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減量達成後は、タンパク質多め、GI指数低めの食事が体重減少を維持

減量達成後の体重減少維持には、タンパク質が多め、グリセミック指数(GI)は低めの食事が、長続きする食事療法であり体重減少維持に結びつくことが、ヨーロッパ8ヵ国で行われた無作為化試験「Diogenes(Diet, Obesity, and Genes)」の結果、明らかになった。スクリーニングを受けた平均年齢41歳、平均BMI値34の1,209例のうち、938例に対しまず8週間の低エネルギー食(800kcal/日)介入が行われ、基線体重より8%以上の体重減少に達した773例を、5つの食事療法群に無作為化し26週間にわたり比較検討した結果による。NEJM誌2010年11月25日号掲載より。5つの食事療法群に無作為化し、いずれが長続きし体重減少を維持するかを検討本試験は、体重減少後のリバウンドおよび肥満関連リスクを抑制するために有効な食事療法を、タンパク質量およびGI値に着目して評価することを目的とした。評価された5つの食事療法群は、(1)低タンパク(総エネルギーの13%)・低GI食群、(2)低タンパク・高GI食群、(3)高タンパク(総エネルギーの25%)・低GI食群、(4)高タンパク・高GI食群、(5)対照群(各国食事療法ガイドラインに準じ中タンパクで、GI値は不問)であった。群間の摂取タンパク質量の高低差は12%を、GI値の高低差は15単位を目標とされた。食欲と体重管理能力を調べるため、総エネルギー量に制限は設けられなかったが、5群とも脂肪摂取は中等度(総エネルギーの25~30%)となるよう調整された。目標摂取量が達成できるよう、家族に対するレシピ提供、調理法や行動のアドバイスが行われ、参加国のうち2ヵ国では栄養量が調整済みの食品が無料で配布された。被験者は、体重減少維持試験当初6週間は隔週で、その後は1ヵ月に1回、食事カウンセリングを受けた。また維持試験介入前3日間、4週後、26週後に食事量を量り記録することが求められた。低タンパク・高GI食群のみリバウンドが有意に維持試験を完了したのは548例(71%)だった。試験脱落者が少なかったのは、高タンパク食群26.4%、低GI食群25.6%だった(低タンパク・高GI食群37.4%との比較で、それぞれP=0.02、P=0.01)。最初に行われた8週間の低エネルギー食(800kcal/日)介入時の体重減少は、平均11.0kgだった。その後の維持試験完了者548例について解析した結果、低タンパク・高GI食群のみ有意なリバウンドが認められた(1.67kg、95%信頼区間:0.48~2.87)。維持試験被験者(773例)のintention-to-treat解析の結果、体重再増加は、高タンパク食群の方が低タンパク食群よりも0.93kg(95%信頼区間:0.31~1.55)少なく、また、低GI食群の方が高GI食群よりも0.95kg(同:0.33~1.57)少なかった(いずれもP=0.003)。試験完了者の解析結果も同様だった。食事療法に関する有害事象は群間に有意な違いは認められなかった。なお栄養摂取量について、高タンパク食群の方が低タンパク食群と比べて、タンパク質量が5.4%多く、炭水化物量は7.1%低かった(両群間比較のP

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妊娠第1期のPPI投与、先天異常のリスク増大と有意な関連認められず

妊娠第1期の妊婦にプロトンポンプ阻害薬(PPI)を投与しても、産児の主要な先天異常リスクの増大とは有意な関連が認められなかったことが、大規模コホート試験の結果、明らかにされた。デンマークStatens Serum Institut疫学部門のBjorn Pasternak氏らがデンマークで1996~2008年に生まれた新生児約84万児を対象とした調査の結果による。妊娠中の胃食道逆流症状はよくみられるが、妊娠初期におけるPPI曝露と先天異常リスクに関するデータは限定的なものしかなかった。NEJM誌2010年11月25日号掲載より。デンマークの新生児、約84万児のPPI使用と先天異常リスクとの関連を調査調査は、妊娠中のPPI曝露と先天異常リスクとの関連を評価するため、1996年1月~2008年9月にデンマークで生まれた全新生児84万968児を対象に行われた。PPI曝露、先天異常、潜在的交絡因子に関するデータは、各種の国内登録データベースから収集。主要な先天異常とは、出生後1年以内に診断されたものとし、EUROCAT(European surveillance of congenital anomalies)に即して分類された。本調査における主要解析は、受胎前4週~妊娠12週と、妊娠0~12週(妊娠第1期)における、PPI使用について評価が行われた。妊娠第1期、PPI曝露群と非曝露群の先天異常有病率のオッズ比は1.10調査対象期間中に生まれた84万968児のうち、主要な先天異常が認められたのは2万1,985例(2.6%)だった。受胎前4週~妊娠第1期にPPIに曝露されていたのは5,082児だった。そのうち主要な先天異常が認められたのは174例(3.4%)だった。一方、同期間中に母親がPPIに曝露されていなかった83万5,886児のうち、主要な先天異常が認められたのは2万1,811児(2.6%)であり、有病率の補正後オッズ比は1.23(95%信頼区間:1.05~1.44)だった。また、妊娠第1期に限ってみてみると、PPIに曝露されていたのは3,651児で、そのうち主要な先天異常が認められたのは118例(3.2%)であり、有病率の補正後オッズ比は1.10(95%信頼区間:0.91~1.34)だった。先天異常リスクは、妊娠第1期間中の服用期間別といった副次解析や、PPIの処方を受けていて服用の機会があったという母親に限定した副次解析でも、有意な増大は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

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2型糖尿病患者、有酸素運動とレジスタンストレーニングの併用でHbA1c値が低下

2型糖尿病患者が、有酸素運動とウエイトトレーニングのようなレジスタンストレーニングの両方の運動を行うことで、HbA1c値が有意に低下することが無作為化対照試験で明らかになった。どちらか一方のみの運動では、HbA1c値の有意な低下は認められなかったという。米国ルイジアナ州立大学ペニントン・バイオメディカルリサーチセンターのTimothy S. Church氏らが、2型糖尿病患者262人を追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月24日号で発表した。2型糖尿病患者に対する運動ガイドラインでは、有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方を勧めているが、両運動を行うことによる効果を目的とする研究はこれまでほとんど行われていなかった。被験者を4群に分け、9ヵ月の運動プログラム実施研究グループは、2007年4月~2009年8月にかけて、2型糖尿病の患者262人について、9ヵ月の運動プログラムを行った。被験者を無作為に4群に分け、一群(73人)はレジスタンストレーニングのみを週3回、別の群(72人)は有酸素運動(12kcal/kg/週)のみを、また別の群(76人)は有酸素運動(10kcal/kg/週)とレジスタンストレーニングを週2回、さらに残りの一群(41人)は対照群としていずれの運動プログラムも行わなかった。レジスタンストレーニングの内容は、上体運動(ベンチプレス、シーテッド・ロウイング、ショルダープレス、ラットプルダウン)2セット、足部運動(レッグプレス、レッグエクステンション、スクワット)3セット、腹筋・背筋運動2セットで構成されていた。被験者の63.0%は女性で、平均年齢は55.8歳、HbA1c値は6.5%以上で平均値は7.7%だった。併用運動群、対照群に比べHbA1c値が0.34%ポイント低下、最大酸素消費量も改善その結果、対照群に比べ、併用運動群のみがHbA1c値の絶対平均値が有意に低下していた。対照群との差は-0.34ポイント(95%信頼区間:-0.64~-0.03、p=0.03)だった。レジスタンストレーニング群(-0.16ポイント、p=0.32)、有酸素運動群(-0.24ポイント、p=0.14)ではいずれも、HbA1c値の絶対平均値の有意な低下はみられなかった。対照群に比べ、最大酸素消費量の有意な改善が認められたのも併用運動群のみで、平均改善幅は1.0mL/kg/分(95%信頼区間:0.5~1.5、p<0.05)だった。腹囲はすべての運動群で対照群に比べ減少していた(レジスタンストレーニング群:-1.9cm、有酸素運動群:-1.5cm、併用運動群:-2.8cm)。また体脂肪量は、レジスタンストレーニング群で平均1.4kg、併用運動群で平均1.7kg、それぞれ対照群に比べ有意に減少した(ともにp

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果糖を多く含む飲料摂取で女性の痛風リスクが増大、1日1杯で1.74倍に

加糖炭酸飲料やオレンジジュースのような果糖(フルクトース)を多く含む飲料の摂取量が多いと、女性の痛風発症リスクが増大することが報告された。米国ボストン医科大学リウマチ・臨床疫学部門のHyon K. Choi氏らが、大規模前向きコホート試験「Nurses’ Health Study」の中から、8万人弱の女性について調べた結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月24日号(オンライン版2010年11月10日号)で発表した。果糖を多く含む飲料摂取が尿酸値の増加につながることは知られていたが、痛風発症との関連についての前向き試験データはほとんどなかったという。1日2杯以上なら痛風リスクは約2.4倍に研究グループは、Nurses’ Health Studyの被験者のうち、痛風歴がなく、食事に関する必要データが得られた7万8,906人について、1984~2006年まで22年間追跡した。追跡期間中、痛風を発症したのは778人だった。加糖炭酸飲料の摂取量と痛風発症リスクについてみてみると、1日1杯(serving)摂取する人は、1ヵ月に1杯未満しか摂取しない人に比べ、痛風の発症に関する多変量相対リスクは1.74(95%信頼区間:1.19~2.55)に増加した。1日に2杯以上摂取する人はさらにリスクが増大し、同多変量相対リスクは2.39(同:1.34~4.26)だった(傾向p<0.001)。オレンジジュースとの関連についてみてみると、1日1杯摂取する人の同多変量相対リスクは、1ヵ月に1杯未満しか摂取しない人に比べ1.41(95%信頼区間:1.03~1.93)、1日2杯以上摂取する人は2.42(95%信頼区間:1.27~4.63)だった(傾向p=0.02)。ダイエット飲料は痛風リスクを増大せず痛風発症に関する絶対格差は、加糖炭酸飲料1日1杯摂取では36人/10万人年、1日2杯以上摂取では68人/10万人年だった。オレンジジュースでは、1日1杯摂取では14人/10万人年、1日2杯以上摂取では47人/10万人年だった。果糖摂取量が多くなるほど痛風発症に関する多変量相対リスクは増大し、摂取量上位五分位範囲の群は、下位五分位範囲の群に比べ、同リスクは1.62(同:1.20~2.19、傾向p=0.004)だった。なお、ダイエット飲料の摂取は、痛風発症リスクの増大には関与していなかった(傾向p=0.27)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ピア・レビューワーのウェブ公開は、査読の質には影響しない

ピア・レビューワーに事前に、担当した査読報告(ピア・レビュー)内容がウェブ公開されることを知らせても、査読の質には影響しないことが、BMJのリサーチャーであるSusan van Rooyen氏らが行った無作為化試験で示された。開示性および透明性は、医学研究の中でも特に薬剤関連分野で高い関心を集める領域であり、秘密主義や説明責任の欠如が査読の大きな欠陥とされる。科学ジャーナルの多くはその点への対応に消極的だが、これまでの研究で、論文のレビューワーの身元が他のレビューワーや著者に知られても査読の質を損なわないことは示唆されているという。BMJ誌2010年11月20日号(オンライン版2010年11月16日号)掲載の報告。ピア・レビューワーを公開する群としない群を比較研究グループは、原著論文のピア・レビューワーにその査読内容がBMJのウェブサイトに掲載されることを知らせることが、査読の質に影響を及ぼすか否かについて検討する無作為化対照比較試験を行った。試験には541人の著者、471人のピア・レビューワー、12人のエディターが参加。適格基準を満たした論文とともにレビューワーの査読報告がBMJのウェブサイトに掲載される群(介入群)あるいは著者のみが査読報告を知りうる群(対照群、BMJの通常の方法)に無作為化された。介入群のレビューワーは、査読を引き受けてからそれに取りかかる前に、査読報告がウェブサイトで公開されることを知らされた。主要評価項目は査読の質とし、2人のエディターと著者が別個に、妥当性が実証された方法を用いて5段階で評価した。エディター、著者にはどの論文が介入群かは知らされず、著者の場合は自分の論文の採否が決定する前に評価を行った。査読に要した時間およびレビューワーによる掲載の推薦傾向についても検討がされた。辞退率が55%に達し、執筆時間が25分延長したが、質には影響しない558編の論文が無作為割り付けされ、471編が解析の対象となった。試験への参加を打診された1,039人のレビューワーのうち568人(55%)が辞退した。2人のエディターは全471論文の評価を行い、著者は453論文について評価した。介入群と対照群で査読の質に有意な差は認めなかった(エディター:介入群3.40点、対照群3.36点、平均差:0.04、95%信頼区間:-0.09~0.17、著者:介入群3.16点、対照群3.10点、平均差:0.06、95%信頼区間:-0.09~0.20)。著者はエディターよりも評価点が低かったが、平均点の差は0.26であり、これは編集作業に影響を及ぼすとされる最低値である0.4を十分に下回っていた。介入群のレビューワーが査読に費やした時間は182分であり、対照群の157分に比べ有意に長かった(平均差:25分、95%信頼区間:3.0~47.0、p<0.05)。著者は、「ピア・レビューワーに、自分の査読報告がBMJのウェブサイトに公開される可能性を知らせても、査読の質には影響しなかった」と結論し、「査読のオンライン上への掲載は、ピア・レビューワーの辞退率を上昇させ、査読報告の執筆時間を延長させたが、査読の公開を支持する倫理的な議論はこれらの不利益を上回ると考えられる」と考察している。なお、本論文の審査、査読報告は完全に外部に委託され、BMJの編集スタッフは採否の決定には関わっていないという。(菅野守:医学ライター)

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O157による急性胃腸炎が、高血圧、腎障害、心血管リスクの増大と関連

大腸菌O157:H7に起因する急性胃腸炎の経験者は、高血圧、腎障害、心血管疾患のリスクが増大していることが、カナダ・ロンドン健康科学センターのWilliam F Clark氏らが行ったコホート試験で示された。アメリカでは年間、O157:H7感染症による消化管疾患が5~12万例にみられ、そのうち2,000例以上が入院し、約60例が死亡している。O157:H7が産生するShiga toxinは腎臓や血管を傷害し、溶血性尿毒症症候群(HUS)をきたす可能性がある。O157:H7曝露によるHUSの長期的な影響は、子どもではよく知られているが、症状がみられ比較的曝露量の少ない成人では不明であったという。BMJ誌2010年11月20日号(オンライン版2010年11月17日号)掲載の報告。汚染水飲用後8年以内の高血圧、腎障害、心血管疾患のリスクを評価研究グループは、大腸菌O157:H7とカンピロバクターに汚染された水道水の飲用による胃腸炎から8年以内に、高血圧、腎障害、心血管疾患を発症するリスクの評価を目的にプロスペクティブなコホート試験を行った。2000年5月のWalkerton市(カナダ、オンタリオ州)の水道システムの汚染による胃腸炎の集団発生後、2002~2005年までにWalkerton Health Studyに登録された成人1,977人を解析の対象とした。調査、健康診断、臨床検査を通じて年ごとに情報を収集した。主要評価項目は、急性胃腸炎(3日以上持続する下痢性疾患、出血性の下痢、1日3回以上の軟便)、高血圧(≧140/90mmHg)、腎障害(微量アルブミン尿、推算糸球体濾過量<60mL/分/1.73m2)であった。自己申告後に医師によって診断された心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全)を副次評価項目とした。O157:N7胃腸炎経験者は定期的に血圧、腎機能をモニタリングすべき集団発生時の急性胃腸炎の発生率は54%(1,067/1,977人)であった。高血圧は35%(697/1,977人)で確認され、非急性胃腸炎例では32%(294/910人)であったのに対し、急性胃腸炎例では38%(403/1,067人)であった。腎障害の指標を少なくとも一つ満たした例は29%(572/1,977人)で、非急性胃腸炎例29%(266/910人)、急性胃腸炎例29%(306/1,067人)ともに同率であった。二つの指標のいずれをも満たした例は1.5%(30/1,977人)にすぎなかったが、非急性胃腸炎例の0.9%(8/910人)に対し、急性胃腸炎例では2.1%(22/1,067人)であった。心血管疾患は1.9%(33/1,749人)に認められた。急性胃腸炎の集団発生前に対する発生後の高血圧および心血管疾患の補正ハザード比は、それぞれ1.33(95%信頼区間:1.14~1.54)、2.13(同:1.03~4.43)と有意であった。腎障害の指標のいずれか一方を満たす例における急性胃腸炎発生前後の補正ハザード比は1.15(同:0.97~1.35)であったが、二つの指標の双方を満たす例では3.41(同:1.51~7.71)に上昇した。著者は、「大腸菌O157:H7とカンピロバクターに汚染された水道水の飲用による急性胃腸炎は、高血圧、腎障害、自己申告による心血管疾患のリスクの上昇と有意な相関を示した」と結論し、「大腸菌O157:H7に起因する胃腸炎を経験した患者に対しては、血圧と腎機能の定期的なモニタリングを行うべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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低用量アスピリン、大腸がんリスクを長期に抑制

低用量アスピリン(75~300mg/日)の5年以上の服用により、大腸がんの発症率および死亡率が長期的に有意に低下することが、イギリス・オックスフォード大学臨床神経学のPeter M Rothwell氏らの検討で明らかとなった。高用量アスピリン(≧500mg/日)は大腸がんの発症率を長期的に抑制することが示されているが、出血リスクが高いため予防に用いるには問題がある。一方、低用量アスピリンの長期的な大腸がんの抑制効果は明確ではないという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。5つの無作為化試験を20年間追跡後、個々の患者データをプール解析研究グループは、大腸がんの発症率および死亡率に及ぼすアスピリンの用量、投与期間、腫瘍の部位について検討を行った。5つの無作為化試験を解析の対象とした。すなわち、血管イベントの一次予防においてアスピリンと対照を比較した2つの無作為化試験(Thrombosis Prevention Trial、British Doctors Aspirin Trial)と、二次予防において同様の比較を行った2つの試験(Swedish Aspirin Low Dose Trial、UK-TIA Aspirin Trial)、さらにアスピリンの2種類の用量を比較した1つの試験(Dutch TIA Aspirin Trial)である。これらの試験を20年間追跡し、試験終了後に個々の患者データのプール解析を行って、アスピリンが大腸がんのリスクに及ぼす影響を評価した。低用量5年投与により、20年間の発症・死亡リスクが有意に低下4つの対照比較試験(平均治療期間6.0年)では、追跡期間中央値18.3年における大腸がんの発症率は2.8%(391/14,033例)であった。部位別には、アスピリンは、20年間で結腸がんの発症リスクを24%有意に低減し(発症率のハザード比:0.76、95%信頼区間:0.60~0.96、p=0.02)、死亡リスクを35%有意に低減した(死亡率のハザード比:0.65、95%信頼区間:0.48~0.88、p=0.005)が、直腸がんについては有意な差を認めなかった(発症率のハザード比:0.90、95%信頼区間:0.63~1.30、p=0.58、死亡率のハザード比:0.80、95%信頼区間0.50~1.28、p=0.35)。結腸の部位別の解析では、アスピリンは近位結腸がんの発症リスクを55%有意に低減し(発症率のハザード比:0.45、95%信頼区間:0.28~0.74、p=0.001)、死亡リスクを66%有意に低減した(死亡率のハザード比:0.34、0.18~0.66、p=0.001)が、遠位結腸がんについては有意差はみられず(発症率のハザード比:1.10、95%信頼区間:0.73~1.64、p=0.66、死亡率のハザード比:1.21、95%信頼区間0.66~2.24、p=0.54)、両部位間のリスクの差は有意であった(発症率の差:p=0.04、死亡率の差:p=0.01)。ところが、投与期間が5年以上の場合に限ると、遠位結腸がん(発症率のハザード比:0.35、95%信頼区間:0.20~0.63、p<0.0001、死亡率のハザード比:0.24、95%信頼区間0.11~0.52、p<0.0001)だけでなく、近位結腸がんでもリスク低減効果が認められた(発症率のハザード比:0.58、95%信頼区間:0.36~0.92、p=0.02、死亡率のハザード比:0.47、95%信頼区間0.26~0.87、p=0.01)。アスピリンの用量を75mg/日以上に増量しても、それ以上のベネフィットの上昇はみられず、75~300mg/日の5年投与による20年間の致死的な大腸がんリスクの絶対減少率は1.76%(95%信頼区間:0.61~2.91、p=0.001)であった。一方、Dutch TIA trialの長期追跡の結果では、致死的な大腸がんのリスクは283mg/日に比べ30mg/日で高い傾向が認められた(オッズ比:2.02、95%信頼区間0.70~6.05、p=0.15)。著者は、「アスピリン75mg/日以上を5年以上服用すると、大腸がんの発症率および死亡率が長期的に抑制された。ベネフィットが最も大きかったのは、S状結腸鏡や大腸内視鏡によるスクリーニングの予防効果が低い近位結腸の腫瘍であった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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腱症に対する注射療法のエビデンス

腱症に対するコルチコステロイド注射は、短期的には有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性があることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のBrooke K Coombes氏らが行った系統的なレビューで示された。現在、エビデンスに基づく腱症の治療ガイドラインはほとんどないという。腱症は、angiofibroblastic hyperplasia(細胞過形成、血管新生、蛋白合成増進、基質破壊などがみられる)を特徴とし、炎症性疾患ではないためコルチコステロイド注射には疑問の声もあり、ラウロマクロゴール(一般名:ポリドカノール)、多血小板血漿、ボツリヌス毒素、プロテイナーゼなどの注射療法の施行機会が増えているという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。腱周囲注射とプラセボ、非手術的介入の無作為化試験を解析研究グループは、腱症に対する注射療法の臨床効果および有害事象リスクの評価を目的に系統的なレビューを行った。8つのデータベースを、言語、発表の形態や時期を制限せずに検索し、腱症に対する腱周囲注射とプラセボあるいは非手術的介入の効果を比較した無作為化対照比較試験を抽出した。メタ解析にはランダム効果モデルを用い、相対リスクおよび標準化平均値差(standardised mean difference:SMD)を推算した。臨床効果に関する主要評価項目は、プロトコルで規定した疼痛スコアとし、短期(4週、範囲:0~12週)、中期(26週、同:13~26週)、長期(52週、同:52週以上)に分けて解析した。コルチコステロイド注射は短期的には有効同定された3,824試験のうち、適格基準を満たした41試験に登録された2,672例のデータが解析の対象となった。多くの質の高い無作為化試験では、コルチコステロイド注射の短期的な疼痛改善効果が他の介入法に比べ優れるとの一致した知見が示されたが、この効果は中期、長期には逆転した。たとえば、外側上顆痛の治療に関するプール解析では、コルチコステロイド注射は短期的には非介入群に比べ疼痛の抑制において大きな効果(SMD>0.8と定義)が認められた(SMD:1.44、95%信頼区間:1.17~1.71、p<0.0001)が、中期(同:-0.40、-0.67~-0.14、p<0.003)、長期(同:-0.31、-0.61~-0.01、p=0.05)には非介入群の方が効果は有意に大きかった。回旋腱板障害に対するコルチコステロイド注射の短期的な効果は、明確ではなかった。有害事象の報告のある試験においてコルチコステロイド注射を受けた991例のうち、重篤な有害事象(腱断裂)がみられたのは1例(0.1%)のみであった。外側上顆痛の治療のプラセボ対照比較試験では、ヒアルロン酸ナトリウム注入が短期(SMD:3.91、95%信頼区間:3.54~4.28、p<0.0001)、中期(同:2.89、2.58~3.20、p<0.0001)、長期(同:3.91、3.55~4.28、p<0.0001)に有効で、ボツリヌス毒素注入は短期(同:1.23、同:0.67~1.78、p<0.0001)に有効、prolotherapyは中期(同:2.62、1.36~3.88、p<0.0001)に有効であった。アキレス腱症の治療では、ラウロマクロゴール、アプロチニン、多血小板血漿はプラセボに比べ有効ではなかったのに対し、prolotherapyは伸張性運動よりも有効ではなかった。著者は、「外側上顆痛の治療では、短期的にはコルチコステロイド注射は有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性がある」と結論し、「しかし、腱症は部位によって効果にばらつきがみられるため、注射療法の効果を一般化すべきではない」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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HIV感染者への腎移植、課題は優れた免疫抑制薬の開発

欧米の末期腎不全(ESRD)患者の約1%はHIV感染者であるなど、HIV感染者にESRDが増加しており、そうした患者にも腎移植が期待されるようになっている。しかし、HIV感染者への腎移植や免疫抑制のアウトカムについては十分には明らかになっていない。そこで米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のPeter G. Stock氏らの研究グループが、腎移植を希望するHIV感染者を対象に、安全性と有効性について多施設共同の前向き非無作為化試験を行った。NEJM誌2010年11月18日号掲載より。HIV感染レシピエント150例を中央値1.7年追跡試験は、抗レトロウイルス療法が安定しており、CD4+T細胞数が≧200個/mm3、血漿HIV1型(HIV-1)RNAが検出されないHIV感染者の腎移植希望者を対象とした。被験者は移植後、あらかじめ決められた試験プロトコルに従い、日和見感染に対する予防処置、生検処置、許容可能な範囲での免疫抑制療法、拒絶反応に対する管理、抗レトロウイルス療法などの移植後管理が行われ追跡された。被験者は2003年11月~2009年6月の間に、米国19施設で腎移植を受け生存した150例で、期間中央値1.7年間追跡された。生存率・生着率は高い移植後1年、3年時点の患者生存率(±SD)は、それぞれ94.6±2.0%、88.2±3.8%であり、平均生着率はそれぞれ90.4%、73.7%であった。これらの割合は、65歳以上の高齢腎移植レシピエントまたは全腎移植レシピエントに関する結果が集約されている全米データベース(SRTR)に報告されている結果の範囲内のものだった。多変量比例ハザード解析の結果、graft lossのリスク増加は、拒絶反応が起きて治療を受けた患者(ハザード比:2.8、95%信頼区間:1.2~6.6、P=0.02)、抗胸腺細胞グロブリン導入療法を受けた患者(同:2.5、1.1~5.6、P=0.03)で認められ、生体腎移植の場合は、保護効果が認められた(同:0.2、0.04~0.8、P=0.02)。拒絶反応は、予想以上に高率で観察された。推定値で1年時点31%(95%信頼区間:24~40)、3年時点41%(同:32~52)であった。HIV感染状態についてはコントロールが良好で、CD4+T細胞数は安定しており、HIV関連の合併症もほとんど認められなかった。Stock氏は、「慎重に選別したHIV感染集団における腎移植は、術後1年、3年時点の生存率および生着率ともに高く、HIV感染に関連する合併症の増加もみられなかった。しかし、拒絶反応が予想以上に高く重大な懸念事項であり、より優れた免疫抑制薬の開発が必要であることが示された」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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低用量のEPA-DHA摂取、心筋梗塞患者のイベント抑制に効果は認められず

心筋梗塞後で最新の降圧療法、抗血栓療法、脂質補正療法を受けている患者に、海産物由来のn-3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、また植物由来のα-リノレン酸(ALA)の低用量摂取を行っても、主要心血管イベント発生率が有意には低下しなかったことが報告された。オランダWageningen大学栄養学部門のDaan Kromhout氏らAlpha Omega試験グループが行った多施設共同二重盲検プラセボ対照臨床試験による。これまで行われた前向きコホート試験や無作為化対照試験により、n-3系脂肪酸には心血管疾患に対して保護作用があるとのエビデンスが得られていた。NEJM誌2010年11月18日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載より。60~80歳の心筋梗塞後患者4,837例に40ヵ月間摂取してもらい追跡Alpha Omega試験は、オランダ国内32病院で、心筋梗塞後に最新の降圧療法、抗血栓療法、脂質補正療法を受けている60~80歳の4,837例(男性78%)を対象に行われた。被験者は40ヵ月間、次の4つの試験用マーガリンのうちの一つを摂取するよう無作為化された。(1)EPA-DHA配合添加マーガリン(EPA-DHAを1日400mg付加摂取が目標)、(2)ALA添加マーガリン(ALAを1日2g付加摂取が目標)、(3)EPA-DHAとALAが添加されたマーガリン、(4)プラセボマーガリン。主要エンドポイントは、致死性・非致死性心血管イベントおよび心臓介入から成る主要心血管イベントの発生率であった。データはCox比例ハザードモデルを用いintention-to-treat解析され検討された。EPA-DHAまたALA摂取でも主要心血管イベント発生は低下せず被験者が摂取した1日のマーガリン量は平均18.8gだった。(1)~(3)のマーガリンを摂取した群においては、EPAは226mg、DHAは150mg、ALAは1.9gの摂取増加がみられた。追跡期間中、主要心血管イベントは671例(13.9%)で発生した。EPA-DHA摂取、またALA摂取のいずれによっても、同イベント発生率は低下しなかった。EPA-DHA摂取群のハザード比は1.01(95%信頼区間:0.87~1.17、P=0.93)、ALA摂取群は同0.91(0.78~1.05、P=0.20)であった。ただ、女性のみを対象としたサブグループ解析の結果では、ALA摂取群で主要心血管イベント発生率の低下が、プラセボまたはEPA-DHA摂取群と比べて、有意に近い関連で認められた(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.51~1.03、P=0.07)。有害事象については、4群間で有意差は認められていない。(武藤まき:医療ライター)

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心停止入院患者へのAED使用、生存率を改善せずむしろ15%低下

心停止を起こした入院患者に対する自動体外式除細動器(AED)の使用は、退院時生存率の改善にはつながらず、むしろ同生存率が約15%低下するという。米国Saint Luke’s Mid America Heart InstituteのPaul S. Chan氏らが、院内心停止をした約1万2,000人を対象に行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月17日号(オンライン版2010年11月15日号)で発表された。これまでに、院外心停止に対するAEDの使用が生存率を改善することは報告されていたが、院内心停止へのAED使用に関する研究は、単一医療機関におけるものに限られており、その効果が普遍性のあるものかは明らかになっていなかった。院内心停止の82%がショック非適応の波形研究グループは、2000年1月1日~2008年8月26日の間に、AEDを一般病棟に設置している米国内204ヵ所の病院で、院内心停止をした1万1,695人について追跡調査を行った。主要評価項目は、退院時生存率とAED使用との関連だった。被験者のうち、ショック非適応の波形(心静止と無脈性電気活動)患者は9,616人(82.2%)、ショック適応の波形(心室細動と無脈性心室頻拍)患者は2,079人(17.8%)だった。AEDを使用したのは、4,515人(38.6%)だった。ショック非適応の波形患者へのAED使用は、さらに退院時生存率を低下結果、退院時に生存していたのは、2,117人(18.1%)だった。被験者全体で、院内心停止後にAEDを使用しなかった人の退院時生存率が19.3%だったのに対し、AEDを使用した人の同生存率は16.3%であり、補正後生存率比は0.85(95%信頼区間:0.78~0.92、p

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心筋血流イメージングを受けた人の約3割が複数放射線検査で累積線量は100mSv超

心筋血流イメージング(MPI)を受けた患者1,000人超について調べたところ、累積的に受けている放射線検査回数の中央値が15回に上ることが明らかになった。そのうち4回は高線量の検査であったという。米国コロンビア大学医療センター循環器部門のAndrew J. Einstein氏らが報告したもので、JAMA誌2010年11月17日号(オンライン版2010年11月15日号)で発表した。MPIは1回の放射線量が最も高い検査である。これまでの調査で、米国民の多くがMPIなど放射線検査を繰り返し受けていることは明らかになっているが、その実態については明らかになっていなかった。放射線検査の中央値は15回、うち4回が高線量研究グループは、2006年1月1日~4月10日の間に、ニューヨークにあるコロンビア大学医療センターでMPIを受けた患者1,097人について、後ろ向きコホート試験を行った。被験者が1988年10月~2008年6月までに同センターで受けた、電離放射線イメージング検査について調査を行った。その結果、被験者の受けた放射線検査回数の中央値は15回(四分位範囲:6~32、平均23.9)だった。そのうち、1年間で3mSv以上といった高線量の検査回数の中央値は4回(同:2~8、平均6.5)であり、MPI検査の回数の中央値は1回(同:1~2、平均1.8)だった。すべての医学的検査を合わせた累積推計100mSvを超える放射線量を受けていたのは、344人(31.4%)に上った。複数回MPIを受けた人の累積推計放射線量は121mSv複数回MPI検査を受けていたのは全体の38.6%にあたる424人で、その累積推計放射線量は121mSv(同:81~189、平均149mSv)だった。また被験者の中でも、男性、白人が、累積推計放射線量の値が多い傾向が認められた。さらに、初回MPI検査を受けた人の80%またはMPI検査を2回以上受けた人の90%が、すでに血管系の疾患の診断を受けていたり、その症状が認められる人だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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会員の皆様方へお知らせ NPO法人 日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会のご案内

NPO法人 日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会とは近年、産科、小児科などの医師不足、診療科の偏在化が問題視されていますが、その影で外科崩壊も進んでいます。日本は将来、外科医が激減し、手術を受けられない患者さんがあふれるという事態に陥りかねません。2009年に発足されたNPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会(略称:若手外科系医師を増やす会)は、外科系医師の待遇改善と志望者の増加を目指し、「教育」「広報」「行政対応」の3本柱を軸に日々活動しています。詳細は日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会ホームページへ代表者のご挨拶近年、医師の偏在が社会的問題として取り上げられ、日本学術会議や日本医師会からも声明や要望が出されています。医師・診療科の偏在に対して厚労省は医学部定員の増加などの対応をしていますが、現状を改善するためには十分とは言えません。特に医学生は3K(きつい、汚い、厳しい)の科には進まず、現在では3無し(当直がない、救急がない、がない)の科に進路を進めています。その結果、小児科、産科のみならず外科医の希望者も減少し、同時に政府の医療費削減等は外科医の労働環境を悪化させて、リスクの高い外科を選択しない事に拍車をかけているのです。この状況では何十年先に本邦に於いて、、心臓および移植手術等が受けられなくなる日が来るかもしれません。我々は日本から外科医がいなくなることを憂い、我々の考えに賛同してくださった多くの方の支援を得て、このNPO法人を設立することにしました。そして皆様の共に行動を起こし、この危機を解決し国民の健康に貢献していきたいと願っています。理事長 松本晃 副理事長 北島政樹画像を拡大する画像を拡大する日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会は、ご賛同いただける皆様のご支援をいただくために協力会員を広く募集しています。協力会員募集ページへ外科医の魅力とは?外科系先輩医師からの熱いメッセージを動画で視聴いただけます。動画メッセージのページへ「きみが外科医になる日」 2010年11月19日発売日本の将来のためには外科医が必要だ!日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会著者「きみが外科医になる日」が講談社から発売されました。若い外科医を目指す若者たちに向けた名医からのメッセージ、若手外科医から先輩医師としての外科医のナマの生活を公開、巻頭対談としてソフトバンク王貞治会長と理事北島先生の対談と盛りだくさんな内容です。ご興味のある方はぜひお手にとってみてください。Amazonで購入する© 株式会社 講談社 2010 Printed in Japan <内 容>■第一章「世界の王を支える外科医」医療対談 王貞治×北島政樹(主治医)■第二章明日の手術の担い手たち「今日だけは、私も外科医だ」これが外科医の仕事場だ臨床研修の現場から若手外科医インタビュー■第三章名医からのメッセージ■第四章外科医を取り巻く社会環境■第五章近未来の外科医療低侵襲化への挑戦注目される手術支援ロボット ほか■付 録診療報酬改定表日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会 主な活動内容ほかケアネットは、「NPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」を応援しています

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突然の激しい頭痛で、くも膜下出血を推定するための新たな3つのルール

 突然の激しい頭痛では、臨床的な背景因子を考慮した3つのルールのいずれかを用いれば、くも膜下出血の有無の推定が可能であり、不必要な検査も抑制できることが、カナダ・オタワ大学救急医療部のJeffrey J Perry氏らが行ったコホート研究で示された。突然の激しい頭痛がみられる救急患者では、初発時に神経学的な障害がない場合でもくも膜下出血発症の可能性があり、この可能性を除外するにはCT所見が陰性であっても従来から腰椎穿刺が行われている。また突然の頭痛のほとんどが良性で治療は不要だが、十分な検討が行われていないため不必要な放射線曝露や腰椎穿刺後頭痛が行われているという。BMJ誌2010年11月13日号(オンライン版2010年10月28日号)掲載の報告。くも膜下出血のリスクが高い頭痛患者の臨床的な背景因子を検討 研究グループは、神経学的な障害がみられない頭痛患者のうち、くも膜下出血のリスクが高い患者の臨床的な背景因子を同定する目的で、プロスペクティブなコホート研究を行った。 2000年11月~2005年11月までに、カナダの6つの大学付属の三次救急医療教育病院から、神経学的な障害がみられず、発症後1時間以内に頭痛がピークに達した非外傷性頭痛患者のデータを収集した。くも膜下出血は、(1)頭部CT画像上でくも膜下腔の出血像、(2)脳脊髄液中のキサントクロミー、(3)脳血管撮影における陽性所見とともに脳脊髄液の最終サンプル中に赤血球を認める場合と定義した。3つの決定ルールの感度は100%、特異度は28.4~38.8% 登録された1,999例中130例がくも膜下出血を発症した。平均年齢は43.4(16~93)歳、1,207例(60.4%)が女性で、1,546例(78.5%)が「人生で最悪の頭痛」と訴えた。 13の病歴に関する因子と3つの検査所見に関する因子が、くも膜下出血と有意な相関を示した。再帰分割法を用いてこれらの因子の様々な組み合わせから、以下の3つの臨床的な決定ルールを策定した。・ルール1:40歳以上、項部の痛みあるいは硬直の訴え、意識消失、労作性頭痛・ルール2:救急車による搬送、45歳以上、1回以上の嘔吐、拡張期血圧>100mmHg・ルール3:救急車による搬送、収縮期血圧>160mmHg、項部の痛みあるいは硬直の訴え、年齢45~55歳 これらのルールの感度および陰性予測値はいずれも100%、特異度はルール1が28.4%、ルール2が36.5%、ルール3は38.8%であった。ルールのいずれかを用いれば、頭部CT、腰椎穿刺あるいはこの両方の検査の施行率は現在の82.9%から63.7~73.5%まで抑制されると推定された。 著者は、「発症後1時間以内にピークに達した頭痛では、臨床的な背景因子を考慮した3つのルールのいずれかを用いれば、くも膜下出血の推定は可能であり、不必要な検査も少なくできると考えられる」と結論し、「今後、プロスペクティブな妥当性の確認試験などを行うことで、より高い選択性と正確性で頭痛患者におけるくも膜下出血の有無が推定可能と考えられる」としている。

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ビタミンEは脳卒中を予防するか?:約12万人のメタ解析

ビタミンEの摂取により、虚血性脳卒中のリスクは10%低下するが、出血性脳卒中のリスクはむしろ22%増大することが、米国ブリガム&ウィメンズ病院のMarkus Schurks氏らが行ったメタ解析で明らかにされた。ビタミンEは、観察研究で冠動脈心疾患の予防効果が示唆されているが、無作為化対照比較試験では冠動脈リスクの抑制効果は示されず、サブグループ解析では出血性脳卒中のリスクを増大させる可能性が報告されている。また、メタ解析では高用量のビタミンEが全死因死亡率を増大させる可能性が示され、高い関心を呼んでいるという。BMJ誌2010年11月13日号(オンライン版2010年11月4日号)掲載の報告。2010年1月までに報告された無作為化プラセボ対照試験のメタ解析研究グループは、虚血性脳卒中および出血性脳卒中に対するビタミンEサプリメントの効果を評価するために、2010年1月までに報告された無作為化プラセボ対照試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。データベース(Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials)を検索し、論文の文献リストを調査して、ビタミンEの脳卒中に対する効果を検討した追跡期間が1年以上の無作為化プラセボ対照試験を抽出した。選ばれた論文の適格性を2人の研究者が別個に判定し、見解が異なる場合は合議によって解決した。2人の研究者が別個にデータを抽出し、個々の試験のリスク比とその95%信頼区間を算出した。見境のない使用に対しては警告を発すべき9つの試験に参加した11万8,765人(ビタミンE群:5万9,357人、プラセボ群:5万9,408人)が解析の対象となった。7試験には脳卒中全体のデータが含まれ、5試験には出血性脳卒中と虚血性脳卒中に分けたデータが記載されていた。解析の結果、ビタミンEには、全脳卒中のリスクを抑制する効果は認められなかった(相対リスク:0.98、95%信頼区間:0.91~1.05、p=0.53)。対象的だったのは、ビタミンEは虚血性脳卒中のリスクは抑制した(同:0.90、同:0.82~0.99、p=0.02)が、出血性脳卒中のリスクは増大させた(同:1.22、同:1.00~1.48、p=0.045)。試験間の不均一性はほとんど認められず、メタ回帰分析では、盲検化、ビタミンEの用量、罹病状況は不均一性の原因としては同定されなかった。絶対リスクに換算すると、476人がビタミンEを摂取すると1人の虚血性脳卒中が予防され、1,250人が摂取するごとに1人が出血性脳卒中を発症すると推定された。著者は、「今回のメタ解析では、ビタミンEは虚血性脳卒中のリスクを10%低下させ、出血性脳卒中のリスクを22%増大させることが示された。脳卒中全体のリスクのパターンは明確ではなかった」と結論し、「虚血性脳卒中のリスク低下は相対的に小さなものであり、一般的には出血性脳卒中の方が重篤なアウトカムの可能性が高いことを考慮すると、ビタミンEの見境のない広範な使用に対しては警告を発するべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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心筋梗塞既往例に対する強化LDL-C低下療法の有効性と安全性:約1万2,000例の解析

心筋梗塞の既往歴を有する患者に対する高用量スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、通常用量に比べLDL-Cを低下させ、重篤な血管イベントも抑制することが、Study of the Effectiveness of Additional Reductions in Cholesterol and Homocysteine (SEARCH)共同研究グループが行った無作為化試験で示された。スタチン療法の大規模な無作為化対照比較試験では、LDL-C値が平均未満の患者でもLDL-C低下療法による閉塞性血管イベントのリスク低下がみられ、リスクの低下度はLDL-C低下の程度と相関することが示されている。この知見から、LDL-C低下療法をより強化すれば、さらに大きなベネフィットがもたらされることが示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版2010年11月9日号)掲載の報告。心筋梗塞既往例約1万2,000例で、スタチン高用量群と通常用量群を比較SEARCH共同研究グループは、心血管リスクが高い患者における強化スタチン療法の有効性と安全性の確立を目的に、二重盲検無作為化試験を実施した。対象は、心筋梗塞の既往歴のある18~80歳の患者1万2,064例で、スタチン療法を受けているか、その適応が明らかである症例であった。すでにスタチン療法を受けている場合は総コレステロール値が少なくとも3.5mmol/Lとなるように、受けていない場合は4.5mmol/Lとなるよう治療が行われた。患者は、シンバスタチン(商品名:リポバスなど)80mg/日あるいは20mg/日を投与する群に無作為に割り付けられ、フォローアップ期間が終了するまで2、4、8、12ヵ月後、その後は6ヵ月ごとに検査が行われた。主要評価項目は、重篤な血管イベント(冠動脈死、心筋梗塞、脳卒中、動脈血行再建術)とし、intention-to-treat解析を行った。ミオパチーが増加したものの、安全に施行可能高用量(80mg/日)群に6,031例が、通常用量(20mg/日)群には6,033例が割り付けられた。平均フォローアップ期間6.7(SD 1.5)年の間に、通常用量群に比べ高用量群でLDL-C値が平均0.35(SE 0.01)mmol/L低下した。重篤な血管イベントの発現率は、高用量群が24.5%(1,477/6,031例)、通常用量群は25.7%(1,553/6,033例)と、高用量群で6%低下したが有意な差は認めなかった(リスク比:0.94、95%信頼区間:0.88~1.01、p=0.10)。出血性脳卒中(高用量群 vs, 通常用量群:0.4% vs. 0.4%)、血管死(9.4% vs. 9.5%)、非血管死(6.6% vs. 6.6%)の発現率には明らかな差を認めなかった。ミオパチーは、通常用量群では2例(0.03%)にみられたのに対し、高用量群では53例(0.9%)で発現した。著者は、「通常用量群に比べ高用量群でLDL-Cが0.35mmol/L低下し、重篤な血管イベントが6%抑制されたが、これは既報の知見と一致する。ミオパチーが増加したものの、強化LDL-C低下療法は他の薬物療法と安全に併用可能と考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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強化LDL-C低下療法の心血管イベント抑制効果:約17万例のメタ解析

スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は安全に施行可能で、1.0mmol/L(38.7mg/dL)低下で重篤な血管イベントの年間発生率を5分の1以下にまで抑制することが、Cholesterol Treatment Trialists’(CTT)共同研究グループによるメタ解析で明らかとなった。標準的スタチン療法によるLDL-C低下療法は、広範な心血管疾患において閉塞性血管イベントのリスクを低減することが示されている。また、観察研究ではコレステロール値が低いほど冠動脈疾患のリスクが低下することも示されており、LDL-Cをさらに低下させることで、より大きなリスクの低下が得られる可能性が示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版11月9日号)掲載の報告。26試験を対象に強化スタチン療法の平均リスク低下率を評価CTT共同研究グループは、スタチンを用いた強化LDL-C低下療法の安全性および有効性を評価する目的で、26の無作為化試験に参加した約17万例の個々のデータに基づくメタ解析を行った。解析の対象は、参加者1,000例以上、治療期間2年以上の無作為化試験で、高用量と低用量の強化スタチン群を比較した試験(5試験、3万9,612例、フォローアップ期間中央値5.1年)および標準的スタチン群と対照群とを比較した試験(21試験、12万9,526例、フォローアップ期間中央値4.8年)であった。それぞれのタイプの試験群ごとに、1年後における平均リスク低下率とともにLDL-Cの1.0mmol/L(38.7mg/dL)低下による平均リスク低下率を算出した。LDL-Cの閾値はなく、低下させるほど予後が良好な可能性2種類の用量の強化スタチン療法の比較試験では、1年後のLDL-C値は、高用量群が低用量群に比べ0.51mmol/L低下していた。低用量強化スタチン群に比べ、高用量強化スタチン群では重篤な血管イベントのリスクが15%低下し、有意な差が認められた(95%信頼区間:11~18%、p<0.0001)。なかでも、冠動脈死/非致死的心筋梗塞のリスクが13%(同:7~19%、p<0.0001)、冠動脈血行再建術のリスクは19%(同:15~24%、p<0.0001)、虚血性脳卒中リスクは16%(同:5~26%、p=0.005)低下した。2種類の用量の強化スタチン療法の比較試験におけるLDL-C 1.0mmol/L低下によるリスク低下は、標準的スタチンと対照の比較試験の場合と同等であった。二つのタイプの試験を合わせると、LDL-C 1.0mmol/L低下による重篤な血管イベントの低下率はあらゆるタイプの症例で類似しており、低用量強化スタチン群や対照群よりも高用量強化スタチン群や標準的スタチン群で有意に低下していた[発生率比(RR):0.78、95%信頼区間:0.76~0.80、p<0.0001]。全26試験を合わせると、低用量強化スタチン群や対照群に比べ高用量強化スタチン群や標準的スタチン群で、LDL-C 1.0mmol/L低下による全死因死亡率が10%低下し(RR:0.90、95%信頼区間:0.87~0.93、p<0.0001)、特に冠動脈心疾患死(同:0.80、99%信頼区間:0.74~0.87、p<0.0001)や他の心臓に起因する死亡(同:0.89、同:0.81~0.98、p=0.002)の有意な低下の影響が大きく、脳卒中死(同:0.96、95%信頼区間:0.84~1.09、p=0.5)や他の血管に起因する死亡(同:0.98、99%信頼区間0.81~1.18、p=0.8)の影響は認めなかった。LDL-C低値の場合でも、高用量強化スタチン群や標準的スタチン群と低用量強化スタチン群や対照群の間で、がんや他の非血管系の原因による死亡(RR:0.97、95%信頼区間:0.92~1.03、p=0.3)、発がん率(同:1.00、同:0.96~1.04、p=0.9)には有意な差は認められなかった。著者は、「スタチンによる強化LDL-C低下療法は安全に施行可能で、心臓発作、血行再建術、虚血性脳卒中の発生率のさらなる低減効果をもたらし、1.0mmol/L低下による重篤な血管イベントの年間発生率を5分の1以下にまで抑制する」と結論し、「LDL-Cの閾値のエビデンスはないが、2~3mmol/Lを低下させることで約40~50%のリスク低下が得られる可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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免疫性血小板減少症へのromiplostim治療、治療失敗および摘脾を低下

免疫性血小板減少症に対する治療薬として米国で上市されているromiplostimの、標準治療との比較による、有効性と安全性に関する52週の非盲検無作為化試験の結果が、NEJM誌2010年11月11日号で発表された。試験・報告は米国マサチューセッツ総合病院のDavid J. Kuter氏らによる。romiplostimは、血小板産生に関与するトロンボポエチン受容体に結合し作用を発揮する。これまでの試験で、有害事象がほとんどなく、成人患者に対する持続的投与で最大5年間、血小板増加作用があることが認められていた。標準治療との比較で52週追跡免疫性血小板減少症の米国における標準治療は、副腎皮質ステロイド、免疫グロブリン、抗D免疫グロブリンをファーストラインとし、アザチオプリン(商品名:イムランなど)、リツキシマブ(同:リツキサン)などの薬物療法、摘脾をセカンドラインとする。成人患者の多くがセカンドラインを要し、摘脾となった患者の3分の2は5年間は付加的治療を必要としないが、一方で感染症や血栓症などの周術期・術後合併症で死亡する例も少なくない。また、併存症により摘脾が禁忌の患者もいる。そこでKuter氏らは、romiplostimのこれまでの知見から、romiplostim投与が、摘脾の回避や実施延期を望む患者、摘脾禁忌の患者にとって、長期にわたる効果をもたらす治療となり得るのか検討を行った。試験は、2006年12月~2007年9月に北米、ヨーロッパ、オーストラリアの85施設で登録された、摘脾を受けていない免疫性血小板減少症成人患者234例を対象とし、標準治療を受ける群(77例)か、週1回romiplostim皮下注を受ける群(157例)に割り付け、52週にわたって追跡した。被験者は、一つ以上の免疫性血小板減少症治療を受けており、試験前血小板数50×10(9)/L未満、平均年齢57歳だった。主要エンドポイントは、治療失敗および摘脾となった割合。副次エンドポイントは、血小板反応[定期受診時に50×10(9)/L超]、安全性アウトカム、QOLなどだった。標準治療とのオッズ比、治療失敗0.31、摘脾割合0.17結果、romiplostim治療群の血小板反応は、標準治療群の2.3倍を示し(95%信頼区間:2.0~2.6、P<0.001)、治療失敗率はromiplostim治療群11%(18/157)、標準治療群30%(23/77)で、romiplostim治療群が有意に低かった(オッズ比:0.31、95%信頼区間:0.15~0.61、P<0.001)。摘脾の実行頻度も、各群9%(14/157)、36%(28/77)で、romiplostim治療群が有意に低かった(オッズ比:0.17、95%信頼区間:0.08~0.35、P<0.001)。また、romiplostim治療群は、出血イベントの発生率も低く、輸血量も少なく、QOLが大きく改善されていた。重度有害事象の発生は、romiplostim治療群23%(35/154)、標準治療群37%(28/75)だった。Kuter氏は、「romiplostim治療は標準治療よりも、血小板反応を高め、治療失敗や摘脾の割合を低下し、出血や輸血も減少させ、QOLを高めることが認められた」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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冠動脈疾患に対するクロピドグレルのオメプラゾール投与の有無による効果

抗血小板療法としてアスピリン+クロピドグレル(商品名:プラビックス)を受けている患者への、プロトンポンプ阻害薬(PPI)であるオメプラゾール(商品名:オメプラール、オメプラゾンほか)投与は、上部消化管出血を減らすことが明らかにされた。米国ボストン退役軍人ヘルスケアシステムのDeepak L. Bhatt氏らCOGENT研究グループによる。抗血小板療法を受けている患者の消化管合併症は重大な問題となっている。PPIがそのようなリスクを減じるのではないかとされていたが、これまで無作為化試験は行われていなかった。またクロピドグレルを用いた抗血小板併用療法を受けている患者へのPPI投与については、クロピドグレルの効果を減弱するのではないかとの懸念もあり、本試験ではその点の検討も行われた。NEJM誌2010年11月11日号(オンライン版2010年10月6日号)掲載より。抗血小板薬2剤併用療法が適応となる患者にPPIもしくはプラセボを投与し追跡COGENT(Clopidogrel and the Optimization of Gastrointestinal Events Trial)研究は、国際無作為化二重盲検ダブルダミープラセボ対照試験として、2008年1月に15ヵ国393施設で登録が開始された。抗血小板薬2剤併用療法が適応となる患者を、クロピドグレル+アスピリンに加えて、オメプラゾールを投与する群と、プラセボを投与する群に無作為に割り付け追跡した。消化器症状に関する主要エンドポイントは、出血(顕性・不顕性含む)、症候性十二指腸潰瘍、びらん、閉塞、穿孔の複合とした。心血管系に関するエンドポイントは、心血管系の原因により死亡、非致死的心筋梗塞、血行再建、脳卒中の複合とした。試験は、被験者登録5,000人を目指して開始されたが、スポンサーによる資金調達が不可能となり早期に終了された。結果、3,873例が無作為化され、3,761例が解析された。クロピドグレルの効果は減弱しない?被験者のうち、消化管イベントを発症したのは51例だった。180日時点での発症率は、オメプラゾール投与群は1.1%、プラセボ投与群は2.9%で、オメプラゾールのハザード比は0.34(95%信頼区間:0.18~0.63、P<0.001)だった。上部消化管出血の発症も、オメプラゾール群の方が低下し、ハザード比は0.13(同:0.03~0.56、P=0.001)だった。心血管イベントは109例で発生した。オメプラゾール群は4.9%、プラセボ群は5.7%で、ハザード比0.99(同:0.68~1.44、P=0.96)、サブグループのハイリスク群でも有意な不均一性は認められなかった。重大な有害事象発生率について両群間に有意な差異は認められなかった。ただし、オメプラゾール群で、下痢のリスク増加が認められた。試験の結果を受け研究グループは、アスピリンとクロピドグレル投与を受けている患者への予防的なPPI投与は、上部消化管出血の割合を減じると結論。またクロピドグレルとオメプラゾールに心血管系の相互作用は認められなかったが、「しかし、PPI使用で心血管イベントに臨床的に意義ある差異が生じることをルールアウトする結論には至らなかった」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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プライマリ・ケアで、高血圧の検出率が高い地域は冠動脈疾患死亡率が低い

プライマリ・ケアで高血圧の検出率が高い地域では、冠動脈疾患(CHD)死亡率が低いことが、英国Leicester大学保健科学部門のLouis S. Levene氏らの調査で明らかになった。英国内各地域でプライマリ・ケアを担う152ヵ所のプライマリ・ケア・トラスト(PCT)を対象に住民ベースの調査を行い明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表された。英国では2000年に、「2010年までに75歳未満のCHD死亡率を5分の2に引き下げる」との目標を立て、すでに実現したのだが、PCT間のCHD死亡率に格差があるという。調査は、格差の要因を見つけることを目的に行われた。CHD死と、各トラストの集団特性、医療サービス特性との関連を分析研究グループは、英国内152のPCT(2008年時点の登録患者数:5,430万人)について、2006~2008年のCHDの年齢調整死亡率と、各PCTの集団特性(貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合)や提供する医療サービス特性(プライマリ・ケアサービス提供量、高血圧検出率、P4Pデータ)との関連について、階層的回帰分析を行った。CHDの年齢調整死亡率は、ヨーロッパ基準人口10万当たり2006年が97.9人(95%信頼区間:94.9~100.9)、2007年が93.5人(同:90.4~96.5)、2008年が88.4人(同:85.7~91.1)だった。年間の減少率は、10万人当たり約5人だった。貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合と正の相関、高血圧検出率と負の相関調査期間3年間を通じて、集団特性のうち、貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合の4項目が、CHD死亡率と正の相関が認められた。一方で、医療サービス特性のうち、高血圧検出率が、同死亡率と負の相関が認められた(各年の補正後決定係数は、2006年がr2=0.66、2007年がr2=0.68、2008年がr2=0.67)。なお、人口10万人当たりのプライマリ・ケア医数やスタッフの労働時間など、その他の医療サービス特性とCHD死亡率には、有意な相関は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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