結果は衝撃だった。一方、ガイドラインを認知している医師は診療内容が確実に変わっており、「知ってもらう」ことの重要性を痛感した。 この結果を受け、2版は「最初の画像検査はエコーが第1選択と強調」、「とにかく知ってもらう」ことの2点に注力した。 そして、「急性腹症の検査」の章では、「$アプローチ」と「6アプローチ」という具体的な走査法の図を掲載し、「急性腹症の教育プログラム」の章に最近一般的になっているPOCUS(ベッドサイドで行う超音波検査)について、「各部位50例程度の経験を積むことを提案する」という具体的な数値目標を記載し、エコー動画を含めたシナリオ学習動画を新規に作成・公開した。これはパブリックコメントなどに寄せられた「エコーが重要なのはわかったが、どう当てればいいのか、どのくらい練習すればいいのかわからない」という声に応えたものだ。 さらに、初版で記載した「2 step methods」(バイタルサインを確認するステップ1、その異常の有無で医療面接・身体所見などから病態を評価する対応を変えるステップ2を順番に行う診療アルゴリズム)がわかりにくいという声を受け、上記のシナリオで内容を理解する動画を5本作成した。若手医師を中心に、書籍ではなく動画で学ぶことが一般化しており、そのニーズに応えたものだ。1本10分程度の動画で、症例提示や検査画像から診療の流れとポイントを確認し、視聴前後にチェックテストを行うことで理解度を確認することができる。動画はYouTubeに上げ、版権もガイドライン改訂出版委員会が所持しつつもクリエイティブ・コモンズとして公開しているので、医学部の授業や研修病院のセミナーでそのまま、または一部改変して使っていただくことも可能だ。 さらに、本編に入り切らなかった補足的コンテンツや、改訂に際して行ったシステマティックレビューの結果もWeb上で公開している。これまで、システマティックレビューの検索式や結果は事務局等のパソコン上に静かに保管している、などのケースが多かった。ガイドラインとその改訂作業を、オープンかつ公的で参考となるものとし、そして永続的な活動としていくために、さまざまなトライアルをした1冊だ。ぜひ多くの方に手に取っていただきたい。【新版に収録されたBQ・CQ/一部抜粋】BQ2 腸閉塞症とイレウスはどう定義されるか?腸管の閉塞症状を呈する病態において、「腸管の機械的閉塞を伴う病態を腸閉塞症」と「腸管の機械的閉塞を伴わない、腸蠕動または腸運動の欠如に起因する病態をイレウス」とを明確に分けて定義する。BQ3 急性虫垂炎はどう分類されるか?急性虫垂炎は、組織学的にカタル性、蜂窩織炎、壊疽性と分類され、臨床的に単純性、複雑性、汎発性腹膜炎を伴う虫垂炎に分けられるが、これらを術前に正確に分類することは困難である。BQ44 急性腹症の画像診断で最初に行う(形態学的)検査(または画像診断法)は何か?非侵襲性、簡便性、機器の普及度などからも超音波検査(US)がスクリーニング目的での画像診断法では第1選択であり、特に妊婦や小児においては勧められる。BQ78 急性腹症の腹痛にはどのような鎮痛薬を使用するか?原因にかかわらず診断前の早期の鎮痛剤使用を推奨する。痛みの強さによらずアセトアミノフェン1,000mg静脈投与が推奨される。痛みの強さにより麻薬性鎮痛薬の静脈投与を追加する。またブチルスコポラミンのような鎮痙剤は腹痛の第1選択薬というよりは疝痛に対して補助療法として使用される。急性腹症ではモルヒネ、フェンタニルのようなオピオイドやペンタゾシン、ブブレノルフィンのような拮抗性鎮痛薬を使用することもできる。NSAIDsは胆道疾患の疝痛に対しオピオイド類と同等の効果があり第1選択薬となりうる。尿管結石の疝痛にはNSAIDsを用いる。NSAIDsが使用できない場合にオピオイド類の使用を勧める。CQ8 急性腹症のどのような場合に造影CT検査を追加するか?臓器虚血の有無、血管性病変、急性膵炎の重症度判定、急性胆管炎・胆嚢炎、複雑性虫垂炎などでは単純CTだけでは詳細な評価が困難なことがあり、造影CT検査が推奨される。CQ14 臨床医に対する急性腹症の超音波訓練は有用か?臨床医自らが患者の傍らで関心部分に焦点を絞って実施する point-of-care ultrasonography(POCUS)の診断精度は、各部位50例程度の経験を積むことで超音波検査の専門家と同等になることが報告されており、急性腹症を診療する医師は50例程度の超音波訓練を行うことを提案する。

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ゾルピデムとBZDの使用が認知症リスク増加と関連〜メタ解析

 ガンマアミノ酪酸(GABA)系は、認知機能や記憶プロセスに関連していることが知られている。そして、GABAA受容体およびその他の関連経路の活動は、βアミロイドペプチド(Aβ)の蓄積に影響を及ぼす。そのため、GABAA受容体に影響を及ぼす薬剤の使用とアルツハイマー病および認知症の発症リスクとの関連を調査する研究が進められてきた。イラン・Shahid Beheshti University of Medical SciencesのKimia Vakili氏らは、ベンゾジアゼピン(BZD)、ゾルピデム、トリアゾラム、麻酔薬に焦点を当て、GABAA受容体に影響を及ぼす薬剤とアルツハイマー病および認知症リスクとの関連を明らかにするため、文献レビューおよびメタ解析を実施した。Molecular Neurobiology誌オンライン版2025年3月20日号の報告。 2024年5月までに公表されたアルツハイマー病、認知症、GABAA受容体作動薬に関するすべての英語文献をメタ解析に含めた。対象文献は、PubMed、Scopusデータベースより検索した。抽出されたデータの分析には、Stata 14.2を用いた。異質性の評価には、Q統計およびI2指数を用いた。出版バイアスの検出には、Egger検定とファンネルプロットを用いた。 主な内容は以下のとおり。・19文献(ケースコントロール研究10件、コホート研究9件)、295万3,980例をメタ解析に含めた。・GABA受容体作動薬の使用と認知症(リスク比[RR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.02〜1.29、I2=87.6%)およびアルツハイマー病(RR:1.21、95%CI:1.04〜1.40、I2=97.6%)の発症との間に、統計学的に有意な関係が認められた。・薬物ベースのサブグループでは、ゾルピデム使用とアルツハイマー病および認知症発症率の増加との関連が認められた(RR:1.28、95%CI:1.08〜1.52、I2=24.3%)。これは、BZD使用と同様であった(RR:1.11、95%CI:1.04〜1.18、I2=87.2%)。・メタ回帰分析では、フォローアップ期間の範囲は研究全体で5〜11年であり、異質性と有意に関連していることが示唆された(p=0.036)。 著者らは「ゾルピデムおよびBZDの使用は、認知症およびアルツハイマー病のリスク増加と関連していることが示唆された」としている。

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局所進行上咽頭がんの1次治療、補助化学療法+CCRT vs.CCRT/BMJ

 N2~3期の上咽頭がん患者において、同時併用化学放射線療法(CCRT)の前にドセタキセル+シスプラチンによる補助化学療法(NACT)を4サイクル行うことにより、CCRTのみ行った場合と比較し、遠隔転移のリスクが低下するとともに全生存期間が改善し、毒性は管理可能であることが示された。中国・中山大学がんセンターのWei-Hao Xie氏らが、中国の3次医療機関6施設で実施した第III相無作為化比較試験の結果を報告した。局所進行上咽頭がんに対する補助化学療法+同時併用化学放射線療法の有効性は確立されていなかった。BMJ誌2025年4月15日号掲載の報告。主要評価項目は、5年DMFS率とOS率 研究グループは、未治療のT1~4/N2~3/M0上咽頭がんと病理診断された70歳以下の患者を、CCRT群またはNACT+CCRT群に、N病期で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた。 NACT+CCRT群では、1サイクル3週間としてドセタキセル75mg/m2を1日目に、シスプラチン37.5mg/m2を2~3日目に、最大4サイクル投与することとし、最初の2サイクルで完全奏効または部分奏効が得られた患者はさらに2サイクル投与した後、CCRTを行った。CCRTは、強度変調放射線治療(IMRT)とシスプラチン40mg/m2の週1回静脈内投与とした。 主要評価項目は、中央判定による5年間の無遠隔転移生存(DMFS)率および全生存(OS)率とし、ITT解析を行った。安全性については、NACT、CCRT、および全期間中のGrade3以上の急性毒性の発現、ならびに登録から5年後の晩期毒性を評価した。5年DMFS率は91.3%vs.78.2%、5年OS率は90.3%vs.82.6% 2016年2月23日~2019年2月18日に192例が登録され、同意を撤回した6例を除く186例が無作為化された(NACT+CCRT群93例、CCRT群93例)。 追跡期間中央値76.9ヵ月(四分位範囲:65.4~85.9)において、遠隔転移はNACT+CCRT群で9例(10%)、CCRT群で20例(22%)に認められ、5年DMFS率はそれぞれ91.3%(95%CI:85.4~97.2)、78.2%(95%CI:69.8~86.6)であり、NACT+CCRT群が有意に高かった(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.19~0.87、p=0.02)。 また、死亡はNACT+CCRT群9例(10%)、CCRT群22例(24%)に認められ、5年OS率はそれぞれ90.3%(95%CI:84.2~96.4)、82.6%(75.0~90.2)であった(HR:0.38、95%CI:0.18~0.82、p=0.01)。 Grade3/4の急性毒性は、NACT+CCRT群で60例(65%)とCCRT群で46例(51%)に観察された(p=0.05)。主なGrade3/4の急性毒性は、白血球減少症(NACT+CCRT群46例[50%]vs.CCRT群26例[29%]、p=0.004)、好中球減少症(43例[47%]vs.10例[11%]、p<0.001)であった。晩期毒性はいずれも両群間で有意差は認められなかった。

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血友病Bへのfidanacogene elaparvovec、長期の安全性・有効性/NEJM

 重症または中等症の血友病B成人患者において、fidanacogene elaparvovecの単回静脈内投与は、投与後3~6年間に認められた有害作用はない、あるいはあっても軽度であった。また、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた治療の中で最も少量である体重1kg当たり5×1011ベクターゲノムの投与で、長期にわたり有効性が維持された。オーストラリア・シドニー大学のJohn E. J. Rasko氏らが、第I/IIa相試験および長期追跡試験の結果を報告した。血友病B治療のために開発された遺伝子組み換えAAVベクターのfidanacogene elaparvovecは、高活性第IX因子変異体(FIX-R338L変異体[FIX-Padua])の持続的な発現が認められているが、長期的な安全性と有効性は不明であった。NEJM誌2025年4月17日号掲載の報告。fidanacogene elaparvovecを単回投与し3~6年間追跡 研究グループは、18歳以上の重症または中等症の血友病B(第IX因子活性が正常値の2%以下)患者に、fidanacogene elaparvovecを体重1kg当たり5×1011ベクターゲノムの用量で単回静脈内投与した。投与1年後、参加者はさらに5年間の長期追跡試験に登録できることとした。 本試験の主要目的は安全性の評価で、有害事象、臨床検査値の変化などが含まれた。副次目的は有効性の評価で、年間出血率、第IX因子活性などであった。 計15例が登録されfidanacogene elaparvovecの投与を受けた。このうち14例が長期追跡試験に参加し、少なくとも3年間の追跡調査を完了した。追跡期間中央値は5.5年(範囲:3~6)で、データカットオフ時点で8例が試験を継続していた。安全性プロファイルは良好、平均年間出血率は1未満を維持 長期追跡試験に参加した14例において、投与1年後以降に治療関連有害事象を報告した患者はいなかった。 追跡期間全体を通じて、4例に計9件の重篤な有害事象が報告された。内訳は、脊柱管狭窄症、事故、関節脱臼、腎挫傷、肝挫傷および肋骨骨折が1例(重複)、虫垂炎、大動脈解離、関節内出血が各1例で、いずれも治療に関連するものではなかった。試験中止や死亡に至った有害事象はなく、血栓性イベントや抗第IX因子抗体も認められなかった。 追跡期間を通じて第IX因子活性平均値は軽症血友病の範囲内に維持されており、年間出血率は平均値1未満、中央値は0で、10例(67%)は治療を要する出血エピソードを一度も経験しなかった。 肝臓のサーベイランス超音波検査では、がんの所見は認められず、体重増加とALT値上昇(最大値77U/L)を伴う4例に脂肪肝がみられた。また、1例で投与後5年時から基礎疾患の肝線維化の進行が認められたが、本症例はBMI値が高く、C型肝炎、B型肝炎およびHIV感染の既往があった。 8例で計13件の外科手術が行われ、そのうち10件で外因性第IX因子が投与されたが、予期しない出血合併症は発生しなかった。

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ハイテクTシャツで術後患者のバイタルサインをモニタリング/欧州泌尿器科学会

 センサーを搭載したハイテクTシャツが、退院後の患者のバイタルサインを追跡するのに役立つ可能性があるようだ。がんで泌尿器の外科手術を受けて退院した70人の患者を対象にした小規模研究で、退院後にこのTシャツを着用して血圧や心拍数、体温などのバイタルサインのモニタリングを受けた患者は、対照群よりも安全で安心できると感じていたことが示されたという。ローマ・ラ・サピエンツァ大学(イタリア)泌尿器科准教授のAntonio Pastore氏らによるこの研究結果は、欧州泌尿器科学会年次総会(EAU25、3月21〜24日、スペイン・マドリード)で発表された。 この研究でPastore氏らは、心臓の電気的活動(ECG)、呼吸、心拍数、体温、血圧、動脈血酸素飽和度(SaO2)、血糖値などをモニタリングできるセンサー搭載の軽量Tシャツを開発した。Tシャツにより測定されたデータは、アプリとウェブベースのソフトウェアに転送される。Pastore氏は、「患者に渡したTシャツは、スマートウォッチや他のウェアラブルデバイスとは異なる。このTシャツは、膀胱手術後もモニタリングを続ける必要がある電解質など、より多くのデータを測定できる。電解質のバランスが崩れると、合併症につながる可能性がある」と述べている。 Pastore氏らは、泌尿器科分野のロボット支援手術を受けた70人の患者を、手術の2〜4日後に退院し、自宅でハイテクTシャツを着用してバイタルサインのモニタリングを受ける群(35人、Tシャツ群)と、通常通り、手術の3〜5日後に退院する対照群(35人)に割り付けた。Tシャツ群は、2週間にわたり、1日に3回、1回当たり3時間(7〜10時、14〜17時、19〜22時)、Tシャツを着用するよう求められた。 その結果、予定されていたフォローアップの前に病院に戻る必要があった対象者の割合は、対照群で26%に上ったのに対しTシャツ群では6%に過ぎなかった。また、Tシャツ群では、5人で心臓に関連する症状の発症が早期に検出され、これにより、早期の診断と治療が可能になった。Tシャツ群での遠隔モニタリング期間は平均13.5日で、90%以上の患者がこの方法によるモニタリングに満足を示した。 こうした結果を受けてPastore氏は、「イタリアでは通常、泌尿器科分野でのロボット支援手術後に退院するまでには少なくとも72時間かかる。しかし、センサー搭載のTシャツを導入することで、患者がより早期に退院し、快適で落ち着ける自宅で過ごすことで生活の質(QOL)が向上する上に、他の患者のための病床を増やすこともできる」と述べている。 ルーベン大学(ベルギー)大学病院の泌尿器科医でEAU会議議長のMaarten Albersen氏は、「このセンサー搭載のTシャツは、泌尿器科領域のロボット支援手術を受けた患者の自宅での回復を助ける有望な遠隔モニタリング技術であるようだ」とEAUのニュースリリースの中で語っている。同氏は、「この試験はまだ初期段階だが、患者がウェアラブルデバイスを抵抗なく受け入れ、リアルタイムで合併症を検出し、不必要な再入院を減らすことができた点で、非常に興味深い知見だ」とコメントしている。 一方でAlbersen氏は、「この試験は、小規模で予備的なものに過ぎない。この種のウェアラブルデバイスを臨床現場で採用するには、早期退院をサポートするデバイスの能力やアウトカムと費用対効果への実際の影響に関するより多くのデータが必要だ」とも述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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糖尿病性腎症の世界疾病負荷、1990~2021年にかけて増大

 糖尿病性腎症の世界疾病負荷は1990~2021年にかけて増大しており、2050年まで増大が続く見込みである、とする研究結果が報告された。成都市第三人民病院(中国)のXiao Ma氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Endocrinology」に2月21日掲載された。 慢性腎臓病(CKD)は糖尿病の深刻な合併症であり、その世界的負担は徐々に増加している。米国では2000~2019年の間に、約80万人の患者が糖尿病を主因とする腎不全により透析または腎移植を受けているという報告もある。糖尿病性腎症の独立したリスク因子としては、遺伝、高血糖、高血圧などが挙げられているものの、CKDを併発した糖尿病の発生率に関する完全な統計はない。そのような背景から、著者らは、世界疾病負荷研究(GBD)に基づき、1990~2021年のデータを使用して、1型および2型の糖尿病に起因するCKDの世界的な負荷の動向および今後の予測について分析した。 本研究では、推定年間変化率(EAPC)を用いて、疾病サブタイプ別および地域別の疾病負荷の動向を推定し、糖尿病によるCKDに対する様々な年齢層および代謝因子の影響を評価した。疾病負担の推定には、死亡者数、年齢標準化死亡率、障害調整生存年(DALY)、年齢標準化DALY率が使用された。国や地域の社会経済発展の指標には社会人口統計学的特性指数(SDI)を用いた。GBDが対象とする国や地域は、その指数によって、低SDI、中低SDI、中SDI、中高SDI、高SDIの5つのカテゴリーに分類された。さらに自己回帰和分移動平均(ARIMA)モデルを用いて、2022~2050年までの糖尿病性腎症の疾病負担を予測した。 解析の結果、糖尿病性腎症の疾病負荷およびそのEAPCは、世界204カ国の国別および地域別のSDIサブグループによって、大幅に異なっていた。また、さまざまな年齢集団や代謝因子(腎機能障害、空腹時血糖高値、高BMIなど)が糖尿病性腎症の疾病負荷に及ぼす影響にも、大きなばらつきが見られた。代謝因子が加齢に伴う死亡者数や死亡率に及ぼす影響には、正の相関が認められた。1型糖尿病によるCKDと2型糖尿病によるCKDの死亡率には、異なる代謝因子が異なる影響を及ぼしていた。 糖尿病性腎症の世界的な負荷は、ARIMAモデルに基づく予測では、治療介入を行わなければ2022~2050年にかけて増大が続くとされた。2050年までに、死亡者数は9億5480万人、DALYs2569万1,300年、死亡率は10万人あたり8.118人、DALYsは10万人あたり196.143年になると試算された。 著者らは、「本研究から、治療介入を行わない場合、糖尿病性腎症の世界的な負荷は2022~2050年にかけて年々増大し、将来的に世界全体の医療システムをさらに圧迫する可能性が示された。今回のデータは、特に糖尿病性腎症のリスクが高い集団における、糖尿病性CKDに対する費用対効果の高い政策や個別化された介入策の開発に役立つと考える」と述べている。 また、糖尿病の負担が中程度のSDIの国々で一貫して高かったことに関しては、「特に医療資源が乏しい低・中所得国においては、糖尿病とその合併症の効果的な管理のための、より正確で費用対効果の高い診断ツールや介入が今後必要とされるのではないか」と指摘している。

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タバコ規制により米国で400万人近い人が死亡を回避

 喫煙者を減らすための公衆衛生キャンペーンやタバコ税の導入などのさまざまな対策によって、米国では過去50年間で約400万人の肺がんによる死亡が防がれたことが明らかになった。回避された肺がんによる死亡者数は、同期間に回避された全てのがん死の約半数を占めるという。 この研究は、米国がん協会(ACS)のFarhad Islami氏らによるもので、詳細は「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に3月25日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「肺がんによる死亡を回避し得た人の推定数は膨大な数に上っている。これは、喫煙防止のための公衆衛生対策の推進が、肺がんによる早期死亡の低減に大きな効果を発揮してきたことを物語っている」としている。ただし一方で同氏は、「それにもかかわらず、肺がんは依然として米国におけるがん死の主要な原因であり、さらに、喫煙に起因する肺がん以外のがん、および、がん以外の喫煙関連疾患の罹患率や死亡率は依然として高いままだ」と、さらなる改善の必要性を強調している。 この研究では、1970~2022年の米国健康統計センター(NCHS)による全米での死亡データを利用して、年齢、性別、人種、調査年ごとに肺がんによる死亡数の予測値を算出した上で、その値から実際に発生していた肺がんによる死亡者数を差し引くという計算が行われた。その結果、この約50年間で385万6,240人(男性224万6,610人、女性160万9,630人)の肺がんによる死亡が回避されていたことが分かった。この数は、この間に回避された全てのがん死(750万4,040人)の51.4%を占めていた。 Islami氏は、「タバコ規制による喫煙の減少は何百万人もの命を救ってきたし、今後も何百万人もの人の命を救うことだろう。しかし、喫煙者をさらに減らし、喫煙関連疾患の死亡リスク抑制をより確実なものとするために、地域、州、国家レベルでのより強力な取り組みが必要とされている」と話している。また同氏は、喫煙リスクの高い集団に対して、そのような取り組みをより積極的に行うことの重要性も指摘。その理由の一つとして、例えば「教育歴が高校卒業以下の集団の喫煙率と肺がんによる死亡リスクは、大学を卒業した集団に比べて5倍高い」という事実を挙げている。 ACSに対して政策提言などのサポートを行っているACSがん対策推進ネットワークのLisa Lacasse氏は、「本研究の結果は、予防可能な死亡が依然として発生しているという事実を浮き彫りにしている」と論説。「喫煙者を減らし、最終的には米国民全員のタバコによる発がんという疾病負担を減らすためのアプローチの一環として、エビデンスに基づく喫煙防止策や禁煙プログラムの継続と、そのための資金の確保が、これまで以上に求められる」と同氏は述べ、タバコ税の引き上げを含めた包括的な禁煙政策の必要性を指摘している。

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熱中症の重症度が尿でわかる?

 昨年、5~9月に熱中症で搬送される人の数は過去最多を記録した。熱中症の重症度は、搬送先施設で血液検査により評価される。しかし、尿中の肝臓型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)も熱中症の重症度と相関するという研究結果が報告された。L-FABPは熱中症の生理学的重症度や予後を予測するツールになり得るという。日本医科大学救急医学教室の横堀將司氏、関西医科大学総合医療センター救急医学科の島崎淳也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月12日掲載された。 熱中症は、高温多湿環境下で体内の水分・塩分量のバランスが崩れ、体温調節機能や循環機能が破綻して発症する。熱中症に対する適切な介入と転帰の改善には重症度の迅速な評価が不可欠だが、救急外来(ER)であっても、血液検査では結果の確認に長い時間がかかる。このような背景から、熱中症の重症度の判断には、よりアクセスしやすい簡易迅速検査の開発が待たれていた。 L-FABPは、脱水による腎虚血性機能障害を反映する有望なバイオマーカーだ。近年、医療用検査キットにより、短時間でのL-FABP測定が可能になった。重度の熱中症では内臓の血流低下による虚血が伴うことから、研究グループは、その重症度を予測する指標としてこのL-FABPが適用できると考え、L-FABPの検査キットを用いた多施設の前向きコホート研究を行った。 研究には全国の三次救急医療センター10施設が参加し、2019~2021年の夏季に日本救急医学会の熱中症基準に従って「重症」と診断された、18歳以上の患者78名が組み入れられた。敗血症または感染症の疑われる患者は除外した。ERに搬送された78名の熱中症患者は、意識を取り戻す前に採血・採尿が行われた。血清サンプルは臨床検査値の測定に用いられ、多臓器不全評価(SOFA)スコア(0~24でスコアが高いほど重症度が高い)が決定された。尿サンプルは、検査キットを使用し半定性的なL-FABPの測定に用いられた。患者の転帰については、mRSスコア(0~6でスコアが高いほど予後が悪い)が用いられ、退院時、発症1カ月、発症3カ月で計測が実施された。 組み入れ時の患者の年齢は中央値で76歳、SOFAスコアは5.0(四分位範囲 IQR3.0~9.0)だった。患者はL-FABPの濃度に応じて、陰性群(N群;L-FABP<12.5ng/mL)、陽性群(P群;L-FABP≧12.5ng/mL)の2群に分けられた。 初期SOFAスコアはN群で4.0(2.0~7.0)、P群で6.0(4.0~9.3)であり、尿中L-FABP濃度が高かった群では初期SOFAスコアも高くなっていた(U検定、P=0.013)。退院時の転帰については、良好な転帰を示すmRS(0~2)の割合が、N群で62.1%、P群で38.8%であり、N群で有意に良好な転帰を示した(P=0.046)。発症後3カ月後には両群には有意な差は認められなかった(P=0.227)。なお、ROC解析により長期的な転帰を予測するためのカットオフ値は28.6ng/mL(AUC=0.732)と決定された。また、尿中L-FABP濃度と、脈拍数(r=0.300)および乳酸値(r=0.259)の間には弱い正の相関が認められた(各P<0.01)。 研究グループは、本研究について、「L-FABPの検査キットは、熱中症の重症度を予測するとともに、患者の転帰を反映するツールであることが示唆された。この検査キットは保険収載されており、侵襲性が低いことから、その有用性は高いのではないか」と述べた。また、想定される運用方法については、「搬送前に検査結果を特定することで、患者を三次救急医療センターに搬送するか否かの決定をタイムリーに行うことができるようになるだろう」と言及した。 本研究の限界点については、重症の症例に限定したこと、サンプルサイズ、高齢者が多かったことから一般化できない点などを挙げている。

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第259回 管理職のメンタルケア必読書か、フジ中居問題の第三者委員会報告書

しつこいようだが、前回予告した通り、今回もフジテレビ女性社員Aさんが元SMAPの中居 正広氏から受けた性暴力に関する第三者委員会(以下、同委員会)報告書について取り上げる。なお、第三者委員会報告書ではAさんについて、「女性A」と一貫して記述されているが、ほかの登場者が「氏」あるいは肩書で呼ばれていることとの対比に関して、筆者個人がその無機質な表記に違和感があったため、すべて「Aさん」に置き換えている。これは前々回、前回も同様である。これまでのあらすじ2023年6月2日に中居氏から性暴力を受けたAさんは心身に異常をきたし、間もなく都内の病院の消化器科に精神科併診で入院。7月末には自傷行為を起こして退院が延期となり、そこから精神科へ転科した。主治医から「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」の診断を受けた。その後、同年8月11日まではAさんの被害申告内容をフジテレビ社内で“公式”に知っていた人物は健康相談室のC医師、同相談室の心療内科医D医師、アナウンス室長E氏、アナウンス室部長で女性管理職のF氏、編成制作局長G氏、人事局長H氏。しかし、G氏がもはや自分だけで抱えきれないとして、8月12日に当時の編成制作局管掌で専務取締役の大多 亮氏に報告。そのまま同日中に当時の代表取締役社長・港 浩一氏にも大多氏経由で報告が上がった。ついに噂のB氏が登場ここで“公式”と書いたのは、実はこの時点でAさん経由以外にこのことを知っていた人物がいたことが報告書で明らかになっているからだ。その人物は、当時の編成総局編成局編成戦略センター室長兼編成部長のB氏と編成総局編成局編成戦略センター編成部企画戦略統括担当部長のJ氏である。この2人は2023年7月12~13日にかけて加害者である中居氏から報告を受けていたのである。奇しくも7月13日はフジテレビ内の公式報告でE氏から局長クラスであるG氏、H氏に報告が上がった日でもある。このB氏は、週刊文春の報道で当初、Aさんと中居氏が2人きりになるようセッティングしたと誤報された人物でもある。ちなみに7月12~13日以前、性暴力事件が発生した直後からAさんと中居氏の間でショートメッセージサービス(SMS)でのやり取りがあったことも同報告書から明らかになっている。7月13日の中居氏とB氏のSMSでのやり取り内容が同報告書には赤裸々に記述されている。中居氏「B。また、連絡があり、接触障害(ママ・摂食障害と思われる)と鬱で入院。やりたい仕事もできず、給料も減り、お金も無くあの日を悔やむばかりと。見たら削除して。どうしよか。」B氏  「なかなかですね、、私から無邪気なLINEしてみましょうか??」このやり取りで「なかなか」なのは、むしろB氏の無神経さである。B氏、J氏とも中居氏から報告を受けた際にこの件を「プライベートな案件」と捉えたらしいが、摂食障害・うつで入院しているAさんへの配慮はみじんも感じられない。第三者委員会ではデジタル・フォレンジック調査も行っていることは1回目に紹介したが、これにより個人利用を含む関係者のスマートフォンやPCなどのデータが復元されている。提出者の中に中居氏はいないが、Aさん、B氏などは含まれている。調査結果ではSMSデータ427件が意図的に削除された痕跡があり、うち76.1%に当たる325件は、B氏が中居氏らこの件の関係者とやり取りしたデータである。B氏のSMS削除時期は2025年1月9日~2月10日にかけてである。報告書では、2024年12月に今回の事件が相次いで週刊誌で報道されたことを受け、フジテレビ社内で記者会見や調査委員会設置の検討が開始されたのが1月8日。翌日には中居氏が公式にお詫びコメントを公表し、「示談が成立したことにより、今後の芸能活動も支障なく続けられることになりました」との文言が大炎上。1月17日にはフジテレビによるクローズドな会見が猛烈な批判を浴び、これを受けてフルオープンの10時間半におよぶ2回目の会見が1月27日に行われ、その3日前に第三者委員会の1回目の会合が開かれている。こうしたタイムラインから考えれば、B氏が大量のSMSを削除した理由を「B氏自身の関与の隠蔽」以外に見いだすことは無理筋である。また、昨今の第三者委員会の調査では、デジタル・フォレンジックが行われるのは半ば常識であり、隠ぺい工作としても極めて稚拙と言わざるを得ない。報告書では中居氏はB氏らに「Aの心身の回復のために助けてほしい」と依頼したと述べたと記載されているが、これも中居氏には申し訳ないが、率直に言って「大事になって自分が窮地に陥らないようAの回復を急ぎたい」と解釈できてしまう。というのも、報告書ではAさんが法的措置や弁護士を立てた示談を検討し始めた旨を伝えられた中居氏が「対立構造になることを懸念する」「弁護士費用がかかる」「あくまでも協力しあうことが大事」「体調改善が第一のため、第三者は会社の中で話ができる人をたてたほうが健全」などとご都合主義の論理を並べているからである。ちなみにAさんと中居氏とのSMSのやりとりは、同報告書で「本事案後も、中居氏からAさんに対してSMSがきていたため、Aさんは、これに対応することが『耐えられず心が壊れた』旨を述べている」との記載から推測するに、中居氏が起点と思われる。以下はAさんから中居氏にSMSで伝えた内容(一部は要旨)の時系列である。「こういうことがあると、正直気持ちがついていけない」(2023年6月6日)「(6月2日の件は)自分の意に沿わないこと。そのとき泣いていた、怖かった。6月2日に食べた食事の具材でフラッシュバックする」(同年6月14日)「6月2日のことでショックを受け、仕事を休む」(同年6月15日)「6月2日がきっかけとなって食べられなくなった」(同年7月11日)「摂食障害と鬱で入院し、目標にしていた仕事ができなくなり悔しい。長期入院によって給与が減り入院代が増えることが苦しい。産業医や病院の医師も(中居氏を)訴えるべきと言っている。ただ、訴えれば中居氏のダメージも大きく、自分も仕事が出来なくなるため穏便に済ませたいと考えている。他方で自分の収入では高額な医療費を賄えないため治療費・入院費の支払いをしてほしい」(同年7月11日の数日後)これだけを読むと、なかには治療費の支払いを求めるAさんの心理を測りかねる人もいるかもしれないが、前々回も言及したようにAさんはC医師、D医師、E氏、F氏らに当初「(中居氏との共演は)かまわない。負けたくない」と精一杯の抵抗を見せていることなどから考えれば、メンタルが不調の中でも気丈に振舞おうとしていたと解釈するのがもっとも妥当と考える。これに対する中居氏は、見舞金を支払う旨を伝えているが、そこでわざわざ「贈与や税金等の関係からその範囲内で行いたい」とまで伝えている点に個人的には非常な不快感を覚えた。また、第三者委員会のヒアリングに中居氏が「Aさんの病気や入院が本当に本事案によるものなのかわからなかった、仕事や家族関係によるものかもしれないと思っていた」と述べているのは、前述のAさんのSMSの内容からすれば言い逃れにしか聞こえない。結局、治療費などの支払いに関しては、中居氏が見舞金として支払うと申し出たのに対し、Aさんは「何がベストなのか専門家や病院の先生と相談するので時間がほしい」「世間一般でいうお見舞金とは訳が違う、弁護士など第三者を入れて確実で誠実なやりとりになるのでは」などと伝え、態度を留保していた。しかし、中居氏がB氏に100万円の運搬を依頼し、7月下旬にB氏が半ば押しかけでAさんの病院に届けたものの、病院が一旦見舞品の中身を確認する決まりとなっており、病院の判断で返却されている。なお、報告書によると、当時のAさんは病状が悪化しており、中居氏への対応が大きな負担となっていたため、主治医らから中居氏からの連絡を一切断つことが回復に必要であるとの見解が示された。ちなみにこの時期は前述のAさんが自傷行為を行った時期とも重なる。結局2023年8月1日、Aさんは中居氏に対して、治療に専念したいので、退院できる日が来るまでは連絡を差し控えさせていただきたいという内容のSMSを送信。以後、Aさんから中居氏に連絡していないが、中居氏は同年9月中旬頃までの1週間に1回の頻度でAさんに対して一方的に送り続けたという。「歴史にIfがあれば…」的になってしまうが、実は報告書を読むと、8月以降の中居氏による一方的なSMS送信は避けられたかもしれない“チャンス“はあった。Aさんから中居氏への最後のSMS送信の前日、AさんはF氏とのやり取りで「B氏が中居氏のパシリとしておそらく現金が入ったものを持ってきたが、受け取らなかった」と伝えているからだ。B氏の関与を見て見ぬふり当時のフジテレビ社内の公式ルートでB氏はAさんの事件の情報共有者には入っていなかったことをF氏らは認識していたはず。実際、このやり取りでF氏は「なぜB氏が?」といぶかしんだものの、B氏と中居氏は仲が良いからぐらいの認識で、あまり気に留めなかったという。B氏の件は同日中にF氏からE氏とG氏にもメールで報告されたが、両者とも無反応だったと報告書には記述されている。もちろん第257回、第258回で取り上げてきたフジテレビ社内の動きを見れば、その可能性は低いかもしれないが、一般論としても「なぜ?」と思った時は真剣に立ち止まる重要性を想起させる。ましてAさんは心身ともに状況が悪化していた時期であり、E氏、F氏、G氏がここで事実上スルーしてしまったことは、メンタルが悪化している人への対応としては悔やまれる点である。結局、B氏とJ氏が直接G氏に中居氏との事件について自分たちが知っていることを報告したのは同年9月頃。この際にB氏はAさんと中居氏に認識の違いがあることなどを説明したが、見舞金配達のことなどは「とくに必要だとは思わなかった」と考えてG氏に報告せず、G氏はB氏らに事実関係の確認を含め何も質問をせず、「口外するな」とだけ指示。その後、G氏は港氏と大多氏にB氏とJ氏からの話を報告している。前回触れたように、8月下旬には港氏によるこの事件に対する対応方針が決定されているが、その中の1つ「情報漏えいしないよう、情報共有範囲は、港社長、大多氏、G氏、E氏、F氏、C医師、D医師に限定する」に抵触する事態が起きながら、上層部はこの事態に何ら具体的な対応はとっていない。とりわけG氏の対応はここでも極めて場当たり的である。Aさんは2023年9月上旬に退院して自宅療養に移行し、10月からの復帰を目ざしたものの心身の症状と体調の波が続き、同年10月からの復帰は困難となった。2023年12月19日の退院後の初回産業医面談で、Aさんは「職場に戻った時のことを想像できない」「毎日中居氏を目にするため、どうなるか想像できない、見るたびに思い出すだろう」「社屋に掲示されている中居氏のポスターを毎日見て番組に行かなければならない、その人を見ないことが重要」などと話をしていたという。しかし、港氏の方針決定時の「Aさんの生命の安全と(心身の)ケアを最優先にして、本人の意向を汲んで対応していく」という方針があったにもかかわらず、彼女のこうした意向はまったく上層部に伝わっていない。そもそも前々回も触れたように港氏、大多氏、G氏らはこの時点でC医師らから直接事情を聞くことがなかったからである。2023年9月上旬に中居氏が司会を務めていた同年4月開始の「まつもtoなかい」の継続是非について港氏、大多氏、G氏で協議が行われた。この時点では7月に10月番組改編に関する広告会社向けの説明会が終了していたことから、急な改編は関係者からの憶測を呼ぶだけでなく、Aさんを刺激してしまうのではないかとの理由から、中居氏の出演継続が決定している。まあ、この点は百歩譲っても、この3氏の理屈も一理ないとは言えない。しかし、報告書ではこの中居氏の出演継続の是非を検討する際に、中居氏本人からのヒアリングやAさんの意思確認を行わなかったこと、その是非すら検討されなかったことを批判的に捉えている。また、2024年4月改編に向けた広告会社向けの説明会開催直前の2023年12月にも「まつもtoなかい」を終了させるか否かの協議が前述の3氏で行われたが、この時も2023年9月の時と同様の理由で見送られている。しかもこの時は同時期に「まつも to なかい」で中居氏の相方の司会を務めるダウンタウンの松本 人志氏がやはり週刊文春が報じたトラブルで2024年1月に活動休止に追い込まれたにもかかわらず、番組名を変えるだけで中居氏を起用し続けた。最終的に中居氏の件も週刊文春が追い打ちをかけたのだが、こうしてみるとフジテレビは週刊誌報道で事態が明るみに出ないと何もしないと言われても仕方ない。ちなみにAさんと中居氏は、Aさんの代理人弁護士が中居氏に内容証明を送付したことから示談協議が始まったが、この際に中居氏の代理人弁護士K氏は、フジテレビが月額法律相談料を支払っており、Aさんも共演したことがある人物である。しかも、中居氏に仲介したのは前述のB氏である。Aさんは第三者委員会のヒアリングで「バラエティ部門、K弁護士及び中居氏が一体として感じられ、不快であった」旨を述べている。この示談は2024年1月に成立している。前述の退院後の産業医面談は月1回行われていたが、2024年4月の面談でAさんは「中居氏がフジテレビの番組に出演し続けており、社屋内に中居氏のポスターが貼ってあるため、復職はできるのだろうか」と訴えている。しかし、この訴えが上層部に拾い上げられることはなく、港氏が決定したAさんの意向尊重という方針は、ほぼ建前のままだった。結局、2024年7月にAさんは退職の表明、同月末に産業医同席でG氏も加わった面談で、G氏からの慰留提案を蹴ってAさんの退職は決定した。ちなみにこの場でもAさんは「中居氏の番組出演が継続しているのに自分は出られないこと、普通は(中居氏のことを)見なくて済むはずなのに。示談をしたのは中居氏との関係を終わらせたかったからである。区切りをつけたい、他局に入社していたらどんな未来があったか」といった話をしたが、G氏はこれに対し無言だったという。管理職のレベルが会社イメージに直結ここまでが概要である。しかし、港氏、大多氏もかなり呑気なのはもちろん、再三やり玉に挙げて申し訳ないが、このG氏の場当たりさは呆れを通り越すレベルである。もっともこれは単にフジテレビのG氏の問題だけではない。G氏のように自分の失点を防ぐために、場当たりで何も決断しない管理職は、どこの企業でもいそうな存在である。同時にAさんの事例はある種、異例のことのように思っている人もいるだろうが、社内外の人間関係のトラブルなどで社員が心身に不調をきたす事例は決して稀なことではないはずだ。つまるところ今回のフジテレビの問題の根っこを辿ると、他人事である企業なぞほぼ皆無だろう。結局、職場でのメンタルヘルスの重要性は叫ばれてはいるが、それを血肉に変えるかどうかは、各企業の方針とそれに基づく管理職教育とその徹底次第とも言える。その意味で今回の第三者委員会報告書は、管理職と呼ばれる人すべての“必読書”と考えている。一見すると医療に関係ないと思った人は多いかもしれないが、私が3回にわたって言いたかったのはそこに尽きる。

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