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認知症リスクが上昇するコーヒー摂取量は?

 認知症は神経変性疾患であり、環境因子や食習慣を含む生活習慣因子が重要な病因として関与していると考えられる。とくに、コーヒーや紅茶の摂取が認知症の予防効果とリスク因子の両方を示していることから、その影響については依然として議論が続いている。イタリア・University of Modena and Reggio EmiliaのElena Mazzoleni氏らは、コーヒーおよび紅茶の摂取と認知症リスクの用量反応関係を評価するため、メタ解析を実施した。Journal of Epidemiology and Population Health誌2026年2月号の報告。 2025年12月9日までに公表された研究をPubMed、EMBASEよりシステマティックに検索した。対象者の選定基準は、慢性疾患がなく、認知症の既往歴がない集団を対象にコーヒーまたは紅茶の摂取量および認知症発症リスクを評価したコホート研究またはコホート・ネストテッド・ケース・コントロール研究とした。研究の質の評価にはROBINS-Eツールを用いた。コーヒーと紅茶の摂取量増加と認知症の関係について、非線形用量反応モデルを作成した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には10件の研究を含めた。ベースライン時点で45万人超が参加し、平均フォローアップ期間は11.5年であった。・紅茶の摂取量の増加に伴い、すべての原因による認知症リスクは漸進的かつ直線的に減少することが明らかとなった。これは、すべての種類の紅茶と緑茶のみの場合でも同様の結果であった。・コーヒーはU字型の関係を示し、1日2~3杯(約300~450mL/日)でリスクが最も低かった。・アルツハイマー型認知症との関連では、1日3杯までのコーヒー摂取はリスクに差がみられなかったが、それ以上の量になるとリスクの増加が認められた。 著者らは「本研究では、適度なコーヒー摂取は認知症リスクに影響を及ぼさないが、1日3杯以上のコーヒー摂取は、すべての原因による認知症およびアルツハイマー型認知症のリスクを上昇させる可能性が示唆された。一方、紅茶の摂取はすべての原因による認知症リスクを直線的に低下させるようである。しかし、アルツハイマー型認知症については、1日1杯超の摂取ではリスクのさらなる低下は認められなかった」と結論付けている。

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乳がん術後放射線療法におけるリンパ浮腫、3週間照射vs.5週間照射/Lancet

 早期乳がんの術後放射線療法について、3週間照射(総線量40Gyを15回に分割して照射:寡分割照射)は5週間照射(総線量50Gyを25回に分割して照射:通常分割照射)に対して、腕のリンパ浮腫リスクに関して非劣性であり、その他の晩期正常組織への影響に関する安全性は同等であることが、フランス・Institut Gustave RoussyのSofia Rivera氏らHypoG-01 trialistsによる「UNICANCER HypoG-01 試験」の、5年追跡時点の結果で示された。3週間で行う寡分割照射は全乳房放射線療法の標準となっているが、多くの国では、リンパ節照射を必要とする場合はリンパ浮腫などの合併症リスクや有効性への懸念から依然として5週間で行う通常分割照射が標準となっている。UNICANCER HypoG-01試験では、3週間照射と5週間照射を比較し、リンパ浮腫の発症率および有効性を評価した。Lancet誌2026年3月7日号掲載の報告。同側腕リンパ浮腫の発症を評価 UNICANCER HypoG-01 試験は、フランスの29医療施設で行われた第III相の多施設共同非盲検無作為化非劣性試験。18歳以上の女性、浸潤乳がん(T1~3、N0~3、M0)で原発腫瘍の完全切除(顕微鏡的)後にリンパ節照射を要する患者を対象とした。 被験者は、局所リンパ節および胸壁または乳房への放射線療法を3週間で行う群(試験群:3週間照射群)または5週間で行う群(対照群:5週間照射群)のいずれかに、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は同側腕リンパ浮腫の発症で、ベースラインおよび対側腕と比較し、同側肘頭から近位15cm、遠位10cm、またはその両方における腕囲が10%以上増加した状態と定義した。ハザード比(HR)を算出して評価した(非劣性マージンは1.545)。リンパ浮腫の3年累積発症率は3週間照射群23.4%、5週間照射群22.2% 2016年9月26日~2020年3月27日に1,265例が登録され、1,221例がper-protocol解析(3週間照射群614例、5週間照射群607例)に包含された(追跡期間中央値4.8年[四分位範囲[IQR]:4.01~5.02])。被験者の年齢中央値は58歳(IQR:49~68)。 腕リンパ浮腫は、275例(25%)で発症が報告された(3週間照射群143例、5週間照射群132例)。3週間照射群は5週間照射群に対して、腕リンパ浮腫のリスクに関して非劣性であることが示された(HR:1.02、95%信頼区間[CI]:0.79~1.31、非劣性のp<0.001)。3年累積発症率はそれぞれ23.4%(95%CI:19.7~27.6)、22.2%(19.5~26.3)であった。また、5年累積発症率は33.3%(95%CI:28.7~38.4)、32.8%(27.9~38.1)と推定された。 安全性プロファイルは両群で類似していた。Grade3以上の有害事象の発現頻度は3週間照射群8%、5週間照射群13%であった。なお、フランス当局の規制により、人種・民族に関するデータは集計されていない。 著者は、「われわれの知見は、臨床標準を3週間照射群へ移行することを支持するものである」と述べている。

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急性静脈血栓塞栓症の出血リスク、アピキサバンvs.リバーロキサバン/NEJM

 急性静脈血栓塞栓症の患者において、3ヵ月の治療期間における臨床的に重要な出血リスクは、アピキサバン投与群がリバーロキサバン投与群よりも有意に低下したことが、カナダ・オタワ大学のLana A. Castellucci氏らCOBRRA Trial Investigatorsによる検討で示された。アピキサバンおよびリバーロキサバンは、急性静脈血栓塞栓症の治療でよく用いられる経口抗凝固薬であるが、両薬の出血リスクの差については不明なままであった。NEJM誌2026年3月12日号掲載の報告。3ヵ月の投与中に発生した臨床的に重要な出血を評価 研究グループは、急性静脈血栓塞栓症の患者におけるアピキサバンとリバーロキサバンを比較するプラグマティックな多国間共同(カナダ、オーストラリア、アイルランドが参加)前向き無作為化非盲検エンドポイント盲検化試験を行った。 急性症候性肺塞栓症または近位深部静脈血栓症を有する患者を適格とし、アピキサバン群(10mgを1日2回7日間投与し、その後は5mgを1日2回投与)またはリバーロキサバン群(15mgを1日2回21日間投与し、その後は20mgを1日1回投与)に1対1の割合で無作為に割り付け、3ヵ月間投与した。 主要アウトカムは、3ヵ月の試験期間中に発生した臨床的に重要な出血で、大出血または臨床的に重要な非大出血の複合とした(出血の定義はInternational Society on Thrombosis and Haemostasisによる)。 副次アウトカムは、全死因死亡などであった。アピキサバン群、相対リスク0.46で有意に低下 2017年12月13日~2025年1月23日に3ヵ国の32施設で2,760例が無作為化された(アピキサバン群1,370例、リバーロキサバン群1,390例)。ITT集団はアピキサバン群1,345例、リバーロキサバン群1,355例であった。ベースラインの両群の特性は均衡が取れており、全体の平均年齢は58.3歳、女性が1,175例(43.5%)。多くの患者(2,087例、77.3%)が誘因のない静脈血栓塞栓症であった。 ITT解析において、主要アウトカムのイベント発生は、アピキサバン群44/1,345例(3.3%)、リバーロキサバン群96/1,355例(7.1%)であった(相対リスク[RR]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.33~0.65、p<0.001)。 全死因死亡は、アピキサバン群1/1,345例(0.1%)、リバーロキサバン群4/1,355例(0.3%)で報告された(RR:0.25、95%CI:0.03~2.26)。 出血または静脈血栓塞栓症に関連しない重篤な有害事象は、アピキサバン群36/1,345例(2.7%)、リバーロキサバン群30/1,355例(2.2%)で報告された。

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古代中国発祥の八段錦、速歩プログラムと同程度の降圧効果

 古代中国発祥の心身の健康法である八段錦に、薬物療法や速歩プログラムに匹敵する降圧効果があることを示唆する臨床試験の結果が報告された。八段錦は構造化されたゆっくりとした動きと深い呼吸、瞑想を組み合わせた8つの動作で構成された健康法で、多くの人々に親しまれている。この結果を報告した心血管疾病国家重点実験室(中国)予防医学部門長のJing Li氏らによると、八段錦を続けた人では、収縮期血圧(SBP)が平均約3〜5mmHg低下し、その効果は速歩プログラムの実施と同程度であったという。この研究の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に2月18日掲載された。 研究グループによると、八段錦は、気功の中でも最も一般的に実践されている形式の一つで、その動きは太極拳に似ている。通常の一連の動作は10〜15分ほどで終わり、特別な器具は必要なく、最初に最小限の指導を受けるだけで実践できる。Li氏は、「その簡便さ、安全性、そして長期にわたる継続のしやすさを考えると、血圧を低下させようとしている人にとって八段錦は効果的で利用しやすく、大規模に適用可能な生活習慣介入法になり得る」とニュースリリースの中で述べている。 Li氏らは今回、40歳以上の高血圧患者216人(平均年齢57.3歳、女性64.8%)を試験に登録し、52週間にわたり3種類の介入群のいずれかにランダムに割り付けた。3種類の介入法とは、1)約15分間の八段錦を1日2回、週に少なくとも5日実施する群(108人)、2)1日30分の速歩を週に少なくとも5日実施する群(54人)、3)中強度の運動を週150分以上行うことを目標に、各自で好きな身体活動を実施する群(54人)であった。 その結果、八段錦群では24時間自由行動下血圧測定によるSBP値が12週目で3.1mmHg(95%信頼区間−5.9〜−0.2、P=0.036)、52週目で3.3mmHg(同−6.3〜−0.3、P=0.031)低下し、診察室で測定したSBP値が約5mmHg低下したことが明らかになった。52週目でのSBPの低下幅に、八段錦群と速歩群の間で統計学的に有意な差は認められなかった(−0.7mmHg、95%信頼区間−3.9〜2.6、P=0.683)。Li氏らによると、この結果は、一部の第一選択降圧薬に期待できる効果とも同程度であるという。 この臨床試験には関与していない米イェール大学医学部教授でJACCエディターのHarlan Krumholz氏は、「八段錦の降圧効果は、降圧薬のランドマーク試験で確認されている効果量と同程度であるが、薬を使わず、費用もかからず、副作用も伴わずにそれが達成された」とニュースリリースの中でコメントしている。 なお、自主的な運動を行った群での血圧値の改善はわずかであり、同群と比べて八段錦がもたらした結果の方が優れていた。Krumholz氏は、「八段錦は、中国で800年以上にわたって実践されてきた。今回の臨床試験では、古くから伝わる身近で低コストのアプローチが、質の高いランダム化比較試験によっていかに実証可能であるかを示している」と述べている。

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新たな予測モデルでアルコール関連の肝障害をスクリーニング

 脂肪性肝疾患(steatotic liver disease;SLD)に過度の飲酒が関与しているのかどうかを、既存の検査項目を基に特定できる可能性のあることが明らかになった。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のRohit Loomba氏らが新たに開発したこの予測モデルは、性別や平均赤血球容積(MCV)などの既存の情報を基に、患者の肝疾患がアルコールの影響を受けている可能性を推定できるという。この研究の詳細は、「Gastroenterology」に2月25日掲載された。 世界中で3人に1人の成人がSLDに罹患しており、特に、肥満を背景とする発症例が増加傾向にある。SLDは、肝細胞に中性脂肪が蓄積した状態のことで、生活習慣に関連した代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)や、飲酒に関連した代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)、アルコール関連肝疾患(ALD)などが含まれる。飲酒はSLDを悪化させる可能性があるものの、研究グループによると、患者は医師との面談で飲酒量を実際より少なく申告することが多く、アルコールが肝障害に関与しているのかどうかを判断することは難しいという。また、患者が過度の飲酒をしているかどうかは、血液中のPEth(ホスファチジルエタノール)を測定することで判断できるものの、この検査は高額である上に、検査を実施している医療機関も限られている。 そこでLoomba氏らは今回、肥満または過体重のSLD患者503人(平均年齢51歳、平均BMI 32.9)を対象に、一般的な検査指標を基にALDやMetALDをスクリーニングする、新たな予測モデルの構築を試みた。全ての患者が、肝臓の硬さや脂肪率を測定するMRI/MRE検査とPEth検査を受けた。 その結果、最良の予測モデルは、性別、MCV、γ-GTP、HDL-コレステロール(HDL-C)、HbA1cの5つの標準的な指標を組み合わせたものであることが判明した。このモデルのROC曲線下面積(AUROC)は、開発コホートで0.76、検証コホートで0.75であった。AUROCは1.0で完全な予測性能を意味する。 こうした結果を受けてLoomba氏は、「このモデルは、隠れているMetALDやALDを見つけ出すための簡便で利用しやすい方法を臨床医に提供する。肝疾患の分類をより正確にすることは、患者が長期にわたりより良い健康状態を維持する助けになる」と話している。 また、論文の筆頭著者であるUCSDのFederica Tavaglione氏は、「われわれの目標は、実用的なモデルを作ることだった。このモデルは、すでに標準診療の一部である検査値を用いるため、医療現場に追加の費用や複雑さをもたらすことなく、すぐに導入できる」と述べている。

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日本の健康アウトカムに地域差、「へき地度」で示された疾患別死亡率との関連

 日本では地域によって医療資源や人口構成が異なり、健康アウトカムの差が指摘されている。今回、こうした地域特性を定量的に評価する指標「へき地度(Rurality Index for Japan:RIJ)」を用いた全国規模の研究で、RIJが高い地域ほど脳血管疾患の死亡率や男性の自死率が高い傾向が示された。研究は、横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻の金子惇氏、山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座の池田登顕氏によるもので、詳細は1月26日付で「BMJ Open」に掲載された。 世界的に都市と地方では健康状態や医療アクセスの格差が報告されているが、日本では「へき地性(rurality)」の定義や評価方法が研究ごとに異なり、統一指標による検討は十分に行われていなかった。離島や過疎地域、無医地区など医療アクセスに課題を抱える地域も存在する中、客観的な指標を用いた全国的評価の必要性が指摘されてきた。そこで本研究は、日本の医療におけるへき地尺度(RIJ)を用い、主要5疾患における地域差を評価するとともに、へき地性と高齢化率や社会経済状況との関連を検討した。 研究は、生態学的研究デザインを用い、日本の自治体および政令指定都市の行政区を対象に実施された。人口が0人の地域を除く1,897自治体・行政区、総人口約1億2,600万人を解析対象とした。地域のへき地度はRIJを用いて評価し、RIJスコアは分布に基づいて四分位(Q1〜Q4)に分類した。急性心筋梗塞(AMI)、脳血管疾患(脳卒中・脳出血)、がん、自死について標準化死亡比(SMR)を算出し、死亡データが利用できない糖尿病については外来診療の標準化受療比(SCR)を代替指標として用いた。 解析対象となった1,897の自治体・行政区の解析から、RIJが高い地域ほど、脳血管疾患および男性自死のSMRが高いことが示された。いずれもRIJの上昇に伴い段階的に増加する傾向(用量反応関係)が認められた。 男性の脳卒中・脳出血のSMRは、最もRIJが低い地域(Q1)を基準とすると、RIJのSMRに対する回帰係数がQ2で11.5、Q3で12.7、Q4で18.4と増加し、女性でも同様の傾向がみられた。また男性の自死のSMRでも同様に、Q2で8.7、Q3で12.9、Q4で14.1と、RIJが高いほど回帰係数が上昇した。 AMIでは、RIJが高い地域でSMRが高い傾向がみられたが、明確な段階的増加は確認されなかった。一方、がん死亡率および糖尿病外来受療のSCRについては、RIJとの有意な関連は認められなかった。 さらに、RIJは地域の高齢化率および地理的剥奪指標(ADI)と正の相関を示し、RIJが高いほど高齢者割合や社会経済的困難を抱える傾向が示された(Spearmanの相関係数はそれぞれ0.67、0.55)。これらの結果は、へき地度の高い地域では医療アクセスや社会的支援の面で課題が集中していることを示唆している。 著者らは、「これらの結果は、救急医療へのアクセス改善およびメンタルヘルス支援の強化を含む、へき地度の高い地域に焦点を当てた医療政策の重要性を示している」と述べている。 なお、本研究では自治体単位の解析で個人レベルの因果関係は示せない点や、人口2000人未満の地域が含まれておらず、最もへき地度の高い地域における格差を過小評価した可能性がある点などが限界として挙げられる。またSCRは受療行動や患者移動の影響を受けるため、医療ニーズを直接反映していない可能性もある。 地域差を単なる都市・地方の二分法ではなく、連続的な「へき地度」として捉えた点は、今後の地域医療政策や研究のあり方にも示唆を与える結果といえそうだ。

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ベジタリアン家庭の幼児の成長が阻害される可能性は低い

 菜食主義(ベジタリアン)の家庭に生まれた子どもに、発育上の問題が現れる可能性は高くないことが報告された。出生体重は非菜食主義(雑食)の家庭の新生児よりも低く有意差が認められるものの、2歳時点での体重の差は有意ではなくなるという。ネゲヴ・ベン・グリオン大学(イスラエル)のKerem Avital氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に2月5日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「われわれの研究結果は、適切な環境であれば、植物性食品中心の食事は乳児の発育を損なわないことを示している」と述べている。 この研究の背景として著者らは論文の中で、植物性食品を重視する食生活は西側諸国で一般的になりつつあり、心臓病やその他の健康リスクの低下と関連付けられていると指摘。しかし、その一方で、特にビタミンB12、鉄分、ヨウ素、ビタミンD、カルシウム、長鎖オメガ3脂肪酸に関しては、妊娠中や乳幼児期に十分な量を摂取できているのかという懸念が依然として指摘されている。 研究には、イスラエルの子どもの約70%の発育状況が記録されている同国保健省の追跡データのうち、2014~2023年の記録が用いられた。在胎32週以降に出生した単胎児119万8,816人(平均在胎期間39.2±1.5週、男児53.2%)を解析対象とした。なお、重度の先天性疾患を有する子どもや極低出生体重児は対象から除外されている。 全体として98.5%の乳幼児は雑食の家庭で育てられ、1.2%はベジタリアンの家庭、0.3%はビーガン(完全菜食主義)の家庭で育てられていた。解析の結果、食事スタイルにかかわらず、どの家庭の子どもの成長パターンも類似したものだった。 具体的には、出生体重については雑食家庭の新生児が3.3±0.5kgであるのに対して、ベジタリアンやビーガン家庭の新生児はいずれも3.2±0.5kgであり有意に低かった。また生後60日時点で低体重であることの調整オッズ比(aOR)は、雑食家庭を基準としてベジタリアン家庭では1.21(95%信頼区間1.11~1.32)、ビーガン家庭では1.37(同1.15~1.63)だった。 しかし、この差は時間とともに縮小し、2歳時点での発育不全の割合は、雑食3.1%、ベジタリアン3.4%、ビーガン3.9%であり、有意差はなかった。また2歳時点では、低体重や過体重の有意差も認められなかった(低体重のaORはベジタリアンが0.80〔0.55~1.15〕、ビーガンは1.06〔0.50~2.23〕、過体重は同順に1.01〔0.86~1.18〕、0.91〔0.61~1.35〕)。 著者らは、「これらの研究結果はビーガン食であっても乳児の成長を阻害しないことを示唆している。しかし、妊娠中の母親や乳児期の子どもの栄養に関する指導が、子どもたちの発育をどのようにサポートし得るかを明らかにするために、さらなる研究が必要とされる」と結論付けている。

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腹腔で生きたウナギが暴れていた1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第302回

腹腔で生きたウナギが暴れていた1例いくらなんでもウソやろ、と思うような医学論文がありました。ウソじゃないみたいです。Mokbul MI, et al. Not your typical abdominal pain: Case report of a fisherman presenting to thetrauma & emergency surgery department with intestinal perforation due to an eel fish. Int J SurgCase Rep. 2024 Nov:124:110401.55歳のベテラン漁師の男性が、のたうち回るような腹痛を訴えて救急外来に駆け込んできました。当初は言いづらそうにしていた彼ですが、意を決して語った原因はあまりにも衝撃的なものでした。なんと、漁の最中に生きたウナギがズボンの中に侵入し、そのまま肛門へと潜り込んでしまったというのです!!!いやああああ!!!「そのうちウナギも勝手に外へ出てくるだろう」と楽観視して丸一日放置してしまったのが運の尽きでした。ウナギは持ち前の生命力と突破力を発揮し、あろうことか直腸を突き抜け、S状結腸に約5cmもの穴を開けてお腹の中(腹腔内)へと大脱走を図っていたのです。オゲエエ。緊急手術で腹部を切り開くと、そこには糞便にまみれた腹膜炎の惨状が広がっていました。しかし、本当の驚きはここからです。腹腔から姿を現したのは、体長約65cmにも及ぶ、ピチピチと跳ね回る「生きたウナギ」そのものでした。いやー、さすがにこれは想像したくない。このウナギは、人間の体内で呼吸を続けるために腸壁を突き破ったのではないかと推測されています。そりゃしんどいですもんね。幸いなことに経過はきわめて順調で、男性は術後4日で元気に退院していきました。医学文献史上、生きたウナギによる腸穿孔は2004年の香港での報告以来、世界で2例目という超レアケースだそうです。…っていうか、過去に1例あったんだ…。

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第305回 約40年ぶりに労働基準法改正へ、日本でも“ある権利”が導入か?

INDEX水面下で進行していた法改正改正案に盛り込まれる予定の制度・権利とは企業でも導入が進まない対策フランスで2017年に導入、従業員を守る権利水面下で進行していた法改正2026年診療報酬改定は、2024年末に公表された「新たな地域医療構想のあり方検討会」のとりまとめ内容をかなり強力に推進した形になったのは、大方の関係者が認識していることだろう。これまでの2025年に向けた地域医療構想は、団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者入りすることを前提に病床単位での機能分化と在宅医療の充実と医療・介護連携を意識した内容だった。しかし、前出のとりまとめは、少子高齢化による生産年齢人口の減少の深刻化と85歳以上の高齢者の増加が顕著になる2040年頃を念頭に、地域ごとに病院機能に着目した再編を目指している。また、新たな地域医療構想のもう1つの特徴は、生産年齢人口の減少に伴い減少が予想されている医療者確保とそれを補完する医療DX推進を強く打ち出している点だ。かつてと違い、昨今の若年層の医療者は使命感だけで業務をしてくれないのは、おそらく医療関係者の多くが痛いほど感じているだろう。このことは診療報酬でわざわざベースアップ評価料を創設しなければならなくなったことからも半ば明らかと言える。さらに業種を問わず、職場環境整備などの働き方改革が進んでいることは、もはや周知のことであり、医療者も無縁ではいられない。2024年にスタートした医師の働き方改革に伴う医療法改正では、医師の時間外労働について医療機関の区分に応じて上限が定められ、医療法施行規則では日勤・宿日直許可のある当直では9時間(宿日直許可のない当直では18時間)の勤務間インターバル制が努力義務として例示された。こうした規制強化への対応に現場は四苦八苦していると思うが、実はよりいっそうの働き方改革が水面下で進行中であることは意外と知られていないようだ。それが2025年1月から厚生労働省の労働政策審議会で議論されてきた約40年ぶりの労働基準法改正である。改正案に盛り込まれる予定の制度・権利とは当初の予定では、改正法案は今年1月の通常国会に提出され、2026年中に成立・施行される予定だったが、自民党総裁に選出された際に「働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」の名言を発した高市 早苗氏が2025年10月に首相に就任し、裁量労働制の適用拡大など労働時間規制の緩和に向けた検討を指示したことで、国会への提出は見送られている。実はこの改正案に盛り込まれると見込まれていたのが「勤務間インターバル制度」の義務化と「つながらない権利」の明文化である。老婆心ながら「勤務間インターバル制度」を改めて説明すると、「終業時刻」から「次の始業時刻」までの間に、一定時間以上の「休息時間(インターバル)」を設ける仕組みだ。前出の医師の働き方改革では、9時間と定められたが、国際標準のインターバル時間は11時間である。11時間の場合、たとえば夜の22時に業務が終了した労働者は、翌朝の9時までは次の業務を開始してはいけないことになる。この制度の起源は、1993年に欧州連合(EU)で採択された「EU労働時間指令」にある。同指令では、労働者の健康と安全を守るため、長時間労働や休息不足の防止を目的にEU加盟国に対し、「24時間につき最低連続11時間の休息(勤務間インターバル)」の確保を義務付けた。11時間の根拠は「24時間-法定労働時間8時間-休憩1時間=15時間」の中から、通勤や睡眠、私生活の時間を逆算して導き出された数字と言われている。これを受けて、ヨーロッパ各国は1990年代後半から2000年代にかけて次々と国内法を整備した。具体例としては1994年に施行したドイツの「労働時間法」、1998年に成立したフランスの「労働時間短縮指導・奨励法(第一次法)*」などだ(表)。ちなみにドイツでは、病院勤務医師の場合、雇用主との協定締結により10時間への短縮は認められている。*通称・オブリー第1法:オブリーは当時のフランスの雇用・連帯大臣を務めたマルティーヌ・オブリー氏が語源(表)日本と欧州における労働時間・勤務間インターバルの法整備画像を拡大するこのことを踏まえ日本でも導入に向けた議論が進められ、2019年4月施行の働き方改革関連法、具体的には「労働時間等設定改善法」がすべての事業主への努力義務として初めて同制度を明記した。現時点ではあくまで努力義務にとどまるため罰則はなく、厚生労働省は過労死防止や健康確保の観点から、導入を推奨している。企業でも導入が進まない対策また、「過労死等防止対策推進法」に基づいて3年ごとに変更されている「過労死等の防止のための対策に関する大綱」では、2021年に閣議決定された2回目の変更で、2025年までに同制度を知らなかった企業割合を5%未満、導入している企業割合を15%以上とする数値目標を盛り込んだ。しかし、同省の2025年就労条件総合調査の結果では、導入している企業はわずか6.9%にとどまり、導入予定がなく検討もしていない企業が78.7%となり、大綱で示した数値目標は未達に終わっている。同調査では導入予定も検討もしていない企業に理由(複数選択回答)を尋ねたところ、上位3つは以下のようになった。「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」(57.3%)「当該制度を知らなかったため」(19.9%)「人員不足や仕事量が多いことから、当該制度を導入すると業務に支障が生じるため」(9.7%)おそらく医療者の場合、3番手の理由には納得するだろうが、トップの理由については「マジか」というのが本音だろう。そもそも前出の医師の勤務間インターバル制度の努力義務とて宿直を業務時間としない扱いで何とかクリアしているかどうかが実態ではないだろうか?ちなみに看護職員を対象とした日本医療労働組合連合会の「2025年度夜勤実態調査」(回収数:324施設、2,472職場、看護職員9万153人)によると、勤務間インターバル協定が「有」(19.9%)、勤務間インターバルが「8時間未満」(39.1%)というのが実態だ。フランスで2017年に導入、従業員を守る権利一方の「つながらない権利」は勤務時間外・休日の業務連絡対応拒否とそれによる業務上の不利益を受けないことを保証する権利である。同権利は2017年1月に施行されたフランスの改正労働法(通称:エル・コムリ法)で初めて定められた。発端は医薬品・医療機器メーカー世界大手のジョンソン&ジョンソン(以下、J&J)のフランス法人の対応。当時のJ&Jフランス法人では、デジタル技術の普及で帰宅後や休日に上司・顧客からメールが届くことを強いられる社員のストレス増大と燃え尽き症候群が経営上のリスクと認識され、2015年7月から「22時〜8時のメール禁止」「緊急時の定義の明確化」「マネジメント層の意識改革の研修」という独自の社内規定を導入した。これを好事例と捉えた当時のミリアム・エル・コムリ労働相が旗振り役となって法令で明記された。同法では、(1)従業員50人以上の事業者でデジタル機器使用ルールの労使間協議の実施、(2)連絡を控えるケースなどのガイドライン作成、を義務付けている。(1)については、労働組合がない事業者の場合、従業員の意見を聞きながら雇用主が独自の憲章などを定める。要は各事業者に判断を委ねているため罰則規定はないが、労使間協議で決められた同権利を守るためのルールや憲章は、官報に加え、各事業者のホームページなどにも掲載されるという徹底ぶりだ。該当する従業員50人以上の事業所でガイドライン作成をしていない場合は行政指導が行われる。ちなみにフランスの場合、医療従事者も含め同権利の保障対象である。そもそも、個人主義が古くから根付いているといわれるフランスでは、エル・コムリ法成立以前に日本の最高裁判所に当たる破棄院(破毀院)が、オンコール担当外の医師や勤務時間外の救急車運転手が電話を受けずに処分されたことを法的に無効と判断している。このように海外の事例について触れると、「それはあくまで海外の事例」との声も聞こえてきそうだ。だが、この時期にあえてこのことを取り上げるのは、微細に区分されたベースアップ評価料の取得区分だけに注力していると、この先、思わぬ方向からの巨大な落石による“被害”に遭いかねないからである。

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日本の心房細動患者、1年後の死亡・脳卒中・血栓塞栓症の発生率は?

 日本の心房細動患者は、経口抗凝固薬の使用率が81%と高く、1年後の全死亡率は0.1%と低く、脳卒中/血栓塞栓症の発生率も0.1%と低いことが、APHRS-AFレジストリ(Asia-Pacific Heart Rhythm Society Atrial Fibrillation Registry)の日本人における1年時の解析で示された。日本医科大学の淀川 顕司氏らがJournal of Arrhythmia誌2026年2月8日号で発表した。 APHRS-AFレジストリはアジアの大都市圏における前向き研究で、心房細動患者のベースライン特性、治療、臨床アウトカムについて重要な情報を提供する。今回、本レジストリに登録された日本人患者の1年間の追跡調査データを解析した。 主な結果は以下のとおり。・登録された4,666例のうち、794例が2015~17年に日本の主な循環器センター28施設から登録された。平均年齢は65.7歳、男性が69.0%で、主な併存疾患は高血圧(37.5%)、脂質異常症(29.0%)、心不全(15.9%)、糖尿病(15.0%)であった。平均CHADS2スコアは1.0、CHA2DS2-VAScスコアは2.0、HAS-BLEDスコアは1.1であった。・登録時の経口抗凝固薬の使用率は81%で、そのうち7%がビタミンK拮抗薬、74%が直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を処方されていた。患者の57.8%がカテーテルアブレーション施行予定であった。・1年間の追跡調査を実施した743例において、1年全死亡率は0.1%(1例、心不全)で、脳卒中/血栓塞栓症発生率も0.1%(1例、肺塞栓症)であった。大出血イベントは0.7%(5例[頭蓋内出血3例、下部消化管出血1例、軟部組織出血1例])に認められた。

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アイトラッキング診断ツール、神経変性疾患の鑑別や評価の一助となるか

 眼球運動異常は、神経変性疾患においてよくみられる。これは、眼球運動を制御する神経経路および脳領域の変性が原因であると考えられる。背外側前頭前皮質、基底核、上丘、小脳の病理学的変化は、臨床検査では検出されない可能性のある眼球運動指標の微妙な変化を引き起こす。カナダ・Montreal Neurological InstituteのPaul S. Giacomini氏らは、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病およびその他の認知症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患における眼球運動バイオマーカーの潜在的な用途について考察した。Journal of Neurology誌2026年2月10日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・サッカード、アンチサッカード、固視、滑動追跡などの眼球運動指標は、疾患進行の予後を予測し、診断の補助として病理学的サブタイプを鑑別することができる。そのため、臨床医が運動機能および認知機能の早期悪化を評価することを可能にすると考えられる。・医療技術のコストが、臨床現場における最適な活用とアクセスを制限している。・専門の神経科医の不足は、医療へのアクセスをさらに制限している。・スマートフォンやタブレットなどの広く普及しているデジタル機器に組み込まれた新しいアイトラッキング技術は、最小限の機器で詳細な評価を可能にし、日常の臨床現場における患者評価や治療方針の決定を支援するための、非侵襲的かつ費用対効果の高い重要な方法であると考えられる。・デジタルバイオマーカーは、かかりつけ医、看護師、薬剤師などの医療専門家がケアのギャップを埋めるために容易に活用でき、神経変性疾患の患者へのケア提供を改善するために広く採用できる強力なツールとなる可能性がある。

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寝室の温度は高齢者の睡眠に影響

 暑くて寝苦しい夜、眠れずに寝返りを打ち、枕をひっくり返したりした経験はないだろうか?オーストラリアの高齢者を対象とした研究で、寝室の温度が睡眠の質に大きな影響を与える可能性のあることが示された。グリフィス大学(オーストラリア)保健医療・スポーツ・ソーシャルワーク学分野のFergus O’Connor氏らによるこの研究の詳細は、「BMC Medicine」に12月29日掲載された。 この研究では、2024年12月から2025年3月の夏季に、オーストラリアの65歳以上の高齢者を対象に、寝室の温度が睡眠にどのような影響を与えるのかが検討された。研究参加者は、睡眠中の心臓の活動を測定するため、利き手ではない方の手首にフィットネストラッカーを装着した。また、寝室に設置した温度センサーで夜9時から朝7時までの室温を記録した。夜間の室温は、24℃未満、24〜26℃、26〜28℃、28〜32℃の4群に分類した。 解析の結果、夜間の室温が24℃未満に保たれていた群と比べて、それ以上の室温だった群では、副交感神経(リラックス・回復を担う神経)の働きを反映する心拍変動の指標であるlnRMSSDに、臨床的に意味のある低下が認められた。lnRMSSD低下のオッズ比は、24〜26℃の群で1.4(95%信頼区間1.2〜1.6)、26〜28℃の群で2.0(同1.8〜2.3)、28〜32℃の群で2.9(同2.5〜3.4)であり、室温が高くなるほど、睡眠中の自律神経の回復が妨げられる可能性が示された。また、心拍変動の周波数解析においては、室温が高いほど、HF(副交感神経の活動を主に反映する高周波成分)とLF(交感・副交感神経の影響を受ける低周波成分)がいずれも低下し、交感神経の優位性の程度を示す指標であるLF/HF比は上昇していた。さらに、心拍数も上昇していた。 O’Connor氏は、「65歳以上の人にとって、夜間の寝室の温度を24℃未満に保つことは、睡眠中のストレス反応の上昇を抑える効果があった」とニュースリリースの中で述べている。同氏はまた、暑さは心臓に過度の負担をかけることを指摘し、「人体が暑さにさらされると、正常な生理的反応として、心臓は心拍数を上昇させて血液を皮膚表面へ循環させて身体を冷やそうとする。しかし、心臓がより激しく働き、それが長時間続くとストレスとなり、その日にさらされた暑さからの回復力が阻害されてしまう」と説明している。研究グループによると、今回の研究は、このような影響を実際の家庭環境という現実的な状況で示した最初の研究の一つだとしている。 なお、この研究結果は、気候変動によって夜間の気温が上昇し続けている中で報告された。O’Connor氏は、「気候変動は暑い夜の増加をもたらしているが、このことは睡眠や自律神経の回復を妨げ、心血管疾患の発症や死亡に独立して影響する可能性がある」と指摘する。同氏はまた、「日中の屋内の温度の上限を26℃とするガイドラインはあるが、夜間の環境については推奨が示されていない」と述べ、公衆衛生上の指針における課題も指摘している。

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身体活動の不足が糖尿病の合併症を引き起こす

 身体活動の不足と糖尿病の合併症リスクとの関連を示すデータが報告された。合併症の最大10%程度が身体活動の不足に起因していると考えられるという。リオグランデ・ド・スル連邦大学(ブラジル)のJayne Feter氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Sport and Health Science」に1月14日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「糖尿病の合併症は避けようのないものだと見なされることが多い。しかしわれわれの研究結果は、糖尿病患者が身体活動量を増やすことで、合併症のかなりの部分を予防できる可能性があることを示している」と述べている。 この研究では、これまでに世界中で実施されてきた前向きコホート研究や横断研究、計27件のデータを統合して、糖尿病患者237万7,414人の身体活動量と糖尿病が関連する合併症のリスクとの関係を検討した。身体活動の不足は、世界保健機関(WHO)の推奨(週に150分以上の中~高強度の身体活動)を満たしていない場合と定義した。なお、米疾病対策センター(CDC)は、中強度の身体活動とは早歩き、低速での自転車走行、アクティブなヨガなどで、高強度の身体活動とはランニング、水泳、エアロビクスダンス、高速での自転車走行、縄跳びなどが該当するとしている。 解析対象者の平均年齢は55.3~71.3歳の範囲で、女性の割合は33.4~57.1%だった。19カ国(そのうち16カ国は高所得国)からの前向き研究における追跡期間は3.8~27.9年だった。身体活動不足の有病率は国によって大きく異なり、ロシアが27.7%で最も低く、中国が83.9%で最も高かった。日本は44.7%だった。 糖尿病に特異的な合併症である糖尿病網膜症の発症に身体活動不足が寄与する程度(人口寄与割合〔PAF〕)は、9.7%(95%不確実性区間4.1~16.5)と計算された。さらに、糖尿病が関連して発症リスクが高まる合併症では、冠動脈性心疾患のPAFが5.3%(同2.0~9.4)、心血管疾患が5.2%(2.2~8.9)、脳卒中が10.2%(5.1~16.6)、心不全が7.3%(3.1~12.5)だった。日本のデータからは、糖尿病網膜症15.9%(7.6~24.6)、冠動脈性心疾患8.7%(3.8~14.2)、心血管疾患8.5%(4.2~13.4)、脳卒中16.7%(9.5~24.4)、心不全11.9%(5.6~18.7)と計算された。なお、研究者らによると、女性や教育歴の短い人たちは、身体活動不足に関連した糖尿病合併症の有病率が一貫して高い傾向が認められたという。 本研究についてFeter氏は、「糖尿病合併症予防戦略の中心に身体活動を位置付ける必要性を示すものと言える。糖尿病患者に身体活動を促すことが入院や障害の発生および医療費の削減につながり、また患者の生活の質(QOL)を向上させ得るのではないか」と総括している。ただし研究者らは一方で、身体活動の種類が環境によって異なることを考慮すると、画一的なアプローチは機能しないだろうとも述べている。例えば、高所得国の人々は余暇時間に身体活動をする傾向があるのに対して、低所得国の人々は肉体的な仕事として身体活動を行っていることが多いという。

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「スマートウェア」がフィットネストラッキングの次の最前線に

 健康意識の高い人は、ウォーキングやジョギングの前に手首にFitbitを装着したり、ベルトに歩数計を付けたりすることが習慣になっている。しかし、追加の装置を用意しなくても歩数の測定や身体の動きの追跡が可能な「スマートウェア」の実現につながる新たな研究結果が明らかになった。現在使用されている肌に密着させるセンサーよりも、ゆったりとした衣服に取り付けた小型センサーの方が、身体の動きを正確に記録できることを突き止めたという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)工学分野のMatthew Howard氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に1月20日掲載された。 Howard氏は、「手首に付けるFitbitや、コンピューターで生成された映像のキャラクターを演じる俳優が着るスーツのような、動作追跡技術で最も正確な結果を得るには、センサーを身体に密着させる必要があると考えられてきた。センサーが密着していないとデータにノイズが含まれる、あるいは雑然としたものになるというのが一般的な考え方だった」と話す。 Howard氏らは今回の研究で、ゆったりとした衣服にセンサーを取り付け、人間とロボットに多様な動作を行わせて得られたデータを解析し、その動作認識能力および動作予測能力を、従来のようにセンサーを腕や脚に直接装着する方式と比較した。その結果、ゆったりとした衣服に取り付けられたセンサーでは、体に装着されたセンサーと比べて最大40%迅速かつ高い精度で身体の動きを捉え、そのために必要なデータ量は約80%削減できることが明らかになった。 Howard氏らによると、ゆったりした布地は動きを検知しやすくする「機械的増幅器」のように機能し、気付くのが難しいレベルのかすかな動きの違いも識別できることが分かったという。Howard氏は、「腕を動かし始めると、腕を緩やかにまとう袖は、一定の形が維持されずに、折れ曲がったり、波打ったり、複雑に揺れ動いたりする。身体に密着したセンサーよりも動きに対して繊細に反応するのだ」と同氏は説明する。 KCL解剖学・生体力学分野のIrene Di Giulio氏は、「手首にしっかりと巻き付けたリストバンドの場合、患者の動きが小さ過ぎて捉えられないことがある。そのため、パーキンソン病などの疾患が患者の日常生活にどのような影響を与えているのかについて、常に最も正確なデータが得られるわけではない。今回検討したアプローチでは、人の動きを『増幅』させることができるため、通常の障害のない身体の動きと比べて小さな動きでも検知できるようになる」とニュースリリースの中で述べている。 Di Giulio氏はまた、「この技術によって、自宅や介護施設などの慣れた環境の中で、普段着で過ごしている人の動きを追跡することができるようになるだろう。それにより、医師が患者をモニタリングしやすくなるだけでなく、医学研究者によるパーキンソン病などの疾患の解明や、こうした障害に対応するウェアラブル技術を含む新たな治療法の開発に不可欠なデータを収集しやすくなる可能性がある」と期待を示している。 さらにHoward氏は、「こうした動作追跡装置は、より高性能のロボットの開発にも活用できる。ロボット工学研究の多くは、人間の行動を学習し、それをロボットが模倣することを目的にしている。そのためには、普段の人間の動きから膨大なデータを収集する必要がある。しかし、伸縮性のある素材でできたボディスーツを着て日常生活を送りたいと思う人は多くはないだろう」と同氏は述べている。 その上でHoward氏は、「今回の研究は、普段着に目立たないセンサーを取り付けることで、ロボット工学の領域に革命をもたらすために必要な、世界中の人の動作データを収集できる可能性を示している」と述べている。

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慢性閉塞性肺疾患の吸入器はどれがより有効か

 ドライパウダー吸入器(DPI)は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者にとって二重のメリットをもたらす可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。3種類の長時間作用型抗コリン薬(LAMA)・長時間作用型β2刺激薬(LABA)配合吸入薬の効果を比較した研究で、ドライパウダー吸入器(DPI)は、噴霧式吸入器(MDI)やソフトミスト吸入器(SMI)と比較して、COPD患者の増悪を減らすことが示された。さらに、DPIはこれらの中で環境への悪影響が最も少ない点でも優れている。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ヘルスの肺専門医およびヘルスサービス研究者であるWilliam Feldman氏らによるこの研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に2月23日掲載された。 MDIは、薬剤を肺に届けるためにプロペラント(噴射薬)を使う。しかし、プロペラントは多量の温室効果ガスの排出源であり、気候変動の一因になると研究者らは指摘している。Feldman氏は、「今回調査した吸入薬は、多くのCOPD患者にとって第一選択の治療薬だ。温室効果ガスの排出量がより少ない吸入器の臨床アウトカムが、わずかであっても優れているというエビデンスが得られたのは心強いことだ。これらの結果は、患者ケアを改善しつつ、医療関連の温室効果ガスの排出量を削減できる可能性があることを示している」と述べている。 この研究では、ウメクリジニウム臭化物・ビランテロール配合のDPI、グリコピロニウム臭化物・ホルモテロール配合のMDI、チオトロピウム・オロダテロール配合のSMIの3種類について、安全性と有効性を検討した。DPIとMDIの比較には9,479組(平均年齢68.9歳)、SMIとMDIの比較には9,598組(平均年齢69.2歳)、DPIとSMIの比較には3万6,740組(平均年齢71.5歳)を対象とした。 その結果、DPI群ではMDI群に比べて、中等症〜重症のCOPD増悪リスクが14%(ハザード比0.86、95%信頼区間0.81〜0.91)、SMI群と比べて3%(同0.97、0.94〜0.99)低いことが明らかになった。また、SMI群とMDI群の比較では、SMI群の同リスクが6%低かった(同0.94、0.89〜1.00)。SMIもプロペラントを必要としない。 Feldman氏は、「こうした臨床的および環境面での利点は、可能な場合にはDPIを使用すべきであることを強く示している。MDIが必要な患者もいるが、DPIとSMIは、ほとんどのCOPD患者にとって安全で効果的な選択肢である」と述べている。

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血液検査でアルツハイマー病の発症時期を高精度で予測

 脳がいつ衰え始めるのかが正確に分かるとしたらどうだろう。まるで近未来映画のストーリーのようだが、新たに開発された「生物学的時計」によって、それが現実になるかもしれない。米ワシントン大学医学部のKellen Petersen氏らが、p-tau217(リン酸化タウ217)と呼ばれるタンパク質に焦点を当てた血液検査により、アルツハイマー病(AD)の症状が現れ始める時期をわずか3.0~3.7年の誤差で予測できたとする研究結果を発表した。p-tau217は、ADで生じるタウタンパク質の異常(凝集体の形成)を反映する指標であり、その上昇はアミロイドβの蓄積とも密接に関連している。この研究の詳細は、「Nature Medicine」に2月19日掲載された。 研究グループによると、本研究では、脳内での有害なタンパク質の蓄積は、驚くほど一定で予測可能なスケジュールに従って進むことが示された。Petersen氏は、「アミロイドβとタウタンパク質のレベルは、まるで木の年輪のようなものだ。年輪を数えれば木が何歳か分かるのと同じように、これらのタンパク質も一貫したパターンで蓄積していき、値が陽性になる年齢が分かれば、その人がいつADの症状を発症するかを高い精度で予測できる」と話している。 研究グループは、独立した2つの高齢者コホート(Knight ADRCコホート258人、ADNIコホート345人)から得たデータを用いて、p-tau217の増加パターンから生物学的時計を新たに構築し、血液中のp-tau217値を測定することでAD症状の発現時期を予測できるかを検討した。 その結果、血漿中のp-tau217のパーセンテージ値(%p-tau217)が陽性(>4.06%)となる推定年齢から、AD症状の発現時期を平均3.0〜3.7年の誤差で予測し得ることが示された。また、p-tau217が陽性となってからAD症状が現れるまでの期間は、高齢になるほど短いことも示唆された。例えば、60歳で陽性となった人は、AD症状の発現まで約20年かかる可能性がある一方で、同じ陽性でも80歳の人の場合は、症状発現までわずか11年と推定された。 現在、ADリスクを特定するには高額な脳画像検査や侵襲的な脳脊髄液検査を要することが多い。それに対し、この血液検査はより迅速で、安価かつアクセスしやすい代替手段となる可能性を秘めており、医療や研究のアプローチを大きく変える可能性もある。 この検査は、現在は主に、研究の場で使用されている。研究グループは、開発した予測モデルの詳細と、他の研究者が探索・改良できるウェブアプリケーションも公開している。論文の上席著者であるワシントン大学医学部のSuzanne Schindler氏は、「短期的には、これらの予測モデルは、研究や臨床試験を加速させるだろう。最終的な目標は、個々の患者に、症状がいつ発現するかを伝えられるようにすることだ。そうすることで、患者や医師が症状を防いだり遅らせたりするための計画を立てられるようになる」と述べている。 なお、本研究には、AbbVie社、アルツハイマー病協会、アルツハイマー創薬財団(ADDF)の研究プログラムであるDiagnostics Accelerator、Biogen社、Janssen Research & Development社、武田薬品工業株式会社などが資金提供を行った。

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子宮頸がん検診、受診率は制度で変わる? 東京都51自治体解析

 日本では子宮頸がんの罹患が増加する一方、検診受診率の低さが課題となっている。今回、東京都内の51自治体を対象とした研究で、検診受診率には大きな地域差があり、医療機関数や予約制度、HPV検査導入などの制度的要因が関連していることが示された。研究は、東京科学大学公衆衛生看護学分野の原田伊織氏、月野木ルミ氏らによるもので、詳細は1月21日付で「The Asian Pacific Journal of Cancer Prevention」に掲載された。 日本では1990年代半ば以降、子宮頸がんの罹患率・死亡率が上昇しているにもかかわらず、検診受診率は欧米に比べ低い状況が続いている。子宮頸がんは前がん病変の段階で発見・治療すれば予防可能であり、細胞診やヒトパピローマウイルス(HPV)検査による検診は有効な予防手段とされるが、日本では自治体や職域など複数の仕組みが混在し、地域ごとの運用差が受診率の格差につながっている可能性がある。また、子宮頸がん検診への参加に影響する地域レベルの要因を明らかにすることは、参加率を改善し、全体の受診率向上および地域間格差の縮小につながる介入策の開発に寄与する可能性がある。そのような背景から、本研究は、東京都内における子宮頸がん検診受診率の地域差を明らかにし、それに関連する地域要因を検討することを目的とした。 本研究は後ろ向きの生態学研究として、東京都内51自治体のデータを用いて実施された。主要評価項目は検診受診率とし、データは2018年の東京都保健医療局のがん検診統計、人口統計、ならびに各自治体の公式ウェブサイトから収集した。各自治体について、就業女性の割合、検診申し込みの必要性(あり/なし)、子宮頸部細胞診とHPV検査の併用の有無など、地域要因の候補となる項目を収集した。検診受診率とこれらの要因との関連は、重み付き最小二乗法による線形回帰モデルを用いて検討した。 東京都における子宮頸がん検診の平均受診率は18.6%であり、自治体間で大きなばらつきが認められた(範囲8.1%〜85.8%)。自治体間で検診体制には差があり、就業女性割合は平均38.9%で、検診実施医療機関数にも大きなばらつきがみられた。無料検診は約6割の自治体で提供されていた一方、細胞診とHPV検査の併用はごく少数に限られた。また、約4割の自治体では保健センター等で検診申し込みが必要であった。 次に、検診受診率と地域要因候補との関連を線形回帰モデルにより解析した。その結果、対象女性1万人あたりの検診実施医療機関数(β=41.51、95%信頼区間〔CI〕:23.66〜59.36、P<0.001)、就業女性の割合(β=1.03、95%CI:0.43〜1.63、P<0.001)、検診申し込みの必要性(検診申し込み不要を基準)(β=−5.56、95%CI:−9.57〜−1.62、P=0.01)、およびHPV検査併用の導入(未導入を基準)(β=12.89、95%CI:5.42〜20.36、P<0.001)が検診受診率と有意に関連していた(βは各要因と受診率との関連の強さを示す回帰係数)。 本解析から医療機関数の多さやHPV検査導入は受診率の高さと関連していた一方、検診申し込みが必要な場合は受診率が低い傾向が示された。 著者らは、「子宮頸がん検診の受診率向上には、医療機関へのアクセス改善、検診受診手続きの簡略化、HPV検査併用の実施が関連している可能性が示された。これらの知見は、地域の子宮頸がん検診体制や公衆衛生政策の検討に役立つと考えられる」と述べている。 なお、本研究は東京都の自治体による子宮頸がん検診のみを対象としており、全国への一般化には限界がある。また、職域での任意の子宮頸がん検診は考慮されていない。 検診を受けない理由は「意識」だけではなく、「仕組み」にもある可能性が示された。検診を受けやすい環境づくりが、子宮頸がん予防の第一歩となりそうだ。(HealthDay News 2026年3月2日)

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忍耐の市役所【Dr. 中島の 新・徒然草】(623)

六百二十三の段 忍耐の市役所花粉がきついです。外来中でも容赦がありません。今日は調子が良いぞと思っても、新たな患者さんが診察室に入ってくると、途端にクシャミが出たりします。「体調のほうはどうで……フ、フ、フ、ブワークショーン!」みたいな感じですね。たぶん、患者さんの服に付いた花粉にやられるのでしょう。クシャミに続いて鼻水と目の痒みも始まって、どうにもなりません。かくして、鼻をかむ合間に話をするという悲惨なことになってしまいます。話は変わって、先日のこと。マイナンバーカード更新の受け取りのために市役所に行ってきました。最近は何でも予約です。だからカードの受け取りも、あらかじめパソコンで予約しておかなくてはなりません。確か午後2時半か、そんなもんだったかな、私の予約は。実際に市役所に行ってみると、ものすごい数の人。予約を取っていても並ばなくてはなりませんでした。たぶんマイナンバーカードだけじゃなく、戸籍とか住民票とかの申請や受け取りも同じ部署が担当していたのでしょう。そのせいか、呼び出し用の受付番号も2000番台とか5000番台とか6000番台とか、いろいろなものが表示されていました。で、言われたとおりに並びます。しばらくして呼ばれて受け付けを済ませ、また別のところで自分の番号が表示されるのを待っていました。椅子も足りないので立ったままです。すると目の前で80代くらいの高齢女性が、職員を捕まえて文句を言っていました。予約を取っているのに、何でこんなに待たされるのか、と。そろいの赤いユニホームを着た職員は、そのお婆さんに謝りながら説明していました。「すみません、皆さんお待ちいただいていますので」「順番にお呼びしています」いくら説明しても、このお婆さんには通じません。私なんか、この人数を見たら待たされるのは仕方がない、と思ってしまうのですが。もっと言うと、こういった文句を言う人がいるから、職員が手を取られて余計に遅くなってしまうわけです。よほど横から言ってやろうかと思ったのですが、高齢者というのはそんなもんだ、と思って黙っていました。まあ、病院の状況も似たり寄ったりではあります。と、後ろからチラッとお婆さんの持っている番号札が見えました。私の2つ前。だったら、そんなに待っていないじゃん!で、そのうちお婆さんの番号が表示されました。でも、彼女は気が付いていません。だから、後ろからトントンと肩を叩いて「呼ばれてますよ」と言ってあげました。とくに私に礼を言うこともなく、お婆さんはヨロヨロとブースのほうに……そのうち私の番号も呼ばれましたが、そのお婆さんの隣のブースでした。担当職員による確認作業がいろいろありましたが、基本的には単純で退屈なものです。なので、隣のブースのやりとりに耳を澄ませてみました。どうやらお婆さんは、持ってくるべきものをいろいろと忘れてきたみたいです。それで一生懸命言い訳をしていました。思わず「それやったら、職員に文句を言ったりしたらアカンがな」と心の中で呟いてしまいます。いやいや、そんな余計なことより「人の振り見てわが振り直せ」と自らに言い聞かせるべきだったのかもしれません。家に帰ってこの話をしたところ、女房が大きくうなずきました。「あそこの市役所の職員は、日本一忍耐強い人たちよ」と。何でそんなことを知っているのか?女房も数ヵ月前にマイナンバーカードを取りに行ったからです。あの人混みと一生懸命に働いてる職員を見ていたので、そんな感想を持ったのでしょう。それにしても大変ですね、市役所職員も。私もその忍耐を見習わなくては、と思った次第です。最後に1句 市役所は 花粉と人で 地獄ぞな

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麻黄湯~麻黄と杏仁の鎮咳去痰作用【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第3回

麻黄湯~麻黄と杏仁の鎮咳去痰作用麻黄湯(まおうとう)は、葛根湯(かっこんとう)と同じく感冒初期に使う漢方薬ですが、あくまで体の頑丈な人に使ってほしい薬です。その構成生薬は、麻黄(まおう)、杏仁(きょうにん)、桂皮(けいひ)、甘草(かんぞう)の4種類です。杏仁と聞くと、杏仁豆腐の甘味をイメージされる方が多いのですが、ここでいう杏仁というのは苦い種類のもので、甘いものとは少し種類が異なります。桂皮もシナモンの仲間ですが、これも厳密に言えば別物です。いきなり脇道に逸れてしまいましたが、麻黄湯は構成生薬がたったの4種類というのが重要なポイントです。つまり、効きが早いのです。飲んでから15分もあれば効果が出て、じんわりと汗が出てきます。また、守備範囲が狭いため、葛根湯のように誰にでも使える、どんな症状にでも使えるということはありません。葛根湯医者はいるけれど、麻黄湯医者はいないということで、あくまで体の頑丈な人に使うべき薬です。麻黄とは?今回は、そんな麻黄湯を構成生薬から読み解いていくのですが、まずは名前にも使われている麻黄に注目していきましょう。麻黄の代表的な成分はエフェドリンです。幕末生まれの日本人である長井 長義先生が発見した物質です。どんな物質かというと、α1、β1、β2受容体に作用してアドレナリンに類似した働きをします。麻酔科の先生方のほうがよくご存じかもしれませんが、エフェドリンはいわば「東洋のアドレナリン」と呼べる存在です。エフェドリンを使うと、当然ながら動悸が起こります。これが虚弱体質の人には結構こたえるため、やはり麻黄湯は体の頑丈な人に使いたいのです。もちろん、交感神経刺激作用があるということで、心疾患や排尿障害を有する患者に使うのは避けたほうが無難です。また、スポーツであればドーピングに引っ掛かる可能性があるため要注意です。逆に、麻黄は何の役に立つのか考えてみましょう。鼻閉の患者に対し、耳鼻科では局所血管収縮薬としてアドレナリンを鼻粘膜に吹き掛けますよね。じつはエフェドリンにも同じような効能があって、上気道の粘膜浮腫を和らげる作用があるのです。気管支も拡張するので、鎮咳去痰作用を発揮できるという理屈があります。ここで少し雑談を。いまの心肺蘇生、ACLS(二次救命処置)ではアドレナリンを使いますよね。古代中国の人も心肺停止を当然ながら起こしていたわけですが、じつは蘇生のために彼らはエフェドリンを使っていたのです。「いや、そんな馬鹿な」と思われる方もいると思いますが、じつは「還魂湯(かんこんとう)」という薬があって、麻黄湯から桂皮を抜いただけの漢方薬です。これを使っていたのです。どうやって飲ませていたのかという謎は残りますが、古典を紐解いているとこういった面白い知識に出くわすため、やはり「随証治療」で漢方を勉強するというのはお勧めです。杏仁とは?ここまで麻黄の話ばかりしていましたが、杏仁も麻黄湯には欠かせない生薬です。麻黄とは異なり、西洋医学的な裏付けが得にくいところは許してほしいのですが、杏仁には下気道や胃のまわりの浮腫を軽減する薬能があるとされています。そういうわけで、麻黄と杏仁を組み合わせると、上気道と下気道の浮腫を治すことができるのです。それが鎮咳去痰作用として働いてくると考えてください。麻黄と杏仁の組み合わせは麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)という漢方薬にも含まれていて、これは湿性咳嗽に対する定番薬です。また、花粉症で有名な小青竜湯(しょうせいりゅうとう)にも、杏仁は入っていないですが、麻黄が入っています。麦門冬湯(ばくもんどうとう)も咳止めとして有名ですが、麻黄と杏仁が入っておらず、湿性咳嗽に使う薬ではない点に注意してください。あくまで乾性咳嗽に使う薬です(表1)。表1 咳嗽に対する漢方薬画像を拡大する古典に学ぶ麻黄湯と葛根湯の違いここまでの内容をまとめると、麻黄湯は感冒初期に使う漢方薬で麻黄が入っている関係上、虚弱体質の人には使いにくい、湿性咳嗽に一定の効果があるとご理解いただければと思います。理解をより深めるために、古典の条文も読んでみましょう(図1)。図1 麻黄湯の古典条文画像を拡大する頭痛、発熱、咳だけじゃなくて、節々が痛いんですよ。これは、西洋医学だとどんな病気でしょう。インフルエンザですよね。とくに免疫がしっかりしている若者のインフルエンザだとこういった派手な症状が出てくるわけで、そういった患者さんに麻黄湯が好んで使われます。前回出てきた葛根湯の条文と並べてみるとやはり少し違いますよね(図2)。図2 麻黄湯と葛根湯の古典条文画像を拡大する麻黄湯は節々の痛みが強烈に出ていて、咳もする。葛根湯は首の後ろが凝っている。節々の痛みや咳はあってもいいけれど、そこまで目立たない。その背景として、麻黄湯は構成生薬数が少なくて、麻黄や杏仁が主力として働いている。葛根湯は構成生薬が少し多めで、麻黄の薬能が少し緩和されているという違いがあるわけです。ちなみに、共通点としては、感冒初期であることと、汗がないことの2点です。汗がないというのは体が丈夫であることと関係しているのですが、このあたりは次回触れる予定です。まとめ麻黄湯は体が丈夫な人の感冒初期に使いますが、体の節々の痛みが使用の目安になっているところがあって、結論としてはインフルエンザに使いやすい漢方薬となっています。麻黄湯は湿性咳嗽にもある程度は有効ですが、これは気道の浮腫をやわらげてくれる麻黄と杏仁の組み合わせのおかげです。余裕がある方は、麻黄と杏仁に着目しながら、麻杏甘石湯、小青竜湯、麦門冬湯の違いもインプットしてみるといいかもしれません。麻黄湯にはエフェドリンが含まれていて、その副作用やドーピングには注意する必要があります。次回は、残りの1つである桂枝湯のお話です。楽しみにしていてください!

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第53回 身近な人間関係のストレスが、あなたの「老化」を早めているかもしれないという話

日常生活の中で、「この人と会うとどっと疲れる」「いつも振り回されて嫌な思いをする」そんなふうに感じる相手はいませんか? それが家族や職場の同僚など、どうしても縁を切れない関係だと、毎日のようにストレスを抱え込んでしまいますよね。実は最近、こうした人間関係のストレスが、私たちの心身に及ぼす影響について、興味深い研究成果が報告されました。日々の診療現場でも、身近な人との関係性が患者さんの体調に直結している場面に直面することがありますが、それが細胞レベルでも証明されつつあるのです。「自分を悩ませる人」が細胞の時計を早める?ストレスが体に悪そうだということは、皆さんもイメージしやすいと思います。しかし、それを「生物学的な老化のスピード」という具体的な形で測定することは、これまで困難でした。近年、DNAの働き方の変化(エピジェネティクス)を調べることで、実際の年齢(暦年齢)とは異なる、体内の「生物学的な年齢」を正確に測る技術が進歩してきました。このため、こうした研究が容易になったというわけです。また、これまで、良好な人間関係が健康を守ることはよく知られていましたが、逆に「ネガティブな人間関係」がどう影響するかは十分に分かっていませんでした。そんな中、PNAS誌(米国科学アカデミー紀要)に興味深い論文が掲載されました1)。身近にいる「自分を悩ませる人(ハスラー)」の存在と、DNAの老化マーカーとの関係を調べた研究です。調査によると、約30%の人が身近な人間関係の中に少なくとも1人の「ハスラー」を抱えていることがわかりました。そして驚くべきことに、この「ハスラー」が1人増えるごとに、生物学的な老化のスピードが約1.5%速くなり、生物学的な年齢が約9ヵ月も老けてしまうことが示されたのです。さらに興味深いことに、相手が誰であるかによっても影響が異なりました。配偶者から受けるストレスは老化と明確な関連が見られなかった一方で、親や兄弟、子供といった血縁関係にある人からのストレスが、最も強く老化を早めることに関連していました。また、ハスラーの存在は老化だけでなく、うつや不安といったメンタルヘルスの悪化、BMIの増加、身体的な健康状態の悪化など、幅広い健康被害とも関連していることがわかっています。これらの結果をどう解釈すれば良いかなぜ配偶者では老化との関連が見られず、親や兄弟などの血縁者からのストレスがこれほど強く影響したのでしょうか? 論文では、その理由についても考察されています。考えてみれば、夫婦やパートナーという関係は、日々の摩擦や口うるさい小言(たとえば「健康のためにタバコをやめて」といった愛情や気遣いゆえの干渉)があったとしても、多くの場合お互いを支え合う「ポジティブな側面」も併せ持っています。この親密さや「サポートされている」という安心感が緩衝材となり、ストレスの悪影響を和らげているのかもしれません。一方で、親や兄弟、子供といった血縁関係はどうでしょうか。家族というつながりは「義務感」で強く結びついているため、関係がこじれたり過度な負担に感じたりしても、簡単には縁を切ることができません。論文でも血縁者からのストレスは「構造的に逃れられない」と表現されています。お互いの親密さやポジティブな支え合いが失われているにもかかわらず、「家族だから」というしがらみだけが残り、逃げ場のない慢性的なストレスに長期間さらされ続けることが、私たちの細胞に最も深いダメージを与えているのではないかと推測されています。ただし、この研究結果をただ手放しで鵜呑みにすることもできません。研究には必ず限界があるからです。まず、今回の研究はある時点での関係性を調べたものであり、「人間関係のストレスが原因で老化が早まった」という明確な因果関係を完全に証明するものではありません。また、「ハスラー」の存在はあくまで参加者の自己申告に基づいています。元々気分の落ち込みやストレスを抱えている人ほど、他人の言動を否定的に捉えやすいという偏りが影響している可能性もあります。さらに、すでに亡くなられた方や重い病気で調査に参加できなかった方々のデータが含まれていないため、実際の社会における最も健康リスクの高い人々を含めると、ネガティブな人間関係の真の影響はまた変化する可能性も指摘されています。自分を守る工夫が、一番のアンチエイジングそれでも、この研究は私たちに大切な視点を与えてくれます。避けられない人間関係のストレスは、単なる気の持ちようではなく、細胞レベルで私たちの体に慢性的な負担をかけている可能性があるということです。すべての人間関係を断ち切ることは現実的ではありませんが、つらいと感じる相手とは少し物理的な距離を置いてみる、あるいは一人で抱え込まずに誰かに相談するといった自分を守る工夫が、将来の健康を守る何よりのアンチエイジングに繋がるのかもしれません。参考文献・参考サイト1)Lee B, et al. Negative social ties as emerging risk factors for accelerated aging, inflammation, and multimorbidity. Proc Natl Acad Sci U S A. 2026;123:e2515331123.

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