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無作為化試験の報告論文の質は改善されたか?

英国オックスフォード大学医学統計センターのSally Hopewell氏らは、2001年に出された試験論文の執筆勧告「Consolidated Standards of Reporting Trials(CONSORT)Statement」以後、PubMedで検索される論文の質(無作為化試験の特性および手法)が改善されたかを、2000年と2006年とで比較を行った。結果、重要な方法論の面で改善がみられはしたが、論文の質自体は容認できるレベル以下だったという。BMJ誌2010年3月27日号(オンライン版2010年3月23日号)掲載より。2000年と2006年の発表論文を比較Hopewell氏らは、2000年12月と2006年12月にPubMed検索された主要無作為化試験論文(試験デザインが平行群、交差、クラスタ、要因解析、分割解析など)を対象とした。対象論文を、発表年および試験デザインで階層化し、総合項目(試験デザイン、発表学術誌のタイプ、専門領域、介入タイプ、データ収集サイト数、無作為化群の数、サンプルサイズ)、および方法論的項目(試験タイトルに無作為化が使用されているか、主要評価項目が明確か、サンプルサイズ算出、無作為化の手法、割付法の隠蔽度合い、盲検かどうか、盲検の手法)を主要評価項目とし比較検討された。結果、大部分は、専門誌発表[2000年群:482/519件(93%)vs. 2006年群:555/616件(90%)]の、2群比較[同:379/519(73%) vs. 468/616(76%)]、平行群比較[同:383/519 (74%)vs. 477/616(78%)]の研究論文だった。しかし、2000年、2006年ともに、平行群比較の試験被験者中央値は、80例だった。また、医薬品試験の論文の占める割合は、2000年393/519件(76%)から2006年は356/616(58%)に減っていた。一方で、手術試験論文の割合は増えていた(10% vs. 21%)。なお残る不透明性方法論的側面で改善が認められたのは、主要評価項目の詳細記述(リスク比:1.18、95%信頼区間:1.04~1.33)、サンプルサイズ算出(同:1.66、1.40~1.95)、無作為化の手法(同:1.62、1.32~1.97)、割付法の隠蔽度合い(同:1.40、1.11~1.76)だった。しかし、盲検化については改善したことが認められなかった(同:0.91、0.75~1.10)。以上からHopewell氏は、方法論的な面で改善がみられた部分もあったが、質に関しては改善されているとは言えないと結論。「試験が、どのように設計され、実行されたかの透明性が確保されていなければ、その試験の実効性および有効性を評価することは難しい」とまとめている。

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「希望のちから」で考えるがんの臨床試験のこと 映画鑑賞会ほか キャンサーネットがん啓発イベント開催

NPO法人キャンサーネットジャパンは、乳がん臨床試験を題材にした映画「希望のちから」の鑑賞会他がん啓発イベントを下記の通り開催予定。一般向けのイベントではあるが、医師、看護師、薬剤師など医療者の参加も歓迎。詳細は下記URLにて。 2010/4/17(土)映画「希望のちから」で考えるがんの臨床試験のこと in 東京 http://www.cancernet.jp/cinema100417.html 2010/5/1(土)がんと一緒に働こう~治療を続けながら働くコツ~ http://www.cancernet.jp/eve100501.html 2010/5/9(日)4団体共催公開フォーラム (第4回がん先端医療を速やかに患者さんに届けるには) ・がん医療費の実際と改革の可能性 ・知ってほしいがん高額医療と患者の生活実感 http://www.cancernet.jp/eve100509.html 2010/5/22(土)もっと知ってほしい大腸がんのこと http://www.cancernet.jp/eve100522.html 2010/5/29(土)第22回日本肝胆膵学会・学術集会 市民公開講座 http://www.cancernet.jp/eve100529prc.htmlパープルリボンキャラバンin仙台~すい臓がんに光をあてる

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経口抗Xa薬「エドキサバン」の国内製造販売承認を申請

 第一三共株式会社は6日、経口抗Xa薬(抗凝固薬)エドキサバン(JAN:エドキサバントシル酸塩水和物)について、下肢整形外科手術患者における静脈血栓塞栓症の予防適応に関して、国内で製造販売承認申請を行ったと発表した。 エドキサバンは同社が創製した経口の抗凝固薬であり、血管内で血液凝固に関与するXa因子を直接阻害する作用メカニズムを有している。これまでの臨床試験成績から、本剤の1日1回経口投与による膝関節全置換術施行患者、股関節全置換術施行患者等における術後静脈血栓塞栓症の予防効果および安全性を確認しているという。 なお、心房細動に伴う血栓塞栓症の予防についての試験(ENGAGE AF-TIMI48)、および深部静脈血栓症、肺塞栓症患者における静脈血栓塞栓症の二次予防についての試験(HOKUSAI VTE)を、グローバル第III相臨床試験として現在、実施しているとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.daiichisankyo.co.jp/news/detail/003666.html

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世界の都市力と比較した東京の医療状況とは?

プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は6日、米国 Partnership for New York Cityと共同で、年次レポート「Cities of Opportunity - 世界の都市力比較」を発表した。同レポートでは、世界の産業・金融・文化の中心となる主要21都市について、都市を活性化する主要素(都市力)を、2009年に収集したデータをもとに10の領域・58の指数を用いて分析し、それぞれランキングを公表している。分析の結果、東京は、10の分析領域のうちTransportation and infrastructure (交通・インフラ)が21都市中トップとなり、またHealth, safety and security (健康・安全・治安)、Intellectual capital(知的資本)およびTechnology IQ and innovation (テクノロジー知能指数・技術革新)の3領域において、いずれもトップ3に入る高位置を占めている。Health, safety and security(健康・安全・治安)においては、東京はストックホルムに次いで2位。構成指数のうち、新生児の生存率は21都市中トップ、病院の数や犯罪発生率、政治的・社会的環境面においても上位3位以内に入っている。詳細はプレスリリースへhttp://www.pwcjp.com/news/20100406.html

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XELOX療法が早期結腸がんの術後補助化学療法として欧州で承認

スイス・ロシュ社は3月30日、Xeloda(capecitabine/国内販売名:ゼローダ)とoxaliplatin(国内販売名:エルプラット)の併用(XELOX)療法が早期結腸がん患者の術後補助化学療法として、欧州医薬品庁より承認されたことを発表した。グループ会社である中外製薬が5日に報告した。承認は、手術直後からXELOX療法を受けた患者の無病生存期間が5-fluorouracil/leucovorin(5-FU/LV)療法による治療を受けた患者よりも長いことを示した、ステージIII(早期)の結腸がん患者を対象とした主要な臨床試験の一つであるNO16968(XELOXA)試験の結果に基づいている。XELOX療法を受けた患者の3年無病生存率(DFS)は、5-FU/LV投与群よりも優れていたとのこと(XELOX群の71.0%に対し5-FU/LV群は67.0%、ハザード比0.80、p=0.0045)。欧州での承認に続き、XELOXは世界の他の地域での適応拡大が期待されている。Xelodaの単独療法は既に欧州、米国、日本ならびに世界各国で、結腸がん患者に対する術後補助化学療法として承認されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.chugai-pharm.co.jp/hc/ss/news/detail/20100405110000.html

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全国の病院の品質管理体制の実態は?

株式会社ケアレビューは6日、急性期病院の品質(医療の質)管理状況に関する調査を実施し、調査結果を報告した。この調査は、同社が運営する急性期病院の診療実績比較サイト『病院情報局』(http://hospia.jp/)で情報提供している全国1,500あまりの急性期病院(DPC参加病院)を対象として、「治療結果の分析」「患者満足度調査」「職員満足度調査」の実施状況を尋ねることにより、病院の品質管理体制の実態を調査したもの。調査方法は郵送によるアンケート調査で、調査期間は2010年2月1日~3月10日。有効回答は472病院から得られた(回答率30.3%)。「患者満足度調査」は9割以上の病院で実施されているが、「治療結果の分析」や「職員満足度調査」は半数以上の病院では実施されていないことが明らかになった。実施サイクルでみると、毎月継続的な管理が行われている病院は、「治療結果の分析」では17%、「患者満足度調査」では6%にとどまっていた。また、「職員満足度調査」を毎年実施している病院は20%にとどまっている。調査や分析の結果について、病院のホームページで情報提供している病院は、「治療結果」は9%、「患者満足度」は10%、「職員満足度」は1%にとどまっていた。病院内での情報提供を合わせると、「患者満足度」は8割弱の病院で情報提供されているが、「治療結果」については7割近くの病院で情報提供が行われていないことがわかったという。今回の調査結果を受けて同社は、「今回の調査は、日本の病院の中でも先進的なマネジメントが行われていることが期待されるDPC参加病院を対象としましたが、残念ながら多くの病院で管理体制面の遅れが懸念される調査結果となりました。とくに、治療結果の分析さえも行われていない病院では、品質(医療の質)改善への組織的な取組みも不十分であることが想定されます。」と述べている。詳細はこちらhttp://www.carereview.co.jp/2010/04/post-41.html

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中国で子どもの死亡率が大幅低減、MDG4の達成が明らかに

中国では近年、子どもの死亡率が大幅に低減し、主な死因は肺炎や早産合併症などであり、長期的には先天性異常や偶発事故、乳幼児突然死症候群(SIDS)の重要性が増大すると予測されることが、イギリスEdinburgh大学医学部公衆衛生学センターのIgor Rudan氏らWHO/UNICEFのChild Health Epidemiology Reference Group (CHERG)が実施した調査で明らかとなった。中国政府および国連の公式データによれば、中国では子どもの死亡数の低下が進み、ミレニアム開発目標4(MDG4、乳幼児死亡率の削減)を達成したとされる。しかし、以前に行われた子どもの世界疾病負担に関する調査では中国の情報が十分ではなかったためデータに大きな乖離があるという。Lancet誌2010年3月27日号掲載の報告。中国の一般公開情報を基にした系統的調査CHERGと北京大学の研究グループは、一般に公開された情報を用いて中国における新生児(生後1ヵ月未満)、乳児(1~11ヵ月)、小児(5歳未満)の主要な死亡原因について系統的な調査を行った。中国保健省統計局のウェブサイト、中国学術情報(Chinese National Knowledge Infrastructure; CNKI)データベース、中国保健統計年鑑(1990~2008年)のほか、5歳未満の子どもの死因について中国語で書かれた質の高い地域住民ベースの縦断的研究206論文からも情報を得た。地域、年齢、集団、主要な死因ごとに総死亡数を推算する統計モデルを開発した。子どもの死亡率が大幅に減少、主な死因は肺炎、出生時仮死、早産合併症1990~2008年の間に、生児出生1,000人当たりの死亡数は、新生児が34.0人から10.2人へと70%減少し、乳児は53.5人から14.9人へ72%低下、小児は64.6人から18.5人へ71%低下した。これは、MDG4のターゲット(2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)を満たすものである。2008年の主要な死因は肺炎、出生時仮死、早産合併症であり、それぞれ全死亡の15~17%を占めた。この期間中に死因として先天性異常(11%)および偶発事故(10%)の重要度が増大した。乳幼児突然死症候群(SIDS)の発生率は5%であった。著者は、「中国の一般に公開されたデータベースは疾病負担を予測する情報として重要である」とし、「傾向としては、早産合併症が中国の子どもの主な死因になると予測されるが、長期的には先天性異常や事故、SIDSによる死亡の重要性が高まると考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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新型インフルの最初の感染流行期、子どもの感染率は予想の10倍以上だった

イギリスにおける最初の2009パンデミックインフルエンザA H1N1ウイルスの感染流行期に、発病率が高い地域では子どもの約3人に1人がH1N1ウイルスに感染しており、これは当初の予想の10倍以上に相当することが、イギリス健康保護局(HPA)感染症センターのElizabeth Miller氏らによる調査で明らかとなった。2009年6月11日、WHOがブタを起源とするインフルエンザA H1N1の世界的な感染爆発を宣言したのを受け、イギリスでは感染の伝搬をリアルタイムで把握するモデルの構築を中心とする対策が進められた。H1N1ウイルスによる将来的な疾病負担やワクチンなどによる介入の効果をモデル化するには、年齢別の免疫獲得の状況や感染率を知ることが重要だという。Lancet誌2010年3月27日号(オンライン版2010年1月21日号)掲載の報告。年齢別の抗体価32倍以上の検体率を感染流行期の前後で比較研究グループは、イギリスにおけるH1N1ウイルスの感染状況を調査する横断的血清学研究を実施した。イギリス健康保護局による血清疫学プログラムの年次検体採取の一部として、2008年(H1N1ウイルス感染流行第1波の前)に1,403の血清検体を採取し、2009年8~9月(感染流行第1波の後)には1,954検体を集めた。抗体価は赤血球凝集抑制試験およびマイクロ中和試験で測定した。年齢別に2008年のH1N1ウイルスに対する抗体の保有率を算出し、赤血球凝集抑制抗体価が感染防御反応とされる32倍(1:32)以上に達した検体の割合を第1波の前後で比較した。子どもはワクチン接種の主要ターゲット感染流行第1波前の血清検体では、赤血球凝集抑制試験およびマイクロ中和試験による抗体価は加齢とともに有意に増加した(F検定:p<0.0001)。赤血球凝集抑制試験による抗体価が32倍以上の検体率は、0~4歳児の1.8%(3/171検体)から80歳以上の高齢者の31.3%(52/166検体)の範囲にわたった。ロンドンおよびウェストミッドランドでは、感染流行第1波前に対する第1波後の、赤血球凝集抑制抗体価32倍以上の検体率の増加分は、5歳未満の子どもが21.3%、5~14歳が42.0%、15~24歳が20.6%であり、25歳以上の年齢では差を認めなかった。他の地域では、第1波前に比べ第1波後に有意な増加(6.3%)を示したのは15歳未満の子どもだけであった。著者は、「H1N1ウイルスの最初の感染流行期に、インフルエンザによる発病率が高い地域では、子どもの約3人に1人がH1N1ウイルスに感染しており、これは当初の予想の10倍以上に相当する。すでに抗体を保有している高齢者は感染率が低かった」と結論し、「子どもはインフルエンザの伝搬において中心的な役割を担うため、自身のみならず他者への感染予防の観点から、集団免疫によるワクチン接種の重要なターゲットとなる可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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再発乳がん患者はこれまでと同じ生活が維持できることを強く望んでいる

日本イーライリリー株式会社は5日、再発乳がん患者を含む抗がん剤治療経験のある乳がん患者(216名)を対象に、抗がん剤治療に何を求めているか、自らがほしい情報やサポートについてアンケート調査を実施した結果を発表した。調査結果から、再発乳がん患者では特に、抗がん剤治療に対して、生存期間の延長、副作用が少ないこと、および、これまでと同じ生活が維持できることを強く望んでいることがわかった。乳がん患者が医療者以外から得たい支援としては、体験者からのアドバイスや、病気や治療についての知識を得る機会、が上位に挙げられていた。また、同社では「再発乳がんと向き合うためのヒント-先輩患者から学ぶ」と題する、啓発冊子を発行する。詳細はプレスリリースへhttps://www.lilly.co.jp/pressrelease/2010/news_2010_09.aspx

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関節リウマチにおける抗TNF製剤3剤の直接比較サーベイ

関節リウマチにおける抗TNF製剤、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ3剤の治療反応性、寛解率、およびアドヒアランスのhead to head比較サーベイが報告された。「Arthritis & Rheumatism」誌(2010年1月号)掲載より。本研究は、デンマーク全域における生物学的製剤使用患者のレジストリー、DANBIO(患者登録期間:2000年10月~2007年12月)から、生物学的製剤新規使用患者2,326名を対象とした。投与された生物学的製剤の割合は、アダリムマブ29%、エタネルセプト22%、インフリキシマブ49%であった。患者背景において、性別、年齢、IgM-RF Positive、罹病期間に差はみられなかった。一方、MTXの併用率と用量、プレドニゾロンの併用率と用量は特に差が認められた。MTXの併用率は、アダリムマブ70%、エタネルセプト61%、インフリキシマブ87%であった。MTXの併用量は、アダリムマブ20(12.5-25)mg/週、エタネルセプト15 (12.5-20)mg/週、インフリキシマブ15 (10-20) mg/週であった。プレドニゾロンの併用率は、アダリムマブ40%、エタネルセプト43%、インフリキシマブ50%であった。プレドニゾロンの併用量は、アダリムマブ7.5(5-10)mg/日、エタネルセプト7.5(5-10)mg/日、インフリキシマブ7.5(5-10)mg/日であった。主な結果は以下の通り。 26週後の治療効果達成確率 Odds ratios(95%信頼区間)・アダリムマブvs.インフリキシマブ:ACR70%反応率2.05(1.52-2.76)、ACR50%反応率1.92(1.51-2.44)、Good EULAR反応率2.10(1.66-2.66)、Good/moderate EULAR反応率2.76(2.04-3.74)、DAS寛解1.78(1.37-2.31)、CDAI(Clinical Disease Activity Index)寛解1.83(1.32-2.55)・エタネルセプトvs.インフリキシマブ:ACR70%反応率1.78(1.28-2.50)、ACR50%反応率1.50(1.14-1.96)、Good EULAR反応率1.41(1.09-1.84)、Good/moderate EULAR反応率1.99(1.45-2.72)、DAS寛解1.31(0.97-1.77)、CDAI寛解1.16(0.78-1.72)・アダリムマブvs. エタネルセプト:ACR70%反応率1.15(0.82-1.60)、ACR50%反応率1.28(0.97-1.69)、Good EULAR反応率1.49(1.13-1.96)、Good/moderate EULAR反応率1.39(0.97-2.00)、DAS寛解1.36(1.00-1.84)、CDAI寛解1.58(1.07-2.34) 全投与中止例 Hazard ratios(95%信頼区間)インフリキシマブvs. アダリムマブ: 1.35(1.15-1.58)、インフリキシマブvs. エタネルセプト: 1.98(1.63-2.40)、アダリムマブvs.エタネルセプト:1.47(1.20-1.80)結論としてHetland氏は、「インフリキシマブは最も低い治療反応率、寛解率、アドヒアランスを示し、アダリムマブは最も高い治療反応率と寛解率を示した。また、エタネルセプトは最も長い投与継続率を示した」とまとめている。(ケアネット 呉 晨)

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抗菌薬rifaximin、肝性脳症の治療効果だけでなく予防効果も

肝硬変の合併症である肝性脳症は重篤な意識障害により、患者・家族およびヘルスケアシステムに多大な負担を課すが、吸収率が最小の抗菌薬rifaximinには、肝性脳症の予防効果もあるようだ。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNathan M. Bass氏らが行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果による。同薬についてはこれまで、急性肝性脳症に対する治療効果は、十分実証されていた。NEJM誌2010年3月25日号掲載より。反復性肝性脳症寛解期の患者299例を、rifaximin投与群とプラセボに無作為化試験は、慢性肝疾患による反復性肝性脳症が寛解期の患者299例を対象に行われた。被験者は6ヵ月間にわたり、rifaximin(550mgを1日2回)投与群(140例)と、プラセボ投与群(159例)に無作為に割り付けられ追跡された。有効性の主要エンドポイントは、肝性脳症と診断された初回発症までの期間とし、主要な副次エンドポイントは、肝性脳症に関連する初回入院までの期間とされた。rifaximin投与群の方が、エピソード、入院リスクとも半減6ヵ月超期間中、rifaximin投与群はプラセボと比較して、肝性脳症エピソードのリスクが有意に低かった。rifaximin投与群のハザード比は0.42(95%信頼区間:0.28~0.64、P

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中国の糖尿病有病率9.7%・9,240万人

急速にライフスタイルが変化した中国では、糖尿病の蔓延が懸念されている。中国・北京にある中日友好病院のWenying Yang氏らは、糖尿病有病率を推定するため、2007年6月~2008年5月に、全国調査を行った。結果、糖尿病有病率は9.7%・9,240万人、糖尿病前症有病率は15.5%・1億4820万人に上ることが明らかになった。NEJM誌2010年3月25日号掲載より。糖尿病前症有病率は15.5%・1億4,820万人調査は、中国14の州・自治区から、20歳以上の46,239人を抽出したサンプル調査の手法で行われた。被験者は、前夜絶食後、経口ブドウ糖負荷試験を受け、空腹時血糖値、2時間後血糖値測定によって、糖尿病あるいは糖尿病前症(すなわち空腹時血糖値異常または耐糖能異常)を診断された。以前に糖尿病と診断されたことがあるかどうかは、自己報告に基づいて確認した。結果、トータルの糖尿病有病率(以前に糖尿病と診断された人も含む)は9.7%(男性 10.6%、女性8.8%)、糖尿病前症15.5%(男性16.1%、女性14.9%)だった。これは、糖尿病成人は推定9,240万人(男性5,020万人、女性4,220万人)、糖尿病前症成人は推定1億4,820万人(男性7,610万人、女性7,210万人)に上ることを示す。年齢、体重に比例して有病率増大、地方よりも都市部で糖尿病有病率は、年齢とともに増加していること(「20~39歳」3.2%、「40~59歳」11.5%、「60歳以上」20.4%)、体重の多い人ほど有病率が高いこと(BMIが「18.5未満」4.5%、「18.5~24.9」7.6%、「25.0~29.9」12.8%、「30.0以上」18.5%)が明らかになった。また、地方よりも都市部の住民の方が高く(11.4%対8.2%)、耐糖能異常(糖尿病前症)の有病率の方が空腹時血糖値異常(糖尿病)より高かった(男性11.0%対3.2%、女性10.9%対2.2%)。以上からYang氏は、「中国ではすでに糖尿病は重大な国民的な健康問題である。糖尿病の予防および治療戦略が必要だ」と結論している。(医療ライター:武藤まき)

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患者は医師にうそをつく!?

株式会社QLifeが行った医療者・患者間のコミュニケーション事情に関する調査結果によると、28%の患者が医療者にウソをついたことがあると回答していることがわかった。性別では、男性では5人に1人、女性では3人に1人に上るという。また年代別では、30-50代に多かった。その一方で「医療者に対してウソをつくという発想自体がない」とする人も多かった。うその内容を見ると、症状や服薬コンプライアンス、生活習慣などが多く、既往歴や重複受診については少なかった。●詳細はプレスリリースへhttp://www.qlife.co.jp/news/857.html

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社会経済状況が低階層は高階層に比べ総死亡リスクが1.6倍

社会経済状況が低階層の人は、高階層に比べ、総死亡リスクが1.6倍に増大することが、英国公務員を対象とした「Whitehall II」調査の分析で明らかになった。特に、食事内容や運動など、健康に関する行動様式の違いが主な原因だという。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)疫学・国民健康研究センターのSilvia Stringhini氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2010年3月24/31日合併号で発表された。低階層と高階層の死亡率格差は1.94/1,000人・年「Whitehall II」調査は1985年にスタートし、35~55歳の英国ロンドンに住む公務員を対象とした、前向きコホート試験。研究グループはそのうち、2009年4月まで追跡した、合計9,590人について、分析を行った。社会経済状況については調査開始時点で、公務員の等級によって、高・中・低の3段階に分類。また、喫煙やアルコール摂取、食事内容、運動については、追跡期間中4回にわたり調査を行った。追跡期間中の死亡は、654人だった。これについて、性別と誕生年について補正を行った後、社会経済状況の違いについてみてみると、低階層の死亡リスクは、高階層に比べ、1.60倍だった(死亡率格差:1.94/1,000人・年)。階層による死亡リスク格差の72%は行動様式が原因試験開始時点における健康に関する行動様式をモデルに盛り込むことで、先の階層による死亡率格差は、42%減少した。さらに、同行動様式を時間依存性共変数として盛り込んだところ、同格差は72%も減少した。なかでも、心血管疾患による死亡リスクの格差は、行動様式を試験開始時点のみ入れた場合で29%、時間依存性共変数として入れた場合で45%それぞれ減少し、非がん・非心血管疾患による死亡リスクは、それぞれ61%、94%減少した。これは、試験開始後以降の行動様式もモデルに盛り込むことで、食事内容や運動、アルコール摂取の総死亡リスクに関する説明力が、7%から17%、5%から21%、3%から12%へ、それぞれ増大したことによるという。なお、喫煙については、行動様式を試験開始後以降も盛り込んだ場合でも、32%から35%と、大きな差はみられなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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急性胸痛でICU治療、入室時の仰臥位収縮期血圧が高いほど1年死亡リスクは低い

急性胸痛により集中治療室(ICU)で治療を受けた患者のうち、入室時の仰臥位収縮期血圧が高い人ほど、1年後の死亡リスクは低下するようだ。スウェーデンLinkoping大学医学健康科学部門のUlf Stenestrand氏らが、約12万人の患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年3月24/31日合併号で発表した。ICU入室時仰臥位収縮期血圧を四分位範囲に分類Stenestrand氏らは、1997~2007年にかけて、急性胸痛によりICUで治療を受けた11万9,151人について、入室時の仰臥位収縮期血圧を調べた。研究グループは被験者を同血圧の測定値によって、「Q1:128mmHg未満」「Q2:128~144mmHg」「Q3:145~162mmHg」「Q4:163mmHg以上」の四分位範囲に分類し、1年後死亡率との関係について分析した。追跡期間の平均値は、2.47年(標準偏差:1.5年、範囲:1~10年)だった。「163mmHg以上」群の1年死亡リスクは、「128~144mmHg」群の0.76倍補正は、年齢、性別、喫煙、拡張期血圧値、入・退院時の降圧薬の服用、退院時の高脂血症薬と抗血小板薬の服用について行った。その結果、入室時の仰臥位収縮期血圧「Q4:163mmHg以上」が、1年死亡リスクが最も低く、「Q2:128~144mmHg」群に対するハザード比は0.76(95%信頼区間:0.72~0.80)だった。Q2群に対するハザード比は、「Q1:128mmHg未満」群では1.46(同:1.39~1.52)、「Q3:145~162mmHg」群は0.83(同:0.79~0.87)だった。Q2群と比べた1年死亡絶対リスクは、Q4群が21.7%、Q3群が15.2%それぞれ低かった一方、Q1群は40.3%高かった。Q4群と比較したQ2群の予後悪化の独立因子は、BMI、前歴にあり、狭心症、急性心筋梗塞に患者を限定した場合も、Q2群と比べたQ4群の1年死亡絶対リスクのハザード比は、0.75(同:0.71~0.80)と低かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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アストラゼネカがウェブサイト「がんになっても」リニューアル、新機能も追加

アストラゼネカ株式会社は3月26日、がん患者やその家族に、上手ながんとの向きあい方をテーマにしたウェブサイト「がんになっても」(http://www.az-oncology.jp/)をリニューアルし、新機能を追加したと発表した。「がんになっても」は2005年12月の開設以来、がんと向きあう方々の様々な声、体験談、医療従事者とよりよいコミュニケーションを行なうヒント、がん医療用語、高額療養費など様々なコンテンツを紹介してきた。今回のリニューアルでは、体験談を、年齢や治療の状況、投稿テーマごとに体験談を絞り込んで検索できるように、検索機能が追加された。また、RSS機能も新たに追加され、更新されたコンテンツの情報を自動で受け取れるようになった。詳細はプレスリリースへhttp://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/2010/10_03_29.html

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メタボへの危機感は20代から始まっている 働く女性の「メタボと生活習慣」に関する意識調査より

株式会社ナガセ ビューティケァは30日、同社が首都圏の20歳代~50歳代の働く女性を対象に行ったアンケート“働く女性の「メタボと生活習慣」に関する意識調査”の結果を発表した。結果から、働く女性の7割以上が、自分はメタボまたはメタボ予備軍だと思っていることがわかった。危機感は20代からすでに始まっているようだ。「メタボ=男性」というイメージを持ってしまいがちだが、同社では、仕事が忙しく生活習慣の乱れた働く女性も、知らぬ間に「メタボへの道」を歩き始めているのではないかと仮定して調査を行った。それを裏切る予想外の回答が続々とあがり、多くの働く女性が「メタボ」に危機感を持っていることが浮き彫りになったという。働く女性に『自分はメタボあるいはメタボ予備軍だと思いますか?』と質問したところ、7割以上が自分はメタボ・メタボ予備軍だと感じている、と回答した(「メタボだと思う」13.4%、「ややメタボ気味だと思う」22.8%、「今はメタボではないが、危機感はある」38.8%)。また、なぜそのように思うのかを自由に答えてもらったところ、「お腹が出てきた・肉がついたと感じるから」(98人)という答えが一番多く、次いで「太っている・太ってきたと感じるから」(47人)、「体重が以前に比べて増加したから」(46人)という回答が続いた。また、「階段を上る時に息切れがし、降りる時は膝に体重がかかり痛みを感じるため」(30代)というリアルな回答もあった。健康診断や医師からメタボと診断されたり、メタボの基準に当てはまるというよりも、以前と比べて変化した体重や体型がきっかけで、自己流でメタボと判断しているようだ。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://nbc.jp/beauty/pdf/20100330.pdf

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肥満者は肝硬変リスクが高い

肥満は、肝硬変の発生率を増すようだ。英国オックスフォード大学がん疫学部門のBette Liu氏らが、英国中年女性を対象に行った前向き試験「Million Women Study」からの結果で、致死性肝硬変のうち約17%は、肥満に由来するもので、アルコール由来の約42%に匹敵するものだという。BMJ誌2010年3月20日号(オンライン版2010年3月11日号)掲載より。平均56歳の女性123万を6.2年追跡「Million Women Study」は、1996~2001年に英国とスコットランドの公的医療機関であるNHS乳がんスクリーニングセンターで参加者を集め、その入院や死亡情報をルーチンに集約している情報センターの記録を追跡調査し行われた。参加者は計123万662人で、平均年齢(募集登録時点)は56歳、平均6.2年追跡された。主要評価項目は、肝硬変による初回入院または死亡の相対リスクおよび絶対リスク。年齢、試験への募集期間、アルコール消費量、喫煙、社会経済学的状態、身体活動で補正が行われた。肥満で飲酒習慣のある女性は特に注意追跡期間中、肝硬変による初回入院または死亡は1,811例だった。BMIが22.5超の女性は、その値が増すほど肝硬変の発生率が高まった。BMIが5単位増すごとに補正後肝硬変リスクは28%増大(相対リスク:1.28、P

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肥満と飲酒は相乗的に肝疾患リスクを増大する

アルコール消費量とBMIは、相乗的に肝疾患リスクを増大するようだ。英国グラスゴー大学地域医療部門公衆衛生・ヘルス政策のCarole L Hart氏らが1万人近いスコットランド人男性が参加した2つの前向きコホート試験データを解析し、報告した。BMJ誌2010年3月20日号(オンライン版2010年3月11日号)掲載より。平均47歳スコットランド人男性1万弱を29年追跡解析が行われたのは、男性9,559例(平均年齢47.3±9.55歳)が参加した「Midspan」と呼ばれる2つの前向きコホート試験。1つ目の「Main」試験は、1965~1968年にスコットランド中心地帯の職場、タイリー島および本島の住民が参加し行われた(参加者年齢:14~92歳)。2つ目は「Collaborative」試験で、1970~1973年にグラスゴー、クライドバンク、グランジマウスにある27の職場から参加者が集められ行われた(同:21~75歳)。両試験参加者は2007年12月31日まで、平均29年(範囲:0.13~42年)追跡された。参加者は、BMI値(25未満:やせ/標準体重、25~<30:過体重、≧30:肥満)と、アルコール消費量(非飲酒、1~14、≧15単位/週;1単位はビール1/2本)で、9グループに振り分けられ、肝疾患罹患率、死亡率について検討された。BMIとアルコール消費量とも数値が高い人ほどリスク増主因が肝疾患だった死亡は80例(0.8%)、原因を問わない肝疾患死亡は146例(1.5%)だった。「Collaborative」試験では、196例(3.3%)が、肝疾患による死亡、入院またはがんだった。BMI(P=0.001)とアルコール消費量(P

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准教授 平山陽示先生「全人的医療への入り口」

平山先生は循環器内科医を20年経験後、総合診療科の道に入る。医師が自分の専門領域しか診察しない今の医療体制を変化させるべく、総合的に診察して患者さんのメンタル面を含む治療アプローチを実践。東京医科大学病院における「総合診療科」の設立に尽力し現在活躍中である。プライマリ・ケアの重要性から総合診療へ大学病院での初期研修は、通常各診療科目をラウンドしますが、それだけではプライマリ・ケアの習得は困難です。専門診療科のラウンドでは入院患者ばかりを診察、外来患者を診察することがほとんどありません。大部分の患者さんは既に診断がついています。しかし、多くの患者さんは「疾患名」ではなく「主訴」で病院の外来を訪れます。そこでは患者さんの訴えから病気を診断していく重要なプロセスがあります。「症候論」といってもいいし、「診断学」「診断推論」と言っても構いませんが、この初期の段階では幅広い知識と技術が必要です。そして、この研修にはプライマリ・ケアを扱う部門が必要となります。例えば、循環器内科をラウンドすれば心筋梗塞の入院患者さんを診察。しかし、この患者さんが病院を訪れたのは「胸が痛かった」からであり、実際にはこの「胸痛」という症候から正しく診断しなければならないわけです。「胸痛」を主訴とする患者は心臓が原因であれば循環器科、肺が原因でならば呼吸器科、肋骨骨折ならば整形外科、帯状疱疹ならば皮膚科、心因性の胸痛ならば精神科に紹介することもあるわけです。循環器医は心臓由来の胸痛ではないと診断するだけではなく、その患者の胸痛の原因がなんであるのかを推論、院内でたらい回しをせずに適切な診療科に橋渡しするべきです。だからこそ専門治療のスぺシャリストを目指ししている医師にもプライマリ・ケアの知識が必要なのです。幅広いジェネラリストの上にスペシャリストが立つのです。ジェネラリストとしての地固めをしないと良いスペシャリストにはなれません。以前は、プライマリ・ケアを学ぶ場はあまりありませんでした。アクセスのよい都心にある東京医科大学は市民病院的な役割も果たしており、紹介状の有無に限らず、単なる風邪や下痢で来院する患者さんも比較的多く、プライマリ・ケアを学ぶ環境が揃っていました。それも総合診療科が育った要因です。また、この領域では全国的に有名な大滝純司教授をお迎えすることが出来たのも幸運でした。なぜ総合診療なのか東京医科大学病院総合診療科設立のきっかけは新医師臨床研修制度の始まりでした。新制度の目的がプライマリ・ケアの習得であるので、当院では初期研修医に総合診療科のラウンドが義務付けられています。最近では後期研修で総合診療科を希望する人が増えてきており、総合診療科が役に立つ診療科目であることを研修医たちが認知し始めているのを実感しています。総合診療科は、文字どおり総合的に患者さんを診る診療科であり、患者さんが訴えている症状を読み取り、身体所見や検査所見を加味して推論した診断で次なる専門診療科への道筋をつけるチーム医療と同時に、専門医の手を煩わせることもない一般的な疾患(Common disease)は総合診療科で治療をしています。また、総合診療では専門診療科との連携を図りながら、プライマリ・ケアを通して診療のの基礎を固めることができます。ですから、総合診療科の役割のひとつは、研修医に病気を診るのではなく患者さんを診るという態度を身に付けさせることでもあるのです。例えば、MUS(Medically unexplained symptom:医学的に説明できない症状)を訴えてくる患者さんにはメンタルな要因も多いわけですが、そのときに身体疾患がみつからなくとも"症状"まで否定することなく、その症状を現す意味について、患者さんの社会的環境要因も考えるぐらいのことが医師の頭の中にないといけません。いわゆる「全人的医療」、つまり病気を診るのではなく患者さんを診ることの教育が必要なのです。診療科目が細分化されすぎて専門的な知識のみで症状を追うのではなく、幅広いプライマリ・ケアの知識を持った上での診察が求められています。東京医科大学病院の研修医にこの意識を持たせることも総合診療科の重要な役割です。総合診療科という立場への理解不足総合診療科として専門診療科の医師と連携がうまくとれているかと言えば、必ずしもそうではありません。それは臓器専門医にプライマリ・ケアが十分に理解されてないからだと思います。総合診療科は初期診療の担い手ですが、決してスーパーマンではないので、専門診療科で診ないと言った患者さんを何でも引き受けることが出来るわけではありません。極端な例を挙げれば、原発不明がんの患者さんは、いくつかの臓器にがんが見つかっても原発巣が同定されないと、どの診療科も主治医になろうとはせず院内でたらい回しにされてしまう危険があります。だからといってプライマリ・ケアの総合診療科がこのような患者を受け持つことは適切ではありません。現に専門診療科からの患者さんの押し付けで疲弊している総合診療科も多々あるように聞いています。また、総合診療の場合、各診療科目との連携が重要となるのでコミュニケーション能力は極めて重要です。しかし、連携を図るのが容易でない時があります。その場合相手の診療科に患者さんを押し付けるのではなく「一緒に診てほしい」「相談に乗ってほしい」とお願いする心がけを指導しています。連携をとる苦労はどこにでもあると思いますが、難しいですね。総合医の果たす役割今の医療体制では、患者さんが自ら診療科を探すことが多いため、自ら選んだ診療科では病気が分からず帰宅するケースがあります。その意味では総合診療科は医療の玄関口として、その先に専門性の高い医師に依頼して先端治療へ導くなど役割は大きいです。また、プライマリ・ケアを通して診療の基本を研修医に教えるのも総合医であり総合診療科の役割です。現在では、総合的に診療ができるジェネラリストが求められています。総合診療科を目指すドクターがもう少し多くならなくては、今の医療体制の変革には限界があると思います。英国では家庭医制度が確立されており、患者がいきなり総合病院や大学病院に行くことはまずありません。家庭医に診てもらってから専門医へ紹介され診療を受けます。そのため家庭医になるためのプログラムが確立しています。我々の総合診療科でも家庭医養成プログラムを用意しており、何人かの後期研修医がそのプログラムに則って研修しています。家庭医はメンタル面を含めた総合的な診察をします。家族全員を診るため、大人は内科、子どもは小児科などの振り分けを行わず、家族に同じ症状があれば家庭内での原因も探ります。家族全体を診ていくという姿は医療の理想のひとつの型でもあります。もし、そういう家庭医を大学病院でも育てていくとしたら総合診療科がなくてはできないと思います。総合医認定制度がスタート総合診療科がしっかりとプライマリ・ケアを実践するには、専門医に委ねるべき患者を臓器別専門科がしっかり請け負ってくれることが大切です。総合診療と専門診療がうまく連携できていれば、より少ない専門医でも病院は機能するはずですし、それが本来の病院の姿だと私は思っています。厚生労働省も総合医を推進、「総合医認定制度」を視野に入れて検討しているようです。日本プライマリ・ケア学会、日本総合診療医学会、日本家庭医療学会の3学会は、今春にひとつにまとまって総合医(家庭や総合診療医)の育成プログラムと認定に向けてすでに準備が進んでいます。この認定制度により、首都圏はもとより地域医療も大きく変化、そして患者さん側の医療に対する意識も変化していくでしょうね。多くの総合医(ジェネラリスト)が活躍すれば患者さんは単なる風邪や下痢などの一般的な疾患で大病院を受診することも少なくなり、医療費削減にもつながります。私は東京医科大学病院において、総合診療科の第一線で活動してきました。現在取材も多く、注目を浴びている診療科目です。ぜひ、総合医(ジェネラリスト)を目指す人が多くなることを期待します。質問と回答を公開中!

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