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セーフティネット病院と非セーフティネット病院の医療の質に差はあるか

貧しく医療サービスを十分受けられない患者を主に診療する「セーフティネット病院」はそれ以外の病院と比べて医療の質が低いといわれている。報道やペイ・フォー・パフォーマンス(治療成績に応じた医療費支払い)制度は医療の質が低い病院を改善させる影響力を持つはずだが、セーフティネット病院にはそのための投資ができない可能性をはらんでいる。そのため、これらの刺激がかえって病院間にある差異を増幅させる可能性があると懸念を表明する向きもある。米国フィラデルフィアにある退役軍人医療センターのRachel M. Werner氏らは、メディケイド(低所得者向け医療保険)患者の割合の高低で、病院間に医療の質の差があるかどうかを調べた。JAMA誌2008年5月14日号より。メディケイド患者の比率の高低で病院パフォーマンスを比較Werner氏らが行ったのは、2004年から2006年にかけての病院パフォーマンスに関する公式データを用いて、病院パフォーマンスとメディケイドがカバーした患者範囲との相関についての縦断研究。メディケイド患者の比率に応じて病院への支払い額を見積るためシミュレーション・モデルが用いられた。主要評価項目は、2004~2006年にかけての病院パフォーマンスの変化とし、メディケイド患者の比率によって医療成績の差に変化があったかどうかを検証した。治療成績に基づく報奨制度は病院間の質の差を助長調査対象となったのは4,464病院で、3,665病院(82%)が最終分析に残った。このうちメディケイド患者の比率が高い病院は2004年の治療成績は低く、改善の度合いも、メディケイド患者の比率が低い病院と比べてわずかだった。一方、メディケイド患者の比率が低い病院での急性心筋梗塞の治療成績は3.8パーセンテージ・ポイントで、同じく比率が高い病院の2.3パーセンテージ・ポイントを絶対差で1.5(P=0.03)、相対差で39%上回った。メディケイド患者の比率が低い病院で治療成績の向上が同じように大きかったのは、心不全(1.4パーセンテージ・ポイント差、P=0.04)と肺炎(1.3パーセンテージ・ポイント差、P

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英国移民女性、在住期間が長くなるに従い妊娠中の喫煙が増加し母乳哺育が低下

英国移民女性の母親としての健康行動は、在住期間が長くなるに従って悪化していることが、UCL小児保健研究所小児疫学・生物統計学センターのSummer Sherburne Hawkins氏らの調査により判明した。英国/アイルランド系の白人女性に比べ、少数民族出身の女性は子どもを母乳で育てる傾向があるが、妊娠中の喫煙やアルコール飲用、文化変容に伴う健康行動の変化に関する情報はこれまでなかったという。BMJ誌2008年5月10日号(オンライン版2008年4月10日号)掲載の報告。妊娠中および出産後の母親の健康行動を比較するコホート研究本試験は、妊娠中および出産後の母親の健康行動を英国/アイルランド系白人女性と少数民族出身女性で比較することを目的に、Millennium Cohort Study Child Health Groupが実施したプロスペクティブなコホート研究である。妊娠中の健康行動としては喫煙とアルコール飲用、出産後は母乳哺育の開始と継続期間について評価し、少数民族出身の母親では文化変容の指標(世代構成、家庭での会話に用いる言語、英国在住期間)がこれらの健康行動に及ぼす影響を検討した。英国/アイルランド系白人の母親6,478人と少数民族出身の母親2,110人が解析の対象となった。1世よりも2世、3世で。1世も在住期間が長くなるに従い健康行動が悪化英国/アイルランド系白人の母親に比べ、少数民族出身の母親は妊娠中の喫煙率(15% vs 37%)およびアルコール飲用率(14% vs 37%)が低く、母乳哺育の開始率(86% vs 69%)および母乳哺育の4ヵ月以上の継続率(40% vs 27%)が高かった。社会人口学的な背景因子で補正すると、少数民族出身の女性においては、1世に比べ2世、3世で妊娠中の喫煙率が高く[それぞれオッズ比:3.85(95%信頼区間:2.50~5.93)、4.70(2.49~8.90)]、母乳哺育の開始率[それぞれ0.92(0.88~0.97)、0.86(0.75~0.99)]および継続率[それぞれ0.72(0.62~0.83)、0.52(0.30~0.89)]が低かった。アルコール飲用については一貫性のある差は認めなかった。1世の女性でも、在住期間が5年経過するごとに、妊娠中の喫煙率が31%増加(4% vs 66%)し、母乳哺育継続率が5%低下(0% vs 10%)していた。Hawkins氏は、「少数民族出身の女性は、英国/アイルランド系白人の女性に比べ全般に母親としての健康行動が良好であったが、文化変容の指標である英国在住期間が長くなるに従って妊娠中の喫煙率、母乳哺育の継続率が悪化していた」と結論し、「医療従事者は、女性がリスクの高い健康行動をとる傾向について、民族を理由に過小評価すべきでない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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適切な冠動脈造影を受けていない狭心症疑い例は冠動脈イベントリスクが高い

英国では狭心症が疑われる早期例のうち高齢者、女性、南アジア系、貧困地区住民には冠動脈造影が十分に実施されておらず、適切な冠動脈造影を受けていない症例は冠動脈イベントのリスクが高いことが、Barts and the London NHS Trust心臓病部門のNeha Sekhri氏らによる調査で明らかとなった。心血管疾患の管理における不平等が予後に影響を及ぼす可能性がある。これまでの心臓病検査へのアクセスの不平等に関する研究の多くは検査の適切性を考慮していないという。BMJ誌2008年5月10日号(オンライン版2008年4月24日号)掲載の報告。冠動脈造影の実施状況と冠動脈イベントの発生を評価するコホート研究本試験は、安定狭心症が疑われる症例に対する冠動脈造影が公平に行われているか否かを評価し、実施状況が不十分な場合はそれが冠動脈イベント発生率を上昇させているかを検討するための多施設共同コホート研究である。対象は、2003年1~12月の間に英国の6つの外来診療施設を受診し、Rand consensus法で冠動脈造影の施行が適切とされた1,375例。主要評価項目は冠動脈造影の受療状況、冠動脈死、急性冠症候群のイベント発生とし、5年間のフォローアップが行われた。冠動脈造影へのアクセスの不平等、未受療例の予後不良が明らかに冠動脈造影の施行が適切とされた症例のうち、実際に受療していたのは420例(31%)であり、69%が受療していなかった。多変量解析では、冠動脈造影の施行率は50歳以下よりも64歳以上の症例で有意に低かった(ハザード比:0.60、95%信頼区間:0.38~0.96)。また、男性よりも女性(0.42、0.35~0.50)、白人よりも南アジア系(0.48、0.34~0.67)、Townsend indexによる貧富の5段階のうちの上位4段階よりも最貧困層(0.66、0.40~1.08)で有意に低かった。冠動脈イベントは230例に見られた。冠動脈造影の施行が適切とされたが受療しなかった症例は、受療した症例に比べ冠動脈イベントの発生率が有意に高かった(1.71、1.24~2.34)。Sekhri氏は、「狭心症が疑われる早期例のうち高齢者、女性、南アジア系、最貧困層には冠動脈造影が十分に実施されておらず、適切な冠動脈造影を受けていない症例は冠動脈イベントのリスクが高かった」と結論し、「個々の症例の管理法の決定を支援する臨床ガイダンスに基づく介入を行えば、必要な検査へのアクセスおよびアウトカムが改善される可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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頸動脈雑音が心筋梗塞、心血管死の予後予測因子に

頸動脈雑音(carotid bruit)の聴診により、心血管リスクに対する積極的な治療戦略が大きなベネフィットをもたらす症例を選択しうることが、Walter Reed米陸軍医療センターのChristopher A Pickett氏らが行ったメタ解析によって示された。頸動脈雑音は全身のアテローム性動脈硬化のマーカーとされるが、その脳血管イベントの予測因子としての意義は低いことがわかっている。そこで、同氏らは心血管イベントにおける頸動脈雑音の意義を検証し、Lancet誌2008年5月10日号で報告した。頸動脈雑音の有無で心筋梗塞、心血管死を予測しうるかを検証研究グループは、頸動脈雑音の有無で心筋梗塞および心血管死を予測しうるか否かを検証するためのメタ解析を行った。“carotid”および“bruit”をキーワードとしてMedline(1966~2007年8月)およびEmbase(1974~2007年8月)を検索し、得られた論文をさらに絞り込んだ。心筋梗塞の発症率および心血管死亡率をアウトカムの変数とした。論文の質はHayden rating schemeで評価し、データは変量効果モデルを用いてプールした。100人・年当たりの心筋梗塞発症率:3.69 vs 1.86、心血管死亡率:2.85 vs 1.11抽出された22論文のうち20論文(91%)がプロスペクティブなコホート研究であった。1万7,295例(6万2,413.5人・年)が解析の対象となり、フォローアップ期間中央値4年(2~7年)におけるサンプルサイズ中央値は273例(38~4,736例)であった。100人・年当たりの心筋梗塞の発症率は、頸動脈雑音が聴取された症例(8試験)が3.69(95%信頼区間:2.97~5.40)であったのに対し、頸動脈雑音が聴取されなかった症例(2試験)は1.86(0.24~3.48)であった。年間の心血管死亡率も、頸動脈雑音のある症例(16試験)が、ない症例(4試験)よりも高かった[2.85(2.16~3.54)/100人・年 vs 1.11(0.45~1.76)/100人・年]。頸動脈雑音がある症例とない症例を直接的に比較した4つの試験では、心筋梗塞のオッズ比は2.15(1.67~2.78)、心血管死は2.27(1.49~3.49)であった。Pickett氏は、「頸動脈雑音が聴取される症例は心筋梗塞および心血管死のリスクが有意に増大していた」と結論し、「頸動脈雑音を聴診することにより、心疾患のリスクを有する患者のうち、心血管リスクに対する積極的な治療戦略が大きなベネフィットをもたらす可能性のある症例を選択できるかもしれない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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同級生に影響力をもつ生徒の教室外での働きかけが、青少年の喫煙を抑制する

同級生に影響力をもつ生徒が教室外で友人に喫煙しないよう働きかける喫煙予防プログラムの有効性が確認された。青少年期の喫煙が中高年期における喫煙関連疾患への罹患、死亡をもたらすが、ニコチン依存症は青少年期に急速に確立されることを示すエビデンスがある。多くの国では学校が喫煙予防プログラムを行っているが、友人の働きかけによるアプローチの多くが教室内に限定されており、厳密な評価は少ないという。英国Bristol大学社会医学科のR Campbell氏がLancet誌2008年5月10日号で報告した。influential studentの働きかけによる喫煙抑制効果を評価研究グループは、中学校における喫煙予防を目的とした友人の働きかけによる介入の効果を評価するためにクラスター無作為化対照比較試験を実施した。対象は、イングランド/ウェールズの59校に通学する12~13歳の生徒1万730人。29校(5,372人)が通常の禁煙教育を継続する対照群に、30校(5,358人)が介入群に無作為に割り付けられた。介入法はASSIST(A Stop Smoking In Schools Trial)プログラムと呼ばれ、教室外での形式張らない交流の際に、友人が喫煙しないよう働きかける支援者として行動する生徒(influential student)を養成するものである。フォローアップは介入直後、1年後、2年後に実施した。ASSISTプログラムにより、喫煙率が22%低下対照群の学校に比べ、介入群の学校の生徒が喫煙者となるオッズ比は、介入直後(9,349人)が0.75(95%信頼区間:0.55~1.01)、フォローアップ1年後(9,147人)が0.77(0.59~0.99)、2年後(8,756人)が0.85(0.72~1.01)であった。高リスク群(ベースライン時に非習慣的喫煙者、試行的喫煙者、元喫煙者とされた群)のオッズ比は、介入直後(3,561人)が0.79(0.55~1.13)、フォローアップ1年後(3,483人)が0.75 (0.56~0.99)、2年後(3,294人が)0.85(0.70~1.02)であった。3回のフォローアップの全データを用いたマルチレベルモデルによる解析では、対照群の生徒に比べ介入群の生徒が喫煙者となるオッズ比は0.78(0.64~0.96)であり、介入群で22%低かった。Campbell氏は、「ASSISTプログラムを地域住民ベースで実施した場合、公衆衛生学的に重要な青少年の喫煙を低減できることが示唆された」と結論し、「このプログラムを毎年継続的に繰り返せば、学校全体の喫煙行動を取り巻く文化的規範に影響を及ぼし、介入の効果を増強する可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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妊娠糖尿病の治療にはインスリンよりメトホルミンが有利

妊娠糖尿病の女性に対するメトホルミン投与はロジカルな治療だが、その有効性と安全性を評価する無作為試験はない。ニュージーランド・オークランド市National Women's Health, Auckland City HospitalのJanet A. Rowan氏らは、妊娠糖尿病の女性を対象にメトホルミンとインスリンの比較試験を実施。周産期合併症の発生率では両者に差はないが、インスリン注射より経口のメトホルミンによる治療のほうが、患者には好まれると報告している。NEJM誌2008年5月8日号より。妊娠20~33週の女性751例と新生児を調査試験は、妊娠20~33週の妊娠糖尿病の女性751例を、メトホルミン(必要ならインスリンを追加)またはインスリンの治療に無作為に割り付けて行われた非盲検試験。主要転帰は、新生児低血糖、呼吸困難、光線療法の必要性、分娩時外傷、5分後アプガースコアが7点未満、未熟児とする複合転帰とした。副次的転帰は、新生児の身体測定値、母体の血糖コントロール、母体の高血圧合併症、分娩後耐糖能および治療許容性とした。メトホルミン群363例のうち92.6%は分娩までメトホルミン投与を受け続け、46.3%はインスリン追加投与を受けた。周産期合併症に差はなく、妊婦は「次回もメトホルミン」主要複合転帰の発生率はメトホルミン群32.0%、インスリン群32.2%で両者に差はなかった(相対リスク:1.00、95%信頼区間:0.90~1.10)。しかしメトホルミン群はインスリン群より多数の女性が、次の妊娠時にも今回自分たちが割り付けられた治療を選択すると答えた(76.6%対27.2%、P

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早期再分極と突然の心停止

 早期再分極は心電図の所見としてはよくみられるものであり、通常は良性と考えられている。早期再分極が不整脈を引き起こす可能性については実験的研究から仮定されたが、突然の心停止と臨床上の関連があるかどうかはまだわかっていない。本論は、フランス・ボルドーのMichel Haissaguerre氏らが、心電図の早期再分極の有病率を評価した報告。NEJM誌2008年5月8日号より。早期再分極の有病率を206例で評価 Haissaguerre氏らは22の医療機関で、特発性心室細動による心停止後、蘇生した206例の症例群についてデータを検討、心電図の早期再分極の有病率を評価した。 早期再分極は、QRS波のスラーまたはノッチとして現れ、心電図の下壁または側壁の導出部で少なくともベースラインから0.1mVのQRS-ST接合部上昇を呈したものと定義した。対照群は年齢、性、人種、身体活動レベルで適合した心臓病の既往歴がない412例で構成された。 植込型除細動器でモニタリングした結果を含む追跡データは、すべての症例から得られた。早期再分極のある症例は心室細動の再発率が高い 早期再分極の頻度は、特発性心室細動の既往歴のある症例群が対照群より高かった(31%対5%、P

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喫煙女性の肺疾患リスク、禁煙後20年で非喫煙者レベルに低下

喫煙は全体として死亡率上昇に関係しているが、喫煙継続あるいは禁煙後の、死亡率低下との関連については不確かで、とりわけ女性の喫煙と卵巣および結腸直腸との因果関係を推論する十分な証拠はなかった。米国ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院のStacey A. Kenfield氏らは、全米の看護師約10万5千人を対象に前向き観察研究を行った。その結果、死亡率のリスク増大に喫煙が関係していること、ただし禁煙によって改善する可能性があることを報告している。JAMA誌2008年5月7日号より。全米の看護師10万5千人弱を追跡調査研究は、1976年にスタートした「The Nurses’ Health Study」に基づくもので、1980~2004年の参加者10万4,519人を追跡調査したもの。参加女性の全死因(血管・呼吸器系疾患、肺、その他、その他)における喫煙と禁煙の関係を評価した。調査対象の死亡コホートは1万2,483例で、このうち全く喫煙経験のなかった者は4,485例(35.9%)、死亡時まで継続的に喫煙していた者は3,602例(28.9%)、過去に喫煙経験のあった者は4,396例(35.2%)だった。血管系疾患のリスクは禁煙後急激に低下喫煙群の総死亡率のリスクは非喫煙群と比較してハザード比は2.81で(95%信頼区間:2.68~2.95)、主要原因の死亡率についてもすべて同様に高かった。2004年版公衆衛生総監報告書(2004 surgeon general's report)の分類に基づく、喫煙に関連するリスクのハザード比は7.25(95%信頼区間:6.43~8.18)に達し、その他も1.58(1.45~1.73)だった。喫煙の結腸直腸リスクは非喫煙群と比較してハザード比1.63(1.29~2.05)、元喫煙群(現在は喫煙していない)との比較では1.23(1.02~1.49)だったが、卵巣については有意な関連が認められなかった。また喫煙を始めた年齢が若かった者について、全死亡率(P=0.003)、呼吸器疾患死亡率(P=0.001)、喫煙関連のの死亡率(P=0.001)に有意な傾向が認められた。なお、全死因死亡率の超過リスクは、禁煙後20年で非喫煙者のレベルに低下することがすべての転帰で観察された。おおむね死亡原因が喫煙に起因していたのは、喫煙者で約64%、元喫煙者では28%。Kenfield氏らは「喫煙女性の血管系疾患による死亡率の超過リスクは、禁煙すると急速に低下し、肺疾患でも20年以内に改善する可能性がある。喫煙開始年齢が遅いほど、呼吸器疾患や肺、その他喫煙関連の死リスクは低下するが、その他の疾患による死亡率にはほとんど影響が認められなかった」と結論した。

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小児細菌性髄膜炎へのコルチコステロイド補助療法は死亡率を低下させない

成人の場合は、コルチコステロイドの補助療法が細菌性髄膜炎による死亡率を有意に低下させることは知られている。小児患者にも同様の期待がされているが、臨床試験ではこれと相反する結果が導かれている。米国ペンシルバニア大学医学部感染症部門のJillian Mongelluzzo氏らは、小児細菌性髄膜炎に対するコルチコステロイド補助療法と臨床転帰との相関について、データベースを用いた多施設共同観察研究を行った。JAMA誌2008年5月7日号より。細菌性髄膜炎患者2780例を対象にコホート分析研究グループは、Pediatric Health Information Systemのデータベースから、18の州とワシントンD.C.にある27の三次子供病院を、2001年1月1日から2006年12月31日にかけて退院した細菌性髄膜炎を主病とする患者2,780例について、後ろ向きコホート研究を行った。患者が補助コルチコステロイドを受けられるかどうかを判定するため傾向スコアが用いられた。このスコアは疾患重症度と人口統計学上の標識を用いて導かれた。主要評価項目は、死亡までの期間と退院までの期間。いずれも年齢カテゴリーで層別化し、傾向調整後にコックス比例ハザードモデルを用いて解析された。死亡、退院への寄与は確認できなかった対象の年齢中央値は9ヵ月(四分位範囲、0~6歳)で、57%が男児。髄膜炎の原因菌で最も頻繁に確認されたのは肺炎連鎖球菌だった。コルチコステロイド補助療法は248例(8.9%)に実施された。全死亡率は4.2%(95%信頼区間:3.5%~5.0%)で、累積発生率はそれぞれ、入院7日後が2.2%、28日後が3.1%だった。コルチコステロイド補助療法による死亡率低下は、年齢を問わず確認できなかった。1歳以下ハザード比:1.09(95%信頼区間:0.53~2.24)、1~5歳:1.28(0.59~2.78)、5歳以上:0.92(0.38~2.25)。退院までの期間においても、同療法の有無による顕著な差は認められなかった。サブグループ解析でも、脊髄液培養の結果、原因菌が肺炎球菌か髄膜炎菌、あるいはその他の原因菌であるかにかかわらず変化は認められなかった。これら観察研究の結果から研究グループは、小児細菌性髄膜炎に対するコルチコステロイド補助療法は、死亡までの期間、退院までの期間のいずれにも関連性は確認できないと結論づけた。

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ARBは心筋梗塞の発症抑制についてACE阻害薬より劣るのか? -ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか(2)-

 “ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させるのか?”、“ARBの心筋梗塞発症抑制はACE阻害薬より劣るのか?”-これらの疑問に対する答えを一身に背負わされてきた試験が先ごろ発表された。冠動脈疾患ハイリスク例に対してACE阻害薬とARB テルミサルタン、そしてその2剤併用療法を比較したONTARGET試験1)だ。ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる!? この疑問について注目を集めるきっかけを2004年に発表されたVALUE試験2)にまで遡ってみた。ハイリスク高血圧患者に対して、バルサルタンを投与した場合、アムロジピンより心筋梗塞の発症率が有意に高かったのである。VALUE試験において心筋梗塞の発症は二次評価項目ではあったが、このような結果が発表前に誰が予想しただろうか。 その年の11月、米国トロント総合病院心臓外科のVerma氏は、この結果を受け、「Angiotensin receptor blockers and myocardial infarction –These drugs may increase myocardial infarction and patients may need to be told」というタイトルの論文をBMJ誌に発表した3)。ここでは前述のVALUE試験以外にもCHARM-Alternative試験などの結果からARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる可能性があり、ONTARGET試験の結果が発表されるまで、「ARBが咳の出ないACE阻害薬」と考えることに慎重になる必要があると言及した。そしてこの論争を投げかけたVerma氏も結論をONTARGET試験に委ねたのであった。ARBは心筋梗塞の発症リスクを高めない! その半年後、2005年夏にはARBの有用性を検証した無作為化比較試験のメタアナリシスが2報発表された4,5)。いずれの論文においても「ARBは心筋梗塞の発症リスクを有意に高めない」という結論に達し、Verma氏の仮説を支持するものとはならなかった。そしてここでもONTARGET試験がこの問題を解決する結果を導いてくれるものだと、ONTARGET試験に期待が寄せられた。ACE阻害薬は降圧効果と独立した冠動脈疾患発症抑制作用が認められる 一方、降圧薬の違いによるのアウトカムの格差に関するいくつかのメタアナリシスを発表してきたBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration (BPLTTC)は、2007年にACE阻害薬とARBのメタアナリシスを発表した6)。これによると5mmHgの降圧に対して冠動脈疾患の発症リスクをACE阻害薬は16%、ARBは17%減少させると推算されている。一方、降圧効果と独立した冠動脈疾患発症抑制作用はACE阻害薬だけに認められることを示した。 しかし、BPLTTCのメタアナリシスにおいては解析対象となった26の比較試験のうち、ACE阻害薬とARBをhead-to-headで比較した試験はわずか3つしか含まれていなかった。ELITEII7)(慢性心不全3,152例、カプトプリル vsロサルタン)、OPTIMAAL8)(急性心筋梗塞5,477例、カプトプリル vsロサルタン)、VALIANT9)(急性心筋梗塞9,818例、カプトプリル vsバルサルタン)の3つだ。これら個々の比較試験における心筋梗塞発症率や、これら3試験のメタアナリシス6)における冠動脈疾患発症率においてはACE阻害薬カプトプリルとARBの間には有意な差を認めてない。この有名なメタアナリシスもまた「ACE阻害薬とARBを直接比較した非常に大規模な比較試験であるONTARGET試験がこの疑問に対して何らかの重要な情報を与えてくれる」だろうとONTARGET試験への期待を抱かせたのであった。 「ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる」のではと懸念される中、慢性心不全例へのARBカンデサルタンの有用性を検証したCHARM試験のOverall解析においてカンデサルタンの投与によって慢性心不全例の心筋梗塞の発症率が有意に抑制されたとの報告10)もあったことは押さえておきたい。 ARBと心筋梗塞発症の議論を一身に背負わされたONTARGET試験 このようにONTARGET試験は「脳心血管イベントの高リスク患者におけるARBテルミサルタンのACE阻害薬に対する非劣性を検証する」といった主要目的とは別のところで、「心筋梗塞の発症抑制に関してARBがACE阻害薬より劣るか否か(もしかすると優るのか)」も明らかしてくれるのではないかと期待された試験でもあった。 そして2008年春、ONTARGET試験は発表された1)。この試験では〈1〉冠動脈疾患、〈2〉末梢動脈疾患、〈3〉脳血管疾患、〈4〉臓器障害を伴う糖尿病の4つのうちいずれかを有する55歳以上の者を対象として、〈1〉ARBテルミサルタン、〈2〉ACE阻害薬ラミプリル、〈3〉その併用の3群のうちいずれかの治療が施され、〈1〉心血管死、〈2〉非致死的心筋梗塞、〈3〉非致死的脳卒中、〈4〉うっ血性心不全による入院のいずれかが発症率が主要評価項目として検証された。中央値56ヵ月、すなわち4年と8ヵ月において主要評価項目はテルミサルタン群とラミプリル群でそれぞれ16.7%、16.5%発症し、テルミサルタンのラミプリルに対する非劣性が証明された。 一方、主要評価項目の構成要素の1つとされた「非致死的心筋梗塞」は25,620例中1,291例(5.0%)に発症した。治療群別に見ると、ラミプリル群で4.8%、テルミサルタン群で5.2%であり、テルミサルタンによる治療を受けた場合、5年弱の間に心筋梗塞を発症する危険性はラミプリルと差がないという結果となった(相対リスク1.07、95%信頼区間:0.94-1.22)。すなわち、心筋梗塞発症抑制効果はテルミサルタンとラミプリルで同程度であり、Verma氏の論説から始まった「ARB投与、少なくともテルミサルタン投与の懸念」を払拭するものとなったとみている。1) ONTARGET Investigators:N Engl J Med. 2008;358:1547-15592) Julius S et al.: Lancet. 2004;363:2022-20313) Verma S et al:BMJ. 2004 ;329:1248-12494) McDonald MA et al.: BMJ. 2005;331:873.5) Verdecchia P et al:Eur Heart J. 2005;26:2381-2386.6) Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration:J Hypertens. 2007;25:951-9587) Pitt B et al:Lancet. 2000;355:1582-1587.8) Dickstein K et al:Lancet. 2002;360:752-760.9) Pitt B et al:N Engl J Med. 2003;348:1309-1321.10) Demers C et al:JAMA. 2005;294:1794-1798.

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入院時のPCR法によるMRSA迅速検査は感染率を低減しない

入院時にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の全数スクリーニングとしてpolymerase chain reaction(PCR)法による迅速検査を実施しても一般病棟のMRSA感染率は低減しないことが、英国Guy's and St Thomas' NHS Foundation Trust感染症科のDakshika Jeyaratnam氏らの検討で明らかとなった。MRSA感染症は罹患率および死亡率が高く、入院期間を延長し、医療コストの増加をもたらす。英国では、MRSAを含む感染症関連保健医療の低減が政府の優先課題とされる。BMJ誌2008年4月26日号(オンライン版2008年4月16日号)掲載の報告。迅速PCR法と従来の培養検査のMRSA感染率を比較研究グループは、MRSAスクリーニングへの迅速検査の導入が一般病棟のMRSA感染率を低減させるか否かを評価するために、クラスター無作為化クロスオーバー試験を実施した。試験期間は2006年1月~2007年3月。3ヵ月のベースライン期間、5ヵ月の介入期間ののち、1ヵ月のウォッシュアウト期間を置いてクロスオーバーを行い、さらに5ヵ月間の介入を行った。対象はロンドン市の2つの地区(Guy's、St Thomas')の教育病院に入院した症例であり、入院時にMRSA陰性で、退院時にスクリーニング検査を受けた患者とした。MRSAの入院時スクリーニング検査としての迅速PCR法を従来の培養検査と比較した。主要評価項目はMRSA感染率(入院時MRSA陰性例が退院時に陽性となった割合)とした。退院時のMRSA感染率は両群間で有意差なし病棟に入院した9,608例のうち8,374例が症例選択基準を満たし、データをすべて取得できたのは6,888例(82.3%)であった。そのうち3,335例が培養検査群(対照群)に、3,553例が迅速検査群に割り付けられた。全体の入院時MRSA感染率は6.7%であった。入院から検査結果の報告までの所要時間(中央値)は、対照群の46時間に対し迅速検査では22時間と有意に短縮した(p<0.001)。不適切な予防的隔離の日数も、対照群の399日に対し迅速検査では277日と有意に減少した(p<0.001)。退院時のMRSA感染率は対照群が3.2%(108例)、迅速検査群は2.8%(99例)であった(非補正オッズ比:0.88、p=0.61)。事前に規定された交絡因子を考慮した場合の補正オッズ比は0.91(p=0.63)と両群間に有意な差は見られなかった。MRSA感染、創傷感染、菌血症の発現率も両群間に差を認めなかった。Jeyaratnam氏は、「迅速検査は検査結果の報告を速やかにし、病床稼働率にもインパクトを与えたが、MRSA感染率を低減させるというエビデンスは得られなかった」と結論し、「従来の培養検査との比較において、迅速検査に伴う医療コストの上昇は正当化されない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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PCI施術医の技能評価とデータ公開に有用な方法が開発された

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施術医の技能評価やアウトカムの予測にはnorth west quality improvement programme(NWQIP)モデルが有用で、データの提示、公開には累積ファンネルプロットおよびファンネルプロットが使用可能なことが、英国James Cook大学病院循環器科のBabu Kunadian氏らの検討で明らかとなった。英国では心臓外科医の相対的な技能が公開されているが、施術医特異的なPCIデータはまだないという。NWQIPはPCI施行後の心臓の主要有害事象の予測モデルを提供しており、内的および外的妥当性が確立されている。BMJ誌2008年4月26日号(オンライン版2008年3月26日号)掲載の報告。院内有害事象をNWQIPモデルで解析、ファンネルプロットで提示研究グループは、PCI施術医の技能の早期評価を目的に、確立されたリスクスコアに基づく予測結果を用いて施術医の院内アウトカムデータを比較する方法として、ファンネルプロットおよび累積ファンネルプロットを用いるアプローチの評価を行った。対象は、2003年1月~2006年12月に英国北東部の3次医療施設でPCIを実施した5人の循環器医。個々の施術医について、院内で発生した心血管/脳血管の主要有害事象(院内死亡、Q波心筋梗塞、緊急CABG、脳血管障害)をNWQIPの予測リスクを用いて解析した。それぞれの施術医の全体的な技能はファンネルプロットで示し、一連の患者をベースとした個々の施術医の技能は累積ファンネルプロットで提示した。PCI施行後のイベント発生率の実測値が予測値を下回るPCIを施行された5,198例のファンネルプロットにより、心血管/脳血管の主要有害事象の平均発生率は全体で1.96%であることが示された。これはNWQIPの予測リスクである2.06%を下回っている。全施術医における心血管/脳血管の主要有害事象の院内発生率の3σ上方管理限界は2.75%以内であり、2σ上方警告限界は2.49%であった。Kunadian氏は、「心血管/脳血管の主要有害事象の院内発生率は、全体としてイベント発生率の予測値を下回っていた。PCI施行後の院内イベント発生率は、3σ管理限界のファンネルプロットおよび累積ファンネルプロットを用いて個々の施術医のアウトカムを提示し、公開すれば十分にモニター可能であった。上方警告限界(管理限界値2σ)は内的モニタリングに使用可能である」と結論している。また、「これらのチャートの主たる便益は、イベント発生の実測値と予測値を別個に示すことで透明性を保てることである。このアプローチにより、個々の施術医は自分の技能をモニターできるが、他の同業医の技能評価にも使用できるかもしれない。この方法は、個々の施術医の症例規模(case volume)や症例分類法(case mix)の差にかかわりなく適用可能である」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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喫煙者の7割がニコチン依存症

ファイザー株式会社が全国47都道府県の喫煙者9400人に対して行ったインターネット調査によると、7割が「ニコチン依存症」と判明した、という。そのうち、6割はニコチン依存症の自覚があるにもかかわらず、実際に医療関係者に禁煙について相談したのは1割以下だった。都道府県別にみると、ニコチン依存症の割合が最も高いのは鳥取県の79.5%で、最も低いのは京都府63.5%。 また、ニコチン依存症を最も自覚しているのは大阪府(78.9%)、最も自覚していないのは徳島県(48.9%)だった。 詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2008/2008_05_15.html

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インドの急性冠症候群はSTEMIが多く、貧困層の30日死亡率が高い

インドの急性冠症候群(ACS)患者は先進国に比べST上昇心筋梗塞(STEMI)の割合が高く、貧困層はエビデンスに基づく治療を受けにくいために30日死亡率が高いことが、インドSt John's医科大学のDenis Xavier氏が実施したCREATE registryにより明らかとなった。2001年には世界で710万人が虚血性心疾患で死亡したが、そのうち570万人(80%)が低所得国の症例であった。インドは世界でACSによる負担がもっとも大きい国であるが、その治療およびアウトカムの実態はほとんど知られていない。Lancet誌2008年4月26日号掲載の報告。心筋梗塞疑い例を対象としたレジストリー研究CREATE registryは、インドの50都市89施設で実施されたプロスペクティブなレジストリー研究である。対象は、明確な心電図上の変化(STEMI、非STEMI、不安定狭心症)が見られ急性心筋梗塞(MI)が疑われる症例、あるいは心電図上の変化は見られないが虚血性心疾患の既往を有しMIが疑われる症例とした。臨床的アウトカムおよび30日全原因死亡率の評価を行った。70%以上が貧困層~中間所得下位層2002~2005年の間に2万937例が登録され、明確な心電図上の変化により診断がなされた2万468例のうち1万2,405例(60.6%)がSTEMIであった。全体の平均年齢は57.5歳であり、非STEMI例/不安定狭心症(59.3歳)よりもSTEMI例(56.3歳)のほうが若年であった。1万737例(52.5%)が中間所得層の下位層であり、3,999例(19.6%)が貧困層であった。症状発現から来院までの所要時間中央値は360分、来院から血栓溶解療法開始までの時間は50分。糖尿病が6,226例(30.4%)、高血圧が7,720例(37.7%)、喫煙者は8,242例(40.2%)であった。30日死亡率はSTEMI例および貧困層で有意に高いSTEMI例は非STEMI例よりも血栓溶解薬(96.3%がストレプトキナーゼ)(58.5% vs 3.4%)、抗血小板薬(98.2% vs 97.4%)、ACE阻害薬/アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)(60.5% vs 51.2%)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)(8.0% vs 6.7%)の施行率が有意に高かった(いずれもp<0.0001)。逆に、STEMI例は非STEMI例/不安定狭心症に比べβ遮断薬(57.5% vs 61.9%)、脂質低下薬(50.8% vs 53.9%)、冠動脈バイパス移植術(CABG)(1.9% vs 4.4%)の施行率が有意に低かった(いずれもp<0.0001)。STEMI例の30日アウトカムが死亡8.6%、再梗塞2.3%、心停止3.4%、脳卒中0.7%であったのに対し、非STEMI例/不安定狭心症ではそれぞれ3.7%、1.2%、1.2%、0.3%と有意に良好であった(いずれもp<0.0001)。富裕層は貧困層に比べ血栓溶解療法(60.6% vs 52.3%)、β遮断薬(58.8% vs 49.6%)、脂質低下薬(61.2% vs 36.0%)、ACE阻害薬/ARB(63.2% vs 54.1%)、PCI(15.3% vs 2.0%)、CABG(7.5% vs 0.7%)の施行率が有意に高かった(いずれもp<0.0001)。貧困層の30日死亡率は富裕層よりも有意に高かった(8.2% vs 5.5%、p<0.0001)。治療法で補正するとこの差は消失したが、リスク因子およびベースライン時の患者背景で補正した場合は維持された。Xavier氏は、「インドのACSは先進国に比べSTEMI例が多かった。これらの患者の多くは貧困層であり、それゆえにエビデンスに基づく治療を受けにくく、30日死亡率が高かった」と結論し、「貧困層における病院へのアクセスの遅れを解消し、高額すぎない治療法を提供できれば、罹患率および死亡率が低減する可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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モニタリング戦略による生存の差はわずか、抗レトロウイルス療法中のHIV感染例

抗レトロウイルス薬によるfirst-line治療を受けているHIV感染例においては、個々のモニタリング戦略(臨床観察、ウイルス量、CD4細胞数)のベネフィットはほぼ同等であることが、英国Royal Free and University College Medical SchoolのAndrew N Phillips氏らの検討で明らかとなった。WHOは、低所得国におけるHIV感染例の治療アプローチとして、標準化されたレジメンによる抗レトロウイルス治療とともに、ウイルス量よりもむしろ臨床観察あるいは可能な場合はCD4細胞数のカウントによるモニタリングを推奨している。同氏らはこれを検証し、Lancet誌2008年4月26日号で報告した。2nd-lineへの切り替えを決めるモニタリング法が、アウトカムに及ぼす影響を評価研究グループは、医療資源が限定的な状況において、HIV感染例に対する個々のモニタリング戦略がアウトカムに及ぼす影響についてコンピュータシミュレーションモデルを用いた検討を行った。臨床観察、ウイルス量、CD4細胞数に基づくモニタリング戦略を解析の対象とした。現在のHIV感染例に対するWHO推奨のfirst-lineレジメンは、スタブジン(国内商品名:ゼリット)、ラミブジン(ゼフィックス)、ネビラピン(ビラミューン)を用いた抗レトロウイルス療法である。これを2nd-lineレジメンに切り替える時期を決定する方法として、どのモニタリング法が優れるかを検討するために、生存率、耐性発現などのアウトカムの評価を行った。抗レトロウイルス薬への広範なアクセス可能性が最優先5年生存率の予測値は、ウイルス量のモニタリング(ウイルスコピー数>500コピー/mLとなった時点で2nd-lineレジメンに切り替え)が83%、CD4細胞数のモニタリング(ピーク値から50%低減した時点で切り替え)が82%、臨床的なモニタリング(WHO stage 3の新規イベントが2つあるいはWHO stage 4の新規イベントが1つ発現した時点で切り替え)が82%であった。20年生存率の換算値はそれぞれ67%、64%、64%であった。ウイルス量のモニタリングは生存期間がわずかに延長していたが、費用効果が最も優れるわけではなかった。Phillips氏は、「スタブジン、ラミブジン、ネビラピンによるfirst-lineレジメンを受けたHIV感染例において、2nd-lineレジメンへの切り替えを判断するモニタリング法としては、ウイルス量あるいはCD4細胞数のモニターが臨床観察を上回るベネフィットはわずかなものであった」と結論し、「安価で有効性の高い薬剤の開発が重要だが、現時点における最優先事項は、モニタリングの有無にかかわらず抗レトロウイルス薬への広範なアクセス可能性である」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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ステント留置術 vs 冠動脈バイパス術 長期転帰に有意差なし

冠動脈ステント留置術と冠動脈バイパス術(CABG)の治療効果に関する比較研究はこれまでにも行われてきたが、非保護左冠動脈主幹部の病変にはCABGが標準治療とされるため、両者の長期転帰には限られたデータしかなかった。今回、欧米よりもこの部位へのステント留置術が広く行われている韓国・カソリック大のKi Bae Seung氏らが、比較研究の結果を報告。両手技の患者死亡率に有意差は認められないものの、ステント留置術のほうが標的血管の血行再建術施行率が高まる傾向があるとしている。NEJMオンライン版2008年3月31日号、本誌2008年4月24日号より。ステント留置術1,102例とCABG 1,138例を比較 対象は、韓国で2000年1月~2006年6月の間に、非保護左冠動脈主幹部病変に対する治療として、ステント留置術を受けた患者1,102例と、CABGを受けた患者1,138例。コホート全体と、ステント種類別のサブグループについて、傾向スコア・マッチング法で有害転帰を比較した。比較項目は、死亡、Q波心筋梗塞か脳卒中または両者の複合転帰による死亡、標的血管血行再建術。死亡リスク、複合転帰ともに有意差なし結果、ステント群とバイパス群の間に、死亡リスク、複合転帰リスクで有意差は見られなかった。ステント群のハザード比は死亡リスク1.18(95%CI:0.77~1.80)、複転帰リスク1.10(同0.75~1.62)。しかし、標的血管血行再建術の施行率が、ステント群のほうがバイパス群より有意に高かった(ハザード比:4.76、95%CI:2.80~8.11)。ステント種類別では、ベアメタル・ステント群とバイパス群の比較も、薬剤溶出ステント群とバイパス群の比較も類似の結果だったが、薬剤溶出ステント群のほうが、死亡率と複合エンドポイント発生率が高まる傾向があった。このためKi氏らは、ステント留置術とCABGの間に、複合エンドポイント死亡率の有意差は見いだせないと結論した。ただ、ステント留置術は、薬剤溶出ステントを使用した場合でも、CABGより標的血管血行再建術の施行率が高まる傾向が見られる、としている。(武藤まき:医療ライター)

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公共施設等同様に自宅にもAEDを装備すると有益なのか?

米国では毎年約166,200例の突然の心停止が病院外で起きている。そのうち約4分の3は自宅で、それゆえ各家庭で適時治療を行えるかどうかは救急医療の課題になっている。Gust H. Bardy氏らHAT(Home Automated External Defibrillator Trial)研究グループは、公共施設等でのAED設置が突然の心停止の生存率改善に寄与していることから、リスクの高い患者の生存率改善のため在宅AED使用の有用性を検討した。NEJMオンライン版2008年4月1日号、本誌2008年4月24日号より。自宅療養者7,001例をAED使用と不使用に割り付け生存率を調査突然の心停止リスクが中等度である患者が、自宅でAEDを使えることで生存率が改善するかどうかを調べるため、前壁心筋梗塞既往患者のうち植込み型除細動器の非適応患者7,001例を対象とする無作為化試験が行われた。対象は、自宅で突然の心停止が起きた場合、救急電話をして心肺蘇生術(CPR)を実行する群と、AEDを使用して救急電話、そしてCPRを実行する群に無作為に割り付けられた。対象患者の年齢中央値は62歳。女性患者の割合は17%。追跡期間(中央値)は37.3ヵ月。主要転帰は全死因死亡とされた。蘇生法に重点を置いた従来法と比べて、有意に改善することはなかった対象患者の全死亡は450例。AED非使用群が228/3,506例(6.5%)、AED群は222/3,495例(6.4%)で、ハザード比は0.97(95%CI:0.81~1.17、P=0.77)。事前規定の主要サブグループ別にみた死亡率に有意差はみられなかった。頻脈性不整脈での突然の心停止と考えられた死亡例は160例(35.6%)で、このうち家庭で心停止が起きたのは117例で、そのうち58例が発作を目撃された。そして32例にAEDが使用された。この32例中、適切に電気ショックが受けられたのは14例であり、その後4例が生存退院した。不適切な電気ショックに関する報告はなかった。この結果を受け、「家庭でAEDを使用しても、従来の蘇生法に重点を置いた方法と比べて、生存率が有意に改善することはなかった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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エベロリムス溶出ステントはパクリタキセル溶出ステントより有利

免疫抑制剤エベロリムスを溶出するコバルトクロム製ステントは予備的研究で、冠動脈疾患患者の血管再狭窄リスクを軽減するとの見込みが示されていたが、エベロリムス・ステントの安全性と有効性を評価する「SPIRIT III」試験に携わっていたコロンビア大学メディカルセンター(米国ニューヨーク市)のGregg W. Stone氏らは、普及しているパクリタキセル溶出ステントより、血管内径の狭窄も、治療失敗による有害イベントも有意に少ないと報告した。JAMA誌2008年4月23日号より。全米65施設で1,002例を1年間追跡調査「SPIRIT III」は、2005年6月22日~2006年3月15日にかけて、米国各地の65大学と地域医療機関が行った前向き無作為単盲検試験。患者は、病変部の長さが28mm以下、基準血管直径が2.5~3.75mmの、経皮的冠動脈介入術を受ける男女1002例で、エベロリムス溶出ステント群(n=669)とパクリタキセル溶出ステント群(n=333)に、2:1に無作為に割り付けた。事前に選んだ患者564例について8ヵ月間、血管造影による追跡調査を行い、436例で完了した。臨床追跡調査は1、6、9、12ヵ月目に行った。プライマリーエンドポイントは血管造影に基づくステント留置部分の遠隔期内径損失の非劣性または優位性だった。主要な副次的エンドポイントは、9ヵ月後における標的血管治療失敗イベント(心臓死、心筋梗塞または標的血管血行再建術)の非劣性評価。付加的な副次的エンドポイントは9、12ヵ月後の主要有害心イベント(心臓死、心筋梗塞または標的血管血行再建術)だった。遠隔期内径損失も有害イベントも有意に少ない治療部分の遠隔期内径損失は、エベロリムス群(平均値0.14[SD 0.41]mm)のほうがパクリタキセル群(同0.28[SD 0.48]mm)より有意に少なかった(両群差0.14mm、95%CI:0.23~0.05、P≦0.004)。また、9ヵ月後の標的血管治療失敗でも、エベロリムス群はパクリタキセル群に劣らなかった(7.2%対9.0%、%比1.9ポイント、95%CI:5.6%~1.8%、相対リスク:0.79、95%CI:0.51~1.23、P<0.001)。心筋梗塞と標的病変血管血行再建術も少なかったため、主要有害心イベントは、9ヵ月後(4.6%対8.1%、相対リスク:0.56、95%CI:0.34~0.94、P=0.03)、1年後(6.0%対10.3%、相対リスク:0.58、95%CI:0.37~0.90、P=0.02)とも有意に減少した。Stone氏らは「エベロリムス溶出ステントはパクリタキセル溶出ステントより遠隔期内径損失は減少し、標的血管治療失敗も劣らず、1年間の追跡調査でも主要な有害心イベントはより少ない」としている。

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肛門管におけるフルオロウラシル/シスプラチン/放射線併用療法は不成功

 肛門管患者にとって化学・放射線併用療法は根治療法の第一選択だが、フルオロウラシル/マイトマイシンとの併用療法では5年無病生存率は約65%にとどまる。そのためテキサス大学消化器腫瘍部門のJaffer A. Ajani氏らは、標準治療とされるマイトマイシン併用療法と比較するため、シスプラチン併用療法を試験的に実施、有効性について検証した。JAMA誌2008年4月23日号より。肛門管患者682例を2つの介入群に無作為割り付けUS Gastrointestinal Intergroup trial RTOG 98-11は、フルオロウラシル/マイトマイシン/放射線療法の併用と、フルオロウラシル/シスプラチン/放射線療法の併用とを、第III相多施設共同無作為化試験によって比較検証した。治験参加者は1998年10月31日~2005年6月27日の間に登録された肛門管患者682例。参加者は、2つの介入群の内のどれかに無作為に割り付けられた。(1)マイトマイシンをベースとしたグループ(n = 341):フルオロウラシル(1-4日目、29-32日目に1000mg/m2)とマイトマイシン(1日目と29日目に10mg/m2)と放射線療法(45-59Gy)、(2)シスプラチンをベースとしたグループ(n = 341):フルオロウラシル(1-4、29-32、57-60、85-88日目に1000mg/m2)とシスプラチン(1、29、57、85日目に75mg/m2)と放射線療法(45-59Gy、57日目に開始)の2群。主要エンドポイントは5年無病生存率、副次的エンドポイントは全生存率と再発までの期間とした。ほとんどの指標でマイトマイシン投与群が好結果計644例で評価が可能だった。全症例の追跡期間中央値は2.51年。年齢中央値は55歳、69%が女性で、27%は腫瘍径が5cm以上、26%は臨床的にリンパ節転移陽性だった。5年無病生存率は、マイトマイシン群が60%(95%信頼区間[CI] 53%-67%)、シスプラチン群が54%(95%CI 46%-60%)であった(P = 0.17)。5年の全生存率は、マイトマイシン群が75%(95%CI 67%-81%)とシスプラチン群が70%(95%CI 63%-76%)であった(P =0 .10)。シスプラチン群の5年後の肛門周囲での再発と遠隔転移率はそれぞれ25%(95%CI 20%-30%)と15%(95%CI 10%-20%)、マイトマイシン群はそれぞれ33%(95%CI 27%-40%)と19%(95%CI 14%-24%)であった。人工肛門造設術の頻度はマイトマイシン群の方がシスプラチン群より有意に低かった(10%対19%、P =0.02)。重度の血液学的毒性はマイトマイシン群でより重症だった(P

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子どもの外遊びはママの時代より減少と8割のママが認識 ほとんどのママが子どもの紫外線対策を実施できずにいる

ロート製薬株式会社が、関東圏及び関西圏の1歳~9歳の子どもを持つママ300名に子どもの外遊びと紫外線対策に関する意識を探るために行ったアンケート調査によると、4割のママが自分の子どもは他の子どもと比べて「よく外で遊ぶほう」だと思っている一方、約8割のママは自分の子どもの頃に比べて外遊びは減っていると認識していることがわかった。子どもが外遊びをする一日平均時間は、春・夏・秋で90分前後、冬は約50分で、外で遊ぶ時間は年齢や子どもの性別によって大きな差はなかったが、ママが「外でよく遊ぶほう」と思う子どもと「外であまり遊ばない」と思う子の差は、春・夏・秋で60分前後、冬は約30分前後もあった。また、子どもへの紫外線対策を「よくしている」ママはわずか1割で、紫外線対策を「一年を通して」何らか実施している人はわずか3%だった。知識はあるのに紫外線対策を実践できないママの実態が浮き彫りになっている。詳細はプレスリリースへhttp://www.rohto.co.jp/comp/news/?n=r080430

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