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アリピプラゾール vs.その他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー

 英国・East Midlands Workforce DeaneryのPriya Khanna氏らは、統合失調症に対するアリピプラゾールの有効性および忍容性について、他の非定型抗精神病薬と比較した試験結果を評価するシステマティックレビューを行った。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2013年2月28日号の掲載報告。 レビューは、Cochrane Schizophrenia Group Trials Registerによる文献検索(2011年11月時点)とともに、製薬会社や医薬品承認省庁、論文執筆者から追加の情報などを得て行われた。統合失調症または統合失調症様精神障害を有する患者を対象とした、アリピプラゾール(経口薬)とその他の抗精神病薬(経口・非経口含む:アミスルプリド、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、セルチンドール、ジプラシドン、ゾテピン)を比較したすべての無作為化試験(RCT)を適格試験とした。ランダムエフェクトモデルに基づきintention-to-treat分析法にてリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出し、可能な限り主要アウトカムの比較リスクを算出した。また平均差(MD)の算出や、バイアスリスクについての評価も行われた。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、12試験、被験者6,389例のデータが組み込まれた。・アリピプラゾールとの比較試験は、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドンについて行われており、すべての試験が利害関係のある製薬会社がスポンサーとなり行われていた。・全被験者のうち30~40%が試験を早期に中止しており、妥当性(群間差なし)は限定的なものであった。[対オランザピン試験]・全体的な状態(global state)には差がみられなかった(703例・1試験、短期RR:1.00、95%CI:0.81~1.22/317例・1試験、中期RR:1.08、95%CI:0.95~1.22)。・精神状態についてはオランザピンでやや良い傾向がみられた[1,360例・3試験、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)総合スコアのMD:4.68、95%CI:2.21~7.16]。・錐体外路症状には有意な差はみられなかったが(529例・2試験、RR:0.99、9%CI:0.62~1.59)、コレステロール値の上昇(223例・1試験、RR:0.32、95%CI:0.19~0.54)、全重量の7%以上の体重増加(1,095例・3試験、RR:0.39、95%CI:0.28~0.54)はアリピプラゾール群のほうが少なかった。[対リスペリドン試験]・全体的な状態(384例・2試験、重大改善なしに関するRR:1.14、95%CI:0.81~1.60)、精神状態(372例・2試験、PANSS総合スコアのMD:1.50、95%CI:-2.96~5.96)に関して、アリピプラゾールの優位性は示されなかった。[対ジプラシドン試験]・アリピプラゾールとの比較は1試験(247例)であり、全体的な状態[臨床全般印象・重症度尺度CGI-S)スコアのMDの平均変化:-0.03、95%CI:-0.28~0.22]、精神状態[PANSS総合スコアのMD:-3.00、95%CI:-7.29~1.29]の変化はともに同程度であった。・いずれか1つの非定型抗精神病薬と比較した際、アリピプラゾールは、活力(523例・1試験、RR:0.69、95%CI:0.56~0.84)、気分(523例・1試験、RR:0.77、95%CI:0.65~0.92)、陰性症状(523例・1試験、RR:0.82、95%CI:0.68~0.99)、傾眠(523例・1試験、RR:0.80、95%CI:0.69~0.93)、体重増加(523例・1試験、RR:0.84、95%CI:0.76~0.94)にて全体的な状態の改善を示した。・アリピプラゾール群の被験者では、嘔気(2,881例・3試験、RR:3.13、95%CI:2.12~4.61)の報告が有意に多かったが、体重増加(全重量の7%以上の増加)は有意に少なかった(330例・1試験、RR:0.35、95%CI:0.19~0.64)。・アリピプラゾールは、攻撃性への有望な作用がある見込みがあたが、データが限定的であった。これは別の機会のレビューの焦点となるであろう。・著者は「すべての比較に関する情報には限界があり、必ずしも臨床に適用するとは限らない」とした上で、「アリピプラゾールは明らかな副作用プロファイルのない抗精神病薬である」と結論した。また、長期データが十分でないことを考慮すべきであり、今後は中国で行われている複数の試験や、進行中の大規模な独立したプラグマティックな試験のデータなどを組み込み、レビューのアップデートを行うことで新たなデータが得られると述べている。関連医療ニュース ・10年後の予後を見据えた抗精神病薬選択のポイント ・バイポーラの躁症状に対するアリピプラゾールの位置付けは? ・統合失調症、双極性障害の急性期興奮状態に対する治療:   アリピプラゾール筋注に関するコンセンサス・ステートメント(英国)

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ナルコレプシーのリスクが約16倍に、インフルワクチン接種の子ども/BMJ

 ASO3アジュバント添加パンデミックA/H1N1 2009インフルエンザワクチン(Pandemrix)の接種を受けた英国の子どもで、接種後6ヵ月以内に睡眠障害であるナルコレプシーを発症するリスクが約16倍に増大したことが、同国健康保護局(HPA)のElizabeth Miller氏らの調査で明らかとなった。2010年8月、フィンランドとスウェーデンで同ワクチンの接種とナルコレプシーの関連を示唆するデータが提示され、2012年にはフィンランドの疫学調査により、ワクチン接種を受けた小児/青少年でリスクが13倍に増大したことが判明した。現在、北欧諸国以外の国での検証が進められている。BMJ誌オンライン版2013年2月26日号掲載の報告。ナルコレプシーのリスクを後ろ向きに解析 研究グループは、2009年10月以降にASO3アジュバント添加パンデミックA/H1N1 2009インフルエンザワクチン接種を受けた、英国の小児/青少年におけるナルコレプシーのリスクの評価を目的にレトロスペクティブな解析を行った。 2011年8月~2012年2月までの英国内の睡眠センターおよび小児神経センターの診療記録から、臨床情報および睡眠検査の結果を抽出し、専門家委員会がレビューを行って診断を確定した。対象は、2008年1月以降にナルコレプシーを発症した4~18歳の小児/青少年であった。 ナルコレプシー患者におけるワクチン接種のオッズ比を、年齢をマッチさせた英国人集団との比較において算出した。自己対照ケースシリーズ(SCCS)法を用いて、ワクチン接種6ヵ月以内と、この期間以外のナルコレプシーの発生状況を比較した。6ヵ月以内の発症のオッズ比16.2、寄与リスクは5万7,500~5万2,000接種に1例 245人の診療記録がレビューの対象となった。2008年1月以降に75人がナルコレプシーを発症し、そのうち56人にはナルコレプシーの特徴とされるカタプレキシー(情動脱力発作)が認められた。 11人(4~8歳:7人、9~13歳:2人、14~18歳:2人、男児8人、女児3人)がナルコレプシー発症前にワクチン接種を受けており、そのうち接種後6ヵ月以内の発症は7人だった。2011年7月までに診断を受けたナルコレプシー患者における時期を特定しないワクチン接種のオッズ比は14.4[95%信頼区間(CI):4.3~48.5]で、発症前6ヵ月以内のワクチン接種のオッズ比は16.2(同:3.1~84.5)であった。 2008年10月~2010年12月に発症し2011年7月までに診断を受けた患者についてSCCS法による解析を行ったところ、ナルコレプシーの相対的発症率は9.9(95%CI:2.1~47.9)であった。また、寄与リスクは5万7,500接種に1人から5万2,000接種に1人と推定された。 著者は、「ASO3アジュバント添加パンデミックA/H1N1 2009インフルエンザワクチンの接種を受けた英国の子どもにおいてナルコレプシーのリスク増大が確認された。これはフィンランドの知見と一致する」と結論した上で、「確認バイアス(ascertainment bias)は最小化されているとはいえ、ワクチン被接種者をより早急に抽出することによるリスクの過大評価の可能性は残る。寄与リスクを適正に評価するには、被接種者のより長期のフォローアップを要する」と指摘している。

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皮膚レーザー治療をめぐる訴訟、原告勝訴が約半数、賠償額は平均約38万ドル

 米国・UCLA デイヴィッド・ゲフィン医科大学院 のH. Ray Jalian氏らは、皮膚レーザー治療をめぐる訴訟について分析を行った。全米データベースでオンライン公開されている法定文書を精査したもので、レーザー治療に関する訴訟の詳細を特定した最大規模の研究だという。分析の結果、実際の処置をphysician extenderが行っていた場合でも医師の責任も問われていることが明らかになった。著者は、インフォームド・コンセントの重要性とともに、医師には最終的な監督責任があることを強調している。JAMA Dermatology誌2013年2月号の掲載報告。 研究グループは、皮膚レーザー治療に関してよくみられる訴訟や、医師の職業上の責任を問われた判例の詳細を調べることを目的とした。 全米のデータベースでオンライン公開されている法定文書から、年間の訴訟件数、医療提供側の開業地および許認可、被った傷害、法的措置の理由、評決、賠償額を主要評価項目とし調査した。 主な結果は以下のとおり。・1985~2012年の、皮膚レーザー治療に起因する傷害訴訟174件を同定した。内訳は形成外科手術に関するものが25.9%と最も多く、次いで皮膚科手術が21.3%であった。・皮膚レーザー治療に関する訴訟は、年々増加している傾向がみられた。ピークは2010年(22件)であった。・最も多い訴訟は、脱毛処置(63件)であった。若返り処置(rejuvenation、43件)が続いた。・医師が施術者と特定されていたケースは100件(57.5%)であったが、146件の訴訟において被告人として名前が明記されていた。・医師ではない施術者には、医療関係者[カイロプラクター、足病医(podiatrist)、ナースプラクティショナー(NP)、登録看護師(RN)など]、非医療関係者(エステティシャン、テクニシャンなど)が含まれ、訴訟ケースの37.9%で関与していた。・訴訟に至った最大の要因(かつ、予防可能であった要因)は、医師がインフォームド・コンセントを得ていなかったことであった(約3分の1)。・評決に持ち込まれた120件のうち、61件(50.8%)で原告勝訴の判決が下されていた。・被告側が支払った賠償額は平均38万719ドルであり、これまでに報告されている全医療専門職における平均額を上回っていた。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(65)〕 スピロノラクトンは収縮機能保持心不全例の左室拡張機能指標を改善させる:予後改善効果に期待

本研究は左室収縮機能が保持された心不全患者を対象に、二重盲検法でスピロノラクトン25mgあるいは偽薬を各々約200例に対して1年間投与し、同薬の左室機能や形態、運動耐容能などに与える影響を検討した。その結果、同薬は左室拡張能指標、左室重量係数、NT-proBNP値を改善させることを明らかにした。しかし、運動耐容能やQOL指標には明らかな改善効果はみられなかったとしている。左室収縮機能保持心不全例の予後やQOLを改善させる治療法は確立されておらず、最近増えつつあるこのタイプの心不全に対する治療エビデンスを確立させることは喫緊の課題である。 本論文では、残念ながら生命予後や運動耐容能までの改善効果は見出すことはできなかった。とはいえ、投与法や対象群選定の工夫により、同薬の収縮機能保持心不全例に対しての臨床的有用性を期待させる結果である。しかし、注意しなければならないのは、対象例の9割以上が高血圧を合併しており、スピロノラクトン群は偽薬群に比較して収縮期血圧が最終的に約9mmHg低くなっている。この降圧効果の差をいかに解釈するかがポイントと考えられる。左室肥大を有する高血圧例では、いくつかの降圧薬により左室重量や左室拡張機能が改善することはすでに知られている。本論文では、その左室拡張機能改善と降圧効果は統計学的に処理しても独立したものとしているが、対照を偽薬ではなく同程度の降圧効果を有するものとした場合にも同様の効果が現れるものかを知りたいところである。

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がん関連製薬企業に求める情報=有害事象と製品関連(病院看護師アンケートより)

  ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:梅田一郎、以下、「ファイザー」)オンコロジー事業部門は、2013年2月16日~17日に石川県金沢市において開催された「第27回日本がん看護学会学術集会」にて、これまでの活動を通じて得た調査結果等を発表した。結果はこちら、・病院看護師ががん患者との対応で障害と感じることは、時間的制約が71%、人員不足が57%、情報不足が52%であった。・病院看護師は製薬企業に求める情報として、91%が有害事象、89%は製品に関する情報をあげている。・他にも、医療負担、服薬指導、チーム医療、メンタルケアなど多岐にわたる情報が求められている。詳しくはこちら

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第12回 添付文書 その1:「添付文書」の解釈、司法と臨床現場の大きな乖離!

■今回のテーマのポイント1.医薬品の使用において、添付文書の記載に反した場合には、特段の合理的理由がない限り、過失が推定される2.「特段の合理的理由」の該当性判断は、判例により幅があることから、一定のエビデンスを確保したうえで行うことが安全といえる3.その場合においては、インフォームド・コンセントの観点から、患者に対し適切な説明がなされるべきである事件の概要7歳男性(X)。昭和49年9月25日午前0時30分頃、腹痛と発熱を訴え、救急車にてA病院を受診し、経過観察及び加療目的にて入院となりました。その後、同日午後3時40分まで保存的治療を行っていたものの、化膿性ないし壊阻性の虫垂炎と診断されたため、虫垂切除手術を行うこととなりました。Y医師は、自身と看護師3名、看護補助者1名とで、Xに対する虫垂切除術を行うこととしました(麻酔科医不在)。Y医師は、同日午後4時32分頃、Xに対し腰椎麻酔として0.3%のジブカイン(商品名: ペルカミンS)1.2mLを投与しました。Y医師は、A看護師に対しては、Xの脈拍を常時とるとともに、5分ごとに血圧を測定して自身に報告するよう指示し、B看護師に対しては、Xの顔面等の監視にあたるよう指示し、午後4時40分より執刀を開始しました。午後4時45分頃、Xの虫垂の先端が後腹膜に癒着していたため、Y医師が、ペアン鉗子で虫垂根部を挟み、腹膜のあたりまで牽引したところ、Xが「気持ちが悪い」と訴えました。同時に、A看護師が「脈拍が遅く弱くなった」と報告しました。Y医師が、Xに対し、「どうしたぼく、ぼくどうした」と声をかけましたが、返答はなく、Xの顔面は蒼白で唇にはチアノーゼ様のものが認められ、呼吸はやや浅い状態で意識はありませんでした。A看護師から、血圧は触診で最高50mmHgであると報告されました。午後4時47分には、Xは心肺停止となり、Y医師および応援に駆け付けた医師らによる蘇生処置が行われた結果、午後4時55分には、Xの心拍は再開し、自発呼吸も徐々に回復しましたが、残念ながらXの意識が回復することはありませんでした。Xは、その後、長期療養を行いましたが、脳機能低下症のため意思疎通は取れず、寝たきりのため全介助が必要な状態となりました。これに対し、Xおよび両親は、A病院およびY医師らに、9,400万円の損害賠償の請求を行いました。第1審では、検査、腰麻の選択、手術方法、術中の管理、救急措置のいずれにおいても、過失を認めることはできないとして請求を棄却しました。第2審においては、Xの血圧低下は、Y医師が虫垂をペアン鉗子で挟んだことによる迷走神経反射が起因しているとして、その場合、仮にペルカミンS®の添付文書記載通り2分ごとに血圧を測定していたとしても、午後4時45分以前にはXの血圧に異状は認められないことから、添付文書の記載に従わなかったこととXの血圧低下との間には因果関係がないとして原告らの請求を棄却しました。この原審に対し、原告らが上告したところ、最高裁は、午後4時45分に脈拍が低下した時点で、Xの唇にチアノーゼ様のものが認められたことから、Xの血圧低下の原因は、迷走神経反射だけでなく、ペルカミンS®による腰麻ショックも存在していたとし、下記の通り判示し、原判決を破棄し、原審に差し戻しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過7歳男性(X)。昭和49年9月25日午前0時30分頃、腹痛と発熱を訴え、救急車にてA病院を受診し、経過観察および加療目的にて入院となりました。その後、同日午後3時40分まで保存的治療を行っていたものの、化膿性ないし壊阻性の虫垂炎と診断されたため、虫垂切除手術を行うこととなりました。Y医師は、自身と看護師3名、看護補助者1名とで、Xに対する虫垂切除術を行うこととしました(麻酔科医不在)。Y医師は、同日午後4時32分頃、Xに対し腰椎麻酔として0.3%ペルカミンS® 1.2mLを投与しました。 なお、麻酔実施前のXの血圧は112/68mmHg、脈拍は78/分であり、麻酔後3分(午後4時35分)の血圧は124/70mmHg、脈拍は84/分でした。Y医師は、A看護師に対しては、Xの脈拍を常時とるとともに、5分ごとに血圧を測定して自身に報告するよう指示し、B看護師に対しては、Xの顔面等の監視にあたるよう指示し、午後4時40分(40分時点での血圧122/72mmHg)より執刀を開始しました。午後4時45分頃、Xの虫垂の先端が後腹膜に癒着していたため、Y医師が、ペアン鉗子で虫垂根部を挟み、腹膜のあたりまで牽引したところ、Xが「気持ちが悪い」と訴えました。同時に、A看護師が「脈拍が遅く弱くなった」と報告しました。Y医師が、Xに対し、「どうしたぼく、ぼくどうした」と声をかけましたが、返答はなく、Xの顔面は蒼白で唇にはチアノーゼ様のものが認められ、呼吸はやや浅い状態で意識はありませんでした。この時点で、A看護師から、血圧は触診で最高50mmHgであると報告されました。午後4時47分には、Xは心肺停止となり、Y医師および応援に駆け付けた医師らによる蘇生処置が行われた結果、午後4時55分には、Xの心拍は再開し、自発呼吸も徐々に回復しましたが、残念ながらXの意識が回復することはありませんでした。Xは、その後、長期療養を行いましたが、脳機能低下症のため意思疎通は取れず、寝たきりのため全介助が必要な状態となりました。事件の判決「本件麻酔剤の能書には、「副作用とその対策」の項に血圧対策として、麻酔剤注入前に1回、注入後は10ないし15分まで2分間隔に血圧を測定すべきであると記載されているところ、原判決は、能書の右記載にもかかわらず、昭和49年ころは、血圧については少なくとも5分間隔で測るというのが一般開業医の常識であったとして、当時の医療水準を基準にする限り、被上告人に過失があったということはできない、という。しかしながら、医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである。そして、前示の事実に照らせば、本件麻酔剤を投与された患者は、ときにその副作用により急激な血圧低下を来し、心停止にまで至る腰麻ショックを起こすことがあり、このようなショックを防ぐために、麻酔剤注入後の頻回の血圧測定が必要となり、その趣旨で本件麻酔剤の能書には、昭和47年から前記の記載がされていたということができ(鑑定人によると、本件麻酔剤を投与し、体位変換後の午後4時35分の血庄が124/70、開腹時の同40分の血圧が122/72であったものが、同45分に最高血圧が50にまで低下することはあり得ることであり、ことに腰麻ショックというのはそのようにして起こることが多く、このような急激な血圧低下は、通常頻繁に、すなわち1ないし2分間隔で血圧を測定することにより発見し得るもので、このようなショックの発現は、「どの教科書にも頻回に血圧を測定し、心電図を観察し、脈拍数の変化に注意して発見すべしと書かれている」というのである)、他面、2分間隔での血圧測定の実施は、何ら高度の知識や技術が要求されるものではなく、血圧測定を行い得る通常の看護婦を配置してさえおけば足りるものであって、本件でもこれを行うことに格別の支障があったわけではないのであるから、Y医師が能書に記載された注意事項に従わなかったことにつき合理的な理由があったとはいえない。すなわち、昭和49年当時であっても、本件麻酔剤を使用する医師は、一般にその能書に記載された5分間隔での血圧測定を実施する注意義務があったというべきであり、仮に当時の一般開業医がこれに記載された注意事項を守らず、血圧の測定は五分間隔で行うのを常識とし、そのように実践していたとしても、それは平均的医師が現に行っていた当時の医療慣行であるというにすぎず、これに従った医療行為を行ったというだけでは、医療機関に要求される医療水準に基づいた注意義務を尽くしたものということはできない」(最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁)ポイント解説今回と次回は添付文書の法的意義について解説いたします。第1回のポイント解説で示したように、民事医療訴訟における過失とは、一般的には「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」に満たない診療のことをいいます。しかし、この文言をいくら眺めたところで、具体的な事例についての線引きの基準を導き出すことはできません。したがって、例えば、本件における腰椎麻酔下での虫垂切除術において血圧測定を何分間隔で行うことが「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」なのかは、個別具体的に判断せざるを得ません。しかし、裁判官は、医学知識を有しているわけではありませんし、当然、医療現場を経験したこともありません(ロースクール制度により、最近、医師として医療現場を経験した裁判官が生まれるようになりましたがわずか数名です)。したがって、民事医療訴訟において、そういった個別具体的な事例における医療水準を決定する際に用いられるのが、今回のテーマとなる添付文書や次々回のテーマであるガイドラインであったり、医学文献、教科書、意見書、鑑定等です。添付文書は、薬事法52条(医療機器については63条の2)によって下記のように定められています。 (添附文書等の記載事項)第52条  医薬品は、これに添附する文書又はその容器若しくは被包に、次の各号に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。一用法、用量その他使用及び取扱い上の必要な注意二日本薬局方に収められている医薬品にあつては、日本薬局方においてこれに添附する文書又はその容器若しくは被包に記載するように定められた事項三第四十二条第一項の規定によりその基準が定められた医薬品にあつては、その基準においてこれに添附する文書又はその容器若しくは被包に記載するように定められた事項四前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項 そして、添付文書の記載については、「医療用医薬品添付文書の記載要領について」(薬発第606号平成9年4月25日厚生省薬務局長通知、薬安第59号厚生省薬務安全課長通知)「医療機器の添付文書の記載要領について」(薬食発第0310003号平成17年3月10日厚生労働省医薬食品局長通知)があり、記載内容、方法について詳細に定められています。同通知別添に記載されている添付文書作成の目的は、「医療用医薬品の添付文書は、薬事法第52条第一号の規定に基づき医薬品の適用を受ける患者の安全を確保し適正使用を図るために、医師、歯科医師及び薬剤師に対して必要な情報を提供する目的で当該医薬品の製造業者又は輸入販売業者が作成するものであること」となっています。このようなことから、古くから裁判所は、医薬品の使用に関する医療水準の判断について、添付文書の記載を他の証拠と比べ重視していました。そのような背景の中で出された、本判決の特徴は、「医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである」と示されるとおり、医薬品の使用に関しては、特段の合理的理由がない限り、添付文書の記載がすなわち医療水準となるとしたことです。確かに、高度の専門性を有する医療訴訟の判断をすることは、裁判所にとって非常に困難でありストレスであることは理解できますし、医師がいつでも手に取って読むことができる添付文書の記載さえ遵守していれば、医薬品の使用に関しては違法と問われることがないという意味においては、適法行為の予見可能性を高めるものであり、医師にとって有利なのかもしれません。しかし、皆さんご存知の通り添付文書の記載には、臨床の実情を反映しているとはいえない記載がしばしば見受けられます。そのような場合、医師が、患者に最善の治療を提供しようと添付文書記載に反する治療を行うことに躊躇してしまう(萎縮効果)こととなり問題といえます。特にわが国では、ドラッグラグが問題となっており、世界標準の治療薬の半数程度しか保険適用されていない現状において、未承認薬や適用外処方が原則違法であるとすることは、医学的に不当な結論といえます。このような医療界からの指摘を受け、現在では、例外となる「特段の合理的理由」を広く解することにより適切な判断をするように対応している判例が複数認められます。「添付文書の内容に違反した場合に,医師に過失が推定されるのは,製造業者や輸入販売業者は,当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有しており,それが添付文書に反映されているという事情に基づくものであるところ,本件においては,ベサコリン散の添付文書に,パーキンソン病の患者に対して禁忌であると記載がされたことについては,販売元の株式会社○○に対する調査嘱託の結果,厚生労働省からの指導によるものであって,株式会社○○自身が裏付けとなる研究結果等に基づいて記載したものではないことが判明しており,禁忌とされた根拠は必ずしも明確ではない。その上,ベサコリン散の成分は血液脳関門を通過しないからパーキンソニズムを悪化させることはないものとの考えが一部の出版物にも掲載されており,また,ベサコリン散のインタビューフォームにも,ベサコリン散の成分は血液脳関門を通過しない旨の記載がある。以上によれば,本件におけるベサコリン散の投与については,添付文書の記載内容には違反しているものの,原告に対してベサコリン散を投与すべき必要性が認められる反面,添付文書上の禁忌の根拠が明確でなく,むしろY医師自身は禁忌の根拠はないものと考えてあえて投与を行っていたものといえる。したがって,添付文書に反していても,本件においてはそこに合理的理由があるものといえ,直ちにY医師に過失があるものということはできない。パーキンソニズムの患者に対し、添付文書においてパーキンソン病の患者には禁忌であると記載されているベサコリン散を投与したとしても、当該患者に対してベサコリン散を投与すべき必要性が認められる反面、添付文書上の禁忌の根拠が明確でなく、当該医師が禁忌の根拠はないものとあえて投与を行っていたときには、当該投与が添付文書に反していても、そこには合理的な理由があるものといえるから、直ちに当該医師に過失があるものということはできない」(横浜地判平成21年3月26日判タ1302号231頁)とした判決や、ステロイド抵抗性の喘息患者に対し、適用外となる免疫抑制剤の投与を行った事案において、「ガイドラインに『難治性喘息に対する治療法として,免疫抑制剤の併用を考慮する場合がある』とされていることや有効性を示す症例報告が複数存在することを理由にただちに違法とはならない」とした判決(京都地判平成19年10月23日)などがあります。とはいえ、本件最高裁判決はまだいきていますので、適用外処方を行う場合には、事前にガイドラインや複数の医学文献等エビデンスを確保したうえで行うことが望ましいといえます。また、適用外処方をする場合には、インフォームド・コンセントの観点から、患者に対し、「(1) 当該治療方法の具体的内容、(2) 当該治療方法がその時点でどの程度の有効性を有するとされているか、(3) 想定される副作用の内容・程度及びその可能性、(4) 当該治療方法を選択した場合と選択しなかった場合とにおける予後の見込み等について、説明を受ける者の理解力に応じ、具体的に説明し、その同意を得た上で実施」(前掲京都地判平成19年10月23日より引用)すべきといえます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁横浜地判平成21年3月26日判タ1302号231頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。 京都地判平成19年10月23日

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プレドニゾロン+クロラムブシル、特発性膜性腎症の腎機能低下を抑制/Lancet

 特発性膜性腎症で腎機能障害が進行している患者について、プレドニゾロンと免疫抑制剤クロラムブシル(chlorambucil)による併用療法(1ヵ月ずつ交替で6ヵ月間)が最も支持される治療アプローチであることが、英国・バーミンガム大学のAndrew Howman氏らによる無作為化試験の結果、報告された。本検討は免疫抑制剤の腎保護効果の検証を目的としたもので、同時に検討されたシクロスポリン単独12ヵ月の治療については腎保護効果がみられず、同治療については「回避すべきである」と報告した。膜性腎症の一部の患者について免疫抑制剤による治療効果が認められているが、これまで腎機能が低下している患者については試験に基づくエビデンスは得られていなかった。Lancet誌オンライン版2013年1月8日号掲載報告より。支持療法、併用療法、免疫抑制剤単独療法で比較 研究グループは、免疫抑制剤治療が腎機能の低下が認められる特発性膜性腎症患者において腎保護効果を有するかを評価する無作為化試験を行った。 試験は英国内の腎クリニックまたは急性期病院の腎臓病部門37ヵ所から被験者を募り行われた。被験者は、18~75歳の、生検により特発性膜性腎症と診断され、血清クレアチニン値が300μmol/L未満、腎排泄機能20%以上低下が試験にエントリーする前の2年間で3ヵ月以上測定されたことが3回以上ある患者であった。 被験者は無作為に1対1対1の割合で、(1)支持療法のみ受ける群、(2)支持療法+6ヵ月間にわたるプレドニゾロン(1、3、5ヵ月時:静注1g/日×連続3日間、経口0.5mg/kg/日×28日間)とクロラムブシル(2、4、6ヵ月時:経口0.15mg/kg/日、漸次減量)の併用療法、(3)支持療法+シクロスポリン12ヵ月(5mg/kg/日、漸次減量)に割り付けられた。主要アウトカムは、intention to treat解析による、ベースラインからの腎機能20%以上低下であった。プレドニゾロン+クロラムブシル併用療法のさらなる進行リスクは0.44 108例が無作為化され、33例が支持療法のみ群に、37例がプレドニゾロンとクロラムブシル群に、38例がシクロスポリン群に割り付けられた。そのうち2例(シクロスポリン群1例、支持療法群1例)は適格条件を満たしておらず、intention to treat解析には組み込まれなかった。また45例は試験終了前にプロトコルからは逸脱していた。大半の患者が投与量が調整され少量投与になっていた。 フォローアップは、主要エンドポイント達成時または主要エンドポイントに達しない場合は3年間とされた。 結果、腎機能20%以上低下のリスクは、支持療法群と比べてプレドニゾロンとクロラムブシル併用療法群で有意な低下が認められた[エンドポイント達成 19/33例(58%)対31/37(84%)、ハザード比(HR):0.44、95%信頼区間(CI):0.24~0.78、p=0.0042]。 シクロスポリン群[29/36(86%)]と支持療法群とのリスクは有意な差はみられなかったが(HR:1.17、95%CI:0.70~1.95、p=0.54)、3群間のリスクの差は有意であった(p=0.003)。 重大有害事象の発生は3群ともに頻度が高かった。プレドニゾロンとクロラムブシル併用療法群の同発生は支持療法群よりも高かった(56件対24件、p=0.048)。

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パーキンソン病患者は骨折リスクが高い

 パーキンソン病(PD)患者は非PD患者と比べ骨折リスクが有意に高いことが、オランダ・ユトレヒト大学のS. Pouwels氏らが行った後向きコホート研究で明らかになった。PD患者では、一般的な骨折リスクとされる高齢者および女性のほかにも、最近の選択的セロトニン再取込み阻害薬または高用量抗精神病薬の使用歴、骨折歴、転倒、BMI低値、腎疾患がある場合は骨折リスクを評価することが望ましいと考えられる。Osteoporosis International誌オンライン版2013年2月22日掲載報告。 研究の目的は、新規発症PD患者の骨折リスクを治療、重症度、罹病期間および関連合併症で層別化し評価することであった。  英国のGeneral Practice Research Database(GPRD)を用い、1987年から2011年の間にPDと初めて診断された4,687例を同定し、年齢、性別、出生年および診療所をマッチさせた非PD患者(対照群)と比較した。 主な結果は以下のとおり。・PD患者は対照群と比較して全骨折、骨粗鬆症性骨折および股関節骨折のいずれも骨折リスクが有意に増加した(全骨折 補正ハザード比(AHR):1.89、95%CI:1.67~2.14/骨粗鬆症性骨折 AHR:1.99、95%CI:1.72~2.30/股関節骨折 AHR:3.08、95%CI:2.43~3.89)。・骨折リスクは、骨折歴、転倒、BMI低値、腎疾患、抗うつ薬の使用および抗精神病薬の高用量使用により増加した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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初期症状がより重症のうつ病患者のほうが、低レベル介入の効果は大きい?/BMJ

 うつ病患者に対する、パンフレットによる自助といった低レベルの介入は、初期症状がより重症であるほうが、より軽症である人に比べ、その効果は高いことが、メタ解析の結果、示された。英国・マンチェスター大学のPeter Bower氏らによる報告で、これまで、重症うつ病患者に対する低レベル介入効果の有無については不明であった。本結果を踏まえて著者は、「より重症のうつ病患者に対する低レベルの介入は、段階的ケアの一部として有用な可能性はある」と述べている。BMJ誌オンライン版2013年2月26日号掲載の報告より。16試験、2,470人のデータをメタ解析 研究グループは、うつ病患者に関する16試験、被験者総数2,470人のデータを組み込んだメタ解析を行い、うつ病の初期症状の程度と低レベルの介入による効果について、その関連性を分析した。 低レベルの介入としては、うつ病患者向けのパンフレットによる自助、限定的な専門家によるサポート、インターネットを活用した介入などだった。 うつ病症状の程度については、ベック抑うつ評価尺度(BDI)またはうつ病自己評価尺度(CES-D)により評価した。相互作用の程度は小さく、臨床的には有意ではない可能性も 被験者は低レベルの介入を提供されたが、実際にはその多くがベースライン時に中等症から重症のうつ状態だった。 解析の結果、ベースライン時にうつ状態がより重症の人では、より軽症の人に比べ、低レベル介入による治療効果が高いことが示された(回帰係数:-0.1、95%信頼区間:-0.19~-0.002)。 ただし、この相互作用の程度は小さく、臨床的には有意ではない可能性もあった。 研究グループは、初期症状がより重症のうつ病患者に対する低レベルの介入効果は、より軽症のうつ病患者に対する同介入効果と同等以上であることが示されたと結論。重症うつ病患者への低レベル介入は有用な可能性があるとした。

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2012年度10大ニュース~心房細動編~ 第4位

解説者のブログのご紹介『心房細動な日々』国内海外国内4位 日本消化器内視鏡学会による「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」〜リスク認知の共有はなるか?2012年7月に抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインが発表になりました。これはある意味、今年度1番のトピックかも知れません。筆者のつたないブログ「心房細動な日々」でも常にアクセス数の1、2を誇る話題です。多学会共同の作成であること、各ステートメントのエビデンスレベルは低くコンセンサス重視であること、手技別の出血リスクと休薬による血栓塞栓リスクをそれぞれ層別化したことなど特徴は多々ありますが、何と言っても最大の注目は、「抗凝固薬1剤服用中であれば休薬しなくても生検可能」とした点です。これを遵守すれば、患者さんが2回内視鏡を施行されることもなく、また無根拠な休薬も避けることができます。しかしながら、実際には術者に依存する因子も大きいと予想され、一律な運用は問題があると思われます。むしろ、それまで一見「ツンデレ関係」とも思われた循環器内科医と消化器内科医との間でリスクの捉え方に関し、視野を共有する良い機会と捉えるべきです。1)藤本一眞ほか.日本消化器内視鏡学会雑誌. 2012;54:2075-2102.海外4位 カテーテルアブレーションに関する知の集積~注目すべきエビデンスが続々発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションは、日本も含めたどの国のガイドラインも「薬剤抵抗性」「抗不整脈薬投与下」といったように、薬が効かない場合の二番手の治療という制約のもとで推奨度Iがついています。これに対して「薬剤抵抗性ではない、抗不整脈薬を使っていない心房細動患者にいきなりカテーテルアブレーションを施行して良いか?」という問いに答えるべく設定されたのがMANTRA-AF試験1)です。発作性心房細動294例を、第一選択でカテーテルアブレーションを施行する群と抗不整脈薬群とに振り分け2年間追跡したところ、累積心房細動時間に差はありませんでした。この試験の対象は「70歳未満の基礎心疾患のない人」ですので結論を急ぐのは早急ですが、ある方向性が打ち出された感があります。一方、持続性心房細動が多く含まれる施設での長期成績2)や、1年以上持続する長期持続心房細動に対する成績3)も明らかとなり、予想された以上の成功率が報告されています。さらに、欧州では大規模な登録研究が行われ、発作性心房細動の第1セッション成功率が72%であるなどの成績が報告4)されました。日本でも日本不整脈学会のJ-CARAF登録研究の成績が公表されるなど、各国で知の集積が進んでいます。1)Cosedis Nielsen J, et al. N Engl J Med. 2012;367:1587-1595.2)Sorgente A, et al. Am J Cardiol. 2012;109:1179-1186.3)Tilz RR, et al. J Am Coll Cardiol. 2012;60:1921-1929.4)Scharf C, et al. Europace 2012;14:1700-1707.

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仕事のストレスが大きいほど、うつ病発症リスクは高い:獨協医科大学

 日々の仕事で深刻な悩みやストレスを抱えている日本人就労者の割合は60%を超え、仕事への義務感による精神的重圧から、精神障害および自殺を起こす頻度が増加している。そこで獨協医科大学の和田佳子氏らは、職業性ストレス簡易調査票(BJSQ)で測定・評価したストレス反応から、うつ病のリスクを識別しうるか否かを明らかにすることを目的としたコホート研究を行った。PLoS One誌オンライン版2013年2月12日号の掲載報告。  対象は、2005年にBJSQを用いたストレス反応の評価を行った1,810例(20~70歳)で、2007年8月までの傷病手当の記録をもとに追跡した。うつ病の発症は、傷病休暇の理由として、医師の診断書に「うつ病」または「抑うつ症状」という記載がある場合とした。被験者を、ベースラインのBJSQ総スコアに基づいてQl、Q2、Q3、Q4の四分位に分け、さらに高スコア群(Q4)と低スコア群(Q1~Q3)に分けた。BJSQで評価されるストレス反応のうつ病発症に対するリスク比は、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間1.8年の間に、1,810例中14 例がうつ病を発症した。・うつ病を理由とする傷病休暇について、高スコア群の低スコア群に対するリスク比は2.96(95%CI:1.04~8.42、 傾向p= 0.002)であった。 ・性別、年齢、結婚歴、子どもの有無で調整後のリスク比は、未調整の場合と同様であった。・以上の結果から、BJSQで評価されるストレス反応は、うつ病の発症リスクを証明することが示唆される。関連医療ニュース ・日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき ・抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮 ・うつ病治療に「チューインガム」が良い!?

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血清ビタミンD値と小児アトピーの重症度、統計学的に有意な関連は認められない

 血清25ヒドロキシビタミンD値と小児アトピー性皮膚炎の重症度との関連について、統計学的に有意な関連はみられないことが、米国・ウィスコンシン医科大学のYvonne E. Chiuらによる検討の結果、報告された。両者の関連については、逆相関の関連性が示唆されていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2013年2月14日号の掲載報告。 研究グループは、血清25ヒドロキシビタミンD値とアトピー性皮膚炎重症度について、統計学的に有意な関連が認められるかを評価することを目的に、断面研究を行った。 1~18歳のアトピー性皮膚炎患者を被験者とし、SCORAD(Severity Scoring of Atopic Dermatitis)と血清25ヒドロキシビタミンD値を測定し、単変量試験および多変量モデルを用いて統計学的解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・97例が登録され、94例が解析に組み込まれた。・被験者のうち、ビタミンD欠乏(血清25ヒドロキシビタミンD<20ng/mL)であったのは37例(39%)、不足(同21~29ng/mL)は33例(35%)、充足(同≧30ng/mL)は24例(26%)であった。・血清25ヒドロキシビタミンD値とSCORADの関連は、有意ではなかった(r=-0.001、p=0.99)。・多変量モデル解析の結果、血清25ヒドロキシビタミンDが低値であることと有意な関連が認められたのは、3歳以上(p<0.0001)、黒人(p<0.001)、冬季(p=0.084)であった。・一方で著者は本検討結果について、自然光曝露、ビタミンD摂取、アトピー性治療についてコントロールできていないこと、一時点のみを捕えた調査であることから限界を指摘した。その上で、今回検討した小児集団では、血清25ヒドロキシビタミンD値とアトピー性皮膚炎重症度について有意な関連はみられないと結論した。

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統合失調症の再燃や再入院を減少させるには:システマティックレビュ―

 統合失調症の再燃や再入院を減少させるには、早期警告症状への気づきを促す介入が重要であることが、英国・ノッティンガム大学のRichard Morriss氏らによるシステマティックレビューの結果、明らかとなった。Cochrane database of systematic reviewsオンライン版2013年2月28日掲載の報告。 本レビューでは早期警告症状気づきを促す介入による効果(再燃までの時間、入院、機能的側面、陰性・陽性症状)について、通常精神科治療に加えた場合と通常治療のみとを比較することを目的とした。Cochrane Schizophrenia Group Trials Register(2007年7月~2012年5月)において該当する無作為化試験による論文を検索し、データを抽出した。追跡不能な参加者が50%以上いた試験はあらかじめ除外した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化試験32件、クラスター無作為化試験2件において無作為化された3,554例のデータが本レビューに組み込まれた。早期警告症状気づきへの介入単独でのアウトカムを検討した試験は1報のみであった。・早期警告症状気づきへの介入群は、通常治療群よりも再燃率が有意に低かった(23%対43%、RR:0.53、95%CI:0.36~0.79、15試験・1,502例;エビデンスレベルはとても低い)。・再燃までの時間は、両群間で有意な差はみられなかった(6試験・550例;エビデンスレベルはとても低い)。・再入院のリスクは、早期警告症状気づきへの介入群が通常治療群よりも有意に低かった(19%対39%、RR:0.48、95%CI:0.35~0.66、15試験・1,457例;エビデンスレベルはとても低い)。・再入院までの時間は、両群間で有意な差はみられなかった(6試験・1,149例;エビデンスレベルはとても低い)。・介入を受けた被験者の満足感やコストについては、確定的なエビデンスが不足していた。・著者らは、「一連の試験のエビデンスレベルは低く、また介入単体としての効果が不明である(検討が1試験のみであったため)」とした上で、「再燃や再入院の減少は費用対効果への波及も期待できることから、コストや各種の医療サービス活用について、重症患者・家族が期待する有効性のアウトカムを含めた系統的評価を行うべきである」とまとめている。関連医療ニュース ・10年先を見据えた抗精神病薬選択のポイント ・統合失調症患者の再発を予測することは可能か? ・長時間作用型注射製剤は、統合失調症患者の入院減少と入院期間短縮に寄与

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ダビガトラン、VTEの延長治療に有効、出血リスクも/NEJM

 直接トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)による抗凝固療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)の延長治療として有効であり、大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高いことが、カナダ・マクマスター大学のSam Schulman氏らの検討で示された。VTE治療はビタミンK拮抗薬が標準とされ、複数の血栓エピソードなど再発のリスク因子を有する場合は長期投与が推奨されるが、大出血のリスクとともに頻回のモニタリングや用量調整を要することが問題となる。ダビガトランは固定用量での投与が可能なうえ、頻回のモニタリングや用量調節が不要で、VTEの治療効果についてワルファリンに対する非劣性が確認されており、初期治療終了後の延長治療に適する可能性がある。NEJM誌2013年2月21日号掲載の報告実薬対照非劣性試験とプラセボ対照優位性試験の統合的解析 RE-MEDY試験は、初期治療終了後のVTE延長治療におけるダビガトラン(150mg、1日2回)のワルファリンに対する非劣性を検証する実薬対照試験であり、RE-SONATE試験はダビガトラン(150mg、1日2回)のプラセボに対する優位性を評価するプラセボ対照試験。 両試験ともに、対象は年齢18歳以上、症候性の近位型深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)と診断され、標準的抗凝固薬による初期治療を終了した症例とした。 RE-MEDY試験では、有効性のハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が2.85を超えない場合、および18ヵ月後のVTE再発のリスク差が2.8ポイント以内の場合に非劣性と判定した。ACSのリスクにも留意すべき RE-MEDY試験には、2006年7月~2010年7月までに33ヵ国265施設から2,856例が登録され、ダビガトラン群に1,430例(平均年齢55.4歳、女性39.1%)、ワルファリン群には1,426例(同:53.9歳、38.9%)が割り付けられた。また、RE-SONATE試験には、2007年11月~2010年9月までに21ヵ国147施設から1,343例が登録され、ダビガトラン群に681例(平均年齢56.1歳、女性44.1%)、プラセボ群には662例(同:55.5歳、45.0%)が割り付けられた。 RE-MEDY試験では、VTE再発率はダビガトラン群が1.8%(26例)と、ワルファリン群の1.3%(18例)に対し非劣性であった(HR:1.44、95%CI:0.78~2.64、非劣性検定:p=0.01、リスク差:0.38ポイント、95%CI:-0.50~1.25、非劣性検定:p<0.001)。 大出血の頻度はダビガトラン群が0.9%(13例)と、ワルファリン群の1.8%(25例)に比べほぼ半減したものの有意な差はなかった(HR:0.52、95%CI:0.27~1.02、p=0.06)。一方、大出血または臨床的に重要な出血の頻度はダビガトラン群で有意に減少した(HR:0.54、95%CI:0.41~0.71、p<0.001)。急性冠症候群(ACS)がダビガトラン群の0.9%(13例)にみられ、ワルファリン群の0.2%(3例)に比べ有意に高頻度であった(p=0.02)。 RE-SONATE試験のVTE再発率はダビガトラン群が0.4%(3例)と、プラセボ群の5.6%(37例)に比べ有意に良好であった(HR:0.08、95%CI:0.02~0.25、p<0.001)。大出血の発生率はそれぞれ0.3%(2例)、0%であったが、大出血または臨床的に重大な出血の発生率は5.3%(36例)、1.8%(12例)とダビガトラン群で有意に高値を示した(HR:2.92、95%CI:1.52~5.60、p=0.001)。ACSは両群に1例ずつ認められた。 著者は、2つの試験の結果を踏まえ、「ダビガトランによる抗凝固療法はVTEの延長治療として有効である。大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高かった」とまとめている。

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統合失調症患者の社会的認知機能改善に期待「オキシトシン」

 統合失調症患者は社会的認知機能(感情認識、他者への共感、パースペクティブテイキングメンタル[相手の立場で考える能力]を含む)が広い範囲で損なわれていることはこれまでの研究で明らかとなっている。最近の研究によると、統合失調症患者における社会的障害にオキシトシン作動性システムが関連しているともいわれている。イスラエル・ハイファ大学のM Fischer-Shofty氏らは、統合失調症患者に対するオキシトシン治療が社会的認知機能を改善するかを検討した。Schizophrenia research誌オンライン版2013年2月19日号の報告。 対象は統合失調症と診断された患者35例および精神的に問題のない健常者46例。すべての対象患者に、オキシトシン(24IU)またはプラセボの鼻腔内単回投与を1週間間隔で行った。対人的知覚課題(IPT)を用い、「親族関係」「親密さ」を健常者と比較し評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体ではすべての参加者において、プラセボ投与時と比較し、オキシトシン投与後に「親密さ」、「親族関係」の判定がより正確であった。・健常者と比較し、患者群では「親族関係」の有意な改善が認められた。・本研究は、オキシトシン投与により統合失調症患者の社会的認知機能が改善すること、さらに健常者よりも高い治療効果が期待できることが示された最初の研究のひとつである。関連医療ニュース ・オキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者の症状を改善 ・認知機能への影響は抗精神病薬間で差があるか? ・統合失調症患者の認知機能や副作用に影響を及ぼす?「遊離トリヨードサイロニン」

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大腿骨転子部骨折に対するINTERTANの治療成績はsliding hip screwと類似

 大腿骨転子間・転子下骨折の治療では髄内釘またはsliding hip screwが用いられる。ノルウェー・ベルゲン大学ハウケランド病院のKjell Matre氏らは多施設前向き無作為化比較試験を行い、TRIGEN INTERTAN nail使用時の術後12ヵ月における疼痛、運動機能および再手術率はsliding hip screws使用時と類似していることを示した。The Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年2月6日号の掲載報告。 本研究は、転子間・転子下骨折患者に対するTRIGEN INTERTAN nailの使用がsliding hip screw(SHS)使用時と比較して術後疼痛を軽減し、運動機能を改善させ、外科合併症の発生率を減少させるかどうかを評価することが目的であった。 転子間・転子下骨折高齢患者684例をINTERTAN群またはSHS群に無作為化し、入院中、術後3ヵ月および12ヵ月に疼痛(視覚アナログ尺度;VAS)、運動機能(Timed Up & Go Test)、股関節機能(Harris hip score)、QOL(EuroQol-5D;EQ-5D)を評価した。X線所見ならびに術中・術後合併症についても記録・分析した。 主な結果は以下のとおり。・INTERTAN群において術後早期の動作時疼痛VASスコアがわずかに低かったが(48対52、p = 0.042)、入院期間への影響はなく、術後3ヵ月および12ヵ月では両群に差はみられなかった。・骨折およびインプラントのタイプにかかわらず、術後3ヵ月および12ヵ月における運動機能、股関節機能、患者満足度およびQOLは、両群で類似していた。・術後の外科的合併症の発生は両群で同程度であった。(INTERTAN群32例、SHS群29例、p=0.67)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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テレヘルス(遠隔医療)、慢性疾患患者のQOLや不安・うつ病への効果は?/BMJ

 英国・シティ大学ロンドンのMartin Cartwright氏らは、テレヘルス(遠隔医療)による慢性疾患患者への介入について、QOLおよび精神的アウトカムへの効果について評価を行った。テレヘルスは、患者の自己モニタリング評価を遠隔的にできる簡便性から、医療コストを削減し健康関連QOLを改善するとして推進されてきたが、その有用性についてのエビデンスは相反する報告がされている。また不安症やうつ病への効果についてはほとんど評価が行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年2月26日号掲載より。 英国内テレヘルス研究参加者のうち慢性疾患患者1,573例について解析 Cartwright氏らは、2008年5月~2009年12月に被験者を集めて行われたWhole Systems Demonstrator(WSD)テレヘルス研究(3,230例)で慢性疾患(COPD、糖尿病、心不全)を有していると質問票で回答していた1,573例について評価を行った。WSDテレヘルス研究は、英国内の異なる医療サービスシステムの4つのプライマリ・ケアトラストが管轄する3地域(コーンウォール、ケント、ニューハム)から被験者を募り、GP(一般開業医)単位で無作為化し、テレヘルスと通常治療の介入効果を比較した。評価は、ベースライン、4ヵ月時点(短期)、12ヵ月時点(長期)で行われた。 評価はまずintention to treat解析を行い、GP単位および共変量単位による多変量モデルにて、3回すべての評価を受けた759例(評価完遂コホート)と、ベースライン+どちらか1回(評価可能コホート)について解析した。次にper protocol解析による有効性の評価を、評価完遂コホート633例、評価可能コホート1,108例を対象として行った。 主要評価項目は、健康関連QOLの一般的尺度(SF-12、EQ-5Dで身体面・精神面を評価)、不安症(Brief State-Trait Anxiety Inventoryの6項目で評価)、うつ症状(Centre for Epidemiological Studies Depression Scale:CES-Dの10項目で評価)とした。 テレヘルス群と通常治療群の差は小さく、アウトカムについて有意差がない intention to treat解析の結果、テレヘルス群と通常治療群の差は小さく、すべてのアウトカムについて、評価完遂コホート(各アウトカムのp値範囲:0.480~0.904)、評価可能コホート(同:0.181~0.905)のいずれにおいても有意な差はみられなかった。また、事前に定義した、両群最小限の臨床的に意義のある差(MCID、標準差0.3とした)は、いずれのアウトカムも4ヵ月時点、12ヵ月時点ともに達成しなかった。 per protocol解析の結果でも、テレヘルス群と通常治療群は、あらゆるアウトカムについて有意差がないことが示された(評価完遂コホートの各アウトカムのp値範囲:0.273~0.761、評価可能コホートの同値:0.145~0.696)。 解析の結果を踏まえて著者は、「WSDテレヘルス研究参加者を対象とした評価において、テレヘルスは通常治療と比べて効果的ではなかった。テレヘルスの12ヵ月間の介入はCOPD、糖尿病、心不全患者のQOLや精神的アウトカムを改善しなかった」と結論。テレヘルスは、QOLや精神的アウトカム改善を目的とした導入はすべきではないだろうと警鐘を鳴らしている。

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Dr.林の笑劇的救急問答8【外傷診療編】

第3回 「腹部外傷のABC」第4回 「骨盤外傷のABC」 第3回 「腹部外傷のABC」患者に頭部出血があったり意識混濁や意識レベルの低下がみられると、ついつい頭部の外傷ばかりに目がいってしまいます。しかしショックバイタルがあったら先ず腹部を疑うのが大原則です。腹部の外傷は受傷後長時間の経過観察が必要です。出血と腹膜炎に注意して、視診・聴診・触診・打診に加えてFAST検査を再度、反復して実施するとともに、必要に応じてX線、CT検査を行ないます。また小児の腹部外傷は、成人とは異なる特徴がありポイントを抑えることが出来ます。ドラマで再現した症例でポイントを理解しましょう。【症例1】50代男性。酔っ払って歩行中に側溝に転落。脈拍:100/m、血圧:120/80mmHg、SpO2:98%。患者は頭部の疼痛を訴え出血も多く意識も混濁している。胸部および骨盤X線では重篤な症状が見られず、頭部CTを行ったところ検査途中から意識レベルが低下、、、慌てる研修医たちにDr.林は「ショックの原因検索」が大事と諭します。【症例2】10歳男児.自転車走行中に交差点で自動車との接触事故に遭った.血圧:100/80mmHg,脈拍:90/m,SpO2:99%(15ℓリザーバー投与時),意識はクリア.交通事故外傷の診察に研修医は意欲を燃やすが患児は注射を嫌がって暴れ、ライン確保すら巧くできない.腹部にハンドル痕があるが疼痛(−)/FAST(−)のため研修医は「問題なし」として帰宅させたいが・・・。第4回「骨盤外傷のABC」防ぎ得る外傷死の頻度ナンバーワンは実は骨盤骨折と言われています。骨盤骨折を順序よく診断し治療出来なくてはなりません。整形外科や放射線科医との連携が必要になってくる場合もあり、Primary survey,secondary surveyのポイントをよく確認しておく事がとても大切です。骨盤外傷を正しく診断し治療する為の戦略について解説します。【症例1】45歳男性.歩行中に自動車にはねられた。意識は清明、脈拍:98/m、SpO2:99%(リザーバー10ℓ投与下),来院時血圧:100/70mmHg.PrimarysurveyではX線/FASTともに重篤な出血や骨折が見つからない。しかし徐々にショック指数が高まり患者の容態も悪くなってゆく。Dr.林は検査所見にこだわる研修医に触診も大事であることを諭す。【症例2】30代男性。バイクで走行中に滑って転倒した。意識レベル:JCSⅠI-10、血圧:80/50mmHg、脈拍:110/m、SpO2:99%(リザーバー10l投与下)。呼びかけに対しては反応するが意識は混濁しており話の内容は混乱している。全身の疼痛を訴える。初回FASTは陰性だが骨盤X線造影で不安定骨折と見られる所見あり。研修医はサムスリングを使用しようとするが・・・。

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境界性パーソナリティ障害患者の自殺行為を減少させるには

 英国・アバディーン大学のJohn Norrie氏らは、境界性パーソナリティ障害患者を対象とした認知行動療法(CBT)に関する無作為化対照試験「BOSCOT」において、治療時間とセラピストの能力が自殺行為の回数に及ぼす影響を検討した。その結果、有能なセラピストが適当な時間の認知行動療法を行うことで、境界性パーソナリティ障害患者の自殺行為が大幅に減少する可能性が示唆されたことを報告した。Psychology and Psychotherapy誌オンライン版2013年2月19日号の掲載報告。 BOSCOT試験は、市中のクリニックが参加し、英国国民保健サービス(UK National Health Service)によって実施された質の高い無作為化対照試験である。対象は、英国内の3地域(ロンドン、グラスゴー、エアシャイア/アラン)から登録された境界性パーソナリティ障害患者106例であった。被験者は、通常治療+パーソナリティ障害に対するCBT(CBTpd)を併用する群、または通常治療のみ群に1対1に無作為に割り付けられた。通常治療の内容は、地域や個人によりさまざまであったが、試験時の英国NHSが保障していたルーチンな治療が行われた。CBTpdは、12ヵ月間にわたり平均16のセッションが行われた。研究グループは、BOSCOT試験で報告された治療効果について、とくに治療時間とセラピストの能力が主要アウトカムである自殺行為の回数と精神科入院に及ぼす影響について、操作変数回帰モデル(instrumental variables regression modelling)を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化後2年時点で、すべてのアウトカムデータが得られた患者は101例であった。・intention-to-treat(ITT)集団において、CBT群では2年の間に自殺行為が平均0.91(95%CI:0.15~1.67)に減少したことが報告された。・治療時間とセラピストの質の影響を加味すると、有能なセラピストが適当な時間のCBTを行うことで、効果は約2~3倍高くなると推察された。・以上の結果を踏まえて著者らは、「治療の量やセラピストの能力の影響の評価は複雑であるが、CBTpdにおいて研鑽を積んださらに有能なセラピストが関与することで、境界性パーソナリティ障害患者における自殺行為の回数が著しく減る可能性が示唆された」と結論した。・また、本検討のような試験について、「最適な療法の提供を目指した治療効果の評価では、治療時間とセラピストの能力の両方を、常に対照しながらデータ収集に努めるべきである」ともコメントしている。関連医療ニュース ・パニック障害 + 境界性パーソナリティ障害、自殺への影響は? ・境界性パーソナリティ障害患者の症状把握に期待!「BPDSI-IV」は有用か? ・性的強迫観念は、統合失調症患者で頻度が高く、自殺行動と独立して関連

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