32881.
わが国の冠動脈バイパス術(CABG)において、off-pump CABGの施行数はon-pumpをしのぐ。一方、off-pumpの予後改善作用がon-pumpを超えるとのエビデンスはない。Late Breaking Clinical Trialsセッションで報告されたCORONARY試験(CABG Off or On Pump Revascularization Study)もまた、off-pumpとon-pumpを比較した過去最大の試験ながら、off-pumpの優越性は証明されなかった。カナダ・マクマスター大学のAndré Lamy氏が報告した。CORONARY試験の対象は、正中胸骨切開によるCABGの適応がある4,752例。いずれも、「末梢血管疾患」、「腎機能低下」、「70歳以上」、「70歳未満だが危険因子保有」などのリスクを有する。試験開始時の平均年齢は68歳、男性が80%を占めた。EuroSCOREは「0~2」〔低リスク〕が3割弱、「3~5」〔中等リスク〕が半数強だった。また、40%弱は緊急手術例である。さらに、60%近くが3枝病変、20%弱が2枝病変例だった。これら4,752例が、”Off-pump”CABG群(2,375例)と"On-pump"CABG群(2,377例)に無作為化された。CABG術者は、off-pump、on-pumpともそれぞれ100例以上の経験がある、2年以上のキャリアを有する心臓外科医である。この点は、先に報告されているROOBY試験と大きく異なる。30日間追跡後、一次評価項目である「死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全」発生率は、off-pump群:9,8%、on-pump群:10.3%で両群間に有意差はなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.79~1.14、p=0.59)。内訳を比較しても、いずれかの群で有意に減少していたイベントはなかった。ただし、血行再建術再施行は、off-pump群で有意に多かった。一方、輸血の必要、急性腎傷害はon-pump群で有意に多かった。Lamy氏は上記から、「熟練者が行う限り、off-pump、on-pumpいずれのCABGも合理的な選択肢」と結論した。これに対し壇上のパネリストからは「本試験はoff-pumpの優越性を証明できなかっただけであり、off-pumpとon-pumpの同等性は証明されているのか」との疑問の声があがった。確かに、当初仮説は「off-pump群で28%のリスク減少が見られる」というものである。これに対しLamy氏は、両群の結果の類似性を強調していた。なお、本試験には、もう一つの一次評価項目、「5年間の死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全と冠血行再建術再施行」が設定されている。長期追跡によりoff-pumpとon-pumpの予後に差がつく可能性は否定できない。公表予定は2016年。結果が待たれる。