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英国における受胎後1,000日間(胎児~2歳)にわたる砂糖配給制への曝露は、成人期の心血管リスク低下および心機能指標のわずかな改善と関連しており、胎児期~生後早期の砂糖摂取制限が心血管への長期的な有益性をもたらす可能性があることが、中国・香港科技大学のJiazhen Zheng氏らによる自然実験研究で示された。受胎後1,000日間は、栄養が生涯にわたる心代謝リスクを形成する重要な時期であるが、多くの乳幼児は母体の食事、人工乳、離乳食を通じて添加糖類を過剰に摂取している。胎児期~生後早期の砂糖摂取制限の成人期の心血管リスクに対する影響について、エビデンスは限られており間接的なものであった。BMJ誌2025年10月22日号掲載の報告。UK Biobankの約6万3,000人について、砂糖配給制への曝露の有無で解析 研究グループは、UK Biobank(2006~10年に40~70歳の一般住民を募集)の参加者のうち、1951年10月~1956年3月生まれの6万3,433人(心血管疾患・心不全・心房細動の既往、多胎妊娠、養子縁組、英国外出生者を除く)のデータを解析した。1953年の砂糖配給制終了時点における出生日に基づくと、砂糖配給制を受けた(砂糖配給)群は4万63人、受けなかった(非配給)群は2万3,370人であった。さらに砂糖配給群を砂糖配給制への曝露期間に基づいて分類し、主要解析では「子宮内のみ」と「子宮内+1~2年」に分けた。 主要アウトカムは、心血管疾患、心筋梗塞、心不全、心房細動、脳卒中および心血管疾患死で、リンクされた各種登録、医療記録を用いて特定した。砂糖配給制と主要アウトカムとの関連について、人口統計学的・社会経済的要因、生活習慣、親の健康状態、遺伝的要因および地理的要因を調整したCox回帰モデルおよびパラメトリックハザードモデルを用いてハザード比(HR)を推定した。砂糖配給制への曝露期間が長いほど、成人期の心血管リスクが低下 砂糖配給制への曝露期間が長いほど、成人期の心血管リスクは漸減した。非配給群と比較し子宮内+1~2年曝露群ではHRが、心血管疾患は0.80(95%信頼区間[CI]:0.73~0.90)、心筋梗塞は0.75(95%CI:0.63~0.90)、心不全は0.74(0.59~0.95)、心房細動は0.76(0.66~0.92)、脳卒中は0.69(0.53~0.89)、心血管疾患死は0.73(0.54~0.98)であった。 糖尿病および高血圧の新規発症は、砂糖配給制が心血管疾患に及ぼす影響のそれぞれ23.9%と19.9%を占め、両者を合わせた場合の影響は31.1%を占めると見なされたのに対し、出生体重の影響はわずか2.2%であった。 さらに、砂糖配給制への曝露は、左室1回拍出量係数(0.73mL/m2、95%CI:0.05~1.41)および駆出率(0.84%、95%CI:0.40~1.28)の軽度上昇とも関連していた。