1次治療に失敗したヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性の小児の2次治療において、バックボーン療法としてのテノホビル アラフェナミドフマル酸塩(TAF)+エムトリシタビン(FTC)に、アンカー薬としてドルテグラビル(DTG)を併用する抗レトロウイルス療法(ART)は、他のレジメンと比較して有効性が高く、安全性の懸念を示す所見はみられないことが、ウガンダ・Makerere UniversityのVictor Musiime氏らが実施した「CHAPAS-4試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年5月15・22日合併号に掲載された。
アフリカ3ヵ国の2×4要因デザインの無作為化試験
CHAPAS-4試験は、アフリカのHIV陽性の小児の2次治療におけるさまざまなARTレジメンの有効性と安全性の比較を目的とする2×4要因デザインを用いた非盲検無作為化試験であり、2018年12月~2021年4月にアフリカの3ヵ国(ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ)6施設で参加者の無作為化を行った(欧州・開発途上国臨床試験パートナーシップ[EDCTP]などの助成を受けた)。
年齢3~15歳、体重14kg以上で、1次治療において非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)をベースとするARTレジメンによる治療に失敗し、スクリーニング時にウイルス量が400コピー/mL超のHIV陽性の小児を対象とした。
これらの参加者を、核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)による2つの併用バックボーン療法(TAF+FTC、標準治療[アバカビル[ABC]+ラミブジン[3TC]またはジドブジン[ZDV]+3TC])のいずれかに無作為に割り付け、同時に4つのアンカー薬(DTG、リトナビル[RTV]でブーストしたダルナビル[DRV/r]、RTVでブーストしたアタザナビル[ATV/r]、RTVでブーストしたロピナビル[LPV/r])の1つに無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、96週の時点におけるウイルス量が400コピー/mL未満であることとした。
次の仮説を設定し検証した。「TAF+FTCは標準治療に対して非劣性、LPV/rとATV/rを統合した解析でDTGおよびDRV/rは優越性を示す、ATV/rはLPV/rに対して非劣性」。
DRV/rも有効な可能性
919例(年齢中央値10歳[四分位範囲:8~13]、男性497例[54.1%])を登録した。バックボーン療法はTAF+FTCに458例、標準治療に461例(ABC+3TC群217例[47.1%]、ZDV+3TC群244例[52.9%])を割り付けた。アンカー薬は、DTGが229例、DRV/rが232例、ATV/rが231例、LPV/rが227例であった。全体のベースラインのウイルス量中央値は1万7,573コピー/mL、CD4細胞数中央値は669個/mm
3、CD4細胞割合中央値は28.0%だった。
バックボーンにおける96週の時点でウイルス量400コピー/mL未満を達成した患者の割合は、標準治療が83.3%(378/454例)であったのに対し、TAF+FTCは89.4%(406/454例)であった(補正後群間差:6.3%ポイント[95%信頼区間[CI]:2.0~10.6]、p=0.004)。事前に規定された非劣性マージン(10%ポイント)を満たしたため、TAF+FTCの標準治療に対する非劣性(かつ優越性)が示された。
アンカー薬別の96週時にウイルス量400コピー/mL未満を満たした患者の割合は、DTGが92.0%、DRV/rが88.3%、ATV/rが84.3%、LPV/rが80.7%であった。LPV/rとATV/rを統合した解析では、主要アウトカムに関してDTGの優越性が示された(補正後群間差9.7%ポイント[95%CI:4.8~14.5]、p<0.001)が、DRV/rには有意な差を認めなかった(5.6%ポイント[0.3~11.0]、p=0.04[事前にp=0.03を有意差ありの閾値に設定])。
また、ATV/rはLPV/rに対し非劣性であった(補正後群間差:3.4%ポイント、95%CI:-3.4~10.2、p=0.33)。
グレード3または4の有害事象は13.8%
96週の時点で、全体の13.8%(127/919例)にグレード3または4の有害事象が発現し、最も頻度が高かったのは高ビリルビン血症(6.4%)で、予想どおりその多くがATV/r(24.7%)に関連したものであった。また、グレード3または4の有害事象は、LPV/r(11.5%)に比べDTG(5.2%)で少なく(p=0.02)、DRV/r(8.6%)とLPV/r(11.5%)には有意差を認めなかった(p=0.31)。
重篤な有害事象は29例(3.2%)に発現した(バックボーン:TAF+FTC群15例、標準治療群14例、アンカー薬:DTG群6例、DRV/r群8例、ATV/r群5例、LPV/r群10例)。ARTの変更に至った有害事象(グレードを問わず)は24例(同:7例、5例、5例、7例)に発現した。1例(TAF+FTC、DTG)が病勢の進行により死亡した。
著者は、「本試験の良好な臨床アウトカムはベースラインのCD細胞数の値が比較的高かったことが一因であり、臨床的に重大な免疫機能の低下を認める前に2次治療に切り換えるという原則を支持する結果といえる」「全体として、今回の結果は、小児の2次治療におけるTAF+FTCとDTGの有効性と安全性に関するデータを提供するものである」「TAF+FTCの使用が拡大すると医療費の削減にもつながる可能性がある」「これらの知見は、アンカー薬の有無にかかわらず、小児にやさしいTAF+FTCの固定用量の合剤のさらなる開発を支持する」としている。
(医学ライター 菅野 守)